JP2020092622A - 細胞濃縮方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、細胞懸濁液を中空糸型分離膜内に通過させて細胞を濃縮する方法において細胞の濃縮倍率及び回収率を向上させることを目的とする。【解決手段】本発明の細胞濃縮方法は、水平方向に対し20°〜70°の角度で延在するように配置された中空糸型分離膜内に下方から上方に向けて細胞懸濁液を1mL/min〜90mL/minの流入速度で流入させ、通過させて、細胞懸濁液を濃縮することを含むことを特徴とする。【選択図】図2

Description

本発明は、細胞懸濁液中の細胞を濃縮するための技術に関する。さらに詳しくは、中空糸型分離膜を用いた細胞濃縮液の製造方法に関する。
細胞医療の分野では、生体から採取した細胞を直接、又は生体外で培養した後、体内に移植する方法が用いられている。これら移植に用いる細胞は、移植に適した細胞濃度に濃縮される必要がある。この目的のため、従来は、遠心分離を用いた濃縮、洗浄操作が広く行われてきた。
例えば特許文献1では、ヒト組織から再生細胞を分離して濃縮するために遠心分離を用いる方法が開示されている。しかし、遠心分離法は、装置が大型になること、細胞に負荷がかかること、及びコストが増大することにより、利用できる施設が限定されることが懸念される。
これに対して、特許文献2では、中空糸型分離膜を用いた細胞懸濁液の分離、精製やろ過に関しては、コンパクトで簡便な装置が提案されている。
中空糸型分離膜を用いた細胞濃縮方法は、中空糸型分離膜を生理食塩液等で事前に浸漬させる等の前処理をするのが一般的である。しかしながら、前処理に使用した生理食塩液により細胞懸濁液の容量が大きくなり、移植部位が膝関節等のスペースが限られている部位に移植することを意図する場合、移植が困難とされるため好ましくない。また、前処理に時間を要するため、移植現場での患者負担が大きくなり、好ましくない。
特表2007−524396号公報 特許第2928913号公報
本発明の課題は、中空糸型分離膜を用いた細胞濃縮方法における問題点を解決することである。具体的には、細胞懸濁液を中空糸型分離膜内に通過させて細胞を濃縮する方法において細胞の濃縮倍率及び回収率を向上させることを目的とする。
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、水平方向に対し一定の角度の範囲で傾斜するように配置した中空糸型分離膜内に下方から上方に向けて細胞懸濁液を1mL/min〜90mL/minの流入速度で流入させ、通過させたときに、高濃縮の細胞懸濁液を高い細胞回収率で得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、本発明の細胞濃縮方法は、水平方向に対し20°〜70°の角度で延在するように配置された中空糸型分離膜内に下方から上方に向けて細胞懸濁液を1mL/min〜90mL/minの流入速度で流入させ、通過させて、細胞懸濁液を濃縮することを含むことを特徴とする。
本発明において、好ましくは、細胞懸濁液を通過させる前の中空糸型分離膜が、前処理がされていない中空糸型分離膜である。
前記細胞懸濁液が、免疫細胞又は幹細胞の懸濁液であることが好ましい。
前記中空糸型分離膜が、合成高分子材料よりなることが好ましい。
前記中空糸型分離膜が、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン及びポリエチレンから選択される1種以上の合成高分子材料よりなることが特に好ましい。
前記中空糸型分離膜の内孔の総断面積が、0.010cm〜0.15cmであることが特に好ましい。
細胞懸濁液を流入させる際の中空糸型分離膜の入口での線速度が、250cm/min〜2500cm/minであることが特に好ましい。
本発明によれば、細胞懸濁液を中空糸型分離膜内に通過させて細胞を濃縮する方法において細胞の濃縮倍率及び回収率を向上させることができる。
