JP2020095775A - 通電加熱装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】金属体が目標温度を超えて加熱されることを抑制可能な通電加熱装置を提供する。【解決手段】金属パイプ材料への電力の供給が開始されてから、金属パイプ材料の温度が目標温度に達するよりも前に設定された切替タイミングT1までの間には、電流指令値Icをできるだけ高い所定電流値Idにする定電流制御を実行する。これにより、金属パイプ材料を短時間である程度まで加熱する。そして、切替タイミングT1の後には、電流指令値Icを低下させて金属パイプ材料が緩やかに温度上昇するように加熱することで、金属パイプ材料の温度が目標温度を超えないようにする。【選択図】図3
Description
本発明は、通電加熱装置に関する。
金属体に通電して当該金属体を目標温度まで加熱する通電加熱装置が知られている。例えば特許文献1には、金型間に金属パイプ材料を配置すると共に通電加熱装置により金属パイプ材料を通電加熱し、この加熱された金属パイプ材料内に高圧の気体を供給し膨張させることによって成形を行う成形装置が開示されている。
上述したような通電加熱装置では、一般的に、金属パイプ材料が目標温度に達するまで、当該金属パイプ材料における電流指令値を一定値とする定電流制御が実行される。しかしながら、温度変化の時定数が大きい金属パイプ材料を加熱する場合において定電流制御を実行すると、金属パイプ材料の温度が目標温度を超えてしまう(オーバーシュートしてしまう)おそれがある。また、金属パイプ材料の温度が上昇しすぎると、金属パイプ材料が、軟化して変形し、通電中に金型に接触する可能性がある。その結果、金型に電流が流れ、金型が高温となって変形してしまうおそれがある。
そこで、本発明は、金属パイプ材料を始めとした金属体が目標温度を超えて加熱されることを抑制可能な通電加熱装置を提供することを目的とする。
本発明に係る通電加熱装置は、金属体に通電して金属体を目標温度まで加熱する装置であって、金属体に電力を供給する電力供給部と、電力供給部を制御する制御部と、を備え、制御部は、金属体への電力の供給が開始されてから、金属体の温度が目標温度に達するよりも前に設定された切替タイミングまでの間には、金属体における電流指令値を予め設定された所定電流値とするように電力供給部を制御し、切替タイミングの後には、電流指令値を所定電流値から低下させるように電力供給部を制御する。
この通電加熱装置では、金属体への電力の供給が開始されてから、金属体の温度が目標温度に達するよりも前に設定された切替タイミングまでの間には、電流指令値をできるだけ高い所定電流値にする定電流制御を実行することにより、金属体を短時間である程度まで加熱する。そして、切替タイミングの後には、電流指令値を低下させて金属体が緩やかに温度上昇するように加熱することで、金属体の温度が目標温度を超えないようにする。よって、金属体が目標温度を超えて加熱されることを抑制することができる。
ここで、この通電加熱装置は、金属体における実電圧値を測定する電圧測定部を備え、制御部は、切替タイミングの後には、電流指令値を電圧測定部により測定された実電圧値に応じた値とするように電力供給部を制御してもよい。これによれば、金属体における実電圧値が金属体の温度に対応していることを利用して、実電圧値に基づき金属体の温度を推定しながら適切な電流指令値を設定することができる。よって、金属体における電流値を適切な値にすることができる。
また、制御部は、切替タイミングの後には、金属体における電圧指令値を予め設定された所定電圧値とするように電力供給部を制御してもよい。これによれば、電圧指令値を目標温度に対応する所定電圧値にする定電圧制御を実行することにより、金属体における電流値を目標温度に応じた適切な値にすることができる。
また、この通電加熱装置は、金属体における実電圧値を測定する電圧測定部を備え、切替タイミングは、電圧測定部により測定された実電圧値が所定電圧値よりも予め設定された余裕電圧値だけ低い電圧値となるタイミングに設定されていてもよい。これによれば、金属体における実電圧値が金属体の温度に対応していることを利用して、電力供給部を定電圧制御に切り替えるタイミングを好適に設定することができる。
