JP2020062749A - 積層体及び工作機械用安全ガラス - Google Patents

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Abstract

【課題】ガラス材として無機ガラスのみを用いた積層体よりも軽量化が可能であり、良好な耐貫通性を有し、生産性の高い積層体等を提供する。【解決手段】有機ガラス板Aと、無機ガラス板又は有機ガラス板Bとの間に中間膜が設けられてなる積層体であって、前記中間膜の60℃における貯蔵弾性率が0.1MPa〜1.5MPaである積層体等である。【選択図】なし

Description

本発明は、積層体及び工作機械用安全ガラスに関し、特に、合わせガラスに適用可能な積層体及びこれを用いた工作機械用安全ガラスに関する。
製造現場、土木工事現場、建築現場等では、飛来物から作業者の身を守るために安全ガラスが用いられている。安全ガラスは、上記以外にも、例えば、防弾ガラス、防犯ガラス、種々の車両に搭乗する乗員の安全を確保するための車載ガラス等としても用いられている。このような安全ガラスには、耐貫通性を有する合わせガラスが用いられている。
合わせガラスは一般的に、複数のガラスのそれぞれの間に、用途に応じた特性を有する樹脂膜が設けられてなる。上記のような耐貫通性を有する合わせガラスは、各種の飛来物が衝突してガラスが破損した場合でも、そのガラスの間に設けられた中間膜が衝撃を吸収して、飛来物の貫通を防止する。また、中間膜によって貼り合わされたガラスは、破損後もその中間膜によってほとんど飛散せず、貼着した状態を維持できる。
合わせガラスとしては、2枚の無機ガラス間にポリビニルブチラール(PVB)中間膜が設けられたものが知られている。2枚の無機ガラスを用いた合わせガラスは、耐衝撃性及び耐貫通性が良好で、しかも表面硬度が高く傷つき難い、耐溶剤性がよい、等の利点はあるが、肉厚が非常に厚くなり透明性が低下するうえに重量も非常に重くなり、特に、軽量性が要求される用途には適切でないことが多い。
そこで、軽量であって、耐衝撃性や耐貫通性に優れた合わせガラスとして、特許文献1では、無機ガラスとエチレン−酢酸ビニル共重合体を主成分とする中間膜とポリカーボネート板とがこの順に重ね合わされ、互いに接着されている合わせガラスが提案されている。
特開平11−35349号公報
しかし、特許文献1では、無機ガラスとエチレン−酢酸ビニル共重合体とを圧着する際にオートクレーブ内での処理が必要となり、製造コストが高くなってしまう。
以上から、本発明は上記に鑑みなされたものであり、ガラス材として無機ガラスのみを用いた積層体よりも軽量化が可能であり、良好な耐貫通性を有し、生産性の高い積層体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、下記本発明により当該課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は下記のとおりである。
[1] 有機ガラス板Aと、無機ガラス板又は有機ガラス板Bとの間に中間膜が設けられてなる積層体であって、前記中間膜の60℃における貯蔵弾性率が0.1MPa〜1.5MPaである積層体。
[2] 前記中間膜の20℃における引張強度が2MPa〜10MPaである[1]に記載の積層体。
[3] 前記有機ガラス板Aの厚さが0.5〜10mmである[1]又は[2]に記載の積層体。
[4] 前記中間膜の厚さが、0.1〜5mmである[1]〜[3]のいずれかに記載の積層体。
[5] 前記中間膜が(メタ)アクリル系樹脂を含有する[1]〜[4]のいずれかに記載の積層体。
[6] 前記有機ガラス板Aがポリカーボネート樹脂からなる[1]〜[5]のいずれかに記載の積層体。
[7] 上記[1]〜[6]のいずれかに記載の積層体を具備する工作機械用安全ガラス。
本発明によれば、ガラス材として無機ガラスのみを用いた積層体よりも軽量化が可能であり、良好な耐貫通性を有し、生産性の高い積層体を提供することができる。
[1.積層体]
本発明の積層体は、有機ガラス板Aと、無機ガラス板又は有機ガラス板Bの間に中間膜が設けられてなる。以下、本発明の実施形態(本実施形態)について詳細に説明する。
(中間膜)
中間膜の60℃における貯蔵弾性率は、0.1MPa〜1.5MPaであり、0.2MPa〜1.2MPaであることが好ましく、0.4MPa〜1.0MPaであることがより好ましく、0.4MPa〜0.8MPaであることがさらに好ましい。貯蔵弾性率が0.1MPa未満では中間膜の形状保持性がなくなり生産性が低下し、1.5MPaを超えると応力伝達が低くなり耐貫通性が低くなってしまう。
中間膜の60℃における貯蔵弾性率は、後述の実施例に記載の方法により求めることができる。
中間膜の20℃における引張強度は2MPa〜10MPaであることが好ましく、3MPa〜8MPaであることが好ましく、4MPa〜6MPaであることがより好ましい。引張強度が2MPa〜10MPaであると良好な形状保持性が得られ、かつ、良好な耐貫通性をも得られやすくなる。
中間膜の20℃における引張強度は、後述の実施例に記載の方法により求めることができる。
