JP2020093289A - 鋼部材の溶接接合方法および溶接接合構造 - Google Patents

鋼部材の溶接接合方法および溶接接合構造 Download PDF

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Abstract

【課題】H形断面の鋼部材のスカラップ直下のフランジ溶接接合部でのき裂発生を抑止できる鋼部材の溶接接合方法および溶接接合構造を提供する。【解決手段】開先40aとダイアフラム112との間に、フランジ20の幅方向に延在する溶接溝55が設けられ、溶接溝55において、第1溶接層部形成工程によって第1溶接層部81が形成され、第1溶接層部81の上に、第2溶接層部形成工程によって、スカラップ60Aの直下において互いに結合し、かつ溶接溝55から盛り上がる第1の厚層部82Aと第2の厚層部82Aを備えた第2溶接層部83が形成され、第2溶接層部33が設けられていない第1溶接層部81の上に、第3溶接層部形成工程によって、複数の溶接層83aからなる第3溶接層部83が設けられているので、スカラップ直下のフランジ溶接接合部でのき裂発生を抑止できる。【選択図】図8

Description

本発明は、鋼部材の溶接接合方法および溶接接合構造に関する。
梁、柱等が鉄骨部材によって構成される鉄骨建物は、建設時の工事現場において梁と柱が接合される場合がある。特に、梁としてH形断面部材を用いるH形断面梁の場合は、H形断面梁のウェブの端部と柱とを工事現場において溶接あるいはボルト接合し、H形断面梁の上下フランジの端部と柱とを工事現場において溶接するという、梁端現場接合部が広く一般に採用されている。この際、H形断面梁の下フランジの端部と柱との溶接を行うために、H形断面梁のウェブの端部には通常スカラップと呼ばれる溶接孔が設けられる。スカラップは、H形断面梁のウェブの端部をH形断面梁の下フランジの近傍で部分的に切り欠くことによって形成されるものであり、H形断面梁の下フランジと柱との溶接部は、このスカラップを通してH形断面梁のウェブを横切るように形成される。
スカラップ直下のフランジ溶接接合部は、ウェブが施工上の障害物として存在するため、溶接品質が低下し易い箇所であり、具体的には、開先部のアンダーカットが発生し易く、形状的に応力集中が発生し易い。特に建築構造において、地震等の外力を受けた場合に、曲げモーメントが高くなる梁端部のこの箇所においてき裂が発生し易くなり、梁の塑性変形性能を低下させ、建築物のエネルギー吸収性能を低下させる。特に工場において溶接組立によって形成されるビルトH形鋼において、ウェブ−フランジ間で不溶着部がある場合には、形状不連続性がさらに高まるため、その傾向はより一層顕著となる。
鋼部材端部の溶接部のき裂発生を制御する先行技術として、特許文献1に記載の技術が知られている。この技術は、通常の溶接工程に追加して、開先端側の一定範囲に化粧盛りを行い、更にこの化粧盛り止端から一定の範囲に第二の化粧盛りを行うことで溶接熱影響部が化粧盛りにより再熱を受けて、き裂進展を母材側に発生させることで、溶接接合部の強度低下を最小にし、破損を防止するものである。
特開2002−172462号公報
しかしながら、上述した従来技術では、フランジと、スカラップが設けられたウェブとを有するH形断面の梁等の鋼部材において、スカラップ直下のフランジ溶接接合部の品質向上に対応したものではないので、上述したスカラップ直下のき裂発生を防ぐことは困難である。すなわち、スカラップ直下のフランジ溶接接合部は、ウェブが施工上の障害物として存在するため、梁等の鋼部材の開先部のアンダーカットが発生し易く、形状的に応力集中が発生し易いため、地震等の外力を受けた場合に、曲げモーメントが高くなる梁端部のこの箇所においてき裂が発生を防ぐことが困難となる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、H形断面の鋼部材のスカラップ直下のフランジ溶接接合部でのき裂発生を抑止できる鋼部材の溶接接合方法および溶接接合構造を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明に係る鋼部材の溶接接合方法は、ウェブと当該ウェブのウェブ幅方向の両端に設けられた一対のフランジとを有するH形断面の鋼部材の前記フランジの長手方向の端部を被接合部材に溶接接合する鋼部材の溶接接合方法であって、
前記ウェブのウェブ幅方向の端部にスカラップが設けられ、
前記フランジの長手方向の端部に開先が設けられ、
前記開先と前記被接合部材との間に、前記フランジの幅方向に延在する溶接溝が設けられ、
前記溶接溝において、前記フランジの幅方向の一方の端部と他方の端部との間で溶接層を連続して形成する工程を所定回数繰り返すことによって、第1溶接層部を形成する第1溶接層部形成工程と、
前記溶接溝において、前記第1溶接層部の上に、前記フランジの幅方向の一方の端部から前記スカラップの直下位置まで一方の溶接層を連続して形成し、前記スカラップの直下位置で折り返して前記スカラップの直下位置の前記一方の溶接層に重ねて第1の重ね層部を形成して第1の厚層部を設ける一方で、前記第1溶接層部の上に、前記フランジの幅方向の他方の端部から前記スカラップの直下位置まで他方の溶接層を連続して形成し、前記スカラップの直下位置で折り返して前記スカラップの直下位置の前記他方の溶接層に重ねて第2の重ね層部を形成して第2の厚層部を設けることで、前記第1溶接層部の上に、前記スカラップの直下において互いに結合し、かつ前記溶接溝から盛り上がる前記第1層厚部と前記第2層厚部とが互いに結合された第2溶接層部を形成する第2溶接層部形成工程とを含むことを特徴とする。
