JP2020089811A - 機能性構造体、触媒、エチレンガス酸化用触媒 - Google Patents

機能性構造体、触媒、エチレンガス酸化用触媒 Download PDF

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Abstract

【目的】高い触媒活性(例えば酸化能を向上させて効率的に炭化水素を酸化分解する反応の活性)を有し、かつその機能性物質の機能の低下を抑制して長寿命化を実現する機能性構造体、触媒、エチレンガス酸化用触媒を提供する。【解決手段】機能性構造体1は、ゼオライト型化合物で構成される多孔質構造の担体10と、担体10に内在する少なくとも1つの機能性物質20とを備え、担体10が、互いに連通する通路11を有し、機能性物質20が、Mo、Fe及びCuからなる群から選択される1種以上である第1の金属元素と、V及びCeからなる群から選択される1種以上である第2の金属元素を含み、担体10の少なくとも通路11に存在する。【選択図】図1

Description

本発明は、多孔質構造の担体(骨格体)と機能性物質とを備える機能性構造体、並びにそれを用いた、触媒、エチレンガス酸化用触媒に関する。
野菜や果実、花、観葉植物、球根などの農産物は、収穫された後の保存の過程においてエチレンガスを生成して成熟し、またエチレンガスの濃度の高い空間では成熟が著しく促進されることが知られている(増田芳雄著「植物生理学」培風館参照)。そこで、収穫された農産物を密閉された空間(例えば冷蔵室や冷蔵庫など)で保存するに際し、その鮮度を長期にわたって維持するためには、農産物から生成されるエチレンガスを除去し、あるいはエチレンガスの生成を抑制することが重要になる。また、植物の成長の際にもエチレンガスが生成され、かつこのエチレンガスが植物の成長を促進する。したがって、野菜や花木、観葉植物などを密閉された空間(例えば温室)で栽培するに際して、エチレンガスの濃度を制御することが、成長を制御する上で重要になる。
エチレンの除去方法としては、紫外線照射による直接分解、活性炭等の吸着剤による吸着除去、酸化チタンに代表される光触媒による除去などが知られている。しかしながら、紫外線照射による直接分解では、紫外線発生装置が必要であり、電力を消費する。また、活性炭等による吸着除去では、エチレンを吸着させた後の吸着剤を回収・再生したりする作業が必要である。さらに、光触媒を利用してエチレンを分解する場合は、紫外光等の照射が必須となる。
そこで、これらの方法以外に、光照射を要さない触媒燃焼反応によるエチレンの分解が提案されている。例えば特許文献1には、光照射を必要としないエチレン触媒燃焼反応のために、担体表面上に、セリウム−ジルコニウム−ビスマス複合酸化物と貴金属微粒子(白金コロイド由来)とを担持した触媒が開示されている。また、特許文献2には多孔質シリカに白金又は白金含有化合物を担持させてなるエチレン分解剤が報告されている。白金はエチレン酸化反応において高い能力を有する。
特開2007−229559号公報 特開2017−23889号公報
しかしながら、特許文献1および2の方法では、貴金属系触媒を利用しているために高価である。そのため、貴金属系触媒以外の触媒材料への代替が求められているが、貴金属系触媒と同程度の触媒活性を示す触媒材料は見出されていない。そのため、材料の選択以外の方法でも触媒活性を向上させる必要がある。
触媒活性を向上させる方法としては、例えば触媒粒子を微細化して、比表面積を大きくすることが挙げられる。これにより、触媒粒子とエチレンの接触確率を高めることができ、触媒活性が向上される。その一方で、触媒粒子を微細化すると、触媒粒子の表面エネルギーが高くなり、触媒粒子同士が凝集しやすくなる。このようにして触媒粒子同士が凝集して粗大化すると、比表面積を低下し、したがって触媒活性も低下する。このような触媒粒子の凝集は、特許文献1および2のように触媒粒子を担体に担持することである程度は抑制できるが、それでも充分とは言えない。
本発明の目的は、高い触媒活性(例えば酸化能を向上させて効率的に炭化水素を酸化分解する反応の活性)を有し、かつその機能性物質の機能の低下を抑制して長寿命化を実現することができる機能性構造体、触媒、エチレンガス酸化用触媒を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ゼオライト型化合物で構成される多孔質構造の担体と、担体に内在する少なくとも1つの機能性物質と備え、担体が、互いに連通する通路を有し、機能性物質が、Mo、Fe及びCuからなる群から選択される1種以上である第1の金属元素と、V及びCeからなる群から選択される1種以上である第2の金属元素を含み、担体の少なくとも通路に存在することで、高い触媒活性(例えば酸化能を向上させて効率的に炭化水素を酸化分解する反応の活性)を有し、かつその機能性物質の機能の低下を抑制して長寿命化を実現できる機能性構造体が得られることを見出し、かかる知見に基づき本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
[1]ゼオライト型化合物で構成される多孔質構造の担体と、前記担体に内在する少なくとも1つの機能性物質と、を備え、前記担体が、互いに連通する通路を有し、前記機能性物質が、Mo、Fe及びCuからなる群から選択される1種以上である第1の金属元素と、V及びCeからなる群から選択される1種以上である第2の金属元素を含み、前記担体の少なくとも前記通路に存在することを特徴とする機能性構造体。
[2]前記通路は、前記ゼオライト型化合物の骨格構造の一次元孔、二次元孔及び三次元孔のうちのいずれかと、前記一次元孔、前記二次元孔及び前記三次元孔のうちのいずれとも異なる拡径部とを有し、かつ
前記機能性物質が、少なくとも前記拡径部に存在していることを特徴とする、[1]に記載の機能性構造体。
[3]前記拡径部は、前記一次元孔、前記二次元孔及び前記三次元孔のうちのいずれかを構成する複数の孔同士を連通している、[2]に記載の機能性構造体。
[4]前記機能性物質の平均粒径が、前記通路の平均内径よりも大きく、且つ前記拡径部の内径以下であることを特徴とする、[2]又は[3]に記載の機能性構造体。
[5]前記通路の平均内径に対する前記機能性物質の平均粒径の割合が、0.1〜36であることを特徴とする、[1]〜[4]のいずれかに記載の機能性構造体。
[6]前記機能性物質の第1の金属元素が、前記機能性構造体に対して0.005質量%〜2.5質量%で含有されていることを特徴とする、[1]〜[5]のいずれかに記載の機能性構造体。
[7]前記機能性物質の第2の金属元素が、前記機能性構造体に対して0.00005質量%〜2.5質量%で含有されていることを特徴とする、[1]〜[6]のいずれかに記載の機能性構造体。
[8]前記機能性物質の平均粒径が、0.08nm〜50nmであることを特徴とする、[1]〜[7]のいずれかに記載の機能性構造体。
[9]前記拡径部の内径は、0.5nm〜50nmであることを特徴とする、[2]〜[8]のいずれかに記載の機能性構造体。
[10]前記担体の外表面に保持された少なくとも1つの他の機能性物質を更に備えることを特徴とする、[1]〜[9]のいずれかに記載の機能性構造体。
[11]前記担体に内在する前記少なくとも1つの機能性物質の含有量が、前記担体の外表面に保持された前記少なくとも1つの他の機能性物質の含有量よりも多いことを特徴とする、[10]に記載の機能性構造体。
[12]前記ゼオライト型化合物は、ケイ酸塩化合物であることを特徴とする、[1]〜[11]のいずれかに記載の機能性構造体。
[13]前記機能性構造体は、シート状を有することを特徴とする、[1]〜[12]のいずれかに記載の機能性構造体。
