JP2020083769A - Ampk活性化剤 - Google Patents

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均 芦田
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陽子 山下
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Akiko Takagaki
晶子 高垣
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Abstract

【課題】長年食されて安全性が経験的に確認されている天然物由来の成分を有効成分とするAMPK活性化剤を提供すること。【解決手段】5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンを有効成分とするAMPK活性化剤を提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、茶カテキン代謝物である5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトン[5−(3,4,5−trihydroxyphenyl)−γ−valerolactone]を有効成分とするAMPK(AMP−activated protein kinase)活性化剤に関する。本発明は、特には、AMPK活性化剤を含有する耐糖能異常予防および/または改善作用を有する医薬品またはサプリメントに関する。
近年、食生活の欧米化に伴い、肥満人口が増大している。厚生労働省の平成27年「国民健康・栄養調査」によると、肥満者(BMI≧25)の割合は男性29.5%、女性19.2%にのぼる。肥満症はインスリン抵抗性を基盤として、糖尿病、高脂血症、高血圧といった生活習慣病を惹起することはよく知られており、肥満人口の増加に伴う生活習慣病の患者数の増加は、大きな社会問題となっている。一旦、生活習慣病を発症すると、運動や食事などの日常生活に制限が生じたり、病状が進行すると命に関わる疾患にも繋がりかねないことから、生活習慣病は健康長寿の最大の阻害要因と考えられている。また、患者数の増加に伴い、総医療費に占める生活習慣病にかかる医療費の割合が増加傾向にあり、現代社会に大きな影響を与えている。厚労省が3年ごとに実施している「患者調査」によると、生活習慣病の代表である糖尿病の総患者数は、平成26年に316万6000人で、前回の調査よりも46万人以上増加している。
肥満は摂取エネルギー量が消費エネルギー量を上回ることにより生じる。肥満の予防・改善のためには、食事制限により、エネルギー摂取量を減らすか、運動により消費エネルギー量を増大させることが望ましい。しかしながら、食生活の欧米化により脂質摂取量が増えている一方で、交通機関の発達により運動量が減少し、現代社会においては日常生活において習慣的に運動を行うことは難しい場合が多い。厚生労働省の平成27年「国民健康・栄養調査」によると運動習慣のある者の割合は、男性37.8%、女性27.3%と全国民の半分以下の割合でしかない。そこで、日常生活の中で運動以外の方法で、効率良くエネルギーを消費出来ることが出来れば、エネルギー消費量を増大させ、肥満の予防・改善に繋げることができると考えられる。
一方で、エネルギー代謝や肥満、糖尿病発症機構に関する研究が進み、食べ過ぎや運動不足によるエネルギーの過剰摂取は、脂肪細胞を含む肝臓や骨格筋の中性脂肪の蓄積を誘導し、その結果インスリン抵抗性の惹起に繋がることが分かってきた。インスリン抵抗性は肥満をはじめとして、糖尿病、高血圧、高脂血症などといった生活習慣病の根本的な背景メカニズムのひとつととらえられていることから、インスリン抵抗性の改善を標的にした研究が、創薬・食品部門などで生活習慣病の治療や予防を目的として数多くの試みがなされている。
インスリン抵抗性を指標とする研究のひとつに、骨格筋細胞におけるグルコースの取り込み促進が挙げられる。骨格筋は体重の約半分を示す人体最大の器官であり、エネルギー代謝や糖取り込み、運動において重要な役割を果たす。健常人では糖の7割以上が骨格筋で利用されるが、2型糖尿病患者では、インスリン抵抗性により骨格筋での糖利用量が健常者の約半分になり、糖代謝異常を発症することが知られている。骨格筋での糖取り込みを担う、グルコース輸送担体(glucose transporter 4)は、インスリンに応答して細胞内から細胞膜上に移行して(トランスロケーション)グルコースの取り込みを担うことから、食後血糖値のコントロールに大きく関わっていることが知られている。
GLUT4のトランスロケーションはインスリンのシグナルを受けて活性化するインスリン依存型のシグナル伝達経路と、運動刺激などにより活性化するインスリン非依存型のシグナル伝達経路の活性化経路がある。このうち、インスリン非依存型伝達系として、AMPK(AMP−activeted protein kinase)があげられる。AMPKは細胞のエネルギー代謝の調節因子として重要な役割を担っている酵素で、人から酵母まで真核細胞に存在する。AMPKは、細胞内ATPレベルの低下に反応して活性化され、エネルギー生産経路の下流の基質をリン酸化することにより、GLUT4のトランスロケーションを促進し、細胞への糖取り込み作用を促進することから、AMPKの活性化が体内の血糖コントロールの改善につながると考えられている。
また糖取り込み以外にも、脂肪や蛋白質の分解が亢進することによりATPは生成される。即ち、AMPK活性化の効果は運動で得られるエネルギー消費と同様の効果となると考えられており、AMPK活性化剤は日常生活における健康増進や、糖尿病をはじめとする生活習慣病の予防・改善、抗癌などを目指した高齢化社会の健康長寿に貢献する素材として有望視されている。
