JP2020097854A - ワイヤー等を用いた建物の耐震設備 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1の発明は基礎部より建物最上部へワイヤー等を張設するという点で、優れており、本願発明の請求項1記載の(1)、(2)の設備、請求項7、請求項8と共通する。
ただ欠点1として、特許文献1の発明の実施の形態、図面には壁に内装する設備について記載されているが、そのため既存の建物に事後的に設備するということが困難である。
特許文献1の請求項2の発明においては、垂直線と斜め線からなるトラス構造体が耐震の性能を持つものと主張されているのであって、そこから本願発明のように斜め線単体のみを取り出してくることは特許文献1の発明者にとって不本意なものとなるであろう。
建物の外部に基礎よりワイヤー等を斜めに張設するという点で、優れており、本願発明の請求項1記載の(1)、(2)の設備、請求項7、請求項8と共通する。
ただ欠点1には、特許文献2の請求項1には建物上部に基礎よりワイヤー等を張設するとあるが、図1や発明を実施するための最良の形態の記載より、二階の建物において、一階の屋根部にワイヤー等が張設されており、よって請求項1に記載の建物上部とは本願発明におけるような建物最上部のことにはあらず、基礎と建物最上部をワイヤー等によって接合するものではないため、耐震効果はさほどのものとはならない。現に大地震が来た場合に図1における二階部分は倒壊を免れ得るであろうか。
欠点1には、特許文献3の発明は、建物のコーナー部において、ワイヤーが交叉しないように、張設するという点で本願発明の請求項9と共通しているが、二階建ての建物に限定され、しかも二階床部の梁と基礎との間でワイヤー等を張設するものである。本願発明にあっては、何階建てであっても建物の壁の最上部と基礎との間でワイヤー等を張設する。本願発明のように、建物の壁の最上部と基礎との間で張設してはじめてワイヤー等方式の耐震設備の効果が発揮されるのである。
特許文献4は本願発明の耐震性能を傍証するものとなり得る技術である。
建物の構造を、発生する応力の特性から分類すると、三つの系統に分かれます。
曲げ系は柱の曲げ耐力により地震に抵抗する建物で、鉄筋コンクリート造のラーメン構造や重量鉄骨を使った一部の鉄骨造が該当します。軸力系は斜めの部材を組み合わせたトラス構造を持った建物で、部材に曲げを生じさせず、軸力だけで抵抗する方式のものです。
せん断系は鉄筋コンクリート壁式構造で建てられた建物で、壁のせん断力により地震に抵抗するものです。これらの設備は建物の剛体化を目指している。建物が剛体である。つまり建物が地震による揺れに対して変形しない。従って建物は倒壊しないということである。
つまり建物の上階の地震によるゆがみは建物の下階へと引き継がれ、累積し建物の一階部分において最大となる構造となっている。建物の一階部分が持ちこたえなければならない歪みと重圧はいかほどのものになるか。重ねて建物の一階部分は上階部の重量にも耐えなければならない。建物が倒壊する所以である。
翻って本願発明においては建物の最上部と建物の最下部の基礎とを直接に結合しているため、てこの原理から言って最も有利な位置で建物を支えている。つまり建物のゆがみは直接に建物の最下部の基礎に引き渡されるのであって、基礎が破壊されない限り建物の倒壊の怖れはない。
既存の方法による建物の耐震設備、補強はかなりの高額なものとなる。翻って本願発明の場合はどうであろうか。例えば建物の四隅に四本のワイヤー等を張るだけである。大幅な経費削減が実現される。
筋交いは剛体製のものであれば地震のゆがみによって反発力を発生するものであって、それは柱を引き抜く方向に働く。ワイヤー製のものであっても、各階ごとに別個に設けられたものは、各階ごとの耐震性の獲得の効果はあれども建物全体としては、各階ごとの緩み、遊びが積み重なって建物不倒壊の効果は薄らぐ。
代表的な耐震設備が筋交い、耐力壁であるが、まずこれらに共通する欠点は耐力壁等は各階ごとに設けられているという点である。例えば二、三階建ての場合には、耐力壁等が各階を通した一体ものではないのである。一階の耐力壁等と二階の耐力壁等の間には一種ガタが存在する。
翻って本願発明においてはどうであろうか。本願発明のワイヤー等は地上基礎から最高階に至るまで一本ものである。ガタは存在し得ない。
