JP2020094300A - 熱溶融性フッ素樹脂混合繊維及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】不意の糸切れのような物性面での欠点を解消することができる熱溶融性フッ素樹脂混合繊維及びその製造方法を提供する。【解決手段】熱溶融性フッ素樹脂と熱可塑性液晶ポリマーとを含む熱溶融性フッ素樹脂混合繊維であって、加熱温度と繊維長手方向の寸法変化率との相関を示す関係曲線に関して、寸法変化率の加熱温度による微分値が最小となる温度が、250℃を超えて前記熱溶融性フッ素樹脂の融点以下の範囲に存在し、前記微分値は、加熱温度の変化量dTに対する繊維長手方向の寸法変化率の変化量dSの比(dS/dT)により算出される値であることを特徴とする熱溶融性フッ素樹脂混合繊維。【選択図】図4
Description
本発明は、熱溶融性フッ素樹脂混合繊維及びその製造方法に関する。
従来から、熱可塑性液晶ポリマーが熱可塑性のフッ素樹脂の中で繊維状構造を形成している熱溶融性フッ素樹脂混合繊維が知られている(例えば、特許文献1)。このような熱可塑性液晶ポリマーを含む熱溶融性フッ素樹脂混合繊維は、ガラス繊維や炭素繊維による強化樹脂に比べ、液晶ポリマーによる溶融粘度の低下、全成形工程の簡略化などの利点があり、様々な分野、例えば、産業用ロボット等に使用されるケーブルや、光ファイバー用補強材、防護材、ロープ、車用資材等の分野での利用が期待されている。
しかしながら、従来から知られている熱溶融性フッ素樹脂混合繊維は、繊維としてハンドリングする際に、不意の糸切れが発生しやすいという強力面での不安があり、繊維を扱う工程上、あるいは製品の使用において問題となる場合があった。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、不意の糸切れのような物性面での欠点を解消することができる熱溶融性フッ素樹脂混合繊維、及び、その製造方法の提供を目的とする。
本発明の上記目的は、熱溶融性フッ素樹脂と熱可塑性液晶ポリマーとを含む熱溶融性フッ素樹脂混合繊維であって、加熱温度と繊維長手方向の寸法変化率との相関を示す関係曲線に関して、寸法変化率の加熱温度による微分値が最小となる温度が、250℃を超えて前記熱溶融性フッ素樹脂の融点以下の範囲に存在し、前記微分値は、加熱温度の変化量dTに対する繊維長手方向の寸法変化率の変化量dSの比(dS/dT)により算出される値であることを特徴とする熱溶融性フッ素樹脂混合繊維により達成される。
また、本発明の上記目的は、熱溶融性フッ素樹脂と熱可塑性液晶ポリマーとを含む熱溶融性フッ素樹脂混合繊維であって、加熱温度と繊維長手方向の寸法変化率との相関を示す関係曲線に関して、寸法変化率の加熱温度による微分値が−0.0015以下となる温度が、200℃を超えて前記熱溶融性フッ素樹脂の融点以下の範囲に存在し、前記微分値は、加熱温度の変化量dTに対する繊維長手方向の寸法変化率の変化量dSの比(dS/dT)により算出される値であることを特徴とする熱溶融性フッ素樹脂混合繊維により達成される。
上記熱溶融性フッ素樹脂混合繊維において、前記熱可塑性液晶ポリマーは、前記熱溶融性フッ素樹脂マトリックス中に繊維状で分散していることが好ましい。
また、繊維最表面は前記熱溶融性フッ素樹脂からなることが好ましい。
また、前記熱可塑性液晶ポリマーの含有量が1重量%以上5重量%未満であることが好ましい。
また、本発明の上記目的は、熱溶融性フッ素樹脂と熱可塑性液晶ポリマーとを含む熱溶融性フッ素樹脂混合繊維の製造方法であって、前記熱溶融性フッ素樹脂及び前記熱可塑性液晶ポリマーを主成分とする繊維材料を溶融押出する押出ステップと、押し出された溶融押出繊維を延伸する延伸ステップと、前記溶融押出繊維の延伸点を、250℃を超え前記熱溶融性フッ素樹脂の融点以下の範囲に調整する温度調整ステップとを備えることを特徴とする熱溶融性フッ素樹脂混合繊維の製造方法により達成される。
本発明によれば、不意の糸切れのような物性面での欠点を解消することができる熱溶融性フッ素樹脂混合繊維及びその製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施形態に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維について説明する。この熱溶融性フッ素樹脂混合繊維は、熱溶融性フッ素樹脂と熱可塑性液晶ポリマーとを含む繊維である。この熱溶融性フッ素樹脂混合繊維に含まれる熱可塑性液晶ポリマーは、熱溶融性フッ素樹脂マトリックス中に繊維状で分散するように構成されることが好ましい。
この本発明に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維は、例えば、次のような用途に用いることができる。すなわち、屈曲ケーブル、フラットケーブル等といった用途として用いることができる。特に、導体(銅線)補強効果及び誘電率低減効果に優れたロボットケーブル、耐屈曲性に優れた耐熱フラットケーブル用途等に好適に用いることができる。
熱溶融性フッ素樹脂としては、融点以上の温度で流動性を有する溶融成形性可能なすでに広く知られているものであって、不飽和フッ素化炭化水素、不飽和フッ素化塩素化炭化水素、エーテル基含有不飽和フッ素化炭化水素などの共重合体、あるいはこれら不飽和フッ素化炭化水素類とエチレンとの共重合体などである。例えば、テトラフルオロエチレンと、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ビリデンフルオライド及びビニルフルオライドから選ばれる少なくとも1種のモノマーとの共重合体、あるいはテトラフルオロエチレンとエチレンとの共重合体などを挙げることができる。
