JP2020070536A - 耐摩耗性に優れた熱可塑性繊維およびその製造方法 - Google Patents

耐摩耗性に優れた熱可塑性繊維およびその製造方法 Download PDF

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Akira Kanatsuki
亮 金築
雄俊 中谷
Taketoshi Nakatani
雄俊 中谷
祐司 南波
Yuji Namba
祐司 南波
義尚 西井
Yoshihisa Nishii
義尚 西井
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Abstract

【課題】耐摩耗性に優れた熱可塑性繊維を提供する。【解決手段】 熱可塑性樹脂により構成されてなる熱可塑性繊維であって、熱可塑性樹脂中にはポリテトラフルオロエチレンからなる微粒子を含み、熱可塑性樹脂の融点は、ポリテトラフルオロエチレンの融点よりも低融点であり、ポリテトラフルオロエチレンが、耐熱温度400℃以上、融点310℃以上であって、レーザー回析散乱粒度測定によるメジアン径が1μm以下の微粒子であり、熱可塑性樹脂中に、ポリテトラフルオロエチレンが多くとも2質量%含まれていることを特徴とする耐摩耗性に優れる熱可塑性繊維。【選択図】 図1

Description

本発明は、耐摩耗性を向上させた熱可塑性繊維に関するものである。
熱可塑性繊維のうち、ポリアミド繊維は、強力が高く、耐摩耗性に優れることが評価され、ロープやネット、抄紙用のスクリーン(網)、フィルター、釣糸等に用いられている。例えば、高所作業時に着用を義務付けされている安全帯に用いられるロープは、通常、ポリアミド繊維が採用されているが、強度、衝撃吸収性、耐候性、耐摩耗性、重量等において総合的に優れるためである。また、ポリエステル等の他の素材に比べて耐摩耗性に優れ、かつ柔軟性、強靱性、適度な伸びを有することから、海釣用の道糸、鮎釣用の水中糸、へら釣用の道糸、ルアーラインやハリスなど釣糸の素材としてもポリアミドが好ましく使用されている。
しかしながら、抄紙機のワイヤーを駆動させる電力量は相当のものらしく、製紙会社にとってもこの電力コストを下げることは非常に重要である。ワイヤーのタイプや材質が変われば、それだけで、電力量も大きく変わる。ワイヤーはパルプを受ける表の部分と駆動用のローラー等に触れる裏の部分の2層構造になっている。ナイロンモノフィラメントは、裏側の部分に使われている。
この裏側の部分が、工程中のセラミックの板と当たる箇所があり、セラミックスとの摩擦の負荷により駆動電力の増加につながっている。この部分の滑りが良くなれば、電力の増加を抑えられコストダウンにつながる。また、耐磨耗性が良ければ、ワイヤーの消耗も緩和されるため、ワイヤーの長持ちにつながる。
摩耗性向上の技術としては、例えば、合成繊維からなるモノフィラメントの表面に特定のシラン系コート剤で被覆する方法(特許文献1)、アミノ変性シリコーンオイルをポリアミド繊維表面に付与する方法(特許文献2)、ポリシラザン透明ハードコート層および紫外線硬化型ハードコート層を有するポリアミド繊維(特許文献3)などが公知である。しかしながら、この方法により得られる繊維は、耐摩耗性はある程度改善されるものの、未だ不十分であり、さらに製造工程が複雑になると共に、コストアップにつながる。
また、ポリアミド樹脂に、他の樹脂を溶融混練したポリマーを用いて繊維を得ることにより耐摩耗性を向上させる技術が知られている。例えば、特許文献4には、柔軟性、ゴム弾性を示すエチレン・1−オクテン共重合体を混合すること、特許文献5には、無水マレイン酸改質ポリエチレン/ポリプロピレンゴムを混合すること、特許文献6には、特定のポリオレフィンを混合することが開示されている。しかしながら、これらの方法により得られる繊維も、耐摩耗性はある程度改善されるものの、異ポリマーを混練することにより強度が上がらない、耐摩耗性と強度のバランスが良くないという問題点がある。
