JP2020093289A - 鋼部材の溶接接合方法および溶接接合構造 - Google Patents
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Abstract
Description
前記ウェブのウェブ幅方向の端部にスカラップが設けられ、
前記フランジの長手方向の端部に開先が設けられ、
前記開先と前記被接合部材との間に、前記フランジの幅方向に延在する溶接溝が設けられ、
前記溶接溝において、前記フランジの幅方向の一方の端部と他方の端部との間で溶接層を連続して形成する工程を所定回数繰り返すことによって、第1溶接層部を形成する第1溶接層部形成工程と、
前記溶接溝において、前記第1溶接層部の上に、前記フランジの幅方向の一方の端部から前記スカラップの直下位置まで一方の溶接層を連続して形成し、前記スカラップの直下位置で折り返して前記スカラップの直下位置の前記一方の溶接層に重ねて第1の重ね層部を形成して第1の厚層部を設ける一方で、前記第1溶接層部の上に、前記フランジの幅方向の他方の端部から前記スカラップの直下位置まで他方の溶接層を連続して形成し、前記スカラップの直下位置で折り返して前記スカラップの直下位置の前記他方の溶接層に重ねて第2の重ね層部を形成して第2の厚層部を設けることで、前記第1溶接層部の上に、前記スカラップの直下において互いに結合し、かつ前記溶接溝から盛り上がる前記第1層厚部と前記第2層厚部とが互いに結合された第2溶接層部を形成する第2溶接層部形成工程とを含むことを特徴とする。
前記ウェブのウェブ幅方向の端部にスカラップが設けられ、
前記フランジの長手方向の端部に開先が設けられ、
前記開先と前記被接合部材との間に、前記フランジの幅方向に延在する溶接溝が設けられ、
前記溶接溝に、複数の溶接層からなる第1溶接層部が設けられ、
前記溶接溝において、第1溶接層部の上に、前記スカラップの直下において互いに結合し、かつ前記溶接溝から盛り上がる第1の厚層部と第2の厚層部を備えた第2溶接層部が形成され、
前記第2溶接層部は、前記フランジの幅方向の一方の端部から前記スカラップの直下位置まで連続する一方の溶接層と、前記フランジの幅方向の他方の端部から前記スカラップの直下位置まで連続する他方の溶接層とを備え、
前記第1の厚層部は、前記スカラップの直下位置に位置する一方の前記溶接層と、当該溶接層を折り返し重ねられた状態の第1の重ね層部とを有し、
前記第2の厚層部は、前記スカラップの直下位置に位置する他方の前記溶接層と、当該溶接層を折り返し重ねられた状態の第2の重ね層部とを有していることを特徴とする。
特に鋼部材がビルトH形鋼(例えば溶接組立H形断面梁)であり、ウェブ−フランジ間で不溶着部がある場合には、第1および第2の厚層部がスカラップの直下の不溶着部先端を覆うため、この部分の応力集中を緩和させることができる。
また、スカラップの直下位置で一方および他方の溶接層をそれぞれ折り返し重ねることによって、第1および第2の重ね層部を形成するので、ビルトH形鋼のフィレット部の再熱が行われるため、材料靱性が向上する。
さらに、スカラップの直下において、フィレット残し部が存在している状態である場合、第2溶接層部がスカラップの直下で層厚の大きい状態となるので、フィレット残し部に起因するスカラップの開口端とフランジの内面との間の段差を解消し、応力集中が小さい溶接接合部を実現できる。
以上により、H形断面の鋼部材のスカラップ直下のフランジ溶接接合部でのき裂発生を抑止できる。このため、H形断面の鋼部材の塑性変形性能や疲労性能が向上し、構造物の外力に対するエネルギー吸収性能を向上させることが可能となる。
前記第2溶接層部の上と前記第1溶接層部の上の両方に重なって、前記フランジ幅方向に連続した第3溶接層部を形成する第3溶接層部形成工程を含んでいてもよい。
