こうしたクラウド上に設置されたCTIサーバを活用すると、電話の着信時に速やかに顧客情報を得たいと考えるユーザは、自らシステムを構築しなくても容易にCTIシステムの機能を利用することが可能になる。ところが、複数の事業者が共通のCTIサーバを利用する際には、以下のような課題が生じることになる。
一般にCTIシステムでは、発信者の電話番号(発信番号)によって、電話をかけてきた顧客等の発信者を特定するが(例えば、特許文献2の段落0020参照)、複数のユーザがCTIシステムを共用する場合には、同一の発信番号から特定される顧客であっても、ユーザによって提供すべき顧客情報が異なることが通常であるため、あらかじめCTIシステムにログインしておくなど、ユーザを特定するための処理を実行することが必要になる(例えば、特許文献1の段落0021−0022参照)。
また、近時はユーザが利用するデバイスの多様化に伴い、コールセンターのように電話機の前に着席しているオペレータが操作するコンピュータだけでなく、例えば、外出時に顧客からの電話を受けた際にも、その顧客に関する情報を速やかに確認できるようにするために、タブレット端末やスマートフォンのようなモバイル端末等、多様な端末に顧客情報を送信することも求められるようになっている。
さらに、コールセンターのみでなく一般のオフィスにも利用が拡大すると、一つの部署で複数の電話番号を使用しているが、顧客からの電話がどの電話番号にかかってきても同じ顧客情報を受け取りたい、発信者が同一人であっても部署によって異なる内容の顧客情報(例えば営業部門が顧客との面談履歴であるのに対し、管理部門は顧客の信用情報である場合)を受け取りたい、ある部署(例えば営業部門)の電話番号に電話をかけてきた顧客に関する情報を、他の部署(例えば管理部門)の担当者も受け取りたい、といった多様なニーズが生じるようになり、こうしたユーザの多様なニーズにも応えることが可能な、拡張性の高い仕組みが求められるところである。
本発明は、このような課題に対応するためになされたものであり、複数のユーザによる共用が可能であり、かつ、ユーザの多様なニーズに応じた情報提供の態様を可能にする、電話機が着信した呼の発信者に関する情報をPC(パーソナルコンピュータ)やスマートフォン等の端末に送信する、発信者情報提供サーバ、発信者情報提供システム及び発信者情報の提供方法を提供することを目的とするものである。
このような課題を解決するために、本発明に係る発信者情報提供サーバは、ユーザが着信した呼に関する情報を中継する中継装置から、前記呼の発信番号及び前記ユーザを識別する識別情報を、ネットワークを介して受信する受信手段と、前記受信手段が受信した発信番号及び識別情報から特定される前記呼を発信した発信者に関する発信者情報を、前記識別情報と関連付けて接続中の端末として記憶された一又は二以上の端末に、ネットワークを介して送信する送信手段と、を備えることを特徴とする。
本発明に係る発信者情報提供サーバは、ユーザが発信者に関する情報を受け取りたい呼を着信すると、着信した呼を発信した発信者の発信番号だけでなく、ユーザを識別する識別情報を中継装置から受信し、発信番号と識別情報から特定される発信者情報を端末に送信するよう構成することによって、複数のユーザが発信者情報提供サーバを共用する場合でも、各々のユーザに対応した発信者情報を提供することが可能になる。また、識別情報と関連付けて記憶された接続中の一又は二以上の端末に発信者情報を送信するので、ユーザは任意の端末で発信者情報を受け取ることができる。
尚、本発明における「ユーザ」には、着信した呼に対して同一の発信者情報を受け取る主体が該当し、一個人や一法人に限定されるものではなく、法人内の部署やグループなど、様々な主体が一単位のユーザとなり得るものである。こうした「ユーザ」は、例えば、本発明により提供されるサービスをライセンスする際に付与される、ライセンスIDのような形式で識別することができる。
また、本発明は、前記中継装置には、前記ユーザが呼を着信する一又は二以上の着信番号と前記ユーザを識別する識別情報が関連付けて記憶されていて、前記受信手段は、着信した呼の着信番号と関連付けて前記中継装置に記憶されたユーザの識別情報を、前記中継装置から受信することを特徴とすることもできる。
