JP2020082439A - 樹脂硬化層付き基板、化粧板、車両用窓、及び樹脂硬化層付き基板の製造方法 - Google Patents

樹脂硬化層付き基板、化粧板、車両用窓、及び樹脂硬化層付き基板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】少なくとも耐摩耗性を備え、かつ耐久性に優れる樹脂硬化層付き基板、化粧板、車両用窓、及び樹脂硬化層付き基板の製造方法の提供。【解決手段】基板1の少なくとも一方の面側に設けられた樹脂硬化層2は、炭素原子、珪素原子及び酸素原子を含有し、かつ下記(a)及び(b)の要件を満たす。(a)表面から深さ0.2μmまでの範囲の領域のマルテンス硬さが300N/mm2以上であり、表面から深さ1.0μmまでの範囲の領域のマルテンス硬さが250N/mm2以下である。(b)樹脂硬化層の深さ方向10nmの領域において測定された炭素原子の含有率X1(at%)と珪素原子の含有率Y1(at%)が式(1)の関係であり、かつ深さ方向1000nmの領域において測定された炭素原子の含有率X2(at%)と珪素原子の含有率Y2(at%)が式(2)の関係である。Y1/X1≧7.0・・・(1)、Y2/X2≦5.0・・・(2)【選択図】図1

Description

本発明は、樹脂硬化層付き基板、化粧板、車両用窓、及び樹脂硬化層付き基板の製造方法に関する。
ポリカーボネート樹脂は、透明性に優れ、軽量で耐衝撃性が高いことから、各種の建築物、自動車等の窓材や構造材等として、広く応用展開されてきた。
しかしながら、耐摩耗性・耐侯性・耐薬品性の観点でガラスに大幅に劣るという欠点がある。そのため、これらの性能をカバーする機能を有するハードコート層をポリカーボネート上に形成する方法(例えば特許文献1)が提案されている。
このようなハードコート層としては、有機珪素化合物の加水分解縮合物を主成分として含む下地ハードコート層と、PE−CVD法で形成した酸化珪素層とを含み、下地ハードコート層上に酸化珪素層が積層された積層体が用いられている。
特許第5944069号公報
しかしながら、上記の方法でハードコート層を形成しようとする場合には、成膜速度が遅いために生産性が低くなりやすい。また、上記の方法でハードコート層を形成しようとする場合には、湿式塗工装置と乾式塗工装置の両装置を導入する必要があり、製造コストが高くなりやすい。また、ハードコート層を硬質化した場合、湿熱環境下などにおける基材の寸法変化が原因で、ハードコート層にクラックが入りやすくなる。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、少なくとも耐摩耗性を備え、かつ耐久性に優れる樹脂硬化層付き基板、化粧板、車両用窓、及び樹脂硬化層付き基板の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る樹脂硬化層付き基板は、基板と、前記基板の少なくとも一方の面側に設けられた樹脂硬化層と、を備え、前記樹脂硬化層は、炭素原子、珪素原子及び酸素原子を含有し、かつ下記(a)及び(b)の要件を満たすことを特徴とする樹脂硬化層付き基板。
(a)前記樹脂硬化層の表面から深さ0.2μmまでの範囲の領域のマルテンス硬さが300N/mm以上であり、かつ前記樹脂硬化層の表面から深さ1.0μmまでの範囲の領域のマルテンス硬さが250N/mm以下である。
(b)前記樹脂硬化層の深さ方向10nmの領域においてX線光電子分光法を用いて測定された炭素原子の含有率X1(at%)と珪素原子の含有率Y1(at%)が式(1)の関係であり、かつ深さ方向1000nmの領域においてX線光電子分光法を用いて測定された炭素原子の含有率X2(at%)と珪素原子の含有率Y2(at%)が式(2)の関係である。
Y1/X1≧7.0・・・(1)
Y2/X2≦5.0・・・(2)
また、上記樹脂硬化層付き基板においては、前記基板が、有機樹脂を主成分としても良い。
また、上記樹脂硬化層付き基板においては、前記樹脂硬化層が、オルガノポリシロキサンを含有しても良い。
また、上記樹脂硬化層付き基板においては、前記樹脂硬化層の膜厚が、1μm以上10μm未満としても良い。
本発明の一態様に係る化粧板は、上記樹脂硬化層付き基板を備えても良い。
本発明の一態様に係る車両用窓は、上記樹脂硬化層付き基板を備えても良い。
