以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
[実施例1]
1.画像形成装置の構成及び動作
図1は、本実施例の画像形成装置1の概略断面図である。本実施例の画像形成装置1は、タンデム型のフルカラープリンタである。ただし、画像形成装置は、タンデム型の画像形成装置に限られず、他の方式の画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置は、フルカラー画像が形成可能な画像形成装置に限られず、モノクロ(白黒やモノカラー)の画像のみ形成可能な画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置は、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機など、種々の用途の画像形成装置であってよい。
図1に示すように、画像形成装置1は、装置本体10と、給送部(図示せず)と、画像形成部40と、排出部(図示せず)と、制御部30と、操作部70(図2)と、を有する。装置本体10の内部には、機内温度を検知可能な温度センサ71(図2)と、機内湿度を検知可能な湿度センサ72(図2)と、が設けられている。画像形成装置1は、原稿読取装置(図示せず)、パーソナルコンピュータなどのホスト機器、デジタルカメラやスマートフォン、などの外部機器200(図2)からの画像信号に応じて、4色フルカラー画像を記録材(シート、転写材)Sに形成することができる。なお、記録材Sは、トナー像が形成されるものであり、具体例として、普通紙、普通紙の代用品である合成樹脂製のシート、厚紙、オーバーヘッドプロジェクタ用シートなどがある。
画像形成部40は、給送部から給送された記録材Sに対して、画像情報に基づいて画像を形成可能である。画像形成部40は、画像形成ユニット50y、50m、50c、50kと、トナーボトル41y、41m、41c、41kと、露光装置42y、42m、42c、42kと、中間転写ユニット44と、二次転写装置45と、定着部46と、を有する。画像形成ユニット50y、50m、50c、50kは、それぞれイエロー(y)、マゼンタ(m)、シアン(c)、ブラック(k)の画像を形成する。これら4個の画像形成ユニット50y、50m、50c、50kに対応して設けられた同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、いずれかの色用の要素であることを示す符号の末尾のy、m、c、kを省略して総括的に説明することがある。なお、画像形成装置1は、例えばブラック単色の画像など、所望の単色又は4色のうちいくつかの色用の画像形成ユニット50を用いて、単色又はマルチカラーの画像を形成することも可能である。
画像形成ユニット50は、次の各手段を有する。まず、第1の像担持体としてのドラム型(円筒形)の感光体(電子写真感光体)である感光ドラム51を有する。また、帯電手段としてのローラ型の帯電部材である帯電ローラ52を有する。また、現像手段としての現像装置20を有する。また、除電手段としての前露光装置54を有する。また、感光体クリーニング手段としてのクリーニング部材であるクリーニングブレード55を有する。画像形成ユニット50は、後述する中間転写ベルト44bにトナー像を形成する。画像形成ユニット50は、プロセスカートリッジとして一体的にユニット化されて、装置本体10に対して着脱可能とされている。
感光ドラム51は、静電像(静電潜像)やトナー像を担持して移動可能(回転可能)である。感光ドラム51は、本実施例では、外径30mmの負帯電性の有機感光体(OPC)である。感光ドラム51は、基体としてのアルミニウム製シリンダと、その表面に形成された表面層と、を有する。本実施例では、表面層として、基体上に次の順番で塗布されて積層された、下引き層と、光電荷発生層と、電荷輸送層と、の3層を有する。画像形成動作が開始されると、感光ドラム51は、駆動手段としてのモータ(図示せず)によって、所定のプロセススピード(周速度)で、図中矢印方向(反時計回り)に回転駆動される。
回転する感光ドラム51の表面は、帯電ローラ52によって均一に帯電処理される。帯電ローラ52は、本実施例では、感光ドラム51の表面に接触し、感光ドラム51の回転に伴って従動して回転するゴムローラである。帯電ローラ52には、帯電バイアス電源73(図2)が接続されている。帯電バイアス電源73は、帯電工程時に、帯電ローラ52に帯電バイアス(帯電電圧)として直流電圧を印加する。
帯電処理された感光ドラム51の表面は、露光装置42によって画像情報に基づいて走査露光され、感光ドラム51上に静電像が形成される。露光装置42は、本実施例では、レーザスキャナである。露光装置42は、制御部30から出力される分解色の画像情報に従ってレーザ光を発し、感光ドラム51の表面(外周面)を走査露光する。
感光ドラム51上に形成された静電像は、現像装置20によって現像剤のトナーが供給されることで現像(可視化)され、感光ドラム51上にトナー像が形成される。現像装置20は、本実施例では、非磁性トナー粒子(トナー)と磁性キャリア粒子(キャリア)とを備えた二成分現像剤(単に「現像剤」ともいう。)を収容している。現像装置20には、トナーボトル41からトナーが供給される。現像装置20は、現像スリーブ24を有する。現像スリーブ24は、例えばアルミニウムや非磁性ステンレス(本実施例ではアルミニウム)などの非磁性材料で構成されている。現像スリーブ24の内側には、ローラ状のマグネットであるマグネットローラが、現像装置20の本体(現像容器)に対して回転しないように固定して配置されている。現像スリーブ24は、現像剤を担持して、感光ドラム51と対向する現像領域に搬送する。現像スリーブ24には、現像バイアス電源74(図2)が接続されている。現像バイアス電源74は、現像工程時に、現像スリーブ24に現像バイアス(現像電圧)として直流電圧を印加する。本実施例では、現像時のトナーの帯電極性であるトナーの正規の帯電極性は負極性である。
4個の感光ドラム51y、51m、51c、51kと対向するように、中間転写ユニット44が配置されている。中間転写ユニット44は、第2の像担持体としての中間転写ベルト44bを有する。中間転写ベルト44bは、駆動ローラ44a、従動ローラ44d、一次転写ローラ47y、47m、47c、47k、二次転写内ローラ45aなどの複数のローラに巻き掛けられている。中間転写ベルト44bは、トナー像を担持して移動可能(回転可能)である。駆動ローラ44aは、駆動手段としてのモータ(図示せず)によって回転駆動され、中間転写ベルト44bを回転(周回移動)させる。従動ローラ44dは、中間転写ベルト44bの張力を一定に制御するようにしたテンションローラである。従動ローラ44dは、付勢手段としてのばね(図示せず)の付勢力によって中間転写ベルト44bを外周面側へ押し出すような力が加えられており、この力によって中間転写ベルト44bの搬送方向に2〜5kg程度の張力が掛けられている。二次転写内ローラ45aは、後述するように二次転写装置45を構成する。中間転写ベルト44bは、駆動ローラ44aによって駆動力が伝達されて、感光ドラム51の周速度に対応する所定の周速度で、図中矢印方向(時計回り)に回転駆動される。また、中間転写ユニット44は、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置60を有する。
一次転写手段としてのローラ型の一次転写部材である一次転写ローラ47y、47m、47c、47kは、感光ドラム51y、51m、51c、51kにそれぞれ対向して配置されている。一次転写ローラ47は、感光ドラム51との間で中間転写ベルト44bを挟持する。これにより、中間転写ベルト44bは、感光ドラム51に当接して、感光ドラム51との間で一次転写部(一次転写ニップ部)48を形成する。
感光ドラム51上に形成されたトナー像は、一次転写部48において、一次転写ローラ47の作用によって中間転写ベルト44b上に一次転写される。つまり、本実施例では、一次転写ローラ47に正極性の一次転写電圧が印加されることにより、感光ドラム51上の負極性のトナー像が、中間転写ベルト44b上に一次転写される。例えば、フルカラー画像の形成時には、各感光ドラム51y、51m、51c、51k上に形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像が、中間転写ベルト44b上に順次重ね合わされるようにして多重転写される。一次転写ローラ47には、一次転写電源75(図2)が接続されている。一次転写電源75は、一次転写工程時に、一次転写ローラ47に一次転写バイアス(一次転写電圧)としてトナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧を印加する。一次転写電源75には、出力電圧を検知する電圧検知センサ75aと、出力電流を検知する電流検知センサ75bと、が接続されている(図2)。本実施例では、一次転写電源75y、75m、75c、75kは、一次転写ローラ47y、47m、47c、47kのそれぞれに対して設けられており、一次転写ローラ47y、47m、47c、47kに印加される一次転写電圧は個別に制御可能とされている。
一次転写ローラ47は、本実施例では、イオン導電系発泡ゴム(NBRゴム)の弾性層と、芯金と、を有する。一次転写ローラ47の外径は、例えば、15〜20mmである。また、一次転写ローラ47としては、電気抵抗値が1×105〜1×108Ω(N/N(23℃、50%RH)測定、2kV印加)のローラを好適に使用することができる。