[14]前記機能性物質は、金属酸化物微粒子である、[1]〜[13]のいずれかに記載の機能性構造体。
[15]前記機能性物質は、金属微粒子である、[1]〜[13]のいずれかに記載の機能性構造体。
[16][1]〜[15]のいずれかに記載の機能性構造体を含むことを特徴とする触媒。
[17][1]〜[15]のいずれかに記載の機能性構造体を含むことを特徴とするエチレンガス酸化用触媒。
本発明によれば、高い触媒活性(例えば酸化能を向上させて効率的に炭化水素を酸化分解する反応の活性)を有し、かつその機能性物質の機能の低下を抑制して長寿命化を実現できる機能性構造体、触媒、エチレンガス酸化用触媒を提供することができる。
図1は、本発明の実施形態に係る機能性構造体の内部構造が分かるように概略的に示したものであって、図1(a)は斜視図(一部を横断面で示す。)、図1(b)は部分拡大断面図である。 図2は、図1の機能性構造体の機能の一例を説明するための部分拡大断面図であり、図2(a)は篩機能、図2(b)は触媒機能を説明する図である。 図3は、図1の機能性構造体の製造方法の一例を示すフローチャートである。 図4は、図1の機能性構造体の変形例を示す模式図である。
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
[機能性構造体の構成]
図1は、本発明の実施形態に係る機能性構造体の構成を概略的に示す図であり、(a)は斜視図(一部を横断面で示す。)、(b)は部分拡大断面図である。なお、図1における機能性構造体は、その一例を示すものであり、本発明に係る各構成の形状、寸法等は、図1のものに限られないものとする。
図1(a)に示されるように、機能性構造体1は、ゼオライト型化合物で構成される多孔質構造の担体である骨格体10と、骨格体10に内在し、Mo、Fe及びCuからなる群から選択される1種以上である第1の金属元素(M)と、V及びCeからなる群から選択される1種以上である第2の金属元素(M)とを含む、少なくとも1つの機能性物質20とを備える。
機能性物質20は、単独で、または骨格体10と協働することで、一又は複数の機能を発揮する物質である。また、上記機能の具体例としては、触媒機能、発光(または蛍光)機能、吸光機能、識別機能等が挙げられる。機能性物質20は、例えば触媒機能を有する触媒物質であることが好ましい。なお、機能性物質20が触媒物質であるとき、骨格体10は、触媒物質を担持する担体である。
機能性構造体1において、複数の機能性物質20,20,・・・は、骨格体10の多孔質構造の内部に包接されている。機能性物質20は、触媒能(触媒活性)を有する触媒物質であり、微粒子の形態を有する。機能性物質については、詳しくは後述する。また、機能性物質20は、金属や金属酸化物、金属の合金、またはこれらの複合材料を含む粒子であってもよい。
骨格体10は、多孔質構造であり、図1(b)に示すように、好適には複数の孔11a,11a,・・・が形成されることにより、互いに連通する通路11を有する。ここで機能性物質20は、骨格体10の少なくとも通路11に存在しており、好ましくは骨格体10の少なくとも通路11に保持されている。
このような構成により、骨格体10内での機能性物質20の移動が規制され、機能性物質20、20同士の凝集が有効に防止されている。その結果、機能性物質20としての有効表面積の減少を効果的に抑制することができ、機能性物質20の機能は長期にわたって持続する。すなわち、機能性構造体1によれば、機能性物質20の凝集による機能の低下を抑制でき、機能性構造体1としての長寿命化を図ることができる。また、機能性構造体1の長寿命化により、機能性構造体1の交換頻度を低減でき、使用済みの機能性構造体1の廃棄量を大幅に低減することができ、省資源化を図ることができる。
通常、機能性構造体を、流体(例えば、農産物から生成されるエチレンガスなど)の中で用いる場合、流体から外力を受ける可能性がある。この場合、機能性物質が、骨格体10の外表面に付着状態で保持されているだけであると、流体からの外力の影響で骨格体10の外表面から離脱しやすいという問題がある。これに対し、機能性構造体1では、機能性物質20は骨格体10の少なくとも通路11に保持されているため、流体による外力の影響を受けたとしても、骨格体10から機能性物質20が離脱しにくい。すなわち、機能性構造体1が流体内にある場合、流体は骨格体10の孔11aから、通路11内に流入するため、通路11内を流れる流体の速さは、流路抵抗(摩擦力)により、骨格体10の外表面を流れる流体の速さに比べて、遅くなると考えられる。このような流路抵抗の影響により、通路11内に保持された機能性物質20が流体から受ける圧力は、骨格体10の外部において機能性物質が流体から受ける圧力に比べて低くなる。そのため、骨格体11に内在する機能性物質20が離脱することを効果的に抑制でき、機能性物質20の機能を長期的に安定して維持することが可能となる。なお、上記のような流路抵抗は、骨格体10の通路11が、曲がりや分岐を複数有し、骨格体10の内部がより複雑で三次元的な立体構造となっているほど、大きくなると考えられる。
また、通路11は、ゼオライト型化合物の骨格構造によって画定される一次元孔、二次元孔及び三次元孔のうちのいずれかと、上記一次元孔、上記二次元孔及び上記三次元孔のうちのいずれとも異なる拡径部12とを有していることが好ましく、このとき、機能性物質20は、少なくとも拡径部12に存在していることが好ましく、少なくとも拡径部12に包接されていることがより好ましい。ここでいう一次元孔とは、一次元チャンネルを形成しているトンネル型またはケージ型の孔、もしくは複数の一次元チャンネルを形成しているトンネル型またはケージ型の複数の孔(複数の一次元チャンネル)を指す。また、二次元孔とは、複数の一次元チャンネルが二次元的に連結された二次元チャンネルを指し、三次元孔とは、複数の一次元チャンネルが三次元的に連結された三次元チャンネルを指す。
これにより、機能性物質20の骨格体10内での移動がさらに規制され、機能性物質20の離脱や、機能性物質20、20同士の凝集をさらに有効に防止することができる。包接とは、機能性物質20が骨格体10に内包されている状態を指す。このとき機能性物質20と骨格体10とは、必ずしも直接的に互いが接触している必要はなく、機能性物質20と骨格体10との間に他の物質(例えば、界面活性剤等)が介在した状態で、機能性物質20が骨格体10に間接的に保持されていてもよい。
図1(b)では機能性物質20が拡径部12に包接されている場合を示しているが、この構成だけには限定されず、機能性物質20は、その一部が拡径部12の外側にはみ出した状態で通路11に保持されていてもよい。また、機能性物質20は、拡径部12以外の通路11の部分(例えば通路11の内壁部分)に部分的に埋設され、または固着等によって保持されていてもよい。
また、拡径部12は、上記一次元孔、上記二次元孔及び上記三次元孔のうちのいずれかを構成する複数の孔11a,11a同士を連通しているのが好ましい。これにより、骨格体10の内部に、一次元孔、二次元孔又は三次元孔とは異なる別途の通路が設けられるので、機能性物質20の機能をより発揮させることができる。
また、通路11は、骨格体10の内部に、分岐部または合流部を含んで三次元的に形成されており、拡径部12は、通路11の上記分岐部または合流部に設けられるのが好ましい。
