JP2020059939A - 吸湿発熱性アクリル繊維 - Google Patents

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Abstract

【課題】吸湿発熱性を向上させ、秋冬用の肌着や機能性インナーに適し、紡績加工に十分な繊維物性を有したアクリル繊維を得る。【解決手段】比表面積が300m2/g以上かつ細孔容積が0.25ml/g以上の多孔質無機微粒子を5.0〜15.0wt%含有し、F/F(繊維/繊維間)静止摩擦係数が0.20〜0.45であるアクリル繊維。繊度0.5〜3.3dtex、引張り強度が2.0cN/dtex以上、吸湿パラメーター(ΔMR)が1.5以上8.0%以下であることが好ましい。【選択図】 なし

Description

本発明は、吸湿発熱性に優れたアクリル繊維に関するものである。
従来、アクリル繊維は羊毛に似た風合いや嵩高性を持つことから、セーターや靴下などの衣料製品、あるいは獣毛調の風合いや光沢を生かし、獣毛調立毛製品のパイル素材に用いられてきた。
一方、肌着や機能性インナーにおいては、ドレープ性、光沢感等の審美性、表面のなめらかなタッチが求め、特に近年、秋冬用の肌着や機能性インナーには着用時の暖かさが重要視されている。
アクリル繊維は、ドレープ性、光沢感等の審美性、表面のなめらかなタッチ、染色性に優れ、肌着や機能性インナーに適した素材ではあるが暖かさが欠けている。
暖かさの発現方法には、断熱効果の高い空気層を形成する保温作用、外部エネルギーを熱に変換して取り込む蓄熱作用、熱源となる物質を利用する発熱作用の利用が挙げられる。発熱作用を示す繊維素材としてはセルロース系繊維やアクリレート系繊維が知られており、これらはいずれも吸湿により発熱する性能、すなわち吸湿発熱性能を保有している。
アクリル繊維に吸湿性を付与する技術として、吸湿性に優れたポリビニルピロリドンンを混合させる技術が知られている(特許文献1参照)。特許文献1の実施例3において、アクリロニトリル/アクリル酸メチル/メタクリルスルホン酸ナトリウム=95.5/4.2/0.3(モル比)からなるアクリル系重合体に対し、ポリビニルピロリドンを20wt%となるように混ぜ湿式紡糸することにより繊維を得ている。しかしながら、色調b値が6.8と記載されており、黄色味が強いことから肌着や機能性インナーには適さない。また、ポリビニルピロリドンを20wt%混合させているので、アクリル系重合体の凝固がしづらく単糸間の接着が多くなることが考えられ、工業的に安定して生産することは難しいと考える。
他の技術として、シリカゲル粒子を添加する技術が知られている(特許文献2参照)。特許文献2の例えば実施例8においては、アクリロニトリル系ポリマーのチオシアン酸ナトリウム水溶液に平均粒子径0.4μmのシリカゲルを65重量%(38.9体積%)添加し、湿式紡糸を行うことで繊維を得ており、その吸湿率が26%であることが記載されている。しかしながら、この実施例8の繊維の単繊維直径は21μmと衣料用繊維としては太く、保温作用を高めるために必要な単繊維直径の低減、すなわち細繊度化が達成できていない。また、引っ張り強度が140MPaと低く、紡績工程での工程通過性不良が懸念される。
特開2004−263342号公報 特開平10−140420号公報
本発明の課題は、高い吸湿発熱性および紡績加工に十分な繊維物性を有し、秋冬用の肌着や機能性インナーに適したアクリル繊維を得ることである。
上記課題を達成する本発明のアクリル繊維は、比表面積が300m/g以上かつ細孔容積が0.25ml/g以上の多孔質無機微粒子を5.0〜15.0wt%含有し、F/F(繊維/繊維間)静止摩擦係数が0.20〜0.45であることを特徴とするものである。
本発明のアクリル繊維は、比表面積が300m/g以上かつ細孔容積が0.25ml/g以上の多孔質無機微粒子を5.0〜15.0wt%含有し、F/F静止摩擦係数が0.20〜0.45であるため、アクリル繊維の吸湿発熱性を向上でき、紡績加工に十分な繊維物性を有し、秋冬用の肌着や機能性インナーに適したアクリル繊維を提供することができる。
