JP2020084285A - 水性防錆表面処理組成物および表面被覆金属部材 - Google Patents

水性防錆表面処理組成物および表面被覆金属部材 Download PDF

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Abstract

【課題】高い耐食性を有する皮膜を形成することができる水性防錆表面処理組成物を提供する。【解決手段】本発明の水性防錆表面処理組成物は、金属部材の表面に皮膜を形成するために用いる、水性防錆表面処理組成物であって、シランカップリング剤と、水溶性チタン化合物または水溶性ジルコニウム化合物を含む水溶性遷移金属化合物と、高縮合リン酸塩または多価リン酸エステルを含むリン系防錆剤と、水を含む溶媒と、pH調整剤と、を含み、液温25℃におけるpHが2.0〜9.0である。【選択図】なし

Description

本発明は、水性防錆表面処理組成物および表面被覆金属部材に関する。
これまで金属部材の表面を処理する水性表面処理剤において様々な開発がなされてきた。この種の技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、ケイ酸アルカリ金属塩、コロイダルシリカ、シランカップリング剤、及び水を含む水性ケイ酸塩塗料が記載されている(特許文献1の請求項3)。
国際公開第2003/085171号
しかしながら、本発明者が検討した結果、上記特許文献1に記載の水性表面処理剤において、耐食性の点で改善の余地があることが判明した。
本発明者が検討したところ、水性表面処理剤のpHを適切な範囲内とすることで、その皮膜の耐食性を向上できること、そして、水性表面処理剤に含まれる成分に応じたpHの適切な範囲があることを見出した。
しかしながら、さらに検討を進めた結果、各成分を混合した後の水性表面処理剤において、そのpHが経時的に変動することが判明した。混合した後、1年ほど保管した状態でも、水性表面処理剤のpHの変動は徐々に変化し続けることがあった。
詳細なメカニズムは定かではないが、チタンキレート剤等の水溶性遷移金属化合物や、高縮合リン酸塩等のリン酸系防錆剤などを含む水性表面処理剤において、組成成分の分解や分解物の揮発などによって、水性表面処理剤のpHが経時的に変動すると考えられる。
このような知見に基づきさらに鋭意研究したところ、pH調整剤によって適切なpH範囲内に調整できること、そして、シランカップリング剤、水溶性遷移金属化合物、リン系防錆剤および水を含む水性防錆表面処理組成物において、そのpHを2.0〜9.0の範囲内とすることで、複合サイクル試験において赤錆の発生を抑制できるため、耐食性を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、
金属部材の表面に皮膜を形成するために用いる、水性防錆表面処理組成物であって、
シランカップリング剤と、
水溶性チタン化合物または水溶性ジルコニウム化合物を含む水溶性遷移金属化合物と、
高縮合リン酸塩または多価リン酸エステルを含むリン系防錆剤と、
水を含む溶媒と、
pH調整剤と、を含み、
液温25℃における当該水性防錆表面処理組成物のpHが2.0〜9.0である、水性防錆表面処理組成物が提供される。
また本発明によれば、
金属部材と、
前記金属部材の表面に形成された、上記の水性防錆表面処理組成物からなる皮膜と、を備える、表面被覆金属部材が提供される。
本発明によれば、金属部材の表面に、高い耐食性を有する皮膜を形成することができる水性防錆表面処理組成物、およびそれを用いて表面処理された表面被覆金属部材が提供される。
本実施形態の管理システムの構成を示す模式図である。 各サンプルの複合サイクル試験の結果を示す図である。 所定期間保管したときの各サンプルのpHの変化を示す図である。 サンプルのpHと複合サイクル試験の結果との関係を示す図である。
本実施形態の水性防錆表面処理組成物の概要を説明する。
本実施形態の水性防錆表面処理組成物は、シランカップリング剤と、水溶性チタン化合物または水溶性ジルコニウム化合物を含む水溶性遷移金属化合物と、高縮合リン酸塩または多価リン酸エステルを含むリン系防錆剤と、水を含む溶媒と、pH調整剤と、を含むものである。上記水性防錆表面処理組成物は、液温25℃で、2.0以上9.0以下の範囲内のpHを有するものである。
本実施形態の水性防錆表面処理組成物(以下、単に「組成物」と略称することもある。)は、金属部材の表面に皮膜を形成するための水性防錆表面処理剤に好適に用いることができる。
本発明者の知見によれば、pH調整剤によって適切なpH範囲内に調整でき、シランカップリング剤、水溶性遷移金属化合物、リン系防錆剤および水を含む水性防錆表面処理組成物において、そのpHを2.0〜9.0の範囲内とすることで、赤錆などの発生を抑制できるため、皮膜の耐食性を向上できることが見出された。
また、水性防錆表面処理組成物中のpHを適切な範囲内に制御することで、各成分を混合した後の組成物や、混合後に所定期間保管した後の組成物においても、耐食性の低下を抑制することが可能になる。
上記水性防錆表面処理組成物のpHの下限値は、例えば、2.0以上、好ましくは3.0以上、より好ましくは4.0以上である。これにより、複合サイクル試験における白錆の発生を抑制できるため、耐食性を向上できる。一方、上記pHの上限値は、例えば、9.0以下、好ましくは6.8以下、より好ましくは5.5以下である。これにより、複合サイクル試験における赤錆の発生を抑制できるため、耐食性を向上できる。
また、pHが3.0〜6.8である、酸性の水性防錆表面処理組成物とすることができる。水性防錆表面処理組成物を酸性とすることで、含まれる各成分が溶媒中において、より安定状態となるため、溶液安定性を高めることができる。詳細なメカニズムは定かではないが、酸が金属部材の表面を程よく溶かすことで、適度に粗面化した表面に対して、皮膜の密着性を高められるので、耐食性を向上できると考えられる。
本実施形態において、pHは、水性防錆表面処理組成物の液温25℃±1℃で、pHメータを用いて測定できる。液温は、25℃を通常採用するが、+1℃、あるいは−1℃程度のバラツキを許容し得る。
本実施形態によれば、金属部材の表面に、高い耐食性を有する皮膜を形成することができる水性防錆表面処理組成物を実現することができる。
以下、本実施形態の水性防錆表面処理組成物の各成分について詳述する。
<シランカップリング剤>
上記水性防錆表面処理組成物は、シランカップリング剤を含む。
シランカップリング剤を用いることで、水溶性遷移金属化合物や水分散性樹脂または水溶性樹脂、あるいは無機コロイド粒子を含む組成物を、水性溶液として安定化させることができる。また、シランカップリング剤は、水性コロイダルシリカ等の無機コロイド粒子と、水溶性遷移金属化合物や水分散性樹脂または水溶性樹脂などの樹脂との間の親和性を向上できるため、安定な水性溶液(組成物)を形成することができる。
上記シランカップリング剤として、水中に溶解できる水溶性シランカップリング剤が用いられる。
