JP2010173414A - 車両用駆動装置 - Google Patents

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智夫 新
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夏木 佐田
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Abstract

【課題】ケース内に出力軸の回転駆動力により動作する機械式ポンプを備える車両用駆動装置において、機械式ポンプを配置することによる車両用駆動装置のケースの大型化を、軸方向及び径方向の双方について抑制することができる車両用駆動装置を提供する。
【解決手段】第一回転電機及び第二回転電機MG2が、出力軸O1,O2と同軸上に配置されるとともに、出力軸O1,O2の出力端側へ向かって軸方向に第一回転電機、第二回転電機MG2の順に配置され、第二回転電機MG2は、第一回転電機と同じ又はそれより小さい外径を有し、出力軸O1,O2の回転駆動力により動作する機械式ポンプOP2を備え、機械式ポンプOP2は、第二回転電機MG2に対して出力端側における出力軸O1,O2とは異なる軸上に出力軸O1,O2と軸方向に重複して配置されるとともに、第二回転電機MG2と径方向に重複するように配置されている車両用駆動装置。
【選択図】図3

Description

本発明は、車輪に駆動連結される出力軸と、この出力軸に駆動連結される第一回転電機及び第二回転電機と、をケース内に収容してなる車両用駆動装置に関する。
近年、省エネルギや環境問題の観点から、エンジン及び回転電機を駆動力源として備えたハイブリッド車両が注目されている(例えば、下記の特許文献1及び特許文献2参照)。このようなハイブリッド車両は、従来のエンジンのみを駆動力源として備える車両とは異なり、エンジンを停止させ、回転電機の回転駆動力のみにより走行するEV(電動)走行モードを有する場合がある。そのため、ハイブリッド車両においては、従来の車両とは異なり、エンジンを停止させた状態においても、駆動装置内部の各部位に潤滑や冷却等のための油を供給できるような機構を備える必要がある。
特許文献1に記載の車両用駆動装置では、エンジンに駆動連結された入力軸の回転駆動力により動作する機械式ポンプに加え、蓄電装置から供給される電力により動作する電動ポンプを備えることで、EV走行時にも駆動装置内部の各部位に油を供給可能に構成されている。また、特許文献2に記載の車両用駆動装置では、出力軸の回転駆動力により動作する機械式ポンプを備えている。この構成では、EV走行時であるか否かにかかわらず車両が走行している場合には常に回転する出力軸の回転駆動力を利用することで、EV走行時にも駆動装置内部の各部位に油を供給可能に構成されている。
特開2004−353780号公報 特開2007−99193号公報
しかしながら、上記特許文献1のような構成では、比較的大型となる電動ポンプを車両用駆動装置に備える必要がある。このような電動ポンプを車両用駆動装置のケースの内部に備える構成とすると、ケースの大型化を招来する。また、電動ポンプをケースの外部に接するように取り付ける構成とすると、ケースから電動ポンプが突出し、車両への搭載性を悪化させる。さらに、特許文献1のような構成では電動ポンプを駆動するための電気モータが必要となり、車両用駆動装置の大型化だけでなくコストの増大をも招いてしまう。
一方、上記特許文献2のような構成では、電動ポンプを備えないため、電動ポンプを備えることで生じ得る上記の問題を回避できる可能性がある。しかし、特許文献2には、機械式ポンプの駆動軸と出力軸とをギヤを介して接続することしか開示されておらず、機械式ポンプの具体的な配置等については何ら開示されていない。そして、機械式ポンプを用いる場合にも、特許文献1の構成で生じ得るケースの大型化や車両への搭載性の問題を解決するためには、機械式ポンプの配置等を適切に行う必要がある。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ケース内に出力軸の回転駆動力により動作する機械式ポンプを備える車両用駆動装置において、機械式ポンプを配置することによる車両用駆動装置のケースの大型化を、軸方向及び径方向の双方について抑制することができる車両用駆動装置を提供することにある。
上記目的を達成するための本発明に係る、車輪に駆動連結される出力軸と、この出力軸に駆動連結される第一回転電機及び第二回転電機と、をケース内に収容してなる車両用駆動装置の特徴構成は、前記第一回転電機及び前記第二回転電機が、前記出力軸と同軸上に配置されるとともに、前記出力軸の出力端側へ向かって軸方向に前記第一回転電機、前記第二回転電機の順に配置され、前記第二回転電機は、前記第一回転電機と同じ又はそれより小さい外径を有し、前記出力軸の回転駆動力により動作する機械式ポンプを備え、前記機械式ポンプは、前記第二回転電機に対して前記出力端側における前記出力軸とは異なる軸上に前記出力軸と軸方向に重複して配置されるとともに、前記第二回転電機と径方向に重複するように配置されている点にある。
なお、本願では、「駆動連結」は、2つの回転要素が回転駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が一又は二以上の伝動部材を介して回転駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いている。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材が含まれ、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。
また、本願では、「回転電機」は、モータ(電動機)、ジェネレータ(発電機)、及び必要に応じてモータ及びジェネレータの双方の機能を果たすモータ・ジェネレータのいずれをも含む概念として用いている。
さらに、本願では、「重複」は、各方向における配置に関して2つの部材の少なくとも一部が互いに重複する状態を含む概念として用いている。
上記の特徴構成によれば、出力軸の回転駆動力により動作する機械式ポンプを備えているため、車両が走行している場合に常に回転する出力軸の回転駆動力を利用して、車両用駆動装置内部の各部位に潤滑や冷却等のための油を供給することができる。そして、機械式ポンプは、出力軸とは異なる軸上に出力軸と軸方向に重複して配置されるため、機械式ポンプを配置することによるケースの軸方向における大型化を抑制することができる。また、機械式ポンプは、第一回転電機と同じ又はそれより小さい外径を有する第二回転電機と径方向に重複するように配置されるため、機械式ポンプを配置することによるケースの径方向における大型化も抑制することができる。従って、機械式ポンプを配置することによる車両用駆動装置のケースの大型化を、軸方向及び径方向の双方について抑制することができる。
