ところで、住宅設備展示施設は、住宅の新築のみならず、住宅の改修時に新しい住宅設備に交換する場合にも参考にする場合がある。しかし、住宅設備展示施設は、複数の住宅設備の中からどの設備を採用するかを見極めるための施設であるので、改修の前後を比較することができない。また、住宅設備展示施設は、一般の住宅に比べて面積などの制約が少ないので、収まりや居住空間の面積などを考慮することなく性能の高い建具やトイレなどの住宅設備が展示されることとなるので、実際の改修後の住宅がイメージしにくい問題がある。さらに、リノベーションと呼ばれる居住者のライフスタイルの変化に合わせた間取りの変更などを伴う改修の場合には、一部の住宅設備のみを見比べても改修後の住宅がイメージしにくい問題がある。
そこで、本発明は改修前後の住宅を比較して体感することができる比較展示施設であり、実際の改修後の住宅がイメージしやすい比較展示施設を提供することを目的とする。
本発明の比較展示施設は、住宅の既存屋内空間を再現した第一屋内再現空間と、前記既存屋内空間を改修した住宅の改修屋内空間を再現した第二屋内再現空間と、を備える比較展示施設であって、前記第一屋内再現空間は、間仕切壁によって隔てられる複数の居住空間を有し、前記第二屋内再現空間は、前記第一屋内再現空間に設けられる前記間仕切壁の少なくとも一部を取り除いた間取りであることを特徴としている。
本発明の比較展示施設は、前記第二屋内再現空間の前記間仕切壁が取り除かれた位置に独立構造柱が配置されることを特徴としている。
本発明の比較展示施設は、前記第一屋内再現空間は床面に所定の段差を有するとともに、前記第二屋内再現空間は前記所定の段差に対応する位置に段差が設けられないことを特徴としている。
本発明の比較展示施設は、前記第一屋内再現空間及び前記第二屋内再現空間は、対応する位置にそれぞれ開口部を有しており、前記第一屋内再現空間の開口部よりも前記第二屋内再現空間の開口部が断熱性の高い建具を有することを特徴としている。
本発明の比較展示施設は、前記第二屋内再現空間は、前記第一屋内再現空間の既存床面及び既存内壁面の屋内側に新設内壁面材及び新設床面材を敷設した前記改修屋内空間を再現したものであり、前記第一屋内再現空間は、前記既存床面又は前記既存内壁面に傷、汚れ、又は変色を含むエイジング加工が施されることを特徴としている。
本発明の比較展示施設は、前記第二屋内再現空間は、前記新設内壁面材又は前記新設床面材の一部が切り取られた露出部が形成されており、床下又は壁内が視認可能となっていることを特徴としている。
本発明の比較展示施設は、前記露出部を露出及び隠蔽可能な室内装飾品を更に備えることを特徴としている。
本発明の比較展示施設は、前記露出部は、前記新設床面材の一部が切り取られた床下露出部を含み、前記床下露出部は、前記既存床面も一部が切り取られており、少なくとも前記既存床面と、床下に配置された床部追加断熱材と、が視認可能に露出されることを特徴としている。
本発明の比較展示施設は、前記露出部は、前記新設内壁面材の一部が切り取られた壁内露出部を含み、前記壁内露出部は、前記既存内壁面と前記新設内壁面材との間に配置される壁部追加断熱材、及び前記既存内壁面が視認可能に露出されることを特徴としている。
本発明の比較展示施設は、前記第二屋内再現空間は、天井面に天井裏を視認可能な天井露出部が形成されており、前記天井露出部は、前記既存屋内空間の天井裏に設けられる断熱材と、前記改修屋内空間において追加された天井裏追加断熱材とが判別可能な態様で視認可能に露出されることを特徴としている。
本発明の比較展示施設は、前記第一屋内再現空間の見学経路から前記第二屋内再現空間を隠蔽する第一隠蔽部と、リフォーム前後の浴室、サニタリールーム、又はトイレ室が比較展示される水廻り展示空間と、前記第一屋内再現空間の見学経路から前記水廻り展示空間を隠蔽する第二隠蔽部と、を備えることを特徴としている。
本発明の比較展示施設によると、住宅の既存屋内空間を再現した第一屋内再現空間が、住宅の改修屋内空間を再現した第二屋内再現空間と、共に展示されるので、第一屋内再現空間と第二屋内再現空間とを比較することで、改修前後の屋内空間の差を認識することができる。そして、第一屋内再現空間が、間仕切壁によって隔てられる複数の居住空間を有し、第二屋内再現空間が、第一屋内再現空間に設けられる間仕切壁の少なくとも一部を取り除いた間取りであることから、2以上に隔てられた居住空間の間仕切壁を取り除いて1つの大きな居住空間として改修した場合の印象や居住性を体感することができる。