また、この通電加熱装置は、金属体の実温度を測定する温度測定部を備え、切替タイミングは、温度測定部により測定された実温度が目標温度よりも予め設定された余裕温度だけ低い温度となるタイミングに設定されていてもよい。これによれば、金属体の実温度を直接測定することで、電流指令値を所定電流値から低下させ始めるタイミングを特に好適に設定することができる。
本発明によれば、金属体が目標温度を超えて加熱されることを抑制可能な通電加熱装置を提供することができる。
以下、本発明による通電加熱装置の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図において同一部分又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
〈成形装置の構成〉
図1は、通電加熱装置としての成形装置の概略構成図である。図1に示されるように、金属パイプを成形する成形装置10は、上型12及び下型11からなるブロー成形金型(金型)13と、上型12及び下型11の少なくとも一方を移動させる駆動機構80と、上型12と下型11との間に配置される金属パイプ材料14を保持するパイプ保持機構30と、パイプ保持機構30で保持されている金属パイプ材料14に通電して加熱する加熱機構50と、上型12及び下型11の間に保持され加熱された金属パイプ材料14内に高圧ガス(気体)を供給するための気体供給部60と、パイプ保持機構30で保持された金属パイプ材料14内に気体供給部60からの気体を供給するための一対の気体供給機構40,40と、ブロー成形金型13を強制的に水冷する水循環機構72とを備えると共に、上記駆動機構80の駆動、上記パイプ保持機構30の駆動、上記加熱機構50の駆動、及び上記気体供給部60の気体供給をそれぞれ制御する制御部70と、を備えて構成されている。
図1は、通電加熱装置としての成形装置の概略構成図である。図1に示されるように、金属パイプを成形する成形装置10は、上型12及び下型11からなるブロー成形金型(金型)13と、上型12及び下型11の少なくとも一方を移動させる駆動機構80と、上型12と下型11との間に配置される金属パイプ材料14を保持するパイプ保持機構30と、パイプ保持機構30で保持されている金属パイプ材料14に通電して加熱する加熱機構50と、上型12及び下型11の間に保持され加熱された金属パイプ材料14内に高圧ガス(気体)を供給するための気体供給部60と、パイプ保持機構30で保持された金属パイプ材料14内に気体供給部60からの気体を供給するための一対の気体供給機構40,40と、ブロー成形金型13を強制的に水冷する水循環機構72とを備えると共に、上記駆動機構80の駆動、上記パイプ保持機構30の駆動、上記加熱機構50の駆動、及び上記気体供給部60の気体供給をそれぞれ制御する制御部70と、を備えて構成されている。
ブロー成形金型13の一方である下型11は、基台15に固定されている。下型11は、大きな鋼鉄製ブロックで構成され、その上面に例えば矩形状のキャビティ(凹部)16を備える。下型11には冷却水通路19が形成され、略中央に下から差し込まれた熱電対(温度測定部)21を備えている。この熱電対21はスプリング22により上下移動自在に支持されている。熱電対21は、パイプ保持機構30で保持された金属パイプ材料14の側面に接触し、金属パイプ材料14の実温度を測定する。熱電対21は、図1に示す(A)により、測定した金属パイプ材料14の実温度に関する温度情報を制御部70に出力する。
更に、下型11の左右端(図1における左右端)近傍にはスペース11aが設けられており、当該スペース11a内には、パイプ保持機構30の可動部である後述する電極17,18(下側電極)等が、上下に進退動可能に配置されている。そして、下側電極17,18上に金属パイプ材料14が載置されることで、下側電極17,18は、上型12と下型11との間に配置される金属パイプ材料14に接触する。これにより、下側電極17,18は金属パイプ材料14に電気的に接続される。
下型11と下側電極17との間及び下側電極17の下部、並びに下型11と下側電極18との間及び下側電極18の下部には、通電を防ぐための絶縁材91がそれぞれ設けられている。それぞれの絶縁材91は、パイプ保持機構30を構成するアクチュエータ(不図示)の可動部である進退ロッド95に固定されている。このアクチュエータは、下側電極17,18等を上下動させるためのものであり、アクチュエータの固定部は、下型11と共に基台15側に保持されている。