本発明のアクリル繊維の素材は、アクリロニトリルの重合体または共重合体(以下これらを総合してアクリロニトリル系(共)重合体と略称する)であればよく、特に限定されないが、好ましくはアクリロニトリル単位を50質量%以上含有していることが好ましく、85質量%以上とすることがより好ましい。アクリロニトリルの共重合比率を85質量%以上とすることで、良好な強度を有し、紡績工程での工程通過性も良好で、品質に優れた紡績糸が得られる。上限としてはアクリロニトリル単位100質量%、すなわち、単独重合体でもよいが、紡糸工程での延伸性の点からは共重合体とすることが好ましい。
アクリロニトリル共重合体とするときのアクリロニトリル以外の共重合成分としては、アクリロニトリルと共重合可能なアクリロニトリル以外のビニル系モノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、あるいはアルキルエステル類、酢酸ビニル、塩化ビニル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、スチレン、塩化ビニリデン、アリルスルホン酸ソーダ、メタリルスルホン酸ソーダ、ビニルスルホン酸ソーダ等のスルホン酸基を有するビニルモノマーなどが好ましく挙げられ、これらは1種又は2種以上で用いられる。なかでもスルホン酸基を有するビニルモノマーとその他のビニルモノマーを併用して共重合することが好ましい。
これらアクリロニトリル共重合体とするときのアクリロニトリル以外の共重合成分は、50質量%未満であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。一方、紡糸工程での延伸性の点から3質量%以上であることが好ましい。
なかでもアクリロニトリルと共重合可能な共重合成分として、スルホン酸基を有するビニルモノマーおよびその他のビニルモノマーを併用する場合は、スルホン酸基を有するビニルモノマーを0.5〜5質量%、その他のビニルモノマーを2〜15質量%共重合することが好ましく、さらにはスルホン酸基を有するビニルモノマーを1〜3質量%、その他のビニルモノマーを3〜7質量%共重合することがさらに好ましい。なお、本発明において、共重合比率とは、アクリロニトリル系共重合体全体の質量を100質量%としたときの各共重合成分の質量比率である。
本発明に用いられるアクリロニトリル系(共)重合体は、通常溶液中で重合されるが、その際の重合反応溶液には、必要に応じて、重合開始剤、pH調整剤および分子量調整剤等を添加することができる。
本発明における多孔質無機微粒子としては、BET法にて算出した比表面積が300m/g以上の多孔質無機微粒子を用いる。好ましくは、比表面積が350m/g以上500m/g以下である多孔質無機微粒子を用いる。比表面積が300m/g以上であることで低湿雰囲気での吸湿性が向上する。低湿雰囲気とは、日常生活における湿度状態20〜65%程度に相当する。
また、本発明における多孔質無機微粒子としては、BJH法にて算出した細孔容積が0.25ml/g以上の多孔質無機微粒子を用いる。好ましくは、0.8ml/g以上1.25ml/g以下である多孔質無機微粒子を用いる。細孔容積が0.25ml/g以上であることで高湿雰囲気での吸湿性が向上する。高湿雰囲気とは、運動中や発汗時の衣服中の湿度状態80〜100%程度に相当する。
本発明において使用できる多孔質無機微粒子としては、上記の比表面積及び細孔容積を満たせば特に限定はされないが、比表面積及び細孔容積の制御しやすさの観点から多孔質シリカ、多孔質アルミナ、多孔質酸化チタン、ゼオライト、アパタイトなどが好ましい例として挙げられる。また、平均粒子径としては、繊維内部での均一性の観点から0.1〜5.0μmが好ましい。
本発明における繊維中の多孔質無機微粒子の含有率は、5.0〜15.0質量%であることが高い吸湿発熱性を付与するのに必要である。好ましくは、7.5〜12.5質量%である。5.0質量%未満の場合、吸湿発熱性が十分なものとはならない。15.0質量%より大きくなると紡糸時の糸切れが増加し、高次工程通過性が悪化する。
なお、本発明において、多孔質無機微粒子の含有率とは、アクリル繊維全体の質量を100質量%としたときの多孔質無機微粒子の質量比率であり、実施例に記載した方法により測定された値を指す。
