本発明のペーストは、無機粉末(A)およびポリエーテル構造を有するアルカリ可溶性樹脂(B−1)(以下、「アルカリ可溶性樹脂(B−1)」と記載する場合がある)を含有する。無機粉末(A)は、加熱焼成により溶融または融着し、導電性、誘電性、磁性などの機能を有する無機焼結体となる。アルカリ可溶性樹脂(B−1)を含有することにより、アルカリ現像液への溶解性を付与し、さらに、配線間の埋め込み性を向上させることができる。前述のとおり、従来公知のペーストは、配線パターンの狭ピッチ化に対して、配線パターン上に塗布した際の、配線つきセラミック積層体の配線部分と非配線部分の膜厚差が大きくなる、すなわち、配線間の埋め込み性が不十分である課題があった。本発明者らは、ポリエーテル構造の柔軟性に着目し、前記アルカリ可溶性樹脂(B−1)を含有することにより、配線間の埋め込み性を向上させることができることを見出した。アルカリ可溶性樹脂(B−1)は、柔軟性の高いポリエーテル構造部位が、無機粉末(A)の1つ1つの粒子間に入り込みやすい。また、アルカリ可溶性樹脂(B−1)は、親水性の高いポリエーテル構造とアルカリ可溶性基が無機粉末(A)の表面と相互作用し、無機粉末(A)の表面をアルカリ可溶性樹脂(B−1)が覆った状態が形成されやすい。これらのことから、アルカリ可溶性樹脂(B−1)により無機粉末(A)の粒子凝集を抑制し、配線間の埋め込み性を向上させることができる。
無機粉末(A)とは、無機成分からなる粉末をいう。無機粉末(A)としては、例えば、銀、銅、金、白金、パラジウム、タングステン、モリブデン、スズ、ニッケル、アルミニウム、ルテニウム、ケイ素、チタン、インジウム、鉄、コバルト、クロム、カーボン、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、シリカ(SiO2)、チタニア(TiO2)、マグネシア(MgO)、ベリリア(BeO)、ムライト(3Al2O3・2SiO2)、コーディライト(5SiO2・2Al2O3・2MgO)、スピネル(MgO・Al2O3)、フォルステライト(2MgO・SiO2)、アノーサイト(CaO・Al2O3・2SiO2)、セルジアン(BaO・Al2O3・2SiO2)、窒化アルミ(AlN)、フェライト(ガーネット型:Y3Fe5O12系、スピネル型:MeFe2O4系)などの金属や金属化合物やこれらの合金の粉末;ガラス−セラミック系複合粉末などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
これらの中でも、加熱焼成後に導電性を付与するためには、導電性粉末が好ましく、加熱焼成後に誘電性を付与するためには、誘電性粉末が好ましく、加熱焼成後に磁性を付与するためには、磁性粉末が好ましい。導電性粉末としては、銀、銅、金、白金、パラジウム、タングステン、モリブデンなどの粉末が好ましい。誘電性粉末としては、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニアなどの粉末や、ガラス−セラミック系複合粉末などが好ましい。磁性粉末としては、ニッケル、鉄、コバルト、クロム、フェライトなどの粉末が好ましい。これらの中でも、誘電性粉末がより好ましく、アルミナおよび/またはシリカを含有することがさらに好ましい。
無機粉末(A)の粒度分布(個数基準)におけるメジアン径(D50)は、1.0〜5.0μmが好ましい。無機粉末(A)のD50を1.0μm以上とすることにより、無機粉末(A)の粒子凝集をより抑制して、配線間の埋め込み性をより向上させることができる。一方、無機粉末(A)のD50を5.0μm以下とすることにより、無機粉末(A)の分散性を向上させ、配線間の埋め込み性をより向上させることができる。なお、無機粉末(A)のD50は、粒度分布測定装置(例えば、Microtrac HRA Model No.9320−X100;日機装(株)製)を用いたレーザー光散乱法により測定することができる。
ペースト中の無機粉末(A)の含有量は、全固形分中、40〜90重量%が好ましい。無機粉末(A)の含有量を40重量%以上とすることにより、ペーストの粘度を適度に保ち、印刷後の形状を適度に保持することができ、印刷適性をより向上させることができる。無機粉末(A)の含有量は、50重量%以上がより好ましい。一方、無機粉末(A)の含有量を90重量%以下とすることにより、無機粉末の分散性を向上させ、配線間の埋め込み性をより向上させることができる。また、露光・現像工程におけるパターン剥がれを抑制し、より微細なパターンを形成することができる。無機粉末(A)の含有量は、80重量%以下がより好ましい。ここで、ペーストの全固形分とは、有機溶剤を除く、ペーストの全構成成分をいう。
ペースト中の無機粉末(A)の含有量は、ペーストを塗布・乾燥して有機溶剤を除去したペースト乾燥膜の重量を測定した後、乾燥膜面に垂直な断面を、透過型電子顕微鏡(例えば、JEM−4000EX;日本電子(株)製)により観察し、像の濃淡により無機粉末(A)とその他の成分を区別して画像解析を行うことにより無機粉末(A)の体積分率を算出し、無機粉末(A)とその他の成分の密度との積から求めることができる。このとき、透過型電子顕微鏡による観察面積は20μm×100μm程度、倍率は1,000〜3,000倍程度とする。また、ペーストの各成分の配合量が既知の場合は、配合量から無機粉末(A)の含有量を算出することもできる。
本発明のペーストにおいて、アルカリ可溶性樹脂とは、アルカリ可溶性基を有する樹脂をいう。アルカリ可溶性基を有することにより、アルカリ可溶性基が無機粉末(A)の表面と相互作用し、無機粉末(A)の表面をアルカリ可溶性樹脂(B−1)が覆った状態が維持されるため、無機粉末(A)の粒子凝集を抑制し、後述するポリエーテル構造による所望の効果をより効果的に奏することができる。アルカリ可溶性基としては、例えば、カルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、チオール基などが挙げられる。これらを2種以上有してもよい。アルカリ現像液への溶解性が高いことから、カルボキシル基が好ましい。なお、アルカリ可溶性基としてカルボキシル基を2以上有する場合には、2つのカルボキシル基は酸無水物構造を形成していてもよい。アルカリ可溶性樹脂(B−1)は、ジカルボン酸構造および/またはジカルボン酸無水物構造を有することが好ましい。