より具体的には、テトラフルオロエチレン・パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(以下、PFAという)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(EPE)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)などのうち、融点が250℃を超えるものを挙げることができる。これらのうち、融点が260℃を超えるものが好ましく、その中でもPFA、FEP、EPEの群から選ばれる熱溶融性フッ素樹脂がより好ましく、融点が280℃を超えるPFA、EPEが特に好ましい。ここでいう融点は、ASTM D4591に従い測定することができる。
また、本発明に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維においては、熱溶融性フッ素樹脂として、上述の成形用熱溶融性フッ素樹脂を単独で使用する他、当該成形用熱溶融性フッ素樹脂に、相溶化剤として使用される官能基を含有する熱溶融性フッ素樹脂を混合させた熱溶融性フッ素樹脂を使用してもよい。相溶化剤として使用される熱溶融性フッ素樹脂としては、例えば、カルボン酸基又はその誘導基、水酸基、ニトリル基、シアナト基、カルバモイルオキシ基、ホスホノオキシ基、ハロホスホノオキシ基、スルホン酸基又はその誘導基及びスルホハライド基から選ばれる官能基を含有する熱溶融性フッ素樹脂を使用することができる。これら相溶化剤は、熱溶融性フッ素樹脂の性質を大きく損なわない範囲で前記官能基を含有しているものであって、前記例示のような熱溶融性フッ素樹脂を合成しておき、後からこれら官能基を付加あるいは置換することにより導入するか、あるいは前記例示の熱溶融性フッ素樹脂の合成時にこれら官能基を持ったモノマーを共重合させることによって得ることができる。
前記官能基の具体例として、−COOH、−CH2COOH、−COOCH3、−CONH2、−OH、−CH2OH、−CN、−CH2O(CO)NH2、−CH2OCN、−CH2OP(O)(OH)2、−CH2OP(O)Cl2、−SO2Fなどの基を例示することができる。これらの官能基は、これら官能基を有するフッ素含有モノマーをフッ素樹脂製造時に共重合することにより相溶化剤中に導入するのが好ましい。
このような官能基を有する共重合に適したフッ素含有モノマーの例としては、例えば、式 CF2=CF[OCF2CF(CF3)]m−O−(CF2)n−X[式中、mは、0〜3、nは、1〜4、Xは、−COOH、−CH2COOH、−COOCH3、−CH2OH、−CN、−CH2O(CO)NH2、−CH2OCN、−CH2OP(O)(OH)2、−CH2OP(O)Cl2、−SO2Fなど]で示されるフッ素化ビニルエーテル化合物である。このようなフッ素化ビニルエーテルの最も好ましいものは、式 CF2=CF−O−CF2CF2−SO2F、 あるいは、式 CF2=CF[OCF2CF(CF3)]O(CF2)2−Y(式中、Yは、−SO2F、−CN、−COOH、−COOCH3など)、あるいは、式 CF2=CF[OCF2CF(CF3)]O(CF2)2−CH2−Z(式中、Zは、−COOH、−OH、−OCN、−OP(O)(OH)2、−OP(O)Cl2、O(CO)NH2など)などで表されるものである。
これら官能基含有モノマーは、相溶化剤中、例えば0.5〜10重量%、とくに1〜5重量%のような量で共重合されていることが好ましい。相溶化剤における官能基含有モノマーの含有割合が少なすぎると相溶化剤としての効果が少なく、一方その含有割合が多くなりすぎると相溶化剤同士の強い相互作用で架橋反応に類似した反応が起こる可能性があり、紡糸原料組成物の溶融粘度が急に増加するため、溶融紡糸が困難になる場合がある。
相溶化剤の粘度あるいは分子量にはとくに制限はないが、これら相溶化剤を配合する熱溶融性フッ素樹脂の粘度あるいは分子量を越えない範囲であって、好ましくは同じレベルのものがよい。
本発明に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維に含まれる熱可塑性液晶ポリマーは、サーモトロピック液晶を形成する熱可塑性樹脂であり、溶融成形温度での耐熱性に問題がない限り液晶ポリマーの融点にはとくに制限はない。しかし、成形性や熱安定性の点から、成形用熱溶融性フッ素樹脂の融点より20℃以上高いものを用いるのが好ましい。このような液晶ポリマーとしては、ポリエステル、ポリエステルアミド、ポリエステルイミド、ポリエステルウレタンなどを挙げることができ、とくにポリエステルが最も好ましい。液晶ポリエステルの代表的なものは、全芳香族ポリエステルであり、すでに非常に多くのものが知られている。例えば、芳香族ジカルボン酸と芳香族ジヒドロキシ化合物及び又は芳香族ヒドロキシカルボン酸などから誘導されるものであって、その一部が脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジヒドロキシ化合物、脂肪族ヒドロキシカルボン酸などから誘導される重合単位で置換されたものであってもよい。より具体的にはテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、ハイドロキノン、レゾルシン、2,6ージヒドロキシナフタリン、ビスフェノールA、ジヒドロキシジフェニルのような芳香族ジヒドロキシ化合物、パラヒドロキシ安息香酸のような芳香族ヒドロキシカルボン酸などから誘導される重合単位を有するものを例示することができる。好ましい熱可塑性液晶ポリマーとしては、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸単位とパラヒドロキシ安息香酸単位とを主成分として含有する化1に示すポリエステル樹脂がある。
