JP2020090428A - シリコンの製造方法及び製造装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】太陽電池用シリコンとして好適のシリコンを、高効率、高収率及び低コストで製造するシリコンの製造方法及び製造装置を提供する。【解決手段】二酸化ケイ素を主成分とする出発原料を、炭素をベースとする還元剤を使用して熱還元することにより高純度シリコンを製造する。このとき、ニッケル、マンガン、コバルト、鉄、若しくは銅等の金属若しくはその化合物、又は前記金属若しくは化合物の混合物を主成分とする触媒を、前記出発原料及び前記還元剤に添加し、得られた材料をマイクロ波の照射により1200〜1600℃、好ましくは1200〜1500℃に加熱して、前記出発原料を前記還元剤により還元する。また、反応容器からの排出ガスを粉塵振るい落とし用の加振装置に導き、反応中間体のSiOをトラップした後、反応容器内に戻し、シリコン収量を向上させる。【選択図】図1
Description
本発明は、シリカ原料をマイクロ波加熱により還元してシリコンを製造するシリコンの製造方法及び製造装置に関し、特に太陽電池用シリコンを、省エネルギー及び低コストで製造することができるシリコンの製造方法及び製造装置に関する。
化石資源依存に起因するエネルギー資源供給の不安定化と、地球規模の環境問題の顕在化等により、再生エネルギー資源の開発が喫緊の課題となっている。太陽電池は最も有望な再生エネルギー資源の一つであり、現在世界中で安価で効率の高い太陽電池の開発が進められている。基板にシリコンを使用するシリコン系太陽電池は、変換効率及び耐久性が優れており、現在使用されている太陽電池の90%以上を占めている。太陽電池用シリコンとしては、純度99.9999%(6N)以上の高純度シリコンが使用されているが、このクラスの高純度シリコンを安価且つ高効率で製造する方法は確立されていない。多くは、半導体用シリコン(純度11N)の超高純度品の製造中に発生する切れ端及びウエハ製造の際に発生する鋸屑等を再利用している。
シリコンは、単体(純度約98%)の場合は製鉄材料又は製鉄の脱酸素材、アルミニウム合金の添加成分等に使用され、高純度シリコンは、半導体装置(純度11N)又は太陽電池(純度6N)の基板として使用されている。この高純度シリコンは、従来、主として、シーメンス(Siemens)法により製造されている。このシーメンス法においては、高純度の石英又は珪石(SiO2)を木炭等の高純度炭素と共に、アーク炉で2000〜3000℃に加熱して、約98%の純度のシリコン(金属級シリコン)に還元する(下記化学式1参照)。そして、得られたシリコンを、流動床反応炉を使用し、300〜350℃の温度で、塩化水素ガス(HCl)と反応させ、三塩化ケイ素(HSiCl3)に変換する。このとき、SiCl4が10〜14%副生し、三塩化ケイ素に混入する。そして、この三塩化ケイ素に対し、蒸留精製を繰り返して、高純度化した後、水素ガス雰囲気中で三塩化ケイ素を1000〜1100℃に加熱した高純度シリコンの芯棒(種材)の表面上に分解・堆積させ、純度が10Nから11Nの高純度多結晶シリコンを製造する。その後、必要に応じて、帯域溶融法等により更に高純度化(11N)する。
しかしながら、上述の現状の高純度シリコンの製造方法には、以下に示す問題点がある。先ず、原料として高純度の石英(SiO2)又は珪石(SiO2)が必要で、これらは希少資源であり、高価である。また、珪石の還元反応の過程で一酸化炭素(CO)ガス及び一酸化ケイ素(SiO)ガスが発生するため、これらの一部又は全部を、層状をなす原料中から逃がす必要があり、通気孔の確保のために、原料として塊状(大きさ5〜200mm)のものしか利用できない。このため、原料を反応前に精製することができず、高純度シリコンの製造のためには、原料として高価な高純度の石英又は珪石を使用せざるを得ない。
また、上記化学式1の反応において、原料を迅速に溶解するために、アーク炉で原料を2000℃以上に加熱する必要がある。このアーク炉法は、炭素電極をシリカと炭素の混合物中に差し込み、高電圧で大電流を電極に流して加熱する方法であり、極めて高い温度が得られる。しかし、このアーク炉法は、温度制御が難しく、加熱による電極の昇温及び降温で、電極も大きな損傷を受ける。また、アーク炉法は、原料を間接的に加熱することになるので、炉体及びその周囲も高温に加熱されエネルギー効率が低い。この加熱のために投入するエネルギーが極めて大きく、これが高純度シリコンの製造コストを大きく押し上げている。即ち、化学式1の反応の全工程で11〜15kWh/kg・Siという極めて多量の電力を消費するため、日本国内では化学式1の反応のシリコンを生産できず、ノルウエー、ブラジル、中国等の電気料が安価な国から全量輸入している。
更に、三塩化ケイ素を製造する反応においては、四塩化ケイ素(SiCl4)が10〜15%も副生してしまう。また、高純度のトリクロロシラン(HSiCl3)を得るため、蒸留精製を繰り返す必要があり、このためにも多量のエネルギーを消費する。
更にまた、高純度シリコンの堆積・成長を行う反応においては、反応速度が遅く、また、四塩化ケイ素(SiCl4)が多量に副生するという問題点がある。この四塩化ケイ素の副生を抑制するためには、トリクロロシラン(HSiCl3)の希釈のために、及び反応原料用として、高価な高純度水素を多量に必要とする。
一方、デバイスの素材の面においては、Si純度として6N以上を要求される太陽電池用シリコンの適切な製造法はなく、Si純度として11Nを超える超高純度が要求される半導体用ウエハの切りくず等を転用して製造している。このため、太陽電池用シリコンとしては、必要以上の高純度のシリコン素材を使用していることになり、高コストの要因となっている。
太陽電池用シリコンの製造方法として、上記シーメンス法以外に、金属級シリコンを四塩化ケイ素に変換し、高純度の亜鉛金属又はアルミニウム金属で還元する方法が提案されているが、これも少なくとも2回の還元反応を必要とすることと、高価な高純度の亜鉛又はアルミニウム金属を使用することから、コスト低減効果が少ない。また、炭素の自己燃焼熱を利用して、2000℃以上で熱炭素還元する方法も提案されているが、かなりの高温を必要とする上に、シリコンの収率が低い。また、二酸化ケイ素が部分還元された一酸化ケイ素(SiO)ガスが還元反応中に大量に散逸してしまい、得るべきシリコンの損失が大きい。更に、炭化ケイ素(SiC)等の副生成物が多く生成してしまう等の問題点もある。よって、この方法も、太陽電池用シリコンの製造方法として、低コスト且つ高効率で、量産に適した製造方法とはいえない。
一方、近時、シリカの粉末及びグラファイトの粉末の混合物に対して、マイクロ波を照射することにより、シリカをグラファイトにより還元して溶融シリコンを得る製造装置が開示されている(特許文献1、2)。また、触媒を使用して高周波誘導加熱によりシリカを還元する技術も開示されている(特許文献3)。
Ralph K. Iler, "The Chemistry of Silica-Solubility, Polymerization, Colloid and Surface Properties, and Biochemistry", John Wiley & Sons, Inc. New York (1979), p.331.
