以下、添付図面に従って本発明の実施の形態について詳説する。
《インクジェット印刷装置の構成例》
図1は、本発明の実施形態に係るベルト駆動装置が適用されるインクジェット印刷装置1Aの例を示す全体構成図である。インクジェット印刷装置1Aは、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及びブラック(K)の4色のインクを使用して、枚葉紙である用紙Pに所望の画像をシングルパス方式で印刷するインクジェット方式のカラーデジタル印刷装置である。本例では描画用のインクとして水性インクが用いられる。水性インクは、水及び/又は水に可溶な溶媒に顔料や染料などの色材を溶解又は分散させたインクをいう。
インクジェット印刷装置1Aは、給紙部10と、処理液付与部20と、処理液乾燥部30と、描画部40と、インク乾燥部50と、集積部60と、を備える。
給紙部10は、給紙装置12と、フィーダボード14と、給紙ドラム16と、を備える。用紙Pは、多数枚が積み重ねられた束の状態で給紙台12Aに載置される。用紙Pの種類は、特に限定されないが、例えば、上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする印刷用紙を用いることができる。
給紙装置12は、給紙台12Aにセットされた束の状態の用紙Pを上から順に1枚ずつ取り出して、フィーダボード14に給紙する。フィーダボード14は、給紙装置12から受け取った用紙Pを給紙ドラム16へと搬送する。
給紙ドラム16は、フィーダボード14から給紙される用紙Pを受け取り、受け取った用紙Pを処理液付与部20へと搬送する。
処理液付与部20は、用紙Pに処理液を塗布する。処理液は、インク中の色材成分を凝集、若しくは不溶化又は増粘させる機能を備えた液体である。処理液付与部20は、処理液塗布ドラム22と、処理液塗布装置24と、を備える。
処理液塗布ドラム22は、給紙ドラム16から用紙Pを受け取り、受け取った用紙Pを処理液乾燥部30へと搬送する。処理液塗布ドラム22は、ドラム周面にグリッパ23を備え、グリッパ23で用紙Pの先端部を把持して回転することにより、用紙Pをドラム周面に巻き付けて搬送する。
処理液塗布装置24は、処理液塗布ドラム22によって搬送される用紙Pに処理液を塗布する。処理液はローラによって塗布される。処理液を塗布する方式は、ローラ塗布方式に限らない。処理液塗布装置24には他の方式が適用されてもよい。処理液塗布装置24の他の方式の例として、ブレードを用いた塗布、インクジェット方式による吐出、又はスプレー方式による噴霧などが挙げられる。
処理液乾燥部30は、処理液が塗布された用紙Pを乾燥処理する。処理液乾燥部30は、処理液乾燥ドラム32と、温風送風機34と、を備える。処理液乾燥ドラム32は、処理液塗布ドラム22から用紙Pを受け取り、受け取った用紙Pを描画部40へと搬送する。処理液乾燥ドラム32は、ドラム周面にグリッパ33を備える。処理液乾燥ドラム32は、グリッパ33で用紙Pの先端部を把持して回転することにより、用紙Pを搬送する。
温風送風機34は、処理液乾燥ドラム32の内部に設置される。温風送風機34は、処理液乾燥ドラム32によって搬送される用紙Pに温風を吹き当てて、処理液を乾燥させる。
描画部40は、描画ドラム42と、ヘッドユニット44と、画像読取装置48と、を備える。描画ドラム42は、処理液乾燥ドラム32から用紙Pを受け取り、受け取った用紙Pをインク乾燥部50へと搬送する。描画ドラム42は、ドラム周面にグリッパ43を備え、グリッパ43で用紙Pの先端を把持して回転することにより、用紙Pをドラム周面に巻き付けて搬送する。描画ドラム42は、図示しない吸着機構を備え、ドラム周面に巻き付けられた用紙Pをドラム周面に吸着させて搬送する。吸着には、負圧が利用される。描画ドラム42は、周面に多数の吸着孔を備え、この吸着孔を介して描画ドラム42の内部から吸引することにより、用紙Pを描画ドラム42の周面に吸着させる。
ヘッドユニット44は、インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kを含んで構成される。インクジェットヘッド46Cは、シアン(C)のインクの液滴を吐出する記録ヘッドである。インクジェットヘッド46Mは、マゼンタ(M)のインクの液滴を吐出する記録ヘッドである。インクジェットヘッド46Yは、イエロー(Y)のインクの液滴を吐出する記録ヘッドである。インクジェットヘッド46Kは、ブラック(K)のインクの液滴を吐出する記録ヘッドである。インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kのそれぞれには、対応する色のインク供給源である不図示のインクタンクから不図示の配管経路を介して、インクが供給される。
インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kの各々は、描画ドラム42によって搬送される用紙Pに対して1回の走査によって、つまりシングルパス方式によって、印刷可能なラインヘッドで構成される。インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kは、各々のノズル面が描画ドラム42の周面に対向して配置される。インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kは、描画ドラム42による用紙Pの搬送経路に沿って一定の間隔をもって配置される。
図1には示さないが、インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kの各々のノズル面には、インクの吐出口である複数個のノズルが二次元配列されている。「ノズル面」とは、ノズルが形成されている吐出面をいい、「インク吐出面」或いは「ノズル形成面」などの用語と同義である。二次元配列された複数個のノズルのノズル配列を「二次元ノズル配列」という。
インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kの各々は、複数個のヘッドモジュールを用紙幅方向に繋ぎ合わせて構成することができる。ここでいう用紙幅は、用紙Pの搬送方向と直交する方向の用紙幅を指す。インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kの各々は、用紙Pの搬送方向と直交する用紙幅方向に関して、用紙Pの全記録領域を、1回の走査で規定の記録解像度による画像記録が可能なノズル列を有するライン型の記録ヘッドである。このような記録ヘッドは「フルライン型の記録ヘッド」或いは「ページワイドヘッド」とも呼ばれる。
規定の記録解像度とは、インクジェット印刷装置1Aによって予め定められた記録解像度であってもよいし、ユーザの選択により、若しくは、印刷モードに応じたプログラムによる自動選択により設定される記録解像度であってもよい。記録解像度として、例えば、1200dpiとすることができる。「dpi」は、dot per inch を意味し、1インチあたりのドット(点)の数を表す単位表記である。1インチは25.4ミリメートル[mm]である。
用紙Pの搬送方向と直交する用紙幅方向をラインヘッドのノズル列方向と呼び、用紙Pの搬送方向をノズル列垂直方向と呼ぶ場合がある。
二次元ノズル配列を有するインクジェットヘッドの場合、二次元ノズル配列における各ノズルをノズル列方向に沿って並ぶように投影(正射影)した投影ノズル列は、ノズル列方向について、最大の記録解像度を達成するノズル密度で各ノズルが概ね等間隔で並ぶ一列のノズル列と等価なものと考えることができる。「概ね等間隔」とは、インクジェット印刷装置で記録可能な打滴点として実質的に等間隔であることを意味している。例えば、製造上の誤差及び/又は着弾干渉による媒体上での液滴の移動を考慮して僅かに間隔を異ならせたものなどが含まれている場合も「等間隔」の概念に含まれる。投影ノズル列は実質的なノズル列に相当する。投影ノズル列を考慮すると、ノズル列方向に沿って並ぶ投影ノズルの並び順に、各ノズルにノズル位置を表すノズル番号を対応付けることができる。
インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kの各々におけるノズルの配列形態は限定されず、様々なノズル配列の形態を採用することができる。例えば、マトリクス状の二次元配列の形態に代えて、一列の直線配列、V字状のノズル配列、V字状配列を繰り返し単位とするW字状などのような折れ線状のノズル配列なども可能である。