また、本発明の鋼部材の溶接接合構造において、前記第2溶接層部は前記溶接溝の溝幅方向における前記被接合部材側の前記第1溶接層部の上に設けられておらず、
前記第2溶接層部の上と前記第1溶接層部の上の両方に重なって、前記フランジ幅方向に連続した第3溶接層部が設けられていてもよい。
なお、本実施の形態では、鋼部材として溶接組立H形断面梁1(以下、梁1と略称する場合もある。)を使用し、当該溶接組立H形断面梁1のフランジ20の長手方向の端部を溶接接合する被接合部材として、角形鋼管柱110(以下、柱110と略称する場合もある。)に設けたダイアフラム113を使用した場合を例にとって説明するが、鋼部材としては、溶接組立H形断面梁1に限ることはなく、H形断面を有するものであればよいし、被接合部材としては、ダイアフラム113に限ることはなく、H形断面を有する鋼部材のフランジの長手方向の端部が溶接接合されるものであればよい。
梁端接合部100は、建設現場で溶接接合されたものであり、柱110と、柱110にと接続される梁1とを備えている。柱110は、鋼材からなり角管状に形成された複数の柱材111を軸方向に連結して構成されている。
柱110と梁1とが接続する柱梁接合部110aには、梁1と接続するための一対のダイアフラム112、112が設けられている。なお、柱梁接合部110aは角形鋼管によって形成されたもので、上下の高さ寸法は梁1のウェブ10の上下方向の高さ寸法と等しくなっている。
各ダイアフラム112は、略矩形状の板体状に形成されたいわゆる通しダイアフラムであり、柱梁接合部110aの上下両端側に配設されていて、この柱梁接合部110aと柱材111とによってそれぞれ挟み込まれている。そして、各ダイアフラム112は、周縁部分が各柱材111の側面111aから突出した状態で溶接等により柱梁接合部110aおよび柱材111と一体化されている。
なお、梁端現場接合部については、本実施形態のような通しダイアフラム形式の構造に限定されず、例えば梁1がダイアフラムを介さず柱110に直接接続される構成でもよいし、柱110がH形鋼で梁1とは柱110あるいはダイアフラムを介して接続される構成でもよい。
ウェブ10は、ウェブ10の軸方向と直交する方向、すなわちウェブ幅方向を梁1の高さ方向として、梁1の軸方向に延びている。一対のフランジ20は、梁1の軸方向に延びており、ウェブ10の両縁10b、10bに接続されている。また、一対のフランジ20は、ウェブ10の上下両端部において、それぞれウェブ10からウェブ10の厚さ方向に略直角に張出している。そして、梁1の軸線方向の端部が、柱110の周面に接続されている。なお、一対のフランジ20、20のうち、下側に位置するフランジ20を下フランジ、上側に位置するフランジ20を上フランジと称する。
ここで、本実施の形態においては、梁1において柱110と接続する軸方向の端部を軸端部(1a)と称し、梁の軸端部において、ウェブ10およびフランジ20が柱110と接続される部分をそれぞれ軸端(10a、20a)と称する。
また、図3に示すように、本実施形態において隅肉部30は、梁1の軸方向視した断面において、ウェブ10のウェブ面11と接続するウェブ止端部31から、フランジ20の内面21と接続するフランジ止端部32までを繋ぐ直線状の傾斜面を有する三角形状に形成されており、さらに本実施形態では断面二等辺三角形状に形成されている。隅肉部30におけるウェブ10のウェブ面11およびフランジ20の内面21に沿う各辺の大きさ、すなわちフランジ20の内面21からウェブ止端部31までの距離である隅肉高さHf、および、ウェブ10のウェブ面11からフランジ止端部32までの距離である隅肉幅Wfとしては、例えば3〜30mm程度である。
本実施形態では、上記のとおり隅肉部30はウェブ10とフランジ20とを隅肉溶接を行うことにより形成されるものであり、隅肉部30と、隅肉部30近傍のウェブ10およびフランジ20との各部分によって溶接部が形成されている。