さらに問題点は既存の建物においては、建物の上階の地震の揺れによる歪みは順次階下に伝えられるということである。一階においては、一階自身の歪みのみならず、二、三階の歪みをも請け負って耐えなければならない、これらはいかほどのものになるのであろうか。建物の倒壊を招く所以である。
地震時の建物の揺れより建物を守るのは結局建物の基礎である。既存の耐力壁等を設備した家屋においては基礎に結合されているのはどこかと云えば、一階部の柱である。
つまり地震時の揺れによる全建物の変形、歪み或いは揺れによる応力は一階基礎上に固定された柱部に集結してくるのである。しかも一階柱部には建物のそれより上の部分の全重量も加わってくるのである。
翻って本願発明においてはどうであろうか。本願発明においては建物全体の歪みは最上階の歪みに集約され、かつそれはすべて地上の基礎にのみ伝達される。ワイヤー等と基礎にのみ負担が掛かり建物自体には何の負担も掛からない。
翻って本願発明においてはどうであろうか。本願発明のワイヤー等においては、圧縮力、反発力は発生しないのである。
翻って本願発明においてはどうであろうか。壁の外部に地上基礎から細いワイヤー等を邪魔にならない位置に張るだけである。いかようにでも、開口部等設計の自由度は守られる。
建物とは新築、既築の両方を含む概念である。
基礎から張設されたワイヤー等の地震時の大きな張力に耐え、建物の最上部から地震時の建物の揺れを支えることが出来るほど強固な部分、又はそれと強固に接合された部材を表す。
木造家屋で言うなら、屋根部を構成する骨格である屋根部の柱、梁と桁から成る構造物、又はそれへの強固な接合物を表す。
或いは本発明の実施のために設けられた建物の最上部を胴巻するように取り付けられた強固な環状のものでもよい。
まず本願発明の代表図面5を見て頂きたい。本構造において、建物が倒壊するのは、ワイヤー等が断線した場合のみであることがお分かりいただけると思う。つまりシンプルでかつ耐震効果は自明である。
もし地震の揺れに際して、建物の下部の床部分と建物の最上部が同期して、同じ方向に同じ大きさで同じ揺れを生じるならば建物は倒壊しない。建物に一切の歪み、変形、しなり、たわみ、ねじれ等の建物の倒壊の原因となる変形が生じないのであるから当たり前のことである。
建物の下部の床部分と建物の最上部が同期して、同じ方向に同じ大きさで同じ揺れを生じさせるためには建物の下部の床部分が地盤に直接固定されているのと同じように建物の最上部をも建物の他の部分を介さずに地盤に直接固定すればよいのである。
基本的に従来において耐震設備は柱のしなり、たわみ弾性に依存している。地震の揺れに際して、建物には水平慣性力が生じる。それに対しては柱を主として建物自体がしなり、たわみ変形して弾性力を発生して対抗しようとする。筋交い、耐力壁を設けた場合でもこれは変わらない。つまり変形を前提としている。この建物のしなり変形は次の理由により、一層増幅されてゆく。
本願発明においては、上記例の棒の最上部へ慣性力とは反対方向へ力を加える場合に相当する。
つまり建物の三階部分、二階部分に働いた、地震による慣性力は積もり積もって、一階部分にのしかかってきて、しかも上記の棒の例えで説明したように、最も不利な位置で地震による慣性力を支える結果となってしまう。
一階部分の負担はいかほどのものであろうか、それによる一階部分のしなり、たわみ変形はいかほどのものであろうか。建物が倒壊する、主に一階部分からの理由である。
仮に筋交い、耐力壁が一本棒、一枚板で地盤から最上階まで渡してあるなら地盤から最上階まで直接的に地盤に固定してあるということなり、各階ごとのガタによる建物の変形の増幅の問題は解消されるが実際にはそのように行われてはいない。それどころか階上の壁のすぐ下に階下の壁が存在しない構造の家屋も多い。いわゆる直下率の悪さということである。
つまり現行の建築では建物の下部に行くほど地震の揺れによる、しなり、たわみ変形が顕著となり、それが倒壊の原因である。
今地震の揺れを想像してみよう。ある方向に揺れ、突然に向きを変え反対方向に揺れる。その突然に向きを変えるときに、筋交い、耐力壁は反発力で柱のしなり、たわみを押し戻そうとする。それらの筋交い、耐力壁の反発力は、柱を床、梁から引き抜く方向に働く。 つまり倒壊の原因となるのである。本願発明のように耐震設備としてワイヤー等を使用するときにはワイヤー等は張力は発生するものの反発力は発生しようのないものであるから、柱を引き抜くような力は発生しない。