ここで、前記ケースは、前記第二回転電機を収容する部分から前記出力端側へ向かって径方向に次第に小さくなるように形成されており、前記機械式ポンプは、前記ケースの内壁面と前記第二回転電機の前記出力端側の軸方向端面とにより囲まれる空間に配置されると好適である。
この構成によれば、ケースの内壁面と第二回転電機の出力端側の軸方向端面との間に残る使われていない空間を有効に利用して、機械式ポンプを配置することができる。従って、機械式ポンプを配置することによるケースの大型化を抑制することができる。
また、前記機械式ポンプは、前記出力軸の下方に配置されていると好適である。
なお、本願における「上方」及び「下方」は、車両用駆動装置が車両に搭載された状態での上方及び下方を指すものとする。
この構成によれば、車両のフロアトンネルの形状に影響を与えることのほとんどない位置に機械式ポンプを配置することができる。また、上記のように、機械式ポンプを配置することによるケースの径方向における大型化は抑制されているため、車両の最低地上高も確保しやすい。
また、前記ケースは、軸方向における前記出力端側に、内壁面が軸方向に略直交する面となる終端壁部を有し、前記機械式ポンプは、前記終端壁部の内壁面に当接して配置されると好適である。
一般的に歯車ポンプやベーンポンプ等の機械式ポンプにおいては、ロータを収容するハウジングは、ロータに接して当該ロータの回転軸に直交する壁面を有する。この構成によれば、歯車等を介した出力軸と機械式ポンプとの駆動連結を容易にすべく機械式ポンプの回転軸の向きを出力軸と平行に配置した場合に、終端壁部の内壁面を機械式ポンプのハウジングとして容易に利用することが可能となる。従って、機械式ポンプを配置するための構成を簡略化し、機械式ポンプを配置することによる車両用駆動装置のケースの大型化を抑制することができる。
また、前記出力軸を回転可能に支持する出力軸受を更に備え、前記終端壁部は、前記第二回転電機側へ突出形成されて前記出力軸受を支持する支持部を備え、前記機械式ポンプは、前記出力軸受に対して径方向外側であって前記出力軸受と軸方向に重複する位置に配置されていると好適である。
出力軸受は、出力軸に対して径方向外側に隣接して配置される必須の構成要素である。この構成によれば、機械式ポンプは、出力軸受の径方向外側における軸方向に重複する位置に配置される。よって、出力軸受の径方向外側であって軸方向に重複する空間を有効に利用することができるとともに、機械式ポンプを配置することによる車両用駆動装置のケースの軸方向における大型化を更に抑制することができる。
また、前記第二回転電機は変速機構を介して前記出力軸に駆動連結され、前記変速機構は、前記出力軸と同軸上であって前記第二回転電機に対して前記出力端側に配置されるとともに、前記第二回転電機と同じ又はそれより小さい外径を有し、前記機械式ポンプは、前記変速機構に対して前記出力端側に、前記変速機構と径方向に重複するように配置されていると好適である。
この構成によれば、機械式ポンプが変速機構と径方向に重複するように配置されるため、このような変速機構を備える場合においても機械式ポンプを配置することによるケースの径方向における大型化を抑制することができる。また、変速機構が第二回転電機より小さい外径を有する場合には、第二回転電機及び変速機構の径方向最外周に沿った空間を、出力端側へ向かって径方向幅が次第に小さくなる空間とすることができる。よって、第二回転電機及び変速機構を、出力端側へ向かって径方向に次第に小さくなるように形成されているケースに容易に収容することができる。
また、前記出力軸の回転をロックするためのパーキング機構を更に備え、前記パーキング機構は、一端部にパーキングカムを有するパーキングロッドと、前記パーキングカムを下面側から当接支持するとともに前記ケースに固定される支持部材と、を備え、前記支持部材と一体的に、前記機械式ポンプの回転部材に対して前記第二回転電機側から当接する押さえ部材が設けられていると好適である。
この構成によれば、パーキング機構の必須の構成要素である支持部材を利用して、押さえ部材をケースに対して固定することができる。そして、ケースに対して固定される押さえ部材により、機械式ポンプの回転部材が軸方向を第二回転電機側へ移動するのを規制することができる。
また、前記出力軸は、前記パーキング機構によりロックされるパーキングギヤと、前記機械式ポンプの回転部材に噛み合う駆動ギヤと、を備え、前記駆動ギヤは、前記パーキングギヤに対して出力端側に配置され、前記押さえ部材は、軸方向において、前記パーキングギヤと、前記駆動ギヤに噛み合う前記回転部材との間に配置されると好適である。
この構成によれば、機械式ポンプの回転部材とパーキングギヤとの間の空間を有効に利用して押さえ部材を配置することができるので、押さえ部材を配置することによるケースの軸方向における大型化を抑制することができる。
また、エンジンに駆動連結される入力軸を更に備え、前記入力軸は、前記出力軸と同軸上に配置されるとともに前記ケース内に収容され、前記機械式ポンプを第二機械式ポンプとし、当該第二機械式ポンプとは別に、前記入力軸の回転駆動力により動作する第一機械式ポンプを更に備えると好適である。
登坂時や高速での走行時等、車両が潤滑や冷却等のために必要とする油の量が多くなる場合がある。このような場合に、エンジン及び回転電機を駆動力源として備えるハイブリッド車両においては、エンジンが作動されエンジンに駆動連結された入力軸が回転していることが多い。この構成によれば、潤滑や冷却等のために必要となる油の量が多くなる場合に、入力軸の回転駆動力により動作する第一機械式ポンプを動作させることができるため、出力軸の回転駆動力により動作する第二機械式ポンプの吐出容量を、エンジンを停止させて車両を走行させるEV走行モードにおいて必要となる油の量を賄える程度とすることができる。よって、第一機械式ポンプを備えない構成に比べ、第二機械式ポンプを小型なものとすることができ、第二機械式ポンプを配置することによる車両用駆動装置のケースの大型化を抑制することができる。また、入力軸の回転駆動力により動作する第一機械式ポンプを備えているため、車両停止時においてもエンジンを作動させることで、車両用駆動装置内部の各部位に潤滑や冷却等のために必要な油を供給することができる。
また、前記第二機械式ポンプの吐出容量は、前記第一機械式ポンプの吐出容量より低く設定されていると好適である。
