以下では、実施形態に係る車両用駆動伝達装置100について図面を参照して説明する。車両用駆動伝達装置100は、例えば、内燃機関及び回転電機を複数の車輪の駆動力源とするハイブリッド自動車、又は回転電機を複数の車輪の駆動力源とする電気自動車に搭載される。
図1及び図2に示すように、車両用駆動伝達装置100は、駆動力源と一対の車輪Wとの間で駆動力の伝達を行う。車両用駆動伝達装置100は、ケース1と、減速装置2と、差動歯車装置3と、を備えている。ケース1は、減速装置2及び差動歯車装置3を収容する。減速装置2は、駆動力源の側から伝達される回転を減速して一対の車輪Wの側へ伝達する。本実施形態では、減速装置2は、第1遊星歯車機構21と、第1遊星歯車機構21よりも動力伝達経路の下流側に配置された第2遊星歯車機構22と、を含んでいる。差動歯車装置3は、減速装置2と同軸上に配置され、減速装置2から伝達される駆動力を一対の車輪Wに分配する。本実施形態では、差動歯車装置3は、中間軸5を介して一方の車輪Wに駆動連結された第1ドライブシャフトDS1と、他方の車輪Wに駆動連結された第2ドライブシャフトDS2とに、減速装置2から伝達される駆動力を分配する。
ここで、本願において「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。なお、伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等が含まれていても良い。ただし、下記において説明する減速装置2及び差動歯車装置3において、各回転要素について「駆動連結」という場合には、当該装置が備える3つ以上の回転要素に関して互いに他の回転要素を介することなく駆動連結されている状態を指すものとする。
本実施形態では、回転電機MGが駆動力源として機能する。なお、本明細書において「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
本実施形態では、回転電機MGが減速装置2及び差動歯車装置3と同軸上に配置されている。そのため、回転電機MGの軸方向は、車両用駆動伝達装置100の回転軸の軸方向と等価であり、回転電機MGの径方向は、車両用駆動伝達装置100の回転軸の径方向と等価である。よって、回転電機MGの軸方向を車両用駆動伝達装置100の「軸方向L」とし、回転電機MGの径方向を車両用駆動伝達装置100の「径方向R」とする。また、軸方向Lにおいて、減速装置2に対して回転電機MG側を「軸方向第1側L1」とし、減速装置2に対して差動歯車装置3側を「軸方向第2側L2」とする。更に、径方向Rにおいて、回転電機MGの軸心とは反対側を「径方向外側R1」とし、回転電機MGの軸心側を「径方向内側R2」とする。
ケース1は、減速装置2及び差動歯車装置3を収容している。本実施形態では、ケース1は、更に回転電機MGも収容している。そして、ケース1の内部において、軸方向第1側L1から軸方向第2側L2へ向けて、回転電機MG、減速装置2、差動歯車装置3が記載の順に並んで配置されている。
本実施形態では、ケース1は、軸方向Lの両側が開口した筒状の第1ケース部11と、第1ケース部11の軸方向第2側L2の開口部を覆うように配置される有底筒状の第2ケース部12と、第1ケース部11の軸方向第1側L1の開口部を覆うように配置される円盤状の第1カバー部13と、第1カバー部13に対して軸方向第1側L1に隣接して配置される円盤状の第2カバー部14と、を有している。第1ケース部11と第2ケース部12とは、互いにボルト等の連結部材によって連結されている。第1ケース部11と第1カバー部13とは、互いにボルト等の連結部材によって連結されている。第1カバー部13と第2カバー部14とは、互いにボルト等の連結部材によって連結されている。
本実施形態では、ケース1は、減速装置2を支持する第1支持部15及び第2支持部16を更に備えている。第1支持部15及び第2支持部16は、ケース1に連結されている。図示の例では、第1支持部15は、第1ケース部11と一体的に形成されている。また、第2支持部16は、ボルト等の連結部材によって第1ケース部11に連結されている。
第1支持部15は、第1遊星歯車機構21の径方向外側R1を囲むように配置され、第1遊星歯車機構21を支持している。第1支持部15は、回転電機MGと第1遊星歯車機構21との間において、径方向R及び周方向に沿って延在するように設けられている。本例では、第1支持部15は、周方向の全域にわたって連続的に形成されている。