骨格体10に形成された通路11の平均内径Dは、上記一次元孔、二次元孔及び三次元孔のうちのいずれかを構成する孔11aの短径及び長径の平均値から算出され、例えば0.1nm〜1.5nmであり、好ましくは0.5nm〜0.8nmである。また、拡径部12の内径Dは、例えば0.5nm〜50nmであり、好ましくは1.1nm〜40nm、より好ましくは1.1nm〜3.3nmである。拡径部12の内径Dは、例えば後述する前駆体材料(A)の細孔径、及び包接される機能性物質20の平均粒径Dに依存する。拡径部12の内径Dは、機能性物質20を包接し得る大きさである。
骨格体10は、ゼオライト型化合物で構成される。ゼオライト型化合物としては、例えば、ゼオライト(アルミノケイ酸塩)、陽イオン交換ゼオライト、シリカライト等のケイ酸塩化合物、アルミノホウ酸塩、アルミノヒ酸塩、ゲルマニウム酸塩等のゼオライト類縁化合物、リン酸モリブデン等のリン酸塩系ゼオライト類似物質などが挙げられる。中でも、ゼオライト型化合物はケイ酸塩化合物であることが好ましい。
ゼオライト型化合物の骨格構造は、FAU型(Y型またはX型)、MTW型、MFI型(ZSM−5)、FER型(フェリエライト)、LTA型(A型)、MWW型(MCM−22)、MOR型(モルデナイト)、LTL型(L型)、BEA型(ベータ型)などの中から選択され、好ましくはMFI型であり、より好ましくはZSM−5である。ゼオライト型化合物には、各骨格構造に応じた孔径を有する孔が複数形成されており、例えばMFI型の最大孔径は0.636nm(6.36Å)、平均孔径0.560nm(5.60Å)である。
機能性物質20(金属微粒子や金属酸化物微粒子)は、第1の金属元素と第2の金属元素とを含む。第1の金属元素は、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)及び銅(Cu)からなる群から選択される1種以上である。また、第2の金属元素は、バナジウム(V)及びセリウム(Ce)からなる群から選択される1種以上である。エチレンの分解作用があるのは第1の金属元素を含む金属酸化物であるが、触媒の使用環境により酸化・還元の度合いなどを調節することで、金属微粒子と金属酸化物微粒子などによる機能性物質の程度を調整することができる。
機能性物質20としては、第1の金属元素および第2の金属元素の一方または両方を含有する金属微粒子を含んでもよく、このとき、第1の金属元素や第2の金属元素を構成する金属は、1種の金属元素で構成されていてもよく、2種以上の金属元素の混合物や、それらの少なくとも一部が合金化されたもので構成されていてもよい。また、第1の金属元素および第2の金属元素の一方または両方の酸化物を含有する金属酸化物微粒子を含んでいることが好ましい。なお、本明細書において、触媒として使用する際の機能性物質を構成する(材質としての)「金属」は、1種の金属元素からなる単体金属と、2種以上の金属元素を含む金属混合物や金属合金を含む意味であり、1種以上の金属元素を含む金属の総称である。
特に、機能性物質20として金属微粒子を含む場合、金属微粒子は、第1の金属元素および第2の金属元素を含有する合金化微粒子と、第1の金属元素および第2の金属元素からなる金属微粒子をそれぞれ含有する2種類以上の単一金属微粒子と、の一方または双方を含むことが好ましい。機能性物質20は、合金化微粒子と単一金属微粒子の双方を含んでいてもよい。例えば、機能性物質20の状態としては、第1の金属元素を含む微粒子が第2の金属元素を含む微粒子を担持していてもよく、第1の金属元素と第2の金属元素を含む合金であってもよく、第1の金属元素と第2の金属元素を含む複合微粒子であってもよい。
ここで、第1の金属元素は、主触媒として働くものである。すなわち、第1の金属元素は、エチレンガスの酸化反応など、広く酸化反応を触媒する。
一方、第2の金属元素は、助触媒として働くものである。第2の金属元素は、酸素供給能を有している。したがって、上記第1の金属元素に酸素を効率的に供給することができ、酸素を必要とする反応の触媒能を高めることができる。一方で、逆反応の場合には、その逆反応により発生した酸素を吸収してその逆反応を触媒する。
機能性物質20の状態としては、具体的に、第1の金属元素及び第2の金属元素を、それぞれ別個の微粒子の形で含有させてなる2種以上の金属微粒子、第1の金属元素及び第2の金属元素を合金化させてなる合金微粒子、第1の金属元素及び第2の金属元素を、それぞれ別個の酸化物微粒子として含有させてなる2種以上の金属酸化物微粒子、並びに第1の金属元素及び第2の金属元素を含有する複合酸化物微粒子の中から選択される少なくとも1種を含む微粒子のいずれかが考えられる。以下、機能性物質20が金属酸化物微粒子および金属微粒子の少なくとも一方(以下、総称して「微粒子」ということがある。)である場合について詳しく説明する。
機能性物質20が上記微粒子である場合、微粒子20は一次粒子である場合と、一次粒子が凝集して形成した二次粒子である場合とがあるが、微粒子20の平均粒径Dは、好ましくは通路11の平均内径Dよりも大きく、且つ拡径部12の内径D以下である(D<D≦D)。このような微粒子20は、通路11内では、好適には拡径部12に包接されており、骨格体10内での微粒子20の移動が規制される。よって、微粒子20が流体から外力を受けた場合であっても、骨格体10内での微粒子20の移動が抑制され、骨格体10の通路11に分散配置された拡径部12、12、・・のそれぞれに包接された微粒子20、20、・・同士が接触するのを有効に防止することができる。
また、機能性物質20が金属微粒子である場合には、金属微粒子20の平均粒径Dは、一次粒子および二次粒子のいずれの場合も、好ましくは0.08〜30nmであり、より好ましくは0.08nm以上25nm未満であり、さらに好ましくは0.4nm〜11.0nmであり、特に好ましくは0.8〜2.7nmである。また、通路11の平均内径Dに対する金属微粒子20の平均粒径Dの割合(D/D)は、好ましくは0.05〜300であり、より好ましくは0.1〜30であり、更に好ましくは1.1〜30であり、特に好ましくは1.4〜3.6である。
機能性物質20が金属酸化物微粒子である場合には、金属酸化物微粒子20の平均粒径Dは、一次粒子および二次粒子のいずれの場合も、好ましくは0.1nm〜50nmであり、より好ましくは0.1nm以上30nm未満であり、さらに好ましくは0.4nm〜14.0nm、特に好ましくは1.0nm〜3.3nmである。また、通路11の平均内径Dに対する金属酸化物微粒子20の平均粒径Dの割合(D/D)は、好ましくは0.06〜500であり、より好ましくは0.1〜36であり、更に好ましくは1.1〜36であり、特に好ましくは1.7〜4.5である。
上記金属酸化物微粒子は、金属酸化物で構成されていればよく、例えば、単一の金属酸化物で構成されていてもよく、あるいは2種以上の金属酸化物の混合物で構成されていてもよい。なお、本明細書において、金属酸化物微粒子を構成する(材質としての)「金属酸化物」は、1種の金属元素(M)を含む酸化物と、2種以上の金属元素(M)を含む複合酸化物とを含む意味であり、1種以上の金属元素(M)を含む酸化物の総称である。
また、機能性物質20が金属酸化物微粒子である場合、金属酸化物微粒子の第1の金属元素は、機能性構造体1に対して0.005〜2.5質量%で含有されているのが好ましい。より具体的に、モリブデン(Mo)は、触媒構造体1に対して0.005〜2.5質量%で含有されていることが好ましく、触媒構造体1に対して0.010〜1.5質量%含有されていることがより好ましい。鉄(Fe)は、触媒構造体1に対して0.005〜2.5質量%で含有されていることが好ましく、触媒構造体1に対して0.5〜2.5質量%含有されていることがより好ましく、触媒構造体1に対して0.65〜1.5質量%含有されていることがさらに好ましい。銅(Cu)は、触媒構造体1に対して0.005〜2.5質量%で含有されていることが好ましく、触媒構造体1に対して0.5〜2.5質量%で含有されていることがより好ましく、触媒構造体1に対して0.65〜1.5質量%で含有されていることがさらに好ましい。
