JP2020073810A - 軌道輪及び車両用軸受の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】軌道輪に含まれる軽合金部が形成後に溶融するのを抑制することができる車両用軸受の軌道輪及び車両用軸受の各製造方法を提供する。【解決手段】車両用軸受の軌道輪(11)の製造方法は、内周面又は外周面に軌道面(111a,111b)を有し、鋼を含む材料で形成された軌道部材(111)を準備する工程と、軌道面(111a,111b)を高周波誘導加熱する工程と、軌道部材(111)の内周面及び外周面のうち軌道面(111a,111b)を有しない面に、軽合金を含む材料を鋳込む工程とを備える。高周波誘導加熱工程が終了した後に、軽合金を含む材料を硬化させて軽合金部(112)を形成する。【選択図】図2D

Description

本開示は、軌道輪及び軸受の製造方法に関する。より詳しくは、車両用軸受の軌道輪の製造方法、及び当該製造方法によって製造された軌道輪を用いた車両用軸受の製造方法に関する。
一般に、ハブユニットと称される車両用軸受は、一対の軌道輪と、複数の転動体とを備えている。一方の軌道輪は、内周面に軌道面を有する。他方の軌道輪は、外周面に軌道面を有する。一対の軌道輪は、軌道面同士が対向するように同軸に配置される。互いに対向する軌道面には、複数の転動体が配置される。
近年、ハブユニットを軽量化するための様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1には、外側部材及び内側部材を備えるハブユニットが開示されている。外側部材は、内側部材の外周に配置される。外側部材の一部は非鉄金属製である。より詳細には、外側部材において、軌道面を含む外輪は鋼で構成され、外輪の外周に配置される外枠部材は軽合金複合材料で構成されている。このため、外側部材及びハブユニットが軽量化される。
特開2012−87917号公報
特許文献1において、外側部材は、軽合金複合材料を外輪の外周に鋳込んで外枠部材を形成した後、外輪の軌道面に対して高周波焼入れを施すことによって製造される。しかしながら、このような製造方法では、高周波焼入れの際、高周波焼入れの熱が外輪を介して外枠部材に伝達されるため、一旦形成された外枠部材が溶融してしまうという問題が生じ得る。
本開示は、軌道輪に含まれる軽合金部が形成後に溶融するのを抑制することができる車両用軸受の軌道輪及び車両用軸受の各製造方法を提供することを目的とする。
本開示に係る車両用軸受の軌道輪の製造方法は、内周面又は外周面に軌道面を有し、鋼を含む材料で形成された軌道部材を準備する工程と、軌道面を高周波誘導加熱する工程と、軌道部材の内周面及び外周面のうち軌道面を有しない面に、軽合金を含む材料を鋳込む工程とを備える。高周波誘導加熱する工程が終了した後に、軽合金を含む材料を硬化させて軽合金部を形成する。
本開示に係る車両用軸受の製造方法は、軌道輪としての外輪及び内軸を製造する工程と、内軸の外周に外輪を配置するとともに内軸と外輪との間に複数の転動体を配置して組み立てる工程とを備える。外輪及び内軸の少なくとも一方は、上記軌道輪の製造方法によって製造される。
本開示に係る車両用軸受の軌道輪及び車両用軸受の各製造方法によれば、軌道輪に含まれる軽合金部が形成後に溶融するのを抑制することができる。
図1は、第1実施形態に係る車両用軸受の縦断面図である。 図2Aは、図1に示す軸受に含まれる外輪の製造方法の一工程を示す図である。 図2Bは、図1に示す軸受に含まれる外輪の製造方法において、図2Aに示す工程の後に行われる工程を示す図である。 図2Cは、図1に示す軸受に含まれる外輪の製造方法において、図2Bに示す工程の後に行われる工程を示す図である。 図2Dは、図1に示す軸受に含まれる外輪の製造方法において、図2Cに示す工程の後に行われる工程を示す図である。 図2Eは、図1に示す軸受に含まれる外輪の製造方法において、図2Dに示す工程の後に行われる工程を示す図である。 図3は、第2実施形態に係る車両用軸受の縦断面図である。 図4Aは、図3に示す軸受に含まれる内軸の製造方法の一工程を示す図である。 図4Bは、図3に示す軸受に含まれる内軸の製造方法において、図4Aに示す工程の後に行われる工程を示す図である。 図4Cは、図3に示す軸受に含まれる内軸の製造方法において、図4Bに示す工程の後に行われる工程を示す図である。 図4Dは、図3に示す軸受に含まれる内軸の製造方法において、図4Cに示す工程の後に行われる工程を示す図である。 図4Eは、図3に示す軸受に含まれる内軸の製造方法において、図4Dに示す工程の後に行われる工程を示す図である。
