JP2020097645A - 油性ボールペン用インキ組成物およびそれを用いた油性ボールペン - Google Patents
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「1.着色剤、アミド系溶剤、ポリアクリル酸樹脂を含んでなることを特徴とする油性ボールペン用インキ組成物。
2.前記アミド系溶剤が、β−アルコキシプロピオンアミドであることを特徴とする第1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
3.前記アミド系溶剤の含有量が、油性ボールペンインキ組成物中の全溶剤の含有量に対して、50%以上であることを特徴とする第1項または第2項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
4.前記油性ボールペン用インキ組成物に、界面活性剤を含んでなることを特徴とする第1項ないし第3項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
5.第1項ないし第4項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物の20℃における粘性指数nが、0.2〜0.6であることを特徴とする油性ボールペン用インキ組成物。
6.インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを有し、前記インキ収容筒内に第1項ないし第5項のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物を収容してなることを特徴とする油性ボールペン。 」とする。
本発明で用いるアミド系溶剤については、分子構造中に1つのカルボン酸アミド構造を含み、直鎖アルキル構造中にエーテル結合を有する化合物であり、後述するポリアクリル酸樹脂を、膨潤分散することで、擬塑性を付与することが可能とする働きをする溶剤であり、擬塑性を有することで、筆記時のインキ粘度を低くして、書き味を良好に保つことが可能であることが解った。特に、架橋型ポリアクリル酸樹脂を用いた場合は、アミド系溶剤によって、三次元網目構造を形成しやすく、より密な架橋構造を形成しやすいため、擬塑性を付与しやすく、効果的である。さらに、アミド系溶剤自体でも、従来よりも、潤滑性を向上しやすいため、より書き味を向上することができ、筆跡のカスレを抑制することが可能となる。また、金属材のボールペンチップに対して濡れづらいので、インキがチップ先端から這い上がなくなり、インキ残りが発生せず、筆跡の泣きボテを抑制することで、筆記性を向上することが可能である。
特に、ボールペンを用いた場合は、筆記時に強い剪断がかかりやすく、筆記時にボールの剪断などの衝撃により、一時的に擬塑性構造が解けることで、インキ粘度が低くなり、書き味を良好に保つことが可能であるため、ボールペンにおいて、好適に用いることが可能である。
また、筆跡の乾燥性を良好とするには、沸点300℃以下のアミド系溶剤を用いることが好ましく、より考慮すれば、沸点270℃以下のアミド系溶剤が好ましい。
本発明で用いるポリアクリル酸樹脂については、増粘剤として用いるものであり、アミド系溶剤と親和性があり、膨潤分散することで、擬塑性を有した、安定した増粘作用が得られる。さらに、書き味を考慮すれば、架橋型ポリアクリル酸樹脂を用いることが好ましい。これは、架橋型ポリアクリル酸樹脂自体で架橋構造を有しており、アミド系溶剤によって、立体的な三次元網目構造を形成しやすく、より密な架橋構造を形成しやすいため、擬塑性を付与しやすく、筆記時のインキ粘度が低くなりやすく、書き味を向上しやすいためである。特に、カルボキシビニルポリマーが好ましい。
本発明に用いる着色剤は、染料、顔料等、特に限定されるものではなく、適宜選択して使用することができる。染料、顔料を併用しても良い。
染料としては、油溶性染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料などや、それらの各種造塩タイプの染料等として、酸性染料と塩基性染料との造塩染料、有機酸と塩基性染料との造塩染料、酸性染料と有機アミンとの造塩染料などの種類が挙げられる。これらの染料は、単独又は2種以上組み合わせて使用してもかまわない。染料としては、アミド系溶剤との相性による経時安定性を考慮して、少なくとも造塩染料を用いることが好ましく、さらに造塩結合が安定していることで経時安定性を保てることを考慮すれば、塩基性染料と有機酸との造塩染料、酸性染料との塩基性染料との造塩染料、酸性染料と有機アミンとの造塩染料を用いることが好ましく、より考慮すれば、塩基性染料と有機酸との造塩染料が好ましい。さらに、造塩染料を構成する有機酸については、フェニルスルホン基を有する有機酸であれば、金属に吸着し易い潤滑膜を形成しやすく、潤滑性を向上し、書き味やボール座の摩耗抑制を良好とするため好ましく、具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸-ホルムアルデヒド縮合物、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸が挙げられ、インキ中で長期安定することを考慮すれば、有機酸として、アルキルベンゼンスルホン酸を用いることが好ましい。