しかしながら、特許文献3に記載された技術では、触媒を使用しているものの、高周波誘導加熱により原材料を1500〜2200℃という高温に加熱する必要があり(特許文献3の請求項1)、昇温時間、ひいては製造時間が長くなり、その加熱による反応過程で、中間段階生成物である一酸化ケイ素ガスが他の物質と反応したり、離散したりして、製造せんとする溶融シリコンのSi原料の損失が大きくなる。このため、シリコンの収率が若干低く、投入する熱エネルギーが高い。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、太陽電池用シリコンとして好適のシリコンを、高効率、高収率及び低コストで製造することができるシリコンの製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
本発明に係るシリコンの製造方法は、二酸化ケイ素を主成分とする出発原料を、炭素をベースとする還元剤を使用して熱還元することによりシリコンを製造する方法において、ニッケル、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、金、チタン及びニオブからなる群から選択された1種の金属若しくはその化合物、又は前記金属若しくは化合物の混合物を主成分とする触媒を、前記出発原料及び前記還元剤に添加し、得られた材料をマイクロ波の照射により1200乃至1600℃に加熱して、前記出発原料を前記還元剤により還元して溶融シリコンを製造することを特徴とする。
このシリコンの製造方法において、前記触媒は、ニッケル、マンガン、若しくは銅又はこれらの元素を含む化合物を主成分とし、1200乃至1500℃の温度で還元反応を生じさせることが好ましい。
また、前記出発原料中のケイ素成分に対する前記触媒中の前記金属成分の質量比は、0.01質量%乃至10.0質量%とすることができる。
更に、前記出発原料は、更に、炭化ケイ素を含有することができ、この場合の炭化ケイ素の含有量は、前記二酸化ケイ素に対するモル比で、0.1乃至1.0とすることが好ましい。
前記出発原料、前記還元剤、及び前記触媒は、これらを混合し、必要に応じてバインダを混合した後、乾燥し、粒子状に成型してペレットにした状態で、マイクロ波加熱することが好ましい。
本発明に係るシリコンの製造装置は、上記シリコンの製造方法に使用する装置において、
密閉状態にすることができる反応容器と、
この反応容器内を上下に仕切る多孔質部材と、
前記反応容器内の前記多孔質部材の上に前記出発原料、前記還元剤及び前記触媒を投入する投入口と、
前記多孔質部材の下方の前記反応容器内から、前記溶融シリコンを排出する排出口と、
前記反応容器内の前記出発原料、前記還元剤及び前記触媒にマイクロ波を照射するマイクロ波発振器と、
を有し、
前記多孔質部材は、前記マイクロ波により加熱された前記出発原料が前記還元剤により還元されて得られた溶融シリコンが前記多孔質部材を通過して前記排出口から排出されると共に、前記原料及び前記還元剤は前記多孔質部材を通過しない大きさの孔を有することを特徴とする。
密閉状態にすることができる反応容器と、
この反応容器内を上下に仕切る多孔質部材と、
前記反応容器内の前記多孔質部材の上に前記出発原料、前記還元剤及び前記触媒を投入する投入口と、
前記多孔質部材の下方の前記反応容器内から、前記溶融シリコンを排出する排出口と、
前記反応容器内の前記出発原料、前記還元剤及び前記触媒にマイクロ波を照射するマイクロ波発振器と、
を有し、
前記多孔質部材は、前記マイクロ波により加熱された前記出発原料が前記還元剤により還元されて得られた溶融シリコンが前記多孔質部材を通過して前記排出口から排出されると共に、前記原料及び前記還元剤は前記多孔質部材を通過しない大きさの孔を有することを特徴とする。
この場合に、前記反応容器は、前記還元反応の途中で生成する一酸化ケイ素ガスを、前記還元反応中において、前記反応容器内に閉じ込めて離散しないようにする構造を有し、更に、ガス状で発生した一酸化ケイ素が低温部で固化することを利用してこの一酸化ケイ素を捕捉し、これを前記反応容器内に戻す粉塵トラップを有する構造を有することが好ましい。更に、前記反応容器は、マイクロ波を吸収しにくい物質でできた耐火性断熱材で覆われていることが好ましい。
本発明によれば、マイクロ波加熱により、原料、還元剤及び触媒を高効率で加熱することができると共に、触媒の使用により、反応温度を著しく低減することができ、結果的に、反応時間を短くすることができるので、高純度シリコンを高収率且つ低コストで製造することができる。
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態で使用するマイクロ波シリコン製造装置を示す模式図である。炉体20は内部に反応容器10を格納できる殻状をなし、この反応容器10を密閉状態に保持することができる。反応容器10は、アルミナ、炭化ケイ素、グラファイト又はマグネシア等の耐火物からなるるつぼ状をなし、その上端開口部には、アルミナ、ムライト、マグネシア又はジルコニア等の耐火物製の蓋12が被冠されるようになっている。この反応容器10の底部近傍であって、底部から一定距離離れた位置には、多孔板11が水平に設置されている。この多孔板11には、その上に原料ペレット1が載置され、この原料ペレット1は通過せずに、反応生成物である溶融シリコン2が多孔板11を通過し得る大きさの孔が形成されている。多孔板11の材質は、炭化ケイ素、アルミナ、マグネシア等である。この反応容器10における底部近傍であって多孔板11より下方の壁には、溶融シリコンを排出するための筒状のシリコン排出口16が設置されており、この排出口16は、炉体20の外部まで下傾して延びており、排出口16の先端には取り外し可能の栓17が設置されている。蓋12には、筒状をなす原料投入口15が挿通して設置されており、この原料投入口15は、炉体20も挿通してその外部に引き出されている。