ができ繊維の成形加工適性の向上、機械的物性の向上、または耐熱性の向上の観点から好ましいといえる。
また、他の好ましい熱可塑性液晶ポリマーとしては、エチレンテレフタレート単位とパラヒドロキシ安息香酸単位とを主成分として含有する化2に示すポリエステル樹脂がある。
また、本発明においては、熱溶融性フッ素樹脂と熱可塑性液晶ポリマーから繊維状の液晶ポリマーを含む熱溶融性フッ素樹脂混合繊維が形成する場合、前記樹脂原料中における熱可塑性液晶ポリマーの配合割合は、1重量%以上5重量%未満の含有量となるように調節することが望ましい。液晶ポリマーの配合量が少なすぎると充分な補強効果が期待できなくなり、また逆にその配合割合が多くなりすぎるとフッ素樹脂マトリックスが不連続相になるか、あるいは繊維状になる液晶ポリマーの径が非常に大きくなる恐れがあるためである。液晶ポリマーの径が大きくなりすぎると、溶融紡糸過程でその部分の粘度が急に低くなって糸切れの原因となる。
また、前記成形用熱溶融性フッ素樹脂及び官能基含有フッ素樹脂と熱可塑性液晶ポリマーから繊維状の液晶ポリマーを含む熱溶融性フッ素樹脂混合繊維を形成する場合、この混合繊維の形成に際し、後者の官能基を有するフッ素樹脂(相溶化剤)の配合割合は、官能基の種類や官能基含量によっても若干異なるが、樹脂原料の1〜20重量%、とくに1〜10重量%程度とするのが好ましい。すなわち相溶化剤の配合割合が多くなるほどフッ素樹脂/液晶ポリマー間の界面張力は低くなり、界面接着力は強くなるが、あまり多量に配合すると相溶化剤同士の強い相互作用で架橋反応に類似した反応が起こり、フッ素樹脂と液晶ポリマーの溶融混合において粘度が急に増加することがあり、溶融紡糸が困難になる可能性がある。
ここで、本発明に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維は、加熱温度と繊維長手方向の寸法変化率との相関を示す関係曲線に関して、寸法変化率の加熱温度による微分値が最小となる温度が、250℃を超えて前記熱溶融性フッ素樹脂の融点以下の範囲に存在することを特徴の一つとする。このような特性を備えることにより、繊維の長手方向での強力の均質化を図ることができ、不意の糸切れを効果的に防止できる強力の高い繊維を得ることができる。なお、寸法変化率の値が、「−(マイナス)」である場合、熱溶融性フッ素樹脂混合繊維は、その長手方向に収縮していることを示す
また、本発明に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維は、加熱温度と繊維長手方向の寸法変化率との相関を示す関係曲線に関して、寸法変化率の加熱温度による微分値が−0.0015以下となる温度が、200℃を超えて前記熱溶融性フッ素樹脂の融点以下の範囲に存在することも特徴の一つとする。このような特性を備えることにより、不意の糸切れを効果的に防止できる強力の高い繊維を得ることができる。
また、この熱溶融性フッ素樹脂混合繊維において、繊維最表面は熱溶融性フッ素樹脂からなるように構成することが好ましい。つまり、熱溶融性フッ素樹脂混合繊維の内部に繊維状の熱可塑性液晶ポリマーが存在し、その外表面に繊維状に露出していない状態であることが好ましい。後述のように押出延伸によって紡糸して熱溶融性フッ素樹脂混合繊維を製造する溶融紡糸過程においては、溶融状態の熱溶融性フッ素樹脂及び熱可塑性液晶ポリマーは冷却されて固化することになるが、両者の冷却固化の挙動が異なることに起因して、繊維状の熱可塑性液晶ポリマーの径が大きくなるおそれがある。しかしながら、上述のように、熱溶融性フッ素樹脂混合繊維の最表面が熱溶融性フッ素樹脂からなり、熱可塑性液晶ポリマーが熱溶融性フッ素樹脂混合繊維の内部に収まるように構成することにより、冷却固化過程において熱可塑性液晶ポリマーが外気の影響を受けにくくすることができる。この結果、繊維状の熱可塑性液晶ポリマーの径が大きくなることを抑制しつつ熱溶融性フッ素樹脂混合繊維中に均一に分散させることが可能となり、熱溶融性フッ素樹脂混合繊維の長手方向に沿った強力のバラつきを効果的に抑制することができる。なお、繊維最表面が熱溶融性フッ素樹脂からなる構造であるか否かは、エネルギー分散型X線分析(EDX)による元素分析を行うことにより判定することができる。