なお、本実施形態においては、梁1のウェブ10は、その軸端10aを柱110に溶接することにより柱110に接続されているが、梁のウェブの軸端を接合する方法は溶接に限定されるものではなく、例えばボルト接合によるものでもよい。
第二の開口縁部62は、形状は特に限定されないが、本実施形態の場合は第二の開口端60bから直線状に延びている。
また、第三の開口縁部63は、第一の開口縁部61から第二の開口縁部62に向かって湾曲する円弧状に形成された第二の円弧部72を有している。
ここで、第一の円弧部71の曲率半径R1は、第二の円弧部72の曲率半径R2の2.5倍以上であることが望ましい。このように、第一の円弧部71の曲率半径R1を、第二の円弧部72の曲率半径R2の2.5倍以上としたのは、スカラップ60のフランジ20側における歪みの集中を緩和して、スカラップ60からのき裂の発生をより安定的に抑制することが可能となるためである。
また、第二の円弧部72の曲率半径R2は、スカラップの形成の際にカッターにより切削することを考慮し、作業性を確保するためも6mm以上であるものとしてもよい。
図4は第一の態様のスカラップ60を示している。図4に示すように、第一の態様のスカラップ60において、第一の開口縁部61は、直近のフランジ20側の位置に配設されていて、第一の開口端60aを含む第一の直線部73と、第一の直線部73に接続された第一の円弧部71とを有する。
第一の直線部73は、直近のフランジ20の内面21において、スカラップ60によりウェブ10が切り欠かれた部分に相当するもので、本態様においては、直近のフランジ20の内面21に含まれている。また、第一の開口端60aは、直近のフランジ20の軸端20aに設けられていて、さらに具体的には、柱110と溶接されるフランジ溶接部40を形成する際に用いられる開先面40aにおけるウェブ10側の端部がこの第一の開口端60aとなっている。
第一の円弧部71は、第一の直線部73と接続する位置における接線がフランジ20の内面21と平行であり、かつ梁1の軸端部1aから離れるに従って、次第にフランジ20から離れる方向に湾曲する凹曲線状に形成されている。この第一の円弧部71は、第一の直線部73と接続されて隅肉部30を横断する隅肉横断部71cと、隅肉横断部71cにおける直近のフランジ20とは反対側の一端部からウェブ10のウェブ面11に沿って形成されるウェブ形成部71dとを有する。
また、第三の開口縁部63は、第二の円弧部72を有していて、第二の円弧部72の一端72aは、第一の開口縁部61の第一の円弧部71と接続されているとともに、他端72bは第二の開口縁部62の第二の直線部74と接続されている。
ここで、第一の円弧部71と第二の円弧部72とは、第一の円弧部71がなす円弧と第二の円弧部72がなす円弧とが共通の接線となる部分において接続されている。また、第二の円弧部72と第二の直線部74との接続部分では、第二の円弧部72をなす円弧の接線と第二の直線部74とが一致している。これにより、第一の開口縁部61、第二の開口縁部62及び第三の開口縁部63で構成されるスカラップ60の縁部の形状は連続的になっている。
なお、本態様においてスカラップ60の高さ寸法Hsは第一の直線部73と第二の直線部74との離間距離によって定まる。
図5に示すように、第二の態様のスカラップ60Aにおいて第一の開口縁部61は、第一の態様における第一の直線部73に相当する部分を備えず、第一の円弧部71における直近のフランジ20側の一端71aが第一の開口端60aとなっている。第一の開口端60aとなる第一の円弧部71の一端71aは、フランジ20の内面21上に位置しており、当該一端71aにおける接線がフランジ20の内面21に平行である。
なお、本態様においてスカラップ60の高さ寸法Hsは、第一の円弧部71の一端71aと第二の直線部74との離間距離によって定まる。