上記のとおり、潤滑や冷却等のために必要な油の量が多くなる場合には、エンジンが作動され、第一機械式ポンプが動作する。この構成によれば、このような場合に動作する第一機械式ポンプの吐出容量が高く設定されているため、車両用駆動装置内部の各部位に適切に油を供給することができる。一方、必要な油の量が比較的少ないEV走行時に単独で動作する第二機械式ポンプの吐出容量は、第一機械式ポンプの吐出容量より低く設定されるため、第二機械式ポンプが不必要に大型化するのを抑制することができる。
また、前記出力軸と同軸上に配置されるとともに前記ケース内に収容される差動歯車装置を更に備え、前記差動歯車装置は、少なくとも第一回転要素、第二回転要素、及び第三回転要素の3つの回転要素を備え、これら3つの回転要素に関して互いに他の回転要素を介することなく、前記第一回転要素に前記第一回転電機が駆動連結され、前記第二回転要素に前記入力軸が駆動連結され、前記第三回転要素に前記出力軸が駆動連結されていると好適である。
この構成においては、第一回転電機を空転させる制御を行うことで、差動歯車装置の各回転要素間での回転駆動力の伝達が行われず、第二回転電機の回転駆動力のみにより走行するEV走行モードが実現される。本発明は、このような車両用駆動装置にも好適に用いることができる。
本発明の実施形態に係る車両用駆動装置の動力伝達系の概略構成を示すスケルトン図である。 本発明の実施形態に係る車両用駆動装置における油圧回路の概略構成を示す模式図である。 本発明の実施形態に係る車両用駆動装置の軸方向要部断面図である。 リヤケース部を本体ケース部との接合面側から見た図である。 パーキング機構を説明するための軸方向要部断面図である。
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1に示されるように、本実施形態に係る車両用駆動装置1は、駆動力源としてエンジンE及び2個の回転電機MG1,MG2を備えるとともに、エンジンEの出力を、第一回転電機MG1側と、車輪W及び第二回転電機MG2側とに分配する動力分配用の遊星歯車装置PGを備えた、いわゆる2モータスプリット方式のハイブリッド車両用の駆動装置として構成されている。本実施形態においては、遊星歯車装置PGが、本発明における「差動歯車装置」に相当する。なお、図1においては、中心軸に対称な下半分の構成を省略して示している。
また、車両用駆動装置1は、エンジンEに駆動連結された入力軸Iの回転駆動力により動作する第一機械式ポンプOP1と、車輪Wに駆動連結された出力軸の回転駆動力により動作する第二機械式ポンプOP2とを備えている。なお、本実施形態においては、第一出力軸O1と第二出力軸O2とを備えて本発明における「出力軸」が構成されている。そして、図2に示されるように、第一機械式ポンプOP1及び第二機械式ポンプOP2より吐出された油が、第一回転電機MG1、第二回転電機MG2、遊星歯車装置PG、変速機構Tを含む車両用駆動装置1の各部位に供給されるように構成されている。本実施形態に係る車両用駆動装置1においては、第二機械式ポンプOP2を図3に示されるように配置することで、ケース2の大型化が軸方向及び径方向の双方について抑制されている。以下、本実施形態に係る車両用駆動装置1の全体構成、油圧回路の構成、第二機械式ポンプOP2の構成及び配置について、順に詳細に説明する。
なお、以下の説明では、特に断らない限り、第二出力軸O2の中心軸心を基準として、軸方向、周方向、径方向が定義されている。また、図3における上下方向は、車両用駆動装置1を車両に搭載した状態(以下、「車両搭載状態」という)における上下方向と一致し、以下の説明では、特に断らない限り、「上」は図3における上側を指し、「下」は図3における下側を指すものとする。
1.全体構成
図1に示されるように、車両用駆動装置1は、入力軸I、第一回転電機MG1、第二回転電機MG2、遊星歯車装置PG、変速機構T、及び第一出力軸O1を、第二出力軸O2と同軸上に有して構成されている。そして、第一回転電機MG1は、遊星歯車装置PG、及び第一出力軸O1を介して第二出力軸O2に駆動連結され、第二回転電機MG2は、変速機構Tを介して第二出力軸O2に駆動連結されている。なお、図示は省略するが、入力軸I、第一回転電機MG1、第二回転電機MG2、遊星歯車装置PG、変速機構T、第一出力軸O1、及び第二出力軸O2は、ケース2の内部に収容されている。ケース2は、図3に示されるように、本体ケース部3とリヤケース部4とを備えて構成されている。
入力軸Iは、エンジンEに駆動連結されている。ここで、エンジンEは、燃料の燃焼により駆動される内燃機関であり、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の公知の各種エンジンを用いることができる。入力軸Iは、エンジンEのクランクシャフト等の出力回転軸に対して、例えば、ダンパやクラッチ等を介して駆動連結される構成としたり、出力回転軸と一体回転するように駆動連結される構成とすることができる。そして、入力軸Iは、遊星歯車装置PGのキャリヤca0と一体回転するように駆動連結されるとともに、その回転駆動力が第一機械式ポンプOP1に伝達されるように第一機械式ポンプOP1の回転部材と駆動連結されている。
第一出力軸O1は、遊星歯車装置PGのリングギヤr0と一体回転するように駆動連結されるとともに、第二出力軸O2に直結され、第二出力軸O2とも一体回転するように駆動連結されている。第二出力軸O2は、車輪Wに駆動連結されるとともに、変速機構Tのキャリヤca1と一体回転するように駆動連結されている。さらに、第二出力軸O2は、その回転駆動力が第二機械式ポンプOP2に伝達されるように第二機械式ポンプOP2の回転部材(本例では、後述する駆動軸76)とも駆動連結されている。なお、第二出力軸O2は、図示しない出力用差動歯車装置等を介して車輪Wに駆動連結される。なお、上記のように、第一出力軸O1と第二出力軸O2とは一体回転するように直結されており、第一出力軸O1と第二出力軸O2とは同じ軸上にある。よって、以下の説明における「第二出力軸O2の軸方向」は、「第一出力軸O1の軸方向」と同じ意味であり、「第二出力軸O2の回転駆動力」は、「第一出力軸O1の回転駆動力」と同じ意味である。
第二出力軸O2には、後述するように、遊星歯車装置PGを介して分配されたエンジンEの回転駆動力が第一出力軸O1を介して伝達される。また、第二出力軸O2には、後述するように、変速機構Tにより減速された第二回転電機MG2の回転駆動力も伝達される。そして、第二出力軸O2に伝達されるこれらの回転駆動力が車輪Wに伝達されることで、車両を走行させることが可能となっている。具体的には、第二回転電機MG2のみを駆動するEV(Electric Vehicle:電動車両)走行モードや、エンジンE、第一回転電機MG1、及び第二回転電機MG2の全てを駆動するハイブリッド走行モード等を切り替えて車両を走行させることができる。