中間転写ベルト44bは、本実施例では、内周面側から基層、弾性層、表層の3層構造を有する無端ベルトである。基層を構成する樹脂材料としては、ポリイミドやポリカーボネートなどの樹脂、又は各種ゴムなどに帯電防止剤としてカーボンブラックを適当量含有させた材料を好適に用いることができる。基層の厚みは、例えば、0.05〜0.15[mm]である。弾性層を構成する弾性材料としては、ウレタンゴムやシリコーンゴムなどの各種ゴムなどにイオン導電剤を適当量含有させた材料を好適に用いることができる。弾性層の厚みは、例えば、0.1〜0.500[mm]である。表層を構成する材料としては、フッ素樹脂などの樹脂を好適に用いることができる。表層は、中間転写ベルト44bの表面へのトナーの付着力を小さくして、二次転写部Nでトナーを記録材Sへ転写しやすくする。表層の厚みは、例えば、0.0002〜0.020[mm]である。本実施例では、表層は、例えば、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂などの1種類の樹脂材料か、例えば弾性材ゴム、エラストマー、ブチルゴムなどの弾性材料のうち2種類以上の材料を基材として使用する。そして、この基材に対して、表面エネルギーを小さくし潤滑性を高める材料として、例えば、フッ素樹脂などの粉体や粒子を、1種類あるいは2種類以上、又は粒径を異ならせて分散させることにより、表層を形成する。本実施例では、中間転写ベルト44bは、体積抵抗率が5×108〜1×1014[Ω・cm](23℃、50%RH)、硬度がMD1硬度で60〜85°(23℃、50%RH)である。また、本実施例では、中間転写ベルト44bの静止摩擦係数は、0.15〜0.6(23℃、50%RH、HEIDON社製type94i)である。
中間転写ベルト44bの外周面側には、二次転写内ローラ45aと共に二次転写装置45を構成する二次転写外ローラ45bが配置されている。二次転写外ローラ45bは、中間転写ベルト44bに当接して、中間転写ベルト44bとの間で二次転写部(二次転写ニップ部)Nを形成する。中間転写ベルト44b上に形成されたトナー像は、二次転写部Nにおいて、二次転写装置45の作用によって記録材S上に二次転写される。本実施例では、二次転写外ローラ45bに正極性の二次転写電圧が印加されることにより、中間転写ベルト44b上の負極性のトナー像が、中間転写ベルト44bと二次転写外ローラ45bとに挟持されて搬送される記録材S上に二次転写される。記録材Sは、上述のトナー像の形成動作と並行して給送部(図示せず)から給送され、搬送経路に設けられたレジストローラ80によって中間転写ベルト44bのトナー像とタイミングが合わされて二次転写部Nへと搬送される。
このように、二次転写装置45は、対向部材としての二次転写内ローラ45aと、二次転写手段としてのローラ型の二次転写部材である二次転写外ローラ45bと、を有して構成される。二次転写内ローラ45aは、中間転写ベルト44bを介して二次転写外ローラ45bに対向して配置されている。二次転写外ローラ45bには、印加手段としての二次転写電源76(図2)が接続されている。二次転写電源76は、二次転写工程時に、二次転写外ローラ45bに二次転写バイアス(二次転写電圧)としてトナーの正規の帯電極性とは逆極性(本実施例では正極性)の直流電圧を印加する。二次転写電源76には、出力電圧を検知する電圧検知センサ76aと、出力電流を検知する電流検知センサ76bと、が接続されている(図2)。二次転写内ローラ45aの芯金は、接地電位に接続されている。そして、二次転写部Nに記録材Sが供給された際に、二次転写外ローラ45bにトナーの正規の帯電極性とは逆極性の定電圧制御された二次転写電圧が印加される。本実施例では、例えば1〜7kVの二次転写電圧が印加され、40〜120μAの電流が流されて、中間転写ベルト44b上のトナー像が記録材Sに二次転写される。なお、本実施例では、二次転写内ローラ45aを接地電位に接続して、二次転写外ローラ45bに二次転写電源76から電圧を印加するが、二次転写内ローラ45aに二次転写電源76から電圧を印加して、二次転写外ローラ45bを接地電位に接続してもよい。この場合、二次転写内ローラ45aには、トナーの正規の帯電極性と同極性の直流電圧を印加する。
二次転写外ローラ45bは、本実施例では、イオン導電系発泡ゴム(NBRゴム)の弾性層と、芯金と、を有する。二次転写外ローラ45bの外径は、例えば、20〜25mmである。また、二次転写外ローラ45bとしては、電気抵抗値が1×105〜1×108Ω(N/N(23℃、50%RH)測定、2kV印加)のローラを好適に使用することができる。
トナー像が転写された記録材Sは、定着手段としての定着部46へと搬送される。定着部46は、定着ローラ46aと、加圧ローラ46bと、を有する。定着ローラ46aは、加熱手段としてのヒータを内蔵している。未定着のトナー像を担持した記録材Sは、定着ローラ46aと加圧ローラ46bとの間に挟持されて搬送されることによって加熱及び加圧される。これによって、トナー像は記録材S上に定着(溶融、固着)される。なお、定着ローラ46aの温度(定着温度)は、定着温度センサ77(図2)により検知される。
トナー像が定着された記録材Sは、排出部(図示せず)において、排出経路を搬送され、排出口から排出されて装置本体10の外部に設けられた排出トレイに積載される。また、定着部46と排出部の排出口との間には、1面目にトナー像が定着された記録材Sを裏返して、再度、二次転写部Nへと供給するための反転搬送路(図示せず)が設けられている。反転搬送路の作動により再度二次転写部Nに供給された記録材Sは、2面目にトナー像が転写され、定着された後に、装置本体10の外部に排出される。このように、本実施例の画像形成装置1は、1枚の記録材Sの両面に画像を形成する自動両面プリントを実行することが可能とされている。
一次転写後の感光ドラム51は、前露光装置54によって表面を除電される。また、一次転写工程時に中間転写ベルト44bに転写されずに感光ドラム51上に残留したトナー(一次転写残トナー)は、クリーニングブレード55によって感光ドラム51の表面から除去されて回収容器(図示せず)に回収される。クリーニングブレード55は、感光ドラム51に対して所定の押圧力で当接された板状の部材である。クリーニングブレード55は、その自由端部側の先端が感光ドラム51の回転方向の上流側を向くカウンター方向で感光ドラム51の表面に当接されている。また、二次転写工程時に記録材Sに転写されずに中間転写ベルト44b上に残留したトナー(二次転写残トナー)や紙粉などの付着物は、ベルトクリーニング装置60によって中間転写ベルト44bの表面から除去されて回収される。
図2は、本実施例の画像形成装置1の制御系の概略構成を示すブロック図である。図2に示すように、制御部30は、コンピュータにより構成され、例えばCPU31と、各部を制御するプログラムを記憶するROM32と、データを一時的に記憶するRAM33と、外部と信号を入出力する入出力回路(I/F)34と、を有する。CPU31は、画像形成装置1の制御全体を司るマイクロプロセッサであり、システムコントローラの主体である。CPU31は、入出力回路34を介して、給送部(図示せず)、画像形成部40、排出部(図示せず)、操作部70に接続され、これら各部と信号をやり取りすると共に、これら各部の動作を制御する。ROM32には、記録材Sに画像を形成するための画像形成制御シーケンスなどが記憶されている。制御部30には、帯電バイアス電源73、現像バイアス電源74、一次転写電源75、二次転写電源76が接続されており、これらはそれぞれ制御部30からの信号により制御される。また、制御部30には、温度センサ71、湿度センサ72、一次転写電源75の電圧検知センサ75a及び電流検知センサ75b、二次転写電源76の電圧検知センサ76a及び電流検知センサ76b、定着温度センサ77が接続されている。各センサにおいて検知された信号は、制御部30に入力される。
操作部70は、入力手段としての操作ボタンと、表示手段としての液晶パネルなどからなる表示部70aと、を有する。なお、本実施例では、表示部70aはタッチパネルとして構成されており、入力手段としての機能も有している。ユーザーやサービス担当者などの操作者は、操作部70を操作することで、プリントジョブ(一の開始指示により単数又は複数の記録材Sに画像を形成して出力する一連の動作)を実行させることが可能である。制御部30は、操作部70からの信号を受けて、画像形成装置1の各種デバイスを動作させる。画像形成装置1は、パーソナルコンピュータなどの外部機器200からの画像形成信号(画像データ、制御指令)に基づいてプリントジョブを実行させることも可能とされている。
本実施例では、制御部30は、画像形成前準備プロセス部31aと、ATVC制御プロセス部31bと、画像形成プロセス部31cと、調整プロセス部31dと、を有する。また、制御部30は、一次転写電圧記憶部31eと、二次転写電圧記憶部31fと、チャート記憶部31gと、を有する。なお、これらの各プロセス部及び記憶部は、CPU31やRAM33の一部として設けられていてもよい。制御部30は、上述のようにプリントジョブを実行することが可能である。また、制御部30は、一次転写部及び二次転写部のATVC制御(設定モード)を実行することが可能である(ATVC制御の詳細については後述する。)。また、制御部30は、二次転写電圧の設定電圧を調整する調整モードを実行することができる(調整モードの詳細については後述する。)。