図6に示すように、本態様においては、フランジ溶接部40を形成する際に用いられる開先面40aが、上方に(厳密には上方に行くに従って次第に梁1の軸端部1aから離れる方向)に立ち上がっていて、開先面40aの一端が、直近のフランジ20の内面よりもウェブ幅方向中央側に位置している。そして、この開先面40aの一端が第一の開口端60aとなっている。つまり、スカラップ60Bの第一の開口端60aが下フランジ20の内面よりウェブ10側に寄せた位置の隅肉溶接部30の表面にある。
具体的に、スカラップ60Bは、第一の開口縁部61が、第一の開口端60aを含む第一の直線部75と、第一の直線部75と接続された第一の円弧部71とを有していて、第一の直線部75は、第一の開口端60aが直近のフランジ20の内面よりもウェブ幅方向中央側に位置している分だけフランジ20の内面21から離間した状態で、フランジ20の内面21と平行に形成されている。
ここで、第一の直線部75とフランジ20の内面21との距離で表わされるスカラップ離間距離Xsは、少なくとも隅肉部30のウェブ止端部31からフランジ20の内面21までの距離である隅肉高さHfよりも小さい。これにより、第一の直線部75と接続されている第一の円弧部71はウェブ止端部31と交差している。
なお、本態様においてスカラップ60の高さ寸法Hsは第一の直線部75と第二の直線部74との離間距離によって定まる。
図7に示すように、第四の態様のスカラップ60Cにおいて第一の開口縁部61は、第三の態様における第一の直線部75に相当する部分を備えず、第一の円弧部71の一端71aが第一の開口端60aとなっている。第一の開口端60aとなる第一の円弧部71の一端71aは、第三の態様と同様にフランジ20の内面21から離間していて、当該一端71aにおける接線はフランジ20の内面21に平行となっている。つまり、スカラップ60Cの第一の開口端60aが下フランジ20の内面よりウェブ10側に寄せた位置の隅肉溶接部30の表面にある。
ここで、第一の円弧部71の一端71aとフランジ20の内面21との距離で表わされるスカラップ離間距離Xsは、少なくとも隅肉部(隅肉溶接部)30のウェブ止端部31からフランジ20の内面21までの距離である隅肉高さHfよりも小さい。これにより、第一の直線部73と接続されている第一の円弧部71はウェブ止端部31と交差している。
なお、本態様においてスカラップ60の高さ寸法Hsは、第一の円弧部71の一端71aと第二の直線部74との離間距離によって定まる。
さらに、第二の開口縁部62については、本実施形態においては直線部であるとしたが、任意の形状とすることができ、例えば円弧状に形成されていてもよい。
これにより、スカラップ60のフランジ20側における歪みの集中を緩和し、スカラップ60からのき裂の発生を抑制することができる。そして、このような第一の円弧部71が隅肉部30におけるウェブ止端部31と交差するようにして形成されていることで、仮に延性き裂が発生したとしても、幅が相対的に狭く断面がウェブ10から断面変化が生じるウェブ止端部31近傍でき裂を発生させることができる。また、仮にウェブ10側の止端部近傍で延性き裂が発生したとしても、発生したき裂を、フランジ20に比較して引張応力が低いウェブ止端部31に沿って軸方向に安定的にき裂を進展させることができる。したがって、本実施形態のようなH形断面部材の端部接続構造200では、補強するために別の構成を設けなくても、スカラップから初期き裂が発生することを遅らせつつ、万一初期き裂が発生しても早期破断に至らないように延性き裂を進展させることができ、より安全性の高い梁端現場接合部100とすることができる。
また、スカラップ60の高さ寸法を35mm以下とすることで、ウェブ10でもモーメントをより効率よく伝達することができるため、柱110と梁1との接合部としての降伏曲げ耐力を向上させることができる。また、スカラップ60の高さ寸法を低く抑えることによって、ウェブ10でモーメントをより効率よく伝達することができるため、スカラップ60のフランジ20側の歪みの集中をさらに緩和させることができる。