第2支持部16は、第1支持部15に対して軸方向第2側L2に隣接して配置されている。第2支持部16は、第2遊星歯車機構22の径方向外側R1を囲むように配置され、減速装置2の第2遊星歯車機構22を支持している。第2支持部16は、周方向に沿って延在するように設けられている。本例では、第2支持部16は、周方向の全域にわたって連続的に形成されている。ただし、第2支持部16における第1ケース部11に連結される部分は、第2支持部16の周方向の1箇所又は複数箇所に形成されている。
回転電機MGは、ステータStと、当該ステータStに対して径方向内側R2に配置されたロータRoと、を備えている。ステータStは、ケース1に支持されたステータコアStcと、当該ステータコアStcに巻装されたコイルCと、を有している。コイルCは、ステータコアStcから軸方向Lの両側(軸方向第1側L1及び軸方向第2側L2)のそれぞれに突出するコイルエンド部Ceが形成されるように、ステータコアStcに巻装されている。本実施形態では、ステータコアStcは、ボルト等の連結部材によって第1ケース部11に連結されている。ロータRoは、ステータコアStcに対して回転可能なロータコアRocと、当該ロータコアRoc内に配置された永久磁石PMと、を有している。本実施形態では、ロータコアRocの内周面に、軸方向Lに沿って延在するロータ軸Rosが連結されている。
ロータ軸Rosは、円筒状に形成されている。ロータ軸Rosは、ロータコアRocの軸方向Lの両端面から突出するように配置されている。ロータ軸RosにおけるロータコアRocよりも軸方向第1側L1に突出した部分は、第1ロータ軸受61を介して、第1カバー部13に回転可能に支持されている。ロータ軸RosにおけるロータコアRocよりも軸方向第2側L2に突出した部分は、第2ロータ軸受62を介して、第1支持部15に回転可能に支持されている。
減速装置2は、駆動力源(ここでは、回転電機MG)の側から伝達される回転を減速して差動歯車装置3へ伝達する。上述したように、本実施形態では、減速装置2は、第1遊星歯車機構21と、第2遊星歯車機構22と、を含んでいる。
第1遊星歯車機構21は、第1サンギヤS21と、第1リングギヤR21と、第1キャリヤC21と、を有している。
第1サンギヤS21は、第1遊星歯車機構21の入力要素であり、回転電機MGのロータ軸Rosと一体的に回転するように連結されている。第1リングギヤR21は、第1支持部15に、周方向へ回転不能に支持されている。第1キャリヤC21は、第1遊星歯車機構21の出力要素であり、第1遊星歯車機構21の軸心(第1サンギヤS21)を中心として回転する。本実施形態では、第1キャリヤC21は、ブッシュ等の滑り軸受を介して中間軸5に対して回転可能に支持されている。
第2遊星歯車機構22は、第1遊星歯車機構21に対して軸方向第2側L2に隣接して配置されている。第2遊星歯車機構22は、第2サンギヤS22と、第2リングギヤR22と、第2キャリヤC22と、を有している。
第2サンギヤS22は、第2遊星歯車機構22の入力要素である。本実施形態では、第2サンギヤS22は、第1遊星歯車機構21の第1キャリヤC21とスプライン係合によって連結されている。なお、第2サンギヤS22と第1キャリヤC21とが、一つの部品で構成され、或いは溶接等により接合されて、一体的に形成された構成としても良い。第2リングギヤR22は、第2支持部16に、周方向へ回転不能に支持されている。第2キャリヤC22は、第2遊星歯車機構22の出力要素である。本実施形態では、第2キャリヤC22は、第1差動ケース軸受63を介して、第2支持部16に回転可能に支持されている。
また、第2遊星歯車機構22は、第2キャリヤC22に支持されて公転するピニオンギヤP22と、ピニオンギヤP22を第2キャリヤC22に対して回転可能に支持するピニオン軸A22と、を有している。
ピニオンギヤP22は、第2サンギヤS22と第2リングギヤR22とに噛み合うように配置されている。ピニオンギヤP22は、ピニオン軸A22の軸心回りに回転(自転)すると共に、第2キャリヤC22と共に第2サンギヤS22を中心として回転(公転)する。なお、図示は省略するが、ピニオンギヤP22は、その公転軌跡に沿って、互いに間隔を空けて複数設けられている。ピニオン軸A22は、軸方向Lに延在している。ピニオン軸A22は、第2キャリヤC22に連結されている。
差動歯車装置3は、減速装置2から伝達される駆動力を一対の車輪Wに分配する。本実施形態では、差動歯車装置3は、中空の差動ケースC3と、差動ケースC3の内部に収容されたギヤ機構Gと、を有している。