実施形態に係る車両用軸受の軌道輪の製造方法は、内周面又は外周面に軌道面を有し、鋼を含む材料で形成された軌道部材を準備する工程と、軌道面を高周波誘導加熱する工程と、軌道部材の内周面及び外周面のうち軌道面を有しない面に、軽合金を含む材料を鋳込む工程とを備える。高周波誘導加熱する工程が終了した後に、軽合金を含む材料を硬化させて軽合金部を形成する(第1の特徴)。
第1の特徴に係る軌道輪の製造方法では、軌道部材の内周面又は外周面に鋳込んだ軽合金を含む材料によって軽合金部を形成する。軽合金部は、軌道面の高周波誘導加熱が終了した後で軽合金を含む材料を硬化することにより、形成される。このため、高周波誘導加熱の熱が一旦形成された軽合金部に影響を与えることがない。よって、軽合金部が形成後に溶融するのを抑制することができる。
軽合金を含む材料を鋳込む工程は、高周波誘導加熱する工程が終了した後、硬化層が生成される温度以下まで軌道面が冷却される前に行われてもよい(第2の特徴)。
例えば、高周波誘導加熱後の冷却によって軌道面に硬化層が生成された後、軽合金を含む材料を定着させるために軌道部材を加熱した場合、この加熱によって一旦生成された硬化層の組成が変化する可能性がある。一方、第2の特徴によれば、高周波誘導加熱の終了後、硬化層が生成される温度まで軌道面が冷却される前に、軽合金を含む材料の鋳込みを開始する。このため、軽合金を含む材料の鋳込みに際して軌道部材を加熱した場合に、一旦生成された硬化層の組成が変化するという事態を防止することができる。
軽合金を含む材料を鋳込む工程は、高周波誘導加熱する工程の直後又は高周波誘導加熱する工程と同時に行われてもよい(第3の特徴)。
高周波誘導加熱後の軌道面の温度は、所望の硬度の硬化層を得るという観点から、安定して変化することが好ましい。第3の特徴によれば、高周波誘導加熱の直後、軌道面の温度を維持した状態で、軌道部材に対する軽合金を含む材料の鋳込みが開始される。あるいは、軌道面の高周波誘導加熱と同時に、軌道部材に対して軽合金を含む材料が鋳込まれる。このため、高周波誘導加熱後に軌道部材を再加熱する必要がない。よって、高周波誘導加熱後の軌道面の温度が大幅に上下せず、所望の硬度の軌道面を得ることが可能となる。
実施形態に係る車両用軸受の製造方法は、軌道輪としての外輪及び内軸を製造する工程と、内軸の外周に外輪を配置するとともに内軸と外輪との間に複数の転動体を配置して組み立てる工程とを備える。外輪及び内軸の少なくとも一方は、上記軌道輪の製造方法によって製造される。
上記車両用軸受の製造方法では、軌道輪としての外輪及び内軸の少なくとも一方は、上記実施形態に係る軌道輪の製造方法によって製造される。つまり、外輪及び/又は内軸を製造する際、外輪及び/又は内軸の軽合金部は、軌道面の高周波誘導加熱が終了した後で形成される。よって、外輪及び/又は内軸において、形成後の軽合金部が高周波誘導加熱の熱によって溶融するのを抑制することができる。
<実施形態>
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。図中同一及び相当する構成については同一の符号を付し、同じ説明を繰り返さない。説明の便宜上、各図において、構成を簡略化又は模式化して示したり、一部の構成を省略して示したりする場合がある。
[第1実施形態]
(全体構成)
図1は、直線X1を通る平面で第1実施形態に係る車両用軸受10を切断した断面図である。直線X1は、軸受10の軸心である。以下、直線X1が延びる方向を軸受10の軸方向又は単に軸方向と称する。軸受10において、車両に取り付けたときに車体に近い方をインナ側、車体から遠い方をアウタ側と称する。