アルカリ可溶性樹脂(B−1)は、ポリエーテル構造を有することが重要である。ポリエーテル構造を有さないと、アルカリ可溶性樹脂の柔軟性が低く粒子間に入り込めないため、無機粉末(A)の凝集によって配線間の埋め込み性が不十分となる。
アルカリ可溶性樹脂(B−1)としては、アクリル樹脂が好ましく、炭素−炭素二重結合を有するポリエーテル系化合物と、不飽和カルボン酸および/またはその酸無水物との共重合体が好ましい。さらに他のモノマーとの共重合体でもよい。
炭素−炭素二重結合を有するポリエーテル系化合物としては、例えば、下記一般式(1)で表される構造を有するビニル化合物や、下記一般式(2)で表される構造を有する(メタ)アクリル酸などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
上記一般式(1)中、nは任意の自然数、R1は炭素数2〜8のアルキレン基、R2は炭素数1〜24の1価の炭化水素基を表す。n個のR1は同じでも異なってもよい。
上記一般式(2)中、mは任意の自然、R3は炭素数2〜8のアルキレン基、R4は炭素数1〜24の1価の炭化水素基、R5はメチル基または水素を表す。m個のR3は同じでも異なってもよい。
一般式(1)および一般式(2)におけるポリエーテル構造の重合度nおよびmは、5〜60の自然数が好ましい。重合度nおよびmを5以上とすることにより、無機粉末(A)の凝集をより抑制して、配線間の埋め込み性をより向上することができる。重合度nおよびmは、10以上がより好ましい。一方、重合度nおよびmを60以下とすることにより、無機粉末(A)の1つ1つの粒子間に入り込みやすい大きさとなり、無機粉末(A)の粒子凝集をより抑制して、配線間の埋め込み性をより向上させることができる。重合度nおよびmは、30以下がより好ましい。R1およびR3の炭素数は2〜4が好ましい。R2およびR4の炭素数は1〜16が好ましく、1〜10がより好ましい。
不飽和カルボン酸およびその酸無水物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸などの不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボン酸などのジカルボン酸やこれらの酸無水物などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボン酸、シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボン酸無水物、無水フタル酸が好ましく、無水マレイン酸が特に好ましい。
他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレンなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
アルカリ可溶性樹脂(B−1)は、コハク酸構造、無水コハク酸構造、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸構造、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物構造、シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸構造、シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物構造、シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボン酸構造、シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボン酸無水物構造を有することが好ましい。これらの構造を有することにより、無機粉末(A)の凝集をより抑制して、配線間の埋め込み性をより向上させることができる。これらを2種以上有してもよい。これらの中でも、無水コハク酸構造がより好ましい。ここで、コハク酸構造を有するとは、コハク酸のアルキレン基から2つの水素を除いた残基を有することを意味し、他の構造についても同様とする。コハク酸構造や無水コハク酸構造を有するアルカリ可溶性樹脂(B−1)は、例えば、共重合成分である不飽和カルボン酸やその酸無水物として、マレイン酸や無水マレイン酸を用いることにより得ることができる。シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸構造やシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物構造を有するアルカリ可溶性樹脂(B−1)は、例えば、共重合成分である不飽和カルボン酸やその酸無水物として、シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸やシクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物を用いることにより得ることができる。シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸構造やシクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物構造を有するアルカリ可溶性樹脂(B−1)は、例えば、共重合成分である不飽和カルボン酸やその酸無水物として、シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボン酸やシクロヘキサジエン−1,2−ジカルボン酸無水物を用いることにより得ることができる。シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボン酸構造やシクロヘキサジエン−1,2−ジカルボン酸無水物構造を有するアルカリ可溶性樹脂(B−1)は、例えば、共重合成分である不飽和カルボン酸やその酸無水物として、フタル酸や無水フタル酸を用いることにより得ることができる。