図1は、中空糸型分離膜カラム100の断面模式図を示す。 図2は、図1に示す中空糸型分離膜カラム100を、中空糸型分離膜101の延在方向Aが水平方向Hに対し角度θを成すように傾斜させた状態を示す。
以下本発明の好ましい実施形態について説明する。
<細胞懸濁液>
本発明で濃縮し得る細胞としては、例えば人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性幹細胞(ES細胞)、間葉系幹細胞、脂肪由来間葉系細胞、脂肪由来間質幹細胞、多能性成体幹細胞、骨髄ストローマ細胞、造血幹細胞等の多分化能を有する生体幹細胞、顆粒球、T細胞、B細胞、キラーT細胞(細胞障害性T細胞)、NK細胞、NKT細胞、制御性T細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞等の免疫細胞、赤血球、血小板、神経細胞、筋細胞、線維芽細胞、肝細胞、心筋細胞等の体細胞、又は、遺伝子の導入や分化などの処理を行った細胞が例示でき、なかでも顆粒球、T細胞、B細胞、キラーT細胞(細胞障害性T細胞)、NK細胞、NKT細胞、制御性T細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞等の免疫細胞が好適である。
また、本発明で用いる細胞懸濁液としては、細胞を含む懸濁液であれば特に限定されないが、例えば、脂肪、皮膚、血管、角膜、口腔、腎臓、肝臓、膵臓、心臓、神経、筋肉、前立腺、腸、羊膜、胎盤、臍帯等の生体組織を、酵素処理、破砕処理、抽出処理、分解処理、及び/又は超音波処理等により処理して調製された細胞懸濁液が例示される。また、血液や骨髄液を密度勾配遠心処理、ろ過処理、酵素処理、分解処理、及び/又は超音波処理等の前処理をして調製された細胞懸濁液が例示される。また、上記に例示した細胞を生体外で、例えば、DMEM、α−MEM、MEM、IMEM、RPMI−1640等の液体培地を用いて培養して調製された細胞懸濁液や、サイトカイン、抗体、ペプチド等の刺激因子等を用いて培養して調製された細胞懸濁液が例示される。
本発明により濃縮された細胞を含む細胞懸濁液は、膝関節等の移植スペースが限られている部位等の移植にそのまま用いることができる。
本発明により濃縮された細胞を含む細胞懸濁液は、白血病治療、心筋再生、血管再生、幹細胞疲弊疾患、骨疾患、軟骨疾患、虚血性疾患、血管系疾患、神経病、やけど、慢性炎症、心疾患、免疫不全、クローン病等の疾患の治療のための、或いは、豊胸、しわとり、美容成形、組織陥没症等の組織増大のための再生医療、T細胞療法、NKT細胞療法、樹状細胞移入療法等の免疫療法、遺伝子導入した細胞を用いる遺伝子療法等に用いることが可能であるが、これらに限定されるものではない。また、濃縮された細胞をスキャフォールド等の構造材料に播種して培養し、形成された組織を治療に用いることも可能である。
本発明により濃縮された細胞を含む細胞懸濁液を更に培養してもよい。細胞懸濁液を洗浄して、細胞が懸濁されている体液や培地等を置換し、さらに培養することで、細胞数の増殖、細胞の分化、形質転換、遺伝子導入等を行うことができる。細胞の増殖に用いられる培地としては上記で例示した液体培地が挙げられ、サイトカイン、抗体やペプチド等の刺激因子等を更に含んでもよい。
本発明により濃縮された細胞を含む細胞懸濁液を、製薬的に許容される添加剤と混合して医薬組成物とすることもできる。製薬的に許容される添加剤としては、例えば、抗凝固剤、ビタミン等の栄養源、抗生物質等が挙げられる。
本発明により濃縮された細胞を含む細胞懸濁液は凍結保存してもよい。凍結保存は、細胞へのダメージを少なくできる点から、液体窒素を用いた凍結保存が好ましい。また、凍結保存した細胞を融解して、ヒトや動物への移植に使用し、研究に使用し、または再度培養することができる。本発明により濃縮された細胞を含む細胞懸濁液は、濃縮操作によるダメージが少ないことから、凍結保存して融解後の使用等にも好適に用いることができる。
<中空糸型分離膜及びそれを備えたカラム>