特許文献7には、溶融前のポリアミド樹脂にフッ素樹脂を塗布したものを溶融紡糸し、製糸工程において、溶融紡糸された樹脂以上のフッ素樹脂を塗布することが記載されているがコストがかかると共にフッ素樹脂量のコントロールが極めて難しい。
特許文献8にはポリアミドに対し、融点290℃以下のフッ素樹脂を添加したモノフィラメントが挙げられているが、低融点のフッ素樹脂は製糸工程において分解ガスが発生しやすく高粘度のポリアミド樹脂に添加し溶融混錬するには極めて高い技術力と設備が必要となる。
特開2005−273066号公報 特開2008−245535号公報 特開平04−214409号公報 特開2005−273025号公報 特開平09−209212号公報 特開平07−003526号公報 特開平9−310281号公報 特許第3764921号公報
本発明は上記のような問題を解決し、耐摩耗性の優れた繊維を提供することを技術的な課題とする。
本発明者等は、上記課題を達成するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、熱可塑性樹脂により構成されてなる熱可塑性繊維であって、熱可塑性樹脂中にはポリテトラフルオロエチレンからなる微粒子を含み、熱可塑性樹脂の融点は、ポリテトラフルオロエチレンの融点よりも低融点であり、
ポリテトラフルオロエチレンが、耐熱温度400℃以上、融点310℃以上であって、レーザー回析散乱粒度測定によるメジアン径が1μm以下の微粒子であり、
熱可塑性樹脂中に、ポリテトラフルオロエチレンが多くとも2質量%含まれていることを特徴とする耐摩耗性に優れる熱可塑性繊維を要旨とするものである。
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明は熱可塑性樹脂により構成されてなる熱可塑性繊維である。熱可塑性樹脂としては、繊維形成性を有するものが好ましく、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂が挙げられる。
ポリエステル系樹脂としては、分子内にエステル結合を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば芳香族ポリエステルでは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート等が挙げられ、また、脂肪族ポリエステルでは、例えばポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等が挙げられる。機械的強度等に優れることから、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンタレフタレートを好ましく用いる。
また、本発明における目的を阻害しない範囲であれば、上記したポリエステルに他のジカルボン酸成分、ジオール成分あるいはオキシカルボン酸成分等を共重合してもよく、あるいは上記したポリエステル同士のブレンドや、上記したポリエステルと共重合したポリエステルとをブレンドしたものであってもよい。共重合できる他の成分としては、ジカルボン酸では、例えば、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、無水フタル酸、セバシン酸、アジピン酸、コハク酸等が挙げられ、ジオール成分では、エタンジオール、プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
ポリエステルの相対粘度としては、特に限定はされないが、用途に応じて適宜選択することが好ましい。例えば、強伸度等の実用的な観点から、衣料用途であれば、相対粘度が1.2以上、より好ましくは1.3以上、さらに好ましくは1.35以上であり、産業資材用途であれば、相対粘度が1.4以上、より好ましくは1.5以上である。