このように構成すると、ユーザは着信する電話番号(着信番号)を様々なパターンで組み合わせることによって、受け取る発信者情報の内容や、発信者情報を受け取る端末を設定することができるので、例えば、一つの部署で複数の電話番号を使用しているが、顧客等の発信者からの電話がどの電話番号にかかってきても同じ発信者情報を受け取りたい、発信者が同一人であっても部署によって異なる内容の発信者情報を受け取りたい、といった多様なニーズに対応することが可能になる。
さらに、本発明は、同一の発信者が使用する二以上の発信番号について、前記二以上の発信番号に関する情報が同一の発信者を特定するものとして関連付けて記憶されていて、前記送信手段は、前記受信手段が受信した発信番号が前記二以上の発信番号のいずれかに該当する場合は、前記二以上の発信番号のいずれかと前記受信手段が受信した識別情報から特定される発信者情報を、前記一又は二以上の端末に送信することを特徴としてもよい。
このように構成すると、同一人物である顧客等の発信者が、固定電話と携帯電話のように、電話番号が異なる電話機を複数利用している場合であっても、同一の発信者からの発信番号を関連付けておくことによって、同一人物からの発信であると判断して、共通の発信者情報を送信することが可能になる。
さらに、本発明は、前記送信手段は、前記識別情報によって識別されるユーザに割り当てられたネットワーク上のアドレスにアクセスしてセッションが張られた一又は二以上の端末を、前記識別情報と関連付けて接続中の端末として記憶された一又は二以上の端末と特定して、前記発信者情報を送信することを特徴としてもよい。
このように構成すると、ユーザは発信者情報を受け取りたいPCやスマートフォン等の端末から、ユーザ毎に割り当てられたURL等のアドレスにアクセスして、ログイン等のセッションの確立に必要な所定の処理を行うだけの操作によって、発信者情報を受け取りたい任意の端末で発信者情報を受け取ることが可能になる。例えば、こうしたURL等のアドレスとログインに必要なパスワード等の情報を他の部署の担当者と共有することによって、ある部署(例えば営業部門)の電話番号に電話をかけてきた発信者に関する情報を、他の部署(例えば管理部門)の担当者も受け取ることが可能になる。
本発明は、本発明に係る発信者情報提供サーバと中継装置からなる、発信者情報提供システムとして特定することもできる。
本発明に係る発信者情報提供システムは、ユーザが着信した呼に関する情報を取得して、前記呼の発信番号及び前記ユーザを識別する識別情報を、発信者情報提供サーバにネットワークを介して送信する送信手段を備えた中継装置と、前記中継装置から、前記発信番号及び前記識別情報を、ネットワークを介して受信する受信手段、前記受信手段が受信した発信番号及び識別情報から特定される前記呼を発信した発信者に関する発信者情報を、前記識別情報と関連付けて接続中の端末として記憶された一又は二以上の端末に、ネットワークを介して送信する送信手段を備える発信者情報提供サーバと、からなる発信者情報提供システムである。
また、こうした特徴を備える本発明に係る発信者情報提供システムは、先に説明した各々の構成に対応する発信者情報提供サーバを備えた、発信者情報提供システムとして特定することもできる。
本発明は、本発明に係る発信者情報提供サーバによって実行される、発信者情報の提供方法として特定することもできる。
本発明に係る第1の発信者情報の提供方法は、ユーザが着信した呼に関する情報を中継する中継装置とネットワークを介して接続された発信者情報提供サーバが、前記呼の発信番号及び前記ユーザを識別する識別情報を受信するステップと、前記発信者情報提供サーバが、前記ステップで受信した発信番号及び識別情報から特定される前記呼を発信した発信者に関する発信者情報を、前記識別情報と関連付けて接続中の端末として記憶された一又は二以上の端末に、ネットワークを介して送信するステップと、を有することを特徴とする。
また、こうした特徴を有する本発明に係る第1の発信者情報の提供方法は、先に説明した各々の構成に対応する発信者情報提供サーバによって実行される、発信者情報の提供方法として特定することもできる。