それどころか本願発明においては、建物の最上部と地上の基礎を直接結ぶのであるから、つまり建物の最上部からワイヤー等の張力でもって、下方に押さえつけているのであるから柱等の抜けを防ぎ、既設の耐震設備をも有効に働かしめる機能も発揮するのである。この点でも本願発明は有利である。
本願発明のように耐震設備としてワイヤー等を使用する場合には、ワイヤー等の張力による伸びしろは、さほどのものではなく、地盤に直接固定されたワイヤー等により建物の最下部と最上部は同期して同じ揺れを起こし、よって建物自体の変形は起こらない。また共振も起こり得ない。地震による建物の内部に発生し、建物の倒壊に結び付く応力の多くがワイヤー等を伝って基礎に逃がされるのであり、建物自体にはほとんど地震による負担は生じない。従来の耐震設備のように建物全体で地震による負担に耐えようとするのとは根本的に異なる。本願発明の耐震設備が建物の倒壊を防ぐのはこのためである。
また本願発明の著しい長所は、特に請求項1記載の(3)又は(4)の設備又は請求項3記載の(5)の設備において、建物の設計の自由度、特に開口部、ベランダ、出窓、屋根等の設置の自由度、リフォームの自由度が大幅に高まるということである。
ワイヤー等を建物の外部のコーナー部に張ればよいので開口部等の設置の邪魔にならず、建物内部の耐震設備も要らなくなるわけであるから設計時の制限、制約を最小に抑えることができる。
さらにワイヤー等は建物の外部に設置されているので、ワイヤー等の交換、メンテナンス、ワイヤー等の張力増大のための増し締め、が容易である。
さらに複数のワイヤー等を近接させたり、カラーのカバーで被覆したり、デザイン、装飾性を高めることも可能である。
建物の壁の外側において、該建物の全周囲における任意のコーナー部において、本項記載の(1)〜(4)の4種類のエレメント(基本要素)設備の中から一種類又は二種類以上を施工するものである耐震設備である。但し該4種類のエレメント設備のいずれも施工されないコーナー部も有り得る。一つのコーナー部において4種類のエレメント設備の中から一種類又は二種類以上を施工することも可能である。
但し少なくとも二つのコーナー部において、本項記載の(1)〜(4)の4種類の設備の中から一種類又は二種類以上を施工するものであり、
且つ少なくとも該二つのコーナー部の内の一つのコーナー部において、本項記載の(3)又は(4)の二種類の設備の中から少なくとも一種類の設備を施工するものである建物の耐震設備である。
最低でも二つのコーナー部において、本項記載の(1)〜(4)の4種類の設備の中から一種類又は二種類以上が施工されており、且つ少なくとも該二つのコーナー部の内の一つのコーナー部においては、本項記載の(3)又は(4)の二種類の設備の中から少なくとも一種類の設備が施工されている。
既築の建物に耐震上の弱点が発見された場合に既存の耐震設備と組み合わせて既存の耐震設備の弱点を補強する形で施工する場合などが相当する。
壁の表面に懸かる不要のワイヤー等が邪魔にならないように除去し、本耐震設備の設置のために必要となる余剰敷地、スペースを最小限度のものとし、本耐震設備を実用的あらしめ、通常の一般家屋への本耐震設備の施工を可能かつ容易なものとし、実用性を増さしめ、壁開口部等(ベランダ、バルコニー、屋根、出入口、扉、ドア、駐車場、シャッターなど)の設置、設計の自由度を保証しようとするものである。壁開口部等の本来の機能を阻害しないようにし、耐震機能上から必要以上の設備は施工しない。
但し少なくとも二つのコーナー部において本項記載の(1)〜(4)の4種類のエレメント設備の中から一種類又は二種類以上を施工し、さらにその内一つのコーナー部において本項記載の(3)、(4)の二種類のエレメント設備のうちから少なくとも一種類のエレメント設備を施工する。実質的な耐震機能を確保しつつ、建物の壁の開口部を塞ぐのを避けるためである。
一つは建物の外側において、該建物の基礎より該建物の全周囲における壁の最上部へ直接に、ワイヤー等を、張力を持たせた状態で斜めに張設するものである建物の耐震設備(以下「壁にワイヤー等を這わせる耐震設備」という。)である。