ブロー成形金型13の他方である上型12は、駆動機構80を構成する後述のスライド81に固定されている。上型12は、大きな鋼鉄製ブロックで構成され、内部に冷却水通路25が形成されると共に、その下面に例えば矩形状のキャビティ(凹部)24を備える。このキャビティ24は、下型11のキャビティ16に対向する位置に設けられる。
上型12の左右端(図1における左右端)近傍には、下型11と同様に、スペース12aが設けられており、当該スペース12a内には、パイプ保持機構30の可動部である後述する電極17,18(上側電極)等が、上下に進退動可能に配置されている。そして、下側電極17,18上に金属パイプ材料14が載置された状態において、上側電極17,18は、下方に移動することで、上型12と下型11との間に配置された金属パイプ材料14に接触する。これにより、上側電極17,18は金属パイプ材料14に電気的に接続される。
上型12と上側電極17との間及び上側電極17の上部、並びに上型12と上側電極18との間及び上側電極18の上部には、通電を防ぐための絶縁材101がそれぞれ設けられている。それぞれの絶縁材101は、パイプ保持機構30を構成するアクチュエータの可動部である進退ロッド96に固定されている。このアクチュエータは、上側電極17,18等を上下動させるためのものであり、アクチュエータの固定部は、上型12と共に駆動機構80のスライド81側に保持されている。
パイプ保持機構30の右側部分において、電極18,18が互いに対向する面のそれぞれには、金属パイプ材料14の外周面に対応した半円弧状の凹溝18aが形成されていて(図2参照)、当該凹溝18aの部分に丁度金属パイプ材料14が嵌り込むように載置可能とされている。パイプ保持機構30の右側部分において、絶縁材91,101が互いに対向する露出面には、上記凹溝18aと同様に、金属パイプ材料14の外周面に対応した半円弧状の凹溝が形成されている。また、電極18の正面(金型の外側方向の面)には、凹溝18aに向って周囲がテーパー状に傾斜して窪んだテーパー凹面18bが形成されている。よって、パイプ保持機構30の右側部分で金属パイプ材料14を上下方向から挟持すると、丁度金属パイプ材料14の右側端部の外周を全周に渡って密着するように取り囲むことができるように構成されている。
パイプ保持機構30の左側部分において、電極17,17が互いに対向する面のそれぞれには、金属パイプ材料14の外周面に対応した半円弧状の凹溝17aが形成されていて(図2参照)、当該凹溝17aの部分に丁度金属パイプ材料14が嵌り込むように載置可能とされている。パイプ保持機構30の左側部分において、絶縁材91,101が互いに対向する露出面には、上記凹溝18aと同様に、金属パイプ材料14の外周面に対応した半円弧状の凹溝が形成されている。また、電極17の正面(金型の外側方向の面)には、凹溝17aに向って周囲がテーパー状に傾斜して窪んだテーパー凹面17bが形成されている。よって、パイプ保持機構30の左側部分で金属パイプ材料14を上下方向から挟持すると、丁度金属パイプ材料14の左側端部の外周を全周に渡って密着するように取り囲むことができるように構成されている。
図1に示されるように、駆動機構80は、上型12及び下型11同士が合わさるように上型12を移動させるスライド81と、上記スライド81を移動させるための駆動力を発生するシャフト82と、該シャフト82で発生した駆動力をスライド81に伝達するためのコネクティングロッド83とを備えている。シャフト82は、スライド81上方にて左右方向に延在していると共に回転自在に支持されており、その軸心から離間した位置にて左右端から突出して左右方向に延在する偏心クランク82aを有している。この偏心クランク82aと、スライド81の上部に設けられると共に左右方向に延在している回転軸81aとは、コネクティングロッド83によって連結されている。駆動機構80では、制御部70によってシャフト82の回転を制御することにより偏心クランク82aの上下方向の高さを変化させ、この偏心クランク82aの位置変化をコネクティングロッド83を介してスライド81に伝達することにより、スライド81の上下動を制御できる。ここで、偏心クランク82aの位置変化をスライド81に伝達する際に発生するコネクティングロッド83の揺動(回転運動)は、回転軸81aによって吸収される。なお、シャフト82は、例えば制御部70によって制御されるモータ等の駆動に応じて回転又は停止する。