差動ケースC3は、差動歯車装置3の入力要素である。本実施形態では、差動ケースC3は、第2遊星歯車機構22の第2キャリヤC22と連結されている。そして、差動ケースC3及び第2キャリヤC22は、第1差動ケース軸受63を介して、ケース1の第2支持部16に回転可能に支持されている。図示の例では、差動ケースC3は、第2キャリヤC22と一体的に形成されており、第2キャリヤC22が差動ケースC3の一部として構成されている。また、本実施形態では、差動ケースC3は、第2差動ケース軸受64を介して、ケース1の第2ケース部12に回転可能に支持されている。つまり、本実施形態では、差動ケースC3は、第1差動ケース軸受63及び第2差動ケース軸受64を介して、ケース1に対して回転可能に支持されている。
第1差動ケース軸受63は、ケース1の第2支持部16に対して、差動歯車装置3の差動ケースC3を回転可能に支持している。つまり、第1差動ケース軸受63は、差動歯車装置3をケース1に対して回転可能に支持する「第1軸受」に相当する。
本実施形態では、第1差動ケース軸受63と第2差動ケース軸受64とは、それぞれ、ギヤ機構Gに対して軸方向第1側L1と軸方向第2側L2とにおいて、差動ケースC3を回転可能に支持している。このように、本実施形態では、第2差動ケース軸受64は、第1軸受(第1差動ケース軸受63)に対して軸方向LにおけるピニオンギヤP22の側とは反対側(軸方向第2側L2)で、差動歯車装置3をケース1に対して回転可能に支持する「第2軸受」に相当する。
ギヤ機構Gは、複数のギヤによって構成されている。本実施形態では、ギヤ機構Gは、一対の差動ピニオンギヤP3と、第1サイドギヤB31及び第2サイドギヤB32と、を含む。ここでは、一対の差動ピニオンギヤP3、並びに第1サイドギヤB31及び第2サイドギヤB32は、いずれも傘歯車である。
一対の差動ピニオンギヤP3は、差動ピニオン軸S3に対して回転可能に支持されている。一対の差動ピニオンギヤP3は、径方向Rに沿って互いに間隔を空けて対向した状態で差動ピニオン軸S3に取り付けられている。差動ピニオン軸S3は、差動ケースC3と一体的に回転するように差動ケースC3に支持されている。具体的には、差動ピニオン軸S3は、差動ケースC3に径方向Rに沿って形成された貫通孔に挿入されており、係止部材L3により差動ケースC3に係止されている。
第1サイドギヤB31及び第2サイドギヤB32は、差動歯車装置3における分配後の回転要素である。第1サイドギヤB31と第2サイドギヤB32とは、互いに軸方向Lに間隔を空けて、差動ピニオン軸S3を挟んで対向するように配置されている。第1サイドギヤB31は、第2サイドギヤB32よりも軸方向Lにおける減速装置2の側(軸方向第1側L1)に配置されている。第1サイドギヤB31と第2サイドギヤB32とは、差動ケースC3の内部空間において、それぞれ周方向に回転するように構成されている。第1サイドギヤB31及び第2サイドギヤB32は、一対の差動ピニオンギヤP3に噛み合っている。本実施形態では、第1サイドギヤB31の内周面には、中間軸5を連結するためのスプラインが形成されている。そして、第2サイドギヤB32の内周面には、第2ドライブシャフトDS2を連結するためのスプラインが形成されている。
中間軸5は、差動歯車装置3によって分配された減速装置2からの駆動力を第1ドライブシャフトDS1に伝達する軸部材である。中間軸5は、回転電機MGのロータ軸Rosを軸方向Lに貫通するように、ロータ軸Rosの径方向内側R2に配置されている。中間軸5における軸方向第2側L2の端部の外周面には、差動歯車装置3の第1サイドギヤB31に連結するためのスプラインが形成されている。このスプラインと第1サイドギヤB31の内周面のスプラインとが係合することにより、中間軸5と第1サイドギヤB31とが一体的に回転するように連結される。中間軸5は、第1ドライブシャフトDS1を連結するための連結部5aを有している。
連結部5aは、中間軸5における回転電機MGよりも軸方向第1側L1に位置する部分に形成されている。連結部5aは、中間軸5における連結部5a以外の部分と同軸の円筒状に形成されている。連結部5aは、中間軸5における連結部5a以外の部分の外径よりも大きい外径を有している。連結部5aは、出力軸受65を介して第1カバー部13に回転可能に支持されている。連結部5aにおける軸方向第2側L2の部分の内周面には、第1ドライブシャフトDS1を連結するためのスプラインが形成されている。なお、そのような構成に限定されず、例えば、連結部5aの代わりに、中間軸5の軸方向第1側L1の端部にフランジヨークが設けられ、当該フランジヨークと第1ドライブシャフトDS1とがボルトによって締結された構成であっても良い。
