JP2020067052A - スペーサ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、このようなスペーサは、射出成型時に樹脂材料が供給されるゲート部位等をカットすることでできてしまう残り部が冷却水流路の内壁に向けて突状に形成されていると、冷却水の流れを阻害することが問題となる。そこでこのような残り部を取り除くための仕上げ処理を行う場合があるが、この場合は、製造工程が増えてしまう。
下記特許文献1には、冷却水流路の内壁に干渉しないように、突状の残り部が、冷却水流路の開口部側に位置するスペーサ本体部の端面に形成されたものが開示されている。また下記特許文献1には、スペーサ本体部の端面間を連結するように形成された懸架部位を離型後のスペーサの変形を防ぐために成型体の冷却時まで残すことが開示されている。
以上によれば、冷却水流路の深さ方向にスペーサ本体の第1端部もしくは第2端部から突出する突部を備えているので、冷却水の流れを規制したり、スペーサが冷却水流路の深さ方向に振動することを抑制する等、突部の所定の機能を発揮させることができる。また樹脂導入部が前記突部の先端部、スペーサ本体の第1端部及び第2端部のいずれかに設けられているので、樹脂導入部が冷却水流路の溝壁に接触することがなく、例えば、スペーサと冷却水流路との隙間を狭くした設計が可能となる。つまり、樹脂導入部の形成位置により受けるスペーサの形状の制約が少なくなり、スペーサの設計自由度が高まる。
以上によれば、樹脂導入部が突部の先端部ではなく、スペーサ本体の第1端部もしくは第2端部に形成されているため、射出された樹脂複合材は、まず円弧状部を含むスペーサ本体を形成するキャビティの周方向に広がるように流動する。よって、樹脂複合材に含まれる強化繊維が周方向に配向された状態でスペーサ本体は成形される。これにより、強化繊維の配向が改善され、強化繊維が不規則に配列された状態で成形された樹脂成形体に比べて、剛性が高く変形し難いスペーサを製造することができる。
本実施形態に係るスペーサ5は、自動車用エンジン等の内燃機関10のシリンダブロック1に設けられた冷却水流路3内に配置され、合成樹脂からなる。スペーサ5は、冷却水流路3内に配置可能な形状とされたスペーサ本体6と、スペーサ本体6の開口部3f側に位置する第1端部60もしくはスペーサ本体6の冷却水流路3の底部3e側に位置する第2端部61のいずれか一方から突出して設けられた突部7と、突部7の先端部70、第1端部60及び第2端部61のいずれかに設けられた射出成型時における樹脂材料の樹脂導入部8とを備えている。突部7は、冷却水流路3の深さ方向(d)に突出して形成されている。以下、詳述する。
図1〜図4には、第1実施形態に係るスペーサ5を示している。
スペーサ5は、図1(b)に示すとおり、シリンダブロック1の冷却水流路3内に配置されている。シリンダブロック1の上面にはシリンダヘッド4、シリンダブロック1の下面にはオイルパン(不図示)がそれぞれ配され、シリンダヘッド4は、冷却水流路3の開口部3fが閉塞されるようにシリンダブロック1に一体に締結される。図4に示すシリンダブロック1は、3気筒の内燃機関10を構成するものであり、複数のシリンダボア(気筒)2…が隣接した状態で直列に連なるように設けられている。シリンダブロック1の適所には、シリンダヘッド4と不図示のヘッドガスケットを介して締結させるためのボルト用挿通孔1aが複数設けられている。複数のシリンダボア2…の周囲には、オープンデッキタイプの溝状の冷却水流路(ウォータジャケット)3が一連に形成されている。またシリンダブロック1の適所には、この冷却水流路3に通じる冷却水導入口1bと冷却水排出口1cとが設けられている。冷却水排出口1cは、不図示のラジエータに配管接続され、ラジエータのアウトレット側は、ウォータポンプ(不図示)を介して冷却水導入口1bに配管接続される。これによって、冷却水流路3とラジエータとの間で冷却水(不凍液も含む)が循環するように構成される。