加熱機構50は、金属パイプ材料14に通電して金属パイプ材料14を目標温度まで加熱するための機構である。加熱機構50は、電力供給部55と、電力供給部55と電極17,18とを電気的に接続するブスバー52と、電極17,18間の電圧を測定する電圧測定部としての電圧計53と、を備える。電力供給部55は、直流電源及びスイッチを含み、電極17,18が金属パイプ材料14に電気的に接続された状態において、ブスバー52、電極17,18を介して金属パイプ材料14に通電可能とされている。ブスバー52は、ここでは、下側電極17,18に接続されており、電圧計53は、ブスバー52の下側電極17寄りの位置に接続されると共に、ブスバー52の下側電極18寄りの位置に接続されている。この電圧計53により測定されている電圧値は、図1に示す(B)により制御部70に入力される。
この加熱機構50では、電力供給部55から出力された直流電流は、ブスバー52によって伝送され、電極17に入力される。そして、直流電流は、金属パイプ材料14を通過して、電極18に入力される。そして、直流電流は、ブスバー52によって伝送されて電力供給部55に入力される。
一対の気体供給機構40の各々は、シリンダユニット42と、シリンダユニット42の作動に合わせて進退動するシリンダロッド43と、シリンダロッド43におけるパイプ保持機構30側の先端に連結されたシール部材44とを有する。シリンダユニット42はブロック41上に載置固定されている。シール部材44の先端には先細となるようにテーパー面45が形成されており、電極17,18のテーパー凹面17b,18bに合わさる形状に構成されている(図2参照)。シール部材44には、シリンダユニット42側から先端に向かって延在し、詳しくは図2(a),(b)に示されるように、気体供給部60から供給された高圧ガスが流れるガス通路46が設けられている。
気体供給部60は、ガス源61と、このガス源61によって供給されたガスを溜めるアキュムレータ62と、このアキュムレータ62から気体供給機構40のシリンダユニット42まで延びている第1チューブ63と、この第1チューブ63に介設されている圧力制御弁64及び切替弁65と、アキュムレータ62からシール部材44内に形成されたガス通路46まで延びている第2チューブ67と、この第2チューブ67に介設されている圧力制御弁68及び逆止弁69とからなる。圧力制御弁64は、シール部材44の金属パイプ材料14に対する押力に適応した作動圧力のガスをシリンダユニット42に供給する役割を果たす。逆止弁69は、第2チューブ67内で高圧ガスが逆流することを防止する役割を果たす。第2チューブ67に介設されている圧力制御弁68は、制御部70の制御により、金属パイプ材料14を膨張させるための作動圧力を有するガスを、シール部材44のガス通路46に供給する役割を果たす。
制御部70は、気体供給部60の圧力制御弁68を制御することにより、金属パイプ材料14内に所望の作動圧力のガスを供給することができる。また、制御部70は、図1に示す(A)から情報が伝達されることによって、熱電対21から温度情報を取得し、駆動機構80及び電力供給部55等を制御する。
水循環機構72は、水を溜める水槽73と、この水槽73に溜まっている水を汲み上げ、加圧して下型11の冷却水通路19及び上型12の冷却水通路25へ送る水ポンプ74と、配管75とからなる。省略したが、水温を下げるクーリングタワーや水を浄化する濾過器を配管75に介在させることは差し支えない。
〈成形装置を用いた金属パイプの成形方法〉
次に、成形装置10を用いた金属パイプの成形方法について説明する。最初に、焼入れ可能な鋼種の円筒状の金属パイプ材料14を準備する。
次に、成形装置10を用いた金属パイプの成形方法について説明する。最初に、焼入れ可能な鋼種の円筒状の金属パイプ材料14を準備する。
そして、金属パイプ材料14を、例えばロボットアーム等を用いて、下型11側に備わる電極17,18上に載置(投入)する。電極17,18には凹溝17a,18aが形成されているので、当該凹溝17a,18aによって金属パイプ材料14が位置決めされる。