最近の研究によって、AMPKは筋肉運動によって活性化される以外にも、脂肪細胞から分泌されるホルモンであるレプチン(非特許文献1)やアディポネクチン(非特許文献2)、糖尿病治療薬であるメトフォルミン(非特許文献3)などによっても活性化されることが明らかになってきている。レプチンはAMPKを活性化させ、脂肪酸代謝やグルコース取り込みを促進し、脂肪蓄積を妨げる作用が知られている。アディポサイトカインの一種であるアディポネクチンはAMPKを骨格筋および肝臓において活性化することにより脂肪酸の燃焼と糖の取り込みを促進し、インスリン抵抗性を改善する作用が知られている(非特許文献4)。メトフォルミンはビグアナイド系薬剤の一つで、50年以上にわたって2型糖尿病の治療薬として臨床的に使用されてきている。メトフォルミンは、ミトコンドリア呼吸鎖の複合体Iの活性を阻害してATP合成を抑制し、AMP/ATP比を増加させ、AMPKを活性化する。またこれにより、ATP合成が促進され、最終的に、肝臓での糖新生の抑制、脂質代謝の調節、糖代謝改善に繋がると考えられている(非特許文献5)。近年ではメトフォルミンが、がん発生のリスクを低下させ、がんの予後を改善する効果があるという報告も出ている(非特許文献6)。
しかしながら、上記のメトフォルミンや他にはAICARなどの化学合成薬剤は、副作用を有するという問題がある。また、通常、医師による処方により提供される医薬品であり、日常的に摂取するものではない。そのため、副作用が少なく、安全性が高い、日常生活の健康維持を目的とした優れたAMPK活性化剤が望まれている。
植物ポリフェノールによるAMPK活性化作用については、プロシアニジンに関する報告がある。カカオにから抽出したプロシアニジン高含有組成物(CLPr)をマウスに投与すると、体内でのAMPK活性の上昇が確認されるという報告がある(非特許文献7)。また、ブドウの葉、又はその抽出物にはAMPK活性化作用が見出されている(特許文献1)。また、トマトに含まれるナリンゲニンカルコンのAMPK活性化作用(特許文献2)、黒ショウガ抽出物に含まれるポリメトキシフラボンを有効成分とするAMPK活性化剤についても報告がある(特許文献3)。またアミノ酸の一種であるリジンでもAMPKの活性化作用が報告されている(特許文献4)。しかしながらこれらの植物ポリフェノールは植物中での含量が少ないものも多く、また体内での吸収率が低い場合もあり、実用的ではない。
緑茶由来のカテキン類は、茶葉に豊富に含まれるフラバン−3−オールを基本骨格とする植物ポリフェノールの1種である。茶葉中のカテキン含量は品種により異なるが、8〜20%程度であり、茶カテキンの健康効果として抗酸化作用、抗菌、抗ウイルス、抗う蝕、抗突然変異、血小板凝集抑制、血中コレステロール低下、抗アレルギー、消臭作用など多くの生理活性が知られている。
緑茶飲用による健康効果の一つとして血糖値の上昇抑制作用が知られている。緑茶飲用後の体内での血糖コントロールに関しては、緑茶抽出物や主要な緑茶カテキンであるエピガロカテキンガレート(EGCG)の、α−アミラーゼやα−グリコシダーゼの活性阻害、小腸でのグルコース吸収阻害、膵β細胞からのインスリン分泌促進、末梢組織のインスリン感受性改善、肝臓における糖新生(アミノ酸などの糖以外の物質から体内でグルコースを作ること)の抑制などを通して抗糖尿病作用を示すことが報告されている。近年では、体内における血糖コントロールに体内での最も大きな糖消費器官である骨格筋への糖取り込み促進作用が注目されてきており、緑茶カテキン類の骨格筋への糖取り込み促進作用については以下のようにいくつかの報告が為されている。
特許文献5には、カテキン類からなるGLUT4発現促進剤及び糖尿病予防・改善用容器詰飲料が開示され、特許文献6にはカテキンガレート、ガレートエステルを備えたカテキン、茶抽出物のいずれかを有効成分とする脂肪細胞におけるグルコース取込阻害剤、インスリン刺激応答性グルコース取込阻害剤、GLUT4トランスロケーション抑制剤及び脂肪軽減飲食物が開示されている。また、非特許文献8にはEGCGの骨格筋への糖取り込み作用が報告されており、インスリン抵抗性を惹起したL6骨格筋細胞におけるEGCGの有意な糖取り込み作用も示されている。
一方で、緑茶カテキン類の体内での機能性メカニズムを検証する目的で、カテキン飲用後の生体内動態に関する研究も行われるようになってきた。我々のこれまでの研究によって、主要な緑茶カテキンであるEGCGは生体内への吸収量が非常に低く、経口摂取した大部分は腸内において腸内微生物(腸内細菌)の作用により分解され、代謝物として生体内へ吸収されることが明らかにされてきた。またこのような、腸内微生物による緑茶カテキンの代謝に関する報告は近年増加傾向にあり(非特許文献9乃至12)、主な代謝物として5−フェニル−γ−バレロラクトンや5−フェニル−4−ヒドロキシ吉草酸などが報告されてきている。また、5−フェニル吉草酸、3−フェニルプロピオン酸、フェニル酢酸、安息香酸など様々な代謝物が尿中から検出されている(非特許文献13乃至15)。
カテキン代謝物の生体内での機能性に関する知見としては、上記に示した5−フェニル−γ−バレロラクトン及び5−フェニル−4−ヒドロキシ吉草酸の血圧上昇抑制作用、5−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンの抗炎症作用、5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンの食道扁平上皮がん細胞、ヒト結腸腺がん細胞に対する増殖抑制効果及び抗炎症作用などが報告されている(特許文献7、非特許文献16、17)。このように、カテキン代謝物にはいくつかの生理機能が知られている。