描画ドラム42によって搬送される用紙Pに向けて、インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kのうち少なくとも1つのヘッドからインクの液滴が吐出され、吐出された液滴が用紙Pに付着することにより、用紙Pに画像が形成される。インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kを含む描画部40は、本開示における「画像形成部」の一例に相当する。
描画ドラム42は、インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kと用紙Pとを相対移動させる手段として機能している。描画ドラム42は、インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kに対して、用紙Pを相対的に移動させる相対移動手段の一形態である。インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kのそれぞれの吐出タイミングは、描画ドラム42に設置されたロータリエンコーダから得られるロータリエンコーダ信号に同期させる。図1においてロータリエンコーダの図示は省略されている。吐出タイミングとは、インクの液滴を吐出するタイミングであり、打滴タイミングと同義である。
なお、本例では、CMYKの4色のインクを用いる構成を例示したが、インク色及び色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特色インクなどを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成、又は、緑色若しくはオレンジ色若しくは白色などの特色のインクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成なども可能である。また、各色のインクジェットヘッドの配置順序も特に限定はない。
画像読取装置48は、インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kによって用紙Pに記録された画像を光学的に読み取り、その読取画像を示す電子画像データを生成する装置である。画像読取装置48は、用紙P上に記録された画像を撮像して画像情報を示す電気信号に変換する撮像デバイスを含む。画像読取装置48は、撮像デバイスの他、読み取り対象を照明する照明光学系及び撮像デバイスから得られる信号を処理してデジタル画像データを生成する信号処理回路を含んでよい。
画像読取装置48は、カラー画像の読み取りが可能な構成であることが好ましい。本例の画像読取装置48は、例えば、撮像デバイスとしてカラーCCD(Charge-Coupled Device)リニアイメージセンサが用いられる。カラーCCDリニアイメージセンサはR(赤),G(緑),B(青)各色のカラーフィルタを備えた受光素子が直線状に配列したイメージセンサである。なお、カラーCCDリニアイメージセンサに代えて、カラーCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)リニアイメージセンサを用いることもできる。画像読取装置48は、描画ドラム42による用紙Pの搬送中に用紙P上の画像の読み取りを行う。このように用紙搬送経路に設置される画像読取装置は「インラインスキャナ」又は「インラインセンサ」と呼ばれる場合がある。また、画像読取装置48はカメラであってもよい。
インクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kの少なくとも1つを用いて画像が記録された用紙Pは、画像読取装置48の読取領域を通過する際に、用紙P上の画像が読み取られる。用紙Pに記録される画像としては、印刷ジョブで指定される印刷対象のユーザ画像の他、ノズルごとの吐出状態を検査するための不良ノズル検知パターン、印刷濃度補正用テストパターン、印刷濃度ムラ補正用テストパターン、その他の各種のテストパターンが含まれ得る。
画像読取装置48によって読み取られた読取画像のデータを基に、印刷画像の検査が行われ、画質異常の有無が判断される。また、画像読取装置48によって読み取られた読取画像のデータを基に、画像の濃度やインクジェットヘッド46C、46M、46Y、46Kの吐出不良などの情報が得られる。
インク乾燥部50は、描画部40によって画像が形成された用紙Pを乾燥処理する。インク乾燥部50は、チェーングリッパ70と、用紙ガイド80と、加熱乾燥処理部90と、を備える。
チェーングリッパ70は、描画ドラム42から用紙Pを受け取り、受け取った用紙Pを集積部60へと搬送する。チェーングリッパ70は、規定の走行経路を走行する一対の無端状のチェーン72を備え、その一対のチェーン72に備えられたグリッパ74によって用紙Pの先端部を把持した状態で用紙Pを規定の搬送経路に沿って搬送する。グリッパ74は、チェーン72に一定の間隔で複数備えられる。
本例のチェーングリッパ70は、第1スプロケット71Aと、第2スプロケット71Bと、チェーン72と、複数のグリッパ74と、を含んで構成され、一対の第1スプロケット71A及び第2スプロケット71Bに、一対の無端状のチェーン72が巻き掛けられた構造を有している。図1には、一対の第1スプロケット71A及び第2スプロケット71B並びに一対のチェーン72のうち、一方のみが図示されている。
チェーングリッパ70は、チェーン72の送り方向(長さ方向)における複数の位置に複数のグリッパ74が配置される構造を有している。また、チェーングリッパ70は、一対のチェーン72の間に、用紙幅方向に沿って複数のグリッパ74が配置される構造を有している。図1には、一対のチェーン72の間に配置される複数のグリッパ74のうち、一つのグリッパ74のみが図示されている。
チェーングリッパ70による用紙Pの搬送経路は、用紙Pを水平方向に沿って搬送する水平搬送領域と、水平搬送領域の終端から用紙Pを斜め上方向に搬送する傾斜搬送領域とを含んでいる。水平搬送領域を第1搬送区間といい、傾斜搬送領域を第2搬送区間という。
用紙ガイド80は、チェーングリッパ70による用紙Pの搬送をガイドする機構である。用紙ガイド80は、第1用紙ガイド82と第2用紙ガイド84を含んで構成される。第1用紙ガイド82は、チェーングリッパ70の第1搬送区間を搬送される用紙Pをガイドする。第2用紙ガイド84は、第1搬送区間の後段の第2搬送区間を搬送される用紙をガイドする。
第1用紙ガイド82の詳細な構造は図1に示されていないが、第1用紙ガイド82として、吸着搬送装置102が用いられている(図2参照)。吸着搬送装置102の構成について詳細な説明は後述する。吸着搬送装置102は本開示における「ベルト駆動装置」の一例である。
加熱乾燥処理部90は、描画部40によって画像が形成された用紙Pに熱を加えてインクの溶媒を蒸発させ、用紙Pを乾燥させる。加熱乾燥処理部90は、例えば、温風送風ユニットであり、第1用紙ガイド82と対向して配置され、チェーングリッパ70によって搬送される用紙Pに温風を吹き当てる。
集積部60は、チェーングリッパ70によってインク乾燥部50から搬送されてくる用紙Pを受け取り、集積する集積装置62を備える。チェーングリッパ70は、所定の集積位置で用紙Pをリリースする。集積装置62は集積トレイ62Aを備え、チェーングリッパ70からリリースされた用紙Pを受け取り、集積トレイ62Aの上に束状に集積する。集積部60は排紙部に相当する。
《吸着搬送装置102を含むインク乾燥部50の概要》
図2は、インクジェット印刷装置1Aにおけるインク乾燥部50の概要を示す側面図である。図2において図1に示した構成と同一の要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。図2では図示の簡略化のために、画像読取装置48、第1スプロケット71A及び第2スプロケット71Bの図示を省略した。
インク乾燥部50は、加熱乾燥処理部90と、吸着搬送装置102と、を含む。加熱乾燥処理部90は、例えば、図示しない熱源としての赤外線ランプと、図示しない送風装置とを含む。吸着搬送装置102は、ベルト110と、駆動ローラ112と、従動ローラ114と、吸引ボックス116と、を含む。
ベルト110は無端ベルトである。ベルト110は用紙Pを吸着するための複数の吸着孔を有する。ベルト110は、駆動ローラ112と従動ローラ114に張架されている。
