JP2020079217A - 白内障防止剤の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は、水晶体の構成タンパクであるクリスタリンの異常凝集および/または不溶化を抑制することが可能な剤を提供することを課題とする。【解決手段】 本発明は、[a]中空糸膜の内表面に間葉系幹細胞を接着させる工程、[b]前記中空糸膜の内腔および外腔に細胞培養液を灌流し、前記間葉系幹細胞を培養する工程、[c]前記間葉系幹細胞を培養して得られた培養上清を回収する工程、を含む、白内障の防止剤または治療剤の製造方法である。【選択図】なし

Description

本発明は、白内障を抑制する物質の製造方法に関する。
白内障は、眼の水晶体が濁ってくる疾患である。直接の原因は、水晶体を構成するタンパク質であるクリスタリンが凝集し、水晶体の透明性が失われることにより発症する。白内障の原因として、加齢、糖尿病、紫外線等々が報告されているが、何れにしても根本的な原因は解明されておらず、一旦透明性が失われた水晶体は元のように戻すことは出来ない。このため、治療方法は、少しでも白内障の進行を遅らせるための薬物治療か、濁った水晶体を超音波で砕いて取り出し(超音波水晶体乳化吸引術)、眼内レンズを入れるという治療が行われている。
ところで近年、再生医療の研究が盛んになり、幹細胞を移植する細胞移植治療により様々な疾患の治療が可能であることが明らかとなってきた。間葉系幹細胞は、体性幹細胞の一種であり、間葉系の細胞、すなわち骨細胞、心筋細胞、軟骨細胞、脂肪細胞などへの分化能を有することから、骨や血管、心筋の再構築などの再生医療への応用が期待されている。また、間葉系幹細胞は、抗炎症作用、免疫調節作用なども有することから、種々の自己免疫疾患や移植片対宿主病の治療などに既に利用されている。更に、慢性的な肝疾患である肝硬変に対しても、肝組織の線維化を抑制し改善効果があることが報告されている。
こうした中、細胞移植治療において生体内に移植された間葉系幹細胞は、細胞自身の増殖や分化により組織を再生するだけではないことが分かってきた。すなわち、細胞から分泌される種々のサイトカイン等の生理活性物質が持つ多様な性質が、組織の再生や疾患部位の治癒に少なからず寄与していることが明らかにされてきた。
間葉系幹細胞をインビトロで培養した際には、培養液中にこうした生理活性物質が放出されることになる。そこで、間葉系幹細胞の培養に使用した培養液を回収し、細胞から放出される物質を多く含むこの培養液を利用して、組織を再生することに成功した例が報告されている。上田らは、ラットを用いた実験で、骨髄間葉系幹細胞の培養上清が骨の再生能力を持つことを示した(例えば、非特許文献1)。この中で、骨髄間葉系幹細胞の培養上清中には、インスリン様成長因子(IGF)や血管内皮細胞増殖因子(VEGF)などが多く含まれており、これらの因子が組織の再生などに関わっていることが示唆されている。また、有村らは、骨髄間葉系幹細胞の培養上清が抗炎症作用を有し、腸炎の予防・治療効果を示すことを報告している(例えば、特許文献1)。
更に最近では、間葉系幹細胞から分泌される、エクソソームと呼ばれる小胞が、様々なタンパク質やRNAを含み、これが間葉系幹細胞と同様の治療効果を持つことが報告されている(例えば、非特許文献2)。
特開2013−18756号公報
Tissue Engineering PartA.2012;18:1479−1489 Drug Delivery System.2014;29−2:141−151
本発明は、水晶体の構成タンパクであるクリスタリンの異常凝集および/または不溶化を抑制することが可能な剤を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題に対し鋭意検討を行った結果、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の概要は以下の通りである。
1.以下の[a]から[c]の工程を含む、白内障の防止剤または治療剤の製造方法。