この原料投入口から、原料のペレット1が反応容器10内に投入される。更に、蓋12には生成ガス排出口19が挿通して設置されており、この生成ガス排出口19も炉体20を挿通してその外部に導出されている。この生成ガス排出口19の途中に粉塵トラップ14が介装されている。この粉塵トラップ14は生成ガス排出口19から排出される反応容器10内のガス中から、粉塵を除去する。この粉塵トラップ14には、粉塵振り落とし用の加振装置32が設置されており、トラップした粉塵を加振装置32により振り落として、反応容器10内に戻すようになっている。また、炉体20及び後述する断熱材21には、測温用パイプ22が挿通して配置されており、この測温用パイプ22の上端には、石英ガラス製の測温窓34が設置されていて、炉体20の内部を密閉状態に保持している。蓋12における測温用パイプ22の下方直下の位置には、孔23が形成されており、測温用パイプ22及び孔23を介して、反応容器10内部の原料ペレット1及び反応生成物の温度を、測温窓34の上方に設置された赤外放射温度計33により測定できるようになっている。
炉体20は例えばステンレス鋼で構成されており、この炉体20の内面には、アルミナ、ムライト、マグネシア、又はジルコニア等の断熱材21が敷設されている。そして、この炉体20及び断熱材21を挿通するようにして不活性ガス導入口18が設置されており、この不活性ガス導入口18により、アルゴンガス、窒素ガス又はヘリウムガス等の不活性ガスが炉体20内に供給されるようになっている。これにより、反応容器10内の原料ペレット1及び溶融シリコン2が不活性ガス雰囲気下に保持される。
そして、この炉体20には、導波路31を介してマイクロ波発振器30が設置されており、マイクロ波発振器30から発振されたマイクロ波が導波路31に導かれて炉体20内に入り、断熱材21及び蓋12にて吸収されずに、反応容器10内の原料ペレット1に照射される。これにより、原料ペレット1は、マイクロ波により加熱されて昇温し、ペレット1の原料が、ペレット1の炭素質材料により還元される。反応温度は、ルツボ蓋12に設けた小孔23及び断熱材21と炉体20を挿通する観測用パイプ22をとおし、この観測用パイプ22の上端に設置された石英ガラス製窓34を介して、赤外放射温度計33により、反応中の生成物の表面を直接観察し、測温することに検出することができる。また、この測定温度をマイクロ波発振器39へフィードバックすることにより、反応温度を調節することができる。観測用パイプ22は、マイクロ波が外部へ漏洩することがないように、パイプ22の長さと直径を、所謂カットオフパイプのサイズとすることが好ましい。
二酸化ケイ素を主成分とする出発原料として、石英、珪石、珪砂、鱗珪石、クリストバル石、シリカゲル、石英ガラス、珪藻土等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。使用する二酸化ケイ素の形状は特に制限はないが、反応時の接触面積を大きくするために粉末状であることが好ましい。粉末二酸化ケイ素の粒径は、通常1μm〜1mmであり、好ましくは20μm〜200μmである。原料としては可能な限り高純度品が好ましいが、不純物を含んでいる場合には、例えば、シリカ分を塩基で溶解して水ガラスに変えて精製し、その後酸性条件下で二酸化ケイ素として沈殿させる方法等で事前に精製して用いることもできる(参考、非特許文献1)。
炭素をベースとする還元剤として、グラファイト、木炭、無定形炭素(すす)、石炭、石油固形残渣等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。使用する炭素の形状は特に制限はないが、反応時の接触面積を大きくするために粉末状であることが好ましい。粉末炭素の粒径は、通常1μm〜1mmであり、好ましくは20μm〜100μmである。炭素をベースとする還元剤も、原料として可能な限り高純度が好ましい。高純度品として、例えば高純度の蔗糖等の有機物を熱分解させて得られる高純度炭素があげられる。また、不純物を含む天然のグラファイトや石炭粉末、木炭粉末でも、高温の塩酸溶液で洗浄することにより、容易に高純度化できる。
触媒成分として用いられるニッケル、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、金、チタン及びニオブからなる群から選択された1種の金属であるか、又は前記金属の化合物を主成分とする。又は、前記金属の混合物若しくは全貴金属と前記化合物の混合物である。金属状の触媒成分を添加する際は、触媒の反応性を高めるために微細粒子状あるいは薄膜状、ナノワイヤ状、スポンジ状であることが好ましい。前記金属の化合物としては、これら金属の酸化物、フッ化物、塩化物、水酸化物、臭化物、ヨウ化物、硫化物、炭化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、過塩素酸塩、ケイ化物、カルボニル化合物、アセチルアセトナート塩、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、フェロセン塩、ステアリン酸塩等を用いることができるが、これらの化合物に限定されるものではない。これらの触媒成分は、粉状の場合には、二酸化ケイ素と炭素の混合試料を作成する際にそのまま原料に混合し、同時に練り込こんでもよいし、又は水若しくは有機溶剤などの適当な溶媒に溶解させるか、又は分散させて原料と混合し、その後乾燥することによって添加することもできる。触媒となる金属種を微粒子として添加する場合は、できるだけ微細なものが好ましい。例えば、金属微粒子の粒子径は、好ましくは、20nm〜100μm、より好ましくは20nm〜1μmである。一般的に、適切な可溶溶媒がある場合には、触媒成分の化合物を溶媒に溶解し、この溶液に、シリカ原料、炭素原料、又はシリカ原料と炭素原料との混合物を浸し、溶媒を乾燥することによって、触媒成分を原料表面に担持し、乾燥することができる。これにより、原料中により微細に触媒元素を分散でき、より効果的に触媒作用を発揮させることが可能となる。連結材(バインダー)としては、ポリビニル酢酸若しくはポリビニルアルコール等の一般的な有機樹脂又は蔗糖若しくはセルロース等の天然物等を使用することができる。しかし、触媒を構成する物質は、これらに限定されるものではない。