本発明は、本発明に係る発信者情報提供システムによって実行される、発信者情報の提供方法として特定することもできる。
本発明に係る第2の発信者情報の提供方法は、ユーザが着信した呼に関する情報を中継する中継装置が、呼の着信を検知して、前記呼の発信番号及び前記ユーザを識別する識別情報を特定するステップと、前記中継装置が、ネットワークを介して接続された発信者情報提供サーバに、前記発信番号及び前記識別情報を送信するステップと、前記発信者情報提供サーバが、前記発信番号及び前記識別情報を、ネットワークを介して受信するステップと、前記発信者情報提供サーバが、前記ステップで受信した発信番号及び識別情報から特定される前記呼を発信した発信者に関する発信者情報を、前記識別情報と関連付けて接続中の端末として記憶された一又は二以上の端末に、ネットワークを介して送信するステップと、を有することを特徴とする。
また、こうした特徴を有する本発明に係る第2の発信者情報の提供方法は、中継装置と、先に説明した各々の構成に対応する発信者情報提供サーバによって実行される、発信者情報の提供方法として特定することもできる。
本発明によると、クラウド等のネットワーク上で提供されるCTIシステムを複数のユーザが共用しながら、ユーザにはログイン等の操作負担をかけることなく、各々のユーザに応じた的確な発信者情報を受け取ることが可能になる。また、ユーザがPCやスマートフォン等の様々な端末を指定して、任意の端末で発信者情報を受け取ることができることに加えて、複数の部署間で共通の発信者情報を受け取ることができる、部署毎のニーズに応じた発信者情報を受け取ることができるなど、CTIシステムによるユーザの多様なニーズに応じた発信者情報の提供が実現される。
本発明を実施するための形態について、図面を用いて以下に詳細に説明する。尚、以下の説明に示した、中継装置や発信者情報提供サーバに記憶される情報の項目やデータ形式、発信者情報が送信される接続中の端末を特定する方法や端末の種別などの具体例は、本発明の実施形態における一例を示したものであって、本発明の実施形態はここに説明する例に限定されるものではない。
図1を用いて、本発明の実施形態の概要について説明する。図1において、CTIサーバが本発明に係る発信者情報提供サーバに対応し、CTIゲートウェイが本発明に係る発信者情報提供システムを構成する中継装置に対応する。顧客(発信者)がユーザ(着信者)に固定電話機や携帯電話機から電話をかけると、電話機が着信した呼に関する着信情報が、CTIアダプタを介してCTIゲートウェイからCTIサーバに送信され、CTIサーバで着信情報から特定された顧客情報が、接続中のユーザのPCやスマートフォン等の端末に、CTIサーバから送信される。
尚、複数の電話番号を有する企業等の組織では、外線からの着信を個々の電話機が電話網から直接受けるのではなく、PBX(構内交換機)で着信して内線への転送を制御する構成となることが多いが、この場合、CTIアダプタは電話網とPBX(構内交換機)の間の回線に設置され、PBXで着信する呼の発信番号や着信番号を取得して、これらの情報をCTIゲートウェイに引き渡すことになる。
図1における情報の流れを示したのが、図2である。顧客(発信者)がユーザ(着信者)に電話をかけることによって発信された呼には、発信番号(発信者の電話番号)と着信番号(着信者の電話番号)が含まれているが、CTIアダプタは電話網と電話機又はPBXの間の回線でこれらの情報をミラーリングして、CTIゲートウェイに引き渡す。
CTIゲートウェイには、着信者であるユーザを識別するユーザIDが、ユーザが使用している一又は二以上の着信番号と関連付けて記憶されていて、CTIゲートウェイはCTIアダプタから受け取った着信番号をこれと関連付けて記憶されているユーザIDに読み替えて、CTIアダプタから受け取った発信番号と合わせた着信情報を、CTIサーバに送信する。
CTIサーバには、サービスを利用するユーザのユーザIDと発信者の電話番号である発信番号の組合せ毎に、発信者に関する情報である顧客情報が記憶されている。CTIゲートウェイから着信情報を受信したCTIサーバでは、着信情報に含まれるユーザIDと発信番号の組合せに対応する顧客情報を特定して、着信者であるユーザの端末に顧客情報を送信する。尚、ここでいう顧客情報は、現在取引がある厳密な意味での顧客に関する情報に限定されるものではなく、新規の営業先等の潜在的な顧客に関する情報、過去に取引があった顧客に関する情報等、着信した呼の発信者に関する情報を、広く含み得るものとする。