2.ATVC制御
2−1.一次転写部のATVC制御
次に、一次転写電圧の制御について、図2及び図3を用いて詳細に説明する。一般に、一次転写電圧の制御には、定電圧制御及び定電流制御があるが、本実施例では定電圧制御を用いている。色ごとに、装置本体10の設置環境に応じた一次転写電流の目標値(ターゲット)のテーブルが、一次転写電圧記憶部31eに予め記憶されている。本実施例では、ターゲット電流を、いずれの色も55μAとしている。一次転写部48では、一次転写ローラ47から中間転写ベルト44bの厚み方向(一次転写ローラ47から感光ドラム51への方向)に電流が流れるので、一次転写ローラ47、中間転写ベルト44bの電気抵抗の変化があると所望の電流が流れない。この電気抵抗の変化を補正するため、電源投入後の前多回転工程時や、画像形成前の前回転工程時に、所定の電流を流して電圧を測定する(電気抵抗に関する情報を取得する)、一次転写部48のATVC制御が実行される。
図3は、本実施例におけるプリントジョブの制御の手順の概略を示すフローチャート図である。図3に示すように、画像形成装置1の電源がオンされると(S1)、CPU31は定着温度センサ77の検出値を取得し、定着温度がTL以上、かつ、TU以下であるか否かを判断する(S2)。本実施例では、例えば、TL=160℃、TU=180℃としている。ただし、温度TL、TUは、上記の温度に限られない。CPU31は、S2において定着温度がTL以上、かつ、TU以下ではないと判断した場合は、画像形成前準備プロセス部31aに画像形成前準備プロセスの実行信号を入力する。これにより、画像形成前準備プロセス部31aによって定着部46のヒータの加熱などの画像形成前準備プロセスが行われる(S3)。CPU31は、S2において定着温度がTL以上、かつ、TU以下であると判断した場合は、定着温調条件が満たされていると判断し、前回転工程を開始して、前回転工程において一次転写部48のATVC制御(設定モード)を実行する(S4)。
一次転写部48のATVC制御を実行する場合、CPU31は、ATVC制御プロセス部31bに一次転写部48のATVC制御の実行信号を入力する。これにより、ATVC制御プロセス部31bによって一次転写部48のATVC制御が実行される。一次転写部48のATVC制御では、感光ドラム51が通常の画像形成プロセスと同様に帯電処理され、各一次転写ローラ47に複数水準の電圧が印加されて、その時の電流が電流検知センサ75bにより検知される。また、印加した電圧と電流との関係から、出力したいターゲット電流になるように一次転写電圧Vtrが決定される。例えば、一次転写部48のATVC制御では、まず、一次転写ローラ47に2000Vの電圧が印加されて、その時の電流が測定される。その電流がターゲット電流よりも小さければ、次は、2000Vよりも高い所定の電圧、例えば3000Vが印加されて、その時の電流が測定される。そして、2000V及び3000Vを印加したときの電流の各測定結果が直線近似されて、ターゲット電流、ここでは55μAになるような電圧値が求められる。本実施例では、ここで求められた電圧値を、画像形成時に印加する一次転写電圧Vtrの初期値として用いている。本実施例では、ATVC制御プロセス部31bは、色ごとに上述のようなATVC制御を行い、設定した一次転写電圧Vtrの値を一次転写電圧記憶部31eに記憶させる。なお、ATVC制御において電圧と電流との関係を取得するために印加する電圧は、2つの異なる電圧に限らず、3つ以上の異なる電圧であってもよい。また、本実施例では、各一次転写電源75の出力電圧値はATVC制御プロセス部31bにより取得されるが、各電圧検知センサ75aにより取得されてもよい。
次いで、CPU31は、ジョブ信号があるか否かを判断する(S5)。CPU31は、S5においてジョブ信号が無いと判断した場合は、スタンバイとなりジョブ信号を待つ(S6)。CPU31は、S5においてジョブ信号があると判断した場合は、前回のATVC制御を実行してからの経過時間が所定の経過時間Δtよりも小さいか否かを判断する(S7)。本実施例では、例えば、Δt=30分としている。ただし、この経過時間Δtは、上記の時間に限られない。CPU31は、S7において前回のATVCを実行してからの経過時間が所定の経過時間Δtよりも小さくないと判断した場合は、上述と同様にして一次転写部48のATVC制御(設定モード)を実行する(S8)。CPU31は、S7において前回のATVC制御を実行してからの経過時間が所定の経過時間Δtよりも小さいと判断した場合、あるいはS8でATVC制御を実行した後は、画像形成プロセス部31cに画像形成の実行信号を入力する。これにより、画像形成プロセス部31cによって画像形成が開始される(S9)。
画像形成が開始されると、CPU31は、画像形成枚数がM枚以上であるか否かを判断する(S10)。本実施例では、M=28×N+1(N=1、2、3…)としている。CPU31は、S10において画像形成枚数がM枚以上ではないと判断した場合は、画像形成を続行させる。CPU31は、S10において画像形成枚数がM枚以上であると判断した場合は、紙間で電圧補正を実行する(S11)。すなわち、本実施例では、連続画像形成中の28個の紙間ごとに、紙間で一次転写部48に流れる電流を測定する。そして、紙間において、その測定結果に基づいて後続の画像形成時に印加する一次転写電圧Vtrを、それまでの一次転写電圧VtrにΔVを加減した電圧とする補正を行う。このΔVは、例えば、ATVC制御で取得した電圧と電流との関係から求められる、紙間で測定された電流とターゲット電流との差分に対応する電圧である。
なお、本実施例では、一次転写電流は、全環境、全色、ターゲット電流55μAとしている。ただし、これに限らず、ターゲット電流は、装置本体10の設置環境によって変更してもよいし、色ごとに変更してもよい。また、本実施例では、一次転写電圧は0.5〜7.0kVの範囲で可変とした。
2−2.二次転写部のATVC制御
次に、二次転写電圧の制御について、図2を用いて詳細に説明する。二次転写電圧の制御は、一次転写電圧の制御と同様である。一般に、二次転写電圧の制御には、定電圧制御及び定電流制御があるが、本実施例では定電圧制御を用いている。装置本体10の設置環境に応じた二次転写電流の目標値(ターゲット)のテーブルが、二次転写電圧記憶部31fに予め記憶されている。二次転写部Nでは、二次転写外ローラ45bから中間転写ベルト44bの厚み方向(二次転写外ローラ45bから二次転写内ローラ45aへの方向)に電流が流れる。そのため、二次転写外ローラ45b、中間転写ベルト44b、二次転写内ローラ45aの電気抵抗の変化があると所望の電流が流れない。この電気抵抗の変化を補正するため、所定の電流を流して電圧を測定する(電気抵抗に関する情報を取得する)、二次転写部NのATVC制御が実行される。本実施例では、二次転写部NのATVC制御は、図3のフローチャートを用いて説明した一次転写部48のATVC制御の実行タイミングと同期して、一次転写部48のATVC制御の後のタイミングに実行される。
二次転写部NのATVC制御を実行する場合、CPU31は、ATVC制御プロセス部31bに二次転写部NのATVC制御の実行信号を入力する。これにより、ATVC制御プロセス部31bによって二次転写部NのATVC制御が実行される。二次転写部NのATVC制御では、感光ドラム51が通常の画像形成プロセスと同様に帯電処理され、二次転写外ローラ45bに複数水準の電圧が印加されて、その時の電流が電流検知センサ76bにより検知される。また、印加した電圧と電流との関係から、出力したいターゲット電流になるように転写部分担電圧Vbが決定される。この電圧と電流との関係を取得して転写部分担電圧Vbを決定する手順は、一次転写部のATVC制御における一次転写電圧Vtrを決定する手順と同様である。ATVC制御プロセス部31bは、上述のようなATVC制御により設定した転写部分担電圧Vbの値を二次転写電圧記憶部31fに記憶させる。なお、ATVC制御において電圧と電流との関係を取得するために印加する電圧は、2つの異なる電圧に限らず、3つ以上の異なる電圧であってもよい。また、本実施例では、二次転写電源76の出力電圧値はATVC制御プロセス部31bにより取得されるが、電圧検知センサ76aにより取得されてもよい。
二次転写は、二次転写部Nに記録材Sを挟んで行われるため、ATVC制御を行った際よりも記録材Sの分だけインピーダンスが高くなり、上記転写部分担電圧Vbでは所望の二次転写電流を流すことができない。そのため、本実施例では、記録材Sによるインピーダンスの上昇を考慮して、所望の二次転写電流を流すために必要な記録材分担電圧Vpを、ATVC制御で得られた転写部分担電圧Vbに加えた電圧値を、画像形成時に印加する二次転写電圧値として用いる。本実施例では、記録材Sの種類、装置本体10の設置環境に応じた記録材分担電圧Vpの値のテーブルが、二次転写電圧記憶部31fに予め記憶されている。操作者が操作部70やパーソナルコンピュータなどの外部機器200から画像形成に用いる記録材Sの種類を選択することによって、ATVC制御プロセス部31bがその選択された記録材Sの種類に応じて記録材分担電圧Vpを選択する。そして、ATVC制御プロセス部31bは、画像形成時の二次転写電圧の設定電圧としてVb+Vpを算出して、二次転写電圧記憶部31fに記憶させる。本実施例では、ここで求められた電圧値Vb+Vpを、画像形成時に印加する二次転写電圧のデフォルト値として用いている。なお、記録材Sの種類とは、普通紙、厚紙、薄紙、光沢紙、コート紙などの一般的特徴に基づく属性、メーカー、銘柄、品番、坪量、厚さなど、記録材Sを区別可能な任意の情報を包含するものである。