第一回転電機MG1は、図示は省略するが、ケース2に固定されたステータと、このステータの径方向内側に回転自在に支持されたロータと、を有している。第一回転電機MG1のロータは、遊星歯車装置PGのサンギヤs0と一体回転するように駆動連結されている。また、第二回転電機MG2は、図3に示されるように、本体ケース部3に固定されたステータ11と、このステータ11の径方向内側に回転自在に支持されたロータ10と、を有している。第二回転電機MG2のロータ10は、変速機構Tのサンギヤs1と一体回転するように駆動連結されている。また、第二回転電機MG2のステータ11は、ステータコアから軸方向に突出したコイルエンド12を有している。
図1及び図2に示されるように、本実施形態においては、第二出力軸O2の出力端側(図1及び図2における右側)に向かって、第一回転電機MG1、遊星歯車装置PG、第二回転電機MG2、変速機構Tの順に配置されている。そして、図2に示されるように、第二回転電機MG2は、第一回転電機MG1より小さい外径を有して構成されている。なお、第二回転電機MG2が第一回転電機MG1と略同一の外径を有する構成としても良い。
第一回転電機MG1及び第二回転電機MG2のそれぞれは、図示しない蓄電装置と電気的に接続されており、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能を果たすことが可能とされている。なお、第一回転電機MG1及び第二回転電機MG2は、それぞれ回転方向と回転駆動力の向きとの関係に応じてジェネレータ及びモータのいずれか一方として機能する。そして、第一回転電機MG1及び第二回転電機MG2は、ジェネレータとして機能する場合には、発電した電力を蓄電装置に供給して充電し、或いは当該電力をモータとして機能する他方の回転電機MG1,MG2に供給して力行させる。また、第一回転電機MG1及び第二回転電機MG2は、モータとして機能する場合には、蓄電装置に充電され、或いはジェネレータとして機能する他方の回転電機MG1,MG2により発電された電力の供給を受けて力行する。
本実施形態では、第一回転電機MG1は、主に遊星歯車装置PGを介して入力される入力軸I(エンジンE)の回転駆動力により発電を行い、蓄電装置を充電し、或いは第二回転電機MG2を駆動するための電力を供給するジェネレータとして機能する。ただし、車両の高速走行時やエンジンの始動時等には、第一回転電機MG1は力行して回転駆動力を出力するモータとして機能する場合もある。一方、第二回転電機MG2は、主に車両の走行用の回転駆動力を補助するモータとして機能する。ただし、車両の減速時等には、第二回転電機MG2は車両の慣性力を電気エネルギとして回生するジェネレータとして機能する場合もある。
第一回転電機MG1及び第二回転電機MG2に電力を供給するための蓄電装置は、例えば、バッテリやキャパシタ等により構成することができる。また、複数種類の蓄電装置を併用しても良い。更には、家庭用電源等の外部電源により充電可能に蓄電装置を構成しても良い。
遊星歯車装置PGは、3つの回転要素を備えた差動歯車装置であり、ここでは、図1に示されるように、入力軸Iと同軸上に配置されたシングルピニオン型の遊星歯車機構である。すなわち、遊星歯車装置PGは、複数のピニオンギヤを支持するキャリヤca0と、当該ピニオンギヤにそれぞれ噛み合うサンギヤs0及びリングギヤr0とを回転要素として有している。上述したように、サンギヤs0は、第一回転電機MG1のロータと一体回転するように駆動連結されている。キャリヤca0は、入力軸Iと一体回転するように駆動連結されている。また、リングギヤr0は出力回転要素となっており、入力軸Iと同軸上に設けられた第一出力軸O1と一体回転するように駆動連結されている。すなわち、リングギヤr0は、第一出力軸O1を介して第二出力軸O2に駆動連結されている。これらの遊星歯車装置PGの3つの回転要素は、回転速度の順に、サンギヤs0、キャリヤca0、リングギヤr0となっている。なお、回転速度の順は、高速側から低速側に向かう順、又は低速側から高速側に向かう順のいずれかであり、遊星歯車装置PGの回転状態によりいずれともなり得るが、いずれの場合にも回転要素の順は変わらない。本実施形態においては、サンギヤs0、キャリヤca0、リングギヤr0が、それぞれ本発明における差動歯車装置の「第一回転要素」、「第二回転要素」、「第三回転要素」となっている。
また、遊星歯車装置PGは、エンジンEに駆動連結された入力軸Iの回転駆動力を第一出力軸O1及び第一回転電機MG1に分配する機能を果たす。すなわち、遊星歯車装置PGは、回転速度の順で中間となるキャリヤca0が入力軸Iと一体的に回転する。そして、このキャリヤca0の回転が、遊星歯車装置PGにおける回転速度の順で一方端となるサンギヤs0、及び回転速度の順で他方端となるリングギヤr0に分配される。リングギヤr0に分配された回転は第一出力軸O1に伝達され、サンギヤs0に分配された回転は第一回転電機MG1のロータに伝達される。この際、エンジンEは、効率が高く排気ガスの少ない状態に(一般に最適燃費特性に沿うように)維持されるよう制御されつつ車両側からの要求駆動力に応じた正方向の回転駆動力を出力し、この回転駆動力が入力軸Iを介してキャリヤca0に伝達される。一方、第一回転電機MG1は、負方向の回転駆動力を出力することにより、入力軸Iの回転駆動力の反力をサンギヤs0に伝達する。すなわち、第一回転電機MG1は、入力軸Iの回転駆動力の反力を支持する反力受けとして機能し、それにより入力軸Iの回転駆動力が第一出力軸O1に分配され、分配された回転駆動力が第一出力軸O1を介して第二出力軸O2に伝達される。この際、第一回転電機MG1の回転速度により第一出力軸O1の回転速度が決定される。
変速機構Tは、図1に示されるように、入力軸Iと同軸上に配置された3つの回転要素を有するシングルピニオン型の遊星歯車機構により構成されている。すなわち、変速機構Tは、複数のピニオンギヤを支持するキャリヤca1と、当該ピニオンギヤにそれぞれ噛み合うサンギヤs1及びリングギヤr1とを回転要素として有している。上述したように、サンギヤs1は、第二回転電機MG2のロータ10と一体回転するように駆動連結されている。キャリヤca1は、第二出力軸O2と一体回転するように駆動連結されている。また、リングギヤr1は、図3に示されるように、非回転部材である本体ケース部3に固定されている。これらの変速機構Tの3つの回転要素は、回転速度の順に、サンギヤs1、キャリヤca1、リングギヤr1となるが、本実施形態においては、リングギヤr1の回転速度は常に零となるため、サンギヤs1の回転速度の絶対値は、キャリヤca1の回転速度の絶対値より大きくなる。そして、サンギヤs1の回転速度とキャリヤca1の回転速度との比は、サンギヤs1とリングギヤr1との歯数比に応じて定まる一定の値となる。従って、本実施形態においては、第二回転電機MG2の回転駆動力は、サンギヤs1とリングギヤr1との歯数比に応じて定まる変速比で減速され、第二出力軸O2に伝達される。よって、本実施形態では、変速機構Tは減速機構として機能する。