二つには、建物の外側において、該建物の外部の独立基礎より該建物の全周囲における壁の最上部へ直接に、ワイヤー等を、張力を持たせた状態で斜めに張設するものである建物の耐震設備(以下「壁から離してワイヤー等を張設する耐震設備」という。)である。
本請求項の発明の趣旨は、上記二つの基本発明を建物の全コーナー部のうち、耐震設備の必要とされるコーナー部に設置するものである。
本請求項の発明においては、上記二つの基本発明を混在させることも可能である。
本請求項の発明においては、既存の耐震設備と協同して用い耐震補強、補完設備として使用する場合と、自己完結的にほぼ本発明のみで建物に耐震機能(建物の倒壊を防止する機能)を持たせる場合とがある。
このことは建物のどのコーナー部に上記エレメント設備を施工するかによって、決まってくることである。
このような建物は正面から見て地震の前後の揺れに対しては耐えられても、建物前方の左右の揺れに対してはからきし弱いであろう。このような場合に左右の壁前方においてワイヤー等を建物の外部の独立基礎から左右の壁前方コーナー部の最上部へ張設するだけで建物の耐震上の弱点を補うことができる。
後者の本発明のみで完結させる例としては、建物の四隅のコーナー部において、本項記載の(1)〜(4)の4種類の設備のうちのいずれかを施工してあれば、万全であると言える。
以上のように本発明は他の技術による耐震設備の弱点を克服、補強するために施工される場合もあるし、ほとんど本発明の耐震設備だけで十分な耐震性能を有し、本発明のみで完結する場合もある。上記エレメント設備は最も機能的、効率的な耐震補強パーツであって、これを各所に配置することで建物の耐震弱点を無くし、複数組み合わせることでパーツのみで完結、建物に耐震機能を持たせる。
(1)〜(4)には本願発明における典型的な耐震設備のエレメントを掲げてある。
(1)〜(4)は建物のコーナー部における耐震設備エレメントである。これらの耐震設備エレメントを適宜用いることにより、補強的に、又は完結的に建物に耐震性能を持たせることが出来る。
建物の外側において、該建物の二面の壁により形成される該建物のコーナー部基礎よりコーナー部を形成している二面の壁の最上部へ直接的に他の固定点を経由することなくワイヤー等を張力を持たせた状態で斜めに張り渡すものである。建物のコーナー部基礎とは二面の壁の交わる部分のみならず、その近傍をも含む。
建物の外側において、該建物の二面の壁により形成されるコーナー部の最上部からコーナー部を形成している二面の壁の基礎部へ直接的に他の固定点を経由することなくワイヤー等を斜めに張り渡すものである。建物の二面の壁により形成されるコーナー部の最上部とは二面の壁の交わる部分のみならず、その近傍をも含む。
建物の外側において、該建物のコーナー部前方の建物の外部の独立基礎部よりコーナー部を形成している二面の壁の最上部、又は該コーナー部の最上部へ直接に、他の固定点を経由することなくワイヤー等を、張力を持たせた状態で斜めに張り渡すものである。
ここにおいてコーナー部の前方とはコーナー部を形成する二面の壁を仮想的に延長したとした場合に二面の壁の延長部分によって、囲まれる範囲を指すものとする。
建物というものは外部との関係性、外部との交渉の上に成り立っている。建物が本来もつべき機能、特に壁開口部等(ベランダ、バルコニー、屋根、出入口、扉、窓、ドア、駐車場、シャッターなど)の機能をワイヤー等による耐震設備が妨げることがあってはならない。建物の本来の機能を損なわず、保全しようとするものである。以上のことは次の本項記載の(4)の設備にも共通する。
ワイヤー等による筋交いの耐震性能は実物実験で実証済みである。ただ従来のワイヤー等筋交いは建物の内部、壁表面に設置されていたのでどうにも邪魔で建物の使い勝手、設計上の妨げになってきた。
たとえば通常の家屋であれば四隅に四本のワイヤー等を張るだけで、家屋の倒壊を防ぐ効果が得られる。
建物の外側において、該建物の二面の壁により形成されるコーナー部の最上部からコーナー部を形成している二面の壁の前方の建物の外部の独立基礎部へ直接的に他の固定点を経由することなくワイヤー等を、張力を持たせた状態で斜めに張り渡すものである。建物の二面の壁により形成されるコーナー部の最上部とは二面の壁の交わる部分のみならず、その近傍をも含む。