アルカリ可溶性樹脂(B−1)は、下記一般式(3)で表される構造を有することが好ましい。一般式(3)で表される構造を有することにより、無機粉末(A)の凝集をより抑制して、配線間の埋め込み性をより向上することができる。なお、aモル%の繰り返し単位とbモル%の繰り返し単位は、ブロック共重合体でもランダム共重合体でもよい。
上記一般式(3)中、lは任意の自然数、R6は炭素数2〜8のアルキレン基、R7はエーテル基またはそれぞれ独立の2個の水酸基、R8は炭素数1〜24の1価の炭化水素基を表す。aおよびbは繰り返し単位のモル%(a+b=100)を表し、aは35〜65、bは35〜65の範囲である。なお、各繰り返し単位において、複数のR6、R7、R8はそれぞれ同じでも異なってもよい。aを35以上、bを65以下とすることにより、アルカリ可溶性基と無機粉末(A)の表面との相互作用をより高めて、配線間の埋め込み性をより向上させることができる。一方、aを65以下、bを35以上とすることにより、ポリエーテル構造により無機粉末(A)の凝集をより抑制して、配線間の埋め込み性をより向上させることができる。
一般式(3)におけるポリエーテル構造の重合度lは、5〜60の整数が好ましい。重合度lを5以上とすることにより、無機粉末(A)の凝集をより抑制して、配線間の埋め込み性をより向上することができる。重合度lは、10以上がより好ましい。一方、重合度lを60以下とすることにより、無機粉末(A)の1つ1つの粒子間に入り込みやすい大きさとなり、無機粉末(A)の粒子凝集をより抑制して、配線間の埋め込み性をより向上させることができる。重合度lは、30以下がより好ましい。R6の炭素数は2〜4が好ましい。R8の炭素数は1〜16が好ましく、1〜10がより好ましい。
ペースト中におけるアルカリ可溶性樹脂(B−1)の含有量は、全固形分中、0.1〜5.0重量%が好ましい。アルカリ可溶性樹脂(B−1)の含有量を0.1重量%以上とすることにより、無機粉末(A)の分散性をより向上させ、配線間の埋め込み性をより向上させることができる。アルカリ可溶性樹脂(B−1)の含有量は、0.5重量%以上がより好ましい。一方、アルカリ可溶性樹脂(B−1)の含有量を5.0重量%以下とすることにより、ペーストの粘度を適度に保ち、印刷後の形状を適度に保持することができ、印刷適性をより向上させることができる。
アルカリ可溶性樹脂(B−1)の重量平均分子量(Mw)は、3,000〜50,000が好ましい。アルカリ可溶性樹脂(B−1)のMwを3,000以上とすることにより、無機粉末(A)の粒子凝集を抑制しやすい大きさとなり、配線間の埋め込み性をより向上させることができる。一方、アルカリ可溶性樹脂(B−1)のMwを50,000以下とすることにより、無機粉末(A)の1つ1つの粒子間に入り込みやすい大きさとなり、無機粉末(A)の粒子凝集をより抑制して、配線間の埋め込み性をより向上させることができる。アルカリ可溶性樹脂(B−1)のMwは、ポリスチレン換算値であり、高速液体クロマトグラフィー(Alliance 2695;日本ウォーターズ(株)製)等を用いて測定することができる。
本発明のペーストは、さらに、光反応性官能基を有するアルカリ可溶性樹脂(B−2)(以下、「アルカリ可溶性樹脂(B−2)」と記載する場合がある。)を含有することが好ましい。ただし、アルカリ可溶性樹脂が光反応性官能基を有する場合であっても、ポリエーテル構造を有する場合はアルカリ可溶性樹脂(B−1)に分類するものとする。アルカリ可溶性樹脂(B−1)に加えてアルカリ可溶性樹脂(B−2)を含むことにより、後述する露光工程における硬化を促進し、現像工程におけるパターン剥がれを抑制し、より微細なパターンを形成することができる。ここで、光反応性官能基とは、ラジカル重合性を有する官能基をいう。光反応性官能基としては、例えば、(メタ)アクリル基、アリル基、ビニル基、メルカプト基などが挙げられる。これらを2種以上有してもよい。これらの中でも、(メタ)アクリル基が好ましい。
アルカリ可溶性樹脂(B−2)としては、配線間の埋め込み性をより向上させる観点から、ノボラック樹脂が好ましい。ノボラック樹脂として、例えば、“KAYARAD”(登録商標)CCR−1291H、CCR−1235、CCR−1322H(以上、日本化薬(株)製)、CNEA−100、PNEM−50(以上、ケーエスエム(株)製)、“EBECRYL”(登録商標)3603(ダイセル・オルネクス(株)製)などが挙げられる。
ペースト中におけるアルカリ可溶性樹脂(B−2)の含有量は、全固形分中、5〜40重量%が好ましい。アルカリ可溶性樹脂(B−2)の含有量を5重量%以上とすることにより、露光・現像工程における架橋が促進され、パターン剥がれを抑制し、より微細なパターンを形成することができる。一方、アルカリ可溶性樹脂(B−2)の含有量を40重量%以下とすることにより、露光・現像工程における架橋を適度に抑えてパターン埋まりを抑制し、より微細なパターンを形成することができる。
本発明のペーストは、さらに有機溶剤(C)を含有することが好ましい。有機溶剤(C)としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールブチルエーテルアセテート、エチレングリコールプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、γ−ブチロラクトン、アセト酢酸エチル、乳酸エチル、ジアセトンアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、シクロヘキサノールアセテート、2−(4−メチルシクロヘキサ−3−エニル)プロパン−2−オールなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