特許文献8では、カテキン代謝物の筋管細胞におけるL6筋管細胞における糖取り込み作用が開示されている。複数のカテキン代謝物で検討した結果、(R)−5−(3,5−ジヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトン、(R)−5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトン、5−(3−ヒドロキシフェニル)吉草酸、(R)−5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−4−ヒドロキシ吉草酸、3−(3−ヒドロキシフェニル)−プロピオン酸、(S)−1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−3−(2,4,6−トリヒドロキシフェニル)−プロパン−2−オール、(S)−5−(3−ヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトン、(S)−5−(3−ヒドロキシフェニル)−4−ヒドロキシ吉草酸が、参照試料(コントロール)と比較して、有意な糖取りこみ促進作用を有していることを確認している。特に(R)−5−(3,5−ジヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンについては骨格筋における糖取り込み作用のメカニズムの検証において、L6骨格筋細胞膜におけるGLUT4の発現や、AMPKのリン酸化も既に確認をしている。しかしながら5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンに関する糖取り込みに関わる詳細な検証には至っておらず、AMPK活性化作用についても確認がなされていなかった。
特開2008−255048号公報 特開2012−236793号公報 特開2017−31121号公報 特開2008−247856号公報 特開2003−81825号公報 特開2003−95942号公報 特開2012−144532号公報 特開2017−101010号公報
Nature, 415, 339−343, 2002 Nature, 423, 762−769, 2003 J. Clin. Invest., 108, 1167−1174, 2001 Nature Medicine, 8, 1288―1295, 2002 Cell Metabolism, 20, 953−966, 2014 Cancer Discov., 2, 778−790, 2012 PLOS ONE, 11(9), e0161704, 2016 Biochem. Biophys. Res. Commun., 377, 286−290, 2008 J. Agric. Food Chem., 49, 4102−4112, 2001 Chem. Res. Toxicol., 13, 177−184, 2000 J. Agric. Food Chem., 51, 5561−5566, 2003 J. Agric. Food Chem., 51, 6893−6898, 2003 J. Agric. Food Chem., 58, 1313−1321, 2010 J. Agric. Food Chem., 58, 1296−1304, 2010 Chem. Pharm. Bull., 45, 888−893, 1997 Free Radical Biol. Med., 53, 305−313, 2012 Bioorg. Med. Chem. Lett., 15, 873−876, 2005
本発明の課題は、5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンを有効成分とするAMPK活性化剤、耐糖能を改善するための組成物、医薬品またはサプリメントを提供することにある。
本発明者らは、5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンのL6筋管細胞におけるAMPK活性化作用について検討した。その結果、既に明らかになっている5−(3,5−ジヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンよりも低濃度で有意なAMPK活性化作用があることが見出した。また、5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンをマウスに経口投与し、糖負荷試験を実施した結果、体内での筋肉組織における有意なAMPK活性化と、有意な食後血糖値の上昇抑制作用が確認された。以上のように、5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンには優れたAMPK活性化による体内での糖代謝の改善作用が確認され、本特許を出願するに至った。即ち、本発明は以下の通りである。
[1]以下の式(I)で表される5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンを有効成分とするAMPK活性化剤。

(式中、4位の立体配置はR配置又はS配置とする。)
[2][1]に記載のAMPK活性化剤を有効成分として含有する耐糖能異常の予防剤および/または改善剤。
[3][1]に記載のAMPK活性化剤または[2]に記載の予防剤および/または改善剤を有効成分として含有するAMPKを活性化するための医薬品。
[4][1]に記載のAMPK活性化剤または[2]に記載の予防剤および/または改善剤を有効成分として含有するAMPKを活性化するためのサプリメント。
本発明のAMPK活性化剤に含まれる化合物(I)は茶カテキン類を経口摂取したときに、茶カテキンが腸内細菌によって分解されて生成した化合物である。長年にわたる茶の飲用によって茶の安全性は経験的に確認されており、茶飲用後の生体内で生成している上記化合物(代謝物)も、茶と同様にその安全性は経験的に確認されていると言える。本発明は茶カテキン類が腸内細菌によって分解された化合物を有効成分とする新規なAMPK活性化剤、又は耐糖能を改善するためのサプリメント及び医薬品を提供するものである。
本発明によれば、優れたAMPK活性化作用により、高血糖を改善し、糖尿病を予防または改善する機能性食品や医薬品を提供することが出来る。また、高脂血症、高血圧、冠動脈疾患、動脈硬化性疾患、肥満、癌などの疾患の予防や治療、日常生活における、筋肉量・筋力の増強による健康増進にも有用であることが見込まれる。