[a]中空糸膜の内表面に間葉系幹細胞を接着させる工程
[b]前記中空糸膜の内腔および外腔に細胞培養液を灌流し、前記間葉系幹細胞を培養する工程
[c]前記間葉系幹細胞を培養して得られた培養上清を回収する工程
2.[d]前記培養上清よりエクソソームを抽出する工程
[e]前記エクソソームをリン酸緩衝生理食塩水に懸濁する工程
を含む、1に記載の白内障の防止剤または治療剤の製造方法。
3.前記間葉系幹細胞は、骨髄間葉系幹細胞または脂肪組織由来間葉系幹細胞である、1または2に記載の白内障の防止剤または治療剤の製造方法。
本発明により、白内障の進行を抑制することができる剤を簡便に製造することができる。
間葉系幹細胞の培養上清の作製に用いる細胞培養容器の一例を示す模式図である。 間葉系幹細胞の培養上清の作製に用いる細胞培養装置の一例を示す模式図である。 培養上清作製のスケジュールである。 培養上清を用いたラット水晶体のスコア推移を示すグラフである。 エクソソーム抽出液を用いたラット水晶体のスコア推移を示すグラフである。
(間葉系幹細胞)
本発明において、間葉系幹細胞は、特に限定されるものではないが、骨髄由来間葉系幹細胞または脂肪組織由来間葉系幹細胞が好適である。また、プライマリー細胞に限らず、遺伝子改変等によって株化/不死化された間葉系幹細胞も用いることが出来る。動物種も特に限定されず、ヒト、マウス、ラット等のいずれの動物由来のものも使用できる。
(間葉系幹細胞の培養上清)
本発明において、間葉系幹細胞の培養上清とは、細胞を一定期間(数時間から数日間)培養した際に、細胞に直接または中空糸膜などを介して間接的に接触していた培養液を細胞と分離して得られるものを言う。培養液馴化培地、コンディションドメディウム(Conditioned medium)などと同意である。
(細胞培養液)
本発明において、培養上清の製造に用いる培養液の組成等は、特に限定されない。例えば、Dulbecco’s Modified Eagle Medium(DMEM)、Minimum Essential Medium Eagle, Alpha Modification(αMEM)、Roswell Park Memorial Institute media(RPMI)1640などを基礎培地とし、これに適宜、細胞増殖因子、ホルモン、動物血清などを添加することにより調製されたものが使用できる。
本発明において、細胞培養液は、場合によっては動物血清を含まないことが好ましい。これは、動物血清には細胞増殖因子等の生理活性物質が豊富に含まれるため、時にはこれらの生理活性物質の存在が、培養上清を使用する際に目的の妨げとなったり、マイナスに作用する可能性があるためである。
本発明において、間葉系幹細胞を培養して培養上清を得るためには、中空糸膜を培養基材として収納した細胞培養容器を用いるのが好ましい。このような細胞培養容器は、容積効率を高くすることができるため省スペース化を図ることができるだけでなく、特定の構成を有する中空糸膜を用いることにより効率よく培養上清を回収することができる。
(中空糸膜)
本発明において、培養基材として用いる中空糸膜は、細胞を膜表面に保持でき、溶液や低分子の物質を透過させるような構造を有するものが好ましい。より詳しくは、培養上清成分は中空糸膜を透過しないが、培養液成分は中空糸膜を透過する構造(平均細孔径)を有するものが好ましい。具体的には、培養上清中の特にエクソソーム(大きさ:およそ30nm〜150nm)は膜透過せず、培養液成分であるγ−グロブリン(大きさ:およそ8.4nm)は膜透過する特性を有する中空糸膜が好ましい。すなわち、中空糸膜は、10nm〜30nm程度の平均細孔径を有する、いわゆる限外ろ過膜を用いるのが好ましい。
前記中空糸膜を構成する材料としては、2−ヒドロキシエチルメタクリレートやポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、セルロースアセテートや再生セルロースなどのセルロース系樹脂、ポリスルホンやポリエーテルスルホンなどのポリスルホン系樹脂、ポリ乳酸やポリヒドロキシアルカノエート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミドなどが好適に利用できる。また、これらの誘導体が主成分であっても良い。