ポリアミド系樹脂としては、分子内にアミド基を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えばナイロン6,ナイロン66,ナイロン69、ナイロン46,ナイロン610,ナイロン1010、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6T、ナイロン9T、ポリメタキシレンアジパミドやこれら各成分を共重合したものやブレンドしたもの等が挙げられる。
実用的な耐摩耗性を得るためには、ポリアミドの相対粘度としては、相対粘度が3.5以上が好ましく、より好ましくは4.0以上である。相対粘度が3.5以下であると、樹脂自体が柔らかく、ポリテトラフルオロエチレン微粒子を混合させた組成物を用いても、用途によっては、要求される耐摩耗性を十分に発揮しにくい傾向となる。
本発明においては、熱可塑性樹脂としては、樹脂としての耐摩耗性も良好であることから、ポリアミド系樹脂を用いることが好ましい。
繊維を構成する熱可塑性樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて添加剤を添加してもよい。例えば、熱安定剤、結晶核剤、艶消し剤、顔料、耐光剤、耐候剤、酸化防止剤、抗菌剤、香料、可塑剤、染料、界面活性剤、表面改質剤、各種無機及び有機電解質、微粉体、難燃剤等が挙げられる。また、得られる繊維の結節強度を高めるために、脂肪酸アミド類、例えばメタキシリレンビスステアリルアミド、メタキシリレンビスオレイルアミド、キシレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスステアリン酸アミド等を添加することができる。
本発明の熱可塑性繊維は、上記した熱可塑性樹脂によって構成されるが、所望の特性を得るために複数の熱可塑性樹脂をブレンドした樹脂を用いてもよい。また、繊維の形態は、単相の形態であっても、複数の熱可塑性樹脂が複合してなる複合形態であってもよい。複合形態として、芯鞘型形態や3層以上の複層の形態に複合してなるものであってもよい。複合形態を採用した場合、芯層や中の層の粘度を高粘度のものを採用すると、強伸度が向上するため、好ましい。
芯鞘型や3層以上の複層の形態の場合、鞘層や最外層にポリテトラフルオロエチレンからなる微粒子を含有させる。摩耗性を発揮させるためである。また、鞘層や最外層だけではなく、芯層や中の層にもポリテトラフルオロエチレンからなる微粒子を含有させるとよい。鞘層や最外層が、摩耗によって一部が脱落し、芯層や中の層が露出した場合に、さらに耐摩耗性を発揮するためである。鞘層や最外層よりも、芯層や中の層を構成する熱可塑性樹脂に、より多くのポリテトラフルオロエチレンからなる微粒子を含有させることも好ましい。
本発明の熱可塑性繊維は、繊維を構成する熱可塑性樹脂中にポリテトラフルオロエチレンからなる微粒子を含む。ポリテトラフルオロエチレンは、耐熱温度400℃以上、融点310℃以上であり、レーザー回析散乱粒度測定によるメジアン径が1μm以下の微粒子である。このようなポリテトラフルオロエチレン微粒子を熱可塑性樹脂中に多くとも2質量%含有させることにより、繊維の耐摩耗性が向上するのである。
ポリテトラフルオロエチレンの含有量は、熱可塑性樹脂中に多くとも2質量%とするが、良好に耐摩耗性を発揮するには、含有量の下限は、0.05質量%とする。ポリテトラフルオロエチレンの含有量が、2質量%を超えると、繊維の機械的物性が低下するため、また耐摩耗性の向上がみられないため、好ましくない。このような理由から、ポリテトラフルオロエチレンの含有量は、0.1質量%〜1質量%が好ましい。
ポリテトラフルオロエチレンの融点は310℃以上であり、かつ繊維を構成する熱可塑性樹脂の融点よりも高融点融点である。ポリテトラフルオロエチレンの融点が、310℃未満であると、繊維を構成する熱可塑性樹脂と混合する際に、熱可塑性樹脂を溶融させて溶融混錬するが、その混合時に、ポリテトラフルオロエチレンまでもが熱の影響を受けて溶融してしまい、微粒子の形態を維持できず、本発明の目的が達成できなくなる。よって、ポリテトラフルオロエチレンが微粒子の形態を維持し、繊維を構成する熱可塑性樹脂と良好に混合して、分散するには、ポリテトラフルオロエチレンの融点を310℃以上とする。