ここにおいて該コーナー部を形成する二面の壁の前方とは当該壁に当該壁の左右のコーナー部を介して接続する左右の壁を当該壁方向に仮想的に延長したとした場合に延長部分によって囲まれる範囲の内を指すものとする。(図4の一点鎖線で囲まれた領域外に一致する。)
請求項2の発明は、建物の全周囲における任意の凸型のコーナー部において、請求項1記載の(3)のエレメント設備を施工するものであり
但し少なくとも四つの凸型のコーナー部においては請求項1記載の(3)の設備を施工する建物の耐震設備である。
且つ該建物の該耐震設備は上記の要件を満たす設備のみで構成され、該建物の外側においてワイヤー等が張力を持たせた状態で基礎又は独立基礎より壁の最上部へ直接に斜めに張設されるのは該耐震設備のみに限られる。
請求項3の発明は、請求項2の発明において、請求項1記載の前記(3)の設備の代わりに(5)の設備で置き換えたものである。
本項記載の(5)の設備とは、(3)の設備の特殊な場合であって、
建物の外側において、該建物の二面の壁により形成される該建物のコーナー部の最上部より該コーナー部の前方の該建物の外部の独立基礎へ直接に、ワイヤー等を張力を持たせた状態で斜めに張設する。
ここにおいてコーナー部の前方とはコーナー部を形成する二面の壁を仮想的に延長したとした場合に二面の壁の延長部分によって囲まれる範囲を指すものとする(図3の一点鎖線で囲まれた領域内)。
(5)の設備はワイヤー等を張設する箇所をより一層コーナー部に収斂させているため、さらにワイヤー等が建物の壁部の他の設備に被さることは無くなる。コーナー部
というのは建物に関し唯一建物の壁部に被さらない箇所である。本箇所において建物の外部に取り付けられた該耐震設備はもはや一切邪魔な障害物になることは無くなる。
直方体形の建物であるならば、請求項3記載の(5)の設備を四隅のコーナー部に設置するだけで建物は揺れを免れる(柱が傾かない)という認識は重要である。
建物の四隅において、建物の重心を縦に貫く建物の中心軸に向けて張設されたワイヤ等は張力、かつそれらの合力を含めて建物の中心軸回り360度方向の引っ張り力を発生できるのである。
請求項4の発明は、建物の全周囲における全凸型のコーナー部において、請求項1記載の(1)〜(4)の4種類のエレメント設備の中から一種類又は二種類以上を施工するものであり
但し少なくとも一つの凸型のコーナー部においては請求項1記載の(3)又は(4)の2種類の設備のうちの少なくともいずれか一種類を施工する建物の耐震設備である。
且つ該建物の該耐震設備は上記の要件を満たす設備のみで構成され、該建物の外側においてワイヤー等が張力を持たせた状態で基礎又は独立基礎より壁の最上部へ直接に斜めに張設されるのは該耐震設備のみに限られる。
下記記載のように、請求項1記載の(1)、(2)等の設備に相当する「壁にワイヤー等を這わせる耐震設備」のみで自己完結型の耐震設備とするのは困難である。請求項1記載の(3)、(4)等の設備に相当する「壁から離してワイヤー等を張設する耐震設備」ならばそれのみで自己完結型の耐震設備とすることが容易である。以上が本請求項の発明の趣旨である。
例えば直方体形の建物であるならば、請求項1記載の(3)の設備を四隅のコーナー部に設置するだけで建物は揺れを免れる(柱が傾かない)という認識は重要である。
建物の四隅において、建物の重心を縦に貫く建物の中心軸に向けて張設されたワイヤ等は張力、かつそれらの合力を含めて建物の中心軸回り360度方向の引っ張り力を発生できるのである。
一つにはこのような「壁にワイヤー等を這わせる耐震設備」は壁に沿うような張力しか発生できない。つまり壁に垂直方向の張力は発生できないのである。よって該耐震設備に建物の倒壊を免れしめる性能を持たせようとするならば、該建物の全周囲における壁の全面に(建物が直方体であれば四面全部に)ワイヤー等を張り巡らさなければならない。このようなことは事実上不可能である。なぜなら全面が平坦であるような壁を持つ建物など皆無であるし(バルコニー等の出っ張りがある。)、また窓、出入口、シャッターなどの開口部が設けられない。このような壁に這うようなワイヤー等による耐震設備は建物の窓、出入口、シャッターなどの開口部の設計の自由度を大きく阻害する。
「壁から離してワイヤー等を張設する耐震設備」ならば自由に建物の窓、出入口、シャッターなどの開口部を設けることが出来る。本請求項の発明は上記の問題点を完全に克服していることをおわかりいただけることと思う。