図1に示す車両用軸受10は、ハブユニットとも称される。軸受10は、外輪11と、内軸12と、複数の転動体13,14と、シール部材15,16とを備える。外輪11及び内軸12は、軸受10に含まれる一対の軌道輪である。
外輪11は、軌道部材111と、軽合金部112とを備える。軌道部材111は、直線X1を軸心とする筒状をなす。軽合金部112は、軌道部材111の外周に配置される。
軌道部材111は、内周面に軌道面111a,111bを有する。軌道面111a,111bは、それぞれ、直線X1を軸心とする環状面である。軌道面111aは、軌道面111bよりもインナ側に配置されている。
軌道部材111は、鋼を含む材料(以下、鋼材料という)で形成されている。すなわち、軌道部材111は、鉄及び/又は鉄合金を含む材料で構成されている。軌道部材111は、例えば、S55C等の炭素鋼や、SUJ2等の高炭素クロム軸受鋼で構成することができる。
軽合金部112は、軌道部材111の外周面に設けられている。軌道部材111の外周面は、軌道面111a,111bを有しない面である。軽合金部112は、筒状部112aと、フランジ部112bとを含む。
筒状部112aは、直線X1を軸心とする。筒状部112aは、軌道部材111の外周面を覆うように、軌道部材111と同軸に配置される。第1実施形態において、筒状部112aの軸方向の長さは、軌道部材111の軸方向の長さよりも長い。このため、筒状部112aは、軌道部材111の外周面の全体を覆っている。ただし、筒状部112aは、軌道部材111の外周面の少なくとも一部を覆っていればよい。
フランジ部112bは、筒状部112aの外周面から径方向外方に突出する。フランジ部112bは、直線X1を軸心とする概略環状をなす。フランジ部112bは、締結孔112hを有する。図1には表れていないが、フランジ部112bには、複数の締結孔112hが設けられている。フランジ部112bには、各締結孔112h及びボルトやナット等の締結部材を利用して、懸架装置(図示略)が取り付けられる。
軽合金部112は、軽合金を含む材料(以下、軽合金材料という)で構成されている。軽合金としては、例えば、アルミニウム合金やマグネシウム合金、チタン合金等が挙げられる。軽合金は、例えば、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)や、MMC(金属マトリクス複合材)等、軽合金以外の材料と組み合わせて用いることもできる。すなわち、軽合金部112は、その全部が軽合金で構成されていてもよいし、軽合金とその他の材料とによって構成されていてもよい。
内軸12は、本体部121と、フランジ部122とを備える。内軸12は、外輪11の軌道部材111と同様、鋼材料で構成することができる。
本体部121は、直線X1を軸心とする概略柱状をなすが、その一部が中空である。具体的には、本体部121は、インナ側及びアウタ側の各端面に凹部が形成されている。本体部121は、外輪11に挿入されている。本体部121は、外周面に軌道面121aを有する。軌道面121aは、直線X1を軸心とする環状面である。軌道面121aは、外輪11が有する軌道面111bと対向する。
本体部121のインナ側の端部の外周には、内輪17が装着されている。内輪17は、直線X1を軸心とする筒状をなす。内輪17の外周面には、軌道面17aが設けられている。軌道面17aは、直線X1を軸心とする環状面である。軌道面17aは、外輪11が有する軌道面111aと対向する。
フランジ部122は、本体部121の外周面から径方向外方に突出する。フランジ部122は、直線X1を軸心とする概略環状をなす。フランジ部122は、締結孔122hを有する。図1には表れていないが、フランジ部122には、複数の締結孔122hが設けられている。フランジ部122には、各締結孔122h及びボルトやナット等の締結部材を利用して、ディスクホイール(図示略)やブレーキディスク(図示略)等が取り付けられる。