ユーザが顧客情報を受け取るユーザ端末に関する情報は、CTIサーバにユーザIDと関連付けて記憶されている。ここにはユーザ毎に割り当てられたユニークなURLも、ユーザIDと関連付けて記憶されており、ユーザはPCやタブレット端末、スマートフォン等の一又は二以上の任意のユーザ端末から、当該URLにアクセスしてログイン等の操作を行い、CTIサーバとの間にセッションが張られたユーザ端末を識別する情報が、接続中のユーザ端末としてユーザIDと関連付けて記憶される。この情報を用いて、着信情報に含まれるユーザIDと関連付けて記憶されている接続中の全てのユーザ端末に対して、CTIサーバから顧客情報が送信される。
図3は、本発明に係る発信者情報提供システムの構成の一例を示している。図3において、顧客情報提供サーバ40(図1のCTIサーバに対応)が本発明に係る発信者情報提供サーバに、中継装置30(図1のCTIアダプタ及びCTIゲートウェイに対応)が本発明に係る発信者情報提供システムを構成する中継装置に、それぞれ対応する。
図3の電話機10、21−23は、呼の発信及び着信に用いられるものであれば、その構成は特に限定されるものではなく、固定電話機のみでなく、携帯電話機を用いることもできる。PBX20の構成も特に限定されるものではなく、構内にある電話機21−23等の接続を制御する一般的な構内交換機(いわゆる「ビジネスフォン」を含む)の機能を備えているものであればよい。また、PBX20を用いることなく、電話機10から発信された呼は、電話網の回線から電話機21等に直接着信する構成としてもよい。
中継装置30は、電話網とPBX20(PBX20を設けない場合は電話機21等)の間の回線に設置され、中継部31、着信情報送信部32、ユーザID記憶部33が備えられた装置である。中継部31、着信情報送信部32は機能的に特定され、その物理的な構成は特に限定されるものではないが、例えば、これらの機能に対応するプログラムがHDD等の補助記憶装置から呼び出され、メインメモリで演算処理を行うことによって各々の機能が実現される構成としてもよいし、各々の機能に対応する処理を実行する専用のチップやボードが設けられる構成としてもよい。ユーザID記憶部33には、中継装置30に備えられる記憶装置の所定の記憶領域が割り当てられる。
顧客情報提供サーバ40には、CPU、メインメモリ、HDD等の補助記憶装置を備え、インターネットとの接続機能を有するコンピュータが用いられて、補助記憶装置に格納されたプログラムがメインメモリに読み出され、CPUで演算処理を実行することによって、所定の機能が実現される。
顧客情報提供サーバ40を構成するコンピュータの物理的な構成は特に限定されるものではなく、本発明における顧客情報(発信者情報)を提供する機能以外の機能が、同一のコンピュータに備えられるものであってもよい。また、本発明に必要な各々の機能は、物理的に一台のコンピュータによって実現されるものであってもよいし、複数のコンピュータを用いて実現されるものであってもよい。
顧客情報提供サーバ40に備えられる着信情報解析部41、顧客情報送信部42、接続情報制御部43は、いずれも機能的に特定されるものであって、HDD等の補助記憶装置に格納された各部の機能に対応するプログラムがメインメモリに読み出され、CPUで演算処理を実行することによって、各部に対応する機能が実現される。
顧客情報提供サーバ40に備えられる顧客情報記憶部44、企業情報記憶部45、着信履歴記憶部46、接続情報記憶部47には、HDD等の補助記憶装置の所定の記憶領域が割り当てられる。これらの記憶領域は物理的に一台のコンピュータに設けられることを要件とするものではなく、データベースサーバを構成するコンピュータ等の複数のコンピュータに設けられるものであってもよいし、後に説明するように、企業情報記憶部45は顧客情報提供サーバ40からのアクセスが可能な外部サーバに設けられるものであってもよい。