上記シランカップリング剤は、例えば、一般式:(RSi(OR4―m(上記一般式中、Rは炭素数1〜20を有する官能基、Rは低級アルキル基である。mは0〜3の整数である。)で表されるアルコキシシラン、またはこれを加水分解し、縮重合させた化合物が用いられる。上記シランカップリング剤は、組成物中、その一部が加水分解していてもよい。
上記一般式で表されるシランカップリング剤の具体例としては、例えば、Si(OCH、Si(OC、CHSi(OCH、CHSi(OC、CSi(OCH、CSi(OC、CH(O)CHCHO(CHSi(OCH、CH=C(CH)COO(CHSi(OCH、CH=CHCOO(CHSi(OCH、HN(CHSi(OCH、HS(CHSi(OCH、OCN(CHSi(OC等を挙げることができる。
また、上記化学式において、R中の官能基としては、例えば、ビニル、3−グリシドキシプロピル、3−グリシドキシプロピルメチル、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチル、p−スチリル、3−メタクリロキシプロピル、3−メタクリロキシプロピルメチル、3−アクリロキシプロピル、3−アミノプロピル、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピル、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチル、N―フェニル―3−アミノプロピル、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル―3−アミノプロピル、3−ウレイドプロピル、3−メルカプトプロピル、3−イソシアネートプロピル等の基を例示できる。
上記化学式中、低級アルキル基としては、具体的には、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、1−エチルプロピル、イソペンチル、ネオペンチル等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を挙げることができる。
上記水溶性シランカップリング剤としては、例えば、官能基がエポキシ基を備えるシランカップリング剤(エポキシシラン)、または官能基がアミノ基を備えるシランカップリング剤(アミノシラン)を含むことができる。この中でも、耐食性の観点から、エポキシシランを用いることがより好ましい。
上記エポキシシランとしては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシルエチル)トリメトキシシランなどのグリシジルまたはエポキシ基含有トリアルコキシシラン化合物が挙げられる。
上記シランカップリング剤の含有量は、水性防錆表面処理組成物全体に対して、固形分換算で、例えば、1質量%〜20質量%、好ましくは2質量%〜15質量%、より好ましくは3質量%〜10質量%である。シランカップリング剤の含有量を適切にすることで、優れた耐食性を有する皮膜を実現できる。
本明細書中、「〜」は、特に明示しない限り、上限値と下限値を含むことを表す。
<水溶性遷移金属化合物>
上記水性防錆表面処理組成物は、水溶性遷移金属化合物を含む。水溶性遷移金属化合物は、水溶性チタン化合物または水溶性ジルコニウム化合物を含むものである。水溶性遷移金属化合物は、水中に溶解し得る。水溶性遷移金属化合物を用いることで、上記シランカップリング剤、または、他に含まれる成分との化学的な結合が促進され、強度の高い皮膜が形成される。耐食性を高める観点から、水溶性チタン化合物を用いることができる。
上記水溶性チタン化合物としては、無機系チタン化合物、ペルオキソチタネート、アミン系水溶性チタネート、キレート系チタネート(水溶性のチタンキレート剤)からなる群から選択される一種以上を含むことができる。この水溶性チタン化合物としては、具体的には、例えば、三塩化チタン、四塩化チタン、硫酸チタン、酸塩化チタン等の無機系チタン化合物、無機系またはキレート系のペルオキソチタネート、アミン類の存在下で例えばチタンアルコキシドと水とを反応させて得られたアミン系水溶性チタネート、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸及びグリコール等のオキシカルボン酸が配位したオキシカルボン酸キレートチタンや、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミン等のアルカノールが配位したアルカノールアミンキレートチタン等のキレート系チタネート(水溶性のチタンキレート剤)などを含むことができる。
また、上記水溶性ジルコニウム化合物は、上記水溶性チタン化合物と同様の構造を有することができるが、例えば、無機系ジルコニウム化合物、ペルオキソジルコネート、アミン系水溶性ジルコネート、キレート系ジルコネートからなる群から選択される一種以上を含むことができる。
上記水性防錆表面処理組成物は、硬化成分として、有機チタンアルコシド、有機チタンキレート、有機チタンアシレート等の有機チタン化合物や、有機ジルコニウムアルコシド、有機ジルコニウムキレート、有機ジルコニウムアシレートなどの有機ジルコニウム化合物等の有機遷移金属化合物を含有していてもよい。この硬化成分を含むことにより、皮膜構造中の成分と硬化成分とを架橋した構造や、自己架橋構造を得ることができる。
上記チタンキレート剤は、例えば、一般式:Ti(X)で表される有機化合物およびそのオリゴマーを用いることができる。上記一般式中Xは、水酸基、低級アルコキシ基、およびキレート性置換基から選ばれるものであり、4個のXは同一であっても、異なってもよい。
上記低級アルコキシ基は、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、tert−ブトキシ等の炭素数6以下、好ましくは4以下のアルコキシ基が挙げられる。
上記キレート性置換基は、例えば、キレート形成能を持つ有機化合物から誘導された基である。キレート形成能を持つ有機化合物としては、アセチルアセトン等のβ−ジケトン、アセト酢酸等のアルキルカルボニルカルボン酸およびそのエステル、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン等が挙げられる。
上記キレート性置換基の具体例は、ラクテート、アンモニウムラクテート、トリエタノールアミネート、アセチルアセトネート、アセトアセテート、エチルアセトアセテート等が挙げられる。
上記チタンキレート剤の一例として、トリエタノールアミンでキレート化されたチタントリエタノールアミネートがある。チタントリエタノールアミネートの一例であるマツモトファインケミカル(株)製のTC−400(チタンジイソプロポキシトリエタノールアミネート)は、水に溶かすとアルカリ性を呈する。一方、乳酸でキレート化された乳酸チタンと乳酸チタンのアンモニウム塩で構成されるチタンラクテートアンモニウム塩がある。チタンラクテートアンモニウム塩の一例であるマツモトファインケミカル(株)製のTC−310は、水に溶かすと酸性のpHを呈し、またTC−300は、アンモニウムで中和されていて概ね中性のpHを呈する。
上記チタンキレート剤として、水性防錆表面処理組成物の液安定性を向上させる観点から、上記キレート性置換基がラクテート(乳酸イオン)であるものを用いることが好ましい。
