本発明は、コンクリート型枠内のスペーサボルトを型枠締付ボルトと連結するコネクターとして機能すると共に、硬化後の躯体コンクリートの表面にモルタルを塗布するときの接着補助具としても機能するコネクター兼用モルタル接着補助具に関する。
コンクリート構造物は、前後2枚の型枠の間に複数本のスペーサボルトを介在させて一定間隔に保持し、その一定間隔の型枠間にコンクリートを打設し、コンクリートが硬化したのち型枠を取り外すことによって建造されるようになっている。また、型枠を外した後の躯体コンクリートの表面は、下地モルタルを塗付して凹凸を取り、均等な厚みを確保する。さらに張付モルタルを塗付し、タイル等の仕上材を張付けて完成する。モルタルを一定厚さに塗布するようにしているのが一般的な工法である。しかし、後からモルタルによって塗付したタイルは、経時変化により躯体コンクリートの表面から剥落することがある。そのため、従来からこのようなタイル及びモルタルの剥落事故を防止する対策が種々提案されている。
本出願人等は、先に上記タイルの剥落防止対策として、特許文献1により、コンクリート型枠内のスペーサボルトと型枠締付用ボルトとの間を連結するコネクターの除去跡(いわゆるコーン跡)を利用して、そのコーン跡に特殊な構造に設計したモルタル接着補助具を埋め込むことにより、優れたモルタル剥落防止効果が得られる発明を提案した。この発明を図9及び図10を使用して説明する。
図9は、コンクリート型枠で成形される躯体コンクリート表面にコーン跡ができる過程を示す。図9(A)は、コンクリート型枠が組み付けられた状態を示し、20は躯体コンクリート、21はスペーサボルト、24は型枠、25はコネクター、26は型枠締付用ボルトであり、型枠締付用ボルト26はコネクター25に一体に連結されている。
スペーサボルト21は、型枠24と不図示の型枠との前後2枚の間にコンクリート打設用の空間を形成するように型枠に直交するように挿入され、その両端部にコネクター25、25が螺合される。コネクター25から延長する型枠締付用ボルト26に型枠24を貫通させ、その型枠24の内面をコネクター25の外側端面に当接させ、その外側に型枠締付用ボルト26を挟むように一対の横端太材27,27を配置し、さらにフォームタイ28で抑え、型枠締付用ボルト26にナット29を螺合させて締め付けることにより組み付けが完成する。
型枠間のコンクリート打設用空間にコンクリート20を打ち込み、それが硬化すると脱型する。一連の脱型作業により、ナット29、フォームタイ28、横端太材27、型枠24を撤去し、最後にコネクター25を抜去すると、そのコネクター25の除去跡に、図9(B)に示すようなコーン跡22が形成される。ここで変形や破損が生じたコネクター25は通常廃材として廃棄される。
特許文献1の発明は、図10に示されるようなモルタル接着補助具30で代表されるものであって、埋栓部31と多数のループ状の係止部32とが樹脂から一体成形されている。埋栓部31の底部にはスペーサボルト21の端部が嵌入する挿入孔33が形成されている。
図10(A)のように、このモルタル接着補助具30を、埋栓部31の周囲に接着剤34を塗布した後、上記のように躯体コンクリート20の表面に形成されたコーン跡22の中に埋設し、図10(B)のように、係止部32だけが表面に露出した状態にする。次いで、図10(C)のように、その上からモルタル接着補助具30とコンクリート20との両表面に渡るようにモルタル23を一定厚さに塗布するのである。
しかるに、上記モルタル接着補助具30は、モルタルの剥落防止作用の点では、係止部32を埋栓部31と樹脂で一体成形することにより、高い剛性を有する係止部32が得られ、未硬化のモルタル内部に深く侵入することができるため、硬化後に高いアンカー効果を発揮し、モルタルの剥落防止については優れた効果が得られる。
しかしながら、モルタルの剥落防止用前処理作業の全般について検討した場合、上記一連の作業では、スペーサボルトから取り外した後のコネクターは1〜数回の使用の後に廃材として廃棄しており、これが産業廃棄物を出すという問題を生じている。また、剥落防止用前処理作業の短縮により作業性を一層効率化する点でも課題が残されていた。