ユーザ端末50−52は、インターネットに接続可能で、顧客情報提供サーバ40から送信された顧客情報の表示が可能なネットワーク端末であれば、その種別や構成は特に限定されるものではなく、例えば、PCやタブレット端末、スマートフォン等を用いることができる。
以上に説明した図3の構成を前提にして、図4−9に示した各部に記憶される情報の例を用いながら、図10−15のフローチャートに沿って、本発明に係る発信者情報提供システムによって顧客情報が送信される処理フローについて説明する。
本発明では、顧客情報提供サーバ40を利用したサービスによって、電話を受けた際に、その発信者である顧客に関する情報を受け取りたいユーザには、各々のユーザを識別するユーザIDと、ユーザが顧客情報を受信するユーザ端末を設定する際に用いられる、ユーザ毎にユニークなURLが割り当てられる。
ここでユーザIDが割り当てられるユーザとは、着信した呼に対して同一の顧客情報を受け取る主体が該当し、一個人や一法人に限定されるものではなく、法人内の部署やグループ等の主体を一単位のユーザとすることもできる。実務的には、例えば、本発明により提供されるサービスの利用権限をユーザにライセンスする場合は、ユーザ毎に付与され、ライセンスを識別するライセンスIDを、本発明におけるユーザIDとして扱うことができる。
図10のフローチャートは、顧客情報提供サーバ40において、顧客情報提供サーバ40に接続中のユーザ端末50−52等に関する情報を、接続情報記憶部47に記憶させる処理フローを示している。
ユーザが電話を受けた顧客に関する顧客情報を受け取りたいユーザ端末(ここではユーザ端末50とする)から、当該ユーザに割り当てられたURLにアクセスして、パスワードの入力等のログインに必要な操作を行うと、顧客情報提供サーバ40では接続情報制御部43が起動されて、図10のフローチャートに示した処理が実行される。
ユーザ端末50から送信されたログイの要求を受け付けると(S01)、パスワードの照合等のログインを承認するために必要な要件を確認して(S02)、要件に合致せずログイン失敗と判断された場合は(S02がNo)、エラー処理が行われる(S05)。
一方、要件に合致してログイン成功と判断されると(S02がYes)、ログイン要求を送信したユーザ端末50とのセッションを確立して、ユーザ端末50とのセッションに固有のセッションID(Cookie)を生成する。生成したセッションIDを、ユーザ端末50がアクセスした顧客情報提供サーバ40のURLに接続中のユーザ端末を識別する情報として、当該URLを割り当てられたユーザを識別するユーザIDと関連付けて接続情報記憶部47に記憶させることによって、各々のユーザについて、顧客情報を受け取るために顧客情報提供サーバ40に接続中のユーザ端末を特定することが可能な接続情報が保持される(S03)。生成したセッションID(Cookie)はユーザ端末50にも送信され(S04)、その後のユーザ端末50からのリクエスト等にはセッションIDが付されるため、顧客情報提供サーバ40からもユーザ端末50の識別が可能になる。
以上の処理によって、顧客情報提供サーバ40の接続情報記憶部47には、電話を受けた際に発信した顧客の顧客情報を受け取ることができる、セッションが張られた接続中のユーザ端末を識別する情報が保持される。尚、ログアウトの操作等によって、ユーザ端末50との間に張られたセッションが切断された場合は、ユーザ端末50との間に張られたセッションを識別するセッションIDは接続情報記憶部47に記憶された接続情報から削除されるので、接続情報記憶部47には、その時点で接続中のユーザ端末の特定が可能なセッションIDのみが、接続情報として保持されることになる。
図4は、顧客情報提供サーバ40に設けられる接続情報記憶部47に記憶される情報の一例を示したものであるが、ユーザを識別するユーザIDと当該ユーザに割り当てられたユニークなURLが関連付けて記憶され、さらにそのURLに接続中のユーザ端末に送信されたセッションID(Cookie)が関連付けて記憶される。同じURLに複数のユーザ端末が接続された場合は、複数のセッションIDが関連付けて記憶されるが、その場合は全てのセッションIDから特定されるユーザ端末に、顧客情報が送信されることになる。