また、本発明の一態様に係る樹脂硬化層付き基板の製造方法は、基板の少なくとも一方の面に樹脂硬化層を形成する工程と、前記樹脂硬化層に表面改質処理を施す工程とを含み、前記樹脂硬化層が、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子を含有し、かつ下記(a)及び(b)の要件を満たすことを特徴とする樹脂硬化層付き基板の製造方法。
(a)前記樹脂硬化層の表面から深さ0.2μmまでの範囲の領域のマルテンス硬さが300N/mm以上であり、かつ前記樹脂硬化層の表面から深さ1.0μmまでの範囲の領域のマルテンス硬さが250N/mm以下である。
(b)前記樹脂硬化層の深さ方向10nmの領域においてX線光電子分光法を用いて測定された炭素原子の含有率X1(at%)と珪素原子の含有率Y1(at%)が式(1)の関係であり、かつ深さ方向1000nmの領域においてX線光電子分光法を用いて測定された炭素原子の含有率X2(at%)と珪素原子の含有率Y2(at%)が式(2)の関係である。
Y1/X1≧7.0・・・(1)
Y2/X2≦5.0・・・(2)
また、上記樹脂硬化層付き基板の製造方法においては、前記表面改質処理を施す工程は、前記樹脂硬化層の表面に波長が200nm以下の真空紫外光を照射する工程であることを特徴としても良い。
本発明によれば、少なくとも耐摩耗性を備え、かつ耐久性に優れる樹脂硬化層付き基板、化粧板、車両用窓、及び樹脂硬化層付き基板の製造方法を提供することができる。
本発明の実施形態に係る樹脂硬化層付き基板の構成例を示す断面図である。 本発明の実施形態の変形例に係る樹脂硬化層付き基板を示す断面図である。 本発明の実施形態に係る化粧板の構成例を示す断面図である。
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることがある。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定されるものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。また、以下の記載において、「○○〜○○」の表記は、「○○以上○○以下」を示す。
<樹脂硬化層付き基板の構成>
図1は、本発明の実施形態に係る樹脂硬化層付き基板の構成例を示す断面図である。本発明の実施形態に係る樹脂硬化層付き基板10は、基板1と、基板1の少なくとも一方の面側に設けられた樹脂硬化層2とを備える。例えば、基板1は、第1面1aと、第1面1aの反対側に位置する第2面1bとを有する。樹脂硬化層2は、基板1の第1面1a側に設けられている。基板1は、有機樹脂を主成分としてもよい。ここでいう主成分は重量(質量)としての主成分である。樹脂硬化層2は、炭素原子、珪素原子及び酸素原子を含有し、かつ下記(a)及び(b)の要件を満たす。
(a)樹脂硬化層2の表面2aから深さ0.2μmまでの範囲の領域(以下、深さ方向0.2μmの領域という)のマルテンス硬さが300N/mm以上であり、かつ樹脂硬化層2の表面2aから深さ1.0μmまでの範囲の領域(以下、深さ方向1.0μmの領域という)のマルテンス硬さが250N/mm以下である。
(b)樹脂硬化層2の深さ方向10nmの領域においてX線光電子分光法を用いて測定された炭素原子の含有率X1(at%)と珪素原子の含有率Y1(at%)が式(1)の関係であり、かつ樹脂硬化層2の深さ方向1000nmの領域においてX線光電子分光法を用いて測定された炭素原子の含有率X2(at%)と珪素原子の含有率Y2(at%)が式(2)の関係である。
Y1/X1≧7.0・・・(1)
Y2/X2≦5.0・・・(2)
樹脂硬化層付き基板10は、以下に示す特定範囲の硬度、化学組成を充足する。このような物性値を充足することによって、基板1に対して、優れた耐摩耗性及び耐久性を備えることが可能になる。
<硬度>
樹脂硬化層付き基板10は、樹脂硬化層2の深さ方向0.2μmの領域を測定したマルテンス硬さが300N/mm以上を充足すればよいが、好ましくは500N/mm以上である。このようなマルテンス硬さを備えることにより、基板1に対して、優れた耐摩耗性を備えさせることができる。また、深さ方向1.0μmの領域を測定したマルテンス硬さは250N/mm以下を充足すればよい。このようなマルテンス硬さを備えることにより、基板1に対して、優れた耐久性を備えさせることができる。
上記マルテンス硬さは、指定の押し込み深さとなるような荷重で、試料表面にダイヤモンドの圧子を押し込み、その時の最大荷重(A)と圧子の表面積(B)を用いて以下の式(2)の通りに算出する。
マルテンス硬さ=A/B・・・(2)