また、本発明に係る鋼部材の溶接接合構造は、ウェブと当該ウェブのウェブ幅方向の両端に設けられた一対のフランジとを有するH形断面の鋼部材の前記フランジの長手方向の端部を被接合部材に溶接接合してなる鋼部材の溶接接合構造であって、
前記ウェブのウェブ幅方向の端部にスカラップが設けられ、
前記フランジの長手方向の端部に開先が設けられ、
前記開先と前記被接合部材との間に、前記フランジの幅方向に延在する溶接溝が設けられ、
前記溶接溝に、複数の溶接層からなる第1溶接層部が設けられ、
前記溶接溝において、第1溶接層部の上に、前記スカラップの直下において互いに結合し、かつ前記溶接溝から盛り上がる第1の厚層部と第2の厚層部を備えた第2溶接層部が形成され、
前記第2溶接層部は、前記フランジの幅方向の一方の端部から前記スカラップの直下位置まで連続する一方の溶接層と、前記フランジの幅方向の他方の端部から前記スカラップの直下位置まで連続する他方の溶接層とを備え、
前記第1の厚層部は、前記スカラップの直下位置に位置する一方の前記溶接層と、当該溶接層を折り返し重ねられた状態の第1の重ね層部とを有し、
前記第2の厚層部は、前記スカラップの直下位置に位置する他方の前記溶接層と、当該溶接層を折り返し重ねられた状態の第2の重ね層部とを有していることを特徴とする。
本発明においては、フランジの長手方向の端部の開先と被接合部材との間に設けられた溶接溝において、第1溶接層部の上に、スカラップの直下位置で互いに結合した第1および第2の層厚部を備えた第2溶接層部が形成され、第1および第2の厚層部が溶接溝から盛り上がっているので、スカラップの直下のアンダーカット等の欠陥発生を抑止し、スカラップの直下の応力集中を緩和させることができる。
特に鋼部材がビルトH形鋼(例えば溶接組立H形断面梁)であり、ウェブ−フランジ間で不溶着部がある場合には、第1および第2の厚層部がスカラップの直下の不溶着部先端を覆うため、この部分の応力集中を緩和させることができる。
また、スカラップの直下位置で一方および他方の溶接層をそれぞれ折り返し重ねることによって、第1および第2の重ね層部を形成するので、ビルトH形鋼のフィレット部の再熱が行われるため、材料靱性が向上する。
さらに、スカラップの直下において、フィレット残し部が存在している状態である場合、第2溶接層部がスカラップの直下で層厚の大きい状態となるので、フィレット残し部に起因するスカラップの開口端とフランジの内面との間の段差を解消し、応力集中が小さい溶接接合部を実現できる。
以上により、H形断面の鋼部材のスカラップ直下のフランジ溶接接合部でのき裂発生を抑止できる。このため、H形断面の鋼部材の塑性変形性能や疲労性能が向上し、構造物の外力に対するエネルギー吸収性能を向上させることが可能となる。
また、本発明の鋼部材の溶接接合方法の構成において、前記第2溶接層部は前記溶接溝の溝幅方向における前記被接合部材側の前記第1溶接層部の上に設けられておらず、
前記第2溶接層部の上と前記第1溶接層部の上の両方に重なって、前記フランジ幅方向に連続した第3溶接層部を形成する第3溶接層部形成工程を含んでいてもよい。
また、本発明の鋼部材の溶接接合構造において、前記第2溶接層部は前記溶接溝の溝幅方向における前記被接合部材側の前記第1溶接層部の上に設けられておらず、
前記第2溶接層部の上と前記第1溶接層部の上の両方に重なって、前記フランジ幅方向に連続した第3溶接層部が設けられていてもよい。
このような構成によれば、溶接溝の溝幅が大きくて、第2溶接層部が溶接溝の幅全体に設けることができない場合に、第2溶接層部の上と第1溶接層部の上の両方に重なって、前記フランジ幅方向に連続した第3溶接層部が設けられるので、溶接溝の幅全体において、第2溶接層部と第1溶接層部との形状的な不連続を解消できる。このため、H形断面の鋼部材の長手方向の端部を被接合部材に確実に溶接接合できる。
本発明によれば、H形断面の鋼部材のスカラップ直下のフランジ溶接接合部でのき裂発生を抑止できる。
実施形態の梁端現場接合部の概要を示す斜視図である。 図1におけるA部の詳細図である。 図1における切断線B−Bで切断した断面図である。 実施形態の第一の態様であるスカラップの詳細を示す側面図である。 実施形態の第二の態様であるスカラップの詳細を示す側面図である。 実施形態の第三の態様であるスカラップの詳細を示す側面図である。 実施形態の第四の態様であるスカラップの詳細を示す側面図である。 実施の形態の梁の溶接接合構造を示す側面図である。 図8における切断線C−Cで切断した断面図である。 実施の形態の梁の溶接接合構造の他の例を示す側面図である。
以下、本発明に係る鋼部材の溶接接合方法および溶接接合構造の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態では、鋼部材として溶接組立H形断面梁1(以下、梁1と略称する場合もある。)を使用し、当該溶接組立H形断面梁1のフランジ20の長手方向の端部を溶接接合する被接合部材として、角形鋼管柱110(以下、柱110と略称する場合もある。)に設けたダイアフラム113を使用した場合を例にとって説明するが、鋼部材としては、溶接組立H形断面梁1に限ることはなく、H形断面を有するものであればよいし、被接合部材としては、ダイアフラム113に限ることはなく、H形断面を有する鋼部材のフランジの長手方向の端部が溶接接合されるものであればよい。
図1は、角形鋼管柱110にH形断面梁1の梁端が溶接接合された梁端接合部100を示す斜視図、図2は図1におけるA円部の拡大図である。
梁端接合部100は、建設現場で溶接接合されたものであり、柱110と、柱110にと接続される梁1とを備えている。柱110は、鋼材からなり角管状に形成された複数の柱材111を軸方向に連結して構成されている。
柱110と梁1とが接続する柱梁接合部110aには、梁1と接続するための一対のダイアフラム112、112が設けられている。なお、柱梁接合部110aは角形鋼管によって形成されたもので、上下の高さ寸法は梁1のウェブ10の上下方向の高さ寸法と等しくなっている。