本発明においては、潤滑性を向上することで書き味を向上しやすく、さらにチップ先端部を大気中に放置した状態で、該チップ先端部が乾燥したときの書き出し性能を向上することを考慮すれば、界面活性剤を用いることが好ましい。これは、界面活性剤によって形成される潤滑層によって、潤滑性を向上しやすくし、さらに界面活性剤によって形成される被膜を柔らかくし、書き出し性能を改良しやすくすることができるためである。界面活性剤としては、脂肪酸、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤などが挙げられる。その中でも、上記効果を考慮すれば、脂肪酸、シリコーン系界面活性剤、リン酸エステル系界面活性剤の中から1種以上を用いることが好ましい。
特に、ボールペンで用いる場合は、リン酸エステル系界面活性剤は、リン酸基を有することで金属類などのボールペンチップやボールに吸着しやすく、潤滑効果が得られやすいため、リン酸エステル系界面活性剤を用いることが好ましく、本発明で用いるアミド系溶剤、ポリアクリル酸樹脂を含んでなることで、金属材であるボールとボール座との間で極圧効果が得られやすいため、潤滑性をより向上しやすいため、好ましい。
尚、本発明で用いるHLB値は、グリフィン法、川上法などから求めることができる。特に、ノック式筆記具や回転繰り出し式筆記具等の出没式筆記具においては、キャップ式筆記具とは異なり、常時ペン先が外部に露出した状態であるため、筆記先端部の乾燥時の書き出し性能に影響しやすいため、上記HLB値とした界面活性剤を用いることはより好ましい。
なお、酸価については、試料1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数で表すものとする。
本発明では、ポリアクリル酸樹脂を有機アミンで中和安定させることで、十分に膨潤分散させて、安定した増粘作用を得たれやすいため、有機アミンを用いることが好ましい。さらに、リン酸エステル系界面活性剤を用いる場合でも、中和安定することで、インキ中で安定することで、書き味や書き出し性能を向上する効果が得られやすいため、好ましい。有機アミンとしては、オキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のエチレンオキシドを有するアミンや、ラウリルアミン、ステアリルアミン等のアルキルアミンや、ジステアリルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルオクチルアミン等のジメチルアルキルアミン等の脂肪族アミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン等が挙げられ、その中でも、ポリアクリル酸樹脂との安定性を考慮すれば、エチレンオキシドを有するアミンが好ましい。
また、本発明では、インキ粘度調整剤、インキ漏れ抑制を向上するために、樹脂を用いても良い。樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂、ケトン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、テルペン樹脂、アルキッド樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、エチレンオキサイド重合体などが挙げられる。
ここで、ポリビニルブチラール樹脂は、ポリビニルアルコール(PVA) をブチルアルデヒド(BA) と反応させたものであり、ブチラール基、アセチル基、水酸基を有した構造である。
また、ノック式筆記具や回転繰り出し式筆記具等の出没式筆記具においては、インキ漏れ抑制をより考慮する必要があるため、効果的である。
粘性指数nについては、書き味、泣きボテ、カスレなどの筆記性を考慮すれば、粘性指数n=0.2〜0.6とすることが好ましく、書き味、泣きボテ、カスレなどの筆記性のバランスを考慮すれば、粘性指数n=0.3〜0.55とすることが好ましく、より考慮すれば0.35〜0.50が好ましい。
また、ボールペンチップのボールの縦軸方向の移動量が、3〜25μmとするのが好ましい。これは、3μm未満であると、筆跡のカスレ、泣きボテ、点ムラなどの筆記性、書き味に影響しやすく、25μmを越えると、泣きボテ、インキ追従性能、インキ漏れ抑制に影響が出やすくなるためで、より考慮すれば、3〜20μmとするのが好ましく、より考慮すれば、前記縦軸方向の移動量を5〜16μmとするのが好ましい。
実施例1の油性ボールペン用インキ組成物は、ディスパー攪拌機を用いて、60℃にてアミド系溶剤、ポリアクリル酸を採取して攪拌し、その後、着色剤、リン酸エステル系界面活性剤、有機アミンを採取し、攪拌して溶解させた後、室温冷却して油性ボールペン用インキ組成物を得た。