無機粉末(A)の粒子凝集を抑制し、配線間の埋め込み性をより向上させる観点から、SP値が18.5〜22.1(J/cm3)1/2である有機溶剤(C−1)(以下、「有機溶剤(C−1)と記載する場合がある。」を含むことが好ましい。有機溶剤(C−1)を含むことにより、アルカリ可溶性樹脂(B−1)の溶解性が向上し、アルカリ可溶性樹脂(B−1)のポリエーテル構造の柔軟性をより高めて、配線間の埋め込み性をより向上させることができる。有機溶剤(C−1)としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールブチルエーテルアセテート、エチレングリコールプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、γ−ブチロラクトン、アセト酢酸エチル、シクロヘキサノールアセテートなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。なお、有機溶剤(C−1)のSP値は、有機溶剤(C−1)の分子構造から、Fedorsの計算方法を用いて算出することができる。
有機溶剤(C−1)は、エーテル構造および酢酸エステル構造を含むことがより好ましい。エーテル構造および酢酸エステル構造を含むことにより、アルカリ可溶性樹脂(B−1)の溶解性が向上し、アルカリ可溶性樹脂(B−1)のポリエーテル構造の柔軟性をより高めて、配線間の埋め込み性をより向上させることができる。エーテル構造および酢酸エステル構造を含む有機溶剤(C−1)としては、例えば、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールブチルエーテルアセテート、エチレングリコールプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
本発明のペーストにおける有機溶剤(C−1)の含有量は、5〜30重量%が好ましい。有機溶剤(C−1)の含有量を5重量%以上とすることにより、塗布工程における粘度上昇を抑制して、配線間の埋め込み性をより向上させることができる。一方、有機溶剤(C−1)の含有量を30重量%以下とすることにより、ペーストの粘度を適度に保ち、印刷後の形状を適度に保持し、印刷適性を向上させることができる。
本発明のペーストは、光反応開始剤(D)を含むことが好ましい。ここで、本発明における光反応開始剤(D)とは、紫外線等の短波長の光を吸収して分解する、または、水素引き抜き反応によりラジカルを生じる化合物をいう。紫外線等の光を吸収して分解する光反応開始剤(D)としては、例えば、1,2−オクタンジオン、ベンゾフェノン、オルト−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、ミヒラーケトン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサノン、6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノンなどのアルキルフェノン系光反応開始剤;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイドなどのアシルフォスフィンオキサイド系光反応開始剤;1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−2(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、1−フェニル−1,2−ブタンジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(O−ベンゾイル)オキシムのオキシムエステル系光反応開始剤などが挙げられる。水素引き抜き反応によりラジカルを生じる光反応開始剤(D)としては、例えば、ベンゾフェノン、アントラキノン、チオキサントン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステルなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、露光時の感度を向上させ、パターン剥がれを抑制し、より微細なパターンを形成する観点から、アルキルフェノン系光反応開始剤および/またはアシルフォスフィンオキサイド系光反応開始剤が好ましく、アルキルフェノン系光反応開始剤およびアシルフォスフィンオキサイド系光反応開始剤を含有することがより好ましい。
ペースト中の光反応開始剤(D)の含有量は、全固形分中、0.1〜15.0重量%が好ましい。光反応開始剤(D)の含有量を0.1重量%以上とすることにより、露光・現像工程における感度を向上させ、パターン剥がれを抑制し、より微細なパターンを形成することができる。一方、光反応開始剤(D)の含有量を15.0重量%以下とすることにより、露光・現像工程における乾燥膜表面の光吸収を適度に抑制し、残渣を抑制し、より微細なパターンを形成することができる。
本発明のペーストは、25℃におけるTI(Thixotropy Index)値(3rpm/30rpm)が1.0以上3.0以下であることが好ましい。本発明において、TI値とは、大気圧下において、B型粘度計(ブルックフィールド粘度計、型式HB DV−I;英弘精機(株)製)を用いて、回転数3rpmと30rpmで測定した粘度の値の比をいう。本発明者らは、回転数3rpmで測定した粘度の値を、塗布後のペーストの静的状態の指標とし、回転数30rpmで測定した粘度の値を、塗布時にせん断力がかかったペーストの動的状態の指標として、両回転数でのTI値に着目した。TI値を1.0以上とすることにより、印刷後の形状を適度に保持することができ、印刷適性をより向上させることができる。一方、TI値を3.0以下とすることにより、配線間の埋め込み性をより向上させることができる。TI値は2.4以下がより好ましい。TI値を前述の範囲にする手段としては、例えば、前述の好ましいアルカリ可溶性樹脂(B−1)や有機溶剤(C−1)を用いる方法、無機粉末(A)およびアルカリ可溶性樹脂(B−1)の含有量を前述の好ましい範囲にする方法などが挙げられる。