ポリテトラフルオロエチレンの耐熱温度は400℃以上である。繊維を構成する熱可塑性樹脂、例えば、高粘度のポリアミド樹脂やポリエスエル樹脂を溶融紡糸する温度は300℃程度ではあり、この紡糸温度下でポリテトラフルオロエチレンは溶融することなく、微粒子の形態を維持しうるが、ポリテトラフルオロエチレンの耐熱温度が400℃未満であると、溶融混合する際に熱の影響を受けやすい傾向となり、また、紡糸混錬機内やノズルパック内で、長時間に亘ってポリテトラフルオロエチレンが滞留した際に分解が生じてフッ素ガスを発生する恐れがあり、この場合、安定して耐摩耗性を発揮しうる熱可塑性繊維を得ることが困難となり、紡糸延伸工程における環境悪化となるため好ましくない。なお、耐熱温度は、熱重量測定(TG)によって得られる温度であり、試料を10℃/分の条件で420℃まで加熱した際に、描くTG曲線より、質量が1%減少したときの温度を分解温度とする。本発明では、リガク社製「熱重量・示唆熱TG−DTA」を用いて、測定した。
ポリテトラフルオロエチレンは、粒子径が1μm以下の微粒子である。本発明において、ポリテトラフルオロエチレンの粒子径とは、レーザー回析散乱粒度測定によるメジアン径をいう。粒子径が1μmを超えると、熱可塑性繊維の機械的物性の低下が生じやすく、また、繊維の製造工程において紡糸性の悪化の原因となり、また、繊維表面に配されるポリテトラフルオロエチレン微粉末が相対的に少なくなり、得られる耐摩耗性が乏しくなる。粒子径を1μm以下とすることにより、繊維を構成する熱可塑性樹脂中に良好に分散して、優れた耐摩耗性を有する繊維を得ることができる。なお、粒子径の下限は0.1μmがよい。
ポリテトラフルオロエチレンの粒子径は、具体的には、以下の方法で測定される。レーザー回折散乱粒度測定機(マイクロトラックベル社製 マイクロトラックMT3300)を用いて、ポリテトラフルオロエチレン微粒子をノニオン界面活性剤0.5%液に入れて1分間超音波分散させた後、レーザー回折散乱粒度測定にてメジアン径を実測する。
本発明においては、このような融点310℃以上、耐熱温度400℃以上、粒子径1μm以下のポリテトラフルオロエチレン微粒子として、喜多村社製のポリテトラフルオロエチレン微粉末「KTL−500F」を好ましく用いることができる。
本発明の熱可塑性繊維は、熱可塑性繊維1本から構成されるモノフィラメント糸の形態であっても、熱可塑性繊維が複数本から構成されてなるマルチフィラメント糸の形態であってもよい。なお、モノフィラメント糸の形態とする場合、モノフィラメント糸の繊度は150〜20000dtexが好ましい。マルチフィラメント糸の形態とする場合、マルチフィラメント糸を構成する熱可塑性繊維の単繊維繊度は1〜200dtex、総繊度は20〜5000dtexが好ましく、中でも総繊度は40〜3000dtexがより好ましい。また、熱可塑性繊維は、連続してなる長繊維であっても、特定の繊維長を有する短繊維とであってもよく、繊維形態としては特に限定されない。
本発明の熱可塑性繊維は、以下の方法により得ることができる。
ポリテトラフルオロエチレン微粒子の含有量が所定の範囲(熱可塑性樹脂中に多くとも2質量%)となるように、熱可塑性樹脂チップと適正にブレンドし、溶融混合した後、溶融紡糸する。溶融混合および溶融紡糸の際には、熱可塑性樹脂が溶融し、かつポリテトラフルオロエチレン微粒子は溶融しない温度条件とする。すなわち、熱可塑性樹脂の融点よりも高い温度で、かつポリテトラフルオロエチレンの融点未満の温度とする。