チタンキレート剤は、水性防錆表面処理組成物を金属部材に塗布後、室温以上の条件に付された際に、前述のシランカップリング剤と架橋反応が進行する。これにより、シランカップリング剤、また、他に含まれる成分との化学的な結合が促進され、強度の高い皮膜が形成される。
上記水溶性遷移金属化合物の含有量は、水性防錆表面処理組成物全体に対して、固形分換算で、例えば、0.5質量%〜5質量%、好ましくは1質量%〜4量%、より好ましくは1.5質量%〜3質量%である。
また、上記水溶性遷移金属化合物の含有量は、上記シランカップリング剤100質量部に対して、固形分換算で、例えば、10質量部〜100質量部、好ましくは15質量部〜70量部、より好ましくは20質量部〜50質量部である。
<リン酸系防錆剤>
上記水性防錆表面処理組成物は、リン酸系防錆剤を含む。
上記リン酸系防錆剤は、高縮合リン酸塩または多価リン酸エステルを含むことができる。
上記水性防錆表面処理組成物は、高縮合リン酸塩および多価リン酸エステルのいずれか一方を含んでもよいが、両方を含んでもよい。
上記水性防錆表面処理組成物は、高縮合リン酸塩を含むことができる。
上記高縮合リン酸塩は、4個以上のリン酸が脱水縮合してなる高縮合物の塩である。高縮合リン酸塩を用いることで、オルソリン酸、ピロリン酸、トリリン酸およびこれらの塩を用いた場合と比較して、組成物からなる皮膜の耐食性を向上させることができる。
上記高縮合リン酸塩のリン酸の縮合度(分子内のリン酸由来の構造単位数)は、例えば、4以上、好ましくは5以上、より好ましくは6以上である。これにより、耐食性を高めることができる。一方、上記縮合度の上限値は、特に制限されるものではないが、たとえば、50以下、40以下、30以下としてもよい。
上記高縮合リン酸塩としては、例えば、直鎖状構造、環状構造、または、直鎖状構造と環状構造とが相互に結合した網目構造を有するものを用いることができる。この中でも、高縮合リン酸塩は、環状構造または網目構造を有することが好ましい。
上記直鎖状構造を有する高縮合リン酸塩としては、例えば、テトラポリリン酸塩、ペンタポリリン酸塩、ヘキサポリリン酸塩等が挙げられる。
上記環状構造を有する高縮合リン酸塩としては、例えば、テトラメタリン酸塩、ペンタメタリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、オクタメタリン酸塩などが挙げられる。
上記網目構造を有する高縮合リン酸塩としては、例えば、ウルトラリン酸塩などが挙げられる。ウルトラリン酸塩は、水溶液中で加水分解して、直鎖状構造を有する高縮合リン酸塩と、環状構造を有する高縮合リン酸塩との混合物になる。
なお、ウルトラリン酸塩、例えば、平均縮合度が10以上であり、通常、縮合度が分布を有したものとして取引がされることがある。
この中でも、上記高縮合リン酸塩は、少なくとも、環状構造の高縮合リン酸塩を含むことが好ましい。環状構造の高縮合リン酸塩と鎖状構造の高縮合リン酸塩を併用してもよい。環状構造の高縮合リン酸塩を使用することにより、耐食性を一層高めることができる。
なお、本実施形態の水性防錆表面処理組成物は、高縮合リン酸塩に加えて、本発明の効果が発揮する範囲において、その他の低縮合リン酸塩を含有してもよい。
本発明者が検討した結果、組成物中に、通常のオルトリン酸、オルトリン酸塩、二リン酸塩や三リン酸塩などのリン酸の縮合数が少ない低縮合リン酸塩を使用した場合、皮膜の耐食性に改善の余地があることが判明した。
これに対して、高縮合リン酸塩を使用することで、オルトリン酸、オルトリン酸塩または低縮合リン酸塩のみを使用した場合と比較して、高い防錆効果を金属部材に付与するできることが分かった。
上記高縮合リン酸塩は、縮合リン酸のアニオンと、対応するカチオンとの塩として構成される。
上記高縮合リン酸塩のカチオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アンモニウムイオン等を採用することができる。入手容易性や水への溶解性の観点から、カチオンは、ナトリウムイオンまたはカリウムイオンが好ましい。すなわち、高縮合リン酸塩として、高縮合リン酸ナトリウムまたは高縮合リン酸カリウムを用いることができる。
上記高縮合リン酸塩の含有量は、水性防錆表面処理組成物全体に対して、固形分換算で、例えば、0.1質量%〜2.0質量%、好ましくは0.2質量%〜1.5量%、より好ましくは0.3質量%〜1.0質量%である。上記下限値以上とすることで、耐食性を高められる。上記上限値以下とすることで、組成物の保管安定性を高められる。
上記水性防錆表面処理組成物中に含まれる高縮合リン酸塩の含有量については、たとえば、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)分析、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)分析等、公知の方法により分析することができる。
上記水性防錆表面処理組成物は、多価リン酸エステルを含むことができる。
上記多価リン酸エステルは、複数のリン酸エステル残基を有する化合物である。リン酸エステル残基は、リン酸モノエステル構造またはリン酸ジエステル構造を有する。リン酸エステル残基を形成するアルコール部分は、1級アルコール、2級アルコール、3級アルコールのいずれでもよい。
上記多価リン酸エステルの具体例としては、例えば、フィチン酸が挙げられる。
上記多価リン酸エステルの含有量は、水性防錆表面処理組成物全体に対して、例えば、固形分換算で、0.1質量%〜2.0質量%、好ましくは0.15質量%〜1.5量%、より好ましくは0.20質量%〜1.0質量%である。上記下限値以上とすることで、耐食性を高められる。上記上限値以下とすることで、組成物の保管安定性を高められる。
上記高縮合リン酸塩または多価リン酸エステルの合計含有量は、水性防錆表面処理組成物全体に対して、固形分換算で、例えば、0.1質量%〜3.0質量%、好ましくは0.15質量%〜2.0量%、より好ましくは0.3質量%〜1.0質量%である。上記下限値以上とすることで、耐食性を高められる。上記上限値以下とすることで、皮膜の物性のバランスを図ることができる。
また、上記高縮合リン酸塩または多価リン酸エステルの合計含有量は、上記シランカップリング剤100質量部に対して、固形分換算で、例えば、2質量部〜20質量部、好ましくは3質量部〜18量部、より好ましくは5質量部〜15質量部である。
本実施形態の水性防錆表面処理組成物は、シランカップリング剤および水溶性遷移金属化合物に加えて、高縮合リン酸塩または多価リン酸エステルを併用することによって、耐食性に優れた皮膜構造を実現することができるため、金属部材の防錆性を高めることが可能である。
詳細なメカニズムは定かでないが、シランカップリング剤の加水分解縮合物と水溶性遷移金属化合物との脱水縮合反応などによる架橋構造を有する皮膜が形成され、当該皮膜中において、水溶性遷移金属化合物由来の遷移金属原子に対して、高縮合リン酸塩あるいは多価リン酸エステル由来のリン酸イオンが適切に配位することによって皮膜の緻密性を高めることができるため、耐食性に優れた皮膜構造を実現できる、と考えられる。