駆動ローラ112は、図2において反時計回り方向に回転駆動される。駆動ローラ112が回転することにより、ベルト110は図2において反時計回り方向に周回移動する。
従動ローラ114は、ベルト110に従動して図2において反時計回り方向に回転する。
図2では、従動ローラ114から駆動ローラ112に向かってベルト110が移動する方向が用紙Pの搬送方向に相当する。用紙Pの搬送方向をY方向という。また、Y方向と直交する用紙幅方向、若しくは、Y方向と直交するベルト幅方向をX方向という。X方向は図2の紙面に垂直な方向である。X方向は、駆動ローラ112及び従動ローラ114の軸心方向と平行な方向である。X方向は、駆動ローラ112及び従動ローラ114のローラ幅方向と理解してもよいし、又は、用紙Pの幅方向と理解してもよい。
ベルト110は、搬送物である用紙PのX方向幅より大きいX方向幅を有する。ベルト110は、チェーングリッパ70によって搬送される用紙Pを支持し、かつ、用紙Pを搬送する。
駆動ローラ112及び従動ローラ114に架け渡されたベルト110の外周面をベルト110の第1面という。ベルト110の第1面と反対側の面、すなわち、駆動ローラ112及び従動ローラ114に巻き掛けられたベルト110の内周面をベルト110の第2面という。第2面のことをベルト110の「裏面」という場合がある。
ベルト110の第1面は、用紙Pを支持して用紙Pを搬送する搬送面110Aとなり得る。搬送面110Aは「用紙支持面」と言い換えてもよい。ベルト110の搬送面110Aには、グリッパ74により搬送される用紙Pが載置される。吸着搬送装置102は、記録面にインクが付与された用紙Pをベルト110の搬送面110Aに当接させてY方向の搬送経路に沿って用紙Pを搬送する。搬送面110Aは、少なくとも用紙Pと当接している間は平坦な面を形成する。
図2において、ベルト110のベルト周回経路のうち従動ローラ114から駆動ローラ112に向かってベルト110が移動する領域、すなわち、図2における上側のベルト経路を第1のベルト経路という。第1のベルト経路は、用紙Pを搬送する搬送面110Aを含むキャリヤ側のベルト経路である。また、ベルト周回経路のうち駆動ローラ112から従動ローラ114に向かってベルト110が移動する領域、すなわち、図2における下側のベルト経路を第2のベルト経路という。第2のベルト経路は戻り側(リターン側)のベルト経路である。本例の場合、搬送面110Aが水平面と平行な平面となっているが、搬送面110Aは水平面に対して交差する角度を有する傾斜面であってもよい。例えば、第2用紙ガイド84について、吸着搬送装置102と同様の構成を採用してもよい。
吸引ボックス116は、駆動ローラ112と従動ローラ114との間の空間におけるベルト110の第2面側、つまりベルト110の裏面側に配置される。吸引ボックス116は、図示せぬ排気ポンプと接続されている。排気ポンプとしてリングブロワ等の真空ブロワを用いることができる。吸引ボックス116は、ベルト110の吸着孔に吸着圧力を発生させる。第1のベルト経路においてベルト110の裏面側に吸引ボックス116が配置されている領域は、用紙Pを吸引吸着する吸着エリアとなる。なお、吸引ボックス116は、Y方向に複数の領域に分割(区分け)されていてもよい。
また、吸着搬送装置102は、ベルト110を加熱する手段として、駆動ローラ112及び従動ローラ114のそれぞれの内部に、各ローラの回転軸に沿って赤外線ランプ162、164が配置されている。赤外線ランプ162、164の温度は、例えば、80℃から150℃の範囲の所望の温度に設定され、必要に応じて温度を変更することができる。
赤外線ランプ162、164によって駆動ローラ112及び従動ローラ114が加熱されることにより、ベルト110に熱が伝わり、間接的にベルト110が加熱される。ベルト110を加熱しておくことにより、加熱乾燥処理部90による加熱乾燥処理と相まって、効率よく乾燥処理を行うことができる。
描画部40によって画像が形成された用紙Pは、描画ドラム42からチェーングリッパ70に受け渡され、用紙Pの先端部がグリッパ74に掴まれた状態で、ベルト110の上に載り、ベルト110に吸着される。チェーングリッパ70は本開示における「グリッパ搬送部」の一例に相当する。用紙Pは本開示における「搬送物」及び「記録媒体」の一例である。
チェーングリッパ70は、描画ドラム42の回転速度に同期してグリッパ74を搬送する。駆動ローラ112は、チェーングリッパ70によるグリッパ74の送り速度に合わせてベルト110を走行させるよう回転駆動される。
ベルト110は、グリッパ74と概ね同じ速度で送られる。ベルト110の送り速度とグリッパ74の送り速度は、必ずしも完全に一致させる必要はなく、僅かな速度差があってもよい。
用紙Pのサイズ及び/又は用紙Pの剛度によって、ベルト110とグリッパ74の速度差が異なり得る。グリッパ74の速度よりもベルト110の速度を僅かに遅くすると、用紙Pに引っ張り力を与えながら搬送することができる。逆に、グリッパ74の速度よりもベルト110の速度が速くなると、ベルト110が用紙Pを搬送方向に押し込みながら進むことになる。
ベルト110は、同時に複数枚の用紙Pを吸着搬送し得るベルト長さを有する。図2に示されたベルト110は、同時に2枚の用紙Pを吸着搬送し得るベルト長さを有しているが、ベルト110のベルト長さは、適宜設計することができ、同時に3枚以上の用紙Pを吸着搬送し得る形態も可能である。寸法の一例として、例えば、駆動ローラ112と従動ローラ114のローラ間距離は1250ミリメートル[mm]であり、吸引ボックス116の吸着距離は1000ミリメートル[mm]であってよい。
《加熱吸着搬送における課題の説明》
一般に水性インクを用いる印刷装置では、画像形成後の乾燥プロセスにおいて用紙上における画像部と非画像部との間で用紙変形が生じてしまう。このため図1に示すインクジェット印刷装置1Aではインク乾燥部50において乾燥処理を行う際に用紙Pを吸着拘束することで用紙変形を抑制しながら用紙Pを搬送する吸着搬送装置102を採用している。
インクジェット印刷装置1Aに適用される吸着搬送装置102には、主として、次の3つの機能が求められる。第1の機能は、ベルト110を介して用紙Pを搬送面に吸着させながら搬送させる「吸着搬送機能」である。第2の機能は、例えば、80℃から150℃の範囲で目標温度可変のインク乾燥部50で用いられるため、熱膨張に対応する「加熱搬送機能」である。第3の機能は、高精度の「直進搬送機能」である。例えば、インクジェット印刷装置1Aの場合、ベルト送り方向(Y方向)のベルト移動距離1メートル[m]当たりにベルト幅方向(X方向)に0.5ミリメートル[mm]以下の位置ずれ精度で蛇行制御する直進搬送機能が求められる。
図3及び図4は、典型的な吸着搬送装置702における吸着搬送機能に関する説明図である。図3はベルト110の搬送面110Aの平面度が良好である場合の例を示す。図4はベルト110の搬送面110Aの平面度が悪化した状態である場合の例を示す。図3及び図4において、図2で説明した吸着搬送装置102の構成と同一又は類似の要素には同一の符号を付す。
「吸着搬送機能」に関して、図4に示すように、何らかの原因で瞬間的にベルト110に弛みが生まれて搬送面110Aの平面度が維持できなくなると、「搬送物である用紙Pとベルト110との間」或いは「ベルト110と吸着板との間」に空隙720が生じる。なお、吸着板は吸引ボックス116のベルト支持面を構成するプレートである。
空隙720が生じて一時的に用紙Pを吸着できない領域が生じると、例えば、厚紙の場合には用紙拘束性や乾燥性(すなわち、伝熱性)が低下し、薄紙の場合には吸着できない領域を起点に用紙Pにシワが発生してしまうことが問題となっている。
蛇行制御の技術に関して、特許文献1に記載の画像形成装置では、CCDアレイを用いてベルトのエッジ位置を検出しながら補正ローラをベルトに沿って前後に円弧を描くように第1の位置と第2の位置の二位置間を交互に動かす構成となっている。仮に、特許文献1に記載の構成に吸着機能を適用した場合、補正ローラの二位置間の移動速度が速い場合に、ベルトに瞬間的に弛みが発生してしまうという問題がある。その一方で、補正ローラの二位置間の移動速度が遅い場合には「第3の機能」である直進搬送精度が悪くなってしまうという問題がある。