図1に示すように、本実施形態では、車両用駆動伝達装置100は、ストレーナ7を備えている。ストレーナ7は、ケース1の内部に貯留された油を油圧ポンプ(図示を省略)が吸入する際に、当該油に含まれる異物を除去する濾過器である。ストレーナ7は、ケース1の内部に貯留された油を吸入する吸入口71と、吸入口71を通して吸入された油を濾過するフィルタ72と、フィルタ72によって濾過された油を油圧ポンプに供給する供給管73と、を有している。本実施形態では、ストレーナ7は、第2支持部16及び差動歯車装置3に対して径方向外側R1に配置されている。
また、本実施形態では、車両用駆動伝達装置100は、端子台8を備えている。端子台8は、ケース1の外部に設けられたインバータ等の装置と回転電機MGとを電気的に接続するように構成されている。端子台8は、ケース1の内部から外部に亘って設けられた導体81を有している。導体81は、径方向Rに延在する柱状の部材である。導体81は、第1ケース部11を径方向Rに貫通する貫通孔を通して、ケース1の内部から外部に亘って配置されている。具体的には、導体81の径方向外側R1の端部は、ケース1の外部に露出し、回転電機MGに電力を供給するための動力線と接続される。また、導体81の径方向内側R2の端部は、第1ケース部11の内部において回転電機MGのコイルエンド部Ceに接続部材82を介して電気的に接続される。
以下では、図3を参照して、第1差動ケース軸受63及び第2差動ケース軸受64について更に詳細に説明する。
図3に示すように、第1差動ケース軸受63の内径ID_63は、ピニオン軸A22の回転軌跡の外径OD_A22よりも大きい。
なお、本明細書において、「内径」は、円筒状の部材(ここでは、第1差動ケース軸受63及び第2差動ケース軸受64)の内周面の半径を意味する。
第1差動ケース軸受63は、ピニオンギヤP22よりも軸方向Lにおける差動歯車装置3の側(軸方向第2側L2)に配置されている。本実施形態では、第1差動ケース軸受63は、減速装置2と同軸上であって、径方向R視でピニオン軸A22と重複する位置に配置されている。図示の例では、第1差動ケース軸受63における軸方向第1側L1の一部が、径方向R視でピニオン軸A22と重複するように配置されている。更に、本実施形態では、第1差動ケース軸受63は、減速装置2と同軸上であって、径方向R視で第1サイドギヤB31と重複する位置に配置されている。
ここで、2つの要素の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線と直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの部材の双方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを指す。
本実施形態では、ケース1の第2支持部16は、第2リングギヤR22が連結されるギヤ連結部16aと、第1差動ケース軸受63が連結される軸受連結部16bと、を有している。軸受連結部16bは、ギヤ連結部16aに対して軸方向第2側L2に隣接するように配置されている。そのため、本実施形態では、第1差動ケース軸受63は、第2リングギヤR22に対して軸方向第2側L2に隣接するように配置されている。これにより、第1差動ケース軸受63は、軸方向L視で第2リングギヤR22と重複するように配置されている。また、本実施形態では、ピニオン軸A22は、第2リングギヤR22よりも軸方向第2側L2に突出する部分を有するように配置されている。こうして、本実施形態では、第1差動ケース軸受63は、第2リングギヤR22に対して軸方向第2側L2に隣接すると共に、径方向R視でピニオン軸A22と重複する位置に配置されている。また、本実施形態では、第1差動ケース軸受63は、軸方向Lにおける第2リングギヤR22と差動ピニオン軸S3との間に配置されている。
本実施形態では、第1差動ケース軸受63の内径ID_63は、ピニオンギヤP22の公転軌跡の外径OD_P22よりも大きい。ここで、ピニオンギヤP22の公転軌跡の外径OD_P22は、ピニオンギヤP22が公転した場合におけるピニオンギヤP22の径方向外側R1の端部の移動軌跡であり、円筒面状となる。