また、機能性物質20が金属酸化物微粒子である場合、金属酸化物微粒子の第2の金属元素は、機能性構造体1に対して0.00005〜2.5質量%で含有されているのが好ましく、機能性構造体1に対して0.0005〜2.5質量%で含有されているのがより好ましく、機能性構造体1に対して0.001〜1.5質量%含有されているのがさらに好ましい。例えば、バナジウム(V)は、機能性構造体1に対して0.00005〜2.5質量%で含有されているのが好ましく、触媒構造体1に対して0.0005〜2.5質量%含有されていることがより好ましく、触媒構造体1に対して0.001〜1.5質量%含有されていることがさらに好ましい。セリウム(Ce)は、機能性構造体1に対して0.00005〜2.5質量%で含有されているのが好ましく、触媒構造体1に対して0.0005〜1.5質量%含有されていることがより好ましく、触媒構造体1に対して0.001〜0.25質量%で含有されていることがさらに好ましい。例えば、金属元素(M)がMoである場合、Mo元素の含有量(質量%)は、(Mo元素の質量)/(機能性構造体1の全元素の質量)×100で表される。
また、触媒構造体1に含まれる第2金属の含有量は、触媒構造体1に含まれる第1金属の含有量よりも少ないことが好ましい。
上記金属微粒子は、酸化されていない金属で構成されていればよく、例えば、単一の金属で構成されていてもよく、あるいは2種以上の金属の混合物で構成されていてもよい。なお、本明細書において、金属微粒子を構成する(材質としての)「金属」は、1種の金属元素(M)を含む単体金属と、2種以上の金属元素(M)を含む金属合金とを含む意味であり、1種以上の金属元素を含む金属の総称である。
なお、機能性物質20は、耐久性の観点では、金属酸化物微粒子であることが好ましい。
また、微粒子20を構成する金属元素(M)に対する、骨格体10を構成するケイ素(Si)の割合(原子数比Si/M)は、4.9〜1000であるのが好ましく、14〜200であるのがより好ましい。上記割合が1000より大きいと、活性が低いなど、機能性物質としての作用が十分に得られない可能性がある。一方、上記割合が4.9よりも小さいと、微粒子20の割合が大きくなりすぎて、骨格体10の強度が低下する傾向がある。なお、ここでいう微粒子20は、骨格体10の内部に保持され、または担持された微粒子をいい、骨格体10の外表面に付着した微粒子を含まない。
[機能性構造体の機能]
機能性構造体1は、上記のとおり、多孔質構造の骨格体10と、骨格体に内在する少なくとも1つの機能性物質20とを備える。機能性構造体1は、骨格体に内在する機能性物質20が流体と接触することにより、機能性物質20に応じた機能を発揮する。具体的に、機能性構造体1の外表面10aに接触した流体は、外表面10aに形成された孔11aから骨格体10内部に流入して通路11内に誘導され、通路11内を通って移動し、他の孔11aを通じて機能性構造体1の外部へ出る。流体が通路11内を通って移動する経路において、通路11に保持された機能性物質20と接触することによって、機能性物質20の機能に応じた反応(例えば、触媒反応)が生じる。また、機能性構造体1は、骨格体が多孔質構造であることにより、分子篩能を有する。
まず、機能性構造体1の分子篩能について、図2(a)を用いて、流体がベンゼン、プロピレン及びメシチレンを含む液体である場合を例として説明する。図2(a)に示すように、孔11aの孔径以下、言い換えれば、通路11の内径以下の大きさを有する分子で構成される化合物(例えば、ベンゼン、プロピレン)は、骨格体10内に浸入することができる。一方、孔11aの孔径を超える大きさを有する分子で構成される化合物(例えば、メシチレン)は、骨格体10内へ浸入することができない。このように、流体が複数種類の化合物を含んでいる場合に、骨格体10内に浸入することができない化合物の反応は規制され、骨格体10内に浸入することができる化合物を反応させることができる。
反応によって骨格体10内で生成した化合物のうち、孔11aの孔径以下の大きさを有する分子で構成される化合物のみが孔11aを通じて骨格体10の外部へ出ることができ、反応生成物として得られる。一方、孔11aから骨格体10の外部へ出ることができない化合物は、骨格体10の外部へ出ることができる大きさの分子で構成される化合物に変換させれば、骨格体10の外部へ出すことができる。このように、機能性構造体1を用いることにより、特定の反応生成物を選択的に得ることができる。
機能性構造体1では、図2(b)に示すように、好適には通路11の拡径部12に機能性物質20が包接されている。機能性物質20が金属酸化物微粒子であるとき、金属酸化物微粒子の平均粒径Dが、通路11の平均内径Dよりも大きく、拡径部12の内径Dよりも小さい場合には(D<D<D)、金属酸化物微粒子と拡径部12との間に小通路13が形成される。そこで、図2(b)中の矢印に示すように、小通路13に浸入した流体が金属酸化物微粒子と接触する。各金属酸化物微粒子は、拡径部12に包接されているため、骨格体10内での移動が制限されている。これにより、骨格体10内における金属酸化物微粒子同士の凝集が防止される。その結果、金属酸化物微粒子と流体との大きな接触面積を安定して維持することができる。
次に、機能性物質20が触媒機能を有する場合について説明する。具体的に、機能性物質20が、第1の金属元素としての鉄(Fe)を主成分とする微粒子であり、機能性構造体1の骨格体10内に、エチレンを浸入させた場合、すなわち、機能性構造体1をエチレン酸化分解触媒として用いる場合を例として説明する。骨格体10内にエチレンが浸入すると、下記に示すように、エチレンが、酸化反応によってアセトアルデヒドになる。さらに、酸化されて酢酸になった後、酸化分解され、二酸化炭素(CO)と水(HO)を生成する。これは、機能性物質20が、酸化分解反応における触媒として機能することを意味する。このように、機能性構造体1を用いることにより、エチレンを、二酸化炭素と水に変換することができる。下記のエチレンの触媒の分解反応において、光触媒系ではアセトアルデヒド(CHCHO)まで、パラジウム系触媒では酢酸(CHCOOH)までの分解が一般的であるのに対し、本発明のエチレン分解剤では、二酸化炭素と水にまで分解することができる。
[機能性構造体の製造方法]
図3は、図1の機能性構造体1の製造方法を示すフローチャートである。以下、骨格体に内在する機能性物質が金属酸化物微粒子である場合を例に、機能性構造体の製造方法の一例を説明する。
(ステップS1:準備工程)
図3に示すように、先ず、ゼオライト型化合物で構成される多孔質構造の骨格体を得るための前駆体材料(A)を準備する。前駆体材料(A)は、好ましくは規則性メソ細孔物質であり、機能性構造体の骨格体を構成するゼオライト型化合物の種類(組成)に応じて適宜選択できる。
ここで、機能性構造体の骨格体を構成するゼオライト型化合物がケイ酸塩化合物である場合には、規則性メソ細孔物質は、細孔径1〜50nmの細孔が1次元、2次元または3次元に均一な大きさかつ規則的に発達したSi−O骨格からなる化合物であることが好ましい。このような規則性メソ細孔物質は、合成条件によって様々な合成物として得られるが、合成物の具体例としては、例えばSBA−1、SBA−15、SBA−16、KIT−6、FSM−16、MCM−41等が挙げられ、中でもMCM−41が好ましい。なお、SBA−1の細孔径は10〜30nm、SBA−15の細孔径は6〜10nm、SBA−16の細孔径は6nm、KIT−6の細孔径は9nm、FSM−16の細孔径は3〜5nm、MCM−41の細孔径は1〜10nmである。また、このような規則性メソ細孔物質としては、例えばメソポーラスシリカ、メソポーラスアルミノシリケート、メソポーラスメタロシリケート等が挙げられる。