また、特許文献2に記載されているようなトルク管理を行うことよってベルト位置を調整するシステムの場合、特許文献1に記載の構成よりも、さらに弛みが発生する傾向が強い。本件の発明者が実施した評価実験によれば、ベルトの幅方向の左右テンション差により蛇行制御するシステムにおいて吸着機能を適用した場合、ベルト幅方向の左右に大きなテンション差が必要になった際に大きな弛みが発生した。
第3の機能に係る「直進搬送機能」のための蛇行制御に関して、インクジェット印刷装置1Aのような温度変化の範囲が大きいシステムでは、急激な温度変化(例えば、80℃から150℃への温度変化)が発生した場合、ベルトが熱膨張することでベルトが暴れて直進制御の精度が著しく悪くなる。
特許文献1に記載されているような補正ローラをベルトに沿って二位置間を動かす構成では、この急激な温度変化による熱膨張に起因するベルトの変動に追従していくことは困難である。なお、蛇行抑制のためにクラウンローラを用いてベルトをローラの中心部に寄せる手段も一般的に知られているが、クラウンローラは通常のストレートタイプのローラに比べてコストアップになる。また、スチールベルトにクラウンローラを適用した場合はベルト中心部にテンションが集中してしまい、ベルトの寿命が激減してしまう。
《第1実施形態に係るベルト駆動装置の概要》
図5は、本発明の第1実施形態に係るベルト駆動装置としての吸着搬送装置102を概略的に示す側面図である。図6は吸着搬送装置102の上面図である。なお、図6においては、ベルト以外の要素を明示するためにベルト110の図示を省略している。
吸着搬送装置102は、温度変化が大きなシステムにおいても簡易な機構で吸着搬送面の平面度を維持したまま蛇行制御を行うことができる構成となっている。吸着搬送装置102は、既述したベルト110、駆動ローラ112、従動ローラ114、及び吸引ボックス116に加え、ベルト110にテンションを付与するためのエアシリンダ118A、118Bと、ベルト110のベルト幅方向位置を調整するためのステアリングローラ130と、を備える。
吸着搬送装置102では、ベルト110を80℃から150℃の範囲の温度に加熱するために、金属製のベルト110が用いられる。ベルト110は、駆動ローラ112と従動ローラ114との間で搬送面110Aを形成し、駆動ローラ112の摩擦によって図5の反時計回り方向に駆動される。
エアシリンダ118A、118Bは、従動ローラ114の回転軸114Aの左右両側の端部に配置され、従動ローラ114をベルト110に押し付けてベルト110にテンションを付与する。エアシリンダ118A、118Bは、管路121A、121Bを介してベビーコンプレッサ122と接続される。エアシリンダ118A、118Bのそれぞれのロッドは、図5における水平方向に伸縮する。
ベルト110のテンションは、エアシリンダ118A、118Bを用いて従動ローラ114を図5の左方向に押し出すことで生じる。すなわち、エアシリンダ118A、118Bのロッドを、搬送面の移動方向(Y方向)と平行な方向に伸長させることにより、従動ローラ114の回転軸114Aがベルト110に向けて押し出され、従動ローラ114がベルト110を押圧する。エアシリンダ118A、118Bは本開示における「テンション付与部」の一例である。エアシリンダ118A、118Bのロッドの伸長量を制御して従動ローラ114の押圧力(押し付け力)を調整することにより、ベルト110のテンションを調整することができる。従動ローラ114はテンションローラの役割を果たす。
吸着搬送装置102は、エアシリンダ118A、118Bのロッドの伸縮によって変位する従動ローラ114の位置を検出するポテンショメータ120A、120Bを備える。ポテンショメータ120A、120Bは、エアシリンダ118A、118Bに対応して、従動ローラ114の回転軸114Aの左右両側の端部に配置される。ポテンショメータ120A、120Bは本開示における「ローラ位置検出部」の一例である。
駆動ローラ112及び従動ローラ114のそれぞれの回転軸112A、114Aは、本体フレーム160に回転自在に支持される。駆動ローラ112は、ベルト110を駆動させるローラである。吸着搬送装置102は、駆動ローラ112を回転駆動させる動力源としてのサーボモータ124を有する。サーボモータ124の駆動力がベルト伝動機構125を介して駆動ローラ112に伝達されることにより、駆動ローラ112は図5の反時計回り方向に回転駆動される。従動ローラ114は本開示における「第1のローラ」の一例である。駆動ローラ112は本開示における「第2のローラ」の一例である。駆動ローラ112及び従動ローラ114は本開示における「複数のローラ」の一例である。
吸着搬送装置102の具体的な寸法の一例を示すと、駆動ローラ112と従動ローラ114のローラ間距離LAは、例えば1250ミリメートル[mm]である。吸引ボックス116による吸着エリアのY方向長さである吸着距離LSは、例えば1000ミリメートル[mm]である。駆動ローラ112及び従動ローラ114のそれぞれのローラ面長LPは、例えば860ミリメートル[mm]である。ベルト幅BWは、例えば、850ミリメートル[mm]である。
吸引ボックス116は、ダクト127を介してリングブロワ128と接続されている。ダクト127には図示しない圧力センサが設けられている。リングブロワ128は、電気モータ式の真空ブロワである。リングブロワ128は内蔵の羽を回転させてエアを引き込み、負圧を発生させる。吸引ボックス116の詳細な構造は図示しないが、吸引ボックス116は、チャンバと、チャンバの上面に配置される多孔質吸着板及び耐摩耗シートを備えている。リングブロワ128に接続された吸引ボックス116は本開示における「吸引部」の一例である。
吸着搬送装置102におけるベルト110の幅方向の両側のうち、図6において下側に示すサイドをOPS側といい、上側に示すサイドをNOPS側という。「OPS」とはオペレーションパネルサイド(Operation Panel Side)の意であり、図示しない操作パネルが配置される側を意味する。インクジェット印刷装置1Aのオペレータは、OPS側から装置の操作を行うことができる。「NOPS」とは、反オペレーションパネルサイド(Non Operation Panel Side)の意である。図6に示すように、ベビーコンプレッサ122、サーボモータ124、及びリングブロワ128は、吸着搬送装置102のNOPS側に配置される。
吸着搬送装置102は、さらに、ステアリングローラ130の回転軸をベルト厚み方向に傾斜させるステッピングモータ140を含む昇降機構と、を含む。ステッピングモータ140を含む昇降機構は、吸着搬送装置102のNOPS側に配置される。また、吸着搬送装置102は、ベルト110のNOPS側にフォトセンサ144を備える。
ステアリングローラ130は、駆動ローラ112と従動ローラ114の間のベルト経路のうち、駆動ローラ112から従動ローラ114へとベルト110が帰る戻り側のベルト経路(第2のベルト経路)に配置され、ベルト110の内側からベルト110の内周面に当接する。ステアリングローラ130のOPS側の端部は、図示しないピボット軸受けなどを用いて特定の位置に回転自在に拘束されている。ステアリングローラ130のNOPS側の端部にはステッピングモータ140よって昇降する昇降機構142が設けられている。すなわち、ステアリングローラ130のNOPS側の端部は、図示しないベアリングを用いて回動自在に支持され、かつ、ステッピングモータ140を含む昇降機構142によってベルト厚み方向に移動自在に支持されている。
ここでの「ベルト厚み方向」とは、ベルト110の全周のうちステアリングローラ130がベルト110に当接する位置におけるベルト厚み方向をいう。本例の場合、ベルト厚み方向は、図5の上下方向と一致している。本例の場合、図5の上下方向は重力方向と平行な方向である。昇降機構142の構造は図示しないが、昇降機構142は、例えば偏芯カムを利用して回転運動を上下運動に変換する機構であってよい。
ステッピングモータ140を駆動することにより、ステアリングローラ130の回転軸をベルト厚み方向に傾斜させることができる。ステッピングモータ140を含む昇降機構142は本開示における「傾動部」の一例である。ステアリングローラ130の回転軸をベルト厚み方向に傾斜させることにより、ベルト110のX方向位置を調整することができる。
なお、昇降機構142は、ステアリングローラ130の回転軸の端部をベルト厚み方向に沿って直線的に上下動させる機構に限らない。昇降機構142は、ステアリングローラ130の回転軸の端部をベルト厚み方向の異なる位置に移動させることができればよく、その移動経路はベルト厚み方向と平行な経路でなくてもよい。例えば、昇降機構142は、回転運動の移動経路など曲線の移動経路によってステアリングローラ130の回転軸の位置を変更する構成であってもよい。