中空糸型分離膜は、細長く延びる筒状の樹脂製の分離膜からなる。樹脂製の分離膜には、細胞懸濁液の液体媒体は通過させるが細胞を通過させない寸法の細孔が多数形成されている。細胞懸濁液が、中空糸型分離膜内の内孔を一端から他端に向けて通過するとき、前記細胞懸濁液の液体媒体は分離膜の前記細孔を通過して外側にろ液として排出され、内孔中に、濃縮された細胞懸濁液が生成する。
中空糸型分離膜を形成する樹脂材料は、材料の安全性、安定性等の点から合成高分子材料を用いることが好ましい。この中でも、ポリスルホン系又はポリオレフィン系の高分子材料を用いることがより好ましく、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン又はポリエチレンを用いることが、材料の安全性、安定性、入手のしやすさから、最も好ましい。
前記細孔の寸法は特に限定されないが、例えば、平均孔径は0.05μm以上20μm以下が好ましく、0.1μm以上10μm以下がより好ましく、0.5μm以上10μm以下が最も好ましい。0.05μm未満であると、十分なろ過速度を得ることができなかったり、不要なタンパク質等の夾雑物を効率的に除去できない傾向がある。20μmを超えると、処理する細胞が孔に入りこむことで、細胞の回収率が低下する可能性があるため好ましくない。ここで、中空糸型分離膜の細孔の平均孔径とは、倍率2000倍又は5000倍の走査型電子顕微鏡観察において62μm×43μm又は25μm×17μmの範囲内で観察できる細孔のうち、大きいほうから20個の孔の直径を測定し、平均したものとする。
中空糸型分離膜は、好ましくは、複数本の中空糸型分離膜を束ねて一体化した中空糸型分離膜カラムの形態で用いることができる。
中空糸型分離膜カラムの一例を図1に示すが、これに限定されるものではない。
図1に示す実施形態の中空糸型分離膜カラム100は、中空糸型分離膜101と、それを収容する収容容器110とを備える。収容容器110は、第1開口111が形成された第1頭部114と、第2開口112が形成されている第2頭部115と、第1頭部114と第2頭部115とを接続する、中空糸型分離膜101でのろ液を排出するろ液排出口113が形成されている胴部116とを備える。
胴部116の内部には、多数の中空糸型分離膜101の束102と、胴部116の一端において、中空糸型分離膜101の束102を、中空糸型分離膜101の第1端部103が第1頭部114に向くように固定し、隣接する中空糸型分離膜101の間及び束102と胴部116の内周面との隙間を埋める第1樹脂層部121と、胴部116の他端において、中空糸型分離膜101の束102を、中空糸型分離膜101の第2端部104が第2頭部115に向くように固定し、隣接する中空糸型分離膜101の間及び束102と胴部116の内周面との隙間を埋める第2樹脂層部122とが配置されている。胴部116の一端は第1頭部114により被冠されており、胴部116の他端は第2頭部115により被冠されている。この構成により、第1開口111及び第2開口112は、個々の中空糸型分離膜101の内孔を介して連続しており、ろ液排出口113は、第1開口111及び第2開口112とは、中空糸型分離膜101を構成する膜壁により隔てられ、連続しない構造となっている。
中空糸型分離膜101の束102は、中空糸型分離膜101を数本から数十本束ねたものであることが好ましい。本発明において、中空糸型分離膜101は、直線状であっても、撓んでいても、らせん状になっていてもよい。好ましくは、図示するように個々の中空糸型分離膜101が直線状であり且つ複数の中空糸型分離膜101からなる束102が全体として直線状となるように配置されているか、個々の中空糸型分離膜101がらせん状等他の形態であったとしても複数の中空糸型分離膜101からなる束102が全体として直線状となるように配置されている。中空糸型分離膜101の延在する方向とは、中空糸型分離膜101の第1端部103と第2端部104とを通る直線の方向を指す。