本発明の比較展示施設によると、第二屋内再現空間の第一屋内再現空間における間仕切壁が取り除かれた位置に対応する位置に独立構造柱が配置されているので、見学者に、改修する際に住宅の構造上の制約があることを理解させることができる。また、間仕切壁内に独立構造柱が配置されている場合であっても間仕切壁を取り除く改修を行うことができ、しかも住宅の強度を低下させるものではないことを理解させることができる。
本発明の比較展示施設によると、所定の段差が第一屋内再現空間の床面に設けられている。また、第一屋内再現空間における所定の段差が配置された位置に対応する位置の第二屋内再現空間には段差が設けられていない。したがって、改修によって段差が解消したことを理解させることができる。改修前の所定の段差を有する第一屋内再現空間があることで、単に段差のない床面を展示するよりも実際に存在した段差が解消したことをより理解させることができる。
本発明の比較展示施設によると、断熱性の高い開口部と比較的断熱性の低い開口部をそれぞれの屋内再現空間の中に配置しているので、開口部の性能の変化と当該性能の変化が改修前後の屋内空間に与える影響とを見学者に理解させることができる。
本発明の比較展示施設によると、第二屋内再現空間は、第一屋内再現空間の既存床面及び既存内壁面の屋内側に新設内壁面材及び新設床面材を敷設した改修屋内空間を再現したものであり、第一屋内再現空間は、既存床面又は既存内壁面に傷、汚れ、又は変色を含むエイジング加工が施されているので、見学者は、第一屋内再現空間が長期間居住された既存屋内空間を再現したものであることを理解することができる。また、第二屋内再現空間を見学することで、改修によって内壁面材及び床面材が真新しいものとなったことを理解することができる。このように、エイジング加工した既存内壁面材及び既存床面材を見学させることで、単に新しい新設内壁面材及び新設床面材を見学させる場合よりも、改修の効果をより強く印象付けることができる。
本発明の比較展示施設によると、第二屋内再現空間は、新設内壁面材又は新設床面材の一部が切り取られた露出部が形成されており、床下又は壁内が視認可能となっているので、新しくなった改修屋内空間を見学しつつ、床下や壁内を見学することで、具体的にどのように改修したのかを見学者に理解させることができる。
本発明の比較展示施設によると、室内装飾品で露出部を隠蔽することで、露出部を自然に隠すことができ、露出部のない改修屋内空間と同様の居住空間を見学者に見せることができ、その後、室内装飾品を取り除くことで露出部を露出させて、どのように改修したのかを見せることで、最初から露出部を見せた場合よりもよりインパクトのある演出を行うことができる。
本発明の比較展示施設によると、床下露出部が、床部追加断熱材、及び既存床面を視認可能に露出されるものであるので、床下露出部を見学することで、改修が床部追加断熱材の追加を含むこと、既存床面の上に新設床面材を配置したものであることを理解することができ、床面の断熱性が向上していることを認識することができる。
本発明の比較展示施設によると、壁内露出部が、壁部追加断熱材、及び既存内壁面を視認可能に露出されるものであるので、壁内露出部を見学することで、改修が既存内壁面の屋外側に壁部追加断熱材を設置し、その屋内側に新設内壁面財を配置したものであることを理解することができ、壁面の断熱性が向上していることを認識することができる。
本発明の比較展示施設によると、第二屋内再現空間の天井面に天井裏を視認可能な天井露出部が形成されており、既存屋内空間の天井裏に設けられる断熱材と、改修により追加された天井裏追加断熱材とが判別可能な態様で視認可能に露出されるので、見学者は改修された天井面の断熱性が向上していることを認識することができる。
本発明の比較展示施設によると、第一屋内再現空間を見学する際に、第一隠蔽部及び第二隠蔽部によって、第二屋内再現空間及び水廻り展示空間を隠蔽することができるので、見学者はまず、改修前の既存屋内空間を模した第一屋内再現空間を見学して改修前の既存屋内空間の経年劣化やライフスタイルと間取りの不整合を体感した後、改修後の第二屋内再現空間及び水廻り展示空間を見学できるので、よりインパクトが有り、改修に対する期待感を持った展示をすることができる。