この構成によれば、車両用駆動伝達装置100の組み立て作業に際して、ピニオン軸A22を介して第2キャリヤC22に支持された状態のピニオンギヤP22を、第1差動ケース軸受63に対して相対的に軸方向Lに移動させて、第1差動ケース軸受63の径方向内側R2を通過させることができる。これにより、第1差動ケース軸受63及びピニオンギヤP22のケース1への組み付け作業の自由度を高めることができる。
具体的には、まず、第2サンギヤS22を第1キャリヤC21に連結させると共に、第2リングギヤR22を第2支持部16のギヤ連結部16aに連結させる。次に、第1差動ケース軸受63を第2支持部16の軸受連結部16bに嵌合させる。続いて、第1差動ケース軸受63に対して軸方向第2側L2から、差動ケースC3に連結したピニオン軸A22及びピニオン軸A22を挿通したピニオンギヤP22を挿入する。最後に、第2サンギヤS22及び第2リングギヤR22にピニオンギヤP22を噛み合わせると共に、第1差動ケース軸受63に差動ケースC3を嵌合させる。
或いは、まず、第2サンギヤS22を第1キャリヤC21に連結させると共に、第2リングギヤR22を第2支持部16のギヤ連結部16aに連結させる。次に、ピニオン軸A22を差動ケースC3に連結させると共に、ピニオンギヤP22にピニオン軸A22を挿通する。続いて、ピニオン軸A22及びピニオンギヤP22に対して、軸方向第1側L1から第1差動ケース軸受63を挿入し、差動ケースC3に第1差動ケース軸受63を嵌合させる。最後に、ピニオンギヤP22に挿通されたピニオン軸A22及び第1差動ケース軸受63を連結した差動ケースC3を、第2サンギヤS22及び第2リングギヤR22に向けて軸方向第1側L1に移動させ、第2サンギヤS22及び第2リングギヤR22にピニオンギヤP22を噛み合わせると共に、第1差動ケース軸受63を第2支持部16の軸受連結部16bに嵌合させる。
本実施形態では、第1差動ケース軸受63の内径ID_63は、差動歯車装置3のギヤ機構Gの径方向Rの最大寸法MD_Gよりも大きい。ここでは、一対の差動ピニオンギヤP3が公転(第1サイドギヤB31及び第2サイドギヤB32の軸心回りに回転)した場合におけるピニオンギヤP3の径方向外側R1の端部の移動軌跡の半径が、最大寸法MD_Gに相当する。
また、本実施形態では、第2差動ケース軸受64の内径ID_64は、第1差動ケース軸受63の内径ID_63よりも小さい。本実施形態では、第2差動ケース軸受64の内径ID_64は、差動歯車装置3のギヤ機構Gの径方向Rの最大寸法MD_Gよりも小さい。そのため、第2差動ケース軸受64は、径方向R視で差動歯車装置3のギヤ機構Gと重複しないように、当該ギヤ機構Gよりも軸方向第2側L2に配置されている。そして、第2差動ケース軸受64は、軸方向L視でギヤ機構G及びピニオン軸A22と重複するように配置されている。
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態では、第1差動ケース軸受63が軸方向L視で第2リングギヤR22と重複するように配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、例えば、第1差動ケース軸受63が第2リングギヤR22よりも径方向外側R1に配置された構成としても良い。
(2)上記の実施形態では、第1差動ケース軸受63の内径ID_63がピニオンギヤP22の公転軌跡の外径OD_P22よりも大きい構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1差動ケース軸受63の内径ID_63がピニオンギヤP22の公転軌跡の外径OD_P22以下であっても良い。
(3)上記の実施形態では、第1差動ケース軸受63の内径ID_63が差動歯車装置3のギヤ機構Gの径方向Rの最大寸法MD_Gよりも大きい構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1差動ケース軸受63の内径ID_63が差動歯車装置3のギヤ機構Gの径方向Rの最大寸法MD_G以下であっても良い。
(4)上記の実施形態では、第2差動ケース軸受64が差動歯車装置3のギヤ機構Gに対して軸方向第2側L2に配置された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第2差動ケース軸受64が径方向R視でギヤ機構Gと重複するように配置された構成としても良いし、第2差動ケース軸受64が設けられていない構成としても良い。