吸着搬送装置102は、ベルト110のエッジ位置を検出するエッジセンサ150、152と、リミットスイッチ166A、166Bと、赤外線温度センサ172、174と、を備える。
エッジセンサ150、152は、光学式の位置検出センサであり、例えばCCDアレイを用いることができる。本例では、エッジセンサ150、152として、反射型のセンサが用いられるが、透過型のセンサであってもよい。エッジセンサ150、152は、ベルト110のOPS側に配置され、ベルト110のOPS側のエッジ位置を検出する。
なお、本実施形態では、ベルト110の周回経路の2箇所にエッジセンサ150、152を配置しているが、これらのうち蛇行制御に利用するのは、従動ローラ114に近い方の位置に配置されたエッジセンサ150である。エッジセンサ150は本開示における「ベルト位置検出部」の一例である。エッジセンサ150から得られるエッジ位置の情報は本開示における「ベルト位置情報」の一例である。
エッジセンサ150によってベルト110のエッジ位置を検出し、その検出結果に応じて、ステアリングローラ130の昇降量(すなわち、傾斜量)を制御する。駆動ローラ112の近くに配置された他方のエッジセンサ152は、ソフトリミットスイッチとして利用される。エッジセンサ152によって、許容範囲を超えるエッジ位置が検出された場合に、ベルト110を停止させる制御が行われる。
リミットスイッチ166A、166Bは、ベルト110のX方向の両側のベルト移動限界位置に配置され、ベルト位置の異常を検知してベルト110を自動停止させるためのスイッチである。ベルト110がリミットスイッチ166A又は166Bのいずれかに接触すると、リミットスイッチ166A又は166Bが動作してベルト110が停止する。
赤外線温度センサ172、174は、ベルト110の外周面の表面温度を検出する非接触式の放射温度計である。赤外線温度センサ172、174は本開示における「ベルト表面温度検出部」の一例である。非接触式の放射温度計」の一例である。
《ベルト110の具体例》
図7は、吸着搬送装置102におけるベルト110の上面図である。本例では、耐熱性及び伝熱性、耐薬品性等の観点から、ベルト110として、厚みが0.2mmのSUS301(Steel Use Stainless 301)のスチールベルトが用いられる。このベルト110には、複数の吸着孔111が形成されている。吸着孔111は、ベルト110における用紙吸着エリアに規則的なパターンで配置されている。例えば、吸着孔は直径0.5mmの丸孔であり、複数の丸孔は、互いに隣り合う孔同士の中心間距離(孔ピッチ)が2.0mmの60度千鳥格子状(60度ジグザグ状)に配置される。また、ベルト110には、ベルト位置を検出するための図示しないマークなどが付されていてもよい。
このようなベルト110は、例えば、薄い金属プレートに複数の丸孔を穿設した複数枚のプレートを、ベルト長さに応じて溶接などによって接合して無端状に繋ぎ合わせることで製作することができる。
駆動ローラ112及び従動ローラ114の直径は、ベルト寿命(疲労強度)を考慮し、ベルト厚さの600倍以上とすることが好ましい。本例では、直径215mmの駆動ローラ112及び従動ローラ114が用いられる。従動ローラ114とベルト110との接触面でベルト110を押圧することでベルト110にテンションを付与するため、従動ローラ114がベルト110を押す力が局所的に集中しにくく、ベルト110が破断しにくい。すなわち、大きな直径の従動ローラ114を用いてベルト110にテンションを付与する一方、従動ローラ114の手前の戻り側のベルト経路で小径のステアリングローラ130を用いて蛇行制御を行うため、ベルト110に対する負荷の集中が回避され、ベルト110の長寿命化が図られている。
《吸着搬送装置102の制御系の説明》
図8は、吸着搬送装置102の制御系の構成を概略的に示すブロック図である。吸着搬送装置102は、吸着搬送装置102の動作を制御する制御部200を備える。制御部200は、搬送駆動制御部202と、加熱制御部204と、テンション制御部206と、蛇行制御部208と、を含む。制御部200は、1台又は複数台のコンピュータのハードウェア及びソフトウェアの組み合わせによって実現することが可能である。ソフトウェアはプログラムと同義である。プログラマブルコントローラはコンピュータの概念に含まれる。コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)及びメモリを含んで構成され得る。コンピュータに含まれるCPUはプロセッサの一例である。制御部200の処理機能の一部又は全部は、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)に代表される集積回路を用いて実現してもよい。
搬送駆動制御部202はサーボモータ124を制御する。サーボモータ124の動力が駆動ローラ112の回転軸112Aに伝達されることにより、駆動ローラ112が回転する。
加熱制御部204は、赤外線温度センサ172、174から得られる温度情報に基づき、赤外線ランプ162、164を制御する。
テンション制御部206は、エアシリンダ118A、118Bを制御する。エアシリンダ118A、118Bのそれぞれのロッドを伸縮させることで、従動ローラ114をスライドさせることができる。ポテンショメータ120A、120Bによって検出された位置情報はテンション制御部206に送られる。
蛇行制御部208は、エッジセンサ150から得られる位置情報に基づき、ステッピングモータ140を制御する。ステッピングモータ140を駆動することにより、ステアリングローラ130の回転軸がベルト厚み方向に傾動する。蛇行制御部208を含む制御部200は本開示における「制御部」の一例である。
また、制御部200は、図示しないジャム検出用センサによって、紙詰まり(ジャム)などが検出された場合に、装置を緊急停止させる制御を行う。
《蛇行制御の説明》
X方向のベルト位置は、エッジセンサ150によって検出される。エッジセンサ150によって検出された位置情報は蛇行制御部208に送られる。光学式のセンサを用いてベルト110のエッジ位置をより正確に検出するには、ベルト110の搬送面110Aの上方位置から搬送面110Aに向かって光を投射してエッジ位置を読み取る形態が好ましい。しかし、本実施形態では、装置のレイアウトの都合上、エッジセンサ150はベルト110の搬送面110Aよりも重力方向の下側に配置され、ベルト110の下から光を投射してベルト面での反射光を受光することによってベルト110のエッジ位置を読み取っている。装置のレイアウトが成立すれば、エッジセンサは反射型よりも検出安定度の高い透過型のセンサを採用することが好ましい。
吸着搬送装置102における蛇行制御は、エッジセンサ150によって検出されるエッジ位置の値に応じてステッピングモータ140を駆動させ、ステアリングローラ130の片側端部(NOPS側端部)を昇降させることで実現されている。
図9は、制御部200によって実行されるベルト駆動及び蛇行制御の処理例を示すフローチャートである。制御部200はベルト駆動及び蛇行制御を開始すると、図9のフローチャートを実行する。
ステップS12において、制御部200はエッジセンサ150からベルト110のエッジ位置を読み取る。
ステップS14において、制御部200はステップS12にて読み取った現在のエッジ位置(現在位置)と目標位置との差δXを計算し、差δXが0以下の値であるか、0を超える正の値であるかを判定する。なお、目標位置のデータは予め制御部200のメモリに保持されている。
ステップS14の判定結果がδX≦0である場合、制御部200はステップS16に移行してステアリングローラ130の端部を上昇させる。その一方、ステップS14の判定結果がδX>0である場合、制御部200はステップS18に移行してステアリングローラ130の端部を下降させる。
ステップS16又はステップS18の後、制御部200はステップS20に移行する。ステップS20において、制御部200はベルトを停止させるか否かを判定する。ステップS20の判定結果がNo判定である場合、制御部200はステップS12に戻り、ステップS12からステップS20を繰り返す。ステップS20の判定結果がYes判定である場合、制御部200はベルト110を停止させて図9のフローチャートを終了する。