以下、本発明に係る比較展示施設1の実施形態について各図を参照しつつ説明する。本実施形態の比較展示施設1は、改修前後の住宅の屋内空間を再現した比較展示施設1である。まず、比較展示施設1の概略構成を説明する。比較展示施設1は、図1に示すように、入り口11を入って右側に住宅の既存屋内空間2を再現した第一屋内再現空間3を有し、入り口11を入って左側に既存屋内空間2を改修した改修屋内空間5を再現した第二屋内再現空間6を有する。
第一屋内再現空間3と第二屋内再現空間6との間には、両端が第一屋内再現空間3と第二屋内再現空間6とに接続されており、第一屋内再現空間3と第二屋内再現空間6とを行き来可能な案内路10が設けられている。また、案内路10の幅方向の一方側には改修前の既存屋内空間2の浴室101、サニタリールーム102、トイレ室103、及び改修後の改修屋内空間5の浴室104、サニタリールーム105、トイレ室106が並べて配置された水廻り展示空間8が形成されている。案内路10の幅方向の他方側には、入り口11から第一屋内再現空間3に入るためのアプローチ12が設けられている。アプローチ12は、屋外を模した空間であり、第一屋内再現空間3及び第二屋内再現空間6の外壁に挟まれるように配置されている。アプローチ12は、階段14とスロープ13とを有し、入り口11の床面よりも高い位置の第一屋内再現空間3に見学者を導く。アプローチ12と案内路10との間には独立壁15が設けられており、アプローチ12と案内路10とを隔てるとともに、独立壁15の案内路10側には見学者に対して図や文章で記載された比較展示施設1の説明ボードが掲示されている。
なお、本発明における第一屋内再現空間3の見学経路は、本実施形態においては、アプローチ12と案内路10とを含む。
次に、第一屋内再現空間3が再現する既存屋内空間2、及び第二屋内再現空間6が再現する改修屋内空間5について説明し、比較展示施設1が展示する改修の内容を説明する。図2は、既存屋内空間2の間取り図であり、図3は改修屋内空間5の間取り図である。本実施形態における住宅の改修は、住宅の1階の間取りの変更、浴室101・サニタリールーム102・トイレ室103の設備交換を含めた改修、キッチンの設備交換を含めた改修、玄関室20の間取りの変更などを含み、居住者の成長、独立・結婚・出産などによる居住者の増加又は減少、その他の居住者のライフステージの変化に対応して行われるリノベーションと呼ばれる改修である。
既存屋内空間2は、改修前の住宅の1階を想定した屋内空間であり、新築時から内装の大きな改修を行っていない築30年の住宅を想定したものである。したがって、住宅の内装は30年前に主流であった仕様であることが好ましい。既存屋内空間2は、図2に示すように、南東角に土間及びホールからなる玄関室20を有する。玄関室20の土間には和室22との境界の間仕切壁21に沿って下駄箱23が設けられている。玄関ホールの北側には2階に上がる階段24が設けられており、階段下収納25が玄関ホール側に開放可能に設けられている。
玄関室20の西側には、和室22が設けられ、さらに和室22の西側にリビング・ダイニングルーム26が設けられている。和室22は畳敷きで東側の間仕切壁21に沿って床の間27、仏間28、押入れ29が設けられている。和室22の南側には、引き違い窓の開口部30が形成されている。また、リビング・ダイニングルーム26は、南側及び西側の外壁にそれぞれ引き違い窓の開口部30が形成されている。既存屋内空間2の開口部30の窓ガラスは比較的断熱性能が低い単層窓ガラスである。リビング・ダイニングルーム26には、ソファ31、テレビ32、センターテーブル33、ダイニングテーブル34などの家具が配置されている。リビング・ダイニングルーム26の床面は木質フローリングである。リビング・ダイニングルーム26と和室22との間は襖35によって開閉可能に隔てられている。和室22の畳床はリビング・ダイニングルーム26の床面よりも高く、襖35の下端に設けられる敷居36とリビング・ダイニングルーム26の床面との間に段差が設けられている。
階段下収納25の西側には、トイレ室103、サニタリールーム102、浴室101が並んで配置されており、和室22とこれらのトイレ室103、サニタリールーム102、及び浴室101との間には廊下37が設けられている。廊下37の最も西側には、リビング・ダイニングルーム26の出入り口となる屋内ドア38が設けられている。リビング・ダイニングルーム26の北側で、浴室101の西側にはキッチン39が設けられている。キッチン39は北側の内壁面に沿ってガスコンロ40、調理作業台41、シンク42、及び冷蔵庫43が並べて配置されている。キッチン39とリビング・ダイニングルーム26の間には間仕切壁21が形成されており、間仕切壁21に沿って食器棚44が配置されている。キッチン39の北側には引き違い窓の開口部30が形成されている。