次に、制御部70は、駆動機構80及びパイプ保持機構30を制御することによって、当該パイプ保持機構30に金属パイプ材料14を保持させる。具体的には、駆動機構80の駆動によりスライド81側に保持されている上型12及び上側電極17,18等が下型11側に移動すると共に、パイプ保持機構30に含まれる上側電極17,18等及び下側電極17,18等を進退動可能としているアクチュエータを作動させることによって、金属パイプ材料14の両方の端部付近を上下からパイプ保持機構30により挟持する。この挟持は電極17,18に形成される凹溝17a,18a、及び絶縁材91,101に形成される凹溝の存在によって、金属パイプ材料14の両端部付近の全周に渡って挟持されることとなる。
なお、このとき、図2(a)に示されるように、金属パイプ材料14の電極18側の端部は、金属パイプ材料14の延在方向において、電極18の凹溝18aとテーパー凹面18bとの境界よりもシール部材44側に突出している。同様に、金属パイプ材料14の電極17側の端部は、金属パイプ材料14の延在方向において、電極17の凹溝17aとテーパー凹面17bとの境界よりもシール部材44側に突出している。また、上側電極17,18の下面と下側電極17,18の上面とは、それぞれ互いに接触している。ただし、金属パイプ材料14の両端部全周に渡って密着する構成に限られず、金属パイプ材料14の周方向における一部に電極17,18が当接するような構成であってもよい。
続いて、制御部70は、加熱機構50を制御することによって、金属パイプ材料14を加熱する。具体的には、制御部70は、加熱機構50の電力供給部55を制御し電力を供給する。すると、ブスバー52を介して下側電極17,18に伝達される電力が、金属パイプ材料14を挟持している上側電極17,18及び金属パイプ材料14に供給され、金属パイプ材料14に存在する抵抗により、金属パイプ材料14自体がジュール熱によって発熱する。
ここで、加熱機構50による金属パイプ材料14の加熱方法について詳細に説明する。図3は、金属パイプ材料を通電加熱する場合における電流指令値及び実電圧値の時間変化の一例を示すグラフである。図3では、横軸に時間が示されており、縦軸に金属パイプ材料14における電流指令値Ic、実電圧値Vr、及び目標電圧値(所定電圧値)Vtが示されている。一般的に、金属パイプ材料14における実電圧値Vrは金属パイプ材料14の温度に対応し、従って、目標電圧値Vtは金属パイプ材料14の目標温度に対応する。
この加熱方法は、以下の第1ステップ及び第2ステップを含んでいる。第1ステップにおいて、制御部70は、電力供給部55による金属パイプ材料14への電力の供給の開始時T0から、金属パイプ材料14の温度が目標温度に達するよりも前に設定された切替タイミングT1までの間には、金属パイプ材料14における電流指令値Icを予め設定された所定電流値Idとするように電力供給部55を制御する(定電流制御)。ここでは、所定電流値Idは、電力供給部55の定格最大電流値Imaxとされている。これにより、金属パイプ材料14の温度が加熱され始める。切替タイミングT1は、電圧計53により測定された実電圧値Vrが目標電圧値Vtよりも予め設定された余裕電圧値ΔVだけ低い電圧値に達するタイミングである。余裕電圧値ΔVは、例えば目標電圧値Vtの10%以上20%以下の範囲に設定されてもよい。
その後、第2ステップにおいて、制御部70は、切替タイミングT1の後には、電流指令値Icを所定電流値Idから低下させるように電力供給部55を制御する。より具体的には、制御部70は、切替タイミングT1の後には、電流指令値Icを電圧計53により測定された実電圧値Vrに応じた電流値とするように電力供給部55を制御する。ここで、実電圧値Vrに応じた好適な電流指令値Icについては、例えば電流電圧マップとして制御部70が予め記憶していてもよく、所定の計算式に基づいて制御部70が都度算出してもよい。これにより、金属パイプ材料14が緩やかに温度上昇するように加熱される。なお、制御部70は、電力供給部55の当該制御を、少なくとも切替タイミングT1の後に実電圧値Vrが目標電圧値Vtに達する加熱完了タイミングT2まで継続してよい。
続いて、制御部70による駆動機構80の制御によって、加熱後の金属パイプ材料14に対してブロー成形金型13を閉じる。これにより、下型11のキャビティ16と上型12のキャビティ24とが組み合わされ、下型11と上型12との間のキャビティ部内に金属パイプ材料14が配置密閉される。