ペレット1は、二酸化ケイ素を主成分とする出発原料と、炭素をベースとする還元剤と、触媒とを含み、必要に応じて、バインダを混合した後、乾燥し、粒子状に成型して得たものである。前記触媒は、ニッケル、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、金、チタン及びニオブからなる群から選択された1種の金属であるか、又は前記金属の化合物を主成分とする。又は、前記金属の混合物若しくは前記化合物の混合物若しくは前記金属と前記化合物の混合物である。更に好ましくは、前記触媒は、ニッケル、マンガン、コバルト、鉄、若しくは銅又はこれらの元素を含む化合物を主成分とするものである。この触媒としては、カルボニル化合物を形成しやすい元素を選択することが好ましい。
この触媒中の前記金属成分の量は、前記出発原料中のケイ素成分に対する質量比で、0.01質量%乃至10.0質量%であることが好ましい。触媒成分が0.01質量%よりも少ないと、十分な触媒効果が得られない。また。10.0質量%を超えて添加すると、生成したシリコン中に残存する触媒成分が多くなり、最終的にこれを除去精製ためのコストが増大する。
前記出発原料は、更に、炭化ケイ素を含有することもできる。後述するように、炭化ケイ素は二酸化ケイ素還元反応の最初期に生成すると考えられる中間体の一つで、これを添加することにより、還元反応が促進される。また、炭化ケイ素にはマイクロ波を吸収して発熱するサセプタとしての効果も有しているので、これを添加することにより、より効率的に加熱できる。この場合に、前記炭化ケイ素の添加量は、前記二酸化ケイ素に対するモル比が0.1乃至1.0であることが好ましい。炭化ケイ素の添加量が0.1モル比よりも少ないと炭化ケイ素の反応促進効果が十分に発揮されず、またモル比が1.0を超えて多量に添加するとシリコンの製造コストの増大をもたらす。
本発明の反応で使用する還元剤は、炭素質である。この炭素質材料としては、グラファイト、木炭、活性炭又は石炭等を使用できる。アーク炉加熱に比して、マイクロ波加熱は、被加熱物を直接加熱することができる点で優れており、アーク炉加熱の間接加熱方法に比して、エネルギー効率が高い。その上、本発明の反応系に含まれる還元剤としての炭素質は、マイクロ波を吸収して加熱されやすく、また、マイクロ波加熱時の発熱源(サセプタ)としても機能するため、炭素質還元剤は、マイクロ波加熱に適しているといえる。
上述したように、炭素によるシリカの還元は総括反応式(前記化学式1)で表される。しかし、実際には以下のような素反応を経て還元反応が進行すると考えられる。即ち、先ず、加熱により温度が1300℃付近に到達した段階で、SiO2が炭素(C)によりSiCに変換され(化学式2)、次いでこのSiCとSiO2が反応してSiOが生成する(化学式5)。
この化学式2と化学式3をまとめると、下記化学式4となる。
ここで、生成した酸化ケイ素(SiO)が中間体としてC及びSiCと反応し、SiC及びSiを生成する。
更に、生成したSiは反応系中の残存原料のSiO2及びCと反応して、SiO及びSiCを生成する。
これらの素反応に見るように、先ず化学式2によるSiCの生成が反応の引き金となり、次いで発生するSiOがSi生成の中間体として重要な物質となる。よって、予めSiCを反応系に添加しておくことにより、化学式3のSiOの生成が促進され、ひいてはSiの生成を促進することになる。
また、化学式9に示すように、生成したSiの周囲にCが多量に存在すると、容易にSiCに変化してしまう。このため、Siの収量を増加させるには、当初添加する炭素量を化学式1に示した化学量論量2(C/SiO2=2)よりも少なくするか、又は生成したSi(反応条件下で液体)を直ちに反応系外へ排出するような構造に反応容器を設計することが好ましい。このような反応容器の構造の一例を図1に示す。本発明で使用する触媒金属が上記のどの素反応で触媒作用を発揮するかについては必ずしも明らかではないが、全ての反応の出発点で重要な中間体を生成する化学式2及び/又は化学式3の反応を促進するものと推測される。
これらの素反応にみるように、SiO2とCとの還元反応によりSiを高収率で得るためには、化学式4で発生する一酸化ケイ素ガス(SiO)を、反応容器10内で、固体の炭素(C)及び炭化ケイ素(SiC)と十分に接触させることが必要である。
また、マイクロ波加熱では、マイクロ波加熱助剤として、被加熱物にサセプタを添加して加熱することにより、加熱効率が向上することがある。本実施形態のシリコン製造のためのマイクロ波加熱においては、炭素がサセプタとして作用するが、炭素以外に、反応式3,6の中間体である炭化ケイ素(SiC)もマイクロ波を良好に吸収する。このため、炭化ケイ素をサセプタとして、反応容器10内に別途添加することにより、反応中間体添加による反応促進効果に加えて、サセプタとしての炭化ケイ素のマイクロ波加熱促進効果により、シリコン収率を向上させることができる。
マイクロ波発振器30は、マルチモード型及びシングルモード型のいずれも使用可能であるが、生産量を多くする場合は、マルチモード型が有利である。マイクロ波の周波数は電波法により工業用途に指定されている2450MHzとすることにより、市販の発振器として容易に入手することができるため、有利である。しかし、この周波数に限定されるものではない。マイクロ波の出力は、生産量に応じて、適宜選択することができる。マイクロ波発振器30は、マグネトロン、クライストロン、ジャイロトロン、又は半導体発振器等の中から、生産量及びコスト等に応じて適宜選択することができる。なお、図1に示す装置は、原料を反応容器10内に連続的に投入する連続法であるが、シリコンの生産規模によっては、バッチ式とすることも可能である。マイクロ波発振器30を含む加熱装置全体の構成は、既存の工業用マイクロ波加熱装置に準じて組み立てることができる。