外輪11の内周面と内軸12の外周面との間には、軸受内部空間S1が形成されている。複数の転動体13,14は、軸受内部空間S1に配置されている。より具体的には、複数の転動体13は、外輪11の軌道部材111が有する軌道面111aと、内輪17が有する軌道面17aとに接触して配置される。複数の転動体14は、軌道部材111が有する軌道面111bと、内軸12の本体部121が有する軌道面121aとに接触して配置される。
シール部材15,16は、軸受内部空間S1を密封する。シール部材15,16は、それぞれ、直線X1を軸心とする概略環状をなす。シール部材15は、軸受内部空間S1のインナ側の端部を封鎖する。シール部材16は、軸受内部空間S1のアウタ側の端部を封鎖する。
(製造方法)
以下、上述のように構成された車両用軸受10の製造方法について説明する。ただし、軸受10の製造方法は、以下で説明する態様に限定されるものではない。
軸受10の製造方法は、外輪11及び内軸12をそれぞれ製造する工程と、複数の転動体13,14、シール部材15,16、及び内輪17を準備する工程と、各部材を組み立てる工程とを含む。各部材を組み立てる工程では、内軸12の外周に外輪11を配置するとともに、内軸12と外輪11との間に複数の転動体13,14を配置する。より詳細には、内軸12をインナ側の端から内輪17に圧入した後、内軸12のインナ側の端部をかしめることで内軸12に内輪17を装着する。さらに、内軸12及び内輪17の外周に転動体13,14及び外輪11を配置する。その後、シール部材15,16によって軸受内部空間S1を密封する。
第1実施形態では、外輪11を製造する方法について特に詳しく説明する。図2A〜図2Eは、外輪11を製造するための各工程を説明する図である。ただし、図2A〜図2Eに示す各工程は、あくまで一例である。
図2Aに示すように、まず、軌道部材111を準備する。軌道部材111は、例えば、軸受鋼を切削加工することによって作製される。
次に、図2Bに示すように、軌道部材111の周りに型3を配置する。型3は、複数の部分に分割された分割型である。型3は、図2Bに示す部分31a〜31jと、後述する部分32a,32bとを含む。この時点では、軌道部材111の周りには部分31a〜31jのみが配置されている。
続いて、軌道面111a,111bに高周波誘導加熱を施す。具体的には、図2Cに示すように、軌道部材111の内部に高周波装置4を配置し、高周波装置4が発生させる高周波の交流電流によって軌道面111a,111bの誘導加熱を行う。
軌道面111a,111bの加熱温度は、Ac1変態点(加熱時、オーステナイトが生成し始める温度)以上、あるいはAc3変態点(加熱時、フェライトがオーステナイトへの変態を完了する温度)以上とすることができる。軌道面111a,111bは、例えば900℃程度に加熱される。軌道面111a,111bの熱は、軌道部材111の他の部分にも伝達される。例えば、軌道面111a,111bの加熱温度が900℃程度である場合、軌道部材111の外周面の温度は700℃程度となる。
軌道面111a,111bを所定時間加熱した後、図2Dに示すように、軌道部材111の内部から高周波装置4を取り除く。加熱された軌道面111a,111bからの熱伝達により、軌道部材111は全体的に高温になっている。この軌道部材111が冷めないうちに、軌道部材111の外周面に対する軽合金材料の鋳込みを開始する。具体的には、型3のうち部分31b,31c,31g,31hに代えて部分32a,32bを軌道部材111の周りに配置し、溶融させた軽合金材料を型3内に流し込む。型3に流し込まれる軽合金材料の温度(鋳込温度)は、使用する軽合金材料の融点等に応じて適宜決定することができる。例えば、軽合金材料がアルミニウム合金を主体とする材料である場合、鋳込温度は約730℃とすることができる。
軽合金材料を鋳込む際、軌道部材111に軽合金材料を定着させるために、軌道部材111の温度をある程度高くする必要がある。以下、軽合金材料を鋳込む際の軌道部材111の温度を軽合金定着温度と称する。軽合金定着温度は、例えば、200℃〜300℃である。
上述したように、高周波誘導加熱によって軌道部材111の温度は上昇する。しかしながら、例えば、高周波誘導加熱の終了後に一定時間が経過すると、軌道部材111が自然冷却されてその温度が低下する。高周波誘導加熱の後に軌道部材111の温度が軽合金定着温度未満まで低下した場合、軽合金材料の鋳込みに際し、軌道部材111を再加熱する必要がある。
高周波誘導加熱の終了後の冷却によって軌道面111a,111bに硬化層が生成され始めている場合、軌道部材111を再加熱すると、一旦生成された硬化層の組成が変化する「焼きなまり」が生じ得る。このため、本実施形態では、再加熱による焼きなまりが生じ得る温度まで軌道面111a,111bが冷め切らないうちに、軽合金材料の鋳込みが開始される。すなわち、硬化層が生成される温度(硬化層生成温度)以下に軌道面111a,111bが冷却されてしまう前に軽合金材料の鋳込みを開始する。高周波誘導加熱の後、軌道面111a,111bに硬化層が生成される温度は、例えば200℃である。この場合、軌道面111a,111bの温度が200℃以下まで低下する前に、軽合金材料の鋳込みを開始する。
硬化層生成温度は、例えば、軌道面111a,111bにおいてマルテンサイトが生成される温度である。よって、軌道部材111がM変態点(冷却の間にオーステナイトがマルテンサイトに変態し始める温度)以下まで冷却される前に、軽合金材料の鋳込みを開始することができる。より正確には、高周波誘導加熱が終了した後、軌道面111a,111bの温度がM変態点以下になる前に、軽合金材料の鋳込みを開始することができる。硬化層生成温度は、通常、軽合金定着温度以下である。
軽合金材料の鋳込みは、高周波誘導加熱の終了直後に開始されることが好ましい。つまり、高周波誘導加熱工程と軽合金材料の鋳込み工程とを連続して実施することが好ましい。例えば、高周波誘導加熱の終了後、軌道部材111の温度が少なくとも軽合金定着温度以上であるうちに、軽合金材料の鋳込みが開始される。この場合、軽合金材料の鋳込みに際し、軌道部材111を改めて加熱する必要はない。
高周波誘導加熱の終了後、一定時間が経過した後に軽合金材料の鋳込みを開始する場合、軌道部材111の温度が軽合金定着温度未満に低下することがある。ただし、軌道面111a,111bの温度は、硬化層生成温度以下まで低下させないように留意する。高周波誘導加熱の終了後、軌道面111a,111bの温度が硬化層生成温度よりも高いものの、軌道部材111の温度が軽合金定着温度未満まで低下している場合は、軌道部材111を軽合金定着温度以上に再加熱する。
軽合金材料を鋳込んだ後、この軽合金材料を自然冷却又は強制冷却して硬化させることにより、軽合金部112を形成する。このとき、軌道部材111の温度も低下し、軌道面111a,111bにおいて硬化層が生成される。その後、図2Eに示すように、軌道部材111及び軽合金部112の周りから型3を取り除く。
特に図示しないが、型3は、フランジ部112bの各締結孔112hに対応する形状を有していてもよい。この場合、軽合金部112の鋳込み形成工程で各締結孔112hが形成される。型3が各締結孔112hに対応する形状を有しない場合、鋳込み形成工程よりも後の工程で、フランジ部112bを機械加工して各締結孔112hを形成すればよい。
最後に、必要に応じて軌道面111a,111bの研磨や研削を行う。これにより、外輪11が完成する。
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、軌道面111a,111bに対する高周波誘導加熱が終了した後で、軌道部材111の外周面に軽合金材料が鋳込まれ、軽合金部112が形成される。つまり、軽合金部112が形成される前に高周波誘導加熱が終了しているため、高周波誘導加熱の熱が形成後の軽合金部112に影響を与えることはない。よって、軽合金部112が形成後に溶融するのを防止することができる。