既述のとおり、ステアリングローラ130の昇降機構142は、ベルト110のNOPS側に配置されている。ステアリングローラ130のNOPS側の端部を上げると、ベルト110はNOPS側に移動する。ステアリングローラのNOPS側の端部を下げると、ベルト110はOPS側に移動する。本実施形態では、このような関係でベルト110のX方向の両端のうち、テンションが弱い方向に向かってベルト110が移動する性質を利用して蛇行制御を行っている。ステアリングローラ130の上げ量又は下げ量を大きくすればするほど、ベルト110のX方向への移動速度は速くなる。
実際の制御ではこの性質を活かし、現在位置と目標位置との差δXの絶対値が大きい場合はステアリングローラ130の移動量(上げ量又は下げ量)を大きくし、目標位置に近づいてくるとステアリングローラ130の移動量を小さくするといったPID制御(Proportional-Integral-Differential Controller)を導入している。
図10は、蛇行制御データの一例を示すブラフである。横軸は時間、左縦軸はベルト110のエッジ位置、つまりベルトの位置を表す。左縦軸の単位はマイクロメートル[μm]である。左縦軸の下の方がOPS側、上の方がNOPS側である。ベルト110のエッジ位置の目標位置は「1,150」であるとする。右縦軸はステアリングローラの位置(昇降機構の移動量)を表す。右縦軸の単位はマイクロメートル[μm]である。右縦軸の「0」は、ステアリングローラ130の回転軸が水平の状態であるときの基準位置水平である。
図10の例では、制御開始時において、エッジ位置は目標位置よりもOPS側に寄っているので、制御開始直後にステアリングローラ130を大きく動かすように、ステッピングモータ140に対して制御パルスを指令する。ここでは、ベルトをNOPS側に移動させる必要があるため、制御部200は、ステアリングローラ130のNOPS側の端部を大きく上昇させるように、昇降用のステッピングモータ140に制御パルスを与える。
すると、次第にベルト110のエッジ位置が目標位置に近づいていく。エッジ位置が目標位置に近づくにつれて、ステアリングローラ130の移動量を小さくして、エッジ位置が目標位置になるように、ステアリングローラ130の傾斜角度を細かく調整する。
このような制御方法によれば、ベルト温度が大きく変化した際のベルトの暴れなどにも瞬時に応答可能な制御が可能である。
以上のように、本実施形態では従動ローラ114によってベルト110にテンションを付与し、かつ、ステアリングローラ130によってベルト110の蛇行を制御する構成となっており、ベルト110にテンションを付与する機能と、ベルト110の蛇行を制御する機能とが分離されている。
従動ローラ114によって常時一定のテンションがベルト110に与えられているため、ステアリングローラ130の回転軸がベルト厚み方向に少しずつ傾斜したとしても、ベルト110は弛まずに搬送面110Aの平面度を維持することが可能である。
《ステアリングローラ130を傾斜させる機構の変形例》
本実施形態では、ステアリングローラ130の回転軸をベルト厚み方向に傾斜させる手段として、ステアリングローラ130の片側の端部のみを昇降させる機構を採用しているが、このような片側昇降の制御に限らず、ステアリングローラ130の両側にそれぞれ昇降機構を設けてもよい。
ステアリングローラ130の両側に昇降機構を設けると、ステアリングローラ130の回転軸の一方の端部を上昇させ、他方の端部を下降させることによって、ステアリングローラ130をベルト厚み方向に傾斜させることができる。これにより、より小さなラップ角で大きなステアリングローラ130の傾斜を作ることができるため、より一層長寿命で、より一層制御性の高いシステムを構築することが可能である。
《加熱制御について》
本実施形態における吸着搬送装置102では、駆動ローラ112及び従動ローラ114の内部にそれぞれ赤外線ランプ162、164を搭載することにより、ベルト110を80℃から150℃の範囲の所望の温度に温調している。本実施形態に例示したようなローラ面長860mmの大幅の搬送装置では、ローラ幅方向でローラ内に温度差が発生し得る。すなわち、ローラ幅方向の中央部に比べ周辺部(端部)の温度が低くなる傾向がある。このため、本実施形態の吸着搬送装置102は、赤外線ランプ162、164の中央部と中央部よりも外側の部分(両端部分)とでヒータ出力を変えたフィラメントを搭載した赤外線ランプが採用されている。すなわち、赤外線ランプ162、164は、ローラ幅方向中央部よりもローラ幅方向外側の部分のヒータ出力が高出力である構成の赤外線ランプである。赤外線ランプ162、164は本開示における「ベルト加熱部」の一例である。
図11は、駆動ローラ112の断面を含む斜視図である。ここでは駆動ローラ112を示すが、従動ローラ114も図11と同様の構造を有する。駆動ローラ112及び従動ローラ114は、非常に強いテンションに耐える強度を確保するため、これら各ローラにはある程度の肉厚が必要となる。駆動ローラ112及び従動ローラ114のそれぞれのラジアル方向の肉厚は、例えば、10ミリメートル[mm]である。
そのため、熱容量が大きい(つまり、熱に対する感度が鈍い)ローラの表面温度を検出して温調をかけると、温度安定性が悪い。そこで、本実施形態における吸着搬送装置102では、ローラよりも熱容量の小さな(つまり、熱に対する感度が高い)ベルト110の表面温度を直接検出することにより、ローラの温調性能を高めている。
また、駆動ローラ112の内面112Cには黒色塗装が施されている。同様に従動ローラ114の内面にも黒色塗装が施されている。駆動ローラ112及び従動ローラ114の各ローラの内面に黒色塗装を施すことで、赤外線の吸収性能を高め、効率よくローラを加温することができる。
なお、ベルト110の表面温度を検出するにあたり、接触式温度計ではベルト110にダメージを与えるリスクがあり、また、熱膨張及び/又は熱収縮の際に接触不良を起こすリスクがあるため、本実施形態では非接触式の放射温度計を採用している。
また、ジャム発生時などに吸着搬送装置102を緊急停止させた場合、駆動ローラ112及び従動ローラ114に接しているベルト110の高温部分とそれ以外の冷めやすい部分との温度差によってベルト110の周長方向について大きな温度ムラが生じる。ベルト110の周長方向について大きな温度ムラがある状態でベルト110の駆動を再開すると、ベルト110の温度ムラに起因する「波打ち」が発生する。本実施形態の吸着搬送装置102の場合、この大きな温度ムラがある状態でシステムを稼働させるとベルト110がグリッパ74に接触し、ベルト表面が傷んでしまう可能性がある。このような事態を抑止するために、本実施形態の吸着搬送装置102では、ジャム発生時などにシステムを緊急停止した際には、赤外線ランプ162、164の出力を停止し、かつ、ベルト110の表面温度が所定の閾値以下の温度、例えば、50℃以下の温度になるまでシステムの起動を禁止している。ここでいう「50℃」という閾値は、ベルト110が波打ちしてもグリッパ74に接触しないような波打ちの程度となる温度の一例である。
赤外線ランプ162、164の停止によってベルト110全体が冷めて50℃以下になると、ベルト110内における熱膨張差が小さくなり、波打ちが抑制される。緊急停止後は、ベルト110の表面温度が50℃以下になってから(熱膨張差が小さくなってから)、ベルト110の駆動を再開させる。そして、再稼働後に、赤外線ランプ162、164の出力も再開して徐々に温度を上げ、所望の温度に調整する。制御部200は、緊急停止の際に、赤外線ランプ162、164を停止させ、かつ、ベルト110の表面温度が閾値以下になるまでベルト110の駆動の再開を禁止する制御を行う。制御部200は本開示における「駆動制御部」の一例である。
《ベルト110の寿命予測機能について》
吸着搬送装置102において、従動ローラ114のテンション付与機構部にはポテンショメータ120A、120Bが搭載されており、ポテンショメータ120A、120Bから得られる位置情報を基にベルト110にかかるテンションを評価することができる。例えば、ベルト110に対して所要のテンションがかかっていることをポテンショメータ120A、120Bによって確認することができる。