中空糸型分離膜カラム100では、第1開口111から細胞懸濁液を供給した場合には第1端部103から細胞懸濁液が中空糸型分離膜101の内孔に導入され、第2開口112から細胞懸濁液を供給した場合には第2端部104から中空糸型分離膜101の内孔に導入される。導入された細胞懸濁液は、中空糸型分離膜101の内孔を満たしながら中空糸型分離膜101内を通過し、細胞懸濁液中の夾雑物や液体媒体を含むろ液が、中空糸型分離膜101の膜壁の細孔を透過して外側に排出される。このろ液はろ液排出口113を通って中空糸型分離膜カラム100の外に排出される。一方、中空糸型分離膜101内に残る濃縮された細胞懸濁液は、細胞懸濁液を第1開口111から中空糸型分離膜101に供給した場合には第2端部104から第2開口112を通って中空糸型分離膜カラム100の外に導出され、細胞懸濁液を第2開口112から中空糸型分離膜101に供給した場合には第1端部103から第1開口111を通って中空糸型分離膜カラム100の外に導出される。このように細胞懸濁液を中空糸型分離膜の内孔に通す処理を、必要に応じて反復することで、細胞懸濁液の洗浄、濃縮、及び/又は、媒体置換を行い、目的とする高濃度細胞懸濁液を調製することが可能である。
なお、図1に示す例では、中空糸型分離膜カラム100の収容容器110が、第1頭部114、第2頭部115及び胴部116の各部分を組み合わせたものであるが、これは一例に過ぎない。例えば、第1頭部114と胴部116とが一体化したものや、第2頭部115と胴部116とが一体化したものや、第1頭部114と第2頭部115と胴部116とが一体化したものであってもよい。細胞懸濁液の供給口と排出口が中空糸型分離膜の内孔を通じて連続しており、更に細胞懸濁液の供給口及び排出口と、ろ液排出口とが、中空糸型分離膜を構成する膜壁により隔てられている構造を備えていれば、収容容器は各種構造をとることが可能である。
中空糸型分離膜カラム100の収容容器110の各部分の素材は特に限定されないが、樹脂が好適であり、樹脂としては、例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレンターポリマー等のアクリロニトリルポリマー;ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化ポリマー;ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルクロリドアクリルコポリマー、ポリカーボネートアクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリスチレン、ポリメチルペンテン等を使用できる。特に耐滅菌性を有する素材、具体的にはポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン等のブロック共重合体を使用することが好ましい。
中空糸型分離膜101を固定する第1樹脂層部121及び第2樹脂層部122の素材としては、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、およびシリコン樹脂等一般的な接着材料が好ましく用いることができる。
本発明で用いる中空糸型分離膜及びそれを収容した中空糸型分離膜カラムは、滅菌されたものであることが好ましい。滅菌方法は、特に限定されず、γ線滅菌や電子線滅菌やEOG滅菌、高圧蒸気滅菌等の医療用具の滅菌に汎用されている滅菌方法を好適に用いることができる。
<細胞濃縮方法>
本発明の細胞濃縮方法を、図1に示す中空糸型分離膜カラム100を用いて実施する実施形態について、図2を参照して説明する。
中空糸型分離膜カラム100内の中空糸型分離膜101の延在する方向Aの、水平方向Hに対する角度をθとする。ここで、中空糸型分離膜101の延在する方向Aとは、上記の通り、中空糸型分離膜101の第1端部103と第2端部104とを通る直線の方向を指す。