また、遷移金属原子の中でも、チタンを用いることにより、他の遷移金属原子であるジルコニウムと比べて防錆効果を高めることができる。詳細なメカニズムは定かでないが、チタンを用いることで皮膜構造が一層緻密になると考えられる。
<溶媒>
上記の水性防錆表面処理組成物は、水を含有する溶媒を含む。この溶媒は、水のみを含む水溶媒で構成されていてもよく、水と水以外の親水性溶媒とを含む水系混合溶媒で構成されていてもよい。
上記水としては、例えば、市水、蒸留水、イオン交換水等が挙げられる。
上記親水性溶媒としては、アルコールなどの極性有機溶媒が挙げられる。溶液安定性の観点から、上記水系混合溶媒は、水とアルコールとの混合溶媒で構成されてもよい。水性防錆表面処理組成物中の各成分の化学的性質や配合量などを鑑み、水系混合溶媒中の水の含有比率を決定できる。
上記アルコールとしては、たとえば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコールなどの沸点が100℃未満の低沸点アルコールや、iso−ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノターシャルブチルエーテル(ETB)、ジホルムアルデヒドメトキシエタノールなどの沸点が100℃以上の高沸点アルコールを用いることができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、入手容易性の高さと、各成分に対する溶解性の高さから、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、s−ブチルアルコールおよびt−ブチルアルコールからなる群から選ばれる一種又は二種以上のアルコールを含むことができる。また、メチルアルコール(沸点:64.7°C)、エチルアルコール(沸点:78.37℃)、iso−プロピルアルコール(沸点:82.4℃)などの低沸点アルコールを用いることで、より低温環境下や乾燥環境下において塗膜を成膜することが可能になる。
本実施形態において、アルコールを用いることで、各成分の溶解性を向上させ、得られる水性防錆表面処理組成物の保存安定性を向上させることができる。理由は明確でないが、水とアルコールを含む混合溶媒を用いることにより、亜鉛表面を有する金属部材の表面に形成する皮膜における防錆性能を向上できる。また、アルコールは、水性防錆表面処理組成物の発泡を抑制できるため、塗膜中に泡が入ってシリカ質皮膜が不均一になることを抑制できる。
上記アルコールの含有量は、水性防錆表面処理組成物全体に対して、例えば、1質量%〜25質量%、好ましくは3質量%〜20量%、より好ましくは5質量%〜15質量%である。このような数値範囲内とすることで、水性防錆表面処理組成物の長期保管安定性を高めることができる。
また、上記アルコールの含有量は、上記水およびアルコールの合計含有量100質量%に対して、例えば、1質量%〜40質量%、好ましくは2質量%〜35量%、より好ましくは3質量%〜25質量%である。このような数値範囲内とすることで、水性防錆表面処理組成物の長期保管安定性を高めることができる。
上記シランカップリング剤、水溶性遷移金属化合物およびリン系防錆剤の合計含有量は、水性防錆表面処理組成物全体に対して、固形分換算で、例えば、3質量%〜40質量%、好ましくは4質量%〜30量%、より好ましくは5質量%〜20質量%である。
上記水性防錆表面処理組成物中の固形分量を適切な範囲内とすることで、溶液安定性を高めるとともに、安定的に皮膜が耐食性を発揮することができる。
<pH調整剤>
上記水性防錆表面処理組成物は、pH調整剤を含むものである。
上記pH調整剤は、公知のpH調整剤を適宜使用すればよく、酸性化合物または塩基性化合物が用いられる。強酸または弱酸の酸性化合物、強塩基または弱塩基の塩基性化合物いずれかを用いてもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。
上記酸性化合物としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、グリコール酸、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、コハク酸、ギ酸、酢酸、酢酸ナトリウム、フマル酸、リンゴ酸、リン酸等が挙げられる。
上記塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸アンモニウム、アンモニア、モルホリン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミンが挙げられる。
上記pH調整剤として、安定性の観点から、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸、クエン酸、酢酸、ギ酸などの有機酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属塩、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩、アンモニア、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミンなどのアミン類が挙げられる。
<無機コロイド粒子>
上記水性防錆表面処理組成物は、無機コロイド粒子を含むことができる。
上記無機コロイド粒子は、水中に分散する無機粒子で構成される。
無機コロイド粒子を用いることで、皮膜の強度を高められる。
上記無機粒子は、例えば、無機酸化物粒子が用いられる。無機粒子は、例えば、SiO、Al、TiO、ZrO、Feおよびこれらの複合体からなる群から選択される一種以上で構成される。上記無機コロイド粒子の具体例としては、水性コロイダルシリカ、水性アルミナゾルなどが挙げられる。
水性コロイダルシリカを用いることで、水性防錆表面処理組成物から得られる皮膜についての強度を一段と向上させることができる。また、組成物中の分散性を高めることができるので、シリカ粒子が皮膜中に均一に分散した、シリカ皮膜を形成できる。
上記水性コロイダルシリカの安定pH域は、酸性側、中性側、アルカリ側のいずれかにある。この中でも、組成物の溶液安定性の観点から、酸性側のpHで安定化する水性コロイダルシリカを用いることができる。
上記無機粒子は、例えば、平均粒子径が1〜200nm、好ましくは3〜100nmの範囲にある。ナノサイズの無機粒子を用いることにより、水とアルコールとの水系混合溶媒を使用する場合、凝集や沈降を抑制でき、液安定性に優れた組成物を調製できる。また、組成物で表面処理した製品の防錆性能を向上ができる。
水性コロイダルシリカ等の無機コロイド粒子を用いることで、さらに強固な皮膜構造を実現することができる。
詳細なメカニズムは定かでないが、上述の皮膜中の空間に、シリカ等の無機粒子が適切に配置されるため、シリカ皮膜等の皮膜の緻密さが高まり、耐食性が向上すると考えられる。
