JP2020065542A - 水溶性食物繊維含有炭酸飲料 - Google Patents
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難消化性デキストリンとは、トウモロコシやジャガイモなどの植物を原料として得られる澱粉を焙焼し、つづいてアミラーゼなどの澱粉消化酵素を用いて加水分解した後、該加水分解物から得られる水溶性の食物繊維であって、ヒトが消化しづらい難消化性成分をいう。
難消化性デキストリンには整腸作用、食後における血糖値の上昇に対する抑制作用、血中の中性脂肪やコレステロールに対する低下作用などの多くの機能性が報告されている。そのため、難消化性デキストリンを配合した飲食品が提案されている(例えば特許文献1〜3)。
本発明者は、水溶性食物繊維を含有する炭酸飲料を調製し、これをLED照明下においたところ、白熱灯や蛍光灯照射下においた場合では感じられなかった樹脂臭やカメムシ臭とも表現できる劣化臭(以下、単にLED劣化臭ともいう)が生じていることに気が付いた。このような劣化臭は本発明者によってはじめて確認されており、その解決方法については特許文献1などの従来技術では何ら示されていない。
また、LED劣化臭は、無糖炭酸飲料などの糖類を実質的に含有しない飲料においては、糖分を含有するような他の飲料と比較して、より摂取者に感じられやすい傾向がある。
[1] 水溶性食物繊維を含有する無糖炭酸飲料であって、
その含有量が0.1ppb以上であるシトラールと、
その含有量が5ppb以上である、ヌートカトン、バレンセンおよびリモネンからなる群から選択される一種または二種以上の化合物と、を含む無糖炭酸飲料。
[2] 容器詰めの無糖炭酸飲料である、[1]に記載の無糖炭酸飲料。
[3] 外観が透明である容器に収容されている、[2]に記載の無糖炭酸飲料。
[4] 水溶性食物繊維濃度が5g/L以上20g/L以下である、[1]から[3]のいずれか一つに記載の無糖炭酸飲料。
[5] 発光ダイオードにより500万Lux・hの条件で照射される、[1]から[4]のいずれか一つに記載の無糖炭酸飲料。
[6] 前記水溶性食物繊維として難消化性デキストリンを含有する、[1]から[5]のいずれか一つに記載の無糖炭酸飲料。
[7] シトラールとヌートカトン、バレンセンおよびリモネンからなる群から選択される一種または二種以上の化合物との比率が質量比で10:1〜1:10である、[1]から[6]のいずれか一つに記載の無糖炭酸飲料。
[8] 水溶性食物繊維を含有する容器詰めの無糖炭酸飲料において、
シトラールをその含有量を0.1ppb以上であるようにして含有させ、且つ
ヌートカトン、バレンセンおよびリモネンからなる群から選択される一種または二種以上の化合物をその含有量を5ppb以上として含有させることを含む、発光ダイオードによる照射により発生する劣化臭の抑制方法。
本実施形態は水溶性食物繊維を含有する無糖炭酸飲料に関する。該無糖炭酸飲料は、その含有量が0.1ppb以上であるシトラールと、その含有量が5ppb以上である、ヌートカトン、バレンセンおよびリモネンからなる群から選択される一種または二種以上の化合物とを含有する。
本明細書において、ガスボリュームとは、1気圧、0℃における容器詰飲料中に溶解している炭酸ガスの容積と飲料の容積比をいう。
ガスボリュームは、試料を20℃とした後、ガス内圧力計を取り付け、一度活栓を開いてガス抜き(スニフト)操作を行い、直ちに活栓を閉じてから激しく振とうし、圧力が一定になった時の値として得ることができる。
本実施形態の無糖炭酸飲料において含有される水溶性食物繊維は特に制限はなく、例えば難消化性デキストリン、イソマルトデキストリン、ペクチン、ポリデキストロース、アルギン酸、ラミナリン、グアーガム分解物、グルコマンナン、カラギーナン、フコイジンなどを挙げることができる。例えばこれらのうち1種または2種以上が本実施形態の無糖炭酸飲料に含有されるようにしてもよい。