第1実施形態では、高周波誘導加熱の終了後、硬化層が生成される温度以下に軌道面111a,111bが冷却される前に、軌道部材111の外周面に対する軽合金材料の鋳込みを開始する。すなわち、軌道面111a,111bに硬化層が生成されないうちに、軌道部材111の外周面に軽合金材料が鋳込まれる。よって、軽合金材料の鋳込みの際、軽合金材料を定着させるために軌道部材111を加熱した場合であっても、この加熱によって硬化層の組成が変化するという事態は生じない。すなわち、軌道面111a,111bに焼きなまりが生じるのを防止することができる。
高周波誘導加熱の直後は、軌道部材111は高温になっている。よって、高周波誘導加熱の直後に軽合金材料の鋳込みを行えば、軽合金材料を定着させるために軌道部材111を改めて加熱する必要はない。この場合、高周波誘導加熱の後、軌道部材111の温度を大幅に上下させることなく安定して変化させられるため、所望の硬度の軌道面111a,111bを得やすくなる。また、軽合金材料の鋳込みに際して軌道部材111を再加熱する必要がないため、エネルギーコストを節約することもできる。
第1実施形態では、高周波誘導加熱の終了後、軌道部材111が冷める前に軽合金材料の鋳込みを行う。つまり、軌道部材111が温度低下によって熱収縮しないうちに軽合金材料が鋳込まれ、軽合金部112が形成される。よって、常温時における軌道部材111と軽合金部112との見かけ上の締め代を小さくすることができる。見かけ上の締め代は、互いに嵌まり合う前の状態における軌道部材111の外径と軽合金部112の内径との差である。これにより、軽合金部112における残留応力が小さくなり、軽合金部112の割れの発生を抑制することができる。
[第2実施形態]
(全体構成)
図3は、直線X2を通る平面で第2実施形態に係る車両用軸受20を切断した断面図である。直線X2は、軸受20の軸心である。以下、直線X2が延びる方向を軸受20の軸方向又は単に軸方向と称する。軸受20において、車両に取り付けたときに車体に近い方をインナ側、車体から遠い方をアウタ側と称する。
図3に示す車両用軸受20は、ハブユニットとも称される。軸受20は、外輪21と、内軸22と、複数の転動体23,24と、シール部材25,26とを備える。外輪21及び内軸22は、軸受20に含まれる一対の軌道輪である。
外輪21は、第1実施形態に係る外輪11の軌道部材111と同様の鋼材料で構成することができる。外輪21は、本体部211と、フランジ部212とを含む。
本体部211は、直線X2を軸心とする筒状をなす。本体部211は、内周面に軌道面211a,211bを有する。
フランジ部212は、本体部211の外周面から径方向外方に突出する。フランジ部212は、直線X2を軸心とする概略環状をなす。フランジ部212は、懸架装置(図示略)を取り付けるための複数の締結孔212hを有する。
内軸22は、軌道部材221と、軽合金部222とを備える。軌道部材221及び軽合金部222は、それぞれ、第1実施形態に係る外輪11の軌道部材111及び軽合金部112と同様の材料で構成される。
軌道部材221は、筒状部221aと、フランジ部221bとを含む。筒状部221aは、直線X2を軸心とする筒状をなす。筒状部221aの外周面には、軌道面221cが設けられている。軌道面221cは、直線X2を軸心とする環状面である。軌道面221cは、外輪21が有する軌道面211bと対向する。
筒状部221aのインナ側の端部の外周には、内輪27が装着されている。内輪27は、第1実施形態に係る内輪17と同様の構成を有する。内輪27の軌道面27aは、外輪21が有する軌道面211aと対向する。
フランジ部221bは、筒状部221aから径方向外方に突出する。フランジ部221bは、筒状部221aのアウタ側の端部に接続されている。フランジ部221bは、直線X2を軸心とする概略環状をなす。フランジ部221bは、ディスクホイール(図示略)やブレーキディスク(図示略)等を取り付けるための複数の締結孔221hを有する。
軽合金部222は、軌道部材221の内周面に設けられる。軌道部材221の内周面は、軌道面221cを有しない。軽合金部222は、軌道部材221の内周面をアウタ側から覆うように形成されている。軌道部材221の内周面のうちインナ側の部分は、軽合金部222から露出している。軽合金部222のアウタ側の端面には、凹部222aが設けられている。