ポリアクリル酸樹脂に対する、有機アミンの配合比(有機アミン/ポリアクリル酸樹脂)は、1.6倍であった。(ポリアクリル酸樹脂+界面活性)に対する、有機アミンの配合比(有機アミン/(ポリアクリル酸樹脂+界面活性剤))は、0.58倍であった。
具体的な配合量は下記の通りである。尚、ブルックフィールド株式会社製粘度計 ビスコメーターRVDVII+Pro CP−52スピンドルを使用して、実施例1のインキ粘度を測定したところ、20℃の環境下、剪断速度0.18sec−1、インキ粘度=48500mPa・s、20℃の環境下、剪断速度20sec−1でインキ粘度=2500mPa・sであった。また、粘性指数nは、0.37であった。
着色剤(染料、塩基性染料と有機酸との造塩染料) 10.0質量%
着色剤(染料、酸性染料とアミンとの造塩染料) 10.0質量%
アミド系溶剤(β−アルコキシプロピオンアミド類:3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド) 74.8質量%
架橋型ポリアクリル酸樹脂 1.25質量%
界面活性剤(リン酸エステル系界面活性剤) 2.0質量%
有機アミン(HLB値:15) 2.0質量%
表1に示すように、インキ成分を変更した以外は、実施例1と同様な手順で実施例2〜18の油性ボールペン用インキ組成物を得た。表に測定、評価結果を示す。
表に示すように、インキ成分を変更した以外は、実施例1と同様の手順で、比較例1〜4の油性ボールペン用インキ組成物を得た。表に測定、評価結果を示す。
実施例1〜18および比較例1〜4で作製した油性ボールペン用インキ組成物(0.27g)を、インキ収容筒(ポリプロピレン)に、ボール径がφ0.7mmのボールを回転自在に抱持したボールペン用チップ(チップ内にボールを直接チップ先端縁の内壁に押圧したコイルスプリングを有する、ボールの軸方向の移動量:8μm、ボール表面の算術平均粗さ(Ra):5nm)を装着した油性ボールペン用レフィルに充填し、油性ボールペンを作製した。筆記試験用紙として筆記用紙JIS P3201を用いて以下の試験および評価を行った。
非常に滑らかなもの ・・・◎
滑らかであるもの ・・・○
滑らかさが、やや劣るもの ・・・△
重いもの ・・・×
筆跡に泣き・ボテがない、または少ないもの ・・・◎
筆跡に泣き・ボテが若干あるが、実用上問題ないレベルのもの ・・・○
筆跡に泣き・ボテがあり、実用上に影響があるもの ・・・△
筆跡に泣き・ボテが多いもの ・・・×
筆跡にカスレ、点ムラがない、または少ないもの ・・・◎
筆跡にカスレ、点ムラが若干あるが、実用上問題ないレベルのもの ・・・○
筆跡にカスレ、点ムラがあり、実用上に影響があるもの ・・・△
筆跡にカスレ、点ムラが多いもの ・・・×
尚、ブルックフィールド株式会社製粘度計 ビスコメーターRVDVII+Pro CP−52スピンドルを使用して、実施例2、3、9のインキ粘度を測定し、粘性指数nを算出した。
実施例2では、20℃の環境下、剪断速度0.18sec−1、インキ粘度=43100mPa・s、20℃の環境下、剪断速度20sec−1でインキ粘度=2000mPa・s、粘性指数nは、0.35であった。
実施例3では、20℃の環境下、剪断速度0.18sec−1、インキ粘度=23100mPa・s、20℃の環境下、剪断速度20sec−1でインキ粘度=1500mPa・s、粘性指数nは、0.42であった。
実施例9では、20℃の環境下、剪断速度0.18sec−1、インキ粘度=45200mPa・s、20℃の環境下、剪断速度20sec−1でインキ粘度=2250mPa・s、粘性指数nは、0.36であった。
また、本実施例では便宜上、線材を切削によって形成したボールペンチップを例示しているが、パイプ材を押圧加工によって形成するボールペンチップであってもよい。
Claims (6)
- 着色剤、アミド系溶剤、ポリアクリル酸樹脂を含んでなることを特徴とする油性ボールペン用インキ組成物。
- 前記アミド系溶剤が、β−アルコキシプロピオンアミドであることを特徴とする請求項1に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
- 前記アミド系溶剤の含有量が、油性ボールペンインキ組成物中の全溶剤の含有量に対して、50%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
- 前記油性ボールペン用インキ組成物に、界面活性剤を含んでなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物。
- 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物の20℃における粘性指数nが、0.2〜0.6であることを特徴とする油性ボールペン用インキ組成物。
- インキ収容筒の先端部に、ボールを回転自在に抱持したボールペンチップを有し、前記インキ収容筒内に請求項1ないし5のいずれか1項に記載の油性ボールペン用インキ組成物を収容してなることを特徴とする油性ボールペン。
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