また、ベルト110は長期使用によって経時的に劣化して伸びる可能性がある。ポテンショメータ120A、120Bによって検出される位置情報からベルト110の伸び量(初期位置からの伸び量)を把握することができる。したがって、本例の吸着搬送装置102は、予めベルト110の伸び量とベルト110の寿命との関係を実験等によってデータとして保持しており、ポテンショメータ120A、120Bの位置情報が示すベルト110の伸び状態からベルト110の寿命を予測する仕掛けが仕組まれている。制御部200は、ポテンショメータ120A、120Bから得られる位置情報を基にベルト110の寿命を予測する機能を有する。なお、「予測」は「推定」と言い換えてもよい。制御部200は、その予測結果を基にユーザインターフェースを介してユーザに警告等の報知を行うなどの処理を実施することができる。制御部200は本開示における「情報処理部」の一例である。
《第2実施形態に係るベルト駆動装置の概要》
図12は、本発明の第2実施形態に係るベルト駆動装置としての吸着搬送装置212の構成を概略的に示す側面図である。図12に示す構成において、図5及び図6に示した構成と同一又は類似の要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。第1実施形態に係る吸着搬送装置102に代えて、図12に示す吸着搬送装置212を適用してもよい。
吸着搬送装置212は、駆動ローラ222と、従動ローラ232と、を含む。吸着搬送装置212は、2本の従動ローラ114、232によって搬送面110Aが形成される。従動ローラ232の内部には、回転軸232Aに沿って赤外線ランプ162が配置される。駆動ローラ222は、吸引ボックス116の吸着エリアを通過したベルト110を従動ローラ232から従動ローラ114へと戻すベルト経路に配置される。駆動ローラ222の回転軸222Aは、サーボモータ124によって回転駆動される。
ステアリングローラ130は、駆動ローラ222と従動ローラ114の間のベルト経路に配置される。ステアリングローラ130をベルト厚み方向に昇降させることにより、第1実施形態と同様の効果が得られる。
第1実施形態では装置小型化のために、搬送面110Aを駆動ローラ112と従動ローラ114とで構成しているが、装置のスペースが許されるのであれば、図12に示すような構成を採用することができる。第2実施形態に係る吸着搬送装置212の従動ローラ232は本開示における「第2のローラ」の一例であり、駆動ローラ222は本開示における「第3のローラ」の一例である。
《インクジェット印刷装置1Aの制御系の概要》
図13は、インクジェット印刷装置1Aの制御系の概略構成を示すブロック図である。インクジェット印刷装置1Aは、システムコントローラ300を備える。システムコントローラ300は、CPU300A、ROM300B、及びRAM300Cを含んで構成される。CPUは、Central Processing Unitの省略語である。ROMは、Read Only Memoryの省略語である。RAMは、Random Access Memoryの省略語である。なお、ROM300B、RAM300C等の記憶部は、システムコントローラ300の外部に設けられていてもよい。
システムコントローラ300は、インクジェット印刷装置1Aの各部を統括的に制御する全体制御部として機能する。また、システムコントローラ300は、各種演算処理を行う演算部として機能する。更に、システムコントローラ300は、ROM300B、及びRAM300Cなどのメモリにおけるデータの読み出し、及びデータの書き込みを制御するメモリコントローラとして機能する。
インクジェット印刷装置1Aは、通信部302、画像メモリ304、搬送制御部310、給紙制御部312、処理液付与制御部314、処理液乾燥制御部316、描画制御部318、インク乾燥制御部320、及び排紙制御部324を備えている。これらの各部の要素は、1台又は複数台のコンピュータによって実現することが可能である。つまり、システムコントローラ300を含む制御系の各要素は、コンピュータのハードウェアとソフトウェアとの組み合わせによって構成することができる。また、制御に必要な処理機能の一部又は全部は、DSPやFPGAに代表される集積回路を用いて実現してもよい。
通信部302は、図示されない通信インターフェースを備え、通信インターフェースと接続されたホストコンピュータ400との間でデータの送受信を行うことができる。
画像メモリ304は、画像データを含む各種データの一時記憶部として機能する。通信部302を介してホストコンピュータ400から取り込まれた画像データは、一旦画像メモリ304に格納される。
搬送制御部310は、インクジェット印刷装置1Aにおける用紙Pの搬送系11の動作を制御する。搬送系11には、図1に示された給紙ドラム16、処理液塗布ドラム22、処理液乾燥ドラム32、描画ドラム42などの用紙搬送機構が含まれる。また、搬送系11には、図示せぬ動力源としてのモータ及びモータ駆動回路などの駆動部が含まれる。
図13に示された給紙制御部312は、システムコントローラ300からの指令に応じて給紙部10を動作させる。給紙制御部312は、用紙Pの供給開始動作、及び用紙Pの供給停止動作などを制御する。
処理液付与制御部314は、システムコントローラ300からの指令に応じて処理液付与部20を動作させる。処理液付与制御部314は、処理液の付与量、及び付与タイミングなどを制御する。
処理液乾燥制御部316は、システムコントローラ300からの指令に応じて処理液乾燥部30を動作させる。処理液乾燥制御部316は、乾燥温度、乾燥気体の流量、及び乾燥気体の噴射タイミングなどを制御する。
描画制御部318は、システムコントローラ300からの指令に応じて、描画部40の動作を制御する。描画制御部318は、画像処理部、波形生成部、波形記憶部、及び駆動回路を含んで構成される。画像処理部、波形生成部、波形記憶部、及び駆動回路の図示は省略される。画像処理部は入力画像データからドットデータを形成する。波形生成部は駆動電圧の波形を生成する。波形記憶部は駆動電圧の波形が記憶される。駆動回路はドットデータに応じた駆動波形を有する駆動電圧を生成する。駆動回路は駆動電圧を液体吐出ヘッドに供給する。
画像処理部において、入力画像データに対してRGBの各色に分解する色分解処理、RGBをCMYKに変換する色変換処理、ガンマ補正、ムラ補正等の補正処理、各色の画素ごとの階調値を元の階調値未満の階調値に変換するハーフトーン処理が施される。
入力画像データの一例として、0から255のデジタル値で表されるラスターデータが挙げられる。ハーフトーン処理の結果として得られるドットデータは、二値でもよいし、三値以上ハーフトーン処理前の階調値未満の多値でもよい。
画像処理部による処理を経て生成されたドットデータに基づいて、各画素位置の吐出タイミング、インク吐出量が決められ、各画素位置の吐出タイミング、インク吐出量に応じた駆動電圧、各画素の吐出タイミングを決める制御信号が生成され、この駆動電圧が液体吐出ヘッドへ供給され、液体吐出ヘッドから吐出させたインクによってドットが記録される。
描画制御部318は、図示されない補正処理部が備えられていてもよい。補正処理部は異常ノズルに対する補正処理を実行する。補正処理が施されると、異常ノズルの発生に起因する画像品質の低下が抑制される。
インク乾燥制御部320は、システムコントローラ300からの指令に応じてインク乾燥部50を動作させる。インク乾燥制御部320は、乾燥気体温度、乾燥気体の流量、又は乾燥気体の噴射タイミングなどを制御する。システムコントローラ300と搬送制御部310とインク乾燥制御部320との組み合わせは、図8で説明した制御部200に相当する。
排紙制御部324は、システムコントローラ300からの指令に応じて集積部60を動作させる。図1に示された集積装置62が昇降機構を含む場合に、排紙制御部324は、用紙Pの増減に応じて昇降機構の動作を制御する。
図13に示されたインクジェット印刷装置1Aは、操作部330、表示部332、パラメータ記憶部334、及びプログラム格納部336を備えている。
操作部330は、操作ボタン、キーボード、マウス若しくはタッチパネル又はこれらの組み合わせ等からなる入力装置を含んで構成される。操作部330は、複数の種類の操作部材が含まれていてもよい。操作部材の図示は省略される。
操作部330を介して入力された情報は、システムコントローラ300に送られる。システムコントローラ300は、操作部330から送出された情報に応じて各種処理を実行させる。
表示部332は、液晶パネル等の表示装置(ディスプレイ)を含んで構成される。表示部332は、システムコントローラ300からの指令に応じて、装置の各種設定情報、又は異常情報などの各種情報を表示し得る。操作部330と表示部332とによってユーザインターフェースが構成される。ユーザは、表示部332の画面に表示される内容を見ながら操作部330を使って各種パラメータの設定及び各種情報の入力並びに編集が可能である。