本発明において、中空糸膜は、前記の素材に化学的に修飾を加えたものであっても良い。例えば、親水化処理されていてもよい。親水化処理された中空糸膜を用いることにより、培養細胞への培養液等の液体成分の供給が容易になる。中空糸膜を親水化処理する方法としては、例えば、中空糸膜をエチレン−ビニルアルコール共重合体等の親水性高分子や、グリセリン、エタノールで処理する方法が挙げられる。また、使用する細胞に応じて、中空糸膜への接着性向上のため、コラーゲンやフィブロネクチン等のコーティングを行っても良い。
本発明において、中空糸膜は、内径が小さすぎると培養容積が確保できないとか、培養細胞にストレスを与えることになるので10μm以上が好ましい。一方、内径が大きすぎると容積効率が低下し中空糸膜培養のメリットを損なうことになるので2000μm以下が好ましい。また、中空糸膜の膜厚は、培養液成分の透過性や膜強度を考慮すると、10〜200μm程度が好ましい。
本発明において、間葉系幹細胞の培養上清を製造する方法は、例えば、中空糸膜を細胞培養基材として用い、中空糸膜の内腔側または外腔側で間葉系幹細胞を培養すればよい。具体的には、間葉系幹細胞を培養液等に縣濁した細胞懸濁液を中空糸膜の内腔または外腔に充填して、細胞を膜表面に接着させた後、培養液を中空糸膜の内腔側および外腔側に連続的または間欠的に灌流させる等して間葉系幹細胞の培養を行う。なお、間欠的な灌流とは、培養液の流れを一時的に止める工程を加えることを指す。ここで、流れを止める間隔は特に制限されず、等間隔でも不規則でもよい。培養液は、細胞に必要な養分や酸素などを供給したり、逆に老廃物を排出する役割を有する。このようにして、一定期間培養を行った後の中空糸膜内腔側の培養液を回収すれば、間葉系幹細胞の培養上清液を得ることができる。
(細胞培養容器)
本発明において、間葉系幹細胞の培養上清の製造に用いる細胞培養容器は、4つの開口部を有する筒状容器に数本〜数万本の中空糸膜を収納し、中空糸膜の両端を筒状容器に液密に接着固定することにより作製することができる。このような細胞培養容器は、単位容積あたりの培養面積を大きくすることができ、また培養操作を簡便化することができるため、効率よく細胞培養を実施することが出来る。
このような細胞培養容器の構成は特に限定されないが、例えば図1に示すように、4つの開口部(エンドポートおよびサイドポート)を有する筒状容器に中空糸膜が適宜必要な本数束ねられて収納されている形態が挙げられる。具体的には、細胞培養容器1において、複数の中空糸膜3は、両端において各中空糸膜の内腔と外腔を分離した状態で、かつ中空糸膜の中空部を閉塞しないようにシール材(例えば、ポリウレタン系ポッティング剤)8により筒状容器2端部に接着固定されている。すなわち、前記4つの開口部のうち、2つのエンドポート6aおよび6bは、中空糸膜3の内腔(中空部)5と連通している。一方、前記開口部のうち、2つのサイドポート7aおよび7bは、前記筒状容器2の内側であって、かつ前記中空糸膜の外側である空間(外腔側)4と連通しており、前記サイドポート7aまたは7bの一方から導入された培養液などが外腔側4を通ってもう一方のサイドポート7bまたは7aから導出されるように構成されている。
(細胞培養装置)
図2は、中空糸膜型細胞培養容器を用いる細胞培養装置の一例を示している。細胞培養容器1の中空糸膜内腔5に連通するエンドポート6aには、導入口40から間葉系幹細胞を含む細胞懸濁液を導入、送液するための流路および培養液貯留容器9から細胞培養液を送液するための流路が接続されている。また、細胞懸濁液と細胞培養液の流路を切替えられるように流路の途中にバルブ20が設けられている。また、前記細胞培養容器1の中空糸膜内腔5に連通するエンドポート6bには、培養後の培養上清を排出するための流路が接続されており、流路の途中には流量調整用のバルブ21および送液ポンプ31、培養上清回収容器11または排出口50への流路を切替えるためのバルブ22が設けられている。