(5)上記の実施形態では、第2差動ケース軸受64の内径ID_64が第1差動ケース軸受63の内径ID_63よりも小さい構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第2差動ケース軸受64の内径ID_64が第1差動ケース軸受63の内径ID_63以上であっても良い。
(6)上記の実施形態では、第1支持部15がケース1の第1ケース部11と一体的に形成されると共に、第2支持部16がボルト等の連結部材によって第1ケース部11に連結された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、第1支持部15がボルト等の連結部材によって第1ケース部11に連結された構成としても良いし、第2支持部16が第1ケース部11と一体的に形成された構成としても良い。また、第1支持部15及び第2支持部16がケース1における第1ケース部11以外の部分に連結された構成としても良いし、第1支持部15及び第2支持部16が互いにケース1の異なる部分に連結された構成としても良い。
(7)上記の実施形態では、差動歯車装置3の差動ケースC3が、第2遊星歯車機構22の第2キャリヤC22と一体的に形成された構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、差動ケースC3と第2キャリヤC22とが互いに分離可能な構成(例えば、ボルト、スプライン等で互いに連結された構成)であっても良い。
(8)上記の実施形態では、減速装置2として、2つの遊星歯車機構21,22が設けられた構成を例として説明した。しかし、そのような構成に限定されることなく、減速装置2として、1つ又は3つ以上の遊星歯車機構が設けられた構成としても良い。或いは、減速装置2が、1つの遊星歯車機構と遊星歯車機構以外のギヤ機構(例えば平行軸歯車機構や傘歯車機構等)とを組み合わせて構成されていても良い。
(9)なお、上述した各実施形態で開示された構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示された構成と組み合わせて適用することも可能である。その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で単なる例示に過ぎない。従って、本開示の趣旨を逸脱しない範囲内で、適宜、種々の改変を行うことが可能である。
〔上記実施形態の概要〕
以下では、上記において説明した車両用駆動伝達装置(100)の概要について説明する。
車両用駆動伝達装置(100)は、
駆動力源(MG)と一対の車輪(W)との間で駆動力の伝達を行う車両用駆動伝達装置(100)であって、
前記駆動力源(MG)の側から伝達される回転を減速して一対の前記車輪(W)の側へ伝達する減速装置(2)と、
前記減速装置(2)と同軸上に配置され、前記減速装置(2)から伝達される駆動力を一対の前記車輪(W)に分配する差動歯車装置(3)と、
前記減速装置(2)及び前記差動歯車装置(3)を収容するケース(1)と、
前記差動歯車装置(3)を前記ケース(1)に対して回転可能に支持する第1軸受(63)と、を備え、
前記減速装置(2)は、当該減速装置(2)の軸心を中心として回転するキャリヤ(C22)と、前記キャリヤ(C22)に支持されて公転するピニオンギヤ(P22)と、前記ピニオンギヤ(P22)を前記キャリヤ(C22)に対して回転可能に支持するピニオン軸(A22)と、を有する遊星歯車機構(22)を含み、
前記第1軸受(63)の内径(ID_63)が、前記ピニオン軸(A22)の回転軌跡の外径(OD_A22)よりも大きく、
前記第1軸受(63)は、前記ピニオンギヤ(P22)よりも軸方向(L)における前記差動歯車装置(3)の側に配置されている。
この構成によれば、遊星歯車機構(22)のピニオンギヤ(P22)よりも軸方向(L)における差動歯車装置(3)の側に第1軸受(63)が配置されている。これにより、差動歯車装置(3)を支持する軸受を遊星歯車機構(22)に対して径方向内側(R2)に配置した構成に比べて、遊星歯車機構(22)の内径を小さくすることが容易となる。その結果、遊星歯車機構(22)のギヤ比の設定自由度を高めることができる。更に、遊星歯車機構(22)の径方向(R)の寸法を小さく抑えることができ、延いては車両用駆動伝達装置(100)の径方向(R)の寸法を小さく抑えることができる。