その後、気体供給機構40のシリンダユニット42を作動させることによってシール部材44を前進させて金属パイプ材料14の両端をシールする。このとき、図2(b)に示されるように、金属パイプ材料14の電極18側の端部にシール部材44が押し付けられることによって、電極18の凹溝18aとテーパー凹面18bとの境界よりもシール部材44側に突出している部分が、テーパー凹面18bに沿うように漏斗状に変形する。同様に、金属パイプ材料14の電極17側の端部にシール部材44が押し付けられることによって、電極17の凹溝17aとテーパー凹面17bとの境界よりもシール部材44側に突出している部分が、テーパー凹面17bに沿うように漏斗状に変形する。シール完了後、高圧ガスを金属パイプ材料14内へ吹き込んで、加熱により軟化した金属パイプ材料14をキャビティ部の形状に沿うように成形する。
金属パイプ材料14は高温(950℃前後)に加熱されて軟化しているので、金属パイプ材料14内に供給されたガスは、熱膨張する。このため、例えば供給するガスを圧縮空気とし、950℃の金属パイプ材料14を熱膨張した圧縮空気によって容易に膨張させることができる。
ブロー成形されて膨らんだ金属パイプ材料14の外周面が下型11のキャビティ16に接触して急冷されると同時に、上型12のキャビティ24に接触して急冷(上型12と下型11は熱容量が大きく且つ低温に管理されているため、金属パイプ材料14が接触すればパイプ表面の熱が一気に金型側へと奪われる。)されて焼き入れが行われる。このような冷却法は、金型接触冷却又は金型冷却と呼ばれる。急冷された直後はオーステナイトがマルテンサイトに変態する(以下、オーステナイトがマルテンサイトに変態することをマルテンサイト変態とする)。冷却の後半は冷却速度が小さくなったので、復熱によりマルテンサイトが別の組織(トルースタイト、ソルバイト等)に変態する。従って、別途焼戻し処理を行う必要がない。また、本実施形態においては、金型冷却に代えて、あるいは金型冷却に加えて、冷却媒体を例えばキャビティ24内に供給することによって冷却が行われてもよい。例えば、マルテンサイト変態が始まる温度までは金型(上型12及び下型11)に金属パイプ材料14を接触させて冷却を行い、その後型開きすると共に冷却媒体(冷却用気体)を金属パイプ材料14へ吹き付けることにより、マルテンサイト変態を発生させてもよい。
上述のように金属パイプ材料14に対してブロー成形を行った後に冷却を行い、型開きを行うことにより、例えば略矩形筒状の本体部を有する金属パイプを得る。
以上説明したように、通電加熱装置としての成形装置10では、金属パイプ材料14への電力の供給が開始されてから、金属パイプ材料14の温度が目標温度に達するよりも前に設定された切替タイミングT1までの間には、電流指令値Icを定格最大電流値Imaxにする定電流制御を実行することにより、金属パイプ材料14を短時間である程度まで加熱する。そして、切替タイミングT1の後には、電流指令値Icを低下させて金属パイプ材料14が緩やかに温度上昇するように加熱することで、金属パイプ材料14の温度が目標温度を超えないようにする。よって、金属パイプ材料14が目標温度を超えて加熱されることを抑制することができる。
ここで、通電加熱装置としての成形装置10は、金属パイプ材料14における実電圧値Vrを測定する電圧計53を備え、制御部70は、切替タイミングT1の後には、電流指令値Icを電圧計53により測定された実電圧値Vrに応じた値とするように電力供給部55を制御する。これにより、金属パイプ材料14における実電圧値Vrが金属パイプ材料14の温度に対応していることを利用して、実電圧値Vrに基づき金属パイプ材料14の温度を推定しながら適切な電流指令値Icを設定することができる。よって、金属パイプ材料14における電流値を適切な値にすることができる。
また、切替タイミングT1は、電圧計53により測定された実電圧値Vrが目標電圧値Vtよりも予め設定された余裕電圧値ΔVだけ低い電圧値となるタイミングに設定されている。これにより、金属パイプ材料14における実電圧値Vrが金属パイプ材料14の温度に対応していることを利用して、切替タイミングT1を好適に設定することができる。
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、第1ステップにおいて、所定電流値Idは、電力供給部55の定格最大電流値Imaxに限定されず、例えば定格最大電流値Imaxよりも低い電流値であってもよい。