各ダイアフラム112は、略矩形状の板体状に形成されたいわゆる通しダイアフラムであり、柱梁接合部110aの上下両端側に配設されていて、この柱梁接合部110aと柱材111とによってそれぞれ挟み込まれている。そして、各ダイアフラム112は、周縁部分が各柱材111の側面111aから突出した状態で溶接等により柱梁接合部110aおよび柱材111と一体化されている。
なお、梁端現場接合部については、本実施形態のような通しダイアフラム形式の構造に限定されず、例えば梁1がダイアフラムを介さず柱110に直接接続される構成でもよいし、柱110がH形鋼で梁1とは柱110あるいはダイアフラムを介して接続される構成でもよい。
梁1は、通常H形断面梁によって形成されている。本実施形態において梁1は、溶接組立H形断面梁1により形成されている。梁1は、全体として一方向(水平方向)に延びていて、ウェブ10と、ウェブ10の軸方向と直交する方向の両端部(以下、ウェブ(10)の軸方向と直交する方向の端部を「縁」ということがある。)10b、10bに接続された一対のフランジ20とを有する。
ウェブ10は、ウェブ10の軸方向と直交する方向、すなわちウェブ幅方向を梁1の高さ方向として、梁1の軸方向に延びている。一対のフランジ20は、梁1の軸方向に延びており、ウェブ10の両縁10b、10bに接続されている。また、一対のフランジ20は、ウェブ10の上下両端部において、それぞれウェブ10からウェブ10の厚さ方向に略直角に張出している。そして、梁1の軸線方向の端部が、柱110の周面に接続されている。なお、一対のフランジ20、20のうち、下側に位置するフランジ20を下フランジ、上側に位置するフランジ20を上フランジと称する。
ここで、本実施の形態においては、梁1において柱110と接続する軸方向の端部を軸端部(1a)と称し、梁の軸端部において、ウェブ10およびフランジ20が柱110と接続される部分をそれぞれ軸端(10a、20a)と称する。
本実施形態における溶接組立H形断面梁1では、図3に示すように、ウェブ10と一対のフランジ20とが交差する部分に、溶接により形成された隅肉部(隅肉溶接部、フィレット部)30が設けられている。すなわち、隅肉部30は、溶接材または溶接材と母材とが溶融することにより形成されている。隅肉部30は、ウェブ10の両縁10b、10bにおいて、ウェブ10の両方のウェブ面11、11と、一対のフランジ20の互いに向かう内側の面である内面21、21との間にそれぞれ形成されている。言い換えれば、隅肉部30は、ウェブ10の各縁10b、10bにおいてウェブ10を挟み込むように各ウェブ面11、11に設けられている。
また、図3に示すように、本実施形態において隅肉部30は、梁1の軸方向視した断面において、ウェブ10のウェブ面11と接続するウェブ止端部31から、フランジ20の内面21と接続するフランジ止端部32までを繋ぐ直線状の傾斜面を有する三角形状に形成されており、さらに本実施形態では断面二等辺三角形状に形成されている。隅肉部30におけるウェブ10のウェブ面11およびフランジ20の内面21に沿う各辺の大きさ、すなわちフランジ20の内面21からウェブ止端部31までの距離である隅肉高さHf、および、ウェブ10のウェブ面11からフランジ止端部32までの距離である隅肉幅Wfとしては、例えば3〜30mm程度である。
なお、隅肉部30の断面は三角形状に限定されるものではない。ウェブ止端部31からフランジ止端部32まで円弧状の凹曲面で接続されてよく、ウェブ止端部31およびフランジ止端部32において当該凹曲面の接線がウェブ10のウェブ面11およびフランジ20の内面21に平行となるようにして接続されていてもよい。また、ウェブ止端部31からフランジ止端部32まで凸曲面で接続されていてもよい。
本実施形態では、上記のとおり隅肉部30はウェブ10とフランジ20とを隅肉溶接を行うことにより形成されるものであり、隅肉部30と、隅肉部30近傍のウェブ10およびフランジ20との各部分によって溶接部が形成されている。
そして、当該梁1は、本実施形態のH形断面部材の端部接続構造200により柱110に接続されている。すなわち、図1に示すように、本実施形態のH形断面部材の端部接続構造200は、梁1のフランジ20の軸端20aを柱110に溶接するフランジ溶接部40と、梁1のウェブ10の軸端10aを柱110に溶接するウェブ溶接部50とを有する。また、フランジ溶接部40の下面側には、このフランジ溶接部40を形成する溶金が、フランジ20の開先面40aと柱110との間から抜け落ちるのを防ぐ裏当金45が設けられている。
また、本実施形態においては、フランジ20の軸端20aは柱110のダイアフラム112に溶接されて、ウェブ10の軸端10aは柱梁接合部110aを形成する柱材111の側面111aに溶接されている。このようにして、角形鋼管柱110にH形断面梁1の梁端が溶接接合されている。また、本実施の形態に係るH形断面の梁1のフランジ20の長手方向の端部を角形鋼管柱110のダイアフラム112に溶接接合する溶接接合方法および溶接接合構造については後述する。
また、梁1におけるウェブ10の軸端10aにはスカラップ60が設けられている。スカラップ60は、ウェブ10の軸端10a側における一対のフランジ20、20側となる両縁10b、10b位置に、直近のフランジ20の軸端20a側およびウェブ10の軸端10a側の方向に向けて開口するように、かつウェブ10の厚さ方向に貫通するようにそれぞれ設けられている。これにより、フランジ溶接部40は、フランジ20の幅方向一方の端部から、スカラップ60を通してウェブ10を横切って幅方向他方の端部まで形成されている。また、ウェブ溶接部50は、ウェブ10の両縁10b、10bに設けられたスカラップ60まで形成されている。