請求項3記載の建物の耐震設備であって、
建物の全周囲における全ての凸型のコーナー部において、
請求項3記載の前記(5)の設備を施工するものであり
つまり、該建物の二面の壁により形成される該建物のコーナー部の最上部より該コーナー部の前方の該建物の外部の独立基礎へ直接に、ワイヤー等を、張力を持たせた状態で斜めに張設するものであり、
且つ該建物の該耐震設備は上記の要件を満たす設備のみで構成され、該建物の壁の外側においてワイヤー等が張力を持たせた状態で基礎又は独立基礎より壁の最上部へ直接に斜めに張設されるのは該耐震設備のみに限られる。
ここにおいてコーナー部の前方とはコーナー部を形成する二面の壁を仮想的に延長したとした場合に二面の壁の延長部分によって囲まれる範囲を指すものとする(図3の一点鎖線で囲まれた領域内)。
又、同種の設備を一つのコーナー部につき複数個設置してもよい。
本項による発明は直方体の形状の家であれば、四隅のみにワイヤー等を張ればよく、最小限度の設備で十分な耐震性能を発揮しつつ、建物の他の機能を損なうことなく、美観をも損なわない。
ほぼ建物の重心方向に向けて建物の外部の独立基礎から、建物の端っこの凸型のコーナー部の最上部をワイヤー等で引っ張るのであるから建物の一切の構成部材に圧縮力が発生することがない。故に建物倒壊の主要な原因である柱の引き抜き等の力は生じない。
「壁にワイヤー等を這わせる耐震設備」に関する発明である。一階部分の壁の最上部と基礎の間に、又は各階ごとにワイヤー等を這わせる設備に関する技術は既にあるので、本請求項の発明においては、二階建て以上の建物の外側において、該建物の基礎より該建物の全周囲における壁の最上部へ直接に、ワイヤー等を、張力を持たせた状態で斜めに張設するものである建物の耐震設備となっている。
二階建て以上の建物の外側において、該建物の基礎より該建物の全周囲における壁の最上部へワイヤー等を張る発明は本願発明におけるものが最初である。
本項の発明は部分的補強用と建物全体の耐震用の二通りに使える。
「壁にワイヤー等を這わせる耐震設備」に関する発明をコーナー部において実施しようとするものである。
隣家と近接して建てられていて「壁から離してワイヤー等を張設する耐震設備」を設けるスペースがない場合に効果的である。
本項の発明は部分的補強用と建物全体の耐震用の二通りに使える。
少なくとも二つのコーナー部において、請求項1記載の前記(1)又は(2)の2種類の設備の中から一種類又は二種類を施工することにより本請求項の発明は部分的補強用と建物全体の耐震用の二通りの機能を有する。
異なるコーナー部又はコーナー部の前方に設けられた請求項1記載の前記(1)〜(4)の4種類のエレメント設備のワイヤー等が互いに交叉しないように張設するならばワイヤー等がさらに壁開口部等利用の邪魔、障害とならず、それだけ建物における壁開口部等設計の自由度が高まる。ワイヤー等を張設する領域をコーナー部付近に限定したものである。
建物というものは外部との関係性、外部との交渉の上に成り立っている。建物が本来もつべき機能、特に壁開口部等(ベランダ、バルコニー、屋根、出入口、扉、窓、ドア、駐車場、シャッターなど)の機能をワイヤー等による耐震設備が妨げることがあってはならない。建物の本来の機能を損なわず、保全しようとするものである。
本願発明において、ターンバックル等の張力を調節する装置を付属させる意味は大きい。一つには年月を経てワイヤー等の張りが緩んだら増し締め等することが出来、耐震機能を維持することが出来るからである。
二つには、ワイヤー等の張りを調節することによって、建物の固有振動数を倒壊を免れるように自在にアジャストすることが出来るからである。
本願発明の耐震設備による建物の倒壊を免れる効果は特に木造家屋の場合に著しい。一つには建物の重量が小さいため前記のようにてこの原理によりワイヤー等の張力がよく倒壊防止に効くためである。てこの原理によって小さな張力によって支えられるという点が大事であって木造のように歪み、緩み、遊びが大きくなりやすいものでも支えられる
本願発明においては建物の一階部と最上部を基礎に直結している二点支持であるので、建物の一階部と最上部は地震の揺れに対して全く同期して同一の動きをするのであって、建物の倒壊が生じるものではない。またその際に建物の最上部を基礎から引っ張るという、てこの原理上有利な位置で働くのでワイヤー等に掛かる負担は他の位置で建物を支持するのに比して軽度のものとなる。