さらに、第一の円弧部71と第二の円弧部72とが共通の接線により接続されていることで、第一の円弧部71と第二の円弧部72とが凹凸なく滑らかに接続されるため、より一層歪みの集中を緩和することができ、き裂の発生をより安定的に抑制することができる。
また、第二の円弧部72の曲率半径R2を6mm以上とすることで、第二の円弧部72における歪みの集中も緩和することができるとともに、スカラップをカッターによって容易に切削して成形することができる。
図5および図8に示すように、梁1のウェブ10のウェブ幅方向の端部(図5および図8において下端部)には、上述したようにスカラップ60Aが設けられている。また、梁1の下フランジ20の長手方向の端部には開先面(開先)40aが設けられている。開先面40aは、上方に行くに従って次第に梁1の軸端部1aから離れる方向に立ち上がる傾斜面となっており、当該開先面40aは、柱110のダイアフラム112の外周面に所定の間隔をもって対向して配置されている。また、開先面40aの下端とダイアフラム112の外周面の下端部との間には裏当金45が設けられている。
すなわちまず、溶接溝55において、下フランジ20の幅方向の一方の端部と他方の端部との間で溶接層81aを連続して形成する工程を所定回数繰り返すことによって、第1溶接層部81を形成する(第1溶接層部形成工程)。
この第1溶接層部形成工程によって第1溶接層部81を形成する場合、まず溶接溝55の底部において、下フランジ20の幅方向の一方の端部からの他方の端部に向かいガスシールドアーク溶接を行って第1層目の溶接層81aを連続して形成し、次いで当該溶接層81a上で、下フランジ20の幅方向の他方の端部からの一方の端部に向かいガスシールドアーク溶接を行って次の溶接層81aを連続して形成する工程を順次往復で所定回数繰り返すことによって、溶接溝55に上下に複数の溶接層81aからなる第1溶接層部81を形成する。
また、これ以外でも、まず溶接溝55の底部において、下フランジ20の幅方向の一方の端部からの他方の端部に向かいガスシールドアーク溶接を行って第1層目の溶接層81aを連続して形成し、次いで当該溶接層81a上で、下フランジ20の幅方向の一方の端部からの他方の端部に向かいガスシールドアーク溶接を行って次の溶接層81aを連続して形成する工程を順次で所定回数繰り返すことによって、溶接溝55に上下に複数の溶接層81aからなる第1溶接層部81を形成してもよい。
つまり、第1溶接層部形成工程では、下フランジ20の幅方向の一方の端部からの他方の端部に向かい溶接層81aを連続して形成する工程を往復で所定回数繰り返して形成してもよいし、溶接層81aを連続して一方向に形成する工程を所定回数繰り返して形成してもよい。
そして、第1溶接層部81は最終層を残した状態とする。つまり第1溶接層部81は、溶接溝55の深さ方向全体に形成するのではなく、深さ方向の上部は1層分、つまり1パス(最終パス)分だけ形成しない状態とする。
なお、第1の重ね層部82bを形成する範囲については、第1の厚層部82Aを形成することができれば特に限定はされないが、例えば一方の溶接層82aからの折り返し位置から、溶接組立H形断面梁1の隅肉部におけるフランジ20側の脚長以上となる範囲とすることが好ましい。
なお、第2の重ね層部82bを形成する範囲については、第2の厚層部82Aを形成することができれば特に限定はされないが、例えば他方の溶接層82aからの折り返し位置から、溶接組立H形断面梁1の隅肉部におけるフランジ20側の脚長以上の範囲とすることが好ましい。
この第3溶接層部形成工程では、第1溶接層部81上と第2溶接層部82上の両方に重なって形成される第3溶接層部83を形成し、当該第3溶接層部83、第1および第2の厚層部82,82Aを有する第2溶接層部82、および第1溶接層部81を一体に結合させる。