本実施形態の反応プロセスにおいては、反応温度は約1200℃又はそれ以上となる。このため、反応容器10は、アルミナ、マグネシア、シリカアルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、石英又はグラファイト等の耐熱性材料で形成することが好ましい。高温の反応であるために、マイクロ波で加熱された原料ペレット1等からの熱放射が大きく、このため、温度が上がりにくい場合がある。そこで、炉体20の内面には、断熱材21を施工して、放射熱が外部に離散することを防止することが好ましい。断熱材21は、アルミナ又はアルミナシリカ等のマイクロ波を吸収しない素材を使用することが好ましい。しかし、炉体の一部に炭化ケイ素又はグラファイト等のマイクロ波を吸収する素材を使用し、炉の加熱補助として利用することもできる。
一方、出発原料のシリカ等と炭素質還元剤との反応により生じた溶融シリコンは、化学式2乃至9に示す反応系中に存在する未反応のシリカ又は炭素と反応条件下で容易に反応して、一酸化ケイ素及び炭化ケイ素を生成する。このため、生成した溶融シリコンを反応系から迅速に分離する機構を設けることが、シリコンの収率を向上させる上で、必要である。そこで、本実施形態においては、反応容器10の底部に溜まった溶融シリコン2を、シリコン排出口16を使用して反応系の外部に連続的に排出し、反応容器10内の多孔板11の上部に存在する未反応のシリカ及び炭素との接触を、可及的に抑制する。なお、本発明の反応においては、生成したシリコンの酸化反応を防止するため、反応装置内の雰囲気をヘリウム又はアルゴン等の不活性ガスに置換することが好ましい。
次に、本実施形態のマイクロ波加熱によるシリコンの製造方法及び装置の動作について説明する。先ず、原料である二酸化ケイ素と、還元剤であるグラファイト等の炭素質材料と、ニッケル等の触媒とを混練し、ペレット状にして、原料投入口15から、反応容器10内に投入する。この原料ペレット1は、反応容器10内の多孔板11上に載置される。また、不活性ガス導入口17からアルゴンガス等の不活性ガスを炉体20内に導入し、反応容器10の内部も含めて、炉体20内を不活性ガスの雰囲気下に保持する。また、反応容器10内のガスは、生成ガス排出口13から外部に排出され、このとき、粉塵トラップ14により、排出ガス中から粉塵が除去される。次いで、マイクロ波発振器30からマイクロ波を発振させ、導波路31を介して、マイクロ波を反応容器10内の原料ペレット1に照射する。このとき、炉体20に内張された断熱材21及び蓋12は、マイクロ波を吸収しにくい素材で成形されているので、マイクロ波は、反応容器10内のペレット1に高効率で照射されて、ペレット1を昇温させ、溶解する。そして、ペレット1が加熱され、溶解すると、前述の化学式4〜10にて示す反応が生じる。これにより、溶融シリコン2が生成し、この溶融シリコン2は、多孔板11を通過して、反応炉10の炉底にたまる。そして、採取栓17を取り除くと、シリコン排出口16から、溶融シリコン2が排出される。このようにして、溶融シリコンが生成し、原料ペレット1の反応用器内への投入を連続的に行うと、シリコン排出口16から連続的に溶融シリコン2が得られる。
反応生成ガスとして、一酸化炭素ガス(化学式1)及び酸化ケイ素ガス(SiO、化学式3及び化学式4)が主なものである。一酸化炭素ガスは反応ガス排出口13から排出される。酸化ケイ素ガスは、粉塵トラップ14で固化し、捕捉される。粉塵トラップ14に外部から振動を与えて、酸化ケイ素を反応系中に戻すことにより、生成するSiの収量を増加させることができる。
化学量論的には、化学式1に示すように、SiO2のCによる還元反応は、C/SiO2=2で進行する。そして、量的に、SiO2に対してCが多すぎると、化学式9の反応において、生成したSiがCと反応してSiCになりやすく、Siの収率が低下してしまう。よって、C/SiO2は、2.0以下とすることが好ましい。また、C/SiO2が0.5未満であると、Cによる還元反応が進みにくく、SiO2が未反応で残存しやすい。このため、C/SiO2は、0.5以上2.0以下であることが好ましい。
得られた溶融シリコンは、取鍋に回収され、凝固した後、帯域溶融法等の精製装置に搬送される。この帯域溶融法による精錬によって、シリコン中の不純物(触媒成分と、原料中の不純物が溶融シリコンに移行したもの等)が除去され、太陽電池又は半導体装置用の高純度シリコンに精製される。このようにして、本発明によれば、高効率及び高収率で、高純度シリコンを製造できる。
前述の如く、二酸化ケイ素からシリコンを生成する反応(SiO2+2C→Si+2CO)は、実際には多数の素反応から構成されており、従来のように、アーク炉を使用した製造プロセスでは、実質的にSiが生成されるためには2000℃以上の高温が必要とされている。アーク炉加熱法などの間接加熱法においては、加熱エネルギーは加熱源、空気、容器(ルツボ)の順に伝播し、被加熱物の表面から内部へと加熱していく。このため、熱が被加熱物に伝搬されるまでの物質に対する加熱及びそこからの輻射による放熱と、被加熱物質表面から内部への熱伝導による熱損失等が大きく、加熱効率は低い。このため、多量のエネルギーの投入が必要で、シリコンの製造コストが高い。一方、本発明で着目したマイクロ波は、マイクロ波源(マイクロ波発振器)から発せられた電磁波が直接被加熱物内部へ侵入し被加熱物を直接加熱するため、途中での熱損失がなく、間接加熱法に比べ著しく効率が高い。このため、アーク炉法(被加熱物の表面温度1900〜2200℃)に比べ、マイクロ波照射の場合は、原材料の表面温度が1200〜1600℃と著しく低下する。