本発明に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維は、例えば、成形用熱溶融性フッ素樹脂(官能基含有フッ素樹脂を含有させてもよい)と熱可塑性液晶ポリマーを溶融混合し、繊維状に押出しながら延伸することにより混合繊維の形で得ることができる。具体的には、熱溶融性フッ素樹脂及び前記熱可塑性液晶ポリマーを主成分とする繊維材料を溶融押出する押出ステップと、押し出された溶融押出繊維を延伸する延伸ステップとを備えるように製造方法を構成する。この方法によれば、成形が容易である上に、液晶ポリマーを非常に細い繊維状で均一に分散させることが容易となる。上記押出ステップは常法によるが、押出機を用いて行うのが好ましく、その際、高剪断速度の方が液晶分散相の大きさがより小さくなるため、単軸押出機より二軸押出機を用いる方が好ましい。また、延伸ステップにおける延伸の具体的手法は特に限定されないが、例えば、ある一点にくびれが生じ、そのくびれが伝搬しながら延伸されていくネッキング延伸法を用いることができる。
液晶分散相をフッ素樹脂マトリックス中に小さく分散させるためには、押出温度は使用する熱溶融性フッ素樹脂と熱可塑性液晶ポリマーのうち融点の高い樹脂の融点より10〜20℃程度高い温度とすることが好ましい。また繊維状の液晶ポリマーをフッ素樹脂混合繊維中に均一に分散させるためには、溶融紡糸前の液晶ポリマーの粒子径を10μm以下、好ましくは0.5〜5μm程度にするのが望ましい。
押出機より押出された繊維状物を、押出速度より速い速度で引き取ることにより延伸する。このようにして得られる熱溶融性フッ素樹脂混合繊維の直径は、この延伸比(溶融紡糸前後の繊維の断面積比)によって制御することができる。延伸比が大きいほどあるいはダイからの引取速度が速いほど繊維径は細くなる。また、混合繊維のフッ素樹脂マトリックス中に繊維状で分散する液晶ポリマーの直径は、溶融紡糸前の溶融ブレンド中に分散されている液晶相の大きさと溶融紡糸過程の延伸比で制御することができる。液晶分散相の大きさが小さいほどあるいは延伸速度が速いほど繊維状の液晶ポリマーの直径も細くなる。繊維状の液晶ポリマーを熱溶融性フッ素樹脂混合繊維中に均一に形成させるためには、上述のように押出温度を使用する熱溶融性フッ素樹脂と熱可塑性液晶ポリマーのうち融点の高い樹脂の融点より10〜20℃高い温度にするかフッ素樹脂/液晶ポリマーの溶融粘度比を1〜5にすることが好ましい。
熱溶融性フッ素樹脂混合繊維の使用目的によっても異なるが、上述のような混合繊維として、例えば、径が5〜1000μm程度のものとして得ることができる。また、そのための延伸比も広い範囲で変えることができ、例えば5〜5000程度の範囲に設定することができる。また、熱溶融性フッ素樹脂混合繊維中の繊維状液晶ポリマーの径は、混合繊維の径によっても異なるが、混合繊維径の1/10以下であって、0.1〜30μ程度とするのが好ましい。
本発明に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維は、上述のように、加熱温度と繊維長手方向の寸法変化率との相関を示す関係曲線に関して、寸法変化率の加熱温度による微分値が最小となる温度が、250℃を超えて前記熱溶融性フッ素樹脂の融点以下の範囲に存在することを特徴とするものであるが、このような特性を有する熱溶融性フッ素樹脂混合繊維は、溶融紡糸過程における延伸点の温度(押出ステップにより押し出された溶融押出繊維の延伸点の温度)を250℃を超えて前記熱溶融性フッ素樹脂の融点以下の範囲に調整することにより得ることができる(温度調整ステップ)。ここで、延伸点とは、押出機より押出された繊維状物を押出速度より速い速度で引き取って延伸する工程において、繊維の変形が主に起こっている部分を意味し、主な変形が始まる位置である延伸開始点から、主な延伸が終了する延伸終了点までの区間を意味する。発明者らは実験により、本発明の熱溶融性フッ素樹脂と液晶ポリマーの組み合わせにおいて、250℃を超える温度範囲に延伸点を設定した場合に特異的に優れた物性の繊維が得られることを経験的に見出した。一般に知られるように結晶性樹脂の紡糸成形においては、結晶融解させた状態で樹脂を流動させるので結晶融解温度すなわち融点以上に加熱される。そして融解した樹脂の冷却過程において、ある温度で結晶化速度が最も速くなる温度域が存在し、このピークを示す温度は結晶化温度といわれる。一般に、結晶化温度は結晶融点より低く、その差は50℃程度以上になることも多い。本発明において結晶融解させた状態から冷却過程の250℃を超える温度範囲の延伸で特異的に優れた物性の繊維が得られるメカニズムは定かではないが、繊維の主成分である熱溶融性フッ素樹脂の結晶化温度は200〜290℃ほどの範囲にあると推定される。一方で本発明において含まれる液晶ポリマーの結晶化温度は120〜210℃ほどの範囲にあると推定される。290℃を超える温度域においては熱溶融性フッ素樹脂と液晶ポリマーとがいずれも高流動化しているものとみられるが、この温度域では熱溶融性フッ素樹脂の結晶化は進行しにくいと考えられる。210℃を超え290℃以下の温度範囲では熱溶融性フッ素樹脂は結晶化の進行が可能な状態でかつ、液晶ポリマーとともに流動可能な状態でもあることから、冷却過程においてこの温度範囲で樹脂を伸長させるのが成形加工上有効であると推測している。また、動的粘弾性測定において、市販の主要な液晶ポリマーの弾性率の温度変化を見るに、250℃近傍の高温側で弾性率が大きく低下する傾向も報告されており、このような特性との関連性もあるのではないかと推測している。このように、熱溶融性フッ素樹脂と熱可塑性液晶ポリマーの両方の結晶化温度の観点、熱可塑性液晶ポリマーの動的粘弾性の観点から、樹脂が適度に流動可能な特定温度範囲で伸長することにより、熱溶融性フッ素樹脂と熱可塑性液晶ポリマーとのそれぞれが好ましい結晶配向状態を形成することになり、その結果、繊維物性の均質化(繊維の長手方向での強力の均質化等)につながって、不意の糸切れを効果的に防止できる強力の高い繊維を得ることができるものと考えられる。ここで、延伸点の温度を250℃を超えて前記熱溶融性フッ素樹脂の融点以下の範囲に調整する方法としては、特に限定されないが、例えば、延伸過程において配置されるローラの位置を適宜調節したり、保温部材をダイ出口部に配置したり、或いは、ダイ出口の温度を調整することにより行うことができる。