このように、接続情報記憶部47には、一のユーザIDに対して複数のユーザ端末に対応するセッションIDを記憶させることができるので、顧客からの電話がかかってきた際に、例えば、一名の担当者がPCとスマートフォン等の複数の端末で顧客情報を受信することや、同じ部署内の複数のメンバーが各々のPC等で共通の顧客情報を受信すること、さらには、ある部署(例えば営業部門)の電話番号に電話をかけてきた顧客に関する情報を、他の部署(例えば管理部門)の担当者も受け取ることなどが可能になる。
図11のフローチャートは、中継装置30において、着信した呼の発信番号と当該呼を着信したユーザを識別するユーザIDを含む着信情報を、顧客情報提供サーバ40に送信する処理フローを示している。
ユーザの顧客が電話機10からユーザの所定の電話番号(着信番号)に電話をかけると、電話網からPBX20の間の回線に設置された中継装置30において、電話機10から発信された呼の着信を中継部31が検知する(S11)。中継部31は、着信した呼の通信情報をミラーリングして、着信情報送信部32に引き渡す。
着信情報送信部32では、中継部31から引き渡された通信情報から、着信した呼の発信番号(電話機10を使用する発信者である顧客の電話番号)と着信番号(電話機21−23等を使用する着信者であるユーザの電話番号であり、顧客が発信時に指定した電話番号)を特定する(S12)。続いて、特定した着信番号をキーにユーザID記憶部33を検索して、着信番号に対応するユーザIDが設定されているかを確認する(S13)。
図5は、中継装置30に設けられるユーザID記憶部33の一例を示したものであるが、ここにはユーザを識別するユーザIDと、各々のユーザが電話を受ける際の着信番号(着信用の電話番号)が関連付けて記憶されている。図5の例では、複数のユーザIDに対して、各々のユーザIDに対応する一又は二以上の着信番号が記憶されているが、企業等の組織内における部署毎に異なる着信番号を使用し、各々の部署に対応する顧客情報を受け取るようなケースでは、この例のように、ユーザID記憶部33には複数のユーザIDが設定されることになる。
さらに、部署内で複数の着信番号を使用している場合は、一のユーザIDに対して複数の着信番号が関連付けられる。例えば、図5のユーザID「11111」に対しては3つの着信番号が関連付けられているが、このうちどの着信番号に電話がかかった場合でも、以降に説明する仕組みによって、同一の顧客情報を受け取ることが可能である。ユーザID「11112」に対しても3つの着信番号が関連付けられているが、ユーザID「11113」のように、ユーザIDと着信番号を一対一で関連付けることもできる。
尚、こうしたユーザIDと着信番号の関連付けは、組織変更やそれに伴う電話番号の更新などによって変更が必要となる場合があるが、中継装置30は顧客情報提供サーバ40とインターネットを介して接続されているので、ユーザ(あるいはユーザが属する組織)からの申し出に応じて、顧客情報提供サーバ40からリモートでユーザID記憶部33に記憶された情報を更新できる構成とすればよい。
一方、個人や複数部署を持たない小規模組織などで単一のユーザIDしか有さないケースでは、着信番号に応じてこうしたユーザIDとの関連付けを保持する必要はなく、ユーザID記憶部33には単一のユーザIDのみを事前登録しておけばよい。
以上に説明したように、ユーザID記憶部33にはユーザIDに関する情報が設定されているので、S12で特定した着信番号に対応するユーザIDがユーザID記憶部33に設定されている場合は(S13がYes)、着信番号に対応するユーザIDを特定し(S14)、設定されていない場合には(S13がNo)、ユーザID記憶部33に事前登録されたユーザIDを特定する(S15)。
このようにしてユーザIDが特定されると、S12で特定された電話機10から着信した呼の発信番号と合わせて、着信情報として顧客情報提供サーバ40に送信される(S16)。
図12−15は、顧客情報提供サーバ40において、中継装置30から受信した着信情報に対応する顧客に関する顧客情報を、接続中のユーザ端末50−52等に送信する処理フローを示している。