上記無機コロイド粒子の含有量は、水性防錆表面処理組成物全体に対して、固形分換算で、例えば、0.5質量%〜15質量%、好ましくは0.8質量%〜13量%、より好ましくは1.0質量%〜12質量%である。上記下限値以上とすることで、皮膜に適度な強度を付与できる。上記上限値以下とすることで、皮膜の物性のバランスを図ることができる。
また、上記無機コロイド粒子の含有量は、上記シランカップリング剤100質量部に対して、固形分換算で、例えば、10質量部〜400質量部、好ましくは15質量部〜250量部、より好ましくは20質量部〜190質量部である。
<樹脂>
上記水性防錆表面処理組成物は、水分散性樹脂または水溶性樹脂を含むことができる。水分散性樹脂は、水中に分散する樹脂で構成される。水溶性樹脂は、水中に溶解する樹脂で構成される。これらの樹脂を用いることで、塗膜の厚膜制御が容易となる。また塗膜からなる皮膜の耐摩耗性を向上することや、皮膜の硬度を低減することが可能になる。例えば、ボルトやナットなどのファスナー部品の表面に皮膜を形成したとき、かかる皮膜の摩擦係数を小さくすることができる。なお、成膜性や耐食性の観点から、水分散性樹脂を用いることが好ましい。
上記水分散性樹脂または水溶性樹脂を構成する樹脂としては、水に溶解または分散できる樹脂の中から適宜選択すればよく、例えば、ポリアクリル酸樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、フェノール樹脂、ボイル油、油性ワニス、アミノ樹脂、ウレタン樹脂、ビニル樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、またはこれらの変性体を用いることができる。この樹脂として、塩化ゴム、環化ゴムなどのゴム成分も用いることができる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記シリコーン樹脂としては、水分散性シリコーン樹脂を用いることができる。
上記水分散性シリコーン樹脂は、水中に分散して、シリコーン樹脂エマルジョンを構成する。上記水分散性シリコーン樹脂は、例えば、ノニオン性界面活性剤またはアニオン性界面活性剤により乳化され、シリコーン樹脂エマルジョンとなり得る。
上記水分散性シリコーン樹脂は、分子内にポリオルガノシロキサン骨格を主鎖に有し得る。成膜性あるいは耐食性の観点から、上記水分散性シリコーン樹脂として、分子内に、アルコキシ基などの架橋性官能基を有する自己架橋型または縮合型シリコーン樹脂を用いることができる。耐熱性の観点から、上記水分散性シリコーン樹脂として、分子内に、フェニル基などの芳香族基を有するシリコーン樹脂を用いることができる。この他、目的に応じて、水分散性シリコーン樹脂が分子内に備える官能基として、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、長鎖アルキル基などが挙げられる。水分散性シリコーン樹脂は、分子内に、前述の官能基を1種または2種以上有していてもよい。
これらの中でも、入手容易性や、膜厚の調整のしやすさの観点から、水溶性または水分散性の樹脂として、ポリアクリル酸樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、フェノール樹脂およびこれらの樹脂の変性体からなる群から選ばれる一種又は二種以上の樹脂を用いることが好ましい。
耐食性の観点から、水分散性ポリアクリル酸樹脂または水分散性ポリエステル樹脂、より好ましくは水分散性ポリアクリル酸樹脂を用いることができる。
なお、変性された樹脂(樹脂の変性体)としては、特定の樹脂に対してシリル変性、リン酸変性、シラン変性等を施したものが挙げられる。
詳細なメカニズムは定かではないが、水分散性樹脂は、加熱により軟化し、ほぼ全てが皮膜中に取り込まれるが、一方の水溶性樹脂は、加熱により一部が消失し、全てが皮膜に含まれる訳ではないと考えられる。このため、水分散性樹脂を用いることで、水溶性樹脂よりも皮膜の耐食性をより一層高められると考えられる。
上記水分散性樹脂または水溶性樹脂の含有量は、水性防錆表面処理組成物全体に対して、固形分換算で、例えば、0.5質量%〜15質量%、好ましくは0.8質量%〜13量%、より好ましくは1質量%〜10質量%である。上記下限値以上とすることで、皮膜の耐摩耗性や耐食性を向上できる。上記上限値以下とすることで、皮膜の物性のバランスを図ることができる。
また、上記水分散性樹脂または水溶性樹脂の含有量は、上記シランカップリング剤100質量部に対して、固形分換算で、例えば、5質量部〜150質量部、好ましくは10質量部〜130量部、より好ましくは20質量部〜110質量部である。
(他の成分)
上記水性防錆表面処理組成物は、上記成分以外にも、その他の添加剤を含むことができる。
その他の添加剤としては、通常、表面処理剤に含まれる各種添加剤を用いることができるが、例えば、滑剤、防腐剤、充填材、着色剤、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤、抗菌剤などが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。添加剤の添加量は、用途に応じ適宜設定することができる。
上記滑剤としては、例えば、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、酸化ポリオレフィンワックス等のワックスが挙げられる。
上記防腐剤としては、イソチアゾリン系化合物などが挙げられる。
本実施形態の水性防錆表面処理組成物(水性防錆処理剤)の一例としては、組成物中に含まれる全ての成分が、水溶性成分または水分散性成分で構成されていてもよい。すなわち、上記水性防錆表面処理組成物は、水溶性成分または水分散性成分のみを含む水溶液で構成され得る。
なお、水性防錆処理剤の技術分野において、環境に配慮する観点から、水性防錆処理剤中のクロム成分の含有量が制限されるが、中には、三価クロムや六価クロムを含むものが存在する。
これに対して、本実施形態の水性防錆表面処理組成物は、六価クロム、三価クロム等のクロム成分を実質的に含まない構成とすることで、クロムフリー防錆処理剤に適用できる。これにより、環境負荷が低減された水性防錆表面処理組成物を実現できる。
なお、防錆性をさらに向上させる観点からは、三価クロムを必要量含むことも可能であるが、たとえば、この三価クロムの量は、水性防錆表面処理組成物全体に対して、1質量%以下に制限されていることが好ましく、0.5質量%以下に制限されていることがより好ましく、0.1質量%以下に制限されていることがさらに好ましく、実質的に含まないことが殊更に好ましい。
なお、本明細書において、この六価クロムおよび三価クロムの量は、この特定の価数を有するクロムの塩の含有量を指すものとする。
次に、本実施形態の水性防錆表面処理組成物の製造方法について説明する。
上記水性防錆表面処理組成物は、各成分を混合した後、pH調整剤でそのpHを調整することで、作製され得る。
各成分の混合する順番は、限定されるものではなく、任意の順番で混合することが可能である。
上記水性防錆表面処理組成物を用いて、公知の方法によって、金属部材の表面に皮膜を形成できる。例えば、金属部材の表面に、水性防錆表面処理組成物を塗布し、これを乾燥させることで、皮膜を形成することができる。これにより、金属部材に防錆性能を付与することができる。