前駆体材料(A)は、市販品および合成品のいずれであってもよい。前駆体材料(A)を合成する場合には、公知の規則性メソ細孔物質の合成方法により行うことができる。例えば、前駆体材料(A)の構成元素を含有する原料と、前駆体材料(A)の構造を規定するための鋳型剤とを含む混合溶液を調製し、必要に応じてpHを調整して、水熱処理(水熱合成)を行う。その後、水熱処理により得られた沈殿物(生成物)を回収(例えば、ろ別)し、必要に応じて洗浄および乾燥し、さらに焼成することで、粉末状の規則性メソ細孔物質である前駆体材料(A)が得られる。ここで、混合溶液の溶媒としては、例えば水、またはアルコール等の有機溶媒、若しくはこれらの混合溶媒等を用いることができる。また、原料は、骨格体の種類に応じて選択されるが、例えばテトラエトキシシラン(TEOS)等のシリカ剤、フュームドシリカ、石英砂等が挙げられる。また、鋳型剤としては、各種界面活性剤、ブロックコポリマー等を用いることができ、規則性メソ細孔物質の合成物の種類に応じて選択することが好ましく、例えばMCM−41を作製する場合にはヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド等の界面活性剤が好適である。水熱処理は、例えば、密閉容器内で、80〜800℃、5時間〜240時間、0〜2000kPaの処理条件で行うことができる。焼成処理は、例えば、空気中で、350〜850℃、2〜30時間の処理条件で行うことができる。
(ステップS2:含浸工程)
次に、準備した前駆体材料(A)に、金属含有溶液を含浸させ、前駆体材料(B)を得る。
含浸工程において、金属含有溶液は、機能性構造体の金属酸化物微粒子を構成する少なくとも第1の金属元素(M)に対応する金属成分(例えば、金属イオン)を含有する溶液に含浸させればよく、例えば、溶媒に、少なくとも第1の金属元素(M)を含有する金属塩を溶解させることにより調製できる。第2の金属元素(M)についても、第1の金属元素(M)と同様に、第2の金属元素(M)に対応する金属成分(例えば、金属イオン)を含有する金属成分を含有する溶液に含浸させればよいが、この第2の金属元素(M)を含有する溶液は、第1の金属元素(M)を含有する溶液と、同一であっても(すなわち、第1の金属元素(M)および第2の金属元素(M)を含有する溶液であっても)、異なる溶液であってもよい。第1の金属元素(M)を含有する溶液と、第2の金属元素(M)を含有する溶液が異なる溶液である場合、含浸する順は特に限定されない。なお、第2の金属元素(M)を含有する溶液への含浸については、後述する焼成工程の後であってもよい。この場合においても、本含浸工程と同様の操作を行うことができる。このような金属塩としては、例えば、塩化物、水酸化物、酸化物、硫酸塩、硝酸塩等の金属塩が挙げられ、中でも硝酸塩が好ましい。溶媒としては、例えば水、またはアルコール等の有機溶媒、若しくはこれらの混合溶媒等を用いることができる。
前駆体材料(A)に金属含有溶液を含浸させる方法は、特に限定されないが、例えば、後述する焼成工程の前に、粉末状の前駆体材料(A)を撹拌しながら、金属含有溶液を複数回に分けて少量ずつ添加することが好ましい。また、前駆体材料(A)の細孔内部に金属含有溶液がより浸入し易くなる観点から、前駆体材料(A)に、金属含有溶液を添加する前に予め、添加剤として界面活性剤を添加しておくことが好ましい。このような添加剤は、前駆体材料(A)の外表面を被覆する働きがあり、その後に添加される金属含有溶液が前駆体材料(A)の外表面に付着することを抑制し、金属含有溶液が前駆体材料(A)の細孔内部により浸入し易くなると考えられる。
このような添加剤としては、例えばポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、分子サイズが大きく前駆体材料(A)の細孔内部には浸入できないため、細孔の内部に付着することは無く、金属含有溶液が細孔内部に浸入することを妨げないと考えられる。非イオン性界面活性剤の添加方法としては、例えば、後述する焼成工程の前に、非イオン性界面活性剤を、前駆体材料(A)に対して50〜500質量%添加するのが好ましい。非イオン性界面活性剤の前駆体材料(A)に対する添加量が50質量%未満であると上記の抑制作用が発現し難く、非イオン性界面活性剤を前駆体材料(A)に対して500質量%よりも多く添加すると粘度が上がりすぎるので好ましくない。よって、非イオン性界面活性剤の前駆体材料(A)に対する添加量を上記範囲内の値とする。
また、前駆体材料(A)に添加する金属含有溶液の添加量は、前駆体材料(A)に含浸させる金属含有溶液中に含まれる第1の金属元素(M)の量(すなわち、前駆体材料(B)に内在させる金属元素(M)の量)を考慮して、適宜調整することが好ましい。例えば、後述する焼成工程の前に、前駆体材料(A)に添加する金属含有溶液の添加量を、前駆体材料(A)に添加する金属含有溶液中に含まれる第1の金属元素(M)に対する、前駆体材料(A)を構成するケイ素(Si)の比(原子数比Si/M)に換算して、10〜20000となるように調整することが好ましく、50〜2000となるように調整することがより好ましい。例えば、前駆体材料(A)に金属含有溶液を添加する前に、添加剤として界面活性剤を前駆体材料(A)に添加した場合、前駆体材料(A)に添加する金属含有溶液の添加量を、原子数比Si/Mに換算して10〜20000とすることで、金属酸化物微粒子の第1の金属元素(M)を、機能性構造体に対して0.005〜2.5質量%含有させることができる。前駆体材料(B)の状態で、その細孔内部に存在する第1の金属元素(M)の量は、金属含有溶液の金属濃度や、上記添加剤の有無、その他温度や圧力等の諸条件が同じであれば、前駆体材料(A)に添加する金属含有溶液の添加量に概ね比例する。また、前駆体材料(B)に内在する第1の金属元素(M)の量は、機能性構造体の骨格体に内在する金属酸化物微粒子を構成する金属元素の量と比例関係にある。したがって、前駆体材料(A)に添加する金属含有溶液の添加量を上記範囲に制御することにより、前駆体材料(A)の細孔内部に金属含有溶液を十分に含浸させることができ、ひいては、機能性構造体の骨格体に内在させる金属酸化物微粒子の量を調整することができる。
また、前駆体材料(A)に添加する金属含有溶液の添加量は、前駆体材料(A)に含浸させる金属含有溶液中に含まれる第2の金属元素(M)の量(すなわち、前駆体材料(B)に内在させる金属元素(M)の量)を考慮して、適宜調整することが好ましい。例えば、後述する焼成工程の前に、前駆体材料(A)に添加する金属含有溶液の添加量を、前駆体材料(A)に添加する金属含有溶液中に含まれる第2の金属元素(M)に対する、前駆体材料(A)を構成するケイ素(Si)の比(原子数比Si/M)に換算して、10〜200000となるように調整することが好ましく、50〜20000となるように調整することがより好ましい。例えば、前駆体材料(A)に金属含有溶液を添加する前に、添加剤として界面活性剤を前駆体材料(A)に添加した場合、前駆体材料(A)に添加する金属含有溶液の添加量を、原子数比Si/Mに換算して10〜200000とすることで、金属酸化物微粒子の第2の金属元素(M)を、機能性構造体に対して0.00005〜2.5質量%で含有させることができる。前駆体材料(B)の状態で、その細孔内部に存在する第2の金属元素(M)の量は、金属含有溶液の金属濃度や、上記添加剤の有無、その他温度や圧力等の諸条件が同じであれば、前駆体材料(A)に添加する金属含有溶液の添加量に概ね比例する。また、前駆体材料(B)に内在する第2の金属元素(M)の量は、機能性構造体の骨格体に内在する金属酸化物微粒子を構成する金属元素の量と比例関係にある。したがって、前駆体材料(A)に添加する金属含有溶液の添加量を上記範囲に制御することにより、前駆体材料(A)の細孔内部に金属含有溶液を十分に含浸させることができ、ひいては、機能性構造体の骨格体に内在させる金属酸化物微粒子の量を調整することができる。