なお、上記マルテンス硬さは、ISO14577に記載の方法に従って測定される値である。樹脂硬化層付き基板10に上記マルテンス硬さを備えさせるには、樹脂硬化層2の組成や厚さ等を適宜調整すればよい。
<化学組成>
樹脂硬化層付き基板10は、樹脂硬化層2の深さ方向10nmの領域において測定した炭素原子の含有率X(at%)と珪素原子の含有率Y(at%)の比(珪素/炭素比)が7.0以上を充足すればよい。このような化学組成を備えることにより、基板1に対して、優れた耐摩耗性を備えさせることができる。また、樹脂硬化層2の深さ方向1000nmの領域において測定した炭素原子の含有率X(at%)と珪素原子の含有率Y(at%)の比(珪素/炭素比)が5.0以下を充足すればよい。このような化学組成を備えることにより、基板1に対して、優れた耐久性を備えさせることができる。
当該化学組成は、試料表面にX線光電子分光法を用いて測定を行った場合の炭素原子の含有率X(at%)と珪素原子の含有率Y(at%)を用いて以下の式(3)の通りに算出する。
珪素/炭素比=Y/X・・・(3)
樹脂硬化層付き基板10に対して、上記化学組成を備えさせるには、樹脂硬化層2の組成や厚さ等を適宜調整すればよく、その具体的条件については後述する。
以下に、本実施形態の樹脂硬化層付き基板を構成する各層の組成や厚さ等について説明する。樹脂硬化層付き基板10において、基板1の材質は特に制限されず、樹脂、ガラス、紙、木材、金属など様々な材質のものを用いることができる。この中でも、樹脂の射出成形により基材を成形する場合、後述する熱可塑性樹脂あるいは、熱硬化性樹脂(1液又は2液硬化性樹脂を含む)を用いることができる。熱可塑性樹脂材料としては、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系重合体;ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン系共重合体、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂)などのスチレン系樹脂;ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリアクリロニトリルなどのアクリル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、エチレングリコール−テレフタル酸−イソフタル酸共重合体、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。また、上記熱硬化性樹脂としては、1液又は2液反応硬化型のポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、単独でも良いし、二種以上混合して用いても良い。これらの中でも、ポリカーボネートは耐衝撃性や透明性に優れており、好適に使用される。
また、これらの樹脂には、必要に応じて各種添加剤、例えば酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、可塑剤、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどの無機物粉末、木粉、ガラス繊維などの充填剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤などを添加することができる。なお、射出樹脂は、用途に応じて適宜、着色剤を添加して着色した樹脂を使用しても良い。基板1の厚みについては特に制限はなく、当該基板の用途に応じて選定される。
ここで、基板1と樹脂硬化層2との密着性を向上させる目的で、界面にプライマー層を設けても良い。プライマー層の組成について制限はないが、例えば、基板1及び樹脂硬化層2それぞれと化学結合できるような反応性官能基を有した樹脂組成物の硬化物を使用しても良い。
樹脂硬化層2は、基板1に耐摩耗性等の機械強度を付与するために設けられる層であり、紫外線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂あるいは湿気硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物からなる。樹脂硬化層2に使用される紫外線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂あるいは湿気硬化性樹脂の種類については、前述するマルテンス硬さ、及び炭素原子の含有率X(at%)と珪素原子の含有率Y(at%)の比を充足できるように適宜設定すればよく、これらの物性値を充足できることを限度として特に制限されない。