改修屋内空間5は、上述の既存屋内空間2を改修して形成した屋内空間である。図3に示すように、南東角に土間及びホールからなる玄関室51を有する。また、玄関室51に隣接して西側にシューズクローク52が設けられている。改修屋内空間5における玄関室51の間口方向の長さは、既存屋内空間2の玄関室20の間口方向の長さよりも幅狭となることで、シューズクローク52を設置するスペースを確保している。また、既存屋内空間2における和室22の押入れ29があった部分の東側部分のスペースも、改修屋内空間5においてはシューズクローク52として取り込んでおり、玄関室51の収納量を増やしている。なお、改修屋内空間5においては、シューズクローク52が設けられたことで、既存屋内空間2の玄関室20に設けられていた下駄箱23が取り除かれている。改修屋内空間5の玄関ホールの北側には、既存屋内空間2と同様に2階に上がる階段53が設けられており、階段下収納54が玄関ホール側に開放可能に設けられている。
改修屋内空間5の階段下収納の西側には、既存屋内空間2の配置と同様に、トイレ室106、サニタリールーム105、浴室104が並んで配置されている。これらの改修屋内空間5のトイレ室106、サニタリールーム105及び浴室104は、既存屋内空間2のものからそれぞれ便器、洗面台、ユニットバスなどの設備が交換されている。
改修屋内空間5では、玄関室51の西側のシューズクローク52の西側、サニタリールーム105及び浴室104の南側と西側は、リビング・ダイニング・キッチン55が形成されている。既存屋内空間2において、間仕切壁21及び襖35によって隔てられて、リビング・ダイニングルーム26、和室22、及びキッチン39の3つの空間に分けられていたスペースから間仕切壁21や襖35などを取り除いて、1つの大きな空間であるリビング・ダイニング・キッチン55が形成されている。既存屋内空間2の和室22の北西角の間仕切壁21の内部には、構造上とり除くことができない鋼製構造柱58が設けられており、改修屋内空間5は、鋼製構造柱58の回りに内装化粧材57を固定した独立構造柱56を配置している。
改修屋内空間5のリビング・ダイニング・キッチン55は、既存屋内空間2のリビング・ダイニングルーム26と和室22との間に配置されていた敷居36が取り除かれるとともに、畳が取り除かれて、段差が解消されており、リビング・ダイニング・キッチン55の床面は、全体が面一なフローリング床となっている。なお、改修屋内空間5の床面は既存屋内空間2の既存床面59の下に、床部追加断熱材60を敷設するとともに、既存床面59の一部には床暖房パネル61を配置して、その上に新設床面材62を敷設することで、断熱性能や居心地を向上させつつ、経年劣化した床面を新しくしている。また、改修屋内空間5の内壁面は、既存屋内空間2の既存内壁面70の屋内側に縦横の下地枠71を設けて壁部追加断熱材72を追加し、断熱性能を高めた上で、新設内壁面材73を固定することで、経年劣化した内壁面を新しくしている。
改修屋内空間5のリビング・ダイニング・キッチン55は、既存屋内空間2の押入れ29の西側部分及び仏間28が設けられていたスペースがテレビ台74を設置するスペースとなっている。改修屋内空間5のリビング・ダイニング・キッチン55の南側には2つの引き違い窓の開口部75a,75bが設けられており、西側及び北側にも引き違い窓の開口部75c,75dがもうけられている。既存屋内空間2の和室22の南側とリビング・ダイニングルーム26の南側及び西側とに形成されていた引き違い窓の開口部30は、改修屋内空間5においては、当該開口部30のサッシ枠の面内方向に新設サッシ枠を配置して、断熱性を高めたペアガラスの窓ガラスを配置したサッシカバー工法によって改修している。改修屋内空間5のリビング・ダイニング・キッチン55は、既存屋内空間2の和室22が設けられたスペース及び廊下37が形成されていたスペースがリビングエリアとなって、ソファ76やテレビ88などが配置され、既存屋内空間2のリビング・ダイニングルーム26及びキッチン39が形成されていたスペースが、ダイニングエリア及びキッチンエリアとなって、ダイニングテーブル77やアイランド型のシステムキッチン78が配置されている。改修屋内空間5の西側の内壁面に沿って調理器具や食器、食品を収納する収納棚79が形成されている。西側の内壁面の南端には小さな作業机80が配置され、西側の内壁面の北端には冷蔵庫81が配置されている。