溶融混合する際には、ポリテトラフルオロエチレン微粒子を高濃度含有したマスターチップを用いることが好ましい。マスターチップ作製過程において、熱可塑性樹脂のみが溶融し、かつポリテトラフルオロエチレン微粒子が溶融しない条件で作製する。したがって、熱可塑性樹脂の融点よりも高い温度で、かつポリテトラフルオロエチレンの融点未満の温度で溶融してなる熱可塑性樹脂に、ポリテトラフルオロエチレン微粒子を溶融混練することによりマスターチップを作成する。なお、マスターチップを作製するにあたっては、主体となる熱可塑性樹脂と同種のものを使用するのが最も好ましい。また一方、繊維を構成する熱可塑性樹脂とは異なる樹脂であっても、この繊維を構成する熱可塑性樹脂よりも融点が低く、温度変化による溶融粘性の変化が生じにくいポリオレフィン系樹脂をマスターバッチの構成樹脂とするマスターバッチを使用することもよい。マスターバッチの樹脂としてポリオレフィン系樹脂を用いた場合、ポリテトラフルオロエチレン微粒子の形態を維持しやすくなると共に、これによって耐摩耗性の向上にも寄与する。
次いで、溶融紡糸により得られた糸条は、冷却し、油剤を付与し、あるいは付与せず、一旦未延伸糸として巻き取った後あるいは一旦捲き取ることなく引き続いて延伸を施す。溶融紡糸後の糸条の冷却は、室温での冷却、冷却風を吹付けによる冷却、水浴中に通すことにより冷却が挙げられる。延伸にあたっての延伸倍率は2〜8倍とし、熱延伸を施す。熱延伸の加熱手段としては、温水バス中で熱延伸するか、加熱ローラーを用いて熱延伸する。熱延伸後は、巻取り操作を連続して行い、目的とする繊維を得る。
本発明の熱可塑性繊維は、下記載の測定方法により得られる動摩擦係数の値において、基準繊維(ポリテトラフルオロエチレン微粒子を混合しないこと以外は、略同様の製造条件で得られた繊維)との対比で、摩擦係数の値が低く、耐摩耗性が向上する。
<動摩擦係数>
金属製の表面平滑な平板(6cm×4cm)の片面に両面テープを貼り、試料となる繊維を3cmにカットしたもの50本を、繊維同士間に間隙ができるだけできないように並列させて、両面テープを介して平板に貼り付けた。なお、並列させるにあたっては、繊維軸方向が、平板の長軸方向となるようにした。
平板の長軸方向(繊維軸方向)の一方に紐を取り付け、紐の他方側の端を引張試験機の移動ヘッド中のロードセルに繋いだ。水平設置した#1000のサンドペーパー(相手材)の上に、繊維を貼り付けた面がサンドペーパー側になるように平板を乗せ、平板の上面には、すべり片全体の質量が200グラムとなるように荷重を載せた。平板とロードセル間で紐が垂直に曲がるように滑車を介在させた状態で、引張試験機の移動ヘッドを引張速度100mm/分で移動させ、平板をサンドペーパーの上で水平に滑らせるときの摩擦力を読み取った。なお、図1は、動摩擦係数測定装置の概略図である。
摩擦力のセカンドピークから50mm区間の引張力の平均値を動摩擦力F(cN)とした。得られた動摩擦力Fを196で除した数値を動摩擦係数μとし、基準繊維よりも動摩擦係数μが小さいものを合格とした。
本発明の熱可塑性繊維は、上記したように優れた耐摩耗性を有するものであり、種々の分野や用途において、好適に用いることができる。
例えば、工業用資材として好適に用いられ、陸上等の各種ロープ、陸上ネットや防球ネット、防護ネット、補強用ネット、抄紙機用ワイヤー、フェルト補強ネット、フィルター用ネット、スリングベルト、ハーネス、工業用ブラシの毛材等が挙げられる。特に抄紙用ネットにおいては、工程内でセラミック板と接触する箇所があり、この接触によってネットが削れることがあるが、抄紙機用ワイヤーを構成する線材として、本発明の熱可塑性繊維を適用すれば、耐摩耗性に優れることから、ネットを長期に亘って使用することができる。
また、スポーツ用途にも好適に用いられ、例えば、バドミントンやテニス等のラケットガットとしても好適に適用することができる。
さらに、海や河川において網物やロープ等の形態で用いられる水産資材として良好に用いることができ、また、各種の土木資材としても好適に用いられ、例えば、網状袋体、蛇篭、ふとん篭等の素材として用いられることが挙げられる。また、生活資材としても好適に用いられ、例えば、服地、カバン地、椅子カバー地、ブラシの毛材、リード紐等の各種ペット用品等が挙げられる。