本実施形態において、紫外線硬化性樹脂とは、紫外線(UV)によって硬化する樹脂をいう。代表的なラジカル重合反応する樹脂としては、分子中にアクリロイル基を有する樹脂であり、アクリル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートなどのモノマー、オリゴマー、ポリマーなどの混合物が使用される。なお、シリコーン(メタ)アクリレートは、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーンを(メタ)アクリル酸で変性させることにより得ることができ、本樹脂を含有することで式(3)の化学組成の珪素含有率を向上させることができる。これらの樹脂は単独の組成で用いても、数種の混合組成で用いても良く、又、後述する熱硬化性樹脂や湿気硬化性樹脂と組み合わせて使用しても良い。
なお、紫外線照射に伴い樹脂の硬化を円滑に進行させる為に、公知の光重合開始剤を適量添加することが好ましい。このような光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等が挙げられる。
また、光増感剤として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、ポリ−n−ブチルホスフィン等を混合して用いることができる。
本実施形態において、熱硬化性樹脂とは、熱によって硬化する樹脂をいう。中でも、式(3)の化学組成の珪素含有率を向上させるためには、シリコーン系の熱硬化性樹脂を使用することが好ましく、2〜4官能性、更に好ましくは3〜4官能性のケイ素アルコキシドを加熱により硬化させるものが好ましい。また、これらをあらかじめ溶液中で適度に加水分解ならびに脱水縮合を行なって適度にオリゴマー化あるいはポリマー化させたものも好ましく用いられる。使用可能なケイ素アルコキシドの例としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらの樹脂は単独の組成で用いても、数種の混合組成で用いても良く、又、先述した紫外線硬化性樹脂あるいは湿気硬化性樹脂と組み合わせて使用しても良い。
また本実施形態において、湿気硬化性樹脂とは、空気中の湿気によって硬化する樹脂をいう。中でも、式(3)の化学組成の珪素含有率を向上させるためには、シリコーン系の湿気硬化性樹脂を使用することが好ましく、2〜4官能性、更に好ましくは3〜4官能性のケイ素アルコキシドを湿気により硬化させるものが好ましいまた、これらをあらかじめ溶液中で適度に加水分解ならびに脱水縮合して適度にオリゴマー化あるいはポリマー化させたものも好ましく用いられる。湿気硬化性樹脂に用いられるケイ素アルコキシドとしては、例えば、熱硬化性樹脂に用いられるケイ素アルコキシドと同様のものを採用できる。これらの樹脂は、単独の組成で用いてもよく、二種以上の混合組成で用いてもよく、先述した紫外線硬化性樹脂あるいは熱硬化性樹脂と組み合わせて用いてもよい。
本実施形態では、樹脂硬化層2が平均粒子径10nm以上100nm以下の無機微粒子を含有しても良い。該無機微粒子としては、酸化珪素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化スズ、五酸化アンチモンといった酸化物やアンチモンドープ酸化スズ、リンドープ酸化スズ等複合酸化物が挙げられる他、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、カオリン、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等も使用することができる。これら無機微粒子は2種類以上を混合して用いてもよい。中でも酸化珪素を用いることが好ましい。酸化珪素を含有することで式(3)の化学組成の珪素/炭素比を向上させることができる。微粒子として、酸化珪素を主成分としてもよい。ここでいう主成分は重量としての主成分である。
なお、上記無機微粒子の平均粒子径は、動的光散乱法により測定される微粒子の平均粒子径であり、粒径分布を累積分布で表したときの50%粒径(d50メジアン径)である。例えば、市販の米国Microtrac社製のNanotracUPA−EX150と呼ばれる装置により測定できる。