そこで、特許文献2には、1〜数回の使用後に廃材となるコネクターの産業廃棄物の問題を解消すると共に、タイル剥落防止前処理の作業時間を一層短縮化することを可能にするコネクター兼用モルタル接着補助具が開示されている。特許文献2に開示されたコネクター兼用モルタル接着補助具は、躯体コンクリートの表面に塗布されるモルタルの接着補助具であって、コンクリート型枠内にセットされるスペーサボルトに連結するコネクター部の前記躯体コンクリート表面側の端面に、前記モルタルと係合する多数の係止部を並列的または放射状に配置させて該コネクター部と樹脂で一体成形することを特徴とするように、かつ前記コネクター部端面の外周縁に沿って前記多数の係止部を内側に収納する枠状に形成された支持突起を設けたことを特徴とするものである。
しかし、特許文献2に開示されたコネクター兼用モルタル接着補助具では、時間経過とともにモルタル又はモルタル上の外壁タイルに亀裂が見られることがあった。
特開2000−45480号公報
特許第3976427号明細書
本発明は、このような従来の技術の有する問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、コンクリート構造物の外壁面に塗付されるモルタル又はモルタル上の外壁タイルに亀裂等の欠陥が発生することがないコネクター兼用モルタル接着補助具を提供することにある。
そこで、本発明者等は、ルーフボンド−タフバインダー工法(LT工法)によってタイル剥落防止を行う際に、コンクリート構造物の外壁面に塗付されるモルタル又はモルタル上の外壁タイルに亀裂等の欠陥が発生する原因について調査を行った。その結果、タイルに亀裂が生じやすい箇所は、南面、南西面、西面の外壁等の日中直射日光が照射する場所に多く、しかも壁の端部に集中して発生することが分かった。さらにベランダ外周、屋上部の塔屋、エレベーターなどの機械室、庇、パラペット等構造体の基幹以外の部分でコンクリートの躯体自体の厚みが20cm以下の薄い部分でタイルの不具合発生が多いことがわかった。
また、タイル張付けモルタルも均等な厚さで塗付することは難しく、上記LT工法でも張付けモルタルの厚さは2mm以上を推奨しているが、確実に履行することは困難とされている。しかし、十分なモルタルの厚みがないと、コンクリート躯体側で発生する応力はモルタル層で緩衝されず、直接タイルに負荷がかかってしまうことがある。
一般にRC構造物では、鉄筋とコンクリートとの熱膨張係数が近似しているため、基本的には温度差によるバイメタル効果や熱応力差が生じにくいと考えられている。しかしながら、上記した端部や薄肉部分の箇所では熱以外にも外力が発生しやすく、タイルとモルタルの境界面で面内方向にせん断応力が発生し、タイルに面外方向の引張応力が発生すると考えられる。このような応力が発生しても構造体中心部では拘束力が大きく容易に変形することはないが、端部やコンクリート躯体自体が薄いと、応力によって変形が生じる可能性が高いことが分かった。
いま仮にコンクリート型枠内のスペーサボルトの熱膨張に起因してタイル割れが生じるケースを考察する。すなわち、コネクター兼用モルタル接着補助具はコンクリート型枠内のスペーサボルトと結合されるとともに、コンクリート構造物の外壁面に塗付されるモルタルの接着補助具としても機能するので、コンクリート型枠内のスペーサボルトが夏季などの外気温により熱膨張して伸長することにより、モルタル又はモルタル上の外壁タイルに面外方向の引張応力又は圧縮応力が発生し、タイルに亀裂を生じさせる原因となる。この場合、コンクリート型枠内のスペーサボルトが熱膨張により伸長しても、モルタル又はモルタル上の外壁タイルにスペーサボルトの伸長の影響が伝達されない構造を採用すればタイルに亀裂が発生することはない。
すなわち、本発明のコネクター兼用モルタル接着補助具は、躯体コンクリートの表面に塗付されるモルタルの接着補助具であって、円形の本体と、該円形の本体に挿通可能で内側に螺子部を有し且つコンクリート型枠内にセットされるスペーサボルトと螺合するボルトキャッチャーと、上記円形の本体と嵌合可能な円形の蓋体と、型枠締め付けボルトとを備え、上記円形の蓋体の躯体コンクリート表面側の端面に上記モルタルと係合する多数のループ部を並列状または放射状に配置し、上記円形の蓋体の内面側に突起を設け、上記円形の本体にボルトキャッチャーを挿通して円形の本体と円形の蓋体とを嵌合し、上記スペーサボルトがボルトキャッチャーと螺合したとき、上記突起とボルトキャッチャーの端面のあいだに僅かな隙間があるか又は上記突起とボルトキャッチャーの端面が当接することを特徴とするものである。