図1は、試験例1において、ラット骨格筋由来L6筋管細胞に対して、(R)−5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンを処理した場合の、GLUT4の膜移行促進作用をウェスタンブロット法により測定した結果を示す。 図2は、試験例1において、ラット骨格筋由来L6筋管細胞に対して、(R)−5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンを処理した場合の、AMPKのリン酸化をウェスタンブロット法により測定した結果を示す。 図3は、試験例2において、ICRマウスに(R)−5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンを強制経口投与した場合の、糖負荷試験による血糖値を継時的に測定した結果を示す。 図4は、試験例3において、ICRマウスに(R)−5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンを強制経口投与した場合の、筋肉組織(骨格筋)におけるGLUT4の膜移行促進作用をウェスタンブロット法により測定した結果を示す。 図5は、試験例3において、ICRマウスに(R)−5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンを強制経口投与した場合の、筋肉組織におけるAMPKのリン酸化をウェスタンブロット法により測定した結果を示す。
本発明のAMPK活性化剤に含まれる有効成分である化合物は、式(I)で示される5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンである。
(式中、4位の立体配置はR配置又はS配置とする。)
式(I)中、数字は、炭素の番号を示すものであり、置換位置等を理解しやすくする目的で記載したものである。上記式(I)に該当する化合物は、次の文献に示す公知の有機化学合成法(synthesis, 9, 1512−1520, 2010)などにより得ることができる。
また、当該化合物は、特開2011−87486号公報に記載の方法で製造することが出来る。さらに、「Archive. Microbiol., 196, 681−695, 2014」に記載の腸内微生物を用いた微生物変換法により製造することも可能である。微生物変換法によりカテキン代謝物である式(I)の化合物を製造する方法としては、ラットやヒトの腸内微生物を含む糞や盲腸内容物を培養して腸内微生物を増殖させた後、培養菌体を緩衝液、生理食塩水、水などに懸濁させ、懸濁液に基質となるカテキン類を加えて嫌気条件下でインキュベーションする方法を挙げることができる。
この方法において、基質として加えるカテキン類としては、(−)−エピガロカテキン、(−)−ガロカテキンや、ガレート型カテキン類である(−)−ガロカテキンガレート、(−)−エピガロカテキンガレートを挙げることができ、(−)−エピガロカテキン、(−)−ガロカテキンは好適に用いられる。
好適な基質として挙げられた(−)−エピガロカテキン、(−)−ガロカテキンは、主に緑茶に含まれており、茶の葉、茎、木部、樹皮、根、実、種子やこれらの混合物もしくはそれらの粉砕物から水、熱水、有機溶媒、含水有機溶媒あるいはこれらの混合物等により抽出することにより得られる。茶生葉あるいはその乾燥物から水、熱水、有機溶媒、含水有機溶媒、これらの混合物等を用いて抽出することにより得られ、抽出物自体の他に、その精製物等があり、形態的には液体、固体(粉末を含む)の別を問わない。
本発明のAMPK活性化剤は、耐糖能異常の予防剤および/または改善剤として利用することができる。上記したように、AMPK活性化剤は、耐糖能異常の予防剤および/または改善剤としての効果が期待できるからである。耐糖能異常の予防剤および/または改善剤は、本発明のAMPK活性化剤をそのまま用いてもよいし、本発明の目的を阻害しない範囲で、他の物質を含有してもよい。
本発明のAMPK活性化剤は、AMPKを活性化するための医薬品として利用することができる。本発明のAMPK活性化剤は、AMPKを活性化する効果があるからである。式(I)の化合物を有効成分として含有するAMPK活性化剤を含む、AMPKを活性化するための医薬品は、日本薬局方に収められている医薬品で口に含むことができれば特に限定されるものではなく、上記有効成分に薬学的に許容される担体を添加して、経口用の製剤とすることが出来る。製剤形態としては、錠剤、顆粒剤、細粒剤、丸剤、散剤、カプセル剤、トローチ剤、チュアブル剤、液剤(ドリンク剤)などが挙げられる。
本発明のAMPK活性化剤、それを含有する耐糖能以上の予防剤および/または改善剤、そして、それを含むAMPKを活性化するための医薬品の摂取量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、通常成人一人あたり、1回に有効成分である式(I)の化合物の含量として0.1mg〜1000mg、好ましくは1mg〜500mgの範囲で、1日1回から数回経口摂取又は非経口摂取することができる。
本発明のAMPK活性化剤は、AMPK活性化剤を含有するサプリメントに使用することもできる。AMPK活性化剤を含有するサプリメントはどのような形態であってもよく、例えば、水溶液、混濁物や乳化物などの液状形態であっても、ゲル状やペースト状の半固形状形態であっても、粉末、顆粒、カプセル、タブレットなどの固形状形態であってもよい。
本発明のAMPK活性化剤を含有するサプリメントの摂取量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法、処理時間等により異なるが、通常成人一人あたり、1回に有効成分である式(I)の化合物の含量として0.1mg〜1000mg、好ましくは1mg〜500mgの範囲で、1日1回から数回経口又は非経口摂取することができる。
また、当該医薬品又はサプリメント等は、一般に製剤に使用される結合剤、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、安定剤、乳化剤、緩衝剤等の添加物を含有させることができる。