角度θが20°〜70°となるように、中空糸型分離膜カラム100を設置する。このとき、図2に示す例では、中空糸型分離膜101の第2端部104及び中空糸型分離膜カラム100の第2開口112を含む第2頭部115が鉛直方向の下方に位置し、中空糸型分離膜101の第1端部103及び中空糸型分離膜カラム100の第1開口111を含む第1頭部114が鉛直方向の上方に位置するように、中空糸型分離膜カラム100を設置する。ただしこの例には限らず、中空糸型分離膜カラム100を上下反転させて設置してもよい。
角度θが20°〜70°となるように、中空糸型分離膜カラム100を設置するために、マグネットクリップ等で中空糸型分離膜カラム100を傾斜した姿勢で固定することができる。
細胞懸濁液を、中空糸型分離膜カラム100の第2開口112から供給し、中空糸型分離膜101内を下方から上方に向けて通過させる。このとき、中空糸型分離膜101の内孔を通過する際の細胞懸濁液の水圧により、細胞懸濁液中の夾雑物や液体媒体を含むろ液が、中空糸型分離膜101の膜壁の細孔を透過して外側に排出され、ろ液排出口113を通って中空糸型分離膜カラム100の外に排出される。中空糸型分離膜101内に残る濃縮された細胞懸濁液は、中空糸型分離膜101の第1端部103から第1開口111を通って中空糸型分離膜カラム100の外に導出され、回収される。ろ液に含まれる細胞の数は、濃縮前の細胞懸濁液中の細胞の数の0.1%を上回らない範囲であることが好ましい。
角度θが20°〜70°である場合、高濃縮の細胞懸濁液を高回収率で生成することができる。角度θはより好ましくは25°〜65°であり、最も好ましくは30°〜60°である。角度θが70°よりも大きい場合、中空糸型分離膜内に細胞が詰まり易く、細胞の回収率が低下する傾向がある。細胞の回収率とは、濃縮前の細胞懸濁液中の総細胞数に対する、濃縮後の細胞懸濁液中の総細胞数の割合である。角度θが20°よりも小さい場合、中空糸型分離膜による細胞懸濁液の濃縮倍率が低下する傾向がある。濃縮倍率とは、濃縮前の細胞懸濁液の体積を、濃縮後の細胞懸濁液中の体積で除した値である。
本発明の細胞濃縮方法では、細胞懸濁液の、中空糸型分離膜内への通液速度を適宜調節することで、細胞の高濃縮倍率と高回収率を実現することができる。細胞懸濁液の中空糸型分離膜内への流入速度は1mL/min〜90mL/minであることが好ましく、3mL/min〜60mL/minであることが特に好ましく、5mL/min〜40mL/minであることが最も好ましい。中空糸型分離膜の入口での流入速度が小さいほど、細胞の濃縮倍率が向上し、細胞の回収率が低下する傾向がある。中空糸型分離膜の入口での流入速度が大きいほど、細胞の濃縮倍率が低下し、細胞の回収率が向上する傾向がある。
本発明の細胞濃縮方法では更に、中空糸型分離膜の内孔の総断面積は、0.010cm〜0.15cmであることが好ましく、0.010cm〜0.025cmであることが特に好ましい。中空糸型分離膜の内孔の総断面積が小さすぎると、細胞が詰まり易くなり、細胞の回収率が低下する可能性がある。また、中空糸型分離膜の内孔の総断面積が大きすぎると、濃縮倍率が低くなる可能性がある。本発明の細胞濃縮方法のこの実施形態では、内孔の総断面積が比較的小さな傾斜した中空糸型分離膜に、比較的低い流入速度で細胞懸濁液を流入させ通過させることで、細胞の高濃縮倍率と高回収率を実現することが可能である。中空糸型分離膜の内孔の総断面積とは、中空糸型分離膜カラム内に収容された中空糸型分離膜の内孔の断面積の合計面積であり、(総断面積)=(中空糸型分離膜の本数)×π×(内孔の半径)で求めることができる。
本発明の細胞濃縮方法では更に、細胞懸濁液を流入させる際の中空糸型分離膜の入口での線速度が、250cm/min〜2500cm/minであることが好ましい。中空糸型分離膜の入口での線速度を上記範囲とすることで、細胞の濃縮倍率と回収率を更に高めることができる。なお線速度とは、単位時間当たりに中空糸型分離膜の内孔に流入する液量(流入速度)を中空糸型分離膜の内孔の総断面積で除した値である。
