JP2020078267A - 卵風味増強用組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】卵を使用した食品に添加することで、卵の風味を増強することができる卵風味増強用組成物を提供することである。【解決手段】酵母菌体残渣に細胞壁溶解酵素を適量反応させることで、粘度が著しく向上することを見出した。これを、卵を使用した食品に添加することで、卵を増量したような舌触りを付与し、卵の風味が増強されることを見出した。【選択図】なし
Description
本発明は、酵母菌体残渣から取得される、卵風味増強用組成物、又は卵風味増強剤に関するものである。
従来、卵を使用した食品の卵風味を増強する方法としては、卵の使用量を増量するか、香料を使用するといった手法がとられていた。しかしながら、卵の使用量を増量する場合、コレステロールやカロリーの増加のイメージが強く、近年の健康志向において控えられる傾向があった。また、卵の価格は天候や鶏インフルエンザ等の要因により変動するため、卵の使用量を増量する場合、最終製品の価格に大きく影響を与えるといった問題があった。
香料を使用する場合は、香気成分は揮発性が高く熱に不安定であるため、加熱工程により香気が消失若しくは劣化する場合があった。
そのため、卵や香料によらない卵風味増強剤として、シュクラロース(特許文献1)、希少糖含有シロップ(特許文献2)、可溶性の卵殻膜(特許文献3)等が報告されている。酵母を用いた卵風味増強用組成物としては、特許文献4に、卵感や卵香気を増強させる酵母エキスが報告されている。さらには、特許文献5では、加熱変性した粉末卵により卵風味やコク味を増強すると共に、離水防止等の品質改良ができることを報告している。
他方、酵母には核酸、アミノ酸、ペプチドなどの成分が含まれており、その抽出物は医薬品であるグルタチオンの原料や、天然調味料である酵母エキスとして用いられているが、抽出の際に大量に副生する酵母菌体残渣の有効利用が課題とされてきた。
酵母エキス抽出後の酵母菌体残渣はグルカン、マンナン、マンノプロテイン、蛋白質、脂質、核酸を主要な成分とするものであり、特許文献6には酵母エキス抽出後の酵母菌体残渣に高圧処理を施すことにより精製した酵母細胞壁画分を有効成分とする離水防止剤が報告されている。
しかしながら、これまでに酵母菌体残渣を使用して卵風味を増強する方法は知られてこなかった。
本発明が解決しようとする課題は、卵を使用した食品に添加することで、その食品の卵の風味を増強することのできる卵風味増強用組成物を提供することである。また、その卵風味増強用組成物は、人体に安全であることが必要であり、安定供給が可能なものであることが望ましい。
本発明者らは、上記課題の解決につき鋭意研究の結果、酵母菌体残渣に細胞壁溶解酵素を適量反応させることで、粘度が著しく向上した組成物を、卵を使用した食品に添加することで、その食品の卵の風味が増強されることを見出した。
すなわち本発明は、
(1)酵母由来であって、固形分濃度10重量%、25℃混合液において、粘度が2000mPa・s以上である、卵風味増強用組成物、
(2)蛋白質含量が20重量%以上、食物繊維含量が20重量%以上である、上記(1)記載の卵風味増強用組成物、
(3)酵母エキス抽出後の酵母菌体残渣に細胞壁溶解酵素を作用させる工程を有する、上記(1)または(2)記載の卵風味増強用組成物の製造方法、
(4)前記細胞壁溶解酵素がプロテアーゼを含まないグルカナーゼであることを特徴とする上記(3)記載の卵風味増強用組成物の製造方法、
(5)上記(1)又は(2)に記載の組成物を食品に添加し、卵風味を増強させる方法
に係るものである。
(1)酵母由来であって、固形分濃度10重量%、25℃混合液において、粘度が2000mPa・s以上である、卵風味増強用組成物、
(2)蛋白質含量が20重量%以上、食物繊維含量が20重量%以上である、上記(1)記載の卵風味増強用組成物、
(3)酵母エキス抽出後の酵母菌体残渣に細胞壁溶解酵素を作用させる工程を有する、上記(1)または(2)記載の卵風味増強用組成物の製造方法、
(4)前記細胞壁溶解酵素がプロテアーゼを含まないグルカナーゼであることを特徴とする上記(3)記載の卵風味増強用組成物の製造方法、
(5)上記(1)又は(2)に記載の組成物を食品に添加し、卵風味を増強させる方法
に係るものである。
本発明の卵風味増強用組成物は、味やにおいが少なく、卵を使用した食品に添加することで、その食品の卵の風味を増強させることができ、卵を増量したようなもったりとした舌触りを付与し、かつ離水を防止することができる。