式(I)の化合物を含むAMKP活性化剤は、食品に含有させることもできる。含有量は特に制限はないが、含有量の上限はそれを飲食した場合に、人体に悪影響がない程度の含有量にする。本発明のAMKP活性化剤を食品に含ませることによって、AMPKの活性化を目的とした機能性食品にすることもできる。
対象となる食品の種類は、ジュース、清涼飲料水、茶などの飲料、パンや餅などの加工食品、キャンディーなどの菓子類、カップラーメンなどのインスタント食品、バター、サラダ油などの油脂類、ドレッシング、マヨネーズ、ソース、醤油やみりんなどの調味料、ふりかけ、みそなどの広範な飲食品に含ませることができる。
以下に、製造例、試験例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(化合物(I)の製造)
エガーテラ・レンタ[Eggerthella lenta]JCM9979株とフラボニフラクター・プラウティ[Flavonifractor plautii]MT42株(受託番号FERM P−21765)の共存下での(R)−5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンの製造
エガーテラ・レンタJCM9979株とフラボニフラクター・プラウティMT42株(受託番号FERM P−21765)とをそれぞれ30mLのGAMブイヨンに植菌し、37℃で48時間嫌気培養した。(−)−エピガロカテキン221.4mgを含む同培地100mLに上記2菌株の培養液を加え、37℃で3日間嫌気培養を行った。無菌的に培養液1mLをサンプリングし、高速遠心分離(15000×g、10分)して菌体を除去し、上清をLC/MS(高速液体クロマトグラフ質量分析計LCQDecaXPplusサーモフィッシャーサイエンティフィック社製)分析することで、(R)−5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンの生成を確認した。LC/MS分析条件を以下に記載する。
(LC/MS分析条件)
機器:高速液体クロマトグラフ質量分析計LCQDecaXPplus(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)
カラム:CAPCELLPAK C18 MG(2.0i.d.×100.0mm、5μm、(株)資生堂社製)、流速;0.2mL/分、カラム温度;40℃、溶媒A;水:アセトニトリル:酢酸(100:2.5:0.1 容量比(v/v/v))、溶媒B;水:アセトニトリル:メタノール:酢酸(35:2.5:65:0.1 容量比(v/v/v/v)、グラジエント;0分:A100% B0%、3分:A100% B0%、25分:A0% B100%、25.1分:A100% B0%、33分:A100% B0%、検出器;PDA及び質量分析計、インターフェース;ESI、ポラリティ;ネガティブとした。
(R)−5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンの生成を確認した培養液を高速遠心分離(15000×g、10分間、10℃)により菌体を除去した。得られた上清にリン酸を添加してpH1.5に調整した。この溶液に100mlの酢酸エチル:ブタノール(1:1、v/v)を加えてよく混合した。遠心分離機(5000×g、5分間)で2相に分けた後、有機溶媒相を回収した。この抽出操作を3回繰り返し行った。合一した有機溶媒相はエバポレーターに供して有機溶媒を除去し、乾固させた。乾固物を約20mlの10%メタノール水溶液で溶解し、分取HPLC(高速液体クロマトグラフィー)に供した。分取HPLCの条件を以下に記載する。
(分取HPLC条件)
使用カラム;CAPCELLPAK MG(20i.d.×150mm、5μm、(株)資生堂製)、流速;9.8ml/分、カラム温度;40℃、溶媒A;メタノール:水:酢酸(10:90:1 容量比(v/v/v))、溶媒B;メタノール:酢酸(100:1 容量比(v/v))、グラジエント;0分:A95% B5%、30分:A60% B40%、40分:A20% B80%、43分:A10% B90%、45分:A95% B5%、検出器;UV230nmとした。
分取した画分を、上記のLC/MS分析と同条件で分析し、目的とする(R)−5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンが含まれる画分を確認した。エバポレーターで濃縮乾固し、乾固物に含まれる酸を除去するために、5mLの純水を加えて減圧下濃縮乾固する操作を3回繰り返し、溶液中の酸を完全除去した後、凍結乾燥に供した。その結果、(R)−5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンを31mg得た。
試験例1:L6筋管細胞膜におけるGLUT4膜移行促進作用とAMPK活性化作用
(L6細胞培養)
まず、ラット骨格筋由来L6細胞(住友大日本製薬株式会社より購入)を、10%(v/v)ウシ胎児血清(FBS、シグマアルドリッチジャパン合同会社より購入)含有イーグル最小必須培地(MEM培地、シグマアルドリッチジャパン合同会社より購入)中で、37℃、5%(v/v)CO条件下において培養した。次に、L6細胞を60mmディッシュに播種し、2%(v/v)ウシ胎児血清MEM培地中で7〜8日間インキュベーションし、L6筋管細胞に分化誘導した。そして、培地を無血清MEM培地に置き換え、16〜18時間脱感作させた。
(細胞膜タンパク質画分の調製(Plasma membrane fraction))
上記の無血清MEM培地に、製造例記載の方法に従って調製した(R)−5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンをDMSOに溶解し、終濃度0.3μM、1μM、3μMとなるようにL6筋管細胞に15分間作用させた。ポジティブコントロールとして5−アミノイミダゾール−4−カルボキサミドリボヌクレオチド(以下AICAR)(0.1μM:終濃度)、ネガティブコントロールとして溶媒として使用したDMSOも同様に添加し、L6筋管細胞に15分作用させた。