塗布方法としては、金属部材の寸法や形状に応じた適切な方法を用いることができるが、たとえば、浸漬、ロール塗布、スプレー、刷毛塗り、スピンコート等、被処理物の大きさ、形状等に応じて種々の手法を採用することが可能である。
また、加熱処理により乾燥を行うことで、堅固な皮膜とすることができる。
加熱処理の条件としては、たとえば室温以上250℃以下の条件を採用することができ、また、5分以上240分以下、この処理を行うことができる。
また、水性防錆表面処理組成物中の成分組成を適切に調整することにより、180℃以上220℃以下のような高温の加熱条件よりも、室温以上120℃以下のような低温での加熱条件でも、堅固な皮膜を形成させることができる。
以上により、水性防錆表面処理組成物からなる皮膜が表面に形成された金属部材を備える、表面被覆金属部材を得ることができる。
本実施形態の表面被覆金属部材は、金属部材と、当該金属部材の表面に形成された、上記水性防錆表面処理組成物からなる皮膜と、を備えることができる。
上記金属部材を構成する金属素材は、用途に応じ適宜設定することができるが、たとえば、亜鉛、鉄、銅、アルミニウム、スズならびにこれらの金属を含む合金、またはこれらの金属によるめっき鋼、あるいは蒸着品等が挙げられる。
本実施形態の水性防錆表面処理組成物は、これらの中でも、表面に亜鉛またはクロムを含むめっき層を有する金属部材に対して、好適に用いることが可能である。亜鉛またはクロムを含むめっき層等の犠牲防食効果を有する金属部材の表面に、水性防錆表面処理組成物からなる皮膜をさらに形成することで、金属部材表面の防錆性をさらに高めることができる。
詳細なメカニズムは定かでないが、組成物中のシランカップリング剤由来のケイ素原子や、水溶性遷移金属化合物由来の遷移金属原子が、酸素原子を介して金属部材表面に化学的に結合すること、また皮膜と金属表面とが物理的に結合することによって、上記皮膜と金属部材のめっき層表面との密着性を高められると考えられる。このため、めっき層による防食能をさらに高められる。
上記めっき層としては、たとえば、JIS H 8641:溶融亜鉛めっき、JIS H 8610:電気亜鉛めっき、JIS H 8625:クロメート皮膜(三価Crを含む)、JIS G 3313:電気亜鉛めっき鋼板、JIS G 3302:溶融亜鉛めっき鋼板などが挙げられる。
また、上記表面被覆金属部材における皮膜の厚みは、用途により適宜設定することができるが、金属部材に一層高い防錆性を発現させる観点からは、たとえば、0.3μm以上、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上である。一方、上記皮膜の厚みは、たとえば、50μm以下、30μm以下、20μm以下でもよい。
本実施形態の水性防錆表面処理組成物は、金属部材に対して優れた防錆性を付与することができるため、幅広い用途に適用することができるが、例えば、自動車部品など高温高湿条件に曝される用途や、建築部材、電子部材などに用いることができる。すなわち、本実施形態の水性防錆表面処理組成物は、金属部材を取り扱う各工業用途に対して展開できることが期待される。
ここで掲げた用途は、本発明が用いられる実施形態の一例であり、これ以外の用途であっても適用可能であるのは言うまでもない。
本実施形態の水性防錆表面処理組成物は、そのpHや固形分濃度を適切に制御することで、表面処理剤として長期間に亘って使用し続けることが可能である。適時にpH調整剤や各成分を補充して、組成物中のpHや固形分濃度を適当な範囲内に調整することで、例えば、数ヶ月から1年程度やそれ以上に亘っての使用が可能である。
以下、上記組成物の管理方法やそれを実現する管理システムについて説明する。
本実施形態の水性防錆表面処理組成物の管理方法は、組成物の状態データとして少なくともpHを測定する測定工程と、pHの測定値とpHの管理範囲とに基づいてpH調整剤の供給条件を決定する供給条件決定工程と、上記供給条件に基づいてpH調整剤を供給する供給工程と、を含むことができる。
上記供給条件は、pHの測定値とpHの管理範囲との差分を用いて設定できる。pHの測定値が高い場合には、pH調整剤として酸性化合物を使用し、pHの測定値が低い場合には、塩基性化合物を選択するように設定する。
上記pHの管理範囲は、例えば、2.0〜9.0、好ましくは3.0〜6.8、より好ましくは4.0〜5.5に設定できる。上記pHの管理範囲は、組成物中に含まれる成分や組成物の特性等に応じて予め設定され得る。
pHの測定は、上述のとおり、液温25℃±1℃で、pHメータを用いて測定できる。
上記管理方法において、上記測定工程は、組成物の状態データとしてpHおよび固形分濃度を測定し、上記供給条件決定工程は、固形分濃度の管理範囲に基づいて組成物の成分を供給する供給条件を決定し、上記供給工程は、上記供給条件に基づいて組成物の成分を供給する供給してもよい。
上記組成物の成分として、各成分を単独で用いてもよく、これらを混合した混合物を用いてもよい。予め準備した補充用組成物を使用してもよい。
上記固形分濃度の管理範囲は、水性防錆表面処理組成物全体に対して、固形分換算で、例えば、5質量%〜45質量%、好ましくは8質量%〜35質量%、より好ましくは13質量%〜25質量%である。
上記の管理方法によって、金属部材の表面処理に使用する直前の処理用組成物について、pHや固形分濃度を適切に管理できるため、製造バラツキを低減し、歩留まりを向上させることができる。
上記の管理方法は、薬液槽(タンク)中において、処理用組成物の保管と連続的な使用との両立を実現できる。所定期間に亘って使用した後は、処理用組成物を排出して、薬液槽の内部を洗浄してもよい。
図1は、本実施形態の管理システム10の構成を示す図である。管理システム10は、薬液槽100および液供給装置200を備えている。
上記薬液槽100は、処理組成物を保持する容器で構成され得る。容器の内面は、公知の方法で表面処理がなされていてもよい。
上記液供給装置200は、薬液槽100中の処理用組成物の状態として少なくともpHを測定する測定部210と、pHの測定値とpHの管理範囲とに基づいてpH調整剤の供給条件を決定する供給条件決定部220と、上記供給条件に基づいてpH調整剤を薬液槽100に供給する供給部230と、を含むことができる。
上記測定部210は、pH、固形分濃度、液温等の状態を測定でき、測定値データを供給条件決定部220に出力する。
上記供給条件決定部220は、上記測定値データを受信し、受信した測定値データを用いて、pH調整剤や組成物の各成分を供給ための供給条件を設定する。測定値データから供給条件を決定するための情報(例えば、テーブルや関数)は、例えば、液供給装置200が記憶していてもよい、液供給装置200の外部ストレージに記憶されていてもよい。上述したように、この供給条件には、例えば、pHの管理範囲、固形分濃度の管理範囲などの、処理組成物の状態を調整する制御パラメータの少なくとも一つが含まれている。
供給部230は、液供給機構を有しており、供給条件決定部220から出力された供給条件に従って薬液槽100中に、pH調整剤や組成物の各成分を供給する。