上記無機微粒子を添加することにより、樹脂硬化層中の空隙を微粒子が埋めるため、硬度がアップする。また、上記無機微粒子の平均粒子径を10nm以上にすることにより、微粒子の製造が容易となり、100nm以下にすることにより、樹脂硬化層の光線透過性を付与することができる。さらに好ましい該無機微粒子の平均粒子径は、10nm以上50nm以下である。該無機微粒子の添加量は、粒子の種類、粒径により異なるが、紫外線硬化性樹脂100重量部に対して20〜500重量部、より好ましくは50〜300重量部である。
また、諸物性を向上させるため、硬化剤、紫外線吸収剤、光安定剤、レベリング剤、滑剤等を添加しても構わない。特に、耐候性能を付与するためには、紫外線吸収剤や光安定剤を添加することで、紫外線や風雨に晒されることによる樹脂の変色や劣化等を効果的に抑制することが可能になる。
樹脂硬化層2の厚さについては、当該樹脂硬化層2の組成に応じて、前述する硬度、化学組成を充足できる範囲に適宜設定すればよいが、通常1〜20μm、好ましくは2〜10μmが挙げられる。このような厚さを満たすことによって、前述する硬度、化学組成を充足させつつ、より一層効果的に優れた耐摩耗性及び耐久性を備えさせることが可能になる。
なお、本発明の実施形態に係る樹脂硬化層付き基板は、基板1の第1面1a側だけでなく、第2面1b側にも樹脂硬化層を備えてもよい。
図2は、本発明の実施形態の変形例に係る樹脂硬化層付き基板を示す断面図である。図2に示すように、樹脂硬化層付き基板10Aは、基板1と、基板1の第1面1a側に設けられた樹脂硬化層2と、基板1の第2面1b側に設けられた樹脂硬化層2Aと、を備える。樹脂硬化層2Aは、樹脂硬化層2と同一の組成であっても良いし、同一でなくても良い。このような態様であれば、樹脂硬化層付き基板1は、その両面において耐摩耗性を備え、かつその両面において耐久性に優れる。
本発明の実施形態に係る樹脂硬化層付き基板(積層体)の有効な用途として、化粧シートの印刷保護層としての用途が挙げられる。この用途の場合には、樹脂硬化層2が化粧シートの耐摩耗性や耐傷を向上させ、耐久性を付与することが可能になる。また、接着剤を介して化粧シートを木質系基材に貼り合せることで化粧板としても使用することができる。
例えば、図3に示すように、化粧板20は、基板1と、基板1の第1面1a上に設けられた印刷層21と、印刷層21上に設けられた樹脂層22と、樹脂層22上に設けられた樹脂硬化層2と、を備えてもよい。樹脂層22は、耐溶剤性や耐候性を持たせる層である。化粧板20において、樹脂硬化層2及び樹脂層22はそれぞれ透明性を有する。樹脂硬化層2側から印刷層21を目視することができる。
また、本発明の実施形態に係る樹脂硬化層付き基板(積層体)の別の用途として、車両用窓としての用途が挙げられる。この用途の場合には、図2に示した基板1にプラスチック系基材が用いられる。また、図2において、樹脂硬化層付き基板10Aは、車両用窓と読み替えられる。樹脂硬化層2がプラスチック系基材の耐摩耗性や耐傷性を向上させ、耐久性を付与することが可能になる。
<樹脂硬化層付き基板の製造方法>
本実施形態の樹脂硬化層付き基板の製造方法については、特に制限されないが、例えば、下記に示したような方法が挙げられる。
本実施形態の製造方法は、基板1の少なくとも一方の面に樹脂硬化層2を形成する工程と、樹脂硬化層2に表面改質処理を施す工程とを含む。
そして、樹脂硬化層2に表面改質処理を施す工程では、光照射処理後の樹脂硬化層2が下記(a)及び(b)の要件を満たすようにXeエキシマ光照射処理した。
(a)樹脂硬化層2の表面2aから深さ方向0.2μmまでの範囲の領域のマルテンス硬さが300N/mm以上であり、かつ樹脂硬化層2の表面2aから深さ方向1.0μmまでの範囲の領域のマルテンス硬さが250N/mm以下である。
(b)樹脂硬化層2の深さ方向10nmの領域においてX線光電子分光法を用いて測定された炭素原子の含有率X1(at%)と珪素原子の含有率Y1(at%)が式(1)の関係であり、かつ樹脂硬化層2の深さ方向1000nmの領域においてX線光電子分光法を用いて測定された炭素原子の含有率X2(at%)と珪素原子の含有率Y2(at%)が式(2)の関係である。
Y1/X1≧7.0・・・(1)
Y2/X2≦5.0・・・(2)
ここで、表面改質処理する際、波長が200nm以下の真空紫外光として、Xeエキシマ光を用いることができる。Xeエキシマ光は、波長172nmの紫外線であり、上記の通り形成された樹脂硬化層2の表面にXeエキシマ光を照射することにより、樹脂硬化層2の表面構造を変化させることができる。具体的には、樹脂硬化層2の表面に存在する珪素原子と炭素原子の結合あるいは炭素原子と炭素原子の結合を特異的に切断することが可能である。このような処理を行うことにより、式(3)の化学組成の珪素/炭素比を向上させることができる。