L6筋管細胞をKrebs Ringer HEPES(KRH)緩衝液(50mM HEPES、pH7.4、137mMのNaCl、4.8mM KCl、1.85mM CaCl、1.3mM MgSO)を用いて2回洗浄した後、0.1%NP−40含有緩衝液A(50mM Tris−HCl、pH8.0、10mMフッ化ナトリウム(NaF)、1mMバナジン酸ナトリウム(NaVO)、5μg/mLアプロチニン、1mMフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)、500μMジチオトレイトール(DTT)、5μg/mLロイペプチン)120μLを加えてセルスクレーパーで剥ぎ、マイクロチューブに回収した。そして、これをマイクロチューブホモジナイザーで摩砕し、27ゲージの注射針に3回通して、不溶物を除いて細胞溶解液を得た。
得られた細胞溶解液を3000rpm、10分間、4℃で遠心分離し、上清を除いた。沈殿にKRH緩衝液を200μL加え、3000rpm、10分間、4℃で遠心分離した。
上清を除き、再び沈殿にKRH緩衝液を200μL加え、3,000rpm、10分間、4℃で遠心分離した。さらに、上清を除き、1%NP−40含有緩衝液Aを40μL加え、細胞膜画分とした。画分を1時間放置し、15,000rpm、20分間、4℃で遠心分離し、得られた上清を細胞膜タンパク質画分として、下記のウエスタンブロッティングに供した。
(細胞全タンパク質画分の調製(Whole lysate))
上記の無血清MEM培地に、製造例記載の方法に従って調製した(R)−5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンをDMSOに溶解し、終濃度0.3μM、1μM、3μMとなるようにL6筋管細胞に15分間作用させた。ポジティブコントロールとしてAICAR(0.1μM:終濃度)、ネガティブコントロールとして溶媒として使用したDMSOも同様に添加し、L6筋管細胞に15分作用させた。
作用させたL6筋管細胞を、KRH緩衝液を用いて2回洗浄した後、RIPAバッファー(10mM Tris−HCl、pH8.0、150mM塩化ナトリウム、1% NP−40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、10mM NaF、1mM NaVO、5μg/mLアプロチニン、1mM PMSF、500μM DTT、5μg/mLロイペプチン)120μLを加えてセルスクレーパーで剥ぎ、マイクロチューブに回収した。そしてこれをマイクロチューブホモジナイザーで摩砕し、1時間氷冷の後に、15000rpm、20分間、4℃で遠心分離し、得られた上清を細胞全タンパク質画分として、下記のウエスタンブロッティングに供した。
(ウエスタンブロッティング)
上記の回収した画分を、250mM Tris−HCl、20%(v/v)の2−メルカプトエタノール、140mM SDS、44%(v/v)グリセロール、750μMブロモフェノールブルーを含む4×SDSバッファーにて希釈した後、タンパク質のSDS化及びタンパク質中のジスルフィド結合の還元処理を効率よく行わせるために100℃で5分間加熱した。
SDS化したサンプルを、10%ポリアクリルアミドゲルを用いたポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に供した。
SDS−PAGEにより分離したタンパク質を、セミドライ式の転写装置を用いて、2mA/cmとなるよう90分間Polyvinylidene fluoride transfer membrane(PVDF膜、GEヘルスケアジャパン株式会社)上に転写した。
0.05%(v/v)のTween20及び150mM塩化ナトリウムを含むTris−HCl塩緩衝液、pH8.0(TBST)でPVDF膜を洗浄後、TBSTとBlocking One(ナカライテスク株式会社)を1:1で混合したBlocking液を用いて室温で1時間振とう処理した。
TBSTで20倍希釈したBlocking液を用いて希釈した一次抗体希釈液を用いて1時間、室温でPVDF膜を処理した。この膜を5分間TBSTで洗浄した。なお、この操作洗浄操作を5回繰り返した。続いて、上記の処理膜を、一次抗体と同様に希釈した二次抗体希釈液を用いて1時間、室温で処理した。
二次抗体で処理した膜を、上記と同様TBST洗浄5分間で5回繰り返した後、イムノスターLD(和光純薬工業株式会社)を用いて5分間、室温で処理した。この処理によって得られた膜上の特異的なタンパク質の検出には、化学発光撮影装置(Light−Capture II(ATTO株式会社、東京、日本))を用いた。
上記の方法により、(R)−5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンの細胞膜タンパク質画分でのGLUT4の発現量、及び細胞全タンパク質画分での、インスリンからのシグナル伝達に関わる非定形プロテインキナーゼC(atypical Protein kinase C:aPKC)、プロテインキナーゼB(Akt)及びAMPKのリン酸化に与える影響を調べた。
試験例1の結果を図1、図2に示す。insulin receptor β−subunit (以下IR−β)は発現の強度を確認するためのマーカーとして使用した。なお、使用したKRH緩衝液及びアッセイカクテルの詳細は、表1、表2に示す。また統計処理は、Dunnett’s test検定を行なった。有意水準は*p<0.05、**p<0.01とした。