本発明の熱可塑性繊維は、繊維を構成する熱可塑性樹脂中に、耐熱温度400℃以上、融点310℃以上、のポリテトラフルオロエチレンであって、メジアン径が1μm以下の微粒子が多くとも2質量%含まれてなり、優れた耐摩耗性を発揮しうるものである。
動摩擦係数測定装置の概略図である。
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではな
い。
実施例1
メジアン径0.24μmのポリテトラフルオロエチレン微粒子(株式会社喜多村製、商品名 KTL−500F)0.2質量%と相対粘度4.0、融点225℃のポリアミド6樹脂(DSM社製、商品名 ノバミッド1030J)を設定温度265℃で溶融混合し、紡糸温度265℃で1.4mmφ×2Hの紡糸口金から溶融紡糸した。紡糸した繊維を25℃の水浴中で冷却した後、巻き取ることなく、速度20m/分で90℃の温浴中で延伸し、さらに巻き取ることなく、175℃の乾熱雰囲気中で総延伸倍率が4.8倍となるように延伸し、油剤を付けずに巻き取った。繊度1926dtex、強度5.4cN/dtex、伸度22%のモノフィラメント糸(ポリアミド繊維)を得た。なお、強伸度は、 JIS L 1013 に準じて、定速伸長形引張試験機(島津製作所製オートグラフDSS−500)を用い、つかみ間隔25cm、引張速度30cm/分で測定した。
実施例2
実施例1において、メジアン径0.24μmのポリテトラフルオロエチレン微粒子(株式会社喜多村製、商品名 KTL−500F)の混合量を0.3質量%としたこと以外は、実施例1と同様にして、繊度1926dtex、強度5.4cN/dtex、伸度22%のモノフィラメント糸(ポリアミド繊維)を得た。
比較例1
構成樹脂としては、相対粘度4.0、融点225℃のポリアミド6樹脂(DSM社製、商品名 ノバミッド1030J)のみを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、繊度1934dtex、強度5.4cN/dtex、伸度29%のモノフィラメント糸(基準ポリアミド繊維)を得た。
得られた実施例1、2のポリアミド繊維と、比較例1の基準ポリアミド繊維について、動摩擦係数の測定を行い、表1に示した。なお、動摩擦係数の測定は、前記した方法により行った。
実施例3
メジアン径0.82μmのポリテトラフルオロエチレン微粒子(株式会社喜多村製、商品名 KTL−500F)0.2質量%と、粘度の異なる2種のポリフッ化ビニリデン樹脂とを設定温度255℃で溶融混合した。ポリフッ化ビニリデン樹脂は、SOLVAY社製、商品名「SOLEF6013/0001」を75質量%、スリーエム社製、商品名「Dyneon6012/0000」を25質量%用いた。
溶融混合したブレンド体を、紡糸温度260℃で1.4mmφ×4Hの紡糸口金から溶融紡糸した。紡糸した繊維を60℃のエチレングリコール浴中で冷却した後、巻き取ることなく、速度8m/分で159℃のグリセリン浴中で延伸し、さらに巻き取ることなく、158℃のグリセリン浴中で総延伸倍率が6.8倍となるように延伸し、巻き取った。繊度1590dtex、強度4.5cN/dtex、伸度22%のモノフィラメント糸(ポリフッ化ビニリデン繊維)を得た。なお、強伸度は、JIS L 1013 に準じて、定速伸長形引張試験機(島津製作所製オートグラフDSS−500)を用い、つかみ間隔25cm、引張速度30cm/分で測定した。
比較例2
構成樹脂としては、2種のポリフッ化ビニリデン樹脂のみを使用したこと以外は、実施例3と同様にして、強度4.1cN/dtex、伸度25%のモノフィラメント糸(ポリフッ化ビニリデン繊維)を得た。
得られた実施例3、比較例2のポリフッ化ビニリデン繊維について、下記の耐摩耗性評価(ステンレス六角棒)に基づき、測定した。
<耐摩耗性評価(ステンレス六角棒)>