なお、本発明の熱溶融性フッ素樹脂混合繊維には、必要に応じ任意の添加剤が配合されていてもよい。このような添加剤の例として、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、着色剤、カーボンブラック等の無機物質を挙げることができる。
本発明の発明者らは、実際に本発明に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維を作成してその強力を確認すると共に、加熱温度と繊維長手方向の寸法変化率との相関を示す関係曲線に関して、寸法変化率の加熱温度による微分値が最小となる温度が、250℃を超えて前記熱溶融性フッ素樹脂の融点以下の範囲に存在することを確認した。また、併せて、比較例に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維も作成してその強力を確認すると共に、上記寸法変化率の加熱温度による微分値が最小となる温度についても確認したので、以下説明する。ただし、本願発明は実施例に限定されず、以下の例は、本願発明の技術的意義が容易に理解できるようにわかりやすく例示するものである。
[実施例に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維の作成]
実施例に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維は、熱溶融性フッ素樹脂として、テトラフルオロエチレン・パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA;融点308℃)を用い、熱可塑性液晶ポリマーとして、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸単位とパラヒドロキシ安息香酸単位との共重合ポリエステル(融点330℃)を用いて形成している。これら樹脂原料を、熱可塑性液晶ポリマーの含有量が3重量%となるように配合し、上述のように溶融紡糸して、繊維径が100μmとなる実施例に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維を作成した。なお、溶融紡糸工程において、延伸点の温度を270℃に調整した。また、溶融紡糸工程においては、グンゼ株式会社製単軸13.5mmφ押出機(L/D=20、フルフライトスクリュー)を用いて、紡糸口金より紡糸温度340℃で紡出し、引取ローラで300m/minの速度で引取った。
実施例に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維は、熱溶融性フッ素樹脂として、テトラフルオロエチレン・パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA;融点308℃)を用い、熱可塑性液晶ポリマーとして、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸単位とパラヒドロキシ安息香酸単位との共重合ポリエステル(融点330℃)を用いて形成している。これら樹脂原料を、熱可塑性液晶ポリマーの含有量が3重量%となるように配合し、上述のように溶融紡糸して、繊維径が100μmとなる実施例に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維を作成した。なお、溶融紡糸工程において、延伸点の温度を270℃に調整した。また、溶融紡糸工程においては、グンゼ株式会社製単軸13.5mmφ押出機(L/D=20、フルフライトスクリュー)を用いて、紡糸口金より紡糸温度340℃で紡出し、引取ローラで300m/minの速度で引取った。
[比較例に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維の作成]
比較例に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維は、上述の実施例に係る繊維と同一の樹脂原料(熱溶融性フッ素樹脂と熱可塑性液晶ポリマーとの配合比率同一)を用いて、溶融紡糸に際しての延伸点の温度が240℃となるように調整して作成した。なお、比較例に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維は、上記延伸点の温度を240℃とした点以外は、上記実施例と同様にして作成している。
比較例に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維は、上述の実施例に係る繊維と同一の樹脂原料(熱溶融性フッ素樹脂と熱可塑性液晶ポリマーとの配合比率同一)を用いて、溶融紡糸に際しての延伸点の温度が240℃となるように調整して作成した。なお、比較例に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維は、上記延伸点の温度を240℃とした点以外は、上記実施例と同様にして作成している。