中空糸型分離膜の内孔の内周面の面積の合計をろ過面積とする。ろ過面積は5〜200cmであることが好ましく、10〜100cmであることがより好ましく、12〜40cmであることがより好ましく、25〜35cmであることが特に好ましい。ろ過面積が5cm未満であると、十分な濃縮倍率を得ることができず、200cmよりも大きいと、細胞懸濁液が中空糸型分離膜内に残存し回収率が低下する可能性があり好ましくない。
本発明において、細胞懸濁液を通過させる前の中空糸型分離膜が、前処理がされていないことが好ましい。ここで前処理とは、中空糸型分離膜を事前に通液処理することや、コーティング等の親水処理を行うこと等を指し、特に、事前に生理食塩液等で通液処理することを指す。中空糸型分離膜に細胞懸濁液を通過させるとき前処理することが従来から行われているが、前処理に使用した生理食塩液により細胞懸濁液が希釈され、細胞の高濃縮が困難あることや、前処理の操作が煩雑であるという問題があった。この問題は、内孔の総断面積が比較的小さな中空糸型分離膜(内孔の総断面積が0.010cm〜0.15cmの中空糸型分離膜)を用いる場合に特に顕著となる。本発明者らは、角度θを一定の範囲にし、細胞懸濁液を下方から上方に向けて中空糸型分離膜内を通過させる場合に、前処理を行わなくとも、高濃縮の細胞懸濁液を効率的に生成できることを見出した。
中空糸型分離膜カラム100に収容された中空糸型分離膜101への細胞懸濁液の供給は、まず、第2開口112(入口)及び第1開口111(出口)にチューブ等を取り付け、更に取り付けたチューブを細胞懸濁液が入ったバッグ、シリンジ等の容器に連結する。送液させるために、前記バッグ、シリンジ等に圧力をかける機械をこの回路に介在させることが考えられる。あるいは、前記バッグと中空糸型分離膜カラム100との高低差による送液が考えられる。あるいは、細胞濃縮洗浄装置の下流側に中空糸型分離膜カラム100の第2開口112(入口)を連結することで、細胞濃縮洗浄装置で生成した細胞懸濁液を送液し中空糸型分離膜カラム100に供給することが考えられる。
中空糸型分離膜カラム100の第2開口112(入口)の側からポンプ等で細胞懸濁液を圧送して、細胞懸濁液を中空糸型分離膜101に通過させ、ろ過を行うことができる。また、第2開口112(入口)の側から細胞懸濁液を吸引することで、細胞懸濁液を中空糸型分離膜101に通過させ、ろ過を行ってもよい。また、中空糸型分離膜カラム100の第1開口111(出口)に接続するチューブを第2開口112(入口)に接続するチューブよりも狭くすることで、細胞懸濁液が通過するときの中空糸型分離膜101内の内圧が高まるようにしてもよい。このほか、一般的に中空糸型分離膜で用いられる各種ろ過方法を併用することができる。
中空糸型分離膜カラム100の中空糸型分離膜101を通過して濃縮された細胞懸濁液は、回収バッグや回収シリンジ等に収集して、その後の治療等に用いることができる。この際、回収バッグは、中空糸型分離膜カラム100の第1開口111(出口)側に接続したチューブに別途三方活栓等を介して接続することができる。また、ろ液排出口113には廃液タンク等に連絡されたチューブを連結しておくことが好ましい。このとき、中空糸型分離膜カラム100、チューブ等からなる回路の全体の取り付けは、無菌的な環境下で行われることが好ましい。
以下の実験では、図1、2に示すように、ポリエーテルスルホンの中空糸型分離膜101を複数本束ねた束102を収容した中空糸型分離膜カラム100を用いた。この中空糸型分離膜カラム100の各中空糸型分離膜101の膜壁の細孔の孔径は0.2μmであり、中空糸型分離膜の内孔の総断面積は0.0177cmであり、中空糸型分離膜の内孔の内表面積の合計は28.3cmであった。
細胞懸濁液として、培養したJurkat細胞を生理食塩液に懸濁し、約5.0×10cells/mLの濃度とした細胞懸濁液を用いた。