本試験の結果、図1に示したように、細胞膜におけるGLUT4の発現は、化合物(R)−5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンの添加によって増大していることが確認された。当該化合物の添加濃度は0.3、1.0、3.0μMで実施したが、すべての濃度において有意なリン酸化が確認され、0.3μMの低濃度でもGLUT4の膜移行促進作用があることが確認された。0.3μMの濃度では、ポジティブコントロールとして用いた0.1μMのインスリンより弱い発現であったものの、ネガティブコントロールのDMSOと比較して強い発現を示しており、また、1.0μMの作用濃度では、インスリンと同様の効果が認められ、3.0μMの作用濃度ではインスリンより強い発現が確認された。この結果から、当該化合物が細胞膜へのGLUT4のトランスロケーションを促進したと考えられた。
GLUT4は細胞内から膜上に移行してグルコースを取り込むが、この膜移行(トランスロケーション)にはインスリン依存性と非依存性のシグナル伝達経路が存在する。(R)−5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンにおけるGLUT4発現の作用機序を検討する目的で、GLUT4トランスロケーションに関わる伝達経路である、aPKC、Akt、AMPKのリン酸化による活性型への変換の有無についてウエスタンブロット法により確認を行った。その結果、Aktのリン酸化により活性化したp−Aktの473位のセリン残基(p−AktSer473)画分や、aPKCがリン酸化したリン酸化非定形プロテインキナーゼC(p−aPKC)のバンドは検出されなかったことから、当該化合物は、インスリン依存型のシグナル伝達経路である、ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)を介したAkt活性化によるシグナル伝達経路およびホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K/aPKC)シグナル伝達経路の活性化作用はないことが考えられた。
図2に示したように、(R)−5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンを作用させたL6筋管細胞において、AMPKがリン酸化したp−AMPKのバンドの発現が確認された。当該化合物の添加濃度は0.3、1.0、3.0μMで実施したが、すべての濃度において有意なAMPKのリン酸化が確認されたことから当該化合物には、AMPKシグナル伝達経路の活性化にも関与していることが明らかになった。本発明者らはすでに、5−(3,5−ジヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンのAMPK活性化作用を確認している(特許文献8)。しかしながら、5−(3,5−ジヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンでは0.3μMの低濃度域では有意なAMPK活性化作用はみられなかった。本研究にて(R)−5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンは低濃度での強いAMPK活性化作用があることが確認できた。
試験例2:マウスへの経口投与によるin vivo耐糖能改善作用の検討
(a) 使用動物および方法
5週齢の雄性ICRマウスを日本クレア株式会社より購入し、1週間の馴化期間の後、実験に供した。動物は、空調設備のある飼育室(温度23℃±3℃、相対湿度50±5%、照射時間12時間の条件下)で飼育した。馴化期間中は、市販飼料餌(リサーチダイエット社、固形飼料)及び、水道水を自由摂取とした。試験時の週齢は6週齢、平均体重は16.5gであった。各群5匹ずつで試験を実施した。
(b) 投与方法および測定方法
馴化期間後、6時間の絶食、2時間の絶水を行った。製造例記載の方法に従って調製した(R)−5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンを生理食塩水に溶解し、ラットの体重1kg当たり0.32mg、3.2mg、32mg、64mg(0.32mg/kg、3.2mg/kg、32mg/kg、64mg/kg)となるように、ICRマウスに強制経口投与した。対照群には同量の生理食塩水を投与した。60分後に、全群に対し1g/kgとなるようにグルコースを投与した。投与前、および、グルコース経口投与より30、60、90、120分後において尾静脈より採血を行い、グルコースCII−テストワコー(和光純薬工業株式会社製)を用いて、添付のプロトコールに従い、血糖値を測定した。
(c) 統計処理方法
得られた結果を平均値(mean)および標準誤差(SE)で示し、Dunnet’s−testにより対照群との有意差を調べた。有意水準は*p<0.05とした。
試験例2の結果を、図3に示した。(R)−5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンの32mg/kg投与群において、糖負荷15分後、30分後で対象群と比較し、有意な血糖値上昇抑制作用が確認された。こうした食後血糖上昇の抑制を積み重ねることで糖尿病の発症、進展が遅延するとの報告があることから、当該物質は健康な人の糖尿病発症を予防する効果を有すると考えられた。この結果から、5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンの生体での耐糖能改善作用が確認された。
試験例3:マウス筋肉組織でのAMPK活性化作用とGLUT4膜移行促進作用
(a) 使用動物および方法
5週齢の雄性ICRマウスを日本クレア株式会社より購入し、3週間の馴化期間の後、実験に供した。動物は、空調設備のある飼育室(温度23℃±3℃、相対湿度50±5%、照射時間12時間の条件下)で飼育した。馴化期間中は、市販飼料餌(リサーチダイエット社、固形飼料)及び、水道水を自由摂取とした。試験時の週齢は8週齢、平均体重は41.8gであった。各群5匹ずつで試験を実施した。
(b) 投与方法および測定方法