スペーサ5は合成樹脂からなり、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン、ABS、アクリル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン等の熱可塑性樹脂でもよく、例えば、フェノール樹脂やエポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂でもよい。また、合成樹脂としては、種々の添加剤が添加されたものでもよく、また、例えば、後述するような炭素繊維やガラス繊維等の強化繊維を含む樹脂複合材でもよい。
突片部7Aは、図4に示すように冷却水導入口1bの近傍に設けられるため、まず冷却水流路3内に導入された冷却水は円弧部63及び突片部7Aに当たる。突片部7Aは、その導入時に当たった冷却水が突片部7Aを乗り越え、ボア側に流入しないように冷却水の流れを規制している。
これら突部7及び突片部7Aの先端部70,70Aは、シリンダヘッド4に近接して配置されるので、スペーサ5に振動が加わった場合に、突部7及び突片部7Aの先端部70,70Aがシリンダヘッド4もしくはガスケット(不図示)に当接する。したがって、スペーサ5に過剰な振動が加わることを抑制することができる。
樹脂導入部8は、図1(b)に示すように第2端部61から底部3e側、すなわち冷却水流路3の深さ方向(d)に向けて突出した突状部8aとされ、突部7と深さ方向(d)に重なる位置に設けられている。この突状部8aは、突状部8aが収まるように形成された凹部9内に設けられている。図例の凹部9は、スペーサ5の底面側、すなわち接続部64における第2端部61側に複数、凹状に形成されており、平面視において円形に形成されている。樹脂導入部8は、複数の凹部9のそれぞれに設けられている。樹脂導入部8は、この複数の凹部9の中に収まるように凹部9よりひとまわり小さい。つまり、凹部9の径は、突状部8aの径よりも大きく、冷却水流路3の幅方向に沿ったスペーサ本体6の寸法よりも小さい。
また以上によれば、樹脂導入部8の突状部8aが凹部9内に設けられているので、第2端部61から、図1(a)に示すように突状部8aが突出しないようにできる。よって、突状部8aが冷却水流路3の底部3eに接触することがない。そして、樹脂導入部8を第2端部61に配置したことによって生じる不都合を抑制できる。
以上のように凹部9の凹み量が突状部8aの突出量より大きく設定されていれば、突状部8aが冷却水流路3の溝壁(内壁面3c,外壁面3d)だけでなく、底部3eとも接触することがない。よって、一層、樹脂導入部8の形成位置により受けるスペーサ5の形状の制約が少なくなり、スペーサ5の設計自由度が高まる。また凹部9の開口部9aが深さ方向(d)にのみ形成されているから、例えば冷却水が凹部9を経由して冷却水流路3の幅方向に流れる等、意図しない流路が形成されることを抑制できる。
次に図1(b)及び図2等を参照しながら、スペーサ5の製造方法の一例について説明する。
スペーサ5は、合成樹脂からなり、上述した公知の合成樹脂を用いて製造することができるが、本実施形態では、強化繊維を含む樹脂複合材が好適に用いられるため、以下では強化繊維を含む樹脂複合材により製造する方法について説明する。
図2における白抜き矢印は樹脂の流れ方向を指している。樹脂複合材は、樹脂導入部8の近傍の接続部64から円弧部63側に流れるとともに、樹脂導入部8の近傍の接続部64から突部7側に流れる。樹脂複合材に含まれる強化繊維の配向状態は点線によって模式的に示されている。よって、実際には、部分的に図2に示すような強化繊維の配向がみられるわけではない。
続いて図5を参照しながら、第2実施形態のスペーサ5Aを説明するとともに、その製造方法について説明する。第1実施形態と共通する箇所には共通の符号を付し、共通する箇所の説明は省略もしくは簡略する。
第2実施形態に示すスペーサ5Aは、突部7の先端部70が、冷却水流路3の底部3e側に配されている点で異なる。また、第2実施形態に示す突部7は第1実施形態に示す突部7とは異なり、スペーサ本体6に対して直角に立ち上がるように形成されている点で異なる。さらに樹脂導入部8が、第1端部60に設けられている点でも異なり、その樹脂導入部8の突状部8aの形状・構成も第1実施形態とは異なる。
これら突部7及び突片部7Aの先端部70,70Aは、底部3e側に配置される。スペーサ5に振動が加わった場合には、突部7と重なる位置に形成された第1端部60がシリンダヘッド4もしくはガスケット(不図示)に当接して、スペーサ5に過剰な振動が加わることを抑制することができる。