中間膜の厚さは、0.1mm〜10mmであることが好ましく、0.1mm〜5mmであることがより好ましく、0.5mm〜4.5mmであることがより好ましく、0.5mm〜3mmであることがさらに好ましい。0.1mm〜10mmであることで、中間膜の硬化に伴う反応熱を制御できるため、正常に硬化させることができる。このため、硬化後における中間膜の引張強度は前述の範囲内に安定的に制御することできる。
中間膜を構成する樹脂としては、60℃における貯蔵弾性率が0.1MPa〜1.5MPaとなる樹脂であれば特に限定されないが、なかでも(メタ)アクリル系樹脂を含有することが好ましい。中間膜とした際に、60℃における貯蔵弾性率が0.1MPa〜1.5MPaとなる樹脂であれば、後述の注入法により中間膜を形成することができるため、オートクレーブ等の加圧装置を必要とせず、低コストで積層体を作製することができる。つまり、生産性の高い積層体とすることができる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」の表記は、「アクリル」及び「メタクリル」の両者をまとめて示すものである。また、「(メタ)アクリレート」も同様に、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両者をまとめて示すものである。
(メタ)アクリル系樹脂は、少なくとも、(メタ)アクリルモノマー及び/又は(メタ)アクリルオリゴマーが硬化したものであるが、これらを含む樹脂組成物が硬化したものも含まれる。
(メタ)アクリルモノマー又はアクリルオリゴマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルのモノマー又はオリゴマー、及びこれらの誘導体、あるいはこれらの2種以上の混合物を用いることができる。例えば、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロシキエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロシキプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレン(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート等の変性(メタ)アクリレート類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル]プロパン、2−ヒドロキシ−1−(メタ)アクリロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロパン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリットトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリットテトラ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステルは、上述したものを単独で用いてもよく、複数組み合わせて用いてもよい。
上記のような(メタ)アクリル酸エステルのモノマー又はオリゴマーとともに、ゴム状重合体を混合した樹脂組成物から(メタ)アクリル樹脂を構成してもよい。
ゴム状重合体としては、アクリルゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン−イソプレン共重合体、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン共重合体等の共役ジエン系ゴム又はその水素添加物;エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体ゴム、ポリイソブチレンゴム等のオレフィン系ゴム;シリコンゴム;フッ素ゴム;ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー等の熱可塑エラストマー;等が挙げられる。
後述するような注入法により中間膜を形成することを考慮すると、比較的低分子量のポリメチルメタクリレート(PMMA)を、モノマーであるメチルメタクリレート(MMA)やグリシジルメタクリレートに溶解させて、さらに必要に応じて重合促進剤や重合開始剤等の添加物を加えた、いわゆるアクリルシラップを用いることが好ましい。
アクリルシラップとは、少なくとも(メタ)アクリル系モノマー及び/又は(メタ)アクリル系オリゴマーを含み、常温において液状で、重合開始剤等により硬化するものをいう。
重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,4,4−トリメチルベンジルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−イソブチレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシベンゾエート、クメンハイドロパーオキサイド、t−アミルクメンハイドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等の有機過酸化物が挙げられる。また、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独であるいは2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