この液供給機構は、pH調整剤が充填された第一ダンク、補充用組成物が充填された第二タンクの少なくとも2つのタンクを備えることができる。
上記供給条件決定部220は、例えば、コンピュータの中央演算処理装置(CPU)が所定のプログラムを読み込むことにより、実現される。このプログラムは、例えば、コンピュータのメモリデバイスや外部のストレージに記憶されている。
また、本実施形態によれば、コンピュータに、処理用組成物に供給するpH調整剤あるいは組成物の各成分の供給条件を、その処理組成物の状態を示すpHや固形分濃度を用いて決定する機能を持たせるためのプログラムを提供できる。
本実施形態の管理システム10は、金属部材の製造システムと組み合わせて用いることができる。金属部材の製造システムは、めっき鋼板などの板部材やボルトやナットなどの加工部材等の金属部材を製造するものであり、例えば、金属部材の成形処理、熱処理、表面処理等の通常工程を備える。
上記管理システム10を構成する薬液槽100及び液供給装置200は、このような製造システムを構成する製造装置に併設して設置できる。両者は、同一の建物内に併設され得る。これにより、熱処理設備に隣接して薬液槽100を設置できるので、処理用組成物を熱処理のラインに直接供給することができる。
このように処理用組成物を使用する設備の近くに、管理システム10を構築することで、製造バラツキを低減し、歩留まりを向上させることができる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
表1に示す各成分の情報は以下の通りである。
(シランカップリング剤)
・エポキシシラン1:3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(旭化成ワッカーシリコ−ン社製、GF−82)
(水溶性樹脂)
・ポリエステル樹脂1:水溶性ポリエステル樹脂(互応化学社製、プラスコートZ565)
(水分散性樹脂)
・ポリアクリル酸樹脂1:水分散性アクリル樹脂(Stahl Polymers社製)
(水溶性遷移金属化合物)
・チタンキレート剤1:チタンラクテートアンモニウム塩(マツモトファインケミカル社製、TC−300)
(無機コロイド粒子)
・水性コロイダルシリカ1:(日産化学工業社製、スノーテックスST−O、酸性ゾル、粒子径:20nm)
(リン系防錆剤)
・高縮合リン酸塩1:ウルトラリン酸ナトリウム(関東化学社製、直鎖状および環状のものが相互に結合した網目構造)
・多価リン酸エステル1:フィチン酸(扶桑化学社製)
(防腐剤)
・イソチアゾリン系化合物1:イソチアゾリン系化合物(三愛石油社製、IT−25XA)
(溶媒)
・水1:イオン交換水
・アルコール1:イソプロピルアルコール(大伸化学社製)
Figure 2020084285
表1中の非溶媒成分(シランカップリング剤、水溶性樹脂、水分散性樹脂、水溶性遷移金属化合物、無機コロイド粒子、リン系防錆剤、および防腐剤)の含有量は、水性防錆表面処理組成物中の固形分換算値を表す。
[サンプル1〜6の水性防錆表面処理組成物の調製]
表1に示す配合比率(質量%)に従って、各成分を秤量し、攪拌機を用いて各成分を混合することにより、水溶液を得た。
得られた水溶液のphについて、液温25℃、pHメータ(堀場エステック社製、製品名:ガラス電極式水素イオン濃度指示計 D−51)を用いて、混合直後に測定した。
得られた水溶液に対して、pH調整剤として1M塩酸水溶液あるいは1M水酸化ナトリウム水溶液を添加して、表1に示すpH管理範囲内となるようにpHを調整し、サンプル1〜6の水性防錆表面処理組成物を得た。
得られた水性防錆表面処理組成物について、混合した後から使用する前までの保管期間、定期的にpHを測定し、表1中のpH管理範囲内となるように、pH調整剤を用いてpHを管理した。
サンプル1〜6の水性防錆表面処理組成物を用いて、下記の<連続塩水噴霧試験:SST試験>を行い、白錆が発生した試験時間(h)を測定した。結果を表1に示す。
<連続塩水噴霧試験:SST試験>
表面に亜鉛メッキが施された鉄製の六角ボルト 半ねじ(寸法:M8L35)を準備した。
準備した六角ボルトを水性防錆表面処理組成物の液中に30秒浸漬した。浸漬後、六角ボルトを取り出し5分液きりを行った。その後、六角ボルトに対して120℃で10分加熱処理を行い、六角ボルトの表面に、水性防錆表面処理組成物からなるシリカ皮膜を形成し、試験サンプルを作製した。
得られた試験サンプルを用いて、JIS Z2371に準拠し、塩水噴霧試験(SST、試験温度:35℃)を行い、白錆が発生した試験時間(h)を測定した。
[複合サイクル試験用の水性防錆表面処理組成物の調製]
得られたサンプル5の水性防錆表面処理組成物について、固形分の含有量が20質量%となるようにイオン交換水で希釈した後、さらにpH調整剤として1M塩酸水溶液あるいは1M水酸化ナトリウム水溶液を添加して、ph=1.8(サンプル7)、ph=2.2(サンプル8)、ph=3.2(サンプル9)、ph=4.4(サンプル10)、ph=5.5(サンプル11)、ph=6.5(サンプル12)を作製した。
作製直後のサンプル7〜12の水性防錆表面処理組成物を用いて、下記の<複合サイクル試験:CCT試験>を行った。結果を表2のサンプル7〜12、図2に示す。
また、下記の<複合サイクル試験:CCT試験>において、水性防錆表面処理組成物を使用せずに、表面にシリカ皮膜が形成されていない六角ボルトを試験サンプルとして用いて、同様にして、評価を行った。この結果は、表2および図2に「ブランク」として示す。
<複合サイクル試験:CCT試験>
表面がユニクロメート処理されたフランジ付き六角ボルト(寸法:M6L25)を5本準備した
水性防錆表面処理組成物を水で80%希釈を行い、その液中に準備した六角ボルトを30秒浸漬した。浸漬後、六角ボルトを取り出し5分液きりを行った。その後、平板に対して120℃で10分加熱処理を行い、六角ボルトの表面に、水性防錆表面処理組成物からなるシリカ皮膜を形成し、試験サンプルを作製した。
得られた試験サンプルを用いて、JASO M 609に準拠し、複合サイクル試験を行い、白錆あるいは赤錆が発生した試験サイクル数を測定した。
また、9、24および30サイクル時において、白錆あるいは赤錆が発生した六角ボルトの本数を測定した。
評価基準は以下の通りである。
◎:白錆1本以下
○:白錆2本以上
△:赤錆2本以上
×:5本全てが赤錆
Figure 2020084285
表2の結果を踏まえると、サンプル8〜12の水性防錆表面処理組成物は、サンプル7およびブランクの場合と比較して、複合サイクル試験において赤錆の発生を抑制できることが示された。また、サンプル9〜12の水性防錆表面処理組成物は、サンプル8の場合と比較して、複合サイクル試験において白錆の発生を抑制できることが示された。
赤錆は、ボルトなどの素材そのものの錆であり、素材の機能低下の要因となる恐れがある。白錆は、基本的には亜鉛が溶解し水酸化亜鉛であり、素材の腐食を抑制する犠牲防食の機能を有する。
<phの経時変化の観察>