第1実施形態と同様、複数の転動体23,24は、外輪21の内周面と内軸22の外周面との間の軸受内部空間S2に配置されている。複数の転動体23は、外輪21の軌道面211a及び内輪27の軌道面27aに接触して配置される。複数の転動体24は、外輪21の軌道面211b及び内軸22の軌道面221cに接触して配置される。
シール部材25,26は、直線X2を軸心とする環状をなし、軸受内部空間S2を密封する。シール部材25,26は、それぞれ、軸受内部空間S2のインナ側の端部及びアウタ側の端部を封鎖する。
(製造方法)
以下、上述のように構成された車両用軸受20の製造方法について説明する。ただし、軸受20の製造方法は、以下で説明する態様に限定されるものではない。
軸受20の製造方法は、外輪21及び内軸22をそれぞれ製造する工程と、複数の転動体23,24、シール部材25,26、及び内輪27を準備する工程と、各部材を組み立てる工程とを含む。各部材を組み立てる工程は、第1実施形態と同様であるので、ここでは説明を省略する。
第2実施形態では、内軸22を製造方法について特に詳しく説明する。図4A〜図4Eは、内軸22を製造するための各工程を説明する図である。ただし、図4A〜図4Eに示す各工程は、あくまで一例である。
図4Aに示すように、まず、軌道部材221を準備する。軌道部材221は、例えば、軸受鋼を切削加工することによって作製される。
次に、図4Bに示すように、軌道部材221の周りに型5を配置する。型5は、複数の部分5a〜5dに分割された分割型である。
軌道部材221の周りに型5を配置した状態で、軌道面221cに高周波誘導加熱を施す。具体的には、図4Cに示すように、軌道部材221の筒状部221aの外周に高周波装置6を配置し、高周波装置6が発生させる高周波の交流電流によって軌道面221cの誘導加熱を行う。軌道面221cの加熱温度は、第1実施形態で説明した通りである。
軌道面221cを所定時間加熱した後、筒状部221aの外周から高周波装置6を取り除く。そして、図2Dに示すように、軌道部材221の内周面に対する軽合金材料の鋳込みを開始する。軽合金材料の鋳込温度は、第1実施形態と同様である。
加熱された軌道面221cからの熱伝達により、軌道部材221は全体的に高温になる。軽合金材料の鋳込みは、軌道部材221が冷めないうちに行われる。すなわち、高周波誘導加熱の終了後、硬化層生成温度以下に軌道面221cが冷却される前に軽合金材料の鋳込みが開始される。硬化層生成温度は、第1実施形態で説明した通りである。軽合金材料を鋳込むときの軌道部材221の温度、つまり、軽合金定着温度も第1実施形態と同様である。
第1実施形態と同様、軽合金材料の鋳込みは、好ましくは高周波誘導加熱の終了直後に開始される。高周波誘導加熱の終了後、軌道部材221の温度が少なくとも軽合金定着温度以上であるうちに、軽合金材料の鋳込みを開始することが好ましい。この場合、軽合金材料の鋳込みに際し、軌道部材221を改めて加熱する必要はない。
高周波誘導加熱の終了後に一定時間が経過し、軌道部材221の温度が軽合金定着温度未満まで低下している場合は、軌道部材221を軽合金定着温度以上に加熱する。ただし、高周波誘導加熱の終了後、軽合金材料の鋳込みをすぐに行わない場合であっても、軌道面221cの温度が硬化層生成温度以下に低下しないように留意する。
軽合金材料を鋳込んだ後、この軽合金材料を冷却して硬化させることにより、軽合金部222を形成する。このとき、軌道部材221の温度も低下し、軌道面221cに硬化層が生成される。その後、図4Eに示すように、軌道部材221及び軽合金部222の周りから型5を取り除く。
最後に、必要に応じて軌道面221cの研磨や研削を行う。これにより、内軸22が完成する。
(第2実施形態の効果)
第2実施形態においても、軌道面221cに対する高周波誘導加熱が終了した後で、軌道部材221の内周面に軽合金材料が鋳込まれ、軽合金部222が形成される。このため、第1実施形態と同様に、形成後の軽合金部222が高周波誘導加熱の熱の影響を受けることがない。よって、軽合金部222が形成後に溶融するのを防止することができる。