また、電磁波は(高導電性の)金属の内部には侵入することができず、ほとんど反射される。しかし、一般の金属は有限の電気抵抗を有するため、電磁波が金属の表面からある程度の距離だけ侵入できる。この距離は表皮厚さ又は浸透深さともよばれ、例えば2.45GHzのマイクロ波が照射された場合、金では1.5μm程度侵入することになる。この厚さの範囲内では、誘導電流が生じ、これによるジュール加熱(抵抗加熱)が発生する。金属が微粒子や薄膜の場合には、このジュール加熱により金属が加熱され温度が上昇する。本発明において、触媒として添加した金属種がどのようにして触媒作用を発揮するか、そのメカニズムについては現時点では必ずしも 明確ではないが、一つにはシリカ上に担持された金属微粒子によるジュール加熱での発熱効果が考えられる。これによりシリカが選択的に加熱される。また、触媒金属元素によるシリカ中のシリカ−炭素結合と、(グラファイト)炭素の炭素−炭素結合の切断と組み替えによる反応促進も期待される効果である。金属微粒子自体が高温に加熱されていればこれらの化学結合の組み替え効果も促進される。このように、触媒を使用したシリカの還元反応において、マイクロ波加熱を使用することの利点及び効果は、本発明においてはじめて着眼されたものである。
次に、本発明の効果を実証するために行った実験結果について、本発明の範囲に入る実施例を本発明の範囲から外れる比較例と比較して説明する。
「実施例1」
出発原料の二酸化ケイ素源として、予め150℃で乾燥した粉末シリカゲルの100部に対し、硫酸ニッケル(II)6水塩の22.4部を含む水溶液を含浸して、シリカ上にニッケルを含浸担持した。このシリカ上のニッケル元素の担持量は、5.0質量%である。乾燥後、500℃で焼成し、これに炭素成分としてグラファイトを20部添加し、更に、これとバインダを含む水溶液を添加して十分に混合し、乾燥した後、500℃で焼成した。この焼成物を1cm程度の粒状に破砕して試料とした。この試料を30gだけアルミナ製ルツボに装入し、ルツボの周囲をアルミナ製断熱材で覆い、密閉可能の反応容器内に設置した。炭素還元反応のために、マルチモード型マイクロ波反応装置(四国計測工業株式会社製、型番SMW−107,出力条件:周波数2.45GHz、最大出力6kW)を使用した。反応容器内を2度アルゴンガスで置換した後、アルゴンガスを少量流通させながら、マイクロ波を照射した。反応温度は、放射温度計を使用し、断熱材上面の小孔を通し、試料の表面温度を直接測定した。マイクロ波の出力の増加と共に、反応温度は急激に上昇し、反応開始後、33分経過後に、マイクロ波出力が2000Wで、反応材料の表面温度が1289℃に達した。その後、温度が低下した。マイクロ波出力を2800Wまで上げたが、温度は1100℃近傍にとどまり、それ以上上昇することはなかった。これは、原料中の反応可能な炭素が消費し尽くされたためと考えられる。このため、反応開始後、60分でマイクロ波の照射を停止した。
出発原料の二酸化ケイ素源として、予め150℃で乾燥した粉末シリカゲルの100部に対し、硫酸ニッケル(II)6水塩の22.4部を含む水溶液を含浸して、シリカ上にニッケルを含浸担持した。このシリカ上のニッケル元素の担持量は、5.0質量%である。乾燥後、500℃で焼成し、これに炭素成分としてグラファイトを20部添加し、更に、これとバインダを含む水溶液を添加して十分に混合し、乾燥した後、500℃で焼成した。この焼成物を1cm程度の粒状に破砕して試料とした。この試料を30gだけアルミナ製ルツボに装入し、ルツボの周囲をアルミナ製断熱材で覆い、密閉可能の反応容器内に設置した。炭素還元反応のために、マルチモード型マイクロ波反応装置(四国計測工業株式会社製、型番SMW−107,出力条件:周波数2.45GHz、最大出力6kW)を使用した。反応容器内を2度アルゴンガスで置換した後、アルゴンガスを少量流通させながら、マイクロ波を照射した。反応温度は、放射温度計を使用し、断熱材上面の小孔を通し、試料の表面温度を直接測定した。マイクロ波の出力の増加と共に、反応温度は急激に上昇し、反応開始後、33分経過後に、マイクロ波出力が2000Wで、反応材料の表面温度が1289℃に達した。その後、温度が低下した。マイクロ波出力を2800Wまで上げたが、温度は1100℃近傍にとどまり、それ以上上昇することはなかった。これは、原料中の反応可能な炭素が消費し尽くされたためと考えられる。このため、反応開始後、60分でマイクロ波の照射を停止した。
反応終了後、反応装置を室温まで冷却した。そのとき、ルツボ内の試料はペレット装入時の半分程度まで減量していた。そこで、ルツボから試料を取り出して、破砕し、顕微鏡観察を行った。更に、試料を粉砕後、X線回折測定及びX線蛍光分析を行った。
図2は、この顕微鏡写真を示す。この図2に示すように、灰色の塊中に最大約2mm程度の金属色の粒子及びサブmm(1mm未満)の黒色粒子が多数観察された。この金属色粒子のRaman散乱スペクトルを図3に(a)の線分として示す。(b)は標準品のシリコン(Si)粉末のRaman散乱スペクトルであるが、両者は同一のRaman周期にピーク値をもち、よって図3(a)のピークがシリコンであることがわかる。
図4は、X線回折測定の結果を示す。この図4示すように、試料中の結晶性成分としてシリコン(Si)及び炭化ケイ素(SiC、モアサナイト3C)、結晶性シリカ(SiO2、クリストバライト)、ニッケルシリサイド(NiSi2)の生成が確認された。X線回折パターンを使用した定量分析の結果、シリコンと、炭化ケイ素と、結晶性シリカと、ニッケルシリサイドとの生成比は、モル比で31.9:16.7:8.5:0.6であった。この触媒を使用した還元反応の生成物を下記表1に示す。
「実施例2」