前駆体材料(A)に金属含有溶液を含浸させた後は、必要に応じて、洗浄処理を行ってもよい。洗浄溶液として、水、またはアルコール等の有機溶媒、若しくはこれらの混合溶液を用いることができる。また、前駆体材料(A)に金属含有溶液を含浸させ、必要に応じて洗浄処理を行った後、さらに乾燥処理を施すことが好ましい。乾燥処理としては、一晩程度の自然乾燥や、150℃以下の高温乾燥が挙げられる。なお、金属含有溶液に含まれる水分や、洗浄溶液の水分が、前駆体材料(A)に多く残った状態で、後述の焼成処理を行うと、前駆体材料(A)の規則性メソ細孔物質としての骨格構造が壊れる恐れがあるので、十分に乾燥するのが好ましい。
(ステップS3:焼成工程)
次に、ゼオライト型化合物で構成される多孔質構造の骨格体を得るための前駆体材料(A)に金属含有溶液が含浸された前駆体材料(B)を焼成して、前駆体材料(C)を得る。
焼成処理は、例えば、空気中で、350〜850℃、2〜30時間の処理条件で行うことが好ましい。このような焼成処理により、規則性メソ細孔物質の孔内に含浸された金属成分が結晶成長して、孔内で金属酸化物微粒子が形成される。
(ステップS4:水熱処理工程)
次いで、前駆体材料(C)と構造規定剤とを混合した混合溶液を調製し、前記前駆体材料(B)を焼成して得られた前駆体材料(C)を水熱処理して、機能性構造体を得る。
構造規定剤は、機能性構造体の骨格体の骨格構造を規定するための鋳型剤であり、例えば界面活性剤を用いることができる。構造規定剤は、機能性構造体の骨格体の骨格構造に応じて選択することが好ましく、例えばテトラメチルアンモニウムブロミド(TMABr)、テトラエチルアンモニウムブロミド(TEABr)、テトラプロピルアンモニウムブロミド(TPABr)等の界面活性剤が好適である。
前駆体材料(C)と構造規定剤との混合は、本水熱処理工程時に行ってもよいし、水熱処理工程の前に行ってもよい。また、上記混合溶液の調製方法は、特に限定されず、前駆体材料(C)と、構造規定剤と、溶媒とを同時に混合してもよいし、溶媒に前駆体材料(C)と構造規定剤とをそれぞれ個々の溶液に分散させた状態にした後に、それぞれの分散溶液を混合してもよい。溶媒としては、例えば水、またはアルコール等の有機溶媒、若しくはこれらの混合溶媒等を用いることができる。また、混合溶液は、水熱処理を行う前に、酸または塩基を用いてpHを調整しておくことが好ましい。
水熱処理は、公知の方法で行うことができ、例えば、密閉容器内で、80〜800℃、5時間〜336時間、0〜2000kPaの処理条件で行うことが好ましい。また、水熱処理は、塩基性雰囲気下で行われることが好ましい。
ここでの反応メカニズムは必ずしも明らかではないが、前駆体材料(C)を原料として水熱処理を行うことにより、前駆体材料(C)の規則性メソ細孔物質としての骨格構造は次第に崩れるが、前駆体材料(C)の細孔内部での金属酸化物微粒子の位置は概ね維持されたまま、構造規定剤の作用により、機能性構造体の骨格体としての新たな骨格構造(多孔質構造)が形成される。このようにして得られた機能性構造体は、多孔質構造の骨格体と、骨格体に内在する金属酸化物微粒子を備え、さらに骨格体はその多孔質構造により複数の孔が互いに連通した通路を有し、金属酸化物微粒子はその少なくとも一部分が骨格体の通路に保持されている。
また、本実施形態では、上記水熱処理工程において、前駆体材料(C)と構造規定剤とを混合した混合溶液を調製して、前駆体材料(C)を水熱処理しているが、これに限らず、前駆体材料(C)と構造規定剤とを混合すること無く、前駆体材料(C)を水熱処理してもよい。
水熱処理後に得られる沈殿物(機能性構造体)は、回収(例えば、ろ別)後、必要に応じて洗浄、乾燥および焼成することが好ましい。洗浄溶液としては、水、またはアルコール等の有機溶媒、若しくはこれらの混合溶液を用いることができる。乾燥処理としては、一晩程度の自然乾燥や、150℃以下の高温乾燥が挙げられる。なお、沈殿物に水分が多く残った状態で、焼成処理を行うと、機能性構造体の骨格体としての骨格構造が壊れる恐れがあるので、十分に乾燥するのが好ましい。また、焼成処理は、例えば、空気中で、350〜850℃、2〜30時間の処理条件で行うことができる。このような焼成処理により、機能性構造体に付着していた構造規定剤が焼失する。また、機能性構造体は、使用目的に応じて、回収後の沈殿物を焼成処理することなくそのまま用いることもできる。例えば、機能性構造体の使用する環境が、酸化性雰囲気の高温環境である場合には、使用環境に一定時間晒すことで、構造規定剤は焼失し、焼成処理した場合と同様の機能性構造体が得られるので、そのまま使用することが可能となる。
[機能性構造体1の変形例]
図4は、図1の機能性構造体1の変形例を示す模式図である。
図1の機能性構造体1は、骨格体10と、骨格体10に内在する機能性物質20とを備える場合を示しているが、この構成だけには限定されず、例えば、図4に示すように、機能性構造体2が、骨格体10の外表面10aに保持された他の機能性物質30を更に備えていてもよい。
この機能性物質30は、少なくとも触媒として使用する際に、一又は複数の機能を発揮する物質である。他の機能性物質30が有する機能は、機能性物質20が有する機能と同一であってもよいし、異なっていてもよい。他の機能性物質30が有する機能の具体例は、機能性物質20について説明したものと同様であり、中でも触媒機能を有することが好ましく、このとき機能性物質30は触媒物質である。また、機能性物質20,30の双方が同一の機能を有する物質である場合、他の機能性物質30の材料は、機能性物質20の材料と同一であってもよいし、異なっていてもよい。本構成によれば、機能性構造体2に保持された機能性物質の含有量を増大することができ、機能性物質の機能発揮を更に促進することができる。
この場合、骨格体10に内在する機能性物質20の含有量は、骨格体10の外表面10aに保持された他の機能性物質30の含有量よりも多いことが好ましい。これにより、骨格体10の内部に保持された機能性物質20による機能が支配的となり、安定的に機能性物質の機能が発揮される。
以上、本発明の実施形態に係る機能性構造体について述べたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
(実施例1〜3)
[前駆体材料(A)の合成]
シリカ剤(テトラエトキシシラン(TEOS)、和光純薬工業株式会社製)と、鋳型剤としての界面活性剤とを混合した混合水溶液を作製し、適宜pH調整を行い、密閉容器内で、80〜350℃、100時間、水熱処理を行った。その後、生成した沈殿物をろ別し、水およびエタノールで洗浄し、さらに600℃、24時間、空気中で焼成して、表1に示される種類および孔径の前駆体材料(A)を得た。なお、界面活性剤は、前駆体材料(A)の種類に応じて(「前駆体材料(A)の種類:界面活性剤」)以下のものを用いた。
・MCM−41:ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)(和光純薬工業株式会社製)