第一屋内再現空間3は、図1に示すように、比較展示施設1の正面からみて右側に配置される屋内を再現した空間であり、既存屋内空間2を再現した空間である。第一屋内再現空間3は、図4に示すように、既存屋内空間2の和室22、廊下37、リビング・ダイニングルーム26、キッチン39を再現している。第一屋内再現空間3は、既存屋内空間2の内、図2の破線で示す領域を再現している。なお、図2においては、図示の都合上、既存内壁面70よりも僅かに屋内側に破線を示しているが、第一屋内再現空間3は既存内壁面70も含んで再現している。既存屋内空間2の間取りや配置される家具などは既存屋内空間2と同様のものであるので、同一の符号を付して具体的な説明は省略する。なお、本発明における第一屋内再現空間3の間仕切壁21で隔てられた複数の居住空間は、本実施形態においては、和室22、リビング・ダイニングルーム26、及びキッチン39に相当する。
第一屋内再現空間3は、本実施形態では、比較展示施設1のスペースの都合上、押入れ29、仏間28、及び床の間27の奥行きが短く形成されている。本実施形態の比較展示施設1では、見学者はリビング・ダイニングルーム26に立って、和室22を眺めて見学するように構成されているため、和室22の奥側に配置された押入れ29、仏間28、床の間27が実際の既存屋内空間2よりも短くても違和感なく見学者に見学させることができる。第一屋内再現空間3の和室22は、リビング・ダイニングルーム26よりも高く、敷居36とリビング・ダイニングルーム26との間に段差が形成されている。また、リビング・ダイニングルーム26に設けられた単層窓ガラスの開口部30の屋外側は、屋外を模した写真などが配置されており、実際には屋外の庭などは再現されていない。
第一屋内再現空間3は、屋内と屋外とを隔てる外壁の屋内側の面である内壁面を模した既存内壁面70、及びリビング・ダイニングルーム26のフローリング床を模した既存床面59、既存屋内空間2の天井面を模した既存天井面にエイジング加工が行われている。エイジング加工は、既存屋内空間2に30年間居住した場合に生じる傷、汚れ、変色などを意図的につけることで、見学者に第一屋内再現空間3が30年経過した空間であることを理解させるものである。このようなエイジング加工は、例えば和室22の畳床の変色や擦れ、キッチン39の調理作業台41やシンク42の傷や汚れ、様々な家具の汚れや変色も再現している。
また、第一屋内再現空間3の外側のアプローチ12に対面する面は、第一屋内再現空間3を有する改修前の住宅の外壁面83を模して形成されている。具体的には、30年前の仕様の外壁面83を模しており、経年の汚れや変色をエイジング加工により再現している。また、このキッチン39とアプローチ12との間の外壁面83にはひき違い窓の開口部30が形成されており、変色やさびなどのエイジング加工を施した30年までの使用の単層窓ガラスの窓サッシが取り付けられている。
このように第一屋内再現空間3の各所がエイジング加工されていることで、見学者に第一屋内再現空間3が築30年経過した住宅の屋内空間であることを印象付けることができ、後から見学する改修屋内空間5を再現した第二屋内再現空間6に対する期待感を高めることができる。
第一屋内再現空間3には、リビング・ダイニングルーム26とキッチン39との間に形成された間仕切壁21のリビング・ダイニングルーム26側に映像を投影するプロジェクタ85が設けられており、見学者に既存屋内空間2の居住者のライフステージや第一屋内再現空間3の問題点などを説明する映像が投影される。
第二屋内再現空間6は、図1に示すように、比較展示施設1の入り口11を入って左側に配置され、改修屋内空間5を再現した空間である。第二屋内再現空間6は、改修屋内空間5のリビング・ダイニング・キッチン55を再現している。第一屋内再現空間3と第二屋内再現空間6は改修前後の同じ範囲のスペースを再現している。第二屋内再現空間6は、改修屋内空間5の内、図3の破線で示す領域を再現している。なお、図3においては、図示の都合上、新設内壁面材73よりも僅かに屋内側に破線を示しているが、第二屋内再現空間6は新設内壁面材73も含んで再現している。第二屋内再現空間6の間取りや配置される家具などは改修屋内空間5と同様のものであるので、同一の符号を付して具体的な説明は省略する。