また、図3に示されるように、変速機構Tは、第二回転電機MG2より小さい外径を有して構成されている。また、上記のとおり、変速機構Tは第二回転電機MG2と同軸に配置されているので、軸方向視にて、変速機構Tの径方向外側の端面が、周方向の全体で、第二回転電機MG2の径方向外側の端面より径方向内側に位置するように、変速機構Tが構成されている。なお、変速機構Tが第二回転電機MG2と略同一の外径を有する構成としても良い。
2.油圧回路の構成
上述のように、本実施形態に係る車両用駆動装置1は、第一機械式ポンプOP1及び第二機械式ポンプOP2を備えている。そして、第一機械式ポンプOP1は、入力軸Iの回転駆動力により動作し、第二機械式ポンプOP2は、第二出力軸O2の回転駆動力により動作する。そして、第一機械式ポンプOP1及び第二機械式ポンプOP2により発生された油圧により、油が車両用駆動装置1の各部に供給される。以下、油を車両用駆動装置1の各部に供給するための油圧回路の構成について説明する。
図2に示されるように、第一機械式ポンプOP1及び第二機械式ポンプOP2は、分岐点89を有する油路91を介してストレーナSに接続されている。ストレーナSは、図3に示すオイルパン70と、第一機械式ポンプOP1及び第二機械式ポンプOP2の吸入ポート(図示せず)との間に設けられ、オイルパン70に溜まっている油を第一機械式ポンプOP1及び第二機械式ポンプOP2が吸入する際に、油に含まれる異物を除去するためのろ過器である。オイルパン70には、油が貯留されており、車両用駆動装置1の各部を循環した後の油は、オイルパン70へ排出される。
第一機械式ポンプOP1は、吐出ポート(図示せず)から吐出した油を、逆流防止弁80及び分岐点85を介して油路90へ供給すること、及び、逆流防止弁82及び分岐点87を介して油路93へ供給することが可能に構成されている。第二機械式ポンプOP2は、吐出ポート(図示せず)から吐出した油を、逆流防止弁83及び分岐点87を介して油路93へ供給すること、及び、逆流防止弁83、分岐点87,逆流防止弁81、及び分岐点85を介して油路90へ供給することが可能に構成されている。なお、逆流防止弁80,81,82,83は、油の通過を一方向のみ許容するものである。逆流防止弁80は、図2において下から上へ向かう方向のみの油の通過を許容する。逆流防止弁81は、図2において右から左へ向かう方向のみの油の通過を許容する。逆流防止弁82は、図2において左から右へ向かう方向のみの油の通過を許容する。逆流防止弁83は、図2において下から上へ向かう方向のみの油の通過を許容する。
本実施形態においては、第一機械式ポンプOP1及び第二機械式ポンプOP2から吐出された油が流通する油圧回路が、上記のように油路92,94を備えて構成されているため、第一機械式ポンプOP1及び第二機械式ポンプOP2の何れか一方のみが動作している場合においても、油路90及び油路93の双方に油を供給することができる。そして、油路90及び油路93に供給された油は、車両用駆動装置1の各部位に潤滑や冷却等のために供給される。具体的には、図2に示されるように、油路90に供給された油は、分岐点86において2つの油路に分かれた後、遊星歯車装置PGや第一回転電機MG1に供給され、各部の潤滑や冷却が行われる。一方、油路93に供給された油は、分岐点88において3つの油路に分かれた後、変速機構Tや第二回転電機MG2等に供給され、各部の潤滑や冷却が行われる。車両用駆動装置1がクラッチやブレーキ等の摩擦係合要素を備える場合には、油路90や油路93に供給された油を、摩擦係合要素の動作制御用の制御弁に供給する構成とすると良い。
なお、図示は省略するが、第一機械式ポンプOP1や第二機械式ポンプOP2から供給される油の油圧を所定圧に調圧する調圧弁を適宜備えて、油圧回路を構成することができる。
3.第二機械式ポンプの構成及び配置
本実施形態に係る車両用駆動装置1は、第一機械式ポンプOP1及び第二機械式ポンプOP2を備えており、第二機械式ポンプOP2を図3のように配置することで、ケース2の大型化が軸方向及び径方向の双方について抑制されている。以下、この第二機械式ポンプOP2の構成及び配置について詳細に説明する。
図3に示されるように、本実施形態においては、ケース2は、本体ケース部3とリヤケース部4とを備えており、第二回転電機MG2を収容する部分から出力端側(図3における右側)へ向かって径方向に次第に小さくなるように形成されている。そして、第二機械式ポンプOP2は、ケース2の内壁面と第二回転電機MG2の出力端側の軸方向端面とにより囲まれる空間における第一出力軸O1及び第二出力軸O2の下方に配置されている。すなわち、第二機械式ポンプOP2は、第二回転電機MG2に対して出力端側に配置されている。また、本実施形態においては、ケース2の軸方向における出力端側を構成するリヤケース部4が、内壁面が軸方向に略直交する面となる終端壁部5を有しており、この終端壁部5の内壁面に当接するように、第二機械式ポンプOP2が取り付けられている。
また、図3に示されるように、第二機械式ポンプOP2は、第二出力軸O2とは異なる軸上に第二出力軸O2と軸方向に重複して配置されている。なお、本実施形態においては、第一出力軸O1は第二出力軸O2の内部に挿入された状態で係合されており、第二機械式ポンプOP2は、第一出力軸O1とも軸方向に重複して配置されている。また、本実施形態においては、車両用駆動装置1は第二回転電機MG2に対して出力端側に変速機構Tを備えており、第二機械式ポンプOP2は、変速機構Tに対して出力端側に配置されている。一方、径方向においては、第二機械式ポンプOP2は、第二回転電機MG2及び変速機構Tの双方に重複するように配置されている。
第二機械式ポンプOP2は、本例では、内接歯車ポンプとされ、ロータを構成するインナロータとアウタロータの双方がポンプ室内に収容されている。図3に示されるように、インナロータは、駆動軸76と一体回転するように駆動連結されている。本実施形態においては、駆動軸76が、本発明における「回転部材」に相当する。また、駆動軸76には外歯歯車75が備えられ、駆動軸76と外歯歯車75とは一体回転するように駆動連結されている。よって、外歯歯車75を駆動することで、インナロータを駆動することができる。