なお、本実施形態においては、梁1のウェブ10は、その軸端10aを柱110に溶接することにより柱110に接続されているが、梁のウェブの軸端を接合する方法は溶接に限定されるものではなく、例えばボルト接合によるものでもよい。
図4に示すように、スカラップ60は、上記のように、直近のフランジ20の軸端20a側および直近のウェブ10の軸端10a側の方向に開いた開口を有しているため、2つの開口端を含んでいる。すなわち、直近のフランジ20側に位置する第一の開口端60aと、第一の開口端60aと相反する側、言い換えれば、一対のフランジ20で挟まれたウェブ10のウェブ幅方向の中央側に位置する第二の開口端60bとを含む。より具体的に、第一の開口端60aは、直近のフランジ20の内面21側の位置に、第二の開口端60bはウェブ10の軸端10aにそれぞれ形成されている。
また、スカラップ60は、第一の開口縁部61と、第二の開口縁部62と、第三の開口縁部63とを有している。第一の開口縁部61は、第一の開口端60aを含み、第一の開口端60aから、梁1の軸方向における軸端部1aから離れる方向に向かって延びている。第二の開口縁部62は、第二の開口端60bを含み、第二の開口端60bから梁1の軸端部1aから離れる向き、すなわち梁1の軸方向の中央に向かって延びている。第三の開口縁部63は、第一の開口縁部61と第二の開口縁部62とを接続している。
具体的に、第一の開口縁部61は、隅肉部30におけるウェブ止端部31と交差するようにして円弧状に形成された、第一の開口端60a側の一端71aで接線が前記フランジ20の内面21と平行となる第一の円弧部71を有する。
第二の開口縁部62は、形状は特に限定されないが、本実施形態の場合は第二の開口端60bから直線状に延びている。
また、第三の開口縁部63は、第一の開口縁部61から第二の開口縁部62に向かって湾曲する円弧状に形成された第二の円弧部72を有している。
ここで、第一の円弧部71の曲率半径R1は、第二の円弧部72の曲率半径R2の2.5倍以上であることが望ましい。このように、第一の円弧部71の曲率半径R1を、第二の円弧部72の曲率半径R2の2.5倍以上としたのは、スカラップ60のフランジ20側における歪みの集中を緩和して、スカラップ60からのき裂の発生をより安定的に抑制することが可能となるためである。
なお、第一の開口縁部61、第二の開口縁部62および第三の開口縁部63によって構成されるスカラップ60において、一対のフランジ20が互いに離間する方向(梁1の高さ方向)におけるスカラップ60の高さ寸法Hsは、梁端現場接合部100の耐力を安定的に確保するためになるべく小さくすることが望ましいが、フランジ20と柱110との溶接の施工性の観点から、スカラップ60の下フランジ20側から上フランジ20側へ向かう方向の寸法は、15mm以上とすることが望ましい。さらに、スカラップ60の高さ寸法Hsは、ウェブ10でもモーメントをより効率よく伝達させて、スカラップ60のフランジ20側の歪みの集中をさらに緩和させるため、35mm以下であるものとしてもよい。
また、第二の円弧部72の曲率半径R2は、スカラップの形成の際にカッターにより切削することを考慮し、作業性を確保するためも6mm以上であるものとしてもよい。
以下、スカラップ60のより詳細な態様について説明する。
図4は第一の態様のスカラップ60を示している。図4に示すように、第一の態様のスカラップ60において、第一の開口縁部61は、直近のフランジ20側の位置に配設されていて、第一の開口端60aを含む第一の直線部73と、第一の直線部73に接続された第一の円弧部71とを有する。
第一の直線部73は、直近のフランジ20の内面21において、スカラップ60によりウェブ10が切り欠かれた部分に相当するもので、本態様においては、直近のフランジ20の内面21に含まれている。また、第一の開口端60aは、直近のフランジ20の軸端20aに設けられていて、さらに具体的には、柱110と溶接されるフランジ溶接部40を形成する際に用いられる開先面40aにおけるウェブ10側の端部がこの第一の開口端60aとなっている。
第一の円弧部71は、第一の直線部73と接続する位置における接線がフランジ20の内面21と平行であり、かつ梁1の軸端部1aから離れるに従って、次第にフランジ20から離れる方向に湾曲する凹曲線状に形成されている。この第一の円弧部71は、第一の直線部73と接続されて隅肉部30を横断する隅肉横断部71cと、隅肉横断部71cにおける直近のフランジ20とは反対側の一端部からウェブ10のウェブ面11に沿って形成されるウェブ形成部71dとを有する。
一方、第二の開口縁部62は、第二の開口端60bを含む直線状に形成され、梁1の軸方向に沿って延びている第二の直線部74を有している。
また、第三の開口縁部63は、第二の円弧部72を有していて、第二の円弧部72の一端72aは、第一の開口縁部61の第一の円弧部71と接続されているとともに、他端72bは第二の開口縁部62の第二の直線部74と接続されている。
ここで、第一の円弧部71と第二の円弧部72とは、第一の円弧部71がなす円弧と第二の円弧部72がなす円弧とが共通の接線となる部分において接続されている。また、第二の円弧部72と第二の直線部74との接続部分では、第二の円弧部72をなす円弧の接線と第二の直線部74とが一致している。これにより、第一の開口縁部61、第二の開口縁部62及び第三の開口縁部63で構成されるスカラップ60の縁部の形状は連続的になっている。
なお、本態様においてスカラップ60の高さ寸法Hsは第一の直線部73と第二の直線部74との離間距離によって定まる。
また、図5は第二の態様のスカラップ60Aを示している。なお、第一態様と同一の構成については同一の符号を付与した上で説明を省略する。