第2実施形態では、高周波誘導加熱の終了後、硬化層が生成される温度以下に軌道面221cが冷却される前に、軌道部材221の内周面に軽合金材料が鋳込まれる。硬化層の生成前に軽合金材料を鋳込むため、鋳込みの際の軌道部材221の再加熱によって硬化層の組成が変化することはない。よって、軌道面221cに焼きなまりが生じるのを防止することができる。
高周波誘導加熱の直後、軌道部材221は高温になっている。高周波誘導加熱の直後に軽合金材料の鋳込みを行えば、軽合金材料を定着させるために軌道部材221を改めて加熱する必要はない。この場合、高周波誘導加熱の後、軌道部材221の温度が大幅に上下せず、安定して変化する。このため、所望の硬度の軌道面221cを得やすくなる。また、軌道部材221を再加熱する必要がないため、エネルギーコストを節約することもできる。
第2実施形態においても、高周波誘導加熱の終了後、軌道部材221が温度低下によって熱収縮しないうちに軽合金材料を鋳込み、軽合金部222を形成する。このため、常温時における軌道部材221と軽合金部222との見かけ上の締め代が小さくなる。よって、軽合金部222における残留応力が小さくなり、軽合金部222の割れの発生を抑制することができる。
[変形例]
以上、実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
上記各実施形態では、高周波誘導加熱が終了した後に、軌道部材の外周面又は内周面に対して軽合金材料を鋳込んでいる。しかしながら、高周波誘導加熱と同時に軽合金材料の鋳込みを行ってもよい。
例えば、高周波装置によって軌道面を加熱しながら、軌道部材の周りに配置された型内に軽合金材料を鋳込んでもよい。このとき、高周波誘導加熱及び軽合金材料の鋳込みは、実質的に同時に開始されてもよいし、いずれか一方が先に開始されてもよい。いずれにしても、高周波誘導加熱の終了後に軽合金材料が硬化され、軽合金部が形成されればよい。軽合金部の最終的な形成が高周波誘導加熱の終了よりも後であれば、高周波誘導加熱の熱による軽合金部の溶融を防止することができる。
10,20:車両用軸受
11:外輪(軌道輪)
111:軌道部材
111a,111b:軌道面
112:軽合金部
22:内軸(軌道輪)
221:軌道部材
221c:軌道面
222:軽合金部

Claims (4)

  1. 車両用軸受の軌道輪の製造方法であって、
    内周面又は外周面に軌道面を有し、鋼を含む材料で形成された軌道部材を準備する工程と、
    前記軌道面を高周波誘導加熱する工程と、
    前記軌道部材の内周面及び外周面のうち前記軌道面を有しない面に、軽合金を含む材料を鋳込む工程と、
    を備え、
    前記高周波誘導加熱する工程が終了した後に、前記軽合金を含む材料を硬化させて軽合金部を形成する、軌道輪の製造方法。
  2. 請求項1に記載の軌道輪の製造方法であって、
    前記軽合金を含む材料を鋳込む工程は、前記高周波誘導加熱する工程が終了した後、硬化層が生成される温度以下まで前記軌道面が冷却される前に行われる、軌道輪の製造方法。
  3. 請求項1に記載の軌道輪の製造方法であって、
    前記軽合金を含む材料を鋳込む工程は、前記高周波誘導加熱する工程の直後又は前記高周波誘導加熱する工程と同時に行われる、軌道輪の製造方法。
  4. 車両用軸受の製造方法であって、
    軌道輪としての外輪及び内軸を製造する工程と、
    前記内軸の外周に前記外輪を配置するとともに前記内軸と前記外輪との間に複数の転動体を配置して組み立てる工程と、
    を備え、
    前記外輪及び前記内軸の少なくとも一方は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の軌道輪の製造方法によって製造される、車両用軸受の製造方法。
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