パラメータ記憶部334は、インクジェット印刷装置1Aに使用される各種パラメータが記憶される。パラメータ記憶部334に記憶されている各種パラメータは、システムコントローラ300を介して読み出され、装置各部に設定される。
プログラム格納部336は、インクジェット印刷装置1Aの各部に使用されるプログラムが格納される。プログラム格納部336に格納されている各種プログラムは、システムコントローラ300を介して読み出され、装置各部において実行される。
インクジェット印刷装置1Aは、メンテナンス制御部338とメンテナンス部340とを備える。メンテナンス制御部338は、システムコントローラ300からの指令に応じてメンテナンス部340の動作を制御する。メンテナンス部340の動作には、図示せぬウェブに対して洗浄液を付与する動作及びウェブによる払拭動作が含まれる。また、メンテナンス部340の動作には、インクジェットヘッドのパージ処理や予備吐出などが含まれていてもよい。
《各処理部及び制御部のハードウェア構成について》
図8で説明した制御部200、搬送駆動制御部202、加熱制御部204、テンション制御部206、蛇行制御部208、並びに図13で説明した通信部302、搬送制御部310、給紙制御部312、処理液付与制御部314、処理液乾燥制御部316、描画制御部318、インク乾燥制御部320、排紙制御部324、及びメンテナンス制御部338などの各種の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。
各種のプロセッサには、プログラムを実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されていてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサで構成されてもよい。例えば、1つの処理部は、複数のFPGA、或いは、CPUとFPGAの組み合わせによって構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第一に、クライアントやサーバなどのコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第二に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)などに代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
《インクジェットヘッドの吐出方式について》
インクジェットヘッドのイジェクタは、液体を吐出するノズルと、ノズルに通じる圧力室と、圧力室内の液体に吐出エネルギーを与える吐出エネルギー発生素子と、を含んで構成される。イジェクタのノズルから液滴を吐出させる吐出方式に関して、吐出エネルギーを発生させる手段は、圧電素子に限らず、発熱素子や静電アクチュエータなど、様々な吐出エネルギー発生素子を適用し得る。例えば、発熱素子による液体の加熱による膜沸騰の圧力を利用して液滴を吐出させる方式を採用することができる。インクジェットヘッドの吐出方式に応じて、相応の吐出エネルギー発生素子が流路構造体に設けられる。
《記録媒体について》
「用紙」は、画像の形成に用いられる記録媒体の一例である。記録媒体という用語は、記録用紙、印刷用紙、印刷媒体、印字媒体、被印刷媒体、画像形成媒体、被画像形成媒体、受像媒体、被吐出媒体など様々な用語で呼ばれるものの総称である。記録媒体の材質や形状等は、特に限定されず、シール用紙、樹脂シート、フィルム、布、不織布、その他材質や形状を問わず、様々なシート体を用いることができる。記録媒体は枚葉の媒体に限らず、連続紙などの連続媒体であってもよい。また、枚葉の用紙は、予め規定のサイズに整えられたカット紙に限らず、連続媒体から随時、規定のサイズに裁断して得られるものであってもよい。
《実施形態の利点》
(1)吸着搬送装置102、212によれば、簡易な機構によって、搬送面110Aの平面度を維持しつつ、ベルト110の蛇行を抑制することができる。
(2)吸着搬送装置102、212によれば、吸着搬送機能、加熱搬送機能、及び直進搬送機能の各機能について優れた性能を実現できる。
(3)吸着搬送装置102、212によれば、蛇行制御に際してベルト110に加わる負荷が小さく、長寿命の装置を提供できる。
《変形例1》
ベルト110のX方向位置を検出する手段として、ベルト110のエッジ位置を検出するエッジセンサ150に限らず、ベルト110の特定位置を検出するセンサを用いてもよい。例えば、ベルト110の特定位置に位置検出用のマークを付しておき、このマークの位置をセンサによって検出することにより、ベルト110のX方向位置を検出してもよい。
《変形例2》
用紙Pをベルト110に吸着させる方式は、負圧による吸引吸着に限らず、静電吸着など他の方式を利用してもよい。
《変形例3》
上述の実施形態では、画像形成装置の一例として、シングルパス方式のインクジェット印刷装置を説明したが、本発明は、有版、無版を問わず、様々な画像形成装置に適用できる。例えば、短尺のインクジェットヘッドを往復走査させて画像を形成するマルチスキャン方式のインクジェット印刷装置、若しくは電子写真装置、又はオフセット印刷機などの各種の画像形成装置についても本開示のベルト駆動装置を適用できる。また、吸着機能を含む吸着搬送装置102を例示したが、吸着機能を有していない搬送装置についても本開示のベルト駆動装置を適用できる。
《変形例4》
本開示のベルト駆動装置は、無端ベルトのベルト面に搬送物を支持して搬送物を搬送する搬送装置に限らず、例えば、無端ベルトである中間転写ベルトのベルト面にトナー像を担持する像担持手段としての中間転写ベルトのベルト駆動装置に適用することができる。
《用語について》
「印刷装置」という用語は、印刷機、プリンタ、印字装置、画像記録装置、画像形成装置、画像出力装置、或いは、描画装置などの用語と同義である。
「画像」は広義に解釈するものとし、カラー画像、白黒画像、単一色画像、グラデーション画像、均一濃度(ベタ)画像なども含まれる。「画像」は、写真画像に限らず、図柄、文字、記号、線画、モザイクパターン、色の塗り分け模様、その他の各種パターン、若しくはこれらの適宜の組み合わせを含む包括的な用語として用いる。
また、「画像」は、色材を含有するインクによって形成されるものに限らず、インク付与前に用紙に付与される処理液、及び/又はインク付与後に用紙に付与されるニス等によって形成される画像であってもよい。例えば、処理液を用紙にベタ塗りする態様、及び/又は、水性ニスを用紙にベタ塗りする態様についても、画像を形成することの概念に含まれる。処理液がベタ塗りされた用紙、及び/又は、ニスがベタ塗りされた用紙は「画像が形成された記録媒体」の一形態に相当する。処理液が付与された用紙を乾燥させるための乾燥装置として、インク乾燥部50と同様の構成を適用することができる。また、ニスが付与された用紙を乾燥させるための乾燥装置として、インク乾燥部50と同様の構成を適用することができる。
画像の「形成」とは、画像の記録、印刷、印字、描画、及びプリントなどの用語の概念を含む。
「用紙を乾燥させる」という表現は、用紙に付着させたインクを乾燥させることと同等の意味を含んでいる。また、「用紙を乾燥させる」という表現は、用紙に付着させた処理液及び/又はニスなどを乾燥させることと同等の意味を含んでいる。
本明細書における「直交」又は「垂直」という用語には、90°未満の角度、又は90°を超える角度をなして交差する態様のうち、実質的に90°の角度をなして交差する場合と同様の作用効果を発生させる態様が含まれる。
無端ベルトが架け渡される「ローラ」は「プーリ」と言い換えてもよい。
《実施形態及び変形例等の組み合わせについて》
上述の実施形態で説明した構成や変形例で説明した事項は、適宜組み合わせて用いることができ、また、一部の事項を置き換えることもできる。
以上説明した本発明の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜構成要件を変更、追加、又は削除することが可能である。本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で同等関連分野の通常の知識を有する者により、多くの変形が可能である。