[強力確認]
作成した実施例及び比較例に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維をそれぞれ20cmの長さで切り出して、株式会社島津製作所製の引張試験機EZ−LXにセットし、試験速度20cm/分にて破断するまで引っ張る破断試験を行った。この破断試験の結果を図1に示す。図1においては、横軸を引張伸度(%)とし、縦軸を引張強力(gf)としている。この破断試験より、実施例に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維は、その破断時強力が195gfであるのに対し、比較例に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維は、その破断時強力が120gfであることが確認された。このように、実施例に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維は、比較例に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維に比べて、約60%強力が高く、極めて破断しにくい強い繊維であることが確認された。
作成した実施例及び比較例に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維をそれぞれ20cmの長さで切り出して、株式会社島津製作所製の引張試験機EZ−LXにセットし、試験速度20cm/分にて破断するまで引っ張る破断試験を行った。この破断試験の結果を図1に示す。図1においては、横軸を引張伸度(%)とし、縦軸を引張強力(gf)としている。この破断試験より、実施例に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維は、その破断時強力が195gfであるのに対し、比較例に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維は、その破断時強力が120gfであることが確認された。このように、実施例に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維は、比較例に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維に比べて、約60%強力が高く、極めて破断しにくい強い繊維であることが確認された。
ここで、実施例に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維の切断面の拡大画像を図2に示す。また、比較例に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維の切断面の拡大画像を図3に示す(図2と図3において画像の縮尺は異なるが、繊維1本あたりの断面積はほぼ等しくなるよう試料調整されている)。なお、図2及び図3のそれぞれにおける下側の画像は、上側の画像に関してEDXでフッ素原子をカラーマッピングした画像を脱色処理したものである。また、図2及び図3のそれぞれ下側の画像(フッ素原子をカラーマッピングした画像)において、繊維内の黒で抜けている箇所が熱可塑性液晶ポリマーが多く存在する箇所となる。
これら切断面の画像(特にフッ素原子をカラーマッピングした下側の画像)を比較すると、比較例に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維の方が、実施例に比べて黒で抜けている領域が大きいことから、繊維状になる液晶ポリマーの径が大きいことがわかる。
[加熱温度と繊維長手方向の寸法変化量の測定]
作成した実施例及び比較例に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維のそれぞれについて、10cm(10000μm)の長さで切り出して、加熱温度と繊維長手方向の寸法変化量の測定に供する試料とし、各試料を株式会社島津製作所製の熱機械分析装置(TMA−60)にセットし、加熱温度と繊維長手方向の寸法変化量との関係を測定した。温度条件は、加熱速度10℃/分として、室温から320℃まで加熱することとしデータのサンプリング間隔を1秒として、加熱温度と、繊維長手方向の寸法変化量とを測定した。ここで、測定温度上限値は、試料の主成分である熱溶融性フッ素樹脂の融点以上、かつできるだけ低めの温度(+20℃程度以内)に設定すればよい。また、実施例に関する測定結果の一部を表1に、比較例に関する測定結果の一部を表2に示す。なお、表1及び表2において記載されている測定値は、データ整理の関係上、1秒ごとに測定したサンプリングデータを6秒間隔で抽出し直した値を示している。また、表1及び表2は、後述する加熱温度の変化量dTに対する繊維長手方向の寸法変化率の変化量dSの比(dS/dT)の値が最小となる範囲を中心として抜き出して示している。