第二出力軸O2は、外歯歯車75を駆動するためのギヤとして、駆動ギヤ51を備えている。駆動ギヤ51は、第二出力軸O2と一体回転するように第二出力軸O2に固定されており、外歯歯車75に噛み合うように構成されている。よって、本実施形態においては、回転部材である駆動軸76は、外歯歯車75を介して駆動ギヤ51に噛み合っている。また、駆動ギヤ51は、同じく第二出力軸O2と一体回転するように第二出力軸O2に固定されたパーキングギヤ50に対して出力端側に配置されている。そして、第二出力軸O2が回転すると、第二出力軸O2の回転駆動力が、駆動ギヤ51、外歯歯車75、及び駆動軸76を介してインナロータに伝達され、第二機械式ポンプOP2が動作する。なお、第二機械式ポンプOP2の構成はこれに限定されるものではなく、また、ポンプの形式としても、外接歯車ポンプやベーンポンプ等としても好適である。
なお、第二出力軸O2と一体回転する駆動ギヤ51と、駆動軸76と一体回転する外歯歯車75との駆動連結を容易に行うためには、駆動軸76の軸方向は、第二出力軸O2の軸方向と略平行に配置されることが望ましい。本実施形態においては、以下に述べるように、簡素な構成で、駆動軸76の軸方向が第二出力軸O2の軸方向と略平行になるように第二機械式ポンプOP2を配置することができる。
すなわち、第二機械式ポンプOP2は、図3に示されるように、ロータを収容するハウジングとして機能するポンプケースを有している。ポンプケースは、ロータが収容されるポンプ室を形成するために凹部が形成されており、ロータを凹部に収容した状態で当該凹部を閉じるために駆動軸76に略直交する壁面がハウジングとして必要になる。駆動軸76の軸方向が第二出力軸O2の軸方向と略平行になるように第二機械式ポンプOP2を配置した場合には、第二出力軸O2の軸方向に略直交する壁面が必要となる。上述のように、終端壁部5は、第二出力軸O2の軸方向に略直交する内壁面を有するため、当該内壁面をそのまま第二機械式ポンプOP2のハウジングとして利用して、駆動軸76の軸方向が第二出力軸O2の軸方向と略平行になるように第二機械式ポンプOP2を配置することができる。
ケース2内には、第二機械式ポンプOP2に油を供給するための油路、及び第二機械式ポンプOP2が吐出する油を各部に供給するための油路が形成されている。具体的には、本体ケース部3には、オイルパン70と連通するケース内油路71が形成されている。リヤケース部4には、ケース内油路71と連通する吸入油路72、吐出油路73、及び吐出油路73と連通するケース内油路74が形成されている。詳細な説明は省くが、ケース内油路74は、車両用駆動装置1の各部に油を供給するための複数の油路と連通している。
図3に示されるように、終端壁部5の内壁面には、吸入油路72及び吐出油路73の一端の開口部が形成され、それらの開口部を通して第二機械式ポンプOP2のポンプ室と吸入油路72及び吐出油路73とが連通されている。そのため、第二機械式ポンプOP2が動作すると、ケース内油路71、及び吸入油路72を介して、オイルパン70に溜まっている油がポンプ室に吸入され、当該ポンプ室から吐出される油が、吐出油路73及びケース内油路74を介して、車両用駆動装置1の各部に供給される。
なお、本実施形態においては、第二機械式ポンプOP2の吐出容量は、第一機械式ポンプOP1の吐出容量より低く設定されている。第二機械式ポンプOP2の吐出容量は、例えば、車両が第二回転電機MG2の回転駆動力のみにより走行するEV走行時に必要となる油の量を賄える程度の値とすることができる。
また、図3に示されるように、終端壁部5は、第二回転電機MG2側へ突出形成され、第二出力軸O2を回転可能に支持する出力軸受14を支持する支持部6を備えている。支持部6は、終端壁部5から突出する円筒状のボス部であり、内周面により出力軸受14を支持している。第二機械式ポンプOP2は、出力軸受14に対して径方向外側であって出力軸受14と軸方向に重複する位置に配置されている。
さらに、本実施形態においては、第二機械式ポンプOP2の回転部材である駆動軸76が軸方向を第二回転電機MG2側に移動するのを規制するため、駆動軸76に対して第二回転電機MG2側から当接する押さえ部材58が設けられている。押さえ部材58は、軸方向において、パーキングギヤ50と駆動軸76との間に配置されており、以下に説明するパーキング機構が有する支持部材57と一体的に設けられている。
パーキング機構は、第二出力軸O2の回転をロックするための機構である。図4は、リヤケース部4を本体ケース部3との接合面側から見た図である。図5は、パーキング機構を説明するための軸方向要部断面図であり、図5(a)は、パーキングギヤ50がロックされていない状態を示し、図5(b)は、パーキングギヤ50がロックされている状態を示している。これらの図に示されるように、パーキング機構は、パーキングポール52、パーキングロッド55、及び支持部材57を備えている。このようなパーキング機構は周知であるため詳細な説明は省くが、以下に簡単に説明する。
図4に示されるように、パーキングポール52は、スプリング59により、スプリング59の配置箇所を中心として図4における反時計方向に回転する向きに付勢されており、パーキングギヤ50をロックするための爪部52aをパーキングギヤ50側に有している。図5に示されるように、パーキングロッド55は、スプリング56の付勢力により一端側に付勢された状態でパーキングロッド55に摺動可能に支持されたパーキングカム54を一端側に有する。支持部材57は、リヤケース部4に固定された部材であり、パーキングカム54を下面側から当接支持する。
そして、図5(a)に示されるように、パーキングロッド55に接続されたレバー(図示せず)がパーキングギヤ50をロックしない位置にある場合には、パーキングカム54の径方向幅が大きい部分は支持部材57とパーキングポール52との間に形成される空間に進入せず、パーキングポール52が備える爪52aはパーキングギヤ50に噛み合わない。一方、図5(b)に示されるように、パーキングロッド55に接続されたレバー(図示せず)がパーキングギヤ50をロックする位置にある場合には、パーキングカム54の径方向幅が大きい部分が支持部材57とパーキングポール52との間に形成される空間に進入する。この時、支持部材57はケース2に対して固定されているため、パーキングポール52はスプリング59の付勢力に抗して図4における時計方向に回転する向きに押し上げられ、パーキングギヤ50に爪52aが噛み合い、パーキングギヤ50がロックされる。