このうち、本実施形態の無糖炭酸飲料の構成を適用することで他の水溶性食物繊維の場合よりもLED劣化臭を抑えることができるため、水溶性食物繊維として難消化性デキストリンが含有されることが好ましい。
難消化性デキストリンとしては例えば市販の難消化性デキストリンを用いることができる。また、難消化性デキストリンと共に他の成分も含む、組成物の態様で配合されるものでもよいほか、水素添加により製造される、難消化性デキストリンの還元物(還元難消化性デキストリン)であってもよい。
本実施形態において水溶性食物繊維の含有量は特に限定されず適宜設定できるが、LED劣化臭をより抑えることができるため、5g/L以上20g/L以下の濃度で含有されることが好ましく、より好ましくは10g/L以上15g/L以下である。
飲料中の水溶性食物繊維濃度は、例えば製造に用いられる原材料に基づき算出することができるほか、平成11年4月26日衛新第13号(「栄養表示基準における栄養成分等の分析方法等について」)に記載の食物繊維の分析方法である高速液体クロマトグラフ法(酵素−HPLC法)などにより測定することができる。
シトラール(C10H16O)は、ゲラニアールとネラール(立体異性体)という化合物として存在しており、これらの割合等は特に限定されない。シトラールは一般には精油に含まれる芳香成分の一つとして知られている。
本実施形態の無糖炭酸飲料は、シトラールを0.1ppb以上含有する。また、LED劣化臭をより抑えることができるため、1ppb以上が好ましく、より好ましくは5ppb以上である。
バレンセン(C15H24)は、セスキテルペン類に属する化合物であり、オレンジ等に香気成分として含まれる化合物である。
リモネン(C10H16)は、モノテルペン類に属する化合物であり、レモン等に香気成分として含まれる化合物である。
本実施形態の無糖炭酸飲料は、これら3種の化合物のうち少なくとも1種を含有し、その含有量は5ppb以上である。また、LED劣化臭をより抑えることができるため、15ppb以上が好ましく、より好ましくは25ppb以上である。
定量には絶対検量線法を用いることができる。例えば、測定サンプルについて3サンプルずつ準備し、その定量結果の平均値を測定結果とすることができる。準備した測定サンプルを含む20mLバイアル瓶を、70℃で10分間の加熱処理を施した後、当該バイアル瓶の気相部分にSUPELCO社製のSPMEファイバー(DVB/CAR/PDMS)を挿入し、5分間揮発成分を捕集する。このSPMEファイバーをGC/MSに設置し、300秒間焼成することにより、捕集した揮発成分を脱離することができる。
GC/MSの分析条件は以下の通りである。
カラム:アジレント・テクノロジー社製、DB−WAX 0.25mm×30m×0.25μm
オーブン温度:40℃で5分、その後3℃/分で180℃まで昇温。
キャリアガス:ヘリウム
注入口温度:230℃
注入方法:スプリットレス
使用される香料として、例えば、レモンフレーバー、ライムフレーバー、グレープフルーツフレーバー、オレンジフレーバー、スウィーティーフレーバー、シークァーサーフレーバー、ゆずフレーバー、みかんフレーバー、スダチフレーバーなどの柑橘類フレーバー、カリンフレーバー、シソフレーバー、アップルフレーバー、クリームフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー、ミルク系フレーバー、メロンフレーバー、ミントフレーバー、ハニーフレーバー、ヨーグルトフレーバー、ベリーフレーバー、グレープフレーバー、アセロラフレーバー、アボカドフレーバー、あんずフレーバー、イチゴフレーバー、いちじくフレーバー、柿フレーバー、キウイフレーバー、カシスフレーバー、クランベリーフレーバー、さくらんぼフレーバー、スイカフレーバー、すももフレーバー、ヤマモモフレーバー、ドリアンフレーバー、パイナップルフレーバー、パパイヤフレーバー、バナナフレーバー、ブルーベリーフレーバー、マスカットフレーバー、マンゴーフレーバー、桃フレーバー、洋ナシフレーバー、ライチフレーバー、ラズベリーフレーバー、ストロベリーフレーバー、ウメフレーバー、緑茶フレーバー、ウーロン茶フレーバー、紅茶フレーバー、ココアフレーバー、チョコレートフレーバー、コーヒーフレーバー、カシアフレーバー、ローズマリーフレーバー、モミノキフレーバー、マツブサフレーバー、モロヘイヤフレーバー、ヤクチフレーバー、ユーカリフレーバー、シナモンフレーバー、ジンジャーフレーバー、タイムフレーバー、ナツメグフレーバー、ハッカフレーバー、マタタビフレーバー、マチコフレーバー、マツフレーバー、マツオウジフレーバー、マッシュルームフレーバー、マツタケフレーバー、マメフレーバー、マリーゴールドフレーバー、バニラフレーバー、スパイス系フレーバー、ナッツ系フレーバー、洋酒系フレーバー、フラワー系フレーバー、野菜系フレーバー等が挙げられる。
本実施形態の無糖炭酸飲料に含まれるシトラールと、ヌートカトン、バレンセンおよびリモネンについて、シトラールが10ppm以下であると共にヌートカトン、バレンセンおよびリモネンのうち含有される少なくとも一種の化合物が30ppm以下である場合には、シトラール、ヌートカトン、バレンセンおよびリモネン以外に由来する香りをより感じられるようにしつつ、LED劣化臭も抑えられるため、好ましい。
本明細書において、透明とは720nmの吸光度が0.01以下である飲料をいう。また、無色透明とは、透けて見え、特定の色もなく、水と同様の外観である状態をいう。720nmの吸光度は、例えば、分光光度計を用い、光路長1cmとして測定することができる。
透明である飲料においてはLED劣化臭をマスキングできる成分の添加が他の飲料よりも限られる。そのため、本実施形態に係るシトラールとヌートカトン、バレンセンおよびリモネンのうち少なくとも一種についての含有量が適用され、LED劣化臭が抑えられていることが好ましい。
うことで製造することができる。水溶性食物繊維などの成分を添加する方法や順序などは特に限定されず、当行者が適宜設定できる。上記の原料水は、水自体のほか、含有されるその他の成分の溶液等であってもよい。
水溶性食物繊維は、単独で配合されても、また、他の含有成分と共に配合されるようにしてもよく、特に限定されない。
シトラール、ヌートカトン、バレンセンおよびリモネンについても、単独で配合されても、また、他の含有成分(例えば、上述の香料など)と共に配合されるようにしてもよい。
また、飲料中に二酸化炭素を溶存させる処理も特に限定されず、例えば、原料水に水溶性食物繊維を溶解させて得られる溶液に二酸化炭素を溶存させた水を混合して炭酸飲料とする方法(ポストミックス法)や、上述の溶液に二酸化炭素を直接噴き込んで溶解させる方法(プレミックス法)が挙げられる。
容器への封入方法などは特に限定されず、例えば常法に従って行うことができる。
容器も炭酸飲料に用いられる公知のものを適宜選択して用いることができ、素材や形状など特に限定されない。容器の具体例としては、例えば、透明又は半透明のビン、PETボトル等の透明又は半透明のプラスチック容器、スチール缶やアルミニウム缶等の金属缶などが挙げられ、このうちLED照明による影響を受けやすいと考えられる透明な容器に収容される容器詰飲料において本発明の構成が適用されることが好ましい。
その結果、水溶性食物繊維を含有する飲料について嗜好性を高めることができるので、商品価値のより高い飲料とすることができる。
また、本発明の一態様として、溶性食物繊維を含有する容器詰めの無糖炭酸飲料において、シトラールをその含有量を0.1ppb以上であるようにして含有させ、且つヌートカトン、バレンセンおよびリモネンからなる群から選択される一種または二種以上の化合物をその含有量を5ppb以上として含有させることを含む、発光ダイオード照明による照射により発生する劣化臭の抑制方法も提供することができる。