作成した実施例及び比較例に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維のそれぞれについて、10cm(10000μm)の長さで切り出して、加熱温度と繊維長手方向の寸法変化量の測定に供する試料とし、各試料を株式会社島津製作所製の熱機械分析装置(TMA−60)にセットし、加熱温度と繊維長手方向の寸法変化量との関係を測定した。温度条件は、加熱速度10℃/分として、室温から320℃まで加熱することとしデータのサンプリング間隔を1秒として、加熱温度と、繊維長手方向の寸法変化量とを測定した。ここで、測定温度上限値は、試料の主成分である熱溶融性フッ素樹脂の融点以上、かつできるだけ低めの温度(+20℃程度以内)に設定すればよい。また、実施例に関する測定結果の一部を表1に、比較例に関する測定結果の一部を表2に示す。なお、表1及び表2において記載されている測定値は、データ整理の関係上、1秒ごとに測定したサンプリングデータを6秒間隔で抽出し直した値を示している。また、表1及び表2は、後述する加熱温度の変化量dTに対する繊維長手方向の寸法変化率の変化量dSの比(dS/dT)の値が最小となる範囲を中心として抜き出して示している。
また、表1及び表2においては、繊維長手方向の寸法変化量の変化から算出した寸法変化率についても併せて記載している。寸
法変化率は、下記式にて算出している。
式:[(ある温度での寸法変化量)―(加熱開始時(時間:0秒)の寸法変化量)]/(加熱開始時(時間:0秒)の試料長)×100(%)
法変化率は、下記式にて算出している。
式:[(ある温度での寸法変化量)―(加熱開始時(時間:0秒)の寸法変化量)]/(加熱開始時(時間:0秒)の試料長)×100(%)
また、加熱温度の変化量dTに対する繊維長手方向の寸法変化率の変化量dSの比(dS/dT)の値についても、表1及び表2に記載している。加熱温度の変化量dTの算出方法について説明すると、例えば、表1の加熱開始後1578秒のタイミングにおける温度(285.21℃)と、その一つ前のタイミングでの温度(加熱開始後1572秒のタイミングにおける温度(284.22℃))との差の値を、加熱開始後1578秒のタイミングにおける加熱温度の変化量dTとして算出するというように、測定した加熱温度に関して、あるタイミングでのサンプリングデータと、時間的に一つ前のタイミングに対応するサンプリングデータとの差の値を、あるタイミングでの加熱温度の変化量dTとして算出している。繊維長手方向の寸法変化率の変化量dSについても同様であり、例えば、表1の加熱開始後1578秒のタイミングにおける寸法変化率の値(−22.60%)と、その一つ前のタイミングでの寸法変化率の値(加熱開始後1572秒のタイミングにおける寸法変化率の値(−22.37℃))との差の値を、加熱開始後1578秒のタイミングにおける寸法変化率の変化量dSとして算出するというように、算出した寸法変化率の値に関して、あるタイミングでのデータと、時間的に一つ前のタイミングに対応するデータとの差の値を、あるタイミングでの寸法変化率の変化量dSとして算出している。ここで(dS/dT)の値を熱機械分析装置に付属の分析ソフトウェアで計算できるのであれば、加熱温度の変化量dTとして通常1℃刻みより細かい精度で計算が行われているのでソフトウェアによる算出値を用いればよく、前記説明のように別計算する場合には加熱温度の変化量dTとして約1℃刻み単位で計算を行えばよい。
また、実施例及び比較例に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維のそれぞれについて、加熱温度と繊維長手方向の寸法変化率との相関を示す関係曲線を図4及び図5に示す(図4が実施例、図5が比較例)。なお、これら図4及び図5においては、加熱温度と、加熱温度の変化量dTに対する繊維長手方向の寸法変化率の変化量dSの比(dS/dT)との関係曲線についても併せて表示している。ここで、加熱温度の変化量dTに対する繊維長手方向の寸法変化率の変化量dSの比(dS/dT)の値は、加熱温度と繊維長手方向の寸法変化率との相関を示す関係曲線に関して、寸法変化率の加熱温度による微分値に相当する。
表1や図4から、実施例に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維は、加熱温度の変化量dTに対する繊維長手方向の寸法変化率の変化量dSの比(dS/dT)の値が最小となる温度が、285℃程度であり、表2や図5から、比較例に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維は、加熱温度の変化量dTに対する繊維長手方向の寸法変化率の変化量dSの比(dS/dT)の値が最小となる温度が、233℃程度であることがわかる。
このように強力確認試験にて強力が高いことが確認された実施例に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維では、dS/dTの値が最小となる温度が、285℃程度を示す一方、強力が低いと確認された比較例に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維では、dS/dTの値が最小となる温度が、233℃程度を示すというように、繊維の強力物性に関して、加熱温度の変化量dTに対する繊維長手方向の寸法変化率の変化量dSの比(dS/dT)の値との相関関係が認められることが分かる。