実施例1と同様の操作で硝酸ニッケル(II)6水塩を使用して、シリカ上にニッケル元素を5.0質量%含浸担持し、同様の手順で試料を調製し、マイクロ波照射による加熱を行った。その反応結果を、表1に示す。
実施例1と同様の操作で硝酸ニッケル(II)6水塩を使用して、シリカ上にニッケル元素を5.0質量%含浸担持し、同様の手順で試料を調製し、マイクロ波照射による加熱を行った。その反応結果を、表1に示す。
「実施例3」
実施例1と同様の操作で硫酸ニッケル(II)6水塩を使用して、シリカ上にニッケル元素を2.0質量%含浸担持し、同様の手順で試料を調製し、マイクロ波照射による加熱を行った。その反応結果を、表1に示す。
実施例1と同様の操作で硫酸ニッケル(II)6水塩を使用して、シリカ上にニッケル元素を2.0質量%含浸担持し、同様の手順で試料を調製し、マイクロ波照射による加熱を行った。その反応結果を、表1に示す。
「実施例4」
実施例1と同様の操作で硝酸ニッケル(II)6水塩を使用して、シリカ上にニッケル元素を2.0質量%含浸担持し、同様の手順で試料を調製し、マイクロ波照射による加熱を行った。その反応結果を、表1に示す。
実施例1と同様の操作で硝酸ニッケル(II)6水塩を使用して、シリカ上にニッケル元素を2.0質量%含浸担持し、同様の手順で試料を調製し、マイクロ波照射による加熱を行った。その反応結果を、表1に示す。
「実施例5」
実施例1と同様の操作で硝酸ニッケル(II)4水塩を使用して、シリカ上にニッケル元素を2.0質量%含浸担持し、同様の手順で試料を調製し、マイクロ波照射による加熱を行った。その反応結果を、表1に示す。
実施例1と同様の操作で硝酸ニッケル(II)4水塩を使用して、シリカ上にニッケル元素を2.0質量%含浸担持し、同様の手順で試料を調製し、マイクロ波照射による加熱を行った。その反応結果を、表1に示す。
「実施例6」
実施例1と同様の操作で硝酸コバルト(II)6水塩を使用して、シリカ上にニッケル元素を2.0質量%含浸担持し、同様の手順で試料を調製し、マイクロ波照射による加熱を行った。その反応結果を、表1に示す。
実施例1と同様の操作で硝酸コバルト(II)6水塩を使用して、シリカ上にニッケル元素を2.0質量%含浸担持し、同様の手順で試料を調製し、マイクロ波照射による加熱を行った。その反応結果を、表1に示す。
「実施例7」
実施例1と同様の操作で硝酸鉄(III)9水塩を使用して、シリカ上にニッケル元素を2.0質量%含浸担持し、同様の手順で試料を調製し、マイクロ波照射による加熱を行った。その反応結果を、表1に示す。
実施例1と同様の操作で硝酸鉄(III)9水塩を使用して、シリカ上にニッケル元素を2.0質量%含浸担持し、同様の手順で試料を調製し、マイクロ波照射による加熱を行った。その反応結果を、表1に示す。
「実施例8」
実施例1と同様の操作で硝酸銅(II)3水塩を使用して、シリカ上にニッケル元素を2.0質量%含浸担持し、同様の手順で試料を調製し、マイクロ波照射による加熱を行った。その反応結果を、表1に示す。
実施例1と同様の操作で硝酸銅(II)3水塩を使用して、シリカ上にニッケル元素を2.0質量%含浸担持し、同様の手順で試料を調製し、マイクロ波照射による加熱を行った。その反応結果を、表1に示す。
「比較例1」
予め、150℃で乾燥した粉末シリカゲルの100部に対し、グラファイトの20部及びバインダを含む水溶液を十分に混合し、乾燥後、500℃で焼成し、1〜2cm程度の粒状に破砕して試料とし、実施例1と同様に、マイクロ波加熱を行った。マイクロ波の出力の増加と共に、反応温度は急激に上昇し、反応開始後、80分経過後に、マイクロ波出力が2400Wで、温度が1602℃に達した。そのまま、約5分間1600℃程度に保持されたが、その後、温度が低下した。マイクロ波出力を3000Wまで上昇させたが、温度が急激に低下したため、反応開始後95分でマイクロ波照射を停止した。その反応結果を、表1に示す。
予め、150℃で乾燥した粉末シリカゲルの100部に対し、グラファイトの20部及びバインダを含む水溶液を十分に混合し、乾燥後、500℃で焼成し、1〜2cm程度の粒状に破砕して試料とし、実施例1と同様に、マイクロ波加熱を行った。マイクロ波の出力の増加と共に、反応温度は急激に上昇し、反応開始後、80分経過後に、マイクロ波出力が2400Wで、温度が1602℃に達した。そのまま、約5分間1600℃程度に保持されたが、その後、温度が低下した。マイクロ波出力を3000Wまで上昇させたが、温度が急激に低下したため、反応開始後95分でマイクロ波照射を停止した。その反応結果を、表1に示す。
「比較例2」
比較例1と同様に試料を調製し、マイクロ波の出力を徐々に上げて、マイクロ波を照射し、反応開始後40分経過後、試料温度が1260℃に達した。その温度を25分間保持するようにマイクロ波の出力を調整した。この加熱により還元反応が得られ、反応結果物をX回折分析した結果、炭化水素と二酸化ケイ素(低温型クリストバライト)のピークは観測されたが,シリコンのピークは認められなかった。その反応結果を下記表1に示す。
比較例1と同様に試料を調製し、マイクロ波の出力を徐々に上げて、マイクロ波を照射し、反応開始後40分経過後、試料温度が1260℃に達した。その温度を25分間保持するようにマイクロ波の出力を調整した。この加熱により還元反応が得られ、反応結果物をX回折分析した結果、炭化水素と二酸化ケイ素(低温型クリストバライト)のピークは観測されたが,シリコンのピークは認められなかった。その反応結果を下記表1に示す。
なお、表1の触媒欄において、(S)は触媒金属源が硫酸塩であることを示し、(N)は硝酸塩であることを示す。即ち、実施例1のNi(S)は硫酸塩から得られた金属Niを触媒としたことを示している。最高温度は、反応中に到達した最高温度であり、この最高温度の到達後は、マイクロ波出力を上げても温度は上がらなかった。比較例2は、反応温度を1260℃に保持し、これを30分間継続した。生成物欄の数値は、生成したシリコン関連物質のモル%である。なお、生成物欄のSiO2は、クリストバライトである。また、MxSiは金属シリサイドを意味する。