(実施例1)
基板1である、厚み3mmのポリカーボネート板上に、下記の組成で攪拌、混合した紫外線硬化性樹脂組成物をグラビア法でDry3μm厚で塗布して樹脂硬化層2の前駆体を形成した。ここで、「Dry0.2μm厚」とは、乾燥後に0.2μm厚になるということを意味している。これと同様に、以下に記載される「Dry○○μm厚」とは、乾燥後に○○μm厚になるということを意味している。
<紫外線硬化性樹脂組成物>
・アクリルアクリレート(DIC;RC29−120)・・・・・20重量部
・シリコーンアクリレート(信越化学工業;KR−513)・・・80重量部
・コロイダルシリカ(日産化学工業;MEK−ST−ZL)・・150重量部
・光重合開始剤(BASFジャパン;イルガキュアー184)・・・4重量部
・メチルイソブチルケトン ・・・・・・・・・・・・・・・・・50重量部
次に、樹脂硬化層2前駆体の表面に120W/cmの高圧水銀灯で露光量1000mJ/cmの紫外線を照射し、完全硬化させた。その後、3000mJ/cmのXeエキシマ光を照射することで、樹脂硬化層2及び樹脂硬化層付き基板10を得た。
(実施例2)
実施例1で用いたXeエキシマ光の照射量を4000mJ/cmに変更した以外は、実施例1と同様の手順で、実施例2の樹脂硬化層2及び樹脂硬化層付き基板10を得た。
(実施例3)
実施例1で用いたXeエキシマ光の照射量を2000mJ/cmに変更した以外は、実施例1と同様の手順で、実施例3の樹脂硬化層2及び樹脂硬化層付き基板10を得た
(比較例1)
実施例1で用いたXeエキシマ光の照射量を5000mJ/cmに変更した以外は、実施例1と同様の手順で、比較例1の樹脂硬化層2及び樹脂硬化層付き基板10を得た。
(比較例2)
実施例1で用いたXeエキシマ光の照射量を1000mJ/cmに変更した以外は、実施例1と同様の手順で、比較例2の樹脂硬化層2及び樹脂硬化層付き基板10を得た
実施例1〜3及び比較例1〜2で得られた樹脂硬化層付き基板の評価項目と評価基準を下記に示す。
(硬度)
樹脂硬化層付き基板の樹脂硬化層の深さ方向に対して、最大押込み深さが0.2μmとなる荷重でダイヤモンドの圧子を押し込み、その時の最大荷重(A)と圧子の表面積(B)を用いて、ISO14577に記載の方法に従って、以下の式(2)の通りにマルテンス硬さを算出した。
マルテンス硬さ=A/B・・・(2)
さらに、最大押込み深さが1.0μmとなる荷重においても、同様の手順でマルテンス硬さを算出した。
(化学組成)
樹脂硬化層付き基板の樹脂硬化層の深さ方向10nmの領域において、X線光電子分光法を用いて測定を行った場合の炭素原子の含有率X(at%)と珪素原子の含有率Y(at%)を用いて以下の式(3)の通りに珪素/炭素比を算出した。
珪素/炭素比=Y/X・・・(3)
さらに、深さ方向1000nmの領域においても、同様の手順で珪素/炭素比を産出した。
(耐摩耗性)
摩耗輪にCS−10Fを用い、1000回転、60rpm、500g荷重の条件でテーバー摩耗試験を行った。テーバー摩耗試験前後の樹脂硬化層付き基板の4カ所について、ヘーズメータ(日本電色工業製NDH−2000)を用いてJISK7136に記載の方法に従ってヘイズを測定し、その平均値を求めた。上記テーバー摩耗試験後のヘイズからテーバー摩耗試験前のヘイズを差し引くことにより、テーバー摩耗試験前後のヘイズ差(ΔHz)を求めた。耐摩耗性はヘイズ差(ΔHz)で評価される。ヘイズ差(ΔHz)は、2.0%以下を「適正」とした。
(耐久性)
樹脂硬化層付き基板を40℃90%RHの環境下で240時間放置した。取り出し後に顕微鏡観察を行い、樹脂硬化層上のクラックの有無を判定した。クラックがないことを「適正」とした。各実施例及び各比較例の評価結果を表1に示す。
Figure 2020082439
実施例1〜3及び比較例1〜2で得た樹脂硬化層付き基板の硬度、化学組成及び耐摩耗性と耐久性を評価した。実施例1〜3については、耐摩耗性及び耐久性が良好であった。実施例1〜3のマルテンス硬さは、深さ方向0.2μmの領域で300N/mm以上、かつ深さ方向1.0μmの領域で250N/mm以下であった。実施例1〜3の化学組成は、深さ方向10nmの領域で7.0以上、かつ深さ方向1000nmの領域で5.0以下であった。
一方、比較例1では、耐久性が悪くクラックが発生した。比較例1のマルテンス硬さは、深さ方向1.0μmの領域で290N/mmである。また、比較例2では、ヘイズ差(ΔHz)は5.2%であり、耐摩耗性は向上しなかった。比較例2のマルテンス硬さは、深さ方向0.2μmの領域で230N/mmである。