3.二次転写電圧の簡易調整モードの概要及び課題
次に、二次転写電圧の簡易調整モード(チャートを出力する出力モード)の概要について説明する。画像形成に用いられる記録材Sの種類や状態によっては、記録材Sの水分量や電気抵抗値が標準的な記録材Sと大きく異なっている場合がある。この場合、上述のように予め設定されているデフォルトの記録材分担電圧Vpを用いた二次転写電圧の設定電圧では、最適な転写が行えないことがある。
つまり、二次転写電圧は、まず、中間転写ベルト44b上のトナーを記録材Sに転写するために必要な電圧であることが必要である。また、二次転写電圧は、異常放電が起きない電圧に抑える必要がある。しかし、実際に画像形成に用いられる記録材Sの種類や状態によっては、標準的な値として想定された値よりも電気抵抗が高いことがある。この場合、予め設定されたデフォルトの記録材分担電圧Vpを用いた二次転写電圧の設定電圧では、中間転写ベルト44a上のトナーを記録材Sに転写するために必要な電圧が不足してしまうことがある。したがって、この場合には、記録材分担電圧Vpを高くするなどして二次転写電圧の設定電圧を高くすることが望まれる。逆に、実際に画像形成に用いられる記録材Sの種類や状態によっては、記録材Sの水分量が減少しているなどして、標準的な値として想定された値よりも電気抵抗が低くなっており、放電が起きやすくなっていることがある。この場合、予め設定されたデフォルトの記録材分担電圧Vpを用いた二次転写電圧の設定電圧では、異常放電による画像不良が発生してしまうことがある。したがって、この場合には、記録材分担電圧Vpを低くするなどして二次転写電圧の設定電圧を低くすることが望まれる。
そのため、ユーザーやサービス担当者などの操作者が、実際に画像形成に用いる記録材Sに応じて記録材分担電圧Vpを調整(変更)するなどして画像形成時の二次転写電圧の設定電圧を最適な値に調整(変更)することが望まれる。この調整は、次のような方法によって行うことも考えられる。つまり、例えば、操作者が、出力したい画像を、1枚の記録材Sごとに2次転写電圧を切り替えながら出力し、出力された画像に生じる画像不良の有無を確認して最適な2次転写電圧を決定する方法である。しかし、この方法では、画像の出力と二次転写電圧の設定とを繰り返すために、無駄になる記録材Sが増えたり、時間がかかってしまったりする。
そこで、本実施例では、画像形成装置1には、二次転写電圧の簡易調整モード(以下、単に「調整モード」ともいう。)が設けられている。この調整モードでは、実際に画像形成に用いる記録材Sに、複数の代表的な色のパッチ(試験用トナー像、テストパターン)を有するチャートを、パッチごとに二次転写電圧(より詳細には記録材分担電圧Vp)を切り替えながら出力する。そして、出力されたチャートのパッチに生じる画像不良の有無を確認して、最適な二次転写電圧(より詳細には記録材分担電圧Vp)を決定する。
調整モードで出力するチャートのパッチの大きさは、大きい方が画像不良を確認しやすいというメリットがある。しかし、パッチが大きいと、1枚の記録材Sに形成できるパッチの数が少なくなる。パッチの形状は、正方形などとすることができる。パッチの色は、確認したい画像不良や確認しやすさによって決めることができる。例えば、二次転写電圧を低い値から高くしていった場合に、レッド、グリーン、ブルーといった2次色のパッチを適切に転写することができる電圧値から二次転写電圧の下限値を決めることができる。また、二次転写電圧を更に高くしていった場合に、ハーフトーンのパッチに二次転写電圧が高いことによる画像不良が発生する電圧値から二次転写電圧の上限値を決めることができる。そして、この上限値と下限値との間の範囲で二次転写電圧を設定することができる。
ここで、従来の調整モードにおける課題について説明する。前述のように、例えば特許文献1に記載されるような従来の調整モードでは、本願の図17(a)に示すような、記録材の端部に比較的大きな余白を設けて記録材の中央部に複数のパッチを有するチャートが用いられていた。そこで、本願の図17(b)に示すようなチャートを用いて調整モードを行って、その後の画像形成における画像不良に関して調べた。図17(b)のチャートでは、記録材Sの搬送方向と略直交する方向(以下「スラスト方向」ともいう。)に、1個のブルーベタのパッチ301、1個のブラックベタのパッチ302、及び2個のハーフトーンのパッチ303が配列されている。また、このスラスト方向のパッチセット301〜303が、記録材Sの搬送方向に11組配列されている。各パッチは、25.7mm×25.7mmの正方形(1辺がスラスト方向と略平行)とし、記録材Sの搬送方向におけるパッチ間の間隔は9.5mmとした。そして、このチャートを、A3サイズの記録材(紙)Sのスラスト方向の中央部(スラスト方向の端部の余白は50mm以上)に形成した。なお、記録材Sの搬送方向の先端、後端にも余白が設けられている。このチャートの出力時に、デフォルトの値を0(基準)として、記録材Sの搬送方向の先端側から後端側に向けてパッチセット301〜303ごとに二次転写電圧を低い値から高い値へと、−5〜0〜+5の11レベルに切り替えた。ここでは、1レベルごとの二次転写電圧の差分は150Vとした。その結果、図17(b)のチャート上では問題ない二次転写電圧に設定しても、その後の同種の記録材Sを用いた画像形成において、記録材Sの端部に形成される画像(特にハーフトーン画像)上に画像不良が発生することがあった。
このような画像不良が発生する原因は、次のように考えられる。つまり、記録材Sの端部は、水分が抜けやすいために、記録材Sの端部だけ電気抵抗値が高くなって、転写時に異常放電が起きやすくなっていることがある。また、記録材Sの端部だけ水分を吸収して、記録材Sの端部が波打っており、その波打っている部分などの記録材Sの搬送中の挙動が不安定になって、転写時に異常放電が起きやすくなっていることがある。このとき、記録材Sの端部の画像不良は、記録材Sの端縁直近にだけ発生するのではなく、記録材Sの端縁から発生し始めて記録材Sの内側10〜30mmまでの比較的広い領域に発生することが多い。記録材Sの状態の変化が大きい場合には、記録材Sの端縁から内側に50mm程度まで内側の領域にわたって画像不良が発生することもある。記録材Sの端部から内側の上記幅の領域の記録材Sの状態が、記録材Sの端部から更に内側の領域の状態から変化しているためと考えられる。このような記録材Sを用いる場合に、記録材Sの中央に近い位置に形成されたハーフトーンのパッチでは画像不良が発生しなかった二次転写電圧でも、記録材Sの略全面にわたるような画像を形成した場合には記録材Sの端部に画像不良が発生することがある。
したがって、端部に画像不良が発生しやすい記録材Sが用いられる場合であっても、転写電圧を適切に調整することが可能な調整モードを実行可能な画像形成装置が求められている。また、画像形成に用いられる記録材Sのサイズは様々であるため、その調整モードは、構成や制御の複雑化を抑制しつつ、様々なサイズの記録材Sに対応可能であることも求められている。
4.本実施例の調整モード
次に、本実施例における調整モードについて説明する。まず、本実施例における調整モードで用いるチャートについて説明する。本実施例における調整モードでは、チャートの出力には図4、図5に示す2種類の画像データ100A、100Bを使用する。図4は、搬送方向の長さが420〜487mmの記録材Sに出力するチャートの画像データ(以下「大チャートデータ」ともいう。)100Aを示す。図5は、搬送方向の長さが210〜419mmの記録材Sに出力するチャートの画像データ(以下「小チャートデータ」ともいう。)を示す。本実施例では、チャートの画像データとしては、この図4、図5に示す2種類の画像データのみが設定されている。そして、調整モードにおいては、使用する記録材Sのサイズに応じて図4、図5に示す2種類の画像データのうちいずれかの画像データから切り取られた画像データに対応するチャートが、その記録材Sに出力される。このとき、本実施例では、図4、図5に示す画像データから記録材Sの端部の余白分(本実施例ではスラスト方向の両端部及び搬送方向の両端部)を差し引いたサイズの画像データが切り取られる。この余白は、記録材Sの端部に発生する画像不良の有無を確認するのに妨げとならない程度の小さい幅に設定されている。
なお、本実施例では、画像形成装置1が画像を形成することのできる記録材Sの最大のサイズ(最大通紙サイズ)は、13インチ×19.2インチ(縦送り)である。また、以下の説明では、記録材Sの「搬送方向」、「スラスト方向」に対応する、大チャートデータ100A、小チャートデータ100Bの方向を、それぞれ「搬送方向」、「スラスト方向」ともいう。