[前駆体材料(B)および(C)の作製]
次に、表1に示される種類の金属酸化物微粒子を構成する金属組成に応じて、第1の金属元素および第2の金属元素を含有する金属塩を、水に溶解させて、金属含有水溶液を調製した。なお、金属塩は、金属酸化物微粒子の種類に応じて(「金属酸化物微粒子:金属塩」)以下のものを用いた。
(第1の金属元素)
・FeO:硝酸鉄(III)九水和物(和光純薬工業株式会社製)
・MoO:七モリブデン酸六アンモニウム四水和物(和光純薬工業株式会社製)
・CuO:硝酸銅(II)三水和物(和光純薬工業株式会社製)
(第2の金属元素)
・VO:塩化バナジウム(III)(富士フイルム和光純薬(株))
・CeO:硝酸セリウム(III)六水和物(富士フイルム和光純薬(株))
次に、粉末状の前駆体材料(A)に、金属含有水溶液を複数回に分けて少量ずつ添加し、室温(20℃±10℃)で12時間以上乾燥させて、前駆体材料(B)を得た。
なお、全ての実施例について、金属含有水溶液を添加する前の前駆体材料(A)に対して、添加剤としてのポリオキシエチレン(15)オレイルエーテル(NIKKOL BO−15V、日光ケミカルズ株式会社製)の水溶液を添加する前処理を行い、その後、上記のように金属含有水溶液を添加した。
また、前駆体材料(A)に添加する金属含有水溶液の添加量は、該金属含有水溶液中に含まれる第1金属酸化物の金属元素(M)、第2金属酸化物の金属元素(M)に対する、前駆体材料(A)を構成するケイ素(Si)の比(原子数比Si/M、Si/M)に換算したときの数値が、表1の値になるように調整した。
次に、上記のようにして得られた金属含有水溶液を含浸させた前駆体材料(B)を、600℃、24時間、空気中で焼成して、前駆体材料(C)を得た。
[機能性構造体の合成]
上記のようにして得られた前駆体材料(C)と、表1に示す構造規定剤とを混合して混合水溶液を作製し、密閉容器内で、80〜350℃、表1に示すpHおよび時間の条件で、水熱処理を行った。その後、生成した沈殿物をろ別し、水洗し、100℃で12時間以上乾燥させ、さらに600℃、24時間、空気中で焼成して、焼成物を得た。その後、焼成物を、水素ガスの流入下で、500℃、60分間、還元処理して、表1に示す機能性構造体を得た。表1に示す骨格体と機能性物質としての金属酸化物微粒子とを有する機能性構造体を得た。
(実施例4)
[前駆体材料(A)の合成]
実施例1と同様にして、表1に示される種類および孔径の前駆体材料(A)を得た。
[前駆体材料(B)および(C)の作製]
次に、表1に示される、第1金属酸化物の金属元素(M)を含有する金属塩を、水に溶解させて、金属含有水溶液を調製した。
次に、粉末状の前駆体材料(A)に、第1金属酸化物の金属元素(M)金属含有水溶液を複数回に分けて少量ずつ添加し、室温(20℃±10℃)で12時間以上乾燥させて、前駆体材料(B)を得た。
前駆体材料(A)に添加する金属含有水溶液の添加量は、該金属含有水溶液中に含まれる第1の金属元素(M)に対する、前駆体材料(A)を構成するケイ素(Si)の比(原子数比Si/M)に換算したときの数値が、表1の値になるように調整した。
次に、上記のようにして得られた金属含有水溶液を含浸させた前駆体材料(B)を、600℃、24時間、空気中で焼成して、前駆体材料(C)を得た。
上記のようにして得られた前駆体材料(C)と、表1に示す構造規定剤とを混合して混合水溶液を作製し、密閉容器内で、80〜350℃、表1に示すpHおよび時間の条件で、水熱処理を行った。その後、生成した沈殿物をろ別し、水洗し、100℃で12時間以上乾燥させ、さらに600℃、24時間、空気中で焼成し、前駆体材料(D)を得た。
次に、表1に示される第2金属酸化物の金属元素(M)を含有する金属塩を、水に溶解させて、第2金属元素含有水溶液を調製した。続いて、前駆体材料(D)に、第2金属元素含有水溶液を複数回に分けて少量ずつ添加し、室温(20℃±10℃)で12時間以上乾燥させ、さらに600℃、24時間、空気中で焼成して、焼成物(F)を得た。その後、焼成物(F)を、水素ガスの流入下で、500℃、60分間、還元処理して、表1に示す機能性構造体を得た。
(比較例1)
比較例1では、MFI型シリカライトに酸化銅粉末(II)(和光純薬株式会社製)を混合し、骨格体としてのシリカライトの外表面に、機能性物質として酸化銅(II)(CuO)微粒子を付着させた機能性構造体C1を得た。機能性構造体C1は、金属を添加する工程以外は、実施例1と同様の方法で合成した。
(比較例2)
比較例2では、酸化銅粉末(II)を酸化モリブデン(VI)粉末(和光純薬株式会社製)に代えたこと以外は、比較例1と同様の方法にて、機能性構造体C2を合成した。
(比較例3)
比較例3では、酸化銅粉末(II)を酸化鉄粉末(III)(和光純薬株式会社製)に代えたこと以外は、比較例1と同様の方法にて、機能性構造体C3を合成した。
[評価]
上記の機能性構造体について、以下に示す条件で、各種特性評価を行った。
[A]断面観察
上記の機能性構造体について、粉砕法にて観察試料を作製し、透過電子顕微鏡(TEM)(TITAN G2、FEI社製)を用いて、断面観察を行った。
その結果、上記実施例の機能性構造体では、ゼオライトからなる骨格体の内部に機能性物質が内在し、保持されていることが確認された。一方、比較例の機能性構造体C1〜C3では、機能性物質が骨格体の外表面に付着しているのみで、骨格体の内部には存在していなかった。
また、上記実施例のうち第1の金属元素としてFeと第2の金属元素としてCeとを含有する機能性構造体について、FIB(集束イオンビーム)加工により断面を切り出し、SEM(SU8020、日立ハイテクノロジーズ社製)、EDX(X−Max、堀場製作所製)を用いて断面元素分析を行った。その結果、骨格体内部からFe元素とCe元素とが検出された。
上記TEMとSEM/EDXによる断面観察の結果から、骨格体内部に機能性物質の微粒子の存在を確認し、少なくともその主成分が鉄であることが確認された。また、セリウムも存在していることが確認された。
[B]骨格体の通路の平均内径および機能性物質の平均粒径
上記評価[A]で行った断面観察により撮影したTEM画像にて、骨格体の通路を、任意に500個選択し、それぞれの長径および短径を測定し、その平均値からそれぞれの内径を算出し(N=500)、さらに内径の平均値を求めて、骨格体の通路の平均内径Dとした。また、機能性物質についても同様に、上記TEM画像から、機能性物質を、任意に500個選択し、それぞれの粒径を測定して(N=500)、その平均値を求めて、機能性物質の平均粒径Dとした。結果を表1に示す。
また、機能性物質の平均粒径及び分散状態を確認するため、SAXS(小角X線散乱)を用いて分析した。SAXSによる測定は、Spring−8のビームラインBL19B2を用いて行った。得られたSAXSデータは、Guinier近似法により球形モデルでフィッティングを行い、粒径を算出した。粒径は、第1の金属元素としてFeと第2の金属元素としてCeとを含有する機能性物質を有する機能性構造体について測定した。また、比較対象として、市販品である酸化鉄微粒子(Wako製)を還元して得た鉄微粒子をSEMにて観察、測定した。
この結果、市販品である酸化鉄微粒子を還元して得た鉄微粒子では粒径約50nm〜400nmの範囲で様々なサイズの酸化鉄微粒子がランダムに存在しているのに対し、各実施例の機能性構造体では、粒径が10nm以下の、表1における各実施例の値に応じた散乱ピークが検出された。また、SAXSの測定結果とSEM/EDXによる断面の測定結果から、骨格体内部に、粒径10nm以下の機能性物質が、粒径が揃いかつ非常に高い分散状態で存在していることが分かった。