本発明のペーストは、所望の特性を損なわない範囲で、バインダー、反応性化合物、可塑剤、レベリング剤、増感剤、分散剤、シランカップリング剤、消泡剤、顔料等の添加剤を含有してもよい。
本発明のペーストは、例えば、前述の(A)〜(B)成分、必要に応じて(C)成分、(D)成分その他添加剤を、混合および/または分散させることにより得ることができる。混合および/または分散させる装置としては、例えば、三本ローラー、ボールミル等の分散機や混練機などが挙げられる。
次に、本発明の硬化膜について説明する。本発明の硬化膜は、本発明のペーストを硬化してなる。硬化膜の膜厚は、5〜30μmが好ましい。硬化膜の膜厚を5μm以上とすることにより、焼成時の欠陥を抑制することができる。一方、硬化膜の膜厚を30μm以下とすることにより、後述する露光・現像工程での剥がれを抑制し、より微細なパターンを形成することができる。
本発明の硬化膜は、所定のパターン形状を有していてもよい。パターン形状としては、例えば、ホール形状などが挙げられる。パターン形状について、ホールの最小径は、20〜100μmが好ましい。ホールの最小径を20μm以上とすることにより、ホールの埋まりを抑制することができる。一方、ホールの最小径を100μm以下とすることにより、より微細なパターンを形成することができる。
本発明の硬化膜は、例えば、本発明のペーストを基板上に塗布して乾燥し、露光により光硬化させることにより得ることができる。パターン形状の硬化膜を製造する場合には、パターン露光した後、現像することによりパターンを形成してもよい。
塗布工程における塗布方法としては、例えば、スプレー塗布、ロールコーティング、スクリーン印刷や、ブレードコーター、ダイコーター、カレンダーコーター、メニスカスコーター、バーコーターを用いた塗布方法などが挙げられる。塗布膜の膜厚は、塗布方法、ペーストの固形分濃度や粘度等に応じて適宜選択することができる。
乾燥方法としては、例えば、オーブン、ホットプレート、赤外線等の加熱装置を用いた加熱乾燥や、真空乾燥などが挙げられる。加熱温度は、50〜100℃が好ましい。乾燥温度を50℃以上とすることにより、有機溶剤(C)を効率良く揮発除去することができる。一方、乾燥温度を100℃以下とすることにより、ペーストの熱架橋を抑制し、露光・現像工程における非露光部の残渣をより抑制し、より微細なパターンを形成することができる。加熱時間は、3分間〜数時間が好ましい。
露光方法としては、フォトマスクを介して露光する方法、フォトマスクを用いずに露光する方法があり、フォトマスクを用いない露光方法としては、全面露光する方法、レーザー光等を用いて直接描画する方法などが挙げられる。露光装置としては、例えば、ステッパー露光機、プロキシミティ露光機などが挙げられる。露光する活性光線としては、例えば、近紫外線、紫外線、電子線、X線、レーザー光等が挙げられ、紫外線が好ましい。紫外線の光源としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ハロゲンランプ、殺菌灯などが挙げられ、超高圧水銀灯が好ましい。
アルカリ現像を行う場合の現像液としては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの水溶液が挙げられる。これらの水溶液に、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン等の極性溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン;メチルイソブチルケトン等のケトン類;界面活性剤などを添加してもよい。
現像方法としては、例えば、露光後の硬化膜を形成した基板を静置または回転させながら現像液をスプレーする方法、露光後の硬化膜を形成した基板を現像液中に浸漬する方法、露光後の硬化膜を形成した基板を現像液中に浸漬しながら超音波をかける方法などが挙げられる。
現像により得られた硬化膜に、リンス液によるリンス処理を施してもよい。リンス液としては、例えば、水;エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類の水溶液;乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類の水溶液などが挙げられる。
本発明の硬化膜を積層して積層体とすることもできる。積層数は、1〜30層が好ましい。積層数を1層以上とすることにより、所定のパターンの厚みを大きくすることができる。一方、積層数を30層以下とすることにより、層間のアライメントずれの影響を小さくすることができる。
次に、本発明の焼成体について説明する。本発明の焼成体は、本発明の硬化膜を焼成してなるものであり、その形状は問わない。焼成体の厚みは、2〜20μmが好ましい。焼成体の厚みを2μm以上とすることにより、焼成時の欠陥を抑制することができる。一方、焼成体の厚みを20μm以下とすることにより、焼成時の膨れを抑制することができる。
本発明の焼成体のホールの最小径は、10〜50μmが好ましい。焼成体のホールの最小径を10μm以上とすることにより、焼成時の収縮によるホールの埋まりを抑制することができる。一方、ホールの最小径を50μm以下とすることにより、より微細なパターンを形成することができる。
本発明の焼成体は、例えば、前述の本発明の硬化膜やその積層体を焼成することにより得ることができる。焼成方法としては、例えば、300〜600℃で5分間〜数時間熱処理した後、さらに850〜900℃で5分間〜数時間熱処理する方法などが挙げられる。
本発明の電子部品は、焼成体、導電性配線層および端子電極を有することが好ましい。焼成体としては、前述の本発明の焼成体が好ましく、導電性配線層としては、感光性導電ペーストの硬化膜を焼成してなるものが好ましい。導電性配線層を有することにより、導電回路を形成することができる。端子電極は、焼成体と導電性配線層の外部に設置されることが好ましい。端子電極を構成する材料としては、例えば、ニッケルやスズなどが挙げられる。