図5に示すように、第二の態様のスカラップ60Aにおいて第一の開口縁部61は、第一の態様における第一の直線部73に相当する部分を備えず、第一の円弧部71における直近のフランジ20側の一端71aが第一の開口端60aとなっている。第一の開口端60aとなる第一の円弧部71の一端71aは、フランジ20の内面21上に位置しており、当該一端71aにおける接線がフランジ20の内面21に平行である。
なお、本態様においてスカラップ60の高さ寸法Hsは、第一の円弧部71の一端71aと第二の直線部74との離間距離によって定まる。
また、図6は第三の態様のスカラップ60Bを示している。同様に、第一態様と同一の構成については同一の符号を付与した上で説明を省略する。
図6に示すように、本態様においては、フランジ溶接部40を形成する際に用いられる開先面40aが、上方に(厳密には上方に行くに従って次第に梁1の軸端部1aから離れる方向)に立ち上がっていて、開先面40aの一端が、直近のフランジ20の内面よりもウェブ幅方向中央側に位置している。そして、この開先面40aの一端が第一の開口端60aとなっている。つまり、スカラップ60Bの第一の開口端60aが下フランジ20の内面よりウェブ10側に寄せた位置の隅肉溶接部30の表面にある。
具体的に、スカラップ60Bは、第一の開口縁部61が、第一の開口端60aを含む第一の直線部75と、第一の直線部75と接続された第一の円弧部71とを有していて、第一の直線部75は、第一の開口端60aが直近のフランジ20の内面よりもウェブ幅方向中央側に位置している分だけフランジ20の内面21から離間した状態で、フランジ20の内面21と平行に形成されている。
ここで、第一の直線部75とフランジ20の内面21との距離で表わされるスカラップ離間距離Xsは、少なくとも隅肉部30のウェブ止端部31からフランジ20の内面21までの距離である隅肉高さHfよりも小さい。これにより、第一の直線部75と接続されている第一の円弧部71はウェブ止端部31と交差している。
なお、本態様においてスカラップ60の高さ寸法Hsは第一の直線部75と第二の直線部74との離間距離によって定まる。
また、図7は第四の態様のスカラップ60Cを示している。なお、第三態様と同一の構成については同一の符号を付与した上で説明を省略する。
図7に示すように、第四の態様のスカラップ60Cにおいて第一の開口縁部61は、第三の態様における第一の直線部75に相当する部分を備えず、第一の円弧部71の一端71aが第一の開口端60aとなっている。第一の開口端60aとなる第一の円弧部71の一端71aは、第三の態様と同様にフランジ20の内面21から離間していて、当該一端71aにおける接線はフランジ20の内面21に平行となっている。つまり、スカラップ60Cの第一の開口端60aが下フランジ20の内面よりウェブ10側に寄せた位置の隅肉溶接部30の表面にある。
ここで、第一の円弧部71の一端71aとフランジ20の内面21との距離で表わされるスカラップ離間距離Xsは、少なくとも隅肉部(隅肉溶接部)30のウェブ止端部31からフランジ20の内面21までの距離である隅肉高さHfよりも小さい。これにより、第一の直線部73と接続されている第一の円弧部71はウェブ止端部31と交差している。
なお、本態様においてスカラップ60の高さ寸法Hsは、第一の円弧部71の一端71aと第二の直線部74との離間距離によって定まる。
なお、上記第一〜第四の態様において、第一の開口縁部61の第一の円弧部71と第三の開口縁部63の第二の円弧部72とは、第一の円弧部71がなす円弧と第二の円弧部72がなす円弧とが共通の接線となる部分において接続されているものとした。しかしながら、第一の円弧部71と第二の円弧部72とが、共通の接線となる部分において接続されない、すなわち境界となる角が形成された状態で接続されていてもよい。また、第一の円弧部71と第二の円弧部72との間に直線部を設けて、これらの第一の円弧部71と第二の円弧部72とが間接的に接続される構成であってもよい。
さらに、第二の開口縁部62については、本実施形態においては直線部であるとしたが、任意の形状とすることができ、例えば円弧状に形成されていてもよい。
上記のようなH形断面部材の端部接続構造200では、第一の開口縁部61と第二の開口縁部62とを接続する第三の開口縁部63における第二の円弧部72を設けるとともに、フランジ20側に位置する第一の開口縁部61における第一の円弧部71を設けて、第一の円弧部71を第二の円弧部72の2.5倍以上大きい曲率半径しても良い。
これにより、スカラップ60のフランジ20側における歪みの集中を緩和し、スカラップ60からのき裂の発生を抑制することができる。そして、このような第一の円弧部71が隅肉部30におけるウェブ止端部31と交差するようにして形成されていることで、仮に延性き裂が発生したとしても、幅が相対的に狭く断面がウェブ10から断面変化が生じるウェブ止端部31近傍でき裂を発生させることができる。また、仮にウェブ10側の止端部近傍で延性き裂が発生したとしても、発生したき裂を、フランジ20に比較して引張応力が低いウェブ止端部31に沿って軸方向に安定的にき裂を進展させることができる。したがって、本実施形態のようなH形断面部材の端部接続構造200では、補強するために別の構成を設けなくても、スカラップから初期き裂が発生することを遅らせつつ、万一初期き裂が発生しても早期破断に至らないように延性き裂を進展させることができ、より安全性の高い梁端現場接合部100とすることができる。
また、スカラップ60の高さ寸法を15mm以上とすることで、フランジ20と柱110との溶接の施工性を向上させることができる。