他の実施例の触媒構造体についても同様に、TEM、SEM/EDXおよびSAXSを用いた分析を行った結果、いずれも表1に示される第1の金属元素を含んだ金属微粒子の存在が確認された。また、上記実施例の触媒構造体について、微量金属元素の分析を、ICP(高周波誘導結合プラズマ)を用いて行った。その結果、金属微粒子において、表1に示される第2の金属元素の存在を確認した。したがって、上記触媒構造体には、第1の金属元素および第2の金属元素の両方を含有する金属微粒子が、機能性物質としてゼオライトに保持されていることが分かった。
[C]金属含有溶液の添加量と骨格体内部に包接された金属量との関係
原子数比Si/M=100(M=Mo、Fe、Cu)の添加量で、金属酸化物微粒子を骨格体内部に包接させた機能性構造体を作製し、その後、上記添加量で作製された機能性構造体の骨格体内部に包接された金属量(質量%)を測定した。
金属量の定量は、ICP(高周波誘導結合プラズマ)単体か、或いはICPとXRF(蛍光X線分析)を組み合わせて行った。XRF(エネルギー分散型蛍光X線分析装置「SEA1200VX」、エスエスアイ・ナノテクノロジー社製)は、真空雰囲気、加速電圧15kV(Crフィルター使用)或いは加速電圧50kV(Pbフィルター使用)の条件で行った。XRFは、金属の存在量を蛍光強度で算出する方法であり、XRF単体では定量値(質量%換算)を算出できない。そこで、原子数比Si/M=100およびM/M=0.03で金属を添加した触媒構造体の金属量は、ICP分析により定量した。
[D]性能評価
上記の機能性構造体について、機能性物質(触媒物質)がもつ触媒能(性能)を評価した。結果を表1に示す。
(1)エチレンの酸化反応の触媒活性
触媒活性は、以下の条件で評価した。
まず、機能性構造体を、常圧流通式反応装置に0.5g充填し、エチレン4μl/min、キャリアガス窒素ガス(N)(5ml/min)を混合したガスを流通し、100〜700℃の範囲で20℃/minで昇温しながら、1時間、エチレンの酸化分解反応を行った。
反応終了後に、回収した生成ガスおよび生成液を、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)により成分分析した。なお、生成ガスの分析装置には、TRACE 1310GC(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、検出器:熱伝導度検出器)を用い、生成液の分析装置には、TRACE DSQ(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製、検出器:質量検出器、イオン化方法:EI(イオン源温度250℃、MSトランスファーライン温度320℃、検出器:熱伝導度検出器))を用いた。
エチレンの減少が開始した(すなわち、エチレンの酸化分解反応が開始した)反応温度を求め、評価基準とした。
本実施例では、220℃未満で反応を開始した場合を、触媒活性が良好であると判定して「○」、220℃以上で反応を開始した場合を、触媒活性が劣る(不可)と判定して「×」とした。
表1から明らかなように、断面観察により骨格体の内部に機能性物質が保持されていることが確認された機能性構造体(実施例1〜4)は、単に金属微粒子が骨格体の外表面に付着しているだけの機能性構造体C1〜C3と比較して、エチレンガス酸化反応において優れた触媒活性を示し、触媒としての耐久性にも優れていることが分かった。
1 機能性構造体
10 骨格体
10a 外表面
11 通路
11a 孔
12 拡径部
20 機能性物質
30 機能性物質
平均粒径
平均内径
内径

Claims (17)

  1. ゼオライト型化合物で構成される多孔質構造の担体と、
    前記担体に内在する少なくとも1つの機能性物質と、
    を備え、
    前記担体が、互いに連通する通路を有し、
    前記機能性物質が、Mo、Fe及びCuからなる群から選択される1種以上である第1の金属元素と、V及びCeからなる群から選択される1種以上である第2の金属元素を含み、前記担体の少なくとも前記通路に存在することを特徴とする機能性構造体。
  2. 前記通路は、前記ゼオライト型化合物の骨格構造の一次元孔、二次元孔及び三次元孔のうちのいずれかと、前記一次元孔、前記二次元孔及び前記三次元孔のうちのいずれとも異なる拡径部とを有し、かつ
    前記機能性物質が、少なくとも前記拡径部に存在していることを特徴とする、請求項1に記載の機能性構造体。
  3. 前記拡径部は、前記一次元孔、前記二次元孔及び前記三次元孔のうちのいずれかを構成する複数の孔同士を連通している、請求項2に記載の機能性構造体。
  4. 前記機能性物質の平均粒径が、前記通路の平均内径よりも大きく、且つ前記拡径部の内径以下であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の機能性構造体。
  5. 前記通路の平均内径に対する前記機能性物質の平均粒径の割合が、0.1〜36であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の機能性構造体。
  6. 前記機能性物質の第1の金属元素が、前記機能性構造体に対して0.005質量%〜2.5質量%で含有されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の機能性構造体。
  7. 前記機能性物質の第2の金属元素が、前記機能性構造体に対して0.00005質量%〜2.5質量%で含有されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の機能性構造体。
  8. 前記機能性物質の平均粒径が、0.08nm〜50nmであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の機能性構造体。
  9. 前記拡径部の内径は、0.5nm〜50nmであることを特徴とする、請求項2〜8のいずれか1項に記載の機能性構造体。
  10. 前記担体の外表面に保持された少なくとも1つの他の機能性物質を更に備えることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の機能性構造体。
  11. 前記担体に内在する前記少なくとも1つの機能性物質の含有量が、前記担体の外表面に保持された前記少なくとも1つの他の機能性物質の含有量よりも多いことを特徴とする、請求項10に記載の機能性構造体。
  12. 前記ゼオライト型化合物は、ケイ酸塩化合物であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の機能性構造体。
  13. 前記機能性構造体は、シート状を有することを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の機能性構造体。
  14. 前記機能性物質は、金属酸化物微粒子である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の機能性構造体。
  15. 前記機能性物質は、金属微粒子である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の機能性構造体。
  16. 請求項1〜15のいずれか1項に記載の機能性構造体を含むことを特徴とする触媒。
  17. 請求項1〜15のいずれか1項に記載の機能性構造体を含むことを特徴とするエチレンガス酸化用触媒。

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