一方、細胞培養容器1の中空糸膜外腔4に連通するサイドポート7aには、培養液貯留容器8から中空糸膜外腔4に培養液を送液するための流路が接続されている。また、中空糸膜外腔4に連通するサイドポート7bには、培養液を排出するための流路が接続されており、流路の途中には送液ポンプ30が設けられており、排出された培養液を回収するための回収容器10に接続されている。なお、本発明において、少なくとも培養液貯留容器8、9および流路、細胞培養容器1は、COインキュベータ内に設置されていることが好ましい。なお、ポンプ31は、容器9と6aとを繋ぐ流路の途中に設置してもよいし、ポンプ30についても、容器8と7aとを繋ぐ流路の途中に設置してもよい。
(培養上清の製造)
間葉系幹細胞を培養する場合、細胞培養容器の中空糸膜内腔に細胞懸濁液を導入して間葉系幹細胞を中空糸膜表面に接着させた後、中空糸膜内腔と外腔の両方に細胞培養液を流すことにより培養環境を整えながら間葉系幹細胞を培養する。すると、間葉系幹細胞は、培養液中に種々の分泌物(タンパク質、サイトカイン、エクソソーム)を放出するので、細胞培養液とともにこれらの分泌物を回収する。
図2を参照して、培養上清の製造について説明する。導入口40より細胞懸濁液を送液し、中空糸膜内腔5に細胞懸濁液を充填する。細胞懸濁液が充填された後、バルブ20を閉の状態とする。中空糸膜内腔5に細胞懸濁液を充填した後、一定時間静置して中空糸膜表面に細胞を接着させる。一定時間静置後、培養液貯留容器9、中空糸膜内腔5、排出口50が連通するようにバルブ20、21、22を切替え、ポンプ30および31を起動して細胞培養容器の中空糸膜内腔5と中空糸膜外腔4の両方に細胞培養液を流す。このとき、培養液の流量は、細胞増殖度合いや環境に応じて調整することが好ましい。また、少なくとも細胞培養容器、培養液貯留容器およびそれらを繋ぐ流路は、温度およびCO濃度の制御機構を備えたインキュベータ内に設置する。数日間、培養を行った後、培養液貯留容器9の培養液を培養上清回収用の培養液に交換する。培養上清回収用の培養液に交換した後、バルブ22を切替え、培養上清回収容器11に培養上清を含む培養液を回収する。
培養液、特に中空糸膜内腔5を流れる培養液の流速は、細胞増殖度合いや環境に応じて、調整することが好ましい。細胞増殖度合いを調べる方法は、特に限定されないが、培養液中のグルコースや乳酸塩の濃度等の測定結果をもとに行うことが出来る。
本発明において、培養上清は、前記回収した培養液から間葉系幹細胞を除去したものを意味するが、前記培養上清から例えば、残存培養液成分(培養前の培養液の成分のうち、培養後の培養液中に残存している成分)、培養液の水分などの本発明における白内障の防止または治療に寄与しない成分の少なくとも一部をさらに除去したものも、本発明における間葉系幹細胞の培養上清に含まれる。また、回収した培養液(培養上清)より抽出したエクソソームを含む懸濁液も白内障の防止剤または治療剤として用いることができる。
本発明において、培養上清からエクソソームを抽出する方法としては、PSアフィニティ法、超遠心分離法、ポリマー沈殿法、表面抗原に対する表面抗原アフィニティ法などが挙げられ、いずれの方法も用いることができる。前記PSアフィニティ法は、ホスファチジルセリン(PS)結合分子を用いてエクソソームを金属イオン依存的に捕捉した後、キレート剤により溶出する方法であり、表面抗原アフィニティ法は、表面抗原に対する抗体アフィニティ法によりエクソソームを回収する方法である。本発明においては、PSアフィニティ法を用いるのが好ましい。