図4に示されるように、本実施形態においては、上述したパーキング機構が有する支持部材57と一体的に、押さえ部材58が設けられている。具体的には、支持部材57は、周方向における一端部が締結ボルト15によりリヤケース部4に締結固定されるとともに、周方向における他端部が押さえ部材58を間に挟む状態で締結ボルト16によりリヤケース部4に締結固定されている。すなわち、押さえ部材58は、パーキング機構の必須の構成要素である支持部材57を利用して、ケース2に対して固定されている。なお、押さえ部材58と支持部材57とが、板金等の塑性加工により形成された同一の部品とする構成としても良い。また、図5に示されるように、押さえ部材58は、駆動軸76と当接する位置に、駆動軸76より小径の出力端側に突出する略円柱状の突出部を備え、当該突出部が駆動軸76に当接することで、駆動軸76が軸方向を第二回転電機MG2側へ移動するのを規制している。なお、押さえ部材58の構成はこれに限定されるものではなく、上記の突出部を備えない構成としても良い。
〔その他の実施形態〕
(1)上記の実施形態においては、第二機械式ポンプOP2が、第一出力軸O1及び第二出力軸O2の双方と軸方向に重複するとともに、第一出力軸O1及び第二出力軸O2の下方に配置されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、第二機械式ポンプOP2が、第一出力軸O1及び第二出力軸O2の何れか一方のみに軸方向に重複する構成とすることも本発明の好適な実施形態の一つである。また、第二機械式ポンプOP2を、第一出力軸O1や第二出力軸O2の側方や上方等のような下方以外の場所に配置する構成としても良い。
(2)上記の実施形態においては、ケース2が、第二回転電機MG2を収容する部分から出力端側へ向かって径方向に次第に小さくなるように形成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、ケース2を、径方向幅がほぼ一様になるように形成したり、第二回転電機MG2を収容する部分から出力端側へ向かって径方向に次第に大きくなるように形成しても良い。
(3)上記の実施形態においては、第二機械式ポンプOP2が、軸方向に略直交する終端壁部5の内壁面に当接して配置されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、第二機械式ポンプOP2を、軸方向に略直交しない内壁面に配置する構成とすることも本発明の好適な実施形態の一つである。
(4)上記の実施形態においては、第二機械式ポンプOP2が、出力軸受14に対して径方向外側であって出力軸受14と軸方向に重複する位置に配置されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、第二機械式ポンプOP2を出力軸受14と軸方向に重複しない位置に配置したり、出力軸受14の径方向内側や径方向に重複する位置に配置することも本発明の好適な実施形態の一つである。
(5)上記の実施形態においては、第二機械式ポンプOP2が、変速機構Tに対して出力端側に、変速機構Tと径方向に重複するように配置されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、第二機械式ポンプOP2を変速機構Tと軸方向に重複する位置に配置したり、変速機構Tと径方向に重複しないように配置することも本発明の好適な実施形態の一つである。また、第二機械式ポンプOP2が、軸方向における第二回転電機MG2と変速機構Tとの間に配置される構成としても良い。さらに、第二回転電機MG2の出力端側に変速機構Tが配置されず、第二回転電機MG2の出力端側に隣接して第二機械式ポンプOP2が配置される構成としても好適である。
(6)上記の実施形態においては、押さえ部材58が、軸方向においてパーキングギヤ50と駆動軸76の間に配置されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、押さえ部材58とパーキングギヤ50との軸方向における位置関係は任意に設定でき、例えば、押さえ部材58とパーキングギヤ50とが軸方向に重複するように配置される構成とすることも本発明の好適な実施形態の一つである。
(7)上記の実施形態においては、車両用駆動装置1が、第二機械式ポンプOP2の駆動軸76に対して第二回転電機MG2側から当接する押さえ部材58を有し、当該押さえ部材58が、パーキング機構の支持部材57と一体的に設けられている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、押さえ部材58が支持部材57と一体的に設けられない構成や、車両用駆動装置1が押さえ部材58を有さない構成とすることも本発明の好適な実施形態の一つである。
(8)上記の実施形態においては、車両用駆動装置1が、第二機械式ポンプOP2に加え、更にエンジンEに駆動連結される入力軸Iの回転駆動力により動作する第一機械式ポンプOP1を備える場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、車両用駆動装置1が入力軸Iの回転駆動力により動作する第一機械式ポンプOP1を備えない構成とすることも本発明の好適な実施形態の一つである。この場合において、さらに、車両用駆動装置1がエンジンEに駆動連結される入力軸Iを備えない構成とした、いわゆる電気自動車の駆動装置に本発明を適用しても好適である。
(9)上記の実施形態においては、第二機械式ポンプOP2の吐出容量は、第一機械式ポンプOP1の吐出容量より低く設定されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、第二機械式ポンプOP2の吐出容量を第一機械式ポンプOP1の吐出容量と同程度としたり、第一機械式ポンプOP1の吐出容量より高く設定することも本発明の好適な実施形態の一つである。
(10)上記の実施形態においては、差動歯車装置としての遊星歯車装置PGの各回転要素は、回転速度の順に、第一回転要素、第二回転要素、第三回転要素となっている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、第二出力軸O2が駆動連結される第三回転要素が、回転速度の順で中央に位置するように差動歯車装置を構成することも本発明の好適な実施形態の一つである。また、車両用駆動装置1が差動歯車装置を備えず、第一回転電機MG1が入力軸Iと一体回転するように駆動連結された構成としても良い。この場合において、エンジンE及び第一回転電機MG1と、第二回転電機MG2及び変速機構Tとの間の駆動連結を分離するクラッチを備える構成とした、いわゆるシリーズ・パラレル方式のハイブリッド駆動装置に本発明を適用しても好適である。