本発明は原料として酵母エキスなどを抽出した後の菌体残渣を用いることが出来、そこから簡単な工程で調整したものを使用することが出来る。トルラ酵母やビール酵母の菌体残渣は、調味料である酵母エキスや他の有用成分の生産に伴って大量に副生しており、本発明はその酵母菌体残渣を有効利用できるため、コスト、廃棄物削減の点でも、極めて有利である。また、動植物を原料とする場合と比較して、供給不安、価格変動、品質変動のリスクも少ない。
以下に、本発明を具体的に説明する。本発明において原料として用いることのできる酵母菌体の種類は、酵母細胞壁溶解酵素により溶解可能なものである。たとえば、サッカロミセス、エンドミコプシス、サッカロミコデス、ネマトスポラ、キャンディダ、トルロプシス、プレタノミセス、ロドトルラなどの属に属する菌、あるいはいわゆるビール酵母、パン酵母、清酒酵母などが挙げられる。このうち、特に食経験が多いキャンディダ・ユティリス又はサッカロマイセス・セレビシエが望ましい。
本発明の酵母菌体残渣とは、酵母に熱水、酸・アルカリ性溶液、自己消化、機械的破砕等のいずれか一つ以上を用いて抽出処理することにより、酵母エキスまたは有用成分を抜いた後の残渣である。例えば、興人ライフサイエンス(株)製の「KR酵母」が挙げられる。
このような残渣は一般的に、グルカン、マンナン、蛋白質、脂質、核酸を主要な成分とするものであるが、構造的にはグルカン、マンナン、蛋白質と他の成分が複合体となって強固に結合していることが推察される。
このような残渣は一般的に、グルカン、マンナン、蛋白質、脂質、核酸を主要な成分とするものであるが、構造的にはグルカン、マンナン、蛋白質と他の成分が複合体となって強固に結合していることが推察される。
本発明を製造する方法は、まず上述の酵母菌体残渣に水を加えて、乾燥菌体重量で5〜20重量%濃度の菌体懸濁液を調製する。必要であれば、菌体洗浄する工程を設けても良い。具体的な洗浄方法は、例えば、菌体懸濁液を遠心分離して酵母菌体残渣を取得し、再度水を加えて5〜20重量%濃度の菌体懸濁液を調製する。調製した菌体懸濁液をpH5.5以上、望ましくはpH6.0〜7.0に調整する。
この菌体懸濁液に、細胞壁溶解酵素を添加する。この際に用いる細胞壁溶解酵素は、プロテアーゼを含まないグルカナーゼであることが望ましい。具体的には、ストレプトマイセス属由来のβグルカナーゼ「デナチームGEL」(ナガセケムテックス社製)、Taloromyces属由来のβグルカナーゼ「Giltrase BRX」(DSMジャパン社製)等があり、中でも「デナチームGEL」が望ましい。
一般的に使用されている細胞壁溶解酵素の多くは、配合物または夾雑物としてプロテアーゼ活性物を含有しておりこのような細胞壁溶解酵素をそのまま用いると、得られた細胞壁画分は食物繊維含量の低いものとなる。たとえば、天野エンザイム社製「ツニカーゼFN」は、グルカナーゼとプロテアーゼの混合物の酵素製剤であり、このようなプロテアーゼを含有する酵素製剤を用いる場合には、酵素製剤中のプロテアーゼが作用しないような温度またはpHで作用させる必要がある。
細胞壁溶解酵素の添加量は、使用する原料の酵母残渣及び酵素によって異なるが、原料酵母菌体残渣の乾燥重量100g当たり4〜200unitが望ましく、さらに望ましくは20〜60unit添加である。
細胞壁溶解酵素の添加量は、使用する原料の酵母残渣及び酵素によって異なるが、原料酵母菌体残渣の乾燥重量100g当たり4〜200unitが望ましく、さらに望ましくは20〜60unit添加である。
細胞壁溶解酵素の添加後、50℃以上、望ましくは50〜70℃、より望ましくは55〜65℃で反応させる。反応時間は、2〜7時間、望ましくは3〜4時間酵素反応させるが、
酵素反応の時間は細胞壁溶解酵素の添加量及び原料の酵母残渣に応じて、適宜調整できる。酵素添加量が少なすぎるか反応時間が短すぎることにより、酵素反応が不十分な場合や、反対に、酵素添加量が多すぎるか反応時間が長すぎることにより、酵素反応が進みすぎた場合の、どちらの場合も、離水防止効果が不十分なものとなる。酵素反応の調整は、後段の方法により調整できる。
酵素反応の時間は細胞壁溶解酵素の添加量及び原料の酵母残渣に応じて、適宜調整できる。酵素添加量が少なすぎるか反応時間が短すぎることにより、酵素反応が不十分な場合や、反対に、酵素添加量が多すぎるか反応時間が長すぎることにより、酵素反応が進みすぎた場合の、どちらの場合も、離水防止効果が不十分なものとなる。酵素反応の調整は、後段の方法により調整できる。