重合開始剤は、樹脂成分(アクリルシラップを使用する場合は当該アクリルシラップ)100質量部に対して、0.1〜10質量部とすることが好ましい。
中間膜を構成する樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、促進剤、粘着付与樹脂、増粘剤、チキソ性付与剤、増量剤、充填剤等の添加剤を配合してもよい。
(有機ガラス板A,B)
有機ガラス板A,Bを構成する樹脂としては、透明性が高く、耐衝撃性に優れることから、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂等が挙げられ、なかでもポリカーボネート樹脂が好ましい。2枚の有機ガラス板で中間膜を挟む場合、これらの有機ガラスは同じ材質でも異なる材質でもよい。
有機ガラス板A,Bの厚みは0.5〜10mmであることが好ましく、0.7〜8mmであることがより好ましい。厚みが0.5〜10mmであることで、軽量化を図りながら良好な耐貫通性を得ることができる。またコストの面からも好ましい。
(無機ガラス板)
無機ガラス板は、一般に板ガラスや合わせガラスに用いられるものを使用することができ、例えば、ソーダ石灰ガラス、リン珪酸ガラス、ホウ珪酸ガラス、石英ガラス、カリ石灰ガラス、鉛アルカリガラス、アルミナ珪酸ガラス、バリウムガラス等が挙げられる。また、合わせガラスの強度の点からは、強化ガラスを用いることが好ましい。ガラス板の製造方法については、特に限定されず、一般的なフロート・ガラス法等が用いられる。
無機ガラス板の厚さについては軽量化の観点から、1mm〜5mmの範囲が好ましい。1mm以上であると成形性がよく、また加工時に割れにくい。一方、5mm以下であると合わせガラスを軽量化することができる。以上の点から、さらに1.5〜4mmの範囲が好ましい。
なお、少なくとも有機ガラス板B及び無機ガラスは、飛来物が衝突し得る側に設けられることが好ましい。
以上のような本発明の積層体は、後述の工作機械用安全ガラスに最適であるが、それ以外にも車両用の窓ガラス等や産業機械用安全ガラスにも好適である。
[2.積層体の製造方法]
本実施形態の積層体は例えば、種々の貼りあわせ方法により作製することができるが、特に中間膜がアクリル系樹脂を含有する場合は、アクリル注入法により作製することが好ましい。
アクリル注入法は、例えば、1枚のガラス板の一方の面の周囲にスペーサーとなる両面接着テープを貼り付ける。スペーサーを設置したガラスと同じ大きさのもう1枚のガラスを貼り合わせ、3辺を接着し、2枚のガラス板の間に空間を形成する。4辺のうち1辺のスペーサーは、片面に剥離紙がある状態にし、その位置を樹脂の注入孔とする。注入孔からガラス板の間の空間に、準備した樹脂を注入した後、注入孔の位置の剥離紙を取り除き、スペーサーをガラス板に貼り付けて注入孔を塞ぐ。その後、室温(23℃程度)で5〜10時間程度静置しておくことで、硬化反応が進行し積層体が製造される。
以上のようなアクリル注入法により形成される中間膜は、オートクレーブを用いるPVB膜の貼り合わせ法よりも、耐脱落破壊性が高い。一般に、破壊は界面から生じやすく、中間膜の内部からの破壊は、界面の場合よりも生じにくい。注入法によれば、接着面の小さい凹凸にも良好に追従するため、界面との接着性が高く、中間膜内から破壊が起こるまで破壊が生じることがほとんどない。
したがって、防曇試験若しくは耐湿試験でもアクリル注入法により得られる中間膜は、優れた効果を発揮する。また、中間膜を形成するためにオートクレーブを使用する必要がなく、常温で作製することができる点で生産性が高い。また、顔料による着色がしやすかったり、また、厚くできるといった利点もある。
[3.工作機械用安全ガラス]
本発明の積層体は、例えば、これを具備する工作機械用安全ガラスとして用いることが好ましい。
工作機械には加工状況を確認するための、のぞき窓(透光部)が付いている。こののぞき窓は、加工物の切粉による傷による劣化という過酷な条件に耐えなければならない。一方で、本発明の積層体は既述のとおり耐貫通性に優れるため、もしガラスが破損しても飛散被害を最小限に防ぐことができる。軽量化を図ることができるため、作業性を向上させることができる。そのため、マシニングセンタや旋盤といった工作機械用途に最適である。
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下に使用した材料を示す。
(1)アクリルシラップ:三井化学(株)製の商品名:アルマテックスDC500
(2)重合開始剤:クメンハイドロパーオキサイド
(3)促進剤:2−イミダゾリジンチオン
(4)有機ガラス板(有機ガラス板A)
タキロンシーアイ(株)製のポリカーボネート樹脂(商品名:PCMR61600)を用いた(厚さ:5mm)。
(5)無機ガラス板
旭硝子(株)製のフロート板ガラスを用いた(厚さ:5mm)。
[実施例1]
(中間膜形成用樹脂組成物の作製)
アクリルシラップ100質量部と重合開始剤0.75質量部と、促進剤0.1質量部を混合して、中間膜形成用樹脂組成物を作製した。
(積層体の作製)