第一屋内再現空間3へのアプローチ12から植栽領域16及びデッキ床17を挟んで第二屋内再現空間6が設けられている。デッキ床17は、第一屋内再現空間3と第二屋内再現空間6とを接続する案内路10と面一に案内路10の第二屋内再現空間6側の端部から折れ曲がって形成されており、第二屋内再現空間6の外壁面84及び開口部75bを見学可能に形成されている。デッキ床17に沿うように配置されている外壁面84は、既存屋内空間2を有する住宅の外壁面83を再塗装した外壁面84を模したものである。また、デッキ床17に対面する位置に配置された開口部75bは、サッシカバー工法によってサッシ枠を新調し、ペアガラスの窓ガラスに交換している。このように、第一屋内再現空間3では単層ガラスのガラス窓であった開口部30がペアガラスに変更されていることにより、改修前後で、開口部30の断熱性能の上がり改修前後の屋内空間がより居心地のよい空間となっていることを見学者に理解させることができる。
第二屋内再現空間6の外壁面84とデッキ床17との間には第一屋内再現空間3のアプローチ12側からの視線を遮る第一隠蔽部86が設けられている。第一隠蔽部86は、例えば電動ロールスクリーンであり、第一屋内再現空間3を見学中の見学者から第二屋内再現空間6を隠蔽して、改修後の屋内空間への期待感を高める演出を行うものである。第一隠蔽部86は電動ロールスクリーンに限定されるものではなく、見学者に違和感を感じさせることなく第二屋内再現空間6を隠蔽することができ、且つ、第二屋内再現空間6の隠蔽及び露出を操作可能な構成であればよい。
第二屋内再現空間6は、図5に示すように、改修屋内空間5のリビング・ダイニング・キッチン55の南側に設けられた2つの開口部75a,75bの内、一方の開口部75aが設けられずに、案内路10の突き当たりに設けられた第二屋内再現空間6の出入口87となっている。第二屋内再現空間6は、内壁面に沿って設けられたテレビ台74に載置されるテレビ88、ソファ76、ダイニングテーブル77、アイランド型のシステムキッチン78などが配置されている。テレビ88には、第二屋内再現空間6の改修の内容などを説明する映像が流されて、例えばソファ76に腰掛けた見学者に改修の内容を理解させることができる。
第二屋内再現空間6の床面は全面がフローリングの床面であり、既存床面59の下に床部追加断熱材60を設置し、既存床面59の上の一部に床暖房パネル61を配置し、その上に新設床面材62を敷設して形成される床面を模したものである。第二屋内再現空間6の床面には段差が設けられていない。したがって、見学者に第一屋内再現空間3には存在した段差が改修によって解消したことを理解させることができる。
第二屋内再現空間6のテレビ88とソファ76との間の床面には、新設床面材62の一部を切り取って床下が視認可能に構成された床下露出部63が形成されている。床下露出部63は、図6に示すように、新設床面材62を矩形に切り取って床下を露出させている。新設床面材62を切り取った部分には透明なアクリル板64を覆って見学者が床下に落ちることを防止している。
床下露出部63は、既存床面59の上に例えば温水を巡らせて床を暖める床暖房パネル61が配置されている。既存床面59及び既存床面59の下に設置されている既存床下地板65も一部が切り取られており、根太66や大引き67などの床組みも視認可能となっている。根太66の間には改修前から設置されていた既存床下断熱材68が配置されている。既存床下断熱材68は、本来全ての根太66の間に配置されるものであるが、床下露出部63においては、見学者に既存床下断熱材68の下側に配置された床部追加断熱材60などを視認することができるように、既存床下断熱材68を一部にのみ設けている。また、大引き67の上には新たに追加した床部追加断熱材60が配置されている。また、根太66の下で大引き67の間にも床部追加断熱材60が新たに追加配置されている。
床下露出部63の上には室内装飾品としてのラグ69が配置されており、床下露出部63を隠蔽するとともに、当該ラグ69を取り除くと床下露出部63を露出させることができる。このように床下露出部63は違和感なく室内に配置することができる室内装飾品によって隠蔽されることで、見学者は床下露出部63を意識することなく、第二屋内再現空間6の全体的な印象を感じることができ、その後、床下露出部63を露出させることで、床面の改修によって居心地が向上していることを印象深く認識することができる。