また、第2ステップにおいて、制御部70は、切替タイミングT1の後には、金属パイプ材料14における電圧指令値を予め設定された目標電圧値Vtとするように電力供給部55を制御してもよい。これによれば、切替タイミングT1において電力供給部55の制御を電流制御から電圧制御に切り替えると共に、電圧指令値を目標温度に対応する目標電圧値Vtにする定電圧制御を実行することで、金属パイプ材料14における電流値を目標温度に応じた適切な値にすることができる。
この場合において、切替タイミングT1は、電圧計53により測定された実電圧値Vrが目標電圧値Vtよりも予め設定された余裕電圧値ΔVだけ低い電圧値となるタイミングに設定されていてもよい。余裕電圧値ΔVは、例えば目標電圧値Vtの10%以上20%以下の範囲に設定されてもよい。これによれば、金属パイプ材料14における実電圧値Vrが金属パイプ材料14の温度に対応していることを利用して、電力供給部55を定電圧制御に切り替えるタイミングを好適に設定することができる。
なお、金属パイプ材料14における実電圧値Vrが金属パイプ材料14の温度に対応していることから、金属パイプ材料14を通電加熱する場合における電流指令値Ic及び実温度の時間変化を示すグラフは、図3のグラフと同様となる。すなわち、図3のグラフにおいて、実温度は、実電圧値Vrと同様の軌跡で変化して、目標電圧値Vtに対応する目標温度に達する。ここで、通電加熱装置としての成形装置10では、切替タイミングT1は、熱電対21により測定された金属パイプ材料14の実温度が目標温度よりも予め設定された余裕温度だけ低い温度となるタイミングに設定されていてもよい。余裕温度は、例えば目標温度の10%以上20%以下の範囲に設定されてもよい。これによれば、金属パイプ材料14の実温度を直接測定することで、電流指令値Icを所定電流値Idから低下させ始めるタイミングを特に好適に設定することができる。
また、金属パイプ材料14の実温度を測定するための温度測定部としては、熱電対21に限定されず、任意の構成を採用することができる。例えば、物体から放射される赤外線を分析して熱分布を得るサーモグラフィーカメラを用いてもよい。
また、上記実施形態においては、成形対象を金属パイプ材料14としているが、金属パイプ材料14に限定されるものではなく、金属棒状体や金属板状体等に対しても適用でき、要は、ある程度延びる金属体に対して適用できる。棒状や板状の金属体を用いた場合には、金属体の端面に電極を当接させる構成も挙げられる。また、成形装置も、気体供給を行わずに通電加熱を行う鍛造装置等とすることもできる。
10…成形装置(通電加熱装置)、14…金属パイプ材料、21…熱電対(温度測定部)、53…電圧計(電圧測定部)、55…電力供給部、70…制御部。
Claims (5)
- 金属体に通電して前記金属体を目標温度まで加熱する通電加熱装置であって、
前記金属体に電力を供給する電力供給部と、
前記電力供給部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記金属体への電力の供給が開始されてから、前記金属体の温度が前記目標温度に達するよりも前に設定された切替タイミングまでの間には、前記金属体における電流指令値を予め設定された所定電流値とするように前記電力供給部を制御し、
前記切替タイミングの後には、前記電流指令値を前記所定電流値から低下させるように前記電力供給部を制御する、通電加熱装置。 - 前記金属体における実電圧値を測定する電圧測定部を備え、
前記制御部は、前記切替タイミングの後には、前記電流指令値を前記電圧測定部により測定された前記実電圧値に応じた値とするように前記電力供給部を制御する、請求項1に記載の通電加熱装置。 - 前記制御部は、前記切替タイミングの後には、前記金属体における電圧指令値を予め設定された所定電圧値とするように前記電力供給部を制御する、請求項1に記載の通電加熱装置。
- 前記金属体における実電圧値を測定する電圧測定部を備え、
前記切替タイミングは、前記電圧測定部により測定された前記実電圧値が前記所定電圧値よりも予め設定された余裕電圧値だけ低い電圧値となるタイミングに設定されている、請求項3に記載の通電加熱装置。 - 前記金属体の実温度を測定する温度測定部を備え、
前記切替タイミングは、前記温度測定部により測定された前記実温度が前記目標温度よりも予め設定された余裕温度だけ低い温度となるタイミングに設定されている、請求項1に記載の通電加熱装置。
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