多孔質無機微粒子のアクリル繊維への添加方法は特に限定されないが、紡糸原液に用いる有機溶媒、または紡糸原液に用いるものと同一のアクリロニトリル系共重合体を5〜15質量%の濃度で溶解させた溶液に、多孔質無機微粒子の粒子を加えて分散処理し、分散液とした後、紡糸原液ラインの途中で紡糸原液と混合する方法などが好ましく挙げられる(以下、この多孔質無機微粒子を含むアクリロニトリル系共重合体を混合原液ということがある)。
また、本発明のアクリル繊維は、紡績性という観点から、F/F静止摩擦係数が0.20〜0.45であることが好ましい。より好ましくは、F/F静止摩擦係数が0.25〜0.35である。0.20未満の場合、加工時、特にスライバー作製時に素抜けが生じてしまい、安定した加工ができない。0.45を超えると、ドラフト不良による糸ムラが発生し、糸質が悪化する。F/F静止摩擦係数は、油剤浴濃度を増加させると減少、多孔質無機微粒子含有量を増加させると増加傾向にあるため、その調整には製糸条件の見極めが重要である。多孔質無機粒子含有量5.0〜15.0質量%、油剤浴濃度1.5〜3.5%であることが好ましいが、多孔質無機粒子含有量に合わせて、油剤浴濃度を調整する必要がある。例えば、多孔質無機粒子含有量が10.0wt%のとき、油剤浴濃度2.0〜3.0%などが挙げられる。
本発明のアクリル繊維の形状は、特に限定されるものではなく、断面については丸型、β型、C型、三角、扁平、ドックボーン型、多葉型等、いずれの形状であってもよい。また、中空形状であってもよい。
本発明のアクリル繊維の繊維長は、特に限定されるものではなく、梳毛、長紡、短紡、綿毛および2インチ紡など通常の加工方法から適宜選択することができる。肌着や機能性インナー用途では、短紡での加工が主流であることから繊維長は38〜76mmであることが好ましい。
本発明のアクリル繊維の繊度は、単繊維繊度で0.5〜3.3dtexであることが好ましい。単繊維繊度が、0.5dtex未満だと、紡績加工時にカード工程でシリンダーへの沈み綿の増加や、ドッファへの移行不良が発生し、紡績性が著しく低下する。また、3.3dtexを超えると、衣料製品としたときに風合いが硬くなり、衣料製品に適さない。
本発明のアクリル繊維は、引っ張り強度が2.0cN/dtex以上であることが好ましい。引っ張り強度が2.0cN/dtexより低いと紡績糸に加工する際、カード工程でのフライ、ネップの発生や、ローラー巻付きなどのトラブルを引き起こし、生産性が著しく低下する。
なお、本発明のアクリル繊維は、多孔質無機微粒子を含むアクリロニトリル系(共)重合体とその他のアクリロニトリル系(共)重合体との複合構造を有するものであってよい。複合構造の形態としては、芯鞘構造やサイドバイサイド構造、多層構造などが挙げられる。また、本発明のアクリル繊維は、長さ方向に太さ(径)が均一なものでも太細のあるものでもよい。
次に、本発明のアクリル繊維を製造する方法について、その一例を説明する。
<重合>
本発明で用いられるアクリロニトリル系(共)重合体の重合方法は、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法など、いずれの重合方法を用いてもよい。また、重合に使用する有機溶媒の例として、ジメチルスルホキシド(以下、DMSOということがある。)、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の有機溶媒が挙げられる。なかでも、本発明に用いられるアクリロニトリル系(共)重合体はDMSO系湿式紡糸において製糸性に優れることから、重合方法および重合溶媒はDMSOを用いた溶液重合法が好ましい。
<紡糸>
紡糸原液全体に対するアクリロニトリル系(共)重合体の割合は、20〜25質量%が好ましく、その際、有機溶媒の割合を75〜80質量%とすることが好ましい。紡糸原液全体に対するアクリロニトリル系(共)重合体の割合は、より好ましくは21〜24質量%であり、有機溶媒の割合は、より好ましくは76〜79質量%である。