もちろん既設の中古建物への本願発明の設備の後設置も容易である。そして既存の建物の耐震設備の補強の場合でも柱の強化、ブレース、耐力壁等の増設に比して本願設備は格段の安い経費で済む。且つ開口部、ドア、窓、ベランダ、屋根などの設置の妨げとならない。
且つコーナー部のみに張設されたワイヤー等は十分な耐震性能を発揮する。コーナー部のみに施工すればよいのであるから、材料費はわずかで工事費も安価で施工期間も短縮される。特にコーナー部外部に独立基礎を設ける方式においてそれらの傾向は強い。
直下型地震の場合には、隅柱が土台から引き抜かれる事を防止する効果もある(ホールダウン金物と同じ)。
本願発明においては「壁から離してワイヤー等を張設する耐震設備」の場合でも建物のコーナー部にわずかの敷地スペースが必要となるのみで余剰の敷地スペースはさほど必要としない。
今、地盤が地震により右方に動くことを考えてみるがよい。建物を構成する部材は、一斉に張力を発揮して建物を右方に引っ張ろうとするであろう。ここまでは良いのであるが、いずれ地盤は動きをストップする。その時建物を構成する部材は今度は反発力、圧縮力を発揮して、建物の動きを押し止どめようとするであろう。そのようなは反発力、圧縮力は建物の柱等の構成部材を上方に引き抜く方向に働く。建物が倒壊する所以である。
本願発明においては、ワイヤー等は張力だけを発生し、反発力を発生しないのみならず、建物の最上部から下に押さえつけ、柱の引き抜きを防ぐ働きをする。建物の耐震性が増加される所以である。
梁と桁と柱に直接的に結合するのみならず、なんらかの結合補助部材を介してもよい。地震によりワイヤー等に発生する大きな張力を建物各部に伝えるものであるから、この場合の梁と桁と柱は強固なものでなければならないし、梁と桁と柱の接合部も金具等で補強されているのが望ましい。
既存の建物に事後的に本願設備を設置するような場合は、建物最上部の全周囲へ胴巻のように金属製、木製等の強固なベルトを巻いて、そこにワイヤー等を固定するようにしてもよい。このようなベルトは建物の最上部の骨組みが必ずしも強固でない場合、又は古くなってきている場合に、建物の最上部を一体のものとしてワイヤー等で引っ張ることが出来る点で効果的である。
地震時のワイヤー等の大きな張力に耐え得る程の十分な強度を持つものであり、地面から抜けたり、砕れたりしないものである。
ワイヤー等を特許文献1のように建物の壁に内装するタイプのものもある、がそのようなものはメンテナンス、増し締め等が困難である。
屋上部の差し掛け屋根、ペントハウスなどを有する建物については、屋上部分の床を基礎と見なして、請求項1記載の(1)〜(4)のエレメント設備を施行すればよいであろう。
Claims (11)
- 建物の外側において、該建物の全周囲における任意のコーナー部において、下記(1)〜(4)の4種類の設備の中から一種類又は二種類以上を施工するものであり、
但し少なくとも二つのコーナー部において、下記(1)〜(4)の4種類の設備の中から一種類又は二種類以上を施工するものであり、
且つ少なくとも該二つのコーナー部の内の一つのコーナー部において、下記(3)又は(4)の二種類の設備の中から少なくとも一種類の設備を施工するものである建物の耐震設備であって、
且つ該建物の該耐震設備は上記の要件を満たす設備のみで構成され、
該建物の外側においてワイヤー等が張力を持たせた状態で基礎又は独立基礎より壁の最上部へ直接に斜めに張設されるのは該耐震設備のみに限られる。
(1)、建物の外側において、該建物の二面の壁により形成される該建物のコーナー部の該建物の基礎より該コーナー部を形成する二面の壁の最上部へ直接にワイヤー等を張力を持たせた状態で斜めに張設する。
(2)、建物の外側において、該建物の二面の壁により形成される該建物のコーナー部の最上部より該コーナー部を形成する二面の壁の該建物の基礎へ直接にワイヤー等を張力を持たせた状態で斜めに張設する。
(3)、建物の外側において、該建物の二面の壁により形成される該建物のコーナー部の前方の該建物の外部の独立基礎より該コーナー部を形成する二面の壁の最上部、又は該コーナー部の最上部へ直接にワイヤー等を張力を持たせた状態で斜めに張設する。