床下露出部63は、見学者に改修前後の床下の状態を理解させる為に改修屋内空間5の床下を模して設けたものであり、床下露出部63以外の第二屋内再現空間6の床下の構造は、見学者に見えない部分であるので、改修屋内空間5の床下を再現する意味がなく、床下より簡単な床組みのみで形成されていても良い。
第二屋内再現空間6の内壁面は、既存内壁面70の屋内側に縦横の下地枠71を設けて、その間に壁部追加断熱材72を設置し、その屋内側に新設内壁面材73を設けるた改修屋内空間5の内壁面を模したものである。第二屋内再現空間6の内壁面には、図7に示すように、新設内壁面材73の一部を切り取って、壁内を露出させた壁内露出部89が形成されている。壁内露出部89は、その屋内側を透明なアクリル板91で覆っており、壁内露出部89の壁内に形成されている壁部追加断熱材72及び既存内壁面70は一部を切り欠いて、既存内壁面70の壁内側に設けられた既存壁内断熱材90を露出させている。壁内露出部89の上部には室内装飾品としてのロールスクリーン92が形成されており、図7及び図8に示すように、壁内露出部89が露出及び隠蔽可能となっている。
このように室内装飾品としてのロールスクリーン92によって壁内露出部89を隠蔽するので、見学者が違和感を持つことなく壁内露出部89を隠蔽することができ、当該ロールスクリーン92を上げることによって、壁内露出部89を露出させることで改修の内容や改修によって断熱性が高まったことを見学者に印象付けることができる。
壁内露出部89は、見学者に改修前後の壁内の状態を理解させる為に改修屋内空間5の内壁の内側を模して設けたものであり、壁内露出部89以外の第二屋内再現空間6の内壁と外壁との間の構造は、見学者に見えない部分であるので、改修屋内空間5の内壁の内側を再現する意味がないので、簡単な下地の上に新設内壁面材73を設けるものであってもよい。
第二屋内再現空間6は、天井面94を切り欠いて、天井裏を視認可能な天井露出部93が形成されている。天井露出部93は、図9に示すように、平行に架設される鋼製野縁95と鋼製野縁95の上に設けられる既存天井断熱材96と、既存天井断熱材96の上に敷設される天井裏追加断熱材97とが見学者に視認可能に露出するによう、既存天井断熱材96及び天井裏追加断熱材97の一部を取り除いた構成である。天井露出部93の一部は既存天井断熱材96のみを配置して、既存屋内空間2の天井裏を再現し、天井露出部93の別の部分に、既存天井断熱材96に追加して天井裏追加断熱材97を配置して改修屋内空間5の天井裏を再現しており、既存天井断熱材96と天井裏追加断熱材97とを判別可能に表示することで見学者に視認可能としている。天井露出部93は透明なアクリル板98で覆っている。なお、天井露出部93は室内装飾品で隠蔽されずに、常に下方に向けて露出されている。天井露出部93は見学者が見上げれば視認可能であるが、天井部分であるので隠蔽しなくても第二屋内再現空間6の印象が大きく変わることはない。なお、天井露出部93も例えばスクリーンシャッタのような室内装飾品で隠蔽してもよい。
第二屋内再現空間6の中央に近い位置に独立構造柱56が設けられている。独立構造柱56が設けられている位置は、第一屋内再現空間3において間仕切壁21が設けられている位置に対応する位置である。独立構造柱56は、図10に示すように、構造耐力を負担する鋼製構造柱58の回りに内装化粧材57を固定して形成している。独立構造柱56は第二屋内再現空間6の出入口87と反対側の面の一部の内装化粧材57が取り除かれており、独立構造柱56の内部の鋼製構造柱58が露出している。
このように、独立構造柱56が設けられていることで、見学者に改修に際して取り除くことができない鋼製構造柱58を、屋内空間の意匠性を損なうことなく配置することができることを説明することができ、独立構造柱56の内部の鋼製構造柱58の一部が露出していることで、見学者に構造を支える鋼製構造柱58の回りに内装化粧材57を固定したものであることを理解させることができる。出入口87と反対側の内装化粧材57の一部が取り除かれる構成であることで、見学者が出入口87から第二屋内再現空間6に入って見学している当初は、内装化粧材57が取り除かれた部分は見えず、意匠性の高い独立構造柱56を見せることができ、独立構造柱56の説明をする際に初めて独立構造柱56の内部を見学者に見せて説明するので、より印象深い演出とすることができる。なお、本実施形態では、改修する住宅が鉄骨住宅を想定しているので、独立構造柱56の内部に設けられている柱は、鋼製構造柱58であるが、例えば木造住宅の改修前後を再現する場合には、独立構造柱56の内部に設けられる柱は木製構造柱であってもよい。