このようにして、下フランジ20の長手方向の端部がダイアフラム112の周面に溶接接合される。
スカラップ60Cの構成の説明については、図7を参照して既に説明しているので、省略する。
スカラップ60Cにおいて、その第一の開口端60aは下フランジ20の内面よりウェブ10側に寄せた位置の隅肉溶接部(フィレット部)30の表面にある。つまり、スカラップ60Cは、フィレット部30の下部(一部)を残してウェブ10の下端部に形成されている。
このような溶接溝35にも同様にして、第1溶接層部形成工程によって第1溶接層部81を形成し、第2溶接層部形成工程によって第2溶接層部82を形成し、第3溶接層部形成工程によって第3溶接層部83を形成する。
すなわち、下フランジ20の長手方向の端部の開先面40aとダイアフラム112の周面との間に設けられた溶接溝55において、第1溶接層部81の上に、スカラップ60Aの直下位置で互いに結合した第1および第2の厚層部82A,82Aを備えた第2溶接層部82が形成され、第1および第2の厚層部82A,82Aが溶接溝55から盛り上がっているので、スカラップ60A,60Cの直下のアンダーカット等の欠陥発生を抑止し、スカラップ60A,60Cの直下の応力集中を緩和させることができる。さらに、第3溶接層部83が、第1溶接層部81、第2溶接層部82の両方に重なって形成されるため、第1溶接層部81と第2溶接層部82の形状的な不連続を解消し、スカラップ60A,60Cの直下の応力集中を緩和させることができる。
また、スカラップ60Cの直下位置で一方および他方の溶接層82a,82aをそれぞれ折り返し重ねることによって、第1および第2の重ね層部82b,82bを形成するので、溶接組立H形断面梁1のフィレット部30の再熱が行われるため、材料靱性が向上する。
さらに、図10に示すように、スカラップ60Cの直下のフィレット部30が所定の高さ分残っている状態、つまりフィレット残し部30bが存在している状態であるが、第2溶接層部82がスカラップ60Cの直下で層厚の大きい状態となるので、フィレット残し部30bに起因するスカラップ60Cの開口端60aと下フランジ20の上面との間の段差を解消し、応力集中が小さい溶接接合部を実現できる。
以上により、H形断面の梁1のスカラップ60A,60Cの直下のフランジ溶接接合部でのき裂発生を抑止できる。このため、梁1の塑性変形性能や疲労性能が向上し、構造物の外力に対するエネルギー吸収性能を向上させることが可能となる。
さらに、本実施の形態では、第1溶接層部81の上に、第2溶接層部形成工程によって第2溶接層部82を形成し、さらに、第3溶接層部形成工程によって第3溶接層部83を形成したが、溶接溝55の溝幅が小さい場合、第3溶接層部83を形成することなく、第2溶接層部82を溶接溝55の溝幅全体に形成してもよい。
例えば、本実施形態では、柱に接続するH形鋼は溶接組立H形断面としたが、これに限られるものではなく、圧延H形鋼としても良い。圧延H形鋼の場合には、フィレット部30も母材により形成される。
また、本実施の形態では、建設現場での溶接接合を想定しており、通常はガスシールドアーク溶接が適用されるが、溶接金属を複数積層可能な方法であれば、特に溶接手段は問わない。
さらに、本実施の形態では梁1のフランジ20の長手方向の端部を柱110のダイアフラム112に溶接接合したが、ダイアフラム112が無い場合、フランジ20の長手方向の端部を柱110に同様にして直接溶接接合してもよい。
1a 軸端部
10 ウェブ
20 フランジ
30 隅肉溶接部(フィレット部)
40a 開先面(開先)
55 溶接溝
60、60A、60B、60C スカラップ
81 第1溶接層部
81a 溶接層
82 第2溶接層部
82A 厚層部
82a 溶接層
82b 重ね層部
83 第3溶接層部
83a 溶接層