図12のフローチャートは、着信情報から顧客情報を特定する処理フロー等を示したものであるが、顧客情報提供サーバ40が中継装置30から送信された着信情報を受信すると(S21)、着信情報解析部41が起動されて、着信情報に含まれるユーザIDと発信番号を特定する(S22)。続いて、特定したユーザIDと発信番号の組合せをキーに顧客情報記憶部44を検索して(S23)、対応する顧客情報が登録されているかを確認する(S24)。
図6は、顧客情報提供サーバ40に設けられる顧客情報記憶部44に、顧客毎に記憶される顧客情報の一例を示したものであるが、この例では、ユーザID(図6の「11111」)と発信番号(図6の「03−xxxx−1111」)の組合せからなる顧客ID(図6の「11111−03−xxxx−1111」)によって顧客を識別することとしており、各々の顧客IDに対して、顧客名、担当者名、取引種別等の顧客情報が関連付けて記憶されている。
このように、ユーザIDと発信番号の組合せによって顧客を識別することとすれば、同一の発信番号、すなわち発信者が同一の主体であっても、その発信者からの電話を受けたユーザに応じた異なる顧客情報を保持することが可能になる。発信者が同一の主体であっても、組織によって電話を受けた際に確認したい顧客情報が異なることは当然であるし、同一の組織内であっても部署によって異なる内容の顧客情報を受け取りたいというニーズ(例えば、受け取りたい顧客情報が、営業部門では顧客との面談履歴であるのに対し、管理部門は顧客の信用情報である場合)に対しても、顧客情報記憶部44にこうした形式で顧客情報を保持することによって対応が可能になる。
ユーザIDと発信番号の組合せに対応する顧客情報が登録されている場合は(S24がYes)、登録されている顧客の顧客IDを特定して(S25)、当該顧客がグループ化の対象かを確認する(S26)。顧客情報が登録されていない場合は(S24がNo)、ユーザIDとの組合せではなく、発信番号のみをキーに企業情報記憶部45を検索する(S31)。
図13のフローチャートは、グループ化の対象か否かに応じた処理フローを示したものであるが、S25で顧客IDを特定した顧客がグループ化の対象である場合は(S27がYes)、グループの代表である顧客IDに関連付けられた顧客情報を読み出し(S28)、グループ化の対象でない場合には(S27がNo)、S25で特定した顧客IDに関連付けられた顧客情報を読み出して(S29)、いずれの場合も読み出した顧客情報をユーザ端末50−52等への送信用のフォームに編集する(S30)。
図7は、顧客情報提供サーバ40に設けられる顧客情報記憶部44に記憶される、同一の顧客の発信番号に関する情報を関連付けたテーブルの一例を示したものであるが、一の顧客が常に発信番号が同じ電話機から電話をかけてくるのではなく、固定電話機と携帯電話機のように発信番号が異なる電話機を使用していることも少なくない。こうしたケースにも対応できるようにするために、図7に示したように、顧客が通常使用している電話機の発信番号をユーザIDと組み合わせた顧客ID(代表ID)に対して、同じ顧客が使用する可能性がある他の電話機の発信番号をユーザIDと組み合わせた顧客ID(補助ID)を関連付けて記憶させておけば、顧客が通常使用している電話機以外を使用して電話をかけてきた場合にも、通常使用している電話機の発信番号に対応する顧客ID(代表ID)を特定することができる。
こうした同一の顧客の顧客ID(代表ID)と顧客ID(補助ID)に関連付けるべき顧客情報は、同一のユーザが受け取る同一の顧客に関する顧客情報なので、当然に同じ内容の情報となるが、こうした顧客情報を各々の顧客ID(代表ID)及び顧客ID(補助ID)と関連付けるのは冗長な構成となるため、顧客ID(代表ID)にのみ顧客情報を関連付けて記憶させておき、図7の例のようなテーブルを用いて、顧客が通常使用している電話機以外を使用して電話をかけてきた場合にも顧客ID(代表ID)の特定が可能な構成とすれば、各々の顧客ID(代表ID)及び顧客ID(補助ID)に顧客情報を関連付けることは不要となる。