馴化期間後、6時間の絶食、2時間の絶水を行った。製造例記載の方法に従って調製した(R)−5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンを生理食塩水に溶解し、ラットの体重1kg当たり0.32mg、3.2mg、32mg(0.32mg/kg、3.2mg/kg、32mg/kg)となるように、ICRマウスに強制経口投与した。対照群には同量の生理食塩水を投与した。60分後に、麻酔下で心臓採血により屠殺し、マウスから両下肢の全筋肉組織を採取した。マウス骨格筋を細かく磨り潰し、試験例1記載のタンパク調整方法、ウェスタンブロット分析方法に準じてWhole lysateにおけるAMPKの活性化レベルと、それぞれのサンプルにおけるGLUT4の発現量について検討を行った。
(c) 統計処理方法
得られた結果を平均値(mean)および標準誤差(SE)で示し、Dunnet’s−testにより対照群との有意差を調べた。有意水準は*p<0.05とした。
試験例3の結果を、図4、図5に示した。IR(insulin receptor)は発現の強度を確認するためのマーカーとして使用した。図4に示したように、(R)−5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトン投与マウスの筋肉組織において、細胞膜画分でのGLUT4膜移行の有意な活性化が32mg/kg投与において、確認された。また、図5に示したように、(R)−5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトン投与マウスの筋肉組織において、32mg/kg投与群の筋肉組織で、有意なAMPKの発現が確認された。この結果から、(R)−5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンのマウスでの耐糖能改善作用が確認された。
〔まとめ〕
緑茶に含まれるEGCGの腸内細菌主要代謝物である(R)−5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンには、L6筋管細胞におけるAMPK活性化によるGLUT4の膜移行促進作用が確認された。また、(R)−5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトン経口投与ICRマウスでの糖負荷試験において、糖負荷後15分、30分後に有意な血糖値上昇抑制作用が確認された。また、ICRマウスにおける(R)−5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトン経口投与60分後の筋肉組織でも、AMPKリン酸化によるGLUT4膜移行の促進作用が確認された。以上の結果より、(R)−5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンはAMPK活性化による、体内での耐糖能改善作用があることが見出された。
[実施例2]
(錠剤)
(R)−5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトン(0.5重量%)、キシリトール(33.8重量%)、マンニトール(30.6重量%)、微結晶性セルロース(6.1重量%)、着香料(14.1重量%)、ステアリン酸(4.3重量%)、タルク(0.6重量%)及びソルビトール(10.0重量%)を混合した粉体を錠剤プレスによって圧縮し、(R)−5−(3,5−ジヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンを含有するAMPKの活性化を目的とした錠剤を得た。
[実施例3]
(キャンディー)
砂糖(33重量%)、水飴(66重量%)、クエン酸(0.67重量%)、香料(0.21重量%)、着色料(0.07重量%)及び(R)−5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトン(0.05重量%)をキャンディー処方により常法で調製し、(R)−5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンを含有するAMPKの活性化を目的としたキャンディーを得た。
[実施例4]
(無糖茶飲料)
市販無糖茶飲料として緑茶(サントリー株式会社製)500mlに(R)−5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトン0.1gを添加溶解後、常法にて殺菌し、AMPKの活性化を目的とした無糖茶飲料を得た。
本発明のAMPK活性化剤は、緑茶飲用後の腸内細菌代謝物である5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンを有効成分として含有し、体内でのAMPK活性作用,GLUT4活性作用を有するものである。この作用に基づき、本発明でのAMPK活性化剤は抗糖尿病剤、抗肥満剤等に使用することも可能である。緑茶は日常生活で長く飲用されてきた歴史があり、茶飲用による安全性は長年の飲用経験により既に実証されている。このため、安全性に優れた緑茶成分由来のAMPK活性化剤は、産業上有用である。また、上記薬剤を含有する飲食品は、あらゆる飲食品に適用し得るため、飲食品に機能的付加価値をつける意味でも、産業上有用である。さらに、需要が伸張しているサプリメントへの使用や、家畜・ペット用飼料等への応用も可能である。

Claims (4)

  1. 以下の式(I)で表される5−(3,4,5−トリヒドロキシフェニル)−γ−バレロラクトンを有効成分とするAMPK活性化剤。
    (式中、4位の立体配置はR配置又はS配置とする。)
  2. 請求項1に記載のAMPK活性化剤を有効成分として含有する耐糖能異常の予防剤および/または改善剤。
  3. 請求項1に記載のAMPK活性化剤または請求項2に記載の予防剤および/または改善剤を有効成分として含有するAMPKを活性化するための医薬品。
  4. 請求項1に記載のAMPK活性化剤または請求項2に記載の予防剤および/または改善剤を有効成分として含有するAMPKを活性化するためのサプリメント。
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