また、スカラップ60の高さ寸法を35mm以下とすることで、ウェブ10でもモーメントをより効率よく伝達することができるため、柱110と梁1との接合部としての降伏曲げ耐力を向上させることができる。また、スカラップ60の高さ寸法を低く抑えることによって、ウェブ10でモーメントをより効率よく伝達することができるため、スカラップ60のフランジ20側の歪みの集中をさらに緩和させることができる。
さらに、第一の円弧部71と第二の円弧部72とが共通の接線により接続されていることで、第一の円弧部71と第二の円弧部72とが凹凸なく滑らかに接続されるため、より一層歪みの集中を緩和することができ、き裂の発生をより安定的に抑制することができる。
また、第二の円弧部72の曲率半径R2を6mm以上とすることで、第二の円弧部72における歪みの集中も緩和することができるとともに、スカラップをカッターによって容易に切削して成形することができる。
さらに、上記H形断面部材の端部接続構造200は、上記の第三の態様のように、第一の開口縁部61は、第一の開口端60aを有し前記フランジ20の内面21に平行に配された直線部75を有し、第一の円弧部71の一端71aがこの直線部75と接続されているものとしてもよく、これにより、フランジ20の軸端20aを溶接するための十分なスペースを確保することができ、フランジ20と柱110との溶接を安定的に行い、溶接欠陥を生じないようにすることができる。
次に、本実施の形態に係るH形断面の梁1のフランジ20の長手方向の端部を角形鋼管柱110のダイアフラム112に溶接接合する溶接接合方法および溶接接合構造について説明する。
図5および図8に示すように、梁1のウェブ10のウェブ幅方向の端部(図5および図8において下端部)には、上述したようにスカラップ60Aが設けられている。また、梁1の下フランジ20の長手方向の端部には開先面(開先)40aが設けられている。開先面40aは、上方に行くに従って次第に梁1の軸端部1aから離れる方向に立ち上がる傾斜面となっており、当該開先面40aは、柱110のダイアフラム112の外周面に所定の間隔をもって対向して配置されている。また、開先面40aの下端とダイアフラム112の外周面の下端部との間には裏当金45が設けられている。
そして、開先面40aとダイアフラム112の外周面と裏当金45の上面との間に、下フランジ20の幅方向(図5および図8において紙面と直交する方向)に延在する溶接溝55が設けられている。溶接溝55は、図9に示すように、左右(下フランジ20の幅方向)に延在しており、その左右両端部にはそれぞれエンドタブ56が設けられている。このエンドタブ56は、溶接溝55に溶接金属を充填する際に、当該溶融状態の溶接金属が溶接溝55の両端部から流出するのを防止するためのものであり、例えば溶接溝55の両端部においてダイアフラム112に仮固定されている。なお、エンドタブ56は溶接後に取り外してもよいし、そのまま放置しておいてもよい。
本実施の形態では、溶接溝55に第1溶接層部81、第2溶接層部82および第3溶接層部83を以下のようにして形成する。
すなわちまず、溶接溝55において、下フランジ20の幅方向の一方の端部と他方の端部との間で溶接層81aを連続して形成する工程を所定回数繰り返すことによって、第1溶接層部81を形成する(第1溶接層部形成工程)。
この第1溶接層部形成工程によって第1溶接層部81を形成する場合、まず溶接溝55の底部において、下フランジ20の幅方向の一方の端部からの他方の端部に向かいガスシールドアーク溶接を行って第1層目の溶接層81aを連続して形成し、次いで当該溶接層81a上で、下フランジ20の幅方向の他方の端部からの一方の端部に向かいガスシールドアーク溶接を行って次の溶接層81aを連続して形成する工程を順次往復で所定回数繰り返すことによって、溶接溝55に上下に複数の溶接層81aからなる第1溶接層部81を形成する。
また、これ以外でも、まず溶接溝55の底部において、下フランジ20の幅方向の一方の端部からの他方の端部に向かいガスシールドアーク溶接を行って第1層目の溶接層81aを連続して形成し、次いで当該溶接層81a上で、下フランジ20の幅方向の一方の端部からの他方の端部に向かいガスシールドアーク溶接を行って次の溶接層81aを連続して形成する工程を順次で所定回数繰り返すことによって、溶接溝55に上下に複数の溶接層81aからなる第1溶接層部81を形成してもよい。
つまり、第1溶接層部形成工程では、下フランジ20の幅方向の一方の端部からの他方の端部に向かい溶接層81aを連続して形成する工程を往復で所定回数繰り返して形成してもよいし、溶接層81aを連続して一方向に形成する工程を所定回数繰り返して形成してもよい。
そして、第1溶接層部81は最終層を残した状態とする。つまり第1溶接層部81は、溶接溝55の深さ方向全体に形成するのではなく、深さ方向の上部は1層分、つまり1パス(最終パス)分だけ形成しない状態とする。
第1溶接層部形成工程の後、最終パスにおいて第2溶接層部形成工程を行って、第1溶接層部81の上に第2溶接層部82を形成する。この第2溶接層部82は溶接溝55の溝幅方向におけるダイアフラム112側の第1溶接層部81の上に設けられず、溶接溝55の幅方向の略半分の下フランジ20側の第1溶接層部81の上に設けられる。
第2溶接層部形成工程では、図9に示すように、溶接溝55において、第1溶接層部81の上に、下フランジ20の幅方向の一方の端部からスカラップ60Aの直下位置まで一方の溶接層82aをガスシールドアーク溶接によって連続して形成する。そして、スカラップ60Aの直下位置で折り返し、その折り返し位置から一定の範囲において一方の溶接層82aに重ねるように第1の重ね層部82bを形成することにより、第1の厚層部82Aを形成する。つまり、この第1の厚層部82Aは、スカラップ60Aの直下位置の一方の溶接層82aとこれに重ねられた第1の重ね層部82bとによって構成される。