第二屋内再現空間6のダイニングテーブル77には、図5に示すように、第一屋内再現空間3が再現する既存屋内空間2及び第二屋内再現空間6が再現する改修屋内空間5の1F間取りを説明可能な模型99が載置されている。見学者はこの模型99を見て、改修屋内空間5が既存屋内空間2を改修した屋内空間であり、増築などを行うことなく同一の床面積の中でライフステージに合致した屋内空間に改修したものであることを理解することができる。
第二屋内再現空間6は、アイランド型のシステムキッチン78を配置したことで、ダイニング及びキッチン部分の天井を図示しない換気ダクトを通す為に低く形成しており、リビング部分の天井との間に段差が形成されてるので、この段差に図示しない間接照明を埋め込んで意匠性を高めている。
第二屋内再現空間6のリビング・ダイニング・キッチン55が形成されない入隅となる空間に、第二屋内再現空間6の玄関室51を再現して展示している。玄関室51が設けられていることで、改修によってシューズクローク52が設けられたことを判りやすく説明することができる。
第二屋内再現空間6のシステムキッチン78の奥側の内壁面及びシステムキッチン78が設けられた空間と玄関とを隔てる壁体45のシステムキッチン78側の面には、例えば壁体45の内部を露出させて、耐力壁や制震ダンパーなどを説明できる耐力壁展示部46及び制震ダンパー展示部47を形成している。
また、システムキッチン78の奥側のない壁面には引き違いの比較用開口部75dが形成されており、この比較用開口部75dを構成する2つの窓ガラス50a,bは一方が単層で他方がペアガラスとなっている。そして、この比較用開口部75dの屋外側に日射を模した熱光源49が配置されており、図11に示すように、単層の窓ガラス50aとペアガラスの窓ガラス50bとの断熱性能の違いを比較して判断できるように形成している。
案内路10の幅方向の一方側には、既存屋内空間2の浴室101、サニタリールーム102、トイレ室103と、改修屋内空間5の浴室104、サニタリールーム105、トイレ室106とが並べて配置された水廻り展示空間8が形成されている。これらの浴室101,104、サニタリールーム102,105、トイレ室103,106はそれぞれ屋外に向かって窓100が形成されている。水廻り展示空間8は、図12に示すように、改修屋内空間5の浴室104及びサニタリールーム105、既存屋内空間2の浴室101及びサニタリールーム102、改修屋内空間5のトイレ室106、及び既存屋内空間2のトイレ室103の順で、案内路10に沿って配置されている。既存屋内空間2の浴室101及び改修屋内空間5の浴室104にはそれぞれ案内路に向かって、見学用の孔18が形成されている。改修屋内空間5の浴室104、サニタリールーム105、及びトイレ室106はユニバーサルデザインを採用している。また既存屋内空間2の浴室101、サニタリールーム102、及びトイレ室103はそれぞれ30年前の仕様の水廻り設備が配置されており、傷、汚れ、又は変色を含むエイジング加工がなされている。
水廻り展示空間8と案内路10との間には、案内路10にいる見学者が水廻り展示空間8を視認することを防止する第二隠蔽部48が形成されている。第二隠蔽部48は例えば電動ロールスクリーンであり、第一屋内再現空間3及び第二屋内再現空間6を見学している間は、第二隠蔽部48が水廻り展示空間8を隠しておくとともに、第二屋内再現空間6を見学し終えると、第二隠蔽部48を引き上げて、水廻り展示空間8を視認可能にして、見学者に見学を促す。
このように本実施形態の比較展示施設1によると、住宅の既存屋内空間2を再現した第一屋内再現空間3を見学した後、住宅の改修屋内空間5を再現した第二屋内再現空間6、及び改修前後の水廻りを再現した水廻り展示空間8を見学することで、見学者が住宅の改修前後の屋内空間の居心地や断熱性能などの差を認識することができる。第二屋内再現空間6は第一屋内再現空間3から間仕切壁21や段差を取り除いて間取りを変更することで、居住者のライフステージの変化に即した改修ができることを見学者に示すことができる。
本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。