この表1に示すように、触媒を添加しない比較例1では、反応温度は1602℃に達し、シリコン(51.8モル%)と炭化ケイ素(48.2モル%)をほぼ当モル量生成する。これに対し、実施例1〜4に示したように、2.0質量%又は5.0質量%のニッケルを触媒として添加すると、反応温度は1234〜1362℃となり、無触媒の場合(比較例1を基準として)に比して、67〜368℃低下した。この反応温度の低下にも拘わらず、シリコンが生成していた(0.8〜59.3モル%)。一方、比較例2のように、無触媒系を、触媒添加系(実施例1〜8)と同程度の温度(1260℃)で反応を試みたところ、炭化ケイ素と二酸化ケイ素(クリストバライト)のみが生成し、シリコンは生成しなかった。
このように、触媒を添加することにより、マイクロ波加熱法による二酸化ケイ素の熱炭素還元反応の反応速度が大きく低下し、この相対的に低温の状態でもシリコンを生成することができる。このように、触媒添加によるシリコン生成のエネルギー効率が向上した。
本発明は、太陽電池等に利用される高純度シリコンを、マイクロ波照射による原料の選択的高効率加熱と、触媒の使用による反応温度の著しい低下とにより、短い反応時間で高効率で製造することができ、シリコンの製造コストの大幅な低下が可能である。このため、本発明は、太陽電池及び半導体デバイス等の普及に多大の貢献をなす。
1:原料ペレット
2:溶融シリコン
10:反応容器
11:多孔板
12:蓋
13:生成ガス排出口
14:(振るい落とし機構付き)粉塵トラップ
15:原料投入口
16:シリコン排出口
18:不活性ガス導入口
20:炉体
21:断熱材
30:マイクロ波発振器
31:導波路
33:赤外放射温度計
34:測温窓
2:溶融シリコン
10:反応容器
11:多孔板
12:蓋
13:生成ガス排出口
14:(振るい落とし機構付き)粉塵トラップ
15:原料投入口
16:シリコン排出口
18:不活性ガス導入口
20:炉体
21:断熱材
30:マイクロ波発振器
31:導波路
33:赤外放射温度計
34:測温窓
Claims (9)
- 二酸化ケイ素を主成分とする出発原料を、炭素をベースとする還元剤を使用して熱還元することによりシリコンを製造する方法において、
ニッケル、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、金、チタン及びニオブからなる群から選択された1種の金属若しくはその化合物、又は前記金属若しくは化合物の混合物を主成分とする触媒を、前記出発原料及び前記還元剤に添加し、得られた材料をマイクロ波の照射により1200乃至1600℃に加熱して、前記出発原料を前記還元剤により還元して溶融シリコンを製造することを特徴とするシリコンの製造方法。 - 前記触媒は、ニッケル、マンガン、若しくは銅又はこれらの元素を含む化合物を主成分とし、1200乃至1500℃の温度で還元反応を生じさせることを特徴とする請求項1に記載のシリコンの製造方法。
- 前記出発原料中のケイ素成分に対する前記触媒中の前記金属成分の添加量が、0.01質量%乃至10.0質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のシリコンの製造方法。
- 前記出発原料は、更に、炭化ケイ素を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のシリコンの製造方法。
- 前記炭化ケイ素は、前記二酸化ケイ素に対するモル比が、0.1乃至1.0であることを特徴とする請求項4に記載のシリコンの製造方法。
- 前記出発原料、前記還元剤、及び前記触媒は、これらを混合し、必要に応じてバインダを混合した後、乾燥し、粒子状に成型してペレットにした状態で、マイクロ波加熱することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のシリコンの製造方法。
- 前記請求項1乃至6のいずれか1項に記載のシリコンの製造方法に使用する装置において、
密閉状態にすることができる反応容器と、
この反応容器内を上下に仕切る多孔質部材と、
前記反応容器内の前記多孔質部材の上に前記出発原料、前記還元剤及び前記触媒を投入する投入口と、
前記多孔質部材の下方の前記反応容器内から、前記溶融シリコンを排出する排出口と、
前記反応容器内の前記出発原料、前記還元剤及び前記触媒にマイクロ波を照射するマイクロ波発振器と、
を有し、
前記多孔質部材は、前記マイクロ波により加熱された前記出発原料が前記還元剤により還元されて得られた溶融シリコンが前記多孔質部材を通過して前記排出口から排出されると共に、前記原料及び前記還元剤は前記多孔質部材を通過しない大きさの孔を有することを特徴とするシリコンの製造装置。 - 前記反応容器は、前記還元反応の途中で生成する一酸化ケイ素ガスを、前記還元反応中において、前記反応容器内に閉じ込めて離散しないようにする構造を有し、更に、ガス状で発生した一酸化ケイ素が低温部で固化することを利用してこの一酸化ケイ素を捕捉し、これを前記反応容器内に戻す粉塵トラップを有することを特徴とする請求項7に記載のシリコンの製造装置。
- 前記反応容器は、マイクロ波を吸収しにくい物質でできた耐火性断熱材で覆われていることを特徴とする請求項7又は8に記載のシリコンの製造装置。
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-
2018
- 2018-12-07 JP JP2018230421A patent/JP2020090428A/ja active Pending
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