また、培養上清またはエクソソーム抽出液には、配合により好ましくない相互作用を生じない限り、他の活性成分、例えば、抗アレルギー又は抗ヒスタミン成分、充血除去成分、局所麻酔薬成分、ビタミン成分(ビタミンA、B群、C)、アミノ酸成分(バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、メチオニン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、ヒスチジン、シトルリン、オルニチン、シスチン、タウリン、グリシン)などをさらに含有していてもよい。そのような他の活性成分としては、公知の各種薬剤を適宜使用することができる。また、他の活性成分は、本発明の剤とは別個に製剤化し、同一対象に対して、同時又は時間差をおいて、また、同一経路又は別経路で投与してもよい。
(膜の平均細孔径)
作製した膜の平均細孔径の測定は、Porous Materials社製パームポロメーター(PPM,CFP−1200AEX)装置を用いて行った。試験タイプはCapillary Flow PorometryのWet Up/Dry Upとし、試液としてGalWick(表面張力15.7dyne/cm)を使用した。測定に用いる中空糸膜を、前記PPMで測定が可能となるように、専用の小エレメントへ加工した。装置付属の中空糸膜測定用サンプルホルダー(サンプル挿入口 開口部直径8.5mm)に合うように、外径8.5mm、厚み1mm、長さ4cmの中空状のアクリルスリーブを準備した。スリーブ内に中空糸膜を通した後、該スリーブ内部を硬化性樹脂で埋めて硬化させた。該スリーブのホルダー挿入側については、該スリーブ端面から飛び出た分の中空糸膜を該スリーブ端面で硬化樹脂と共に裁断して中空糸膜の断面を出し、挿入側と逆側(膜サンプル測定側)については、該スリーブ端面(正確には硬化樹脂と中空糸膜との界面)から3cmをわずかに超える長さを残し、余分な中空糸膜を切り落とした。中空糸膜の有効長が3cmとなるように、中空糸膜の先端に硬化性樹脂を塗布して封止し、測定用の小エレメントを完成させた。下記の測定パラメーター(自動試験パラメーター値)をPPM付属の測定用ソフトに入力後、よく乾燥している小エレメントを前述のサンプルホルダーに挿入・固定し、さらに該ホルダーをPPMにセットした。測定は、まずDry下で実施し、その後、膜サンプルをGalWickに10分間浸漬させてから、Wet下での測定を実施した。
<細孔直径分布測定試験の自動試験パラメーター値>
(0)最小圧力0(KPA)、最大圧力300(KPA)、200000maxflow(cc/m)
(1)バブルポイント試験/インテグリティ試験;15.0bublflow(cc/m)、100F/PT(old bubltime)、0.00minbppres(KPA)、1.0zerotime(sec)
(2)モータバルブ制御;3v2incr(cts*3)
(3)レギュレータ制御;1preginc、2pulse delay
(4)Lohmの校正;1330.68346maxpres(KPA)、0.070pulsewidth(sec)
(5)データ確定ルーチン;30mineqtime(sec)、50presslew(cts*3)、50flowslew(cts*3)、50eqiter(0.1sec)、5aveiter(0.1sec)、0.69maxpdif(KPA)、30.0maxfdif(cc/m)
なお、ctsは機械定数で「カウント数」を表し、cts*3はctsを3倍することを意味する。
(中空糸膜1の作製)
ポリエーテルスルホン(BASF社製Ultrason(登録商標)6020P)26wt%、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体(BASF社製Luvitec(登録商標)VA64)1wt%、N−メチル−2−ピロリドン(NMP、三菱化学社製)32.85wt%、トリエチレングリコール(TEG、三井化学社製)40.15wt%を60℃で混合、溶解し均一な溶液を得た。得られた製膜溶液を二重管ノズルの環状部から、中心部から芯液としてNMP42.75wt%、TEG52.25wt%、RO水5wt%の混合液を吐出し、エアギャップを経て、NMP27wt%、TEG33wt%、RO水40wt%の混合液からなる外部凝固液を満たした凝固浴に導いた。この際、ノズル温度は55℃、外部凝固液の温度は25℃に設定した。凝固浴から引き出した後に水洗槽を走行させて洗浄を実施し、巻取り機で巻き取った。巻き取った中空糸膜は、本数100本、長さ30cmの中空糸膜束とし、85℃のRO水に直立状態で浸漬して洗浄処理を行った。その後、40℃の温水を入れた高圧蒸気滅菌機に水没させ、140℃×20minの条件で高圧熱水処理を行った。その後、庫内温度35℃でマイクロ波乾燥を行った。前記高圧熱水処理及びマイクロ波乾燥を3回繰り返し、中空糸膜1を作製した。得られた中空糸膜1の内径は252μm、外径は318μm、膜厚は33μmであった。また、平均細孔径は14nmであった。