試料となる繊維を、ステンレス六角棒(横断面が正六角形であり1辺の長さが7mm)に対し、六角の2辺が接触するようにして、ストローク幅120mm、ストローク速度35±1回/分で往復摩擦させ、繊維が破断に至るまでの回数を計測した。なお、試料となる繊維には、単位面積(mm)あたり5.1kgの荷重をかけ、試料数は4点としてその平均値を求めた。
実施例3の繊維は破断に至るまでの回数が172回であったのに対し、比較例2の繊維は125回であった。実施例3の繊維が耐摩耗性に優れていることがわかる。

Claims (8)

  1. 熱可塑性樹脂により構成されてなる熱可塑性繊維であって、熱可塑性樹脂中にはポリテ
    トラフルオロエチレンからなる微粒子を含み、熱可塑性樹脂の融点は、ポリテトラフルオ
    ロエチレンの融点よりも低融点であり、
    ポリテトラフルオロエチレンが、耐熱温度400℃以上、融点310℃以上であって、レ
    ーザー回析散乱粒度測定によるメジアン径が1μm以下の微粒子であり、
    熱可塑性樹脂中に、ポリテトラフルオロエチレンが多くとも2質量%含まれていることを
    特徴とする耐摩耗性に優れる熱可塑性繊維。
  2. 熱可塑性樹脂が、ポリアミド系樹脂であることを特徴とする請求項1記載の耐摩耗性に
    優れる熱可塑性繊維。
  3. 請求項1または2記載の熱可塑性繊維が、単繊維繊度が150〜20000デシテック
    スのモノフィラメント糸であることを特徴とする請求項1または2記載の耐摩耗性に優れる熱可塑性モノフィラメント糸。
  4. 請求項3記載の耐摩耗性に優れる熱可塑性モノフィラメント糸によって構成されている
    ことを特徴とする抄紙用ワイヤー。
  5. 請求項3記載の耐摩耗性に優れる熱可塑性モノフィラメント糸によって構成されている
    ことを特徴とするラケット用ガット。
  6. 耐熱温度400℃以上、融点310℃以上であり、レーザー回析散乱粒度測定によるメ
    ジアン径が1μm以下のポリテトラフルオロエチレン微粒子と、熱可塑性樹脂とを混合し
    、熱可塑性樹脂の融点よりも高い温度で、かつポリテトラフルオロエチレンの融点未満の
    温度で溶融紡糸し、延伸することを特徴とする請求項1記載の耐摩耗性に優れる熱可塑性
    繊維の製造方法。
  7. ポリテトラフルオロエチレン微粒子と熱可塑性樹脂とを混合する際、予め熱可塑性樹脂
    にポリテトラフルオロエチレンを高濃度に混合させたマスターバッチを用いることを特徴
    とする請求項6記載の耐摩耗性に優れる熱可塑性繊維の製造方法。
  8. マスターバッチを作成するにあたり、熱可塑性樹脂の融点よりも高い温度で、かつポリ
    テトラフルオロエチレンの融点未満の温度で溶融してなる熱可塑性樹脂に、ポリテトラフ
    ルオロエチレン微粒子を溶融混錬することを特徴とする請求項7記載の耐摩耗性に優れる
    熱可塑性繊維の製造方法。
JP2019189571A 2018-10-29 2019-10-16 耐摩耗性に優れた熱可塑性繊維およびその製造方法 Pending JP2020070536A (ja)

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPH07145511A (ja) * 1993-11-24 1995-06-06 Nippon Ester Co Ltd ポリエステルモノフィラメント
JPH09310281A (ja) * 1996-05-21 1997-12-02 Bonanza:Kk 改質モノフィラメントおよびその製造法
JP2002513854A (ja) * 1998-05-02 2002-05-14 デュネオン・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディトゲゼルシャフト 繊維形成性合成樹脂のための添加物としてのエマルジョン−ポリテトラフルオロエチレン微粉末

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