図4に示す大チャートデータ100Aについて更に説明する。大チャートデータ100Aは、本実施例の画像形成装置1の最大通紙サイズに対応しており、画像サイズは、ほぼ短辺(スラスト方向)13インチ(≒330mm)×長辺(搬送方向)19.2インチ(≒487mm)である。記録材Sのサイズが13インチ×19.2インチ(縦送り)以下、かつ、A3サイズ(縦送り)以上の場合は、この大チャートデータ100Aから記録材Sのサイズに応じて切り取られた画像データに対応するチャートが出力される。すなわち、記録材Sの搬送方向の長さが420〜487mmの場合には、大チャートデータ100Aが用いられる。このとき、本実施例では、先端中央基準で記録材Sのサイズに合わせて、大チャートデータ100Aから画像データが切り取られる。つまり、記録材Sの搬送方向の先端と大チャートデータ100Aの長辺方向の先端(上端)とが合わされ、記録材Sのスラスト方向の中央と大チャートデータ100Aの短辺方向の中央とが合わされて、大チャートデータ100Aから画像データが切り取られる。また、このとき、本実施例では、記録材Sの端部(本実施例ではスラスト方向の両端部及び搬送方向の両端部)に余白2.5mmをあけるように、大チャートデータ100Aから画像データが切り取られる。例えば、図6(a)は、大チャートデータ100Aに基づいてA3サイズ(縦送り)(短辺297mm×長辺420mm)の記録材Sに出力されるチャート110の模式図である。この場合は、大チャートデータ100Aから短辺292×長辺415mmのサイズの画像データが切り取られる。そして、この切り取られた画像データに対応する画像が、A3サイズの記録材Sに、先端中央基準で、端部にそれぞれ2.5mmの余白をあけるようにして出力される。
大チャートデータ100Aは、スラスト方向に、1個のブルーベタのパッチ101、1個のブラックベタのパッチ102、及び2個のハーフトーン(本実施例ではグレー(ブラックのハーフトーン))のパッチ103が配列されている。2個のハーフトーンのパッチ103は、スラスト方向の両端部にそれぞれ配置され、この2個のハーフトーンのパッチ103の間に、1個のブルーベタのパッチ101及び1個のブラックベタのパッチ102が配置されている。そして、このスラスト方向のパッチセット101〜103が、搬送方向に11組配列されている。ブルーベタのパッチ101及びブラックベタのパッチ102は、それぞれ25.7mm×25.7mmの正方形(一辺がスラスト方向と略平行)とされている。また、両端部のハーフトーンのパッチ103は、それぞれ搬送方向の幅が25.7mmとされ、スラスト方向は大チャートデータ100Aの最端部にまで伸びている。また、搬送方向におけるパッチセット101〜103間の間隔は、9.5mmとされている。この間隔に対応するチャート上の部分が2次転写部Nを通過しているタイミングで、二次転写電圧が切り替えられる。大チャートデータ100Aの搬送方向の11組のパッチセット101〜103は、記録材SのサイズがA3サイズの場合に搬送方向の長さ415mmに収まるように、搬送方向の長さ387mmの範囲に配置されている。また、本実施例では、大チャートデータ100Aは、搬送方向の11組のパッチセット101〜103のそれぞれに対応付けられて、各組のパッチセットに対して印加された二次転写電圧の設定を識別するための識別情報104が設けられている。本実施例では、この識別情報104は、スラスト方向の中央近傍、特に、スラスト方向におけるブルーベタのパッチ101とブラックベタのパッチ102との間に配置されている。また、本実施例では、11段階の二次転写電圧の設定に対応する11個(本実施例では−5〜0〜+5)の識別情報104が配置される。
パッチの大きさは、操作者が画像不良の有無を判断しやすい大きさであることが求められる。ブルーベタのパッチ101、ブラックベタのパッチ102の転写性については、パッチの大きさが小さいと判断が難しくなりやすいので、パッチの大きさは、10mm角以上が好ましく、25mm角以上の大きさであることがより好ましい。ハーフトーンのパッチ103における、二次転写電圧を高くしていった場合に発生する異常放電による画像不良は、白い点のような画像不良になることが多い。この画像不良は、ベタ画像の転写性に比べて、小さい画像でも判断しやすい傾向がある。しかし、画像が小さすぎない方が見やすいため、本実施例ではハーフトーンのパッチ103の搬送方向の幅は、ブルーベタのパッチ101、ブラックベタのパッチ102の搬送方向の幅と同じにしている。また、搬送方向におけるパッチセット101〜103間の間隔は、二次転写電圧の切り替えを行えるように設定すればよい。また、記録材Sの端部(特に、スラスト方向の端部)の余白は、記録材Sの端部(特に、スラスト方向の端部)に発生する画像不良の有無を確認するのに妨げとならないように設定すればよい。前述のように、記録材Sの端部に発生する画像不良は、端縁から内側に10〜30mmの領域、大きい場合には内側に50mm程度の領域に発生するものであり、例えば本実施例における余白2.5mmといった狭い幅の領域にのみ発生するものではない。したがって、記録材Sの端部(特に、スラスト方向の端部)に、例えば2〜10mm程度の余白を設けてチャートを出力しても、記録材Sの端部の画像不良を十分に確認することができる。なお、記録材Sの搬送方向の先端及び後端の近傍(例えば端縁から内側に20〜30mm程度の範囲)には、パッチが形成されないようにすることが好ましい。これは、次のような理由によるものである。つまり、記録材Sの搬送方向の端部のうち、スラスト方向の端部には発生せずに、先端又は後端にだけ発生する画像不良がある場合がある。この場合に、二次転写電圧を振ったために画像不良が発生したのか否かを判断しにくくなることがあるからである。本実施例では、ハーフトーンのパッチ103は、記録材Sの幅方向に関して、端縁から内側50mm以内のエリアに形成される。尚、好ましくは、記録材Sの幅方向に関して、端縁から内側10mm〜30mm以内のエリアに形成される。但し、記録材Sの搬送方向の先端及び後端近傍(端縁から内側に30mmのエリア)を除く。また、本実施例では、ハーフトーンとはベタパッチのトナー載り量を100%としたとき、10%から80%のトナー載り量である。
上述の大チャートデータ100Aを用いると、記録材Sのサイズが13インチよりも小さくなるにつれて(ただし、A3サイズ以上)、スラスト方向の両端部のハーフトーンのパッチ103のスラスト方向の長さが小さくなっていく(図7(a))。また、上述のような大チャートデータ100Aを用いると、記録材Sのサイズが13インチよりも小さくなるにつれて(ただし、A3サイズ以上)、搬送方向の後端の余白が小さくなっていく(図7(a))。なお、ハーフトーンのパッチ103の搬送方向の長さは、記録材Sのサイズにかかわらず略一定である。また、ブルーベタのパッチ101、ブラックベタのパッチ102の大きさは、記録材Sのサイズにかかわらず略一定である。
このように、本実施例では、記録材Sのサイズが変わってもパッチの大きさが変わらない内側パッチ(第1のパッチ)は、ブルーベタのパッチ101とブラックベタのパッチ102である。また、本実施例では、記録材Sのサイズが変わるとパッチの大きさが変わる端部パッチ(第2のパッチ)は、グレー(ブラックのハーフトーン)のパッチ103である。なお、ベタ画像は、最大濃度レベルの画像である。
図5に示す小チャートデータ100Bについて更に説明する。小チャートデータ100Bは、A3サイズよりも小さいサイズに対応しており、画像サイズは、ほぼ長辺(スラスト方向)13インチ(≒330mm)×短辺(搬送方向)210mmである。記録材SのサイズがA5(短辺148mm×長辺210mm)(縦送り)以上、かつ、A3サイズ(縦送り)よりも小さい場合は、この小チャートデータ100Bから記録材Sのサイズに応じて切り取られてた画像データに対応するチャートが出力される。すなわち、記録材Sの搬送方向の長さが210〜419mmの場合には、小チャートデータ100Bが用いられる。このとき、本実施例では、先端中央基準で記録材Sのサイズに合わせて、小チャートデータ100Bから画像データが切り取られる。つまり、記録材Sの搬送方向の先端と小チャートデータ100Bの短辺方向の先端(上端)とが合わされ、記録材Sのスラスト方向の中央と小チャートデータ100Bの長辺方向の中央とが合わされて、小チャートデータ100Bから画像データが切り取られる。また、このとき、本実施例では、大チャートデータ100Aの場合と同様、記録材Sの端部(本実施例ではスラスト方向の両端部及び搬送方向の両端部)に余白2.5mmをあけるように、小チャートデータ100Bから画像データが切り取られる。後述するように、小チャートデータ100Bは、搬送方向の長さが大チャートデータ100Aよりも小さいため、搬送方向に配列できるパッチセットの数が大チャートデータ100Aよりも少なくなる。そのため、小チャートデータ100Bが用いられる場合には、パッチの個数を増やすために、2枚のチャートが出力される。例えば、記録材SのサイズがB4サイズ(短辺257mm×長辺364mm)(縦送り)の場合は、図6(b)に示すようなチャート110が2枚出力される。