(中空糸膜2の作製)
セルローストリアセテート(CTA、ダイセル化学社製)19wt%、NMP56.7wt%、TEG24.3wt%を混合、溶解し製膜溶液を得た。得られた製膜溶液を二重管ノズルの環状部から、芯液として流動パラフィンを中心部から吐出し、エアギャップを経て、NMP14wt%、TEG6wt%、RO水80wt%の混合液からなる外部凝固液を満たした凝固浴に導いた。この際、ノズル温度は115℃、外部凝固液の温度は30℃に設定した。凝固浴から引き出した後に水洗槽を走行させて洗浄を実施し、50℃、60wt%のグリセリン浴を通過させ、乾燥して巻取り機に巻取り、中空糸膜2を作製した。得られた中空糸膜2の内径は248μm、外径は280μm、膜厚は16μmであった。また、平均細孔径は23nmであった。
(中空糸膜3の作製)
CTA18wt%、NMP69.7wt%、TEG12.3wt%を混合、溶解し製膜溶液を得た。得られた製膜溶液を二重管ノズルの環状部から、芯液として水を中心部から吐出し、エアギャップを経て、NMP25.5wt%、TEG4.5wt%、RO水70wt%の混合液からなる外部凝固液を満たした45℃の凝固浴に導いた。凝固浴から引き出した後に水洗槽を走行させて洗浄を実施し、53℃、60wt%のグリセリン浴を通過させ、乾燥して巻取り機に巻取った。得られた中空糸膜3の内径は251μm、外径は303μm、膜厚は26μmであった。また、平均細孔径は11nmであった。
(中空糸膜4の作製)
CTA17.5wt%、NMP57.75wt%、TEG24.75wt%を混合、溶解し製膜溶液を得た。得られた製膜溶液を二重管ノズルの環状部から、芯液として流動パラフィンを中心部から吐出し、エアギャップを経て、NMP14wt%、TEG6wt%、RO水80wt%の混合液からなる外部凝固液を満たした凝固浴に導いた。この際、ノズル温度は125℃、外部凝固液の温度は30℃に設定した。凝固浴から引き出した後に30℃の水洗槽を走行させて洗浄を実施し、50℃、60wt%のグリセリン浴を通過させ、乾燥して巻取り機に巻き取った。得られた中空糸膜4の内径は250μm、外径は290μm、膜厚は20μmであった。また、平均細孔径は33nmであった。
(中空糸膜5の作製)
ポリエーテルスルホン42.5wt%、ポリビニルピロリドン(BASF社製コリドンK−90)4.5wt%、TEG21.2wt%、NMP31.8wt%を混合、溶解し製膜溶液を得た。得られた製膜溶液を二重管ノズルの環状部から、芯液として流動パラフィンを中心部から吐出し、エアギャップを経て、5℃の65重量%NMP39wt%、TEG26wt%、RO水35wt%の混合液からなる5℃の外部凝固液を満たした凝固浴に導いた。凝固浴から引き出した後に65℃の水洗槽を走行させて洗浄を実施し、85℃、60wt%のグリセリン浴を通過させ、乾燥して巻取り機に巻取った。得られた中空糸膜5の内径は250μm、外径は284μm、膜厚は17μmであった。また、平均細孔径は3nmであった。
[実施例1]
内表面に予めコラーゲン(新田ゼラチン)をコートした中空糸膜1を用いて図1に示す細胞培養容器を作製した。また、得られた細胞培養容器を用いて図2に示す細胞培養装置を構成し、COインキュベータ内に設置し、本実験を行った。ヒト骨髄間葉系幹細胞(CELL APPLICATIONS Inc.)を培養液に懸濁した溶液を中空糸膜内腔に注入(播種細胞数は、5.0×10cells/モジュール)した。このとき、細胞培養容器内の総培養面積(中空糸膜の内径基準の膜面積)は98cmであることから細胞播種密度は、約5100cells/cmと計算された。培養液は、培養開始(細胞播種)から96時間後までは、10%ウシ胎児血清(ライフテクノロジーズ)を添加したDMEMGlutaMAX(ライフテクノロジーズ)を用い、培養上清を採取する96時間以降は、MF−medium(間葉系幹細胞増殖培地、東洋紡)を用いた。