得られたサンプル1、2の水性防錆表面処理組成物について、混合した後の保管期間中にpH調整剤を添加せず、室温(25℃)で、蓋をした保管容器(100mLポリビン、アズワン社製、I−BOY)内に保管した。定期的に、液温25℃、pHメータ(堀場エステック社製、製品名:ガラス電極式水素イオン濃度指示計 D−51)を用いて、保管容器内のサンプル1、2のphを測定した。結果を図3に示す。
図3の結果を踏まえると、サンプル1、2の水性防錆表面処理組成物において、pH調整剤を添加せずに、室温(25℃)で、保管容器中に保管した場合、経時的にphが変動することが示された。水性防錆表面処理組成物中に含まれる組成成分の分解や分解物の揮発などが、phが変動する要因として考えられる。
<phの管理>
得られたサンプル5の水性防錆表面処理組成物について、pH=4.3に調整した後、室温(25℃)で、蓋をした保管容器(100mLポリビン、アズワン社製、I−BOY)中に、2ヶ月保管した。2ヶ月後のpH=5.8を示した。その直後、pH調整剤として1M塩酸水溶液を用いて、pH=4.5に再調整した。
初期(pH=4.3)、2ヶ月後(pH=5.8)、pH再調整後(pH=4.5)のサンプル5において、上記の<複合サイクル試験:CCT試験>を行い、赤錆が発生した試験サイクル数を測定した。結果を図4に示す。
図4の結果を踏まえると、サンプル5の水性防錆表面処理組成物において、所定期間の保管により、表1に示すpH管理範囲から外れた場合でも、pH調整剤を用いてそのpHを再調整できる。ph再調整後のサンプル5は、初期と同等程度のpHを示すもので、複合サイクル試験において赤錆の発生を抑制する効果が初期と比べて同程度まで回復することが示された。
<リン系防錆剤の評価>
得られたサンプル4の水性防錆表面処理組成物において、組成物中のイオン交換水(溶媒)とリン系防錆剤との含有比率を調整して、組成物100質量%中の高縮合リン酸塩1(ウルトラリン酸ナトリウム)および多価リン酸エステル1(フィチン酸)の含有比率(質量%)が表3に示す値となるように変更した後、pH調整剤を添加して、4.0〜4.5の範囲内となるようにpHを調整し、サンプル13〜17の水性防錆表面処理組成物を得た。
pH調整直後のサンプル13〜17の水性防錆表面処理組成物を用いて、上記の<連続塩水噴霧試験:SST試験>を行い、白錆が発生した試験時間(h)を測定した。結果を表3に示す。
Figure 2020084285
サンプル4、14、16および17の水性防錆表面処理組成物は、サンプル13の場合と比べて、高縮合リン酸塩および多価リン酸エステルの合計含有比率を高めることで、白錆の発生を抑制できることが示された。
また、サンプル4、14、16および17の水性防錆表面処理組成物は、サンプル15の場合と比べて、多価リン酸エステルの含有比率を高めることで、白錆の発生を抑制できることが示された。
以上より、実施例1〜5の水性防錆表面処理組成物は、上記の複合サイクル試験の結果を踏まえると、比較例1や比較例2と比べて、pHを適切な範囲内とすることで、赤錆の発生を抑制できるため、皮膜の耐食性を向上できることが分かった。このような水性防錆表面処理組成物を表面に処理することで、金属部材の防錆性を向上させることが可能である。
10 管理システム
100 薬液槽
200 液供給装置
210 測定部
220 供給条件決定部
230 供給部

Claims (14)

  1. 金属部材の表面に皮膜を形成するために用いる、水性防錆表面処理組成物であって、
    シランカップリング剤と、
    水溶性チタン化合物または水溶性ジルコニウム化合物を含む水溶性遷移金属化合物と、
    高縮合リン酸塩または多価リン酸エステルを含むリン系防錆剤と、
    水を含む溶媒と、
    pH調整剤と、を含み、
    液温25℃における当該水性防錆表面処理組成物のpHが2.0〜9.0である、水性防錆表面処理組成物。
  2. 請求項1に記載の水性防錆表面処理組成物であって、
    当該水性防錆表面処理組成物のpHが3.0〜6.8であり、酸性である、水性防錆表面処理組成物。
  3. 請求項1または2に記載の水性防錆表面処理組成物であって、
    前記pH調整剤が、酸性化合物を含む、水性防錆表面処理組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の水性防錆表面処理組成物であって、
    前記シランカップリング剤、前記水溶性遷移金属化合物および前記リン系防錆剤の合計含有量が、当該水性防錆表面処理組成物全体に対して、3質量%以上40質量%以下である、水性防錆表面処理組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の水性防錆表面処理組成物であって、
    前記多価リン酸エステルは、フィチン酸を含む、水性防錆表面処理組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の水性防錆表面処理組成物であって、
    前記高縮合リン酸塩が、環状構造を有する高縮合リン酸塩を含む、水性防錆表面処理組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の水性防錆表面処理組成物であって、
    前記リン系防錆剤が、前記高縮合リン酸塩および前記多価リン酸エステルを含み、
    前記高縮合リン酸塩および前記多価リン酸エステルの合計含有量が、当該水性防錆表面処理組成物全体に対して、0.1質量%以上3.0質量%以下である、水性防錆表面処理組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の水性防錆表面処理組成物であって、
    無機コロイド粒子を含む、水性防錆表面処理組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の水性防錆表面処理組成物であって、
    前記溶媒が、水およびアルコールを含む水系混合溶媒である、水性防錆表面処理組成物。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の水性防錆表面処理組成物であって、
    水分散性樹脂または水溶性樹脂を含む、水性防錆表面処理組成物。
  11. 請求項10に記載の水性防錆表面処理組成物であって、
    前記水分散性樹脂は、ポリアクリル酸樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、フェノール樹脂およびこれらの変性体からなる群から選ばれる一種以上を含む、水性防錆表面処理組成物。
  12. 請求項1〜11のいずれか一項に記載の水性防錆表面処理組成物であって、
    クロム成分を含まない、水性防錆表面処理組成物。
  13. 請求項1〜12のいずれか一項に記載の水性防錆表面処理組成物であって、
    前記金属部材の表面に、亜鉛またはクロムを含むめっき層を有する、水性防錆表面処理組成物。
  14. 金属部材と、
    前記金属部材の表面に形成された、請求項1〜13のいずれか一項に記載の水性防錆表面処理組成物からなる皮膜と、を備える、表面被覆金属部材。
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