小チャートデータ100Bは、大チャートデータ100Aと同様のパッチを有して構成される。つまり、小チャートデータ100Bは、スラスト方向に、1個のブルーベタのパッチ101、1個のブラックベタのパッチ102、及び2個のハーフトーンのパッチ103が配列されている。2個のハーフトーン(本実施例ではグレー)のパッチ103は、スラスト方向の両端部にそれぞれ配置され、この2個のハーフトーンのパッチ103の間に、1個のブルーベタのパッチ101及び1個のブラックベタのパッチ102が配置されている。そして、このスラスト方向のパッチセット101〜103が、搬送方向に5組配列されている。ブルーベタのパッチ101及びブラックベタのパッチ102は、それぞれ25.7mm×25.7mmの正方形(一辺がスラスト方向と略平行)とされている。また、両端部のハーフトーンのパッチ103は、それぞれ搬送方向の幅が25.7mmとされ、スラスト方向は小チャートデータ100Bの最端部にまで伸びている。また、搬送方向におけるパッチセット101〜103間の間隔は、9.5mmとされている。この間隔に対応するチャートの部分が2次転写部Nを通過しているタイミングで、二次転写電圧が切り替えられる。小チャートデータ100Bの搬送方向の5組のパッチセット101〜103は、搬送方向の長さ167mmの範囲に配置されている。また、本実施例では、小チャートデータ100Bは、搬送方向の5組のパッチセット101〜103のそれぞれに対応付けられて、各組のパッチセットに対して印加された二次転写電圧の設定を識別するための識別情報104が設けられている。本実施例では、この識別情報104は、スラスト方向の中央近傍、特に、スラスト方向におけるブルーベタのパッチ101とブラックベタのパッチ102との間に配置されている。上述のように、小チャートデータ100Bが用いられる場合、2枚のチャートが出力される。そして、1枚目には、図5(a)に示す小チャートデータ100Bに基づいて、より低い5段階の二次転写電圧の設定に対応する5個(本実施例では−4〜0)の識別情報104が配置される。また、2枚目には、図5(b)に示す小チャートデータ100Bに基づいて、より高い5段階の二次転写電圧の設定に対応する5個(本実施例では1〜5)の識別情報104が配置される。
上述の小チャートデータ100Bを用いると、記録材Sのサイズが小さくなるにつれて(ただしA3サイズよりも小さく、かつ、A5サイズ以上)、スラスト方向の両端部のハーフトーンのパッチ103のスラスト方向の長さが小さくなっていく(図7(b))。また、上述のような小チャートデータ100Bを用いると、記録材Sのサイズが小さくなるにつれて(ただし、A3サイズよりも小さく、かつ、A5サイズ以上)、搬送方向の後端の余白が小さくなっていく(図7(b))。なお、ハーフトーンのパッチ103の搬送方向の長さは、記録材Sのサイズにかかわらず略一定である。また、ブルーベタのパッチ101、ブラックベタのパッチ102の大きさは、記録材Sのサイズにかかわらず略一定である。
なお、本実施例では、定型サイズだけでなく、例えば操作者が操作部70や外部機器200から入力して指定することで、任意のサイズ(A5サイズ以上、13インチ×19.2インチ以下)の記録材Sを用いることもできる。
次に、図8〜図10を用いて調整モードの動作について説明する。図8は、本実施例における調整モードの手順の概略を示すフローチャート図である。また、図9は、本実施例における調整プロセス部31dの動作を説明するための機能ブロック図である。また、図10は、調整モードにおいて二次転写電圧などの変更を行う設定画面の一例を示す模式図である。ここでは、操作者が画像形成装置1の操作部70を介して調整モードを実行させる場合を例として説明する。
まず、操作者によって、調整モードで使用する記録材Sの種類及びサイズが選択される(S101)。このとき、調整プロセス部31dは、設定受付部51によって、記録材Sの種類、サイズの設定画面(図示せず)を操作部70に表示させる。設定受付部51は、操作部70において操作者によって指定された記録材Sの種類、サイズの情報を取得する。なお、記録材Sの種類、サイズの情報は、例えば、記録材Sを収納する給送部のカセットが選択されることで、予めそのカセットと関係付けられて設定されている記録材Sの種類、サイズの情報が取得されるなどしてもよい。
次に、操作者によって、チャートの出力時に印加される二次転写電圧の中心電圧値、及びチャートを記録材Sの片面に出力するか両面に出力するかが設定される(S102)。本実施例では、両面プリントにおけるオモテ面(1面目)、ウラ面(2面目)への二次転写時の二次転写電圧をそれぞれ調整できるように、調整モードにおいても記録材Sの両面にチャートを出力できるようになっている。そのため、本実施例では、チャートを記録材Sの片面に出力するか又は両面に出力するかを選択できるようになっており、また二次転写電圧の中心電圧値も記録材Sのオモテ面とウラ面とのそれぞれに対して設定できるようになっている。このとき、調整プロセス部31dは、設定受付部51によって、図10に示すような調整モードの設定画面80を操作部70に表示させる。この設定画面80は、記録材Sのオモテ面とウラ面とに対する二次転写電圧の中心電圧値を設定するための電圧設定部81を有する。また、設定画面80は、チャートを記録材Sの片面に出力するか両面に出力するかを選択するための出力面選択部82を有する。さらに、設定画面80は、チャートの出力を指示するための出力指示部(テストページ出力ボタン)83、設定を確定するための確定部84(OKボタン84a又は適用ボタン84b)、設定の変更をキャンセルするためのキャンセルボタン85などを有する。電圧設定部81において調整値0が選択された場合には、現在選択されている記録材Sについて予め設定されている設定電圧(より詳細には記録材分担電圧Vp)が選択される。そして、調整値0が選択されると、大チャートデータが用いられる場合には−5〜0〜+5の11組のパッチセット、小チャートデータが用いられる場合には−4〜0〜+5の10組のパッチセットが、それぞれ二次転写電圧が切り替えられて出力される。本実施例では、この1レベルごとの二次転写電圧の差分は150Vとされている。設定受付部51は、操作部70において設定画面80を介して設定された中心電圧値などの設定に関する情報を取得する。
次に、操作者によって、設定画面80の出力指示部83が選択されることによって、チャートが出力される(S103)。このとき、調整プロセス部31dは、切り取り部52によって、設定受付部51が取得した記録材Sのサイズの情報に基づき、チャート記憶部31gに予め記憶されているチャートデータ(図4、図5)を切り取って、画像形成プロセス部31c(図2)に送る。また、調整プロセス部31dは、設定受付部51が取得した中心電圧値の情報、片面か両面かの情報を画像形成プロセス部31cに送る。そして、調整プロセス部31dは、設定受付部51がチャートの出力指示を受け付けると、画像形成プロセス部31cに指示してチャートを出力させる。画像形成プロセス部31cは、調整プロセス部31dから取得した情報、二次転写電圧記憶部31fに記憶されている記録材分担電圧Vpの情報などを用いて所定の制御を行ってチャートを出力させる。例えば、坪量350g/m2のA3サイズの両面コート紙が選択され、現在の環境における予め設定された記録材分担電圧Vpが2500Vであったとする。この場合、大チャートデータが用いられ、1750Vから3250Vまで150Vごとに二次転写電圧が切り替えられて、11組のパッチセットが1枚のチャートに出力される。
次に、操作者によって、出力されたチャートの観察に基づいて最適な二次転写電圧の判断が行われる(S104、S105)。二次転写電圧を低い値から高くしていった場合に、ブルー(2次色)ベタのパッチ101を適切に転写することができる電圧値から二次転写電圧の下限値を決めることができる。また、二次転写電圧を更に高くしていった場合に、ブラックベタのパッチ102、ハーフトーンのパッチ103に二次転写電圧が高いことによる画像不良が発生する電圧値から二次転写電圧の上限値を決めることができる。そして、この上限値と下限値との間の範囲で二次転写電圧を設定することができる。典型的には、操作者は、各パッチ101、102、103のいずれにも画像不良(画像濃度ムラなど)が生じておらず(あるいは発生の程度が最も低く)、いずれのパッチも十分な濃度で転写されているパッチセットの識別情報104を確認する。その確認した識別情報104が「0」であれば、中心電圧値の変更は不要である。一方、その確認した識別情報104が「0」以外であれば、設定画面80において中心電圧値の設定を変更することで、二次転写電圧(より詳細には記録材分担電圧Vp)を変更することができる。また、出力されたチャートに好ましい設定電圧がない場合は、設定画面80において中心電圧値の設定を変更して、再度チャートを出力することができる。
つまり、操作者は、最適な二次転写電圧の設定電圧がないと判断した場合には、S102に戻り、中心電圧値の設定の変更、再度のチャートの出力、チャートの観察に基づく最適な二次転写電圧の判断を行うことができる(S102〜S105)。一方、操作者は、最適な二次転写電圧の設定電圧(具体的にはパッチセットに付された識別情報104)があると判断した場合には、設定画面80の電圧設定部81の値をその設定電圧に対応する値に変更(又は変更の必要の場合は維持)する(S106)。そして、操作者は、操作画面80の確定部84を選択することで(S107)、調整モードを終了させる。このとき、調整プロセス部31dは、設定変更部53により、次のようにして二次転写電圧記憶部31fに二次転写電圧の設定電圧の情報を記憶させる。つまり、設定変更部53は、設定画面80の確定部84が選択された際に設定画面80の電圧設定部81で設定されている中心電圧値に対応する二次転写電圧値(より詳細には記録材分担電圧Vp)を、現在選択されている記録材Sに対して用いる設定値とする。そして、設定変更部53は、その設定値を二次転写電圧記憶部31fに記憶させる。
なお、画像形成装置1が備えた二次転写電圧の調整値±20レベルに対応する41個のパッチセットのすべてを一度に連続して複数枚のチャートとして出力するフル出力モードを実行可能としてもよい。