図3に、培養上清作製のスケジュールを示す。
細胞播種(培養開始)から7日間(168時間)培養を実施した。この間、中空糸膜内腔を流れる培養液の流速(線速度)は、細胞播種を行ってから96時間までは、平均0.066mm/min、96時間後から144時間までは、平均0.20mm/min、144時間後から168時間までは、平均0.33mm/minとした。一方、中空糸膜外腔を流れる培養液の速度は、培養開始から終了(168時間)まで、3.4mm/minとした。細胞培養上清は、培養開始96時間後から168時間までの72時間分を回収した。培養上清の量は、計7.9mlであった。培養上清は回収後ただちに分注し、使用まで−80℃に凍結保存した。尚、流速については、中空糸膜内腔、外腔それぞれから流出する流量を流量計を設置して測定し、中空糸膜内腔容積および中空糸膜外腔容積をもとに算出した。培養から168時間後に細胞をトリプシンで消化、剥離回収し、細胞数をカウントした結果、1.3×10個の細胞が回収され、増殖率は26倍であった。
[実施例2]
中空糸膜2を用いた以外は、実施例1と同様にして細胞培養実験を行った。なお、細胞培養容器内の総培養面積(中空糸膜の内径基準の膜面積)は99cmであることから、細胞播種密度は約5050cells/cmと計算された。
培養から168時間後に細胞をトリプシンで消化、剥離回収し、細胞数をカウントした結果、1.3×10個の細胞が回収され、増殖率は26倍であった。
[実施例3]
中空糸膜3を用いた以外は、実施例1と同様にして細胞培養実験を行った。なお、細胞培養容器内の総培養面積(中空糸膜の内径基準の膜面積)は99cmであることから、細胞播種密度は約5050cells/cmと計算された。
培養から168時間後に細胞をトリプシンで消化、剥離回収し、細胞数をカウントした結果、1.5×10個の細胞が回収され、増殖率は30倍であった。
[比較例1]
中空糸膜4を用いた以外は、実施例1と同様にして細胞培養実験を行った。なお、細胞培養容器内の総培養面積(中空糸膜の内径基準の膜面積)は98cmであることから、細胞播種密度は約5100cells/cmと計算された。
培養から168時間後に細胞をトリプシンで消化、剥離回収し、細胞数をカウントした結果、1.3×10個の細胞が回収され、増殖率は26倍であった。
[比較例2]
中空糸膜5を用いた以外は、実施例1と同様にして細胞培養実験を行った。なお、細胞培養容器内の総培養面積(中空糸膜の内径基準の膜面積)は98cmであることから、細胞播種密度は約5100cells/cmと計算された。
培養から168時間後に細胞をトリプシンで消化、剥離回収し、細胞数をカウントした結果、0.8×10個の細胞が回収され、増殖率は16倍であった。
[比較例3]
2枚のコラーゲンコートシャーレ(培養面積55cm、旭テクノガラス)にヒト骨髄間葉系幹細胞(CELL APPLICATIONS Inc.)を細胞播種密度が約5100cells/cmとなるよう播種した。培養液は、実施例1と同様に、細胞を播種してから96時間までは、10%ウシ胎児血清(ライフテクノロジーズ)を添加したDMEM GlutaMAX(ライフテクノロジーズ)を用い、96時間以降はMF−medium(間葉系幹細胞増殖培地、東洋紡)に培地を交換して培養した。
図3に、培養上清作製のスケジュールを示す。
培養開始48時間後、および96時間後に、培養液交換を実施した。その後、培養液交換をせず、培養開始から168時間で100%コンフルエントに達したところで培養を終了した。この最後の培地交換から培養終了までの72時間の培養を行った培養液を培養上清として回収した。培養上清の量は、計10.0mLであった。培養上清は回収後ただちに分注し、使用まで−80℃に凍結保存した。培養から168時間後に細胞をトリプシンで消化、剥離回収し、細胞数をカウントした結果、2.7×10個の細胞が回収され、増殖率は9.6倍であった。