(4)、建物の外側において、該建物の二面の壁により形成される該建物のコーナー部の最上部より該コーナー部を形成する二面の壁の前方の該建物の外部の独立基礎へ直接にワイヤー等を張力を持たせた状態で斜めに張設する。
- 請求項1記載の建物の耐震設備であって、
前記建物の全周囲における任意の凸型のコーナー部において、
請求項1記載の前記(3)の設備を施工するものであり、
但し少なくとも四つの凸型のコーナー部において請求項1記載の前記(3)の設備を施工するものである建物の耐震設備であって、
且つ該建物の該耐震設備は上記の要件を満たす設備のみで構成され、
該建物の外側においてワイヤー等が張力を持たせた状態で基礎又は独立基礎より壁の最上部へ直接に斜めに張設されるのは該耐震設備のみに限られる。
- 請求項2記載の建物の耐震設備であって、
前記建物の全周囲における任意の凸型のコーナー部において、下記(5)の設備を施工するものであり、
但し少なくとも四つの凸型のコーナー部において下記(5)の設備を施工するものである建物の耐震設備であって、
且つ該建物の該耐震設備は上記の要件を満たす設備のみで構成され、
該建物の外側においてワイヤー等が張力を持たせた状態で基礎又は独立基礎より壁の最上部へ直接に斜めに張設されるのは該耐震設備のみに限られる。
(5)、建物の外側において、該建物の二面の壁により形成される該建物のコーナー部の最上部より該コーナー部の前方の該建物の外部の独立基礎へ直接に、ワイヤー等を張力を持たせた状態で斜めに張設する。
- 請求項1記載の建物の耐震設備であって、
前記建物の全周囲における全ての凸型のコーナー部において、
請求項1記載の前記(1)〜(4)の4種類の設備の中から一種類又は二種類以上を施工するものであり、
但し少なくとも一つの凸型のコーナー部において請求項1記載の前記(3)又は(4)の二種類の設備の中から少なくとも一種類の設備を施工するものである建物の耐震設備であって、
且つ該建物の該耐震設備は上記の要件を満たす設備のみで構成され、
該建物の外側においてワイヤー等が張力を持たせた状態で基礎又は独立基礎より壁の最上部へ直接に斜めに張設されるのは該耐震設備のみに限られる。
- 請求項4記載の建物の耐震設備であって、
前記建物の全周囲における全ての凸型のコーナー部において、
請求項1記載の前記(3)又は(4)の二種類の設備の中から一種類又は二種類を施工するものである建物の耐震設備であって、
且つ該建物の該耐震設備は上記の要件を満たす設備のみで構成され、
該建物の外側においてワイヤー等が張力を持たせた状態で基礎又は独立基礎より壁の最上部へ直接に斜めに張設されるのは該耐震設備のみに限られる。
- 請求項3記載の建物の耐震設備であって、
前記建物の全周囲における全ての凸型のコーナー部において、
請求項3記載の前記(5)の設備を施工するものであり、
且つ該建物の該耐震設備は上記の要件を満たす設備のみで構成され、
該建物の外側においてワイヤー等が張力を持たせた状態で基礎又は独立基礎より壁の最上部へ直接に斜めに張設されるのは該耐震設備のみに限られる。
- 二階建て以上の建物の外側において、該建物の基礎より該建物の全周囲における壁の最上部へ直接に、ワイヤー等を張力を持たせた状態で斜めに張設するものである建物の耐震設備。
- 請求項7記載の建物の耐震設備であって、
前記建物の全周囲における任意のコーナー部において、請求項1記載の前記(1)又は(2)の2種類の設備の中から一種類又は二種類を施工するものであり、
但し少なくとも二つのコーナー部において、請求項1記載の前記(1)又は(2)の2種類の設備の中から一種類又は二種類を施工するものである建物の耐震設備。
- 請求項1及び請求項2及び請求項4及び請求項5記載の建物の耐震設備であって、
異なる前記コーナー部又はコーナー部の前方において張設された前記ワイヤー等は、お互いに交叉しないように張設されるものである建物の耐震設備
- 請求項1〜請求項9記載の建物の耐震設備であって、ターンバックル等の前記ワイヤー等の張力を調節する装置が付属している前記ワイヤー等を張設するものである建物の耐震設備
- 請求項1〜請求項10記載の建物の耐震設備であって、前記建物は木造家屋である建物の耐震設備
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