紡糸原液において、アクリロニトリル系(共)重合体の割合が20質量%以上であると、得られる繊維が失透しにくく光沢が失われにくくなるとともに染色斑、発色性が向上しやすくなる。一方、アクリロニトリル系(共)重合体の割合が25質量%以下であると製糸性が向上しやすくなる。
このようにして作製された紡糸原液は、通常の紡糸装置を使用して紡糸することができる。例えば、アクリロニトリル系共重合体を紡糸口金孔から空気または不活性雰囲気中に吐出した後、熱で溶媒を気化し凝固する乾式紡糸や、紡糸口金孔から吐出された重合体を一旦空気または不活性雰囲気中に吐出した後、凝固浴に導入する乾湿式紡糸、紡糸口金孔から吐出された重合体を凝固浴中に直接吐出する湿式紡糸などが挙げられる。乾湿式紡糸および湿式紡糸の場合に凝固浴として使用する有機溶媒としては、DMSO、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。なかでも、溶媒の拡散係数が高く、アクリロニトリル系(共)重合体を湿式紡糸した際の製糸性に優れるDMSO水溶液が好ましく用いられる。
各種紡糸法により紡糸を行った後、熱延伸、水洗、乾燥緻密化させ、ディップ方式でカチオン系の油剤を付与し、捲縮および熱緩和処理を施すことにより、本発明のアクリル繊維を得ることができる。
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、得られた繊維の単繊維繊度、引っ張り強度、吸湿性、多孔質無機微粒子含有率、F/F静止摩擦係数、紡績性の評価は下記方法により求めたものである。
(1)単繊維繊度、総繊度、引っ張り強度、F/F静止摩擦係数
単繊維繊度、引っ張り強度およびF/F静止摩擦係数は、JIS L1015:2010化学繊維ステープル試験方法に準拠して測定した。総繊度は、単繊維繊度とフィラメント数より算出した。
(2)吸湿性ΔMR
繊維試料を110℃×24時間真空乾燥した後の重量を測定し、これを絶乾時の重量W0とする。続いて繊維試料を恒温恒湿器(Espec社製LHU−123)にて20℃×65%RHの雰囲気下中に24時間放置した後の重量を測定し、これをW1とする。引き続き繊維試料を30℃×90%RHの雰囲気下中に24時間放置した後の重量を測定し、これをW2とする。これらから次式
MR1(%)=(W1−W0)/W0×100
MR2(%)=(W2−W0)/W0×100
ΔMR(%)=MR2−MR1
にて、ΔMRを算出し、4つの試料(n=4)での測定値の平均値をもってΔMRとした。
(3)吸湿発熱性ΔT(カケンB法)
1辺70mmのPPスパンボンド不織布を2枚準備し、1枚には中心部に20mm×20mmの四角い穴を開けておく。2枚の不織布の間に測定する繊維試料を4〜5g挟み、4辺をステープラーで固定し繊維試料がはみ出さないようにする。なお、マイクロメーターを用いて測定した繊維試料の厚みは、0.5〜1.0mmとする。このような形態の測定試料を4検体準備し、四角い穴が開いてある方を測定面(裏面)としてISO18782に則り吸湿発熱性ΔT(℃)を求め、4検体の平均値をもって吸湿発熱性ΔT(℃)とした。
(4)多孔質無機微粒子含有率(灰分)
熱処理時に重量が変化しないるつぼを計量し、これを重量W3とする。このるつぼに約3gの繊維試料を入れて計量し、これを重量W4とする。続いて、試料が飛散しないように注意しながら徐々に燃焼させた後、800℃×5時間の条件で熱処理を行う。灰化させた試料の重量を測定し、これを重量W5とする。これらから、次式
多孔質無機微粒子含有率(%)=(W5−W3)/(W4−W3)×100
にて、多孔質無機微粒子含有率を算出した。
(5)紡績性の評価
紡績性については、カードでのシリンダーや延伸パートでのローラーに巻付きがないものを○、巻き付きがあるものを×とした。なお、×としたものは生産対応できないレベルである。
[実施例1]