前記中空糸型分離膜カラム100を、図2に示すように、中空糸型分離膜101の延在する方向Aの水平方向Hに対する角度θが30°、45°、50°、60°、90°となるように設置した。前記中空糸型分離膜カラム100は予め通液せず液体を含まない乾燥した状態で、下方に位置する第2開口112から、前記細胞懸濁液20mL(総細胞数として約1.0×10cells)を入口での送液速度である流入速度5mL/min〜40mL/minで供給して中空糸型分離膜101内を通過させ、上方に位置する第1開口111から、濃縮細胞懸濁液を回収した。中空糸型分離膜101の膜壁を透過してろ過されたろ液は、中空糸型分離膜カラム100のろ液排出口113を通じて排出した。通液後、中空糸型分離膜101内に残留した細胞懸濁液を第2開口112から第1開口111に向けた空気流により押し出し、前記濃縮細胞懸濁液と合わせた。こうして回収された濃縮細胞懸濁液の液量と、濃縮細胞懸濁液中の細胞数を測定した。供給した細胞懸濁液の液量20mLを、回収した濃縮細胞懸濁液の液量で割った値を濃縮倍率とした。供給した細胞懸濁液中の総細胞数約1.0×10cellsに対する、回収した濃縮細胞懸濁液中の細胞数の割合(%)を細胞回収率とした。前記の流入速度(mL/min)を、中空糸型分離膜の内孔の断面積の合計(総断面積)(0.0177cm)で割った、入口線速度(単位cm/min)を求めた。以上を「アップフロー」試験とした。
また、「ダウンフロー」試験として、前記中空糸型分離膜カラム100を角度θが約30°となるように図2に示すように設置し、予め通液せず液体を含まない乾燥した状態で、上方に位置する第1開口111から、前記細胞懸濁液20mL(総細胞数として約1.0×10cells)を流入速度10mL/minで供給して中空糸型分離膜101内を通過させ、最後に空気流で押し出して下方に位置する第2開口112から濃縮細胞懸濁液を回収した以外は、上記と同様の操作を行った。
結果を次表に示す。
Figure 2020092622
中空糸型分離膜カラム100の傾斜角度θを水平方向に対し30°、45°、50°、60°としたアップフロー試験では、流入速度を適切な範囲に調節することで、高濃縮倍率(3.0倍以上)と高細胞回収率(65%以上)とを両立することが可能であった。一方、中空糸型分離膜カラム100の傾斜角度θを水平方向に対し90°としたアップフロー試験では、流入速度が低いときに目詰まりが発生し、流入速度を高めても細胞回収率を高めることはできず、高濃縮倍率(3.0倍以上)と高細胞回収率(65%以上)とを両立することができなかった。
中空糸型分離膜カラム100の傾斜角度θを水平方向に対し約30°としたダウンフロー試験では、高濃縮倍率(3.0倍以上)を達成することができなかった。
100・・・中空糸型分離膜カラム
101・・・中空糸型分離膜
H・・・水平方向
A・・・中空糸型分離膜の延在方向
θ・・・中空糸型分離膜の延在方向と水平方向とが成す角の角度

Claims (6)

  1. 水平方向に対し20°〜70°の角度で延在するように配置された中空糸型分離膜内に下方から上方に向けて細胞懸濁液を1mL/min〜90mL/minの流入速度で流入させ、通過させて、細胞懸濁液を濃縮することを含む、細胞濃縮方法。
  2. 細胞懸濁液を通過させる前の中空糸型分離膜が、前処理がされていない中空糸型分離膜である、請求項1に記載の細胞濃縮方法。
  3. 細胞懸濁液が、免疫細胞又は幹細胞の懸濁液である、請求項1又は2に記載の細胞濃縮方法。
  4. 中空糸型分離膜が、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン及びポリエチレンから選択される1種以上の合成高分子材料よりなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 中空糸型分離膜の内孔の総断面積が、0.010cm〜0.15cmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 細胞懸濁液を流入させる際の中空糸型分離膜の入口での線速度が、250cm/min〜2500cm/minである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
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