なお、第1の重ね層部82bを形成する範囲については、第1の厚層部82Aを形成することができれば特に限定はされないが、例えば一方の溶接層82aからの折り返し位置から、溶接組立H形断面梁1の隅肉部におけるフランジ20側の脚長以上となる範囲とすることが好ましい。
一方、溶接溝55において、第1溶接層部81の上に、下フランジ20の幅方向の他方の端部からスカラップ60Aの直下位置まで他方の溶接層82aをガスシールドアーク溶接によって連続して形成する。そして、スカラップ60Aの直下位置で折り返し、その折り返し位置から一定の範囲において他方の溶接層82aに重ねるように第2の重ね層部82bを形成することにより、第2の厚層部82Aを形成する。つまり、この第2の厚層部82Aは、スカラップ60Aの直下位置の他方の溶接層82aとこれに重ねられた第2の重ね層部82bとによって構成される。
なお、第2の重ね層部82bを形成する範囲については、第2の厚層部82Aを形成することができれば特に限定はされないが、例えば他方の溶接層82aからの折り返し位置から、溶接組立H形断面梁1の隅肉部におけるフランジ20側の脚長以上の範囲とすることが好ましい。
このようにして、第1溶接層部81の上に、スカラップ60Aの直下において互いに結合し、かつ溶接溝55から盛り上がる第1および第2厚層部82A,82Aを備えた第2溶接層部82を形成する。なお、第1および第2厚層部82A,82Aは溶接時において溶融状態となっているので、互いに溶け合って結合する。
最後に、図8に示すように、第2溶接層部82の上と第1溶接層部81の上の両方に重なって、下フランジ20の一方の端部からスカラップ60Aの直下位置まで一方の溶接層83aをガスシールドアーク溶接によって連続して形成し、次に下フランジ20の幅方向の他方の端部からスカラップ60Aの直下位置まで他方の溶接層83aをガスシールドアーク溶接によって連続して形成し、フランジ20の幅方向に連続した第3溶接層部83を形成する(第3溶接層部形成工程)。なお、スカラップ60Aの直下位置で、一方の溶接層83aと他方の溶接層83aとは溶接時において溶融状態となっているので、互いに溶け合って結合する。
この第3溶接層部形成工程では、第1溶接層部81上と第2溶接層部82上の両方に重なって形成される第3溶接層部83を形成し、当該第3溶接層部83、第1および第2の厚層部82,82Aを有する第2溶接層部82、および第1溶接層部81を一体に結合させる。
このようにして、下フランジ20の長手方向の端部がダイアフラム112の周面に溶接接合される。
図10は、梁1のウェブ10の下端部に、スカラップ60Aに代えてスカラップ60Cが形成されている場合を示す。
スカラップ60Cの構成の説明については、図7を参照して既に説明しているので、省略する。
スカラップ60Cにおいて、その第一の開口端60aは下フランジ20の内面よりウェブ10側に寄せた位置の隅肉溶接部(フィレット部)30の表面にある。つまり、スカラップ60Cは、フィレット部30の下部(一部)を残してウェブ10の下端部に形成されている。
このため下フランジ20の長手方向の端部に形成されている開先面(開先)40aも下フランジ20の先端下縁からフィレット部30の下部のフィレット残し部30bまで形成されている。したがって、溶接溝35の上端については、溶接溝35の幅方向において下フランジ20の内面側の上端よりフィレット部30側の上端の方が高くなっている。
このような溶接溝35にも同様にして、第1溶接層部形成工程によって第1溶接層部81を形成し、第2溶接層部形成工程によって第2溶接層部82を形成し、第3溶接層部形成工程によって第3溶接層部83を形成する。
このように溶接溝55に、第1溶接層部81、第2溶接層部82および第3溶接層部83を形成することによって、以下のような効果を奏する。
すなわち、下フランジ20の長手方向の端部の開先面40aとダイアフラム112の周面との間に設けられた溶接溝55において、第1溶接層部81の上に、スカラップ60Aの直下位置で互いに結合した第1および第2の厚層部82A,82Aを備えた第2溶接層部82が形成され、第1および第2の厚層部82A,82Aが溶接溝55から盛り上がっているので、スカラップ60A,60Cの直下のアンダーカット等の欠陥発生を抑止し、スカラップ60A,60Cの直下の応力集中を緩和させることができる。さらに、第3溶接層部83が、第1溶接層部81、第2溶接層部82の両方に重なって形成されるため、第1溶接層部81と第2溶接層部82の形状的な不連続を解消し、スカラップ60A,60Cの直下の応力集中を緩和させることができる。
特に梁1が溶接組立H形断面梁1であり、ウェブ−フランジ間で不溶着部がある場合には、第1および第2の厚層部82A,82Aがスカラップ60A,60Cの直下の不溶着部先端を覆うため、この部分の応力集中を緩和させることができる。
また、スカラップ60Cの直下位置で一方および他方の溶接層82a,82aをそれぞれ折り返し重ねることによって、第1および第2の重ね層部82b,82bを形成するので、溶接組立H形断面梁1のフィレット部30の再熱が行われるため、材料靱性が向上する。
さらに、図10に示すように、スカラップ60Cの直下のフィレット部30が所定の高さ分残っている状態、つまりフィレット残し部30bが存在している状態であるが、第2溶接層部82がスカラップ60Cの直下で層厚の大きい状態となるので、フィレット残し部30bに起因するスカラップ60Cの開口端60aと下フランジ20の上面との間の段差を解消し、応力集中が小さい溶接接合部を実現できる。
以上により、H形断面の梁1のスカラップ60A,60Cの直下のフランジ溶接接合部でのき裂発生を抑止できる。このため、梁1の塑性変形性能や疲労性能が向上し、構造物の外力に対するエネルギー吸収性能を向上させることが可能となる。