DMSOを溶媒とする溶液重合により、アクリロニトリル由来の単位91.4質量%、アクリル酸メチル由来の単位7.2質量%、メタリルスルホン酸ナトリウム由来の単位1.4質量%を含むアクリロニトリル系共重合体溶液(アクリロニトリル系共重合体濃度22.4質量%)を得た。多孔質無機微粒子として、多孔質シリカであり、平均粒子径2.6μm、BET比表面積500m/g、細孔容積0.80ml/gの富士シリシア化学社製“サイリシア”530を用いた。このアクリロニトリル系共重合体溶液に、富士シリシア化学社製“サイリシア”530を溶液100重量部に対して1.1重量部を添加し、攪拌翼を用いて攪拌して混合原液を得た。この混合原液中の全固形分(アクリルニトリル系共重合体と粒子の和)に対する多孔質シリカ粒子の含有量は5.0wt%となる。添加した粒子特性を表1、混合原液調整条件を表2に示す。
この混合原液を孔径0.055mm、ホール数400Hの口金より、40℃の62質量%DMSO/水混合溶液にギアポンプを用いて吐出し、紡糸した。62質量%DMSO/水混合溶液中で凝固させ、6.0m/minで引き取った後、75℃の30重量%DMSO/水混合溶液、98℃の15重量%DMSO/水混合溶液からなる2段の延伸浴で5.0倍延伸した後、25℃の水浴で水洗し、続いて140℃のホットドラムを通過させて乾燥、濃度1.60%の油剤浴でカチオン系の油分を付与させ、アクリル繊維を得た。このアクリル繊維をバッチセッターで102℃、20minのスチームセットを行った。製糸性は良好であり、延伸浴での単糸切れもなかった。
吸湿性ΔMRおよび吸湿発熱性ΔTも優れた値を示した。また、引っ張り強度やF/F静止摩擦係数も紡績加工に十分な値を示した。多孔質シリカのスペックが比表面積300m/g以上かつ細孔容積0.25ml/g以上であり、該粒子を5.0〜15.0wt%含有すれば、優れた吸湿性ΔMRおよび吸湿発熱性ΔT、紡績加工に十分な物性を有する繊維が得られることを確認した。
[実施例2〜3]
混合原液調整時の粒子添加量、混合原液吐出量および油剤浴濃度を表2のとおり変更し、多孔質シリカ含有量、単繊維繊度およびF/F静止摩擦係数を変化させた以外は実施例1と同様の方法で混合原液調整、紡糸を行った。製糸性は実施例1と同様に良好であった。多孔質無機微粒子の添加量の増加に伴い、吸湿性ΔMRおよび吸湿発熱性ΔTは向上した。また、紡績加工に十分な物性を有する繊維が得られることを確認した。
[比較例1]
混合原液調整時の粒子添加量および油剤浴濃度を表2のとおり変更し、多孔質シリカ含有量およびF/F静止摩擦係数を変化させた以外は実施例2と同様の方法で混合原液調整、紡糸を行った。製糸性は実施例1、2、3と同様に良好であった。しかしながら、吸湿性ΔMRが0.6%と不十分であり、吸湿発熱性ΔTも同様に不十分であった。
[比較例2]
混合原液調整時の粒子添加量を表2のとおり変更し、多孔質シリカ含有量を変化させた以外は実施例2と同様の方法で混合原液調整、紡糸を行った。製糸性は実施例1、2、3と同様に良好であった。しかしながら、吸湿性ΔMRが1.3%と不十分であり、吸湿発熱性ΔTも同様に不十分であった。
[比較例3]
混合原液調整時の粒子添加量、混合原液吐出量および油剤浴濃度を表2のとおり変更し、多孔質シリカ含有量、単繊維繊度およびF/F静止摩擦係数を変化させた以外は実施例2と同様の方法で混合原液調整、紡糸を行った。製糸性は実施例1、2、3と異なり、延伸中での単糸切れが多発し、操業性が著しく悪化した。得られた繊維も糸切れ、毛羽が数多く見られた。紡績加工においても、カードでのシリンダーや延伸パートでのローラーに巻付きが多発した。
[比較例4〜5]
油剤浴濃度を表2のとおり変更し、F/F静止摩擦係数を変化させた以外は実施例2と同様の方法で混合原液調整、紡糸を行った。製糸性は実施例1、2、3と同様に良好であった。しかしながら、F/F静止摩擦係数が、比較例4では0.18と低く、比較例5では0.63と高く、紡績不良が発生した。
[実施例4]
混合原液調整時の粒子グレードを表3のとおり変更し、多孔質無機微粒子の種類を変化させた以外は実施例2と同様の方法で混合原液調整、紡糸を行った。使用した多孔質無機微粒子は、多孔質シリカであり、平均粒子径2.6μm、BET比表面積300m/g、細孔容積1.60ml/gの富士シリシア化学社製“サイリシア”310Pである。製糸性は実施例2と同様に良好であった。吸湿性ΔMRおよび吸湿発熱性ΔTも優れた値を示した。多孔質シリカのスペックが比表面積300m/g以上かつ細孔容積0.25ml/g以上であれば、優れた吸湿性ΔMRおよび吸湿発熱性ΔTを有する繊維が得られることを確認した。また、紡績加工に十分な物性を有する繊維が得られることを確認した。