また、強力が高い熱溶融性フッ素樹脂混合繊維を得ることができるdS/dTの値が最小となる温度の数値範囲の下限値は、実施例に関する285℃と、比較例に関する233℃との間に存在すると考えられることから、両者の算術平均値を考慮すると、255℃近傍であると考えられ、dS/dTの値が最小となる温度が250℃を超える熱溶融性フッ素樹脂混合繊維は、強力が高くて不意の糸切れを効果的に抑制できるものであると考えられる。また、強力が高い熱溶融性フッ素樹脂混合繊維を得ることができるdS/dTの値が最小となる温度の数値範囲は、250℃以上の範囲であれば、特に制限されないと考えられるが、溶融状態の樹脂が融点以下の冷却過程において伸長変形が加えられる温度近傍でdS/dTの値は最小値を示すと考えられることから熱溶融性フッ素樹脂混合繊維を形成するベース材料となる熱溶融性フッ素樹脂の融点を超えない。
また、図4と図5とを比較すると、“比較例に係る加熱温度とdS/dTとの関係曲線”の方が、“実施例に係る加熱温度とdS/dTとの関係曲線”よりも緩やかな曲線(カーブ)を示している。換言すると、“実施例に係る加熱温度とdS/dTとの関係曲線”の方が、“比較例に係る加熱温度とdS/dTとの関係曲線”よりも尖鋭な(シャープな)曲線(カーブ)を示していることが分かる。この曲線(カーブ)の差に着目すると、実施例は、加熱温度と繊維長手方向の寸法変化率との相関を示す関係曲線に関して、寸法変化率の加熱温度による微分値(dS/dT)が−0.0015以下となる温度が、200℃を超えて熱溶融性フッ素樹脂の融点以下(PFA;融点308℃以下)の範囲に存在するのに対し、比較例は、寸法変化率の加熱温度による微分値(dS/dT)が、そもそも−0.0015以下とはならず、寸法変化率の加熱温度による微分値(dS/dT)が−0.0015以下となる温度が200℃を超えて熱溶融性フッ素樹脂の融点以下の範囲に存在しないものであると認められる。
このように、加熱温度と繊維長手方向の寸法変化率との相関を示す関係曲線に関して、寸法変化率の加熱温度による微分値(dS/dT)が−0.0015以下となる温度が、200℃を超えて熱溶融性フッ素樹脂の融点以下(PFA;融点308℃以下)の範囲に存在するという特性を有する実施例に係る熱溶融性フッ素樹脂混合繊維は、図1に示す破断試験結果を併せて勘案すると、このような特性を有しない比較例よりも、強力の均質化が達成された上、より高い強力を発揮できる。
ここで、熱溶融性フッ素樹脂混合繊維を形成する樹脂が伸長変形を受ける温度範囲(延伸ステップにおける温度範囲)に関し、樹脂の冷却過程においてごく狭い温度範囲内で急激に伸長変形を付与することが、熱溶融性フッ素樹脂混合繊維の強力の均質化や高い強力を実現するという観点から好ましい。したがって、熱溶融性フッ素樹脂混合繊維の製造過程における延伸ステップに関し、延伸点においてネッキング延伸(ネック延伸)が発生するように構成することが、より狭い温度範囲内で急激に伸長変形を受ける状態が安定して持続しやすいと考えられ、より好ましいといえる。
Claims (6)
- 熱溶融性フッ素樹脂と熱可塑性液晶ポリマーとを含む熱溶融性フッ素樹脂混合繊維であって、
加熱温度と繊維長手方向の寸法変化率との相関を示す関係曲線に関して、寸法変化率の加熱温度による微分値が最小となる温度が、250℃を超えて前記熱溶融性フッ素樹脂の融点以下の範囲に存在し、
前記微分値は、加熱温度の変化量dTに対する繊維長手方向の寸法変化率の変化量dSの比(dS/dT)により算出される値であることを特徴とする熱溶融性フッ素樹脂混合繊維。 - 熱溶融性フッ素樹脂と熱可塑性液晶ポリマーとを含む熱溶融性フッ素樹脂混合繊維であって、
加熱温度と繊維長手方向の寸法変化率との相関を示す関係曲線に関して、寸法変化率の加熱温度による微分値が−0.0015以下となる温度が、200℃を超えて前記熱溶融性フッ素樹脂の融点以下の範囲に存在し、
前記微分値は、加熱温度の変化量dTに対する繊維長手方向の寸法変化率の変化量dSの比(dS/dT)により算出される値であることを特徴とする熱溶融性フッ素樹脂混合繊維。 - 前記熱可塑性液晶ポリマーは、前記熱溶融性フッ素樹脂マトリックス中に繊維状で分散していることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱溶融性フッ素樹脂混合繊維。
- 繊維最表面は前記熱溶融性フッ素樹脂からなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の熱溶融性フッ素樹脂混合繊維。
- 前記熱可塑性液晶ポリマーの含有量が1重量%以上5重量%未満であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の熱溶融性フッ素樹脂混合繊維。
- 熱溶融性フッ素樹脂と熱可塑性液晶ポリマーとを含む熱溶融性フッ素樹脂混合繊維の製造方法であって、
前記熱溶融性フッ素樹脂及び前記熱可塑性液晶ポリマーを主成分とする繊維材料を溶融押出する押出ステップと、
押し出された溶融押出繊維を延伸する延伸ステップと、
前記溶融押出繊維の延伸点を、250℃を超え前記熱溶融性フッ素樹脂の融点以下の範囲に調整する温度調整ステップとを備えることを特徴とする熱溶融性フッ素樹脂混合繊維の製造方法。
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JP2018232817A JP2020094300A (ja) | 2018-12-12 | 2018-12-12 | 熱溶融性フッ素樹脂混合繊維及びその製造方法 |
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