本発明の電子部品の製造方法は、ペーストをスクリーン印刷法により塗布する工程、乾燥する工程、露光・現像する工程を有することが好ましい。
次に、本発明の配線つきセラミック積層体について説明する。本発明の配線つきセラミック積層体は、セラミック層上に配線パターンを有する配線つきセラミックを複数層有する積層体の最上層に、さらにセラミック層を有する。配線つきセラミックの配線パターンの配線ピッチは10〜60μmが好ましい。配線ピッチを10μm以上とすることにより、配線間の意図しない短絡を抑制することができる。一方、配線ピッチを60μm以下とすることにより、より微細なパターンを形成することができる。しかしながら、従来公知の配線つきセラミック積層体の場合、配線間の埋め込み性が不十分であることから、かかる狭ピッチの配線パターンを形成すると、配線パターンを含む部分と配線パターンを含まない部分の段差が大きくなる課題があった。本発明の配線つきセラミック積層体は、かかる狭ピッチの配線パターンを形成した場合であっても、配線パターンを含む部分の最大厚みAと、配線パターンを含まない部分の最小厚みBとの差を10μm以下とすることが好ましい。最大厚みAと最小厚みBの差が10μm以下とすることにより、設計形状通りの製品を得ることができる。最大厚みAと最小厚みBの差を10μm以下とする手段としては、例えば、前述の好ましいペーストを用いてセラミック層を形成する方法などが挙げられる。配線つきセラミック積層体の積層数は、2〜30層が好ましい。積層数を2層以上とすることにより、所定のパターンの厚みを大きくすることができる。一方、積層数を30層以下とすることにより、配線つきセラミック積層体の最大厚みAと最小厚みBの差をより小さくすることができる。
図1に、本発明の配線つきセラミック積層体の一態様の断面模式図を示す。配線つきセラミック積層体10は、基板40、配線パターン20、21および22と、セラミック層30と、最上層のセラミック層31から構成される。各配線パターン20、21および22は、それぞれセラミック層30または最上層のセラミック層31で覆われている。配線パターン20a、20b、および20cは同一直線上に配置されており、配線パターン21、および22についても同様である。配線パターン20a、21aおよび22aは同一平面上に配置されており、符号bおよびcについても同様である。基板40表面から最上層のセラミック層31上辺までの最大厚みがAであり、最小厚みがBである。
本発明の配線つきセラミック積層体の製造方法の一例を、以下に説明する。
まず、基板上にセラミック層を形成し、ビアホールを形成した後に、ビアホールに導体を埋め込むことにより、層間接続配線を形成する。基板としては、例えば、熱発泡シートなどが挙げられる。セラミック層形成方法としては、例えば、スクリーン印刷法によりセラミックペーストを塗布して乾燥する方法などが挙げられる。セラミックペーストとしては、例えば、アルミナおよび/またはシリカを含有するペーストなどが挙げられる。セラミック層とビアホールを一度に形成してプロセスを簡略化できることから、前述の本発明のペーストが好ましい。ビアホール形成方法としては、例えば、フォトリソグラフィー法などが挙げられる。ビアホールに導体を埋め込む方法としては、例えば、スクリーン印刷法により導体ペーストを埋め込み、乾燥する方法などが挙げられる。導体ペーストとしては、例えば、銅、銀および/または銀−パラジウム合金を含有するペーストなどが挙げられる。
層間接続配線を形成したセラミック層上に、内部配線を形成する。内部配線の形成方法としては、例えば、感光性導電ペーストを用いたフォトリソグラフィー法などが挙げられる。必要に応じて、さらにセラミックペーストを用いて誘導体パターンや絶縁体パターンなどを形成してもよい。誘電体パターンおよび絶縁体パターンの形成方法としては、例えば、フォトリソグラフィー法などが挙げられる。セラミックペーストとしては、配線部分と非配線部分の膜厚差を小さくすることができることから、本発明のペーストが好ましい。
次に、層間接続配線および内部敗勢を形成した配線つきセラミックを複数層積層して、配線つきセラミック積層体を得る。積層方法としては、例えば、感光性導電ペーストとセラミックペーストを交互に用いて、フォトリソグラフィー法により積層する方法などが挙げられる。外部との接触による配線の短絡を抑制する観点から、配線つきセラミック積層体の最上層に、さらにセラミック層を有することが好ましい。内部配線の配線ピッチは10〜60μmが好ましい。
本発明の電子部品の製造方法の一例として、配線つきセラミック積層体を用いた積層チップインダクタの製造方法を以下に説明する。
配線つきセラミック積層体を所望のチップサイズにダイシングし、焼成し、端子電極を塗布し、めっき処理をすることにより、積層チップインダクタを得ることができる。ダイシング装置としては、例えば、ダイス切断機などが挙げられる。ダイシング温度は、80〜110℃が好ましい。焼成方法としては、例えば、300〜600℃で5分間〜数時間熱処理した後、さらに850〜900℃で5分間〜数時間熱処理する方法などが挙げられる。端子電極の塗布方法としては、例えば、スパッタ法などが挙げられる。めっき処理に用いる金属としては、例えば、ニッケル、スズなどが挙げられる。
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<ペーストの原料>
用いた原料は以下のとおりである。
<無機粉末>
無機粉末(A−1):シリカ粉末(D50:3.2μm)
無機粉末(A−2):アルミナ粉末(D50:2.4μm)
なお、無機粉末(A)のD50は、粒度分布測定装置(Microtrac HRA Model No.9320−X100;日機装(株)製)を用いて、レーザー散乱法により測定した粒度分布(個数基準)におけるメジアン径とした。
<アルカリ可溶性樹脂>
アルカリ可溶性樹脂(B−1a):無水マレイン酸/ポリエチレングリコールメチルビニルエーテル(ポリオキシエチレン重合度:10)=50/50(モル比)を共重合したアクリル樹脂(Mw:10,000)