本願発明を製造する方法は、前述のように酵素を添加して製造するが、使用する酵母残渣、酵素の種類によって、反応条件が異なることがある。酵素反応後の組成物が、固形分10質量%の状態で、25℃の粘度が2000mPa・s以上となるように、望ましくは3000mPa・s以上となるように、さらに望ましくは5000mPa・s以上となるように、酵素添加量、反応時間を調整することで、本発明を製造することができる。
次いで、酵素反応後の組成物について、90℃、10分間以上の加熱処理などで酵素を失活させる。得られた組成物をそのまま使用することもでき、または乾燥して濃縮物または粉末にして、使用することもできる。
酵母エキス抽出後の酵母菌体を原料として上記の製法により得られた本発明は、乾燥固形分10重量%の状態において、または粉末の場合は水と乾燥固形分10重量%の混合液にした時に、25℃の粘度が2000mPa・s以上、望ましくは3000mPa・s以上、さらに望ましくは5000mPa・s以上である。さらには、その乾燥物中の蛋白質含量が20重量%以上、望ましくは40重量%以上で、食物繊維含量が20重量%以上、望ましくは25重量%以上である。
本発明の卵風味増強用組成物は、卵を使用し、卵の風味を重要とする食品の製造時に適宜添加することで、対象食品の離水を防止し、卵の風味を増強することができる。混合方法は任意である。添加量は任意であるが、通常は、0.01〜5重量%添加することで、対象食品の卵風味を増強することができる。
<蛋白質含量の測定方法>
蛋白質含量測定には加水分解法を用いた。試料を6N 塩化水素にて110℃、24時間加水分解した後、前処理を行い全自動アミノ酸分析計(日立社製)にて測定して求めた。
蛋白質含量測定には加水分解法を用いた。試料を6N 塩化水素にて110℃、24時間加水分解した後、前処理を行い全自動アミノ酸分析計(日立社製)にて測定して求めた。
<食物繊維含量の測定方法>
食物繊維含量測定には加水分解法を用いた。試料を1N硫酸にて110℃、3.5時間加水分解して中和後、加水分解生成物であるマンノース、グルコースを液体クロマトグラフィーにて測定し、グルカン・マンナンへ換算して求めた。検出にはRI検出器、分離カラムはSP810(Shodex)、移動相は超純水を使用した。
食物繊維含量測定には加水分解法を用いた。試料を1N硫酸にて110℃、3.5時間加水分解して中和後、加水分解生成物であるマンノース、グルコースを液体クロマトグラフィーにて測定し、グルカン・マンナンへ換算して求めた。検出にはRI検出器、分離カラムはSP810(Shodex)、移動相は超純水を使用した。
<粘度の測定方法>
粘度は、b型粘度計(TOKIMEC社製、VISCOMETER−BM)を使用し、10重量%、25℃の粘度を測定した。
粘度は、b型粘度計(TOKIMEC社製、VISCOMETER−BM)を使用し、10重量%、25℃の粘度を測定した。
<実施例>
キャンディダ・ユティリス酵母エキス抽出後の酵母菌体「KR酵母」(興人ライフサイエンス社製)1kgを水に懸濁して10質量%とした後、60℃、pH6.5に調整後、細胞壁溶解酵素(ナガセケムテックス社製「デナチームGEL」)を1g加え、3時間作用させた。次いで90℃、15分で加熱処理した後、乾燥して粉末化し、実施例1の卵風味増強用組成物を得た。この組成物10重量%、25℃の粘度は5700mPa・sであった。乾燥物中の蛋白質含量は57重量%、食物繊維含量は21重量%であった。
キャンディダ・ユティリス酵母エキス抽出後の酵母菌体「KR酵母」(興人ライフサイエンス社製)1kgを水に懸濁して10質量%とした後、60℃、pH6.5に調整後、細胞壁溶解酵素(ナガセケムテックス社製「デナチームGEL」)を1g加え、3時間作用させた。次いで90℃、15分で加熱処理した後、乾燥して粉末化し、実施例1の卵風味増強用組成物を得た。この組成物10重量%、25℃の粘度は5700mPa・sであった。乾燥物中の蛋白質含量は57重量%、食物繊維含量は21重量%であった。
<卵フィリング>
鶏卵を沸騰水にて11分間加熱してゆで卵を作製し、白身の部分が約2mm角になるように切断した。表1の組成でゆで卵、マヨネーズ、水及び実施例を均一になるように混合した。
鶏卵を沸騰水にて11分間加熱してゆで卵を作製し、白身の部分が約2mm角になるように切断した。表1の組成でゆで卵、マヨネーズ、水及び実施例を均一になるように混合した。
<プリン>
表2の卵、グラニュー糖及び実施例を泡が立たないように混合後、加温した牛乳を加えてプリン液とし、耐熱容器に入れて80℃で45分間蒸した。粗熱を取り、冷蔵庫で1晩冷却した。