112 ダイアフラム(被接合部材)
Claims (4)
- ウェブと当該ウェブのウェブ幅方向の両端に設けられた一対のフランジとを有するH形断面の鋼部材の前記フランジの長手方向の端部を被接合部材に溶接接合する鋼部材の溶接接合方法であって、
前記ウェブのウェブ幅方向の端部にスカラップが設けられ、
前記フランジの長手方向の端部に開先が設けられ、
前記開先と前記被接合部材との間に、前記フランジの幅方向に延在する溶接溝が設けられ、
前記溶接溝において、前記フランジの幅方向の一方の端部と他方の端部との間で溶接層を連続して形成する工程を所定回数繰り返すことによって、第1溶接層部を形成する第1溶接層部形成工程と、
前記溶接溝において、前記第1溶接層部の上に、前記フランジの幅方向の一方の端部から前記スカラップの直下位置まで一方の溶接層を連続して形成し、前記スカラップの直下位置で折り返して前記スカラップの直下位置の前記一方の溶接層に重ねて第1の重ね層部を形成して第1の厚層部を設ける一方で、前記第1溶接層部の上に、前記フランジの幅方向の他方の端部から前記スカラップの直下位置まで他方の溶接層を連続して形成し、前記スカラップの直下位置で折り返して前記スカラップの直下位置の前記他方の溶接層に重ねて第2の重ね層部を形成して第2の厚層部を設けることで、前記第1溶接層部の上に、前記スカラップの直下において互いに結合し、かつ前記溶接溝から盛り上がる前記第1層厚部と前記第2層厚部とが互いに結合された第2溶接層部を形成する第2溶接層部形成工程とを含むことを特徴とする鋼部材の溶接接合方法。 - 前記第2溶接層部は前記溶接溝の溝幅方向における前記被接合部材側の前記第1溶接層部の上に設けられておらず、
前記第2溶接層部の上と前記第1溶接層部の上の両方に重なるように、前記フランジの一方の端部と他方の端部との間で溶接層を連続して形成する工程を行うことによって、第3溶接層部を形成する第3溶接層部形成工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の鋼部材の溶接接合方法。 - ウェブと当該ウェブのウェブ幅方向の両端に設けられた一対のフランジとを有するH形断面の鋼部材の前記フランジの長手方向の端部を被接合部材に溶接接合してなる鋼部材の溶接接合構造であって、
前記ウェブのウェブ幅方向の端部にスカラップが設けられ、
前記フランジの長手方向の端部に開先が設けられ、
前記開先と前記被接合部材との間に、前記フランジの幅方向に延在する溶接溝が設けられ、
前記溶接溝に、複数の溶接層からなる第1溶接層部が設けられ、
前記溶接溝において、第1溶接層部の上に、前記スカラップの直下において互いに結合し、かつ前記溶接溝から盛り上がる第1の厚層部と第2の厚層部を備えた第2溶接層部が形成され、
前記第2溶接層部は、前記フランジの幅方向の一方の端部から前記スカラップの直下位置まで連続する一方の溶接層と、前記フランジの幅方向の他方の端部から前記スカラップの直下位置まで連続する他方の溶接層とを備え、
前記第1の厚層部は、前記スカラップの直下位置に位置する一方の前記溶接層と、当該溶接層を折り返し重ねられた状態の第1の重ね層部とを有し、
前記第2の厚層部は、前記スカラップの直下位置に位置する他方の前記溶接層と、当該溶接層を折り返し重ねられた状態の第2の重ね層部とを有していることを特徴とする鋼部材の溶接接合構造。 - 前記第2溶接層部は前記溶接溝の溝幅方向における前記被接合部材側の前記第1溶接層部の上に設けられておらず、
前記第2溶接層部の上と前記第1溶接層部の上の両方に重なった、一つまたは複数の溶接層からなる第3溶接層部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の鋼部材の溶接接合構造。
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