アルカリ可溶性樹脂(B−1b):無水マレイン酸/ポリエチレングリコールメチルビニルエーテル(ポリオキシエチレン重合度:5)=50/50(モル比)を共重合したアクリル樹脂(Mw:7,000)
アルカリ可溶性樹脂(B−1c):無水マレイン酸/ポリエチレングリコールメチルビニルエーテル(ポリオキシエチレン重合度:30)=50/50(モル比)を共重合したアクリル樹脂(Mw:15,000)
アルカリ可溶性樹脂(B−1d):無水マレイン酸/ポリエチレングリコールメチルビニルエーテル(ポリオキシエチレン重合度:50)=50/50(モル比)を共重合したアクリル樹脂(Mw:20,000)
アルカリ可溶性樹脂(B−1e):無水マレイン酸/ポリエチレングリコールメチルビニルエーテル(ポリオキシエチレン重合度:3)=50/50(モル比)を共重合したアクリル樹脂(Mw:3,000)
アルカリ可溶性樹脂(B−1f):無水マレイン酸/ポリエチレングリコールメチルビニルエーテル(ポリオキシエチレン重合度:90)=50/50(モル比)を共重合したアクリル樹脂(Mw:45,000)
アルカリ可溶性樹脂(B−1g):無水マレイン酸/ポリプロピレングリコールメチルビニルエーテル(ポリオキシプロピレン重合度:10)=50/50(モル比)を共重合したアクリル樹脂(Mw10,000)
アルカリ可溶性樹脂(B−1h):無水マレイン酸/ポリエチレングリコールビニルラウリルエーテル(ポリオキシエチレン重合度:10)=50/50(モル比)を共重合したアクリル樹脂(Mw:10,000)
アルカリ可溶性樹脂(B−1i):無水マレイン酸/ポリエチレングリコールドコシルビニルエーテル(ポリオキシエチレン重合度:10)=50/50(モル比)を共重合したアクリル樹脂(Mw:10,000)
アルカリ可溶性樹脂(B−1j):メタクリル酸/ポリエチレングリコールメチルビニルエーテル(ポリオキシエチレン重合度:10)=50/50(モル比)を共重合したアクリル樹脂(Mw:10,000)
アルカリ可溶性樹脂(B−2a):“KAYARAD”(登録商標)CCR−1322H(ノボラック樹脂、Mw:8,000;日本化薬(株)製)
アルカリ可溶性樹脂(B−2b):メタクリル酸/メタクリル酸メチル/スチレン=40/30/30(モル比)を共重合し、カルボキシル基に対して0.4モル当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させたアクリル樹脂(Mw:30,000)
アルカリ可溶性樹脂(B−3):メタクリル酸/メタクリル酸メチル=50/50(モル比)を共重合したアクリル樹脂(Mw:10,000)
なお、アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、高速液体クロマトグラフィー(Alliance 2695;日本ウォーターズ(株)製)を用いて測定した。
<有機溶剤>
有機溶剤(C−1a):ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート(SP値:19.1(J/cm3)1/2、エーテル構造および酢酸エステル構造を含む)
有機溶剤(C−1b):エチレングリコールブチルエーテル(SP値:22.1(J/cm3)1/2、エーテル構造を含み、酢酸エステル構造を含まない)
有機溶剤(C−2):ジアセトンアルコール(SP値:24.0(J/cm3)1/2、エーテル構造および酢酸エステル構造を含まない)
なお、有機溶剤のSP値は、分子構造から、Fedorsの計算方法を用いて算出した。
<光反応開始剤>
光反応開始剤(D−1):“Omnirad”(登録商標)TPO H(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド;豊通ケミプラス(株)製)
光反応開始剤(D−2):“Omnirad”907(2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン);豊通ケミプラス(株)製)
光反応開始剤(D−3):“Omnirad”819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド;豊通ケミプラス(株)製)。
<その他>
アルカリ可溶性でないアクリル樹脂:“オリコックス”(登録商標)KC−1700P(共栄社化学(株))
アルカリ可溶性でないポリエーテル樹脂:スチレン/ポリエチレングリコールメチルビニルエーテル(ポリオキシエチレン重合度:10)=50/50(モル比)を共重合したポリエーテル樹脂(Mw:10,000)。
(製造例1:感光性導電ペースト(AgP−1)の作製)
アルカリ可溶性樹脂として“ARUFON”(商標登録)UC−3000(東亞合成(株)製)10重量部、反応性化合物としてDPHA(ダイセル・オルネクス(株)製)10重量部、有機溶剤としてジエチレングリコールメチルエーテル10重量部を混合して2時間撹拌した後に、導電性粉末として銀粒子(SBA1017;東洋化学工業(株)製)100重量部を加えて3本ローラー(EXAKT M−50;EXAKT社製)を用いて混練し、感光性導電ペーストAgP−1を製造した。
(製造例2:配線パターンつき基板(Ag−1)の作製)
ガラス基板上に、製造例1で得られた感光性導電ペーストAgP−1を、乾燥後膜厚が10μmとなるように、スクリーン印刷法により塗布し、100℃の熱風乾燥機で10分間乾燥して、ガラス基板上の乾燥膜を得た。得られた乾燥膜に、ライン幅/スペース幅(以下、「L/S」)が15μm/15μm、20μm/20μm、25μm/25μmの3種類のコイル状配線パターンの露光マスクを、GAPなしで乾燥膜に設置し、マスクを介して21mW/cm2の出力の超高圧水銀灯により照射量300mJ/cm2の露光(波長365nm換算)を行った。
その後、0.1重量%炭酸ナトリウム水溶液を現像液として、非露光部が全て溶解する時間までシャワー現像し、L/Sが異なる3種類の配線パターンつき基板Ag−1を製造した。
各実施例および比較例における評価方法を以下に示す。
<TI値(3rpm/30rpm)>