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、ポリカーボネート樹脂のような傷つきやすい材料で基板が構成される場合であっても、十分な耐摩耗性及び耐久性を備える樹脂硬化層付き基板、化粧板、車両用窓、及び樹脂硬化層付き基板の製造方法を提供することができる。また、本実施形態の樹脂硬化層付き基板の製造方法によれば、ハードコートとなる樹脂硬化層を形成する際にCVD法などの乾式塗工を使用しないため、生産性の悪化や設備導入による製造コストの上昇を抑制することができる。
以上、本発明の実施形態を詳述してきたが、実際には、上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の変更があっても本発明に含まれる。
1 基板
2 樹脂硬化層
10、10A 樹脂硬化層付き基板
20 化粧板
21 印刷層
22 樹脂層

Claims (8)

  1. 基板と、
    前記基板の少なくとも一方の面側に設けられた樹脂硬化層と、を備え、
    前記樹脂硬化層は、炭素原子、珪素原子及び酸素原子を含有し、かつ下記(a)及び(b)の要件を満たすことを特徴とする樹脂硬化層付き基板。
    (a)前記樹脂硬化層の表面から深さ0.2μmまでの範囲の領域のマルテンス硬さが300N/mm以上であり、かつ前記樹脂硬化層の表面から深さ1.0μmまでの範囲の領域のマルテンス硬さが250N/mm以下である。
    (b)前記樹脂硬化層の深さ方向10nmの領域においてX線光電子分光法を用いて測定された炭素原子の含有率X1(at%)と珪素原子の含有率Y1(at%)が式(1)の関係であり、かつ前記樹脂硬化層の深さ方向1000nmの領域においてX線光電子分光法を用いて測定された炭素原子の含有率X2(at%)と珪素原子の含有率Y2(at%)が式(2)の関係である。
    Y1/X1≧7.0・・・(1)
    Y2/X2≦5.0・・・(2)
  2. 前記基板が、有機樹脂を主成分とすることを特徴とする請求項1に記載の樹脂硬化層付き基板。
  3. 前記樹脂硬化層が、オルガノポリシロキサンを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂硬化層付き基板。
  4. 前記樹脂硬化層の膜厚が、1μm以上10μm未満である、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の樹脂硬化層付き基板。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載の樹脂硬化層付き基板を備える化粧板。
  6. 請求項1から4のいずれか1項に記載の樹脂硬化層付き基板を備える車両用窓。
  7. 基板の少なくとも一方の面に樹脂硬化層を形成する工程と、
    前記樹脂硬化層に表面改質処理を施す工程とを含み、
    前記樹脂硬化層が、炭素原子、ケイ素原子及び酸素原子を含有し、かつ下記(a)及び(b)の要件を満たすことを特徴とする樹脂硬化層付き基板の製造方法。
    (a)前記樹脂硬化層の表面から深さ0.2μmまでの範囲の領域のマルテンス硬さが300N/mm以上であり、かつ前記樹脂硬化層の表面から深さ1.0μmまでの範囲の領域のマルテンス硬さが250N/mm以下である。
    (b)前記樹脂硬化層の深さ方向10nmの領域においてX線光電子分光法を用いて測定された炭素原子の含有率X1(at%)と珪素原子の含有率Y1(at%)が式(1)の関係であり、かつ前記樹脂硬化層の深さ方向1000nmの領域においてX線光電子分光法を用いて測定された炭素原子の含有率X2(at%)と珪素原子の含有率Y2(at%)が式(2)の関係である。
    Y1/X1≧7.0・・・(1)
    Y2/X2≦5.0・・・(2)
  8. 前記表面改質処理を施す工程は、
    前記樹脂硬化層の表面に波長が200nm以下の真空紫外光を照射する工程であることを特徴とする請求項7に記載の樹脂硬化層付き基板の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2022011344A (ja) * 2020-06-30 2022-01-17 株式会社豊田自動織機 車両用樹脂ウィンドウパネル

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