図14のフローチャートは、顧客情報記憶部44に顧客情報が登録されていない場合(新規の問合せや間違い電話等である場合)の処理フローを示したものであるが、S31で発信番号をキーに企業情報記憶部45を検索して、企業情報記憶部45に発信番号に対応する企業情報が登録されている場合は(S32がYes)、企業情報記憶部45から当該企業情報を読み出して、ユーザ端末50−52等への送信用のフォームに編集する(S33)。
図8は、顧客情報提供サーバ40に設けられる企業情報記憶部45に記憶される、企業情報の一例を示したものであるが、発信番号に対応する電話番号を使用している企業に関する一般的な情報が、汎用的な企業情報として記憶されている。尚、図3では企業情報記憶部45が顧客情報提供サーバ40に設けられる構成としているが、外部の企業情報のデータベースを利用することとしてもよく、その場合は顧客情報提供サーバ40から企業情報を提供する外部サーバに問合せが行われ、該当する企業情報が登録されていれば、外部サーバから対応する企業情報を取得することになる。
企業情報記憶部45に発信番号に対応する企業情報が登録されていない場合は(S32がNo)、S22で特定したユーザIDと発信番号の組合せをキーに着信履歴記憶部46を検索して(S34)、当該発信番号からの着信履歴が記録されているかを確認する(S35)。着信履歴が記録されていれば(S35がYes)、着信履歴記憶部46から当該着信履歴を読み出して、ユーザ端末50−52等への送信用のフォームに編集する(S36)。着信履歴が記録されていなければ(S35がNo)、S22で特定した発信番号を、ユーザ端末50−52等への送信用のフォームに編集する(S37)。
図9は、顧客情報提供サーバ40に設けられる着信履歴記憶部46に記憶される、着信履歴の一例を示したものであるが、ユーザID毎に、過去に着信した呼の発信番号毎の着信履歴が記録されている。通常、顧客情報記憶部44には、ユーザの現在の取引先だけでなく、過去の取引先や新規の取引を狙っている営業先、業務で連携している親しい企業など、ユーザが電話を受けた際に発信者の情報を受け取りたい相手方に関する情報が顧客情報として記憶されるが、そうした相手方には該当しないが、過去に電話を受けた発信番号からの着信履歴(例えば、一方的なセールス電話等の着信履歴)がここに記憶されており、備考に「要注意先」等の情報を記録しておき、こうした情報をユーザ端末50−52等に表示することとすれば、電話を受けるユーザに注意を喚起することができる。
着信履歴記憶部46に着信履歴が記憶されていない発信番号である場合は、S37のように発信番号のみをユーザ端末50−52等への送信用のフォームに編集して送信することとすれば、ユーザは市外局番から発信者の所在地を把握することや、携帯電話からの発信であることを了知することが可能になるが、こうした発信番号に関する情報は電話機にも表示されることが多いので、ユーザ端末50−52等には何ら表示を行わないこととしてもよいし、「発信者が特定できませんでした」等の表示をすることとしてもよい。
また、S33で編集した企業情報や、S36で編集した着信履歴についても、ユーザ端末50−52等には、いずれか一方は送信しない、あるいは両方を送信せず、顧客が特定できた場合にのみ顧客情報を送信することとしてもよい。
S30、S33、S36、S37においてユーザ端末50−52等への送信用の情報が編集されると、顧客情報送信部42が起動されて、図15のフローチャートに示した処理が実行される。S22で特定したユーザIDと接続情報記憶部47に関連付けて記憶されているセッションIDから、ユーザIDに対応するURLに接続中のユーザ端末50−52等を特定して(S38)、特定された全てのユーザ端末50−52等に、S30、S33、S36、S37のいずれかで送信用に編集された顧客情報等を送信する(S39)。
顧客情報等が送信されたユーザ端末50−52等では、受信した顧客情報等を各々の端末の画面に表示することによって、ユーザは電話を受けた顧客等に関する情報を確認することができる。ユーザ端末50−52等の画面に顧客情報等を表示させる方法は特に限定されるものではないが、ユーザ端末50−52等に備えるWebブラウザを用いて顧客情報等を表示させることとすれば、ユーザはPCやタブレット端末、スマートフォン等の様々なネットワーク端末で顧客情報等を確認することが可能になる。