各実施例および比較例により得られたペーストを、25℃の恒温槽を用いて3分間温調した後、大気圧下において、B型粘度計(ブルックフィールド粘度計、型式HB DV−I;英弘精機(株)製)を用いて、回転数3rpmおよび30rpmにおいて粘度を測定した。3rpmでの粘度を30rpmでの粘度で割った値を記録した。
<配線間の埋め込み性>
製造例2で作製した配線パターンつき基板Ag−1上に、各実施例および比較例により得られたペーストを、乾燥後膜厚がガラス面から計測して20μmとなるように、スクリーン印刷法により塗布し、それぞれ70℃の熱風乾燥機で10分間乾燥して、Ag−1上の乾燥膜を得た。得られた乾燥膜に対して、21mW/cm2の出力の超高圧水銀灯により照射量300mJ/cm2の露光(波長365nm換算)を行い、配線パターンつきセラミックを得た。
得られた配線パターンつきセラミックを配線パターンと垂直に割断し走査型電子顕微鏡(S2400;(株)日立製作所製)を用いて倍率500倍で断面を拡大観察し、配線パターン部と非配線パターン部のガラス面からの厚みを計測し、以下の基準で評価した。
膜厚差が1.0μmより小さい:◎
膜厚差が1.0μm以上3.0μm以下である:○
膜厚差が3.0μmより大きい:×
本評価において、よりピッチの細かい配線パターンにおいて膜厚差が小さいほど、配線間の埋め込み性に優れている。
<微細パターン形成>
PETフィルム(S10“ルミラー”(商標登録)#125;東レ(株)製)上に、各実施例および比較例により得られたペーストを、乾燥後膜厚が10μmとなるようにスクリーン印刷法により複数枚塗布し、それぞれ70℃の熱風乾燥機で10分間乾燥して、PETフィルム上にペーストの乾燥膜を得た。得られた乾燥膜に、GAP50μm幅を設けた状態で、ホール形状パターンのホール径が40μm、50μm、60μmの3種類の露光マスクをそれぞれ介して、いずれも21mW/cm2の出力の超高圧水銀灯により照射量50mJ/cm2の露光(波長365nm換算)を行った。
その後、0.1重量%炭酸ナトリウム水溶液を現像液として、非露光部が全て溶解する時間までシャワー現像し、ホール径が異なる3種類のパターン形成シートを製造した。
ホール径が異なる3種のパターン形成シートを、それぞれ光学顕微鏡を用いて倍率10倍で拡大観察し、パターンの剥がれ、ホールの埋まり・残渣の有無から、下記の基準により評価した。
パターンの剥がれ、ホールの埋まり・残渣が認められない:○
パターンの剥がれが認められる:剥がれ
ホールの埋まり・残渣が認められる:埋まり。
<印刷適性>
微細パターン形成と同様の方法により、PETフィルム上に、各実施例および比較例により得られたペーストを塗布し、塗布範囲の端部を、光学顕微鏡を用いて倍率20倍で1分間観察し、下記の基準により評価した。
塗布範囲の端部ににじみやゆらぎが認められない:○
塗布範囲の端部ににじみやゆらぎが認められる:△。
(実施例1)
ガラスフラスコに、表1記載の組成比になるように、アルカリ可溶性樹脂、有機溶剤、光反応開始剤を入れ、60℃で2時間撹拌し、有機成分溶液を得た。この有機成分溶液に、さらに表1記載の組成比になるように、無機粉末を添加し、撹拌した後、3本ローラー(EXAKT M−50;EXAKT社製)を用いて混練し、ペーストP−1を製造した。得られたペーストP−1について、前述の方法により評価した結果を表7に示す。
PETフィルム(S10“ルミラー”#125;東レ(株)製)上に、得られたペーストP−1を、乾燥後膜厚が10μmになるようにスクリーン印刷法により塗布し、塗布膜を得た。得られた塗布膜を、70℃の熱風乾燥機を用いて5分間乾燥して、ホール形状のパターンのホール径が50μmの露光マスクを介して、21mW/cm2の出力の超高圧水銀灯により照射量100mJ/cm2の露光(波長365nm換算)を行った。その後、0.1重量%炭酸ナトリウム水溶液を現像液として、全溶解時間までシャワー現像し、ホールパターンを有するセラミックP−1を製造した。セラミックP−1上に、製造例1により得られた導電ペーストAgP−1を用いて、乾燥後膜厚を8μm、乾燥時間を10分間とした以外はP−1と同様にして塗布および乾燥し、ホールへ導電性ペーストを埋め込みながら、セラミックP−1上に乾燥膜Ag−1を得た。乾燥膜Ag−1にコイル状のパターンのL/Sが20/20μmの露光マスクを介して、照射量を400mJ/cm2とした以外はP−1と同様にして露光・現像を行い、配線パターンを有する配線つきセラミックP−1を得た。この配線つきセラミック上に、同様にしてP−1およびAg−1をさらに9回繰り返し形成し、最上層にホールパターンを有するセラミックP−1を形成することにより、10層積層配線つきセラミック積層体P−1を製造した。
得られた10層積層配線つきセラミック積層体P−1について、配線パターンと垂直に割断し、走査型電子顕微鏡(S2400;(株)日立製作所製)を用いて、倍率500倍で断面を拡大観察したところ、PETフィルム上から最上層のセラミックまでの最大厚みAと最小厚みBの差は10μm以下であった。
上記方法により10層積層配線つきセラミック積層体P−1をさらに1体製造し、ダイス切断機を用いて、温度90℃の条件で、0.2mm×0.4mm×0.2mmのサイズに切断しながらPETフィルムから剥離し、350℃で10時間熱処理した後、さらに880℃で10分間保持して焼成し、10層積層焼成体P−1を製造した。
得られた10層積層焼成体P−1に、スパッタで端子電極を塗布した後、ニッケルおよびスズによりめっき処理を行い、積層チップインダクタを製造した。この積層チップインダクタについて、端子電極両端にはんだで銅配線を接続した。デジタルマルチメータ(CDM−16D;カスタム社製)を用いて導通を評価したところ、問題なく導通していた。
(実施例2−36、比較例1〜2)
ペーストの組成を表1〜表6に記載のとおり変更した以外は実施例1と同様にして、ペーストP−2〜P−38を得た。得られたペーストP−2〜P−38を用いて、実施例1と同様に、前述の方法により評価した結果を表7〜表12に示す。なお、P−36〜38は感光性を有しないため、微細パターン形成は行わなかった。