また、ここでは、画像形成装置1の操作部70を介して操作者による操作が行われて、調整モードが実行される場合を例としたが、パーソナルコンピュータなどの外部機器200を介して操作が行われて、調整モードが実行されるようになっていてもよい。この場合、外部機器200にインストールされた画像形成装置1のドライバプログラムによって外部機器200の表示部に表示される設定画面を介して上記同様の設定を行うことができる。
本実施例に従う調整モードを様々な記録材Sに対して実行したところ、チャートにおいて記録材Sのスラスト方向の端部の画像不良を確認できる場合があった。そして、その画像不良を抑制するように二次転写電圧の設定電圧を変更したところ、その後の同種の記録材Sを用いた画像形成においては記録材Sのスラスト方向の端部の画像不良を抑制できていることが確認できた。
なお、パッチの色について、本実施例では、ブルーベタ、ブラックベタ、グレー(ブラックのハーフトーン)を用いたが、これに限定されるものではない。例えば、ブルーの代わりに、2次色のレッドやグリーンを用いたり、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの単色ベタを用いたりすることができる。また、ブラックのハーフトーンの代わりに、その画像形成装置で画像不良が発生しやすい色や濃度のパッチを用いてもよい。
また、本実施例では、パッチの配置や大きさを検討した結果、チャートを出力する記録材SがA5の縦送り(スラスト方向の幅が148mm)の場合は、ハーフトーンのパッチ103がなくなる設定となっていた。そして、記録材Sの端部は、ハーフトーンのパッチ103ではなく、ブルーベタのパッチ101とブラックベタのパッチ102となる設定となっていた。このように、記録材Sのスラスト方向の端部のパッチがブルーベタやブラックベタなどの色であっても、ハーフトーンと比較して難しくはなるが、記録材Sのスラスト方向の端部の画像不良をある程度判断することができる。このように、画像形成装置1で使用可能な記録材Sのうち一部のサイズの記録材Sを用いてチャートを出力する場合に、記録材Sのサイズが変わるとパッチの大きさが変わる端部パッチがなくなるような設定になっていてもよい。
また、本実施例では、チャートの搬送方向の両端部に余白が設けられていたが、チャートの搬送方向の一方の端部又は両方の端部に余白が設けられていなくてもよい。また、本実施例では、チャートのスラスト方向の両端部に余白が設けられていたが、チャートのスラスト方向の一方の端部又は両方の端部に余白が設けられていなくてもよい。
また、本実施例では、チャートのスラスト方向の端部のパッチ(上記実施例ではグレーのパッチ)は、同方向の両端部に設けられていた。ただし、画像形成装置は、記録材のスラスト方向の一方の端部に画像不良が発生する場合には他方の端部にも画像不良が発生することが多く、一方の端部に画像不良が発生しない場合には他方の端部にも画像不良が発生しないことが多い場合がある。このような場合には、チャートのスラスト方向の端部のパッチ(上記実施例におけるグレーのパッチに対応)は、チャートのスラスト方向の一方の端部にのみ設けられていてもよい。
このように、本実施例の画像形成装置1は、記録材Sの搬送方向に沿って形成され、転写電圧を異ならせて転写された複数の試験用トナー像を有する所定のチャート110を出力する出力モードを制御する制御部30を有する。本実施例では、複数の試験用トナー像は、記録材Sの搬送方向と直交するスラスト方向の端部に形成されるとともに、転写電圧を異ならせて転写されたハーフトーンからなる複数の端部試験用トナー像103を有する。そして、制御部30は、最大サイズのチャートを出力する場合において、記録材Sのスラスト方向に関して端縁から50mm以内の領域に複数の端部試験用トナー像103を形成する。制御部30は、最大サイズのチャートを出力する場合において、好ましくは記録材Sのスラスト方向に関して端縁から30mm以内の領域に複数の端部試験用トナー像103を形成する。また、本実施例では、複数の端部試験用トナー像103は、スラスト方向において、記録材Sの端縁又は記録材Sの端縁から内側に10mm以下の位置まで連続して形成される。また、制御部30は、出力モードにおいて、試験用トナー像を識別するための識別情報104を出力可能である。この識別情報は、端部試験用トナー像103よりも記録材Sのスラスト方向に関して内側に形成されている。
また、本実施例では、制御部30は、チャート110の出力に用いられる記録材Sのスラスト方向の長さに応じて、複数の端部試験用トナー像103のスラスト方向の長さを変化させる。また、本実施例では、制御部30は、チャート110の出力に用いられる記録材Sのサイズにかかわらず、複数の端部試験用トナー像103の搬送方向の長さを略一定とする。また、本実施例では、画像形成装置1は、チャート110を出力するための画像データであるチャートデータ100A、100Bを記憶する記憶部(チャート記憶部)31gを有する。そして、制御部30は、チャート110の出力に用いられる記録材Sのサイズに応じて、チャートデータ100A、100Bから切り取った領域の画像データに基づいてチャート110を出力させる。このとき、チャートデータ100A、100Bから切り取られる領域は、チャート110の出力に用いられる記録材Sのスラスト方向の長さが第1の長さの場合よりも、第1の長さより短い第2の長さの場合の方が、スラスト方向においてより内側の領域である。また、本実施例では、チャート110は、記録材Sのスラスト方向における端部試験用トナー像103よりも内側に形成される別の試験用トナー像である中央部試験用トナー像101、102を有する。本実施例では、制御部30は、チャート110の出力に用いられる記録材Sのサイズにかかわらず、中央部試験用トナー像101、102の大きさを略一定とする。本実施例では、端部試験用トナー像103は、中央部試験用トナー像101、102よりも濃度が低い画像である。また、本実施例では、中央部試験用トナー像101、102は、ベタ画像である。また、本実施例では、中央部試験用トナー像101は、2次色画像である。
以上説明したように、本実施例によれば、調整モードは、記録材Sのスラスト方向の中央部に配置された内側パッチと、端部に配置された端部パッチと、を有するチャートを出力して行われる。そのため、本実施例によれば、端部に画像不良が発生しやすい記録材Sが用いられる場合であっても、二次転写電圧を適切に調整することができる。また、本実施例によれば、調整モードは、予め設定された2種類のチャートの画像データから切り取った画像データに基づいて様々なサイズの記録材Sに内側パッチと端部パッチとを備えたチャートを出力することができる。そのため、本実施例によれば、調整モードは、比較的簡易な構成及び制御により、様々なサイズの記録材に対応可能である。
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
実施例1では、調整モードにおいて出力されたチャートはユーザーやサービス担当者などの操作者によって観察されて、その観察結果に応じて操作者によって二次転写電圧の設定電圧を調整する指示が入力された。これに対し、本実施例では、チャートが読み取り手段によって読み取られて、その結果に基づいて画像形成装置1の制御部30によって二次転写電圧の設定電圧が調整される。なお、本実施例では、操作者により設定電圧を更に調整することも可能とされている。
図11は、本実施例の画像形成装置1の概略断面図である。本実施例の画像形成装置1は、記録材Sの搬送方向において定着部46の下流側に、記録材S上の画像を読み取る読み取り手段としてのインラインの画像センサ90を有する。本実施例では、画像センサ90は、記録材S上の画像、特に、チャート上のパッチの画像濃度を1200dipで読み取る(すなわち、光学的に取得した情報を電気信号に変換する)ことができるように構成されている。
図12、図13を用いて調整モードの動作について説明する。図12は、本実施例における調整モードの手順の概略を示すフローチャート図である。また、図13は、本実施例における調整プロセス部31dの動作を説明するための機能ブロック図である。ここでは、操作者が画像形成装置1の操作部70を介して調整モードを実行させる場合を例として説明する。
まず、調整プロセス部31は、実施例1と同様にして、操作部70における、操作者による、調整モードで使用する記録材Sの種類及びサイズの設定を受け付ける(S201)。次に、調整プロセス部31は、実施例1と同様にして、操作部70における、操作者による、チャートの出力時に印加される二次転写電圧の中心電圧値、及びチャートを記録材Sの片面に出力するか両面に出力するかの設定を受け付ける(S202)。次に、調整プロセス部31は、実施例1と同様にして、操作部70における、操作者による、チャートの出力指示を受け付けると、チャートを出力させる(S203)。上記操作者による設定や指示は、実施例1と同様の図10に示すような操作部70に表示される設定画面80を介して行われ、設定受付部51により受け付けられる。
次に、調整プロセス部31dは、判断部54において、画像センサ90によって読み取られたチャートの情報を取得する(S204)。そして、調整プロセス部31dは、判断部54において、チャート上の各パッチの画像濃度に関する情報に基づいて、最適な二次転写電圧の設定電圧を決定する(S205)。このとき、判断部54は、読み取られたチャートの画像の各パッチを切り出して、各パッチの画像濃度の変化を判断する。ハーフトーンのパッチ103については、記録材Sのサイズに連動してチャート上のハーフトーンのパッチ103の位置の画像を切り出して、ハーフトーンの画像濃度の変化を判断するようになっている。例えば、判断部54は、各パッチセット101〜103のうち各パッチセット101〜103を構成する各パッチの画像濃度の変化が最も小さい二次転写電圧の設定電圧を最適な二次転写電圧の設定電圧として決定することができる。