[実験1]
(白内障モデルラット)
2型糖尿病で白内障を発症するモデルラット、SDJ/Jclラット(日本クレア)のオスを15週齢で購入し、馴化の後、20週齢より実験に供した。実験は、各群5匹で実施した。
(培養上清のラットへの投与)
実施例および比較例にて回収したそれぞれの培養上清および細胞に接触させていない新しいMF−medium(間葉系幹細胞増殖培地、東洋紡)を、それぞれSDJ/Jclラットの両眼へ点眼投与した(各群5匹)。すなわち、それぞれの培養上清、培養上清から調製したエクソソームおよび培地を、ラットの片目あたり10μL、マイクロピペットを使用して点眼した。点眼は1日1回実施し、ラットが20週齢から40週齢になるまでの20週間、毎日実施した。
[実験2]
(培養上清からのエクソソーム抽出)
実施例および比較例で得られた各培養上清からエクソソームを抽出した。エクソソームの抽出には、MagCaptureTMExosome Isolation Kit PS(和光純薬工業、型番:293−77601)を用いた。それぞれ、得られたエクソソームは、元の培養上清の1/10量のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に懸濁して用いた。また、細胞と接触させていない新しい培養液(MF−medium、東洋紡)からも同様にエクソソームの抽出操作を行ったものを対照群への投与用として準備した。
(抽出したエクソソーム成分のラットへの投与)
前記調製したエクソソームを含むPBS溶液(エクソソーム抽出液)を、ラットの片目あたり10μL、マイクロピペットを使用して点眼した。点眼は1日1回、ラットが20週齢から40週齢になるまでの20週間、毎日実施した。
[実験3]
(水晶体濁度の観察およびスコア化)
前記培養上清、エクソソーム抽出液および培養液のみの投与中、週に1回、ラットの両眼に1%硫酸アトロピンを点眼して散瞳させた状態で水晶体の観察を行った。観察時には、ジエチルエーテルで吸入麻酔をかけ、検眼鏡(ウェルチ・アレン製)等で濁度や濁りの発生部位等を詳細に観察し、表1に示す分類の通りスコア化した。
観察により得られたスコアの推移をグラフに示す(図4、5)。本発明の間葉系幹細胞の培養上清または培養上清から抽出されたエクソソームを含む点眼剤は、明らかに水晶体の濁りを抑制する効果があることが示された。
水晶体の濁りが発生することにより白内障が発症するが、本発明の方法により製造した間葉系幹細胞培養上清又はこれを含む溶液からなる点眼剤を点眼することにより、水晶体の濁りを抑制し、効果的に白内障を予防または治療することが可能となる。
1 細胞培養容器
2 容器
3 中空糸膜
4 中空糸膜外腔
5 中空糸膜内腔
6a、6b エンドポート
7a、7b サイドポート
8、9 培養液貯留容器
10 回収容器
11 培養上清回収容器
20、21、22 バルブ
30、31 送液ポンプ
40 導入口
50 排出口

Claims (3)

  1. 以下の[a]から[c]の工程を含む、白内障の防止剤または治療剤の製造方法。
    [a]中空糸膜の内表面に間葉系幹細胞を接着させる工程
    [b]前記中空糸膜の内腔および外腔に細胞培養液を灌流し、前記間葉系幹細胞を培養する工程
    [c]前記間葉系幹細胞を培養して得られた培養上清を回収する工程
  2. [d]前記培養上清よりエクソソームを抽出する工程
    [e]前記エクソソームをリン酸緩衝生理食塩水に懸濁する工程
    を含む、請求項1に記載の白内障の防止剤または治療剤の製造方法。
  3. 前記間葉系幹細胞は、骨髄間葉系幹細胞または脂肪組織由来間葉系幹細胞である、請求項1または2に記載の白内障の防止剤または治療剤の製造方法。

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