無機ガラス板(500mm×1000mm)の一方の面の周囲にスペーサーとなる両面接着テープを貼り付けた。両面接着テープには、厚さが1mm、幅が6mmのものを用いた。スペーサーを設置した無機ガラス板と同じ大きさのもう1枚の有機ガラス板を貼り合わせ、3辺を接着し、2枚のガラス板の間に空間を作った。4辺のうち1辺のスペーサーは、片面に剥離紙がある状態にし、その位置を樹脂の注入孔とした。
注入孔からガラス板の間の空間に、中間膜形成用樹脂組成物を注入した後、注入孔の位置の剥離紙を取り除き、スペーサーをガラス板に貼り付けて注入孔を塞いだ。このとき、注入には、当該空間を挿通できる注射針を取り付けたシリンジを用いた。また、注入後は、注射針をスペーサー部分に刺して余分な空気を取り除いた。その後、23℃で8時間静置して積層体を作製した。
(中間膜の60℃における貯蔵弾性率の測定)
粘弾性測定装置(セイコーインスツルメンツ株式会社 型式DMS6100)を用いて、試験片(中間膜)の60℃における貯蔵弾性率を求めた。なお、測定条件は下記の通りとした。
<測定条件>
温度範囲:−30℃〜95℃
荷重:引張荷重
振動数:1Hz
なお測定試料は、作製した中間膜形成用樹脂組成物を厚さ2mmのシート状に硬化させた硬化物を幅6mm、長さ35mmに調整したものを用いた。
(中間膜の20℃における引張強度の測定)
小型強度試験機EZ−LX(株式会社島津製作所)を使用し、つかみ具間距離70mm、クロスヘッド速度500mm/min、試験温度20℃として試験を実施した。
なお試験片は、作製した中間膜形成用樹脂組成物を厚さ2mmのシート状に硬化させた硬化物を試験片打ち抜き機にてJIS K6251に規定されたダンベル状5号形試験片の形状に打ち抜いたものを用いた。
(耐貫通性試験:落錘衝撃試験)
EN12417 付属書Aを参考にし、加撃体後部に質量を加えることで加撃体全体の質量を8.75kgとして、任意の高さから自由落下により試験体中央部に衝突させた。試験体の寸法は500×500mmとし、4辺それぞれの端部より25mmの領域を試験体支持枠に挟み込むことで試験体を固定した。
試験体の温度管理は、試験直前まで23℃に保持した部屋にて4時間以上静置し、また、試験体支持枠の周辺温度を23℃に調整することで試験体の温度を一定に保った。試験体への加撃面はガラス面側とし、加撃回数は1回とした。初期の加撃体の衝撃エネルギーは450Jに設定し、試験後の評価で合格の場合は任意のステップで衝撃エネルギーを増大させ、不合格の場合は任意のステップで衝撃エネルギーを減少させて次の試験を行った。これを繰り返し行い、複数回合格し複数回不合格になった衝撃エネルギーの境界を耐衝撃エネルギー値とした。また、前述の要件に合わない結果であった場合では、合格した場合と合格しなかった場合が発生した衝撃エネルギーの値を採用し、その値未満を耐衝撃エネルギー値とした。
評価は、貫通クラック(一方の表面からもう一方の表面まで目に見えるクラック)若しくは貫通(材料の加撃体貫通)があった場合には不合格とし、座屈/ふくらみ(き裂のない恒久的な変形)若しくは初期クラック(表面のみに見えるクラック)があった場合には合格とした。結果を下記表1に示す。
[実施例2〜5]
有機ガラス板の厚さ、中間膜の厚さ等を下記表1のように変更した以外は実施例1と同様にして積層体を作製した。作製した積層体について実施例1と同様な評価を行った。結果を下記表1に示す。
[比較例1]
実施例1の積層体の代わりに、厚さ5mmの有機ガラス板について実施例1と同様な評価を行った。結果を下記表1に示す。
[比較例2]
樹脂組成物として、実施例1で用いた中間膜形成用樹脂組成物100質量部にさらにメタクリル酸メチル100質量部を混合した比較用の中間膜形成用樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様にして積層体を作製した。作製した積層体について実施例1と同様な評価を行った。結果を下記表1に示す。
Figure 2020062749

Claims (7)

  1. 有機ガラス板Aと、無機ガラス板又は有機ガラス板Bとの間に中間膜が設けられてなる積層体であって、
    前記中間膜の60℃における貯蔵弾性率が0.1MPa〜1.5MPaである積層体。
  2. 前記中間膜の20℃における引張強度が2MPa〜10MPaである請求項1に記載の積層体。
  3. 前記有機ガラス板Aの厚さが0.5〜10mmである請求項1又は2に記載の積層体。
  4. 前記中間膜の厚さが、0.1〜5mmである請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層体。
  5. 前記中間膜が(メタ)アクリル系樹脂を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層体。
  6. 前記有機ガラス板Aがポリカーボネート樹脂からなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層体。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層体を具備する工作機械用安全ガラス。



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