次に、調整プロセス部31は、決定した二次転写電圧の設定電圧(中心電圧値)を操作部70に表示される設定画面80に反映させる(S206)。なお、出力されたチャートは、操作者が確認することができる。したがって、操作者の目視による判断結果が上記設定画面80に反映された判断部54による判断結果と異なる場合には、操作者は設定画面80を介して判断部54が決定した二次転写電圧の設定電圧(中心電圧値)を変更することができる。また、出力されたチャートに最適な二次転写電圧の設定電圧が見当たらない場合には、操作者は実施例1と同様にして中心電圧値を変更して再度チャートを出力させることもできる。
次に、調整プロセス部31dは、判断部54により決定された二次転写電圧の設定電圧(中心電圧値)が維持され又は変更されて、操作者が設定画面80の確定部84を選択することによる確定指示を設定受付部51が受け付けると、調整モードを終了させる。このとき、調整プロセス部31dは、設定変更部53により、次のようにして二次転写電圧記憶部31fに二次転写電圧の設定電圧の情報を記憶させる。つまり、設定変更部53は、確定指示が入力された際に設定画面80の電圧設定部81で設定されている中心電圧値に対応する二次転写電圧値(より詳細には記録材分担電圧Vp)を、現在選択されている記録材Sに対して用いる設定値とする。そして、設定変更部53は、その設定値を二次転写電圧記憶部31fに記憶させる。
なお、実施例1の場合と同様、画像形成装置1が備えた二次転写電圧の調整値±20レベルに対応する41個のパッチセットのすべてを一度に連続して複数枚のチャートとして出力するフル出力モードを実行可能としてもよい。また、チャートの読み取りには、画像形成装置1が複写機能のために備えている原稿読取装置を用いてもよい。
このように、本実施例では、画像形成装置1は、チャート110を読み取る読み取り手段90を有する。そして、本実施例では、制御部30は、読み取り手段90によって読み取られたチャート110の試験用トナー像の濃度に関する情報に基づいて転写電圧の調整を行う。
以上説明したように、本実施例によれば、実施例1と同様の効果が得られると共に、操作者によるチャートの判断の作業負担を軽減することができる。
[実施例3]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1の画像形成装置のものと同じである。したがって、本実施例の画像形成装置において、実施例1の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、実施例1と同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
図14(a)は、本実施例における調整モードで使用する大チャートデータ100Aの模式図である。本実施例における大チャートデータ100Aは、スラスト方向の両端部に配置されたハーフトーンのパッチ103が実施例1における大チャートデータ100Aとは異なる。本実施例の大チャートデータ100Aでは、ハーフトーンのパッチ103は、25.7mm×25.7mmの正方形(一辺がスラスト方向と略平行)とされている。なお、本実施例における、大チャートデータ100Aの画像サイズや、ブルーベタのパッチ101、ブラックベタのパッチ102、識別情報104などの設定は、実施例1の大チャートデータ100Aと実質的に同じである。
図14(b)は、図14(a)の大チャートデータ100Aに基づいてA3サイズ(縦送り)の記録材Sに出力されるチャート110の模式図である。本実施例においても、実施例1と同様に、基本的には大チャートデータ100Aが記録材Sのサイズに応じて先端中央基準で切り取られて用いられる。ただし、本実施例では、図14(b)に示すように、記録材Sのサイズに応じて、記録材Sのスラスト方向の中央(チャートデータのスラスト方向の中央)に対するハーフトーンのパッチ103の相対位置が変化する。つまり、13インチ×19インチ(縦送り)の記録材Sを用いる場合の、スラスト方向における中央からハーフトーンのパッチ103までの距離をLaとする(図14(a))。また、A3サイズ(縦送り)の記録材Sを用いる場合の、スラスト方向における中央からハーフトーンのパッチ103までの距離をLb(図14(b))とする。このとき、A3サイズの記録材Sを用いる場合、Lb<Laとなるように、大チャートデータ100Aにおけるハーフトーンのパッチ103が、記録材Sのスラスト方向の端部に寄せるように移動させられてチャートが出力される。
図15(a)、(b)は、本実施例における調整モードで使用する小チャートデータ100Bの模式図である。本実施例における小チャートデータ100Bは、スラスト方向の両端部に配置されたハーフトーンのパッチ103が実施例1における小チャートデータ100Bとは異なる。上記本実施例における大チャートデータ100Aと同様、本実施例の小チャートデータ100Bでは、ハーフトーンのパッチ103は、25.7mm×25.7mmの正方形(一辺がスラスト方向と略平行)とされている。なお、本実施例における、小チャートデータ100Bの画像サイズや、ブルーベタのパッチ101、ブラックベタのパッチ102、識別情報104などの設定は、実施例1の小チャートデータ100Bと実質的に同じである。図15(a)は、1枚目のチャートの出力に用いられるデータを示し、図15(b)は2枚目のチャートの出力に用いられるデータを示す。
図15(c)は、図15(a)の小チャートデータ100Bに基づいてB4サイズ(縦送り)の記録材Sに出力されるチャート110の模式図である。また、図15(d)は、図15(b)の小チャートデータ100Bに基づいてA4サイズ(縦送り)の記録材に出力されるチャート110の模式図である。本実施例においても、実施例1と同様に、基本的には小チャートデータ100Bが記録材Sのサイズに応じて先端中央基準で切り取られて用いられる。ただし、本実施例では、図15(c)、(d)に示すように、記録材Sのサイズに応じて、記録材Sのスラスト方向の中央(チャートデータのスラスト方向の中央)に対するハーフトーンのパッチ103の相対位置が変化する。つまり、B4サイズ(縦送り)の記録材Sを用いる場合における、スラスト方向における中央からハーフトーンのパッチ103までの距離をLcとする(図15(c))。また、A4サイズ(縦送り)の記録材Sを用いる場合における、スラスト方向における中央からハーフトーンのパッチ103までの距離をLd(図15(d))とする。なお、小チャートデータ100Bにおける、スラスト方向における中央からハーフトーンのパッチ103までの距離をLaとする。このとき、B4サイズの記録材Sを用いる場合は、Lc<Laとなるように、小チャートデータ100Bにおけるハーフトーンのパッチ103が、記録材Sのスラスト方向の端部に寄せるように移動させられてチャートが出力される。同様に、A4サイズの記録材Sを用いる場合は、Ld(<Lc<La)となるようにしてチャートが出力される。
なお、本実施例においても、実施例1と同様に、チャートの端部に余白が設けられていてよい。
本実施例のチャートを用いる場合も、調整モードの動作は、実施例1又は実施例2と同様とすることができる。図16は、本実施例における調整プロセス部31dの動作を説明するための機能ブロック図である。本実施例では、調整プロセス部31dは、実施例1、2におけるチャートデータを切り取る切り取り部52の代わりに、チャートデータにおけるハーフトーンのパッチ103を記録材Sのサイズに応じて移動させる移動部55を有する。
このように、本実施例では、制御部30は、チャートの出力に用いられる記録材Sのサイズに応じて、中央部試験用トナー像101、102と端部試験用トナー像103の間隔を変更する。本実施例では、制御部30は、チャート110の出力に用いられる記録材Sのスラスト方向の長さに応じて、スラスト方向における記録材Sの中央に対する端部試験用トナー像103の相対位置を変化させる。本実施例では、制御部30は、チャート110の出力に用いられる記録材Sのサイズにかかわらず、端部試験用トナー像103の大きさを略一定とする。また、本実施例では、画像形成装置1は、チャート110を出力するための画像データであるチャートデータ100A、100Bを記憶する記憶部31gを有する。そして、制御部30は、チャート110の出力に用いられる記録材Sのサイズに応じて、チャートデータ100A、100Bにおける端部試験用トナー像103を記録材Sのスラスト方向の端部に寄せるように移動させた画像データに基づいてチャートを出力させる。このとき、チャートデータ100A、100Bにおける端部試験用トナー像103が移動させられる距離は、チャート110の出力に用いられる記録材Sのスラスト方向の長さが第1の長さの場合のよりも、第1の長さより短い第2の長さの場合の方が大きい。
以上説明したように、本実施例によれば、実施例1又は実施例2と同様の効果が得られると共に、チャートの出力によるトナーの消費量を低減することができ、画像形成装置1のランニングコストの低減に有利である。また、本実施例によれば、操作者が見るべきパッチの領域が狭くなることなどにより、画像不良の有無を判断しやすくなる場合がある。