また、本構成によれば、第1軸受(63)の内径(ID_63)が、ピニオン軸(A22)の回転軌跡の外径(OD_A22)よりも大きい。これにより、軸方向(L)において、ピニオン軸(A22)に回転可能に支持されたピニオンギヤ(P22)に対して、第1軸受(63)を近付けて配置することが容易となる。その結果、ピニオンギヤ(P22)よりも軸方向(L)における差動歯車装置(3)の側に第1軸受(63)が配置された構成であっても、軸方向(L)における減速装置(2)と差動歯車装置(3)との距離を小さく抑えることができる。したがって、車両用駆動伝達装置(100)の軸方向(L)の寸法を小さく抑えることができる。
以上のように、本構成によれば、ギヤ比の設定自由度が高く、径方向(R)及び軸方向(L)の寸法を小さく抑えることができる車両用駆動伝達装置(100)が実現される。
ここで、前記第1軸受(63)は、前記減速装置(2)と同軸上であって、径方向(R)視で前記ピニオン軸(A22)と重複する位置に配置されていると好適である。
この構成によれば、軸方向(L)において、第1軸受(63)を遊星歯車機構(22)に近付けて配置することができる。これにより、軸方向(L)における減速装置(2)と差動歯車装置(3)との距離を更に小さく抑えることができる。その結果、車両用駆動伝達装置(100)の軸方向(L)の寸法を更に小さく抑えることができる。
また、前記第1軸受(63)の内径(ID_63)が、前記ピニオンギヤ(P22)の公転軌跡の外径(OD_P22)よりも大きいと好適である。
この構成によれば、車両用駆動伝達装置(100)の組み立て作業に際して、ピニオン軸(A22)を介してキャリヤ(C22)に支持された状態のピニオンギヤ(P22)を、第1軸受(63)に対して相対的に軸方向(L)に移動させて、第1軸受(63)の径方向内側(R2)を通過させることができる。これにより、第1軸受(63)及びピニオンギヤ(P22)のケース(1)への組み付け作業の自由度を高めることができる。
また、前記差動歯車装置(3)は、前記第1軸受(63)によって前記ケース(1)に対して回転可能に支持される差動ケース(C3)と、前記差動ケース(C3)の内部に収容されたギヤ機構(G)と、を有し、
前記第1軸受(63)の内径(ID_63)が、前記ギヤ機構(G)の前記径方向(R)の最大寸法(MD_G)よりも大きいと好適である。
この構成によれば、第1軸受(63)が軸方向(L)視で差動歯車装置(3)のギヤ機構(G)と重複しない。これにより、軸方向(L)において、第1軸受(63)を差動歯車装置(3)に近付けて配置することが容易となる。その結果、車両用駆動伝達装置(100)の軸方向(L)の寸法を更に小さく抑えることができる。
前記差動歯車装置(3)が差動ケース(C3)とギヤ機構(G)とを有する構成において、
前記ギヤ機構(G)は、一対の差動ピニオンギヤ(P3)と、一対の前記差動ピニオンギヤ(P3)に噛み合う第1サイドギヤ(B31)及び第2サイドギヤ(B32)と、を含み、
前記第1サイドギヤ(B31)は、前記第2サイドギヤ(B32)よりも前記軸方向(L)における前記減速装置(2)の側に配置され、
前記第1軸受(63)は、前記減速装置(2)と同軸上であって、前記径方向(R)視で前記第1サイドギヤ(B31)と重複する位置に配置されていると好適である。
この構成によれば、軸方向(L)において、第1軸受(63)をギヤ機構(G)に近付けて配置することができる。これにより、軸方向(L)における減速装置(2)と差動歯車装置(3)との距離を更に小さく抑えることができる。その結果、車両用駆動伝達装置(100)の軸方向(L)の寸法を更に小さく抑えることができる。
また、前記第1軸受(63)に対して前記軸方向(L)における前記ピニオンギヤ(P22)の側とは反対側で、前記差動歯車装置(3)を前記ケース(1)に対して回転可能に支持する第2軸受(64)を更に備え、
前記第2軸受(64)の内径(ID_64)が、前記第1軸受(63)の内径(ID_63)よりも小さいと好適である。
一般的に、第1軸受(63)に対して軸方向(L)におけるピニオンギヤ(P22)の側とは反対側には、差動歯車装置(3)以外の要素が配置されることが少ない。そのため、本構成のように、第1軸受(63)に対して軸方向(L)におけるピニオンギヤ(P22)の側とは反対側に第2軸受(64)を配置することで、当該第2軸受(64)の内径(ID_64)の設定自由度を高めることができる。そして、第2軸受(64)の内径(ID_64)を第1軸受(63)の内径(ID_63)よりも小さくすることで、第2軸受(64)の部材コストを低く抑えることができる。