なお、本実施の形態において、図4に示すようなスカラップ60、図6に示すようなスカラップ60B、さらには図8および図10に二点鎖線で示す従来のスカラップ6を有する梁1を使用しても上記と同様の効果を得ることができる。
さらに、本実施の形態では、第1溶接層部81の上に、第2溶接層部形成工程によって第2溶接層部82を形成し、さらに、第3溶接層部形成工程によって第3溶接層部83を形成したが、溶接溝55の溝幅が小さい場合、第3溶接層部83を形成することなく、第2溶接層部82を溶接溝55の溝幅全体に形成してもよい。
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態および実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、本実施形態では、柱に接続するH形鋼は溶接組立H形断面としたが、これに限られるものではなく、圧延H形鋼としても良い。圧延H形鋼の場合には、フィレット部30も母材により形成される。
また、本実施の形態では、建設現場での溶接接合を想定しており、通常はガスシールドアーク溶接が適用されるが、溶接金属を複数積層可能な方法であれば、特に溶接手段は問わない。
さらに、本実施の形態では梁1のフランジ20の長手方向の端部を柱110のダイアフラム112に溶接接合したが、ダイアフラム112が無い場合、フランジ20の長手方向の端部を柱110に同様にして直接溶接接合してもよい。
1 梁(H形断面梁)
1a 軸端部
10 ウェブ
20 フランジ
30 隅肉溶接部(フィレット部)
40a 開先面(開先)
55 溶接溝
60、60A、60B、60C スカラップ
81 第1溶接層部
81a 溶接層
82 第2溶接層部
82A 厚層部
82a 溶接層
82b 重ね層部
83 第3溶接層部
83a 溶接層
112 ダイアフラム(被接合部材)

Claims (4)

  1. ウェブと当該ウェブのウェブ幅方向の両端に設けられた一対のフランジとを有するH形断面の鋼部材の前記フランジの長手方向の端部を被接合部材に溶接接合する鋼部材の溶接接合方法であって、
    前記ウェブのウェブ幅方向の端部にスカラップが設けられ、
    前記フランジの長手方向の端部に開先が設けられ、
    前記開先と前記被接合部材との間に、前記フランジの幅方向に延在する溶接溝が設けられ、
    前記溶接溝において、前記フランジの幅方向の一方の端部と他方の端部との間で溶接層を連続して形成する工程を所定回数繰り返すことによって、第1溶接層部を形成する第1溶接層部形成工程と、
    前記溶接溝において、前記第1溶接層部の上に、前記フランジの幅方向の一方の端部から前記スカラップの直下位置まで一方の溶接層を連続して形成し、前記スカラップの直下位置で折り返して前記スカラップの直下位置の前記一方の溶接層に重ねて第1の重ね層部を形成して第1の厚層部を設ける一方で、前記第1溶接層部の上に、前記フランジの幅方向の他方の端部から前記スカラップの直下位置まで他方の溶接層を連続して形成し、前記スカラップの直下位置で折り返して前記スカラップの直下位置の前記他方の溶接層に重ねて第2の重ね層部を形成して第2の厚層部を設けることで、前記第1溶接層部の上に、前記スカラップの直下において互いに結合し、かつ前記溶接溝から盛り上がる前記第1層厚部と前記第2層厚部とが互いに結合された第2溶接層部を形成する第2溶接層部形成工程とを含むことを特徴とする鋼部材の溶接接合方法。
  2. 前記第2溶接層部は前記溶接溝の溝幅方向における前記被接合部材側の前記第1溶接層部の上に設けられておらず、
    前記第2溶接層部の上と前記第1溶接層部の上の両方に重なるように、前記フランジの一方の端部と他方の端部との間で溶接層を連続して形成する工程を行うことによって、第3溶接層部を形成する第3溶接層部形成工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の鋼部材の溶接接合方法。
  3. ウェブと当該ウェブのウェブ幅方向の両端に設けられた一対のフランジとを有するH形断面の鋼部材の前記フランジの長手方向の端部を被接合部材に溶接接合してなる鋼部材の溶接接合構造であって、
    前記ウェブのウェブ幅方向の端部にスカラップが設けられ、
    前記フランジの長手方向の端部に開先が設けられ、
    前記開先と前記被接合部材との間に、前記フランジの幅方向に延在する溶接溝が設けられ、
    前記溶接溝に、複数の溶接層からなる第1溶接層部が設けられ、
    前記溶接溝において、第1溶接層部の上に、前記スカラップの直下において互いに結合し、かつ前記溶接溝から盛り上がる第1の厚層部と第2の厚層部を備えた第2溶接層部が形成され、
    前記第2溶接層部は、前記フランジの幅方向の一方の端部から前記スカラップの直下位置まで連続する一方の溶接層と、前記フランジの幅方向の他方の端部から前記スカラップの直下位置まで連続する他方の溶接層とを備え、
    前記第1の厚層部は、前記スカラップの直下位置に位置する一方の前記溶接層と、当該溶接層を折り返し重ねられた状態の第1の重ね層部とを有し、
    前記第2の厚層部は、前記スカラップの直下位置に位置する他方の前記溶接層と、当該溶接層を折り返し重ねられた状態の第2の重ね層部とを有していることを特徴とする鋼部材の溶接接合構造。
  4. 前記第2溶接層部は前記溶接溝の溝幅方向における前記被接合部材側の前記第1溶接層部の上に設けられておらず、
    前記第2溶接層部の上と前記第1溶接層部の上の両方に重なった、一つまたは複数の溶接層からなる第3溶接層部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の鋼部材の溶接接合構造。
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