(11)上記の実施形態においては、車両用駆動装置1が、差動歯車装置として、3つの回転要素を有するシングルピニオン型の遊星歯車機構を有する場合を例として説明した。しかし、本発明に係る差動歯車装置の構成はこれに限定されるものではない。したがって、例えば、差動歯車装置が、ダブルピニオン型の遊星歯車機構や、互いに噛み合う複数の傘歯車を用いた差動歯車機構等のように、他の差動歯車機構を有して構成されていても好適である。また、差動歯車装置は、3つの回転要素を有するものに限定されるものではなく、4つ以上の回転要素を有する構成としても好適である。この場合においても、4つ以上の回転要素の中から選択される3つの回転要素に関して、互いに他の回転要素を介することなく、第一回転要素に第一回転電機MG1が駆動連結され、第二回転要素に入力軸Iが駆動連結され、第三回転要素に第二出力軸O2が駆動連結された構成とすると好適である。なお、4つ以上の回転要素を有する差動歯車装置としては、例えば、2組以上の遊星歯車機構の一部の回転要素間を互いに連結した構成等を用いることができる。
(12)上記の実施形態においては、変速機構Tが、一段の減速段のみを有する変速機構である場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。すなわち、変速機構Tとして周知のあらゆる変速機構を採用することができ、一段の増速段のみを有する変速機構や、複数の変速段(減速段及び増速段の一方或いは双方)を有する有段変速機構、或いは、無段変速機構により変速機構Tを構成することも本発明の好適な実施形態の一つである。また、車両用駆動装置1が変速機構Tを備えず、第二回転電機MG2が第二出力軸O2と一体回転するように駆動連結された構成としても良い。
本発明は、車輪に駆動連結される出力軸と、この出力軸に駆動連結される第一回転電機及び第二回転電機と、をケース内に収容してなる車両用駆動装置に好適に利用することができる。
E:エンジン
I:入力軸
MG1:第一回転電機
MG2:第二回転電機
O1:第一出力軸(出力軸)
O2:第二出力軸(出力軸)
OP1:第一機械式ポンプ
OP2:第二機械式ポンプ
PG:遊星歯車装置(差動歯車装置)
T:変速機構
W:車輪
ca0:キャリヤ(第二回転要素)
s0:サンギヤ(第一回転要素)
r0:リングギヤ(第三回転要素)
1:車両用駆動装置
2:ケース
5:終端壁部
6:支持部
14:出力軸受
50:パーキングギヤ
51:駆動ギヤ
54:パーキングカム
55:パーキングロッド
57:支持部材
58:押さえ部材
76:駆動軸(回転部材)

Claims (11)

  1. 車輪に駆動連結される出力軸と、この出力軸に駆動連結される第一回転電機及び第二回転電機と、をケース内に収容してなる車両用駆動装置であって、
    前記第一回転電機及び前記第二回転電機が、前記出力軸と同軸上に配置されるとともに、前記出力軸の出力端側へ向かって軸方向に前記第一回転電機、前記第二回転電機の順に配置され、
    前記第二回転電機は、前記第一回転電機と同じ又はそれより小さい外径を有し、
    前記出力軸の回転駆動力により動作する機械式ポンプを備え、
    前記機械式ポンプは、前記第二回転電機に対して前記出力端側における前記出力軸とは異なる軸上に前記出力軸と軸方向に重複して配置されるとともに、前記第二回転電機と径方向に重複するように配置されている車両用駆動装置。
  2. 前記ケースは、前記第二回転電機を収容する部分から前記出力端側へ向かって径方向に次第に小さくなるように形成されており、
    前記機械式ポンプは、前記ケースの内壁面と前記第二回転電機の前記出力端側の軸方向端面とにより囲まれる空間に配置される請求項1に記載の車両用駆動装置。
  3. 前記機械式ポンプは、前記出力軸の下方に配置されている請求項2に記載の車両用駆動装置。
  4. 前記ケースは、軸方向における前記出力端側に、内壁面が軸方向に略直交する面となる終端壁部を有し、
    前記機械式ポンプは、前記終端壁部の内壁面に当接して配置される請求項1から3の何れか一項に記載の車両用駆動装置。
  5. 前記出力軸を回転可能に支持する出力軸受を更に備え、
    前記終端壁部は、前記第二回転電機側へ突出形成されて前記出力軸受を支持する支持部を備え、
    前記機械式ポンプは、前記出力軸受に対して径方向外側であって前記出力軸受と軸方向に重複する位置に配置されている請求項4に記載の車両用駆動装置。
  6. 前記第二回転電機は変速機構を介して前記出力軸に駆動連結され、
    前記変速機構は、前記出力軸と同軸上であって前記第二回転電機に対して前記出力端側に配置されるとともに、前記第二回転電機と同じ又はそれより小さい外径を有し、
    前記機械式ポンプは、前記変速機構に対して前記出力端側に、前記変速機構と径方向に重複するように配置されている請求項1から5の何れか一項に記載の車両用駆動装置。
  7. 前記出力軸の回転をロックするためのパーキング機構を更に備え、
    前記パーキング機構は、一端部にパーキングカムを有するパーキングロッドと、前記パーキングカムを下面側から当接支持するとともに前記ケースに固定される支持部材と、を備え、
    前記支持部材と一体的に、前記機械式ポンプの回転部材に対して前記第二回転電機側から当接する押さえ部材が設けられている請求項1から6の何れか一項に記載の車両用駆動装置。
  8. 前記出力軸は、前記パーキング機構によりロックされるパーキングギヤと、前記機械式ポンプの回転部材に噛み合う駆動ギヤと、を備え、
    前記駆動ギヤは、前記パーキングギヤに対して出力端側に配置され、
    前記押さえ部材は、軸方向において、前記パーキングギヤと、前記駆動ギヤに噛み合う前記回転部材との間に配置される請求項7に記載の車両用駆動装置。
  9. エンジンに駆動連結される入力軸を更に備え、
    前記入力軸は、前記出力軸と同軸上に配置されるとともに前記ケース内に収容され、
    前記機械式ポンプを第二機械式ポンプとし、当該第二機械式ポンプとは別に、前記入力軸の回転駆動力により動作する第一機械式ポンプを更に備える請求項1から8の何れか一項に記載の車両用駆動装置。
  10. 前記第二機械式ポンプの吐出容量は、前記第一機械式ポンプの吐出容量より低く設定されている請求項9に記載の車両用駆動装置。
  11. 前記出力軸と同軸上に配置されるとともに前記ケース内に収容される差動歯車装置を更に備え、
    前記差動歯車装置は、少なくとも第一回転要素、第二回転要素、及び第三回転要素の3つの回転要素を備え、これら3つの回転要素に関して互いに他の回転要素を介することなく、前記第一回転要素に前記第一回転電機が駆動連結され、前記第二回転要素に前記入力軸が駆動連結され、前記第三回転要素に前記出力軸が駆動連結されている請求項9に記載の車両用駆動装置。
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