表2の卵、グラニュー糖及び実施例を泡が立たないように混合後、加温した牛乳を加えてプリン液とし、耐熱容器に入れて80℃で45分間蒸した。粗熱を取り、冷蔵庫で1晩冷却した。
<食品の物性測定方法>
直径90mmのシャーレに円形定性ろ紙2枚を敷き、その上に卵フィリング又はプリン約4gを量り取り、直径約40mmの円形に塗り広げた。蓋をして室温にて24hr放置後、卵フィリング又はプリンと上側のろ紙を取り除き、下側のろ紙の重量を測定した。下側のろ紙の保存前後の重量の増加量を離水量とし、離水率を下記の式で算出した。
離水率(%)=(離水量/卵フィリング又はプリン重量)×100
直径90mmのシャーレに円形定性ろ紙2枚を敷き、その上に卵フィリング又はプリン約4gを量り取り、直径約40mmの円形に塗り広げた。蓋をして室温にて24hr放置後、卵フィリング又はプリンと上側のろ紙を取り除き、下側のろ紙の重量を測定した。下側のろ紙の保存前後の重量の増加量を離水量とし、離水率を下記の式で算出した。
離水率(%)=(離水量/卵フィリング又はプリン重量)×100
表1の卵フィリングの官能評価を実施したところ、実施例1の卵風味増強用組成物を添加することで、卵の黄身を思わせる、もったりとした舌触りが付与され、ゆで卵の硫黄感、卵の風味が増強された。
表1の卵フィリングの離水率を測定したところ、対照区:14.3±0.4%、実施例0.3%添加区:11.6±0.2%、実施例0.5%添加区:10.3±0.1%、実施例1%添加区:8.2±0.8%で、実施例の卵風味増強用組成物を添加することで卵フィリングの保存中の離水が抑制することが確認された。
表2のプリンの官能評価を実施したところ、実施例1の卵風味増強用組成物を添加することで、卵を増量したような舌触りが付与され、卵の風味や甘味が増強された。
表2のプリンの離水率を測定したところ、対照区:22.5%、実施例1%添加区:16.5%で、実施例の卵風味増強用組成物を添加することでプリンの保存中の離水が抑制することが確認された。
本発明は、卵を使用した食品に添加して用いることができる。これにより、その食品の卵を増量したような舌触りを付与し、卵の風味を増強することができる。
Claims (5)
- 酵母由来の食品であって、固形分濃度10重量%、25℃混合液において、粘度が2000mPa・s以上である、卵風味増強用組成物。
- 蛋白質含量が20重量%以上、食物繊維含量が20重量%以上である、請求項1記載の卵風味増強用組成物。
- 酵母エキス抽出後の酵母菌体残渣に細胞壁溶解酵素を作用させる工程を有する、請求項1または2に記載の卵風味増強用組成物の製造方法。
- 前記細胞壁溶解酵素がプロテアーゼを含まないグルカナーゼであることを特徴とする請求項3に記載の卵風味増強用組成物の製造方法。
- 請求項1又は請求項2に記載の組成物を食品に添加し、卵風味を増強させる方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018212980A JP2020078267A (ja) | 2018-11-13 | 2018-11-13 | 卵風味増強用組成物 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2018212980A JP2020078267A (ja) | 2018-11-13 | 2018-11-13 | 卵風味増強用組成物 |
Publications (1)
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JP2020078267A true JP2020078267A (ja) | 2020-05-28 |
Family
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Family Applications (1)
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JP2018212980A Pending JP2020078267A (ja) | 2018-11-13 | 2018-11-13 | 卵風味増強用組成物 |
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2018
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