[実施例5]
混合原液調整時の粒子グレードを表3のとおり変更し、多孔質無機微粒子の種類を変化させた以外は実施例2と同様の方法で混合原液調整、紡糸を行った。使用した多孔質無機微粒子は、多孔質シリカであり、平均粒子径2.9μm、BET比表面積350m/g、細孔容積1.25ml/gの富士シリシア化学社製“サイリシア”420である。製糸性は実施例2と同様に良好であった。吸湿性ΔMRおよび吸湿発熱性ΔTも優れた値を示した。多孔質シリカのスペックが比表面積300m/g以上かつ細孔容積0.25ml/g以上であれば、優れた吸湿性ΔMRおよび吸湿発熱性ΔTを有する繊維が得られることを確認した。また、紡績加工に十分な物性を有する繊維が得られることを確認した。
[実施例6]
混合原液調整時の粒子グレードおよび混合原液吐出量を表3のとおり変更し、多孔質無機微粒子の種類および単糸繊度を変化させた以外は実施例2と同様の方法で混合原液調整、紡糸を行った。使用した多孔質無機微粒子は、多孔質シリカであり、平均粒子径3.8μm、BET比表面積470m/g、細孔容積1.10ml/gの水澤化学社製“ミズカシル”P−73である。製糸性は実施例2と同様に良好であった。吸湿性ΔMRおよび吸湿発熱性ΔTも優れた値を示した。多孔質シリカのスペックが比表面積300m/g以上かつ細孔容積0.25ml/g以上であれば、優れた吸湿性ΔMRおよび吸湿発熱性ΔTを有する繊維が得られることを確認した。また、紡績加工に十分な物性を有する繊維が得られることを確認した。
[実施例7〜8]
混合原液調整時の粒子グレードおよび混合原液吐出量を表3のとおり変更し、多孔質無機微粒子の種類および単糸繊度を変化させた以外は実施例2と同様の方法で混合原液調整、紡糸を行った。使用した多孔質無機微粒子は、ゼオライトであり、平均粒子径0.3μm、BET比表面積800m/g、細孔容積0.28ml/gの中村超硬社製“ゼオール”4Aである。製糸性は実施例2と同様に良好であった。吸湿性ΔMRおよび吸湿発熱性ΔTも優れた値を示した。多孔質無機微粒子のスペックが比表面積300m/g以上かつ細孔容積0.25ml/g以上であれば、多孔質シリカでなくとも優れた吸湿性ΔMRおよび吸湿発熱性ΔTを有する繊維が得られることを確認した。また、紡績加工に十分な物性を有する繊維が得られることを確認した。
[比較例6]
混合原液調整時の粒子グレードを表3のとおり変更し、多孔質無機微粒子の種類を変化させた以外は実施例2と同様の方法で混合原液調整、紡糸を行った。使用した無機微粒子は、乾式シリカ粒子であり、平均粒子径0.1μm、BET比表面積200m/gの日本アエロジル社製“アエロジル”200である。製糸性は実施例2と同様に良好であった。しかしながら、吸湿性ΔMRが0.9%と不十分であった。
Figure 2020059939
Figure 2020059939
Figure 2020059939
実施例1〜8、および比較例1〜6で作製したアクリル繊維については、上述の(1)単繊維繊度、引っ張り強度、F/F静止摩擦係数、(2)吸湿性ΔMR、(3)吸湿発熱性ΔT(カケンB法)、(4)多孔質無機微粒子含有率(灰分)、(5)紡績性の評価を行い、結果を表2、表3に示した。その結果、本発明におけるアクリル繊維は、優れた吸湿発熱性および紡績加工に十分な繊維物性を有し、秋冬用の肌着や機能性インナーに適したアクリル繊維であることが明確であった。

Claims (3)

  1. 比表面積が300m/g以上かつ細孔容積が0.25ml/g以上の多孔質無機微粒子を5.0〜15.0wt%含有し、F/F(繊維/繊維間)静止摩擦係数が0.20〜0.45であることを特徴とするアクリル繊維。
  2. 繊度0.5〜3.3dtex、引張り強度が2.0cN/dtex以上である請求項1記載のアクリル繊維。
  3. 吸湿パラメーター(ΔMR)が1.5以上8.0%以下である請求項1記載のアクリル繊維。
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