難消化性デキストリン(製品名:ファイバーソル2、松谷化学社製)を13g/Lの濃度で水に溶解させるとともに、シトラールと、ヌートカトン、バレンセンまたはリモネンとを表1に記載する濃度で水に溶解させた。次いでポストミックス法により炭酸ガスを含有させ、無色透明のペットボトル(500ml)に封入し、実施例、比較例の容器詰無糖炭酸飲料を得た(ガスボリューム:3.5)。
上記のようにして得られた実施例1〜3、比較例1〜4の飲料について、評価パネル5名による、おいしさおよびLED劣化臭(樹脂臭、カメムシ臭)の強さに関する評価を行った。試飲サンプルは4℃でパネルに提供した。各飲料については、官能試験に供する前にLEDによる照射(500万lx・h)または蛍光灯による照射(50万lx・h)を行った。また、上記4種の化合物を含有させない以外は同様の方法で調製した炭酸飲料を対照として用いた。
評価はLEDによる照射を行っていない対照の飲料についておいしさは4点、LED劣化臭は1点とした1〜7点の7段階評価で行った(おいしさ:最もおいしいものを7点とした。LED劣化臭:最もLED劣化臭が強く感じられるものを7点とした)。
結果を表1と図1、2に示す。
なお、蛍光灯による照射による場合、LED劣化臭の程度はLEDによる照射の場合より小さかった(図2)。
シトラールおよびヌートカトン、バレンセンまたはリモネンの濃度を表2〜4に記載する値とした以外は上記調製1と同様の方法で実施例、比較例の容器詰無糖炭酸飲料を得た(ガスボリューム:3.5)。
表2〜4に示す飲料について、試験例1と同様に、LEDによる照射を行った後に評価パネル5名によるおいしさおよびLED劣化臭に関する評価を行った。
結果を表2〜4および図3〜5に示す。
また、シトラールとヌートカトン、バレンセンまたはリモネンについて、モル比で10:1〜1:10の範囲とすることで、各化合物単独で添加した場合(表1に示すとおり、シトラール:3.4、リモネン:2.8、ヌートカトン:2.8、バレンセン:3.0)と比較しておいしさについても改善されていた。
Claims (8)
- 水溶性食物繊維を含有する無糖炭酸飲料であって、
その含有量が0.1ppb以上であるシトラールと、
その含有量が5ppb以上である、ヌートカトン、バレンセンおよびリモネンからなる群から選択される一種または二種以上の化合物と、を含む無糖炭酸飲料。 - 容器詰めの無糖炭酸飲料である、請求項1に記載の無糖炭酸飲料。
- 外観が透明である容器に収容されている、請求項2に記載の無糖炭酸飲料。
- 水溶性食物繊維濃度が5g/L以上20g/L以下である、請求項1から3のいずれか一つに記載の無糖炭酸飲料。
- 発光ダイオードにより500万Lux・hの条件で照射される、請求項1から4のいずれか一つに記載の無糖炭酸飲料。
- 前記水溶性食物繊維として難消化性デキストリンを含有する、請求項1から5のいずれか一つに記載の無糖炭酸飲料。
- シトラールとヌートカトン、バレンセンおよびリモネンからなる群から選択される一種または二種以上の化合物との比率が質量比で10:1〜1:10である、請求項1から6のいずれか一つに記載の無糖炭酸飲料。
- 水溶性食物繊維を含有する容器詰めの無糖炭酸飲料において、
シトラールをその含有量を0.1ppb以上であるようにして含有させ、且つ
ヌートカトン、バレンセンおよびリモネンからなる群から選択される一種または二種以上の化合物をその含有量を5ppb以上として含有させることを含む、発光ダイオードによる照射により発生する劣化臭の抑制方法。
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渡邊光: "水溶性食物繊維の新たな選択肢,イソマルトデキストリン", 月刊フードケミカル, vol. 32, no. 1, JPN6020043695, January 2016 (2016-01-01), pages 6 - 10, ISSN: 0004925464 * |
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