この場合、樹脂導入部8を接続部64に配しながら、例えば冷却水流路3のシリンダボア2,2間の壁面との間の距離を小さくした形状設計が可能となる。よって、シリンダボア2,2間に対応する冷却水の流量を制御することが可能なスペーサ5にする等、設計自由度が高まる。
以上のように凹部9の凹み量が突状部8aの突出量よりほぼ等しく設定されていれば、突状部8aが上述したようにシリンダヘッド4等と接触することがない。よって、一層、樹脂導入部8の形成位置により受けるスペーサ5の形状の制約が少なくなり、スペーサ5の設計自由度が高まる。また凹部9の開口部9aが深さ方向(d)にのみ形成されているから、例えば冷却水が凹部9を経由して冷却水流路3の幅方向に流れる等、意図しない流路が形成されることを抑制できることは第1実施形態と同様である。
スペーサ5Aの製造方法は、樹脂導入部8が突部7の先端部70ではなく、スペーサ本体6の第1端部60に形成されているため、射出された樹脂複合材が第1端部60側から導入される点が異なるが、円弧部63を含むスペーサ本体6を形成するキャビティの周方向に広がるように流動する点、樹脂複合材に含まれる強化繊維が周方向に配向された状態でスペーサ本体6が成形される点等、基本的には第1実施形態での説明と同様である。またスペーサ5Aを射出成形する際に、ゲート11から射出された樹脂複合材は、方向転換することなく、突部7を形成するキャビティに供給され易い点も第1実施形態と同様であるので、説明を割愛する。
1 シリンダブロック
3 冷却水流路
5,5A スペーサ
6 スペーサ本体
60 第1端部
61 第2端部
7,7A 突部
70 先端部
8 樹脂導入部
d 深さ方向
Claims (7)
- 内燃機関のシリンダブロックに設けられ開口部を有した冷却水流路内に配置されるとともに、合成樹脂からなるスペーサであって、
前記冷却水流路内に配置可能な形状とされたスペーサ本体と、前記スペーサ本体の前記開口部側に位置する第1端部もしくは前記スペーサ本体の前記冷却水流路の底部側に位置する第2端部のいずれか一方から、前記冷却水流路の深さ方向に突出するように設けられた突部と、該突部の先端部、前記第1端部及び前記第2端部のいずれかに設けられた射出成型時における樹脂材料の樹脂導入部とを備えていることを特徴とするスペーサ。 - 請求項1において、
前記樹脂導入部は前記冷却水流路の深さ方向に突出した突状部とされ、
前記突状部は、前記突状部が収まるように形成された凹部内に設けられていることを特徴とするスペーサ。 - 請求項2において、
前記凹部の凹み量は、前記突状部の突出量よりも大きいことを特徴とするスペーサ - 請求項2又は請求項3において、
前記凹部は、前記冷却水流路の深さ方向にのみ開口部を有していることを特徴とするスペーサ。 - 請求項1〜 4のいずれか1項において、
前記スペーサ本体は、前記シリンダブロックに設けられた複数のシリンダボアのそれぞれに対応する複数の円弧部と、隣り合う前記円弧部を接続する接続部と、を備え、
前記突部及び前記樹脂導入部は、前記接続部に設けられていることを特徴とするスペーサ。 - 内燃機関のシリンダブロックに設けられ開口部を有した冷却水流路内に配置されるとともに、合成樹脂からなるスペーサの製造方法であって、
前記スペーサは、前記シリンダブロックに設けられるシリンダボアに対応する円弧部を含むスペーサ本体と、前記スペーサ本体の前記開口部側に位置する第1端部もしくは前記スペーサ本体の前記冷却水流路の底部側に位置する第2端部のいずれか一方から前記冷却水流路の深さ方向に部分的に突出して設けられた突部と、前記第1端部もしくは前記第2端部のいずれか一方に設けられた射出成型時の樹脂導入部とを備え、
前記合成樹脂は、強化繊維を含む樹脂複合材であり、
前記樹脂導入部から前記樹脂複合材を導入することを特徴とするスペーサの製造方法。 - 請求項6に記載のスペーサの製造方法において、
前記樹脂導入部は、前記冷却水流路の深さ方向において、前記突部と重なる位置に設けられていることを特徴とするスペーサの製造方法。
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