円形の蓋体の躯体コンクリート表面側の端面に、モルタルと係合する多数のループ部とは別に、ボルトキャッチャー螺子部へのモルタルの浸入を阻止することが可能な突条が設けられているのが好ましい。
円形の蓋体の内面側に設ける突起は複数であるのが好ましい。
本発明のコネクター兼用モルタル接着補助具はコンクリート型枠内のスペーサボルトと結合されているので、コンクリート型枠内のスペーサボルトが夏季などの外気温により熱膨張し、このスペーサボルトと螺合するボルトキャッチャーが伸長することがある。しかし、円形の蓋体の内面側に設けた突起とボルトキャッチャーの端面のあいだに僅かな隙間があるので、この隙間がボルトキャッチャーの伸長を吸収する。仮に、その隙間の長さ以上にボルトキャッチャーが伸長しても、円形の蓋体の内面側に設けた突起が緩衝材となってボルトキャッチャーを受け止めて、スペーサボルトからモルタル又はモルタル上の外壁タイルへの応力の伝達が遮断される。また、上記円形の本体にボルトキャッチャーを挿通して円形の本体と円形の蓋体とを嵌合し、上記スペーサボルトがボルトキャッチャーと螺合したとき、円形の蓋体の内面側に設けた突起とボルトキャッチャーの端面のあいだに僅かな隙間がなくて円形の蓋体の内面側に設けた突起とボルトキャッチャーの端面が当接しても、同様に、円形の蓋体の内面側に設けた突起が緩衝材となってボルトキャッチャーを受け止めて、スペーサボルトからモルタル又はモルタル上の外壁タイルへの応力の伝達が遮断される。そこで、コンクリート構造物の外壁面に塗付されるモルタル又はモルタル上の外壁タイルに亀裂等の欠陥が発生することはない。
図1は、本発明のコネクター兼用モルタル接着補助具の一実施形態の分解斜視図である。
図2は、本発明のコネクター兼用モルタル接着補助具の一実施形態を構成する円形の蓋体の斜視図であり、図1に示すものを紙面に対して反対方向から見た図に相当する。
図3は、本発明のコネクター兼用モルタル接着補助具の一実施形態を構成する円形の本体の斜視図であり、図1に示すものを紙面に対して反対方向から見た図に相当する。
図4(a)は、本発明のコネクター兼用モルタル接着補助具の一実施形態を構成する円形の蓋体の内面側に設けた突起と、本発明のコネクター兼用モルタル接着補助具の一実施形態を構成するボルトキャッチャー端面との位置関係を示す破断斜視図であり、図4(b)は図4(a)の一部の拡大図である。
図5は、本発明のコネクター兼用モルタル接着補助具の使用例を示す図で、コンクリート型枠組み立て時の縦断面図である。
図6は、図5からコンクリート型枠を脱型した状態の縦断面図である。
図7は、本発明のコネクター兼用モルタル接着補助具の別の実施形態の分解斜視図である。
図8(a)は、本発明のコネクター兼用モルタル接着補助具の別の実施形態を構成する、円形の蓋体の内面側に設けた突起とボルトキャッチャー端面との位置関係を示す破断斜視図であり、図8(b)は図8(a)の一部の拡大図である。
図9は従来のコンクリート型枠の組み立て状況を示す説明図であり、図9(A)は組み立て時の縦断面図、図9(B)は脱型したときの縦断面図である。
図10は特許文献1に開示されたモルタル接着補助具の使用例を示し、図10(A)はモルタル接着補助具の装着前の縦断面図、図10(B)は同モルタル接着補助具の装着後の縦断面図、図10(C)はさらにモルタルを塗付した状態を示す縦断面図である。
以下に本発明の実施形態について説明するが、本発明の技術的範囲を逸脱しない限り、様々な変更や修正が可能である。
図1は、本発明のコネクター兼用モルタル接着補助具の一実施形態の分解斜視図である。図1において、1は円形の本体、2は円形の本体1に挿通可能で内側に螺子部を有し且つコンクリート型枠内にセットされるスペーサボルトと螺合するボルトキャッチャー、3は円形の本体1と嵌合可能な円形の蓋体、4は型枠締め付けボルトである。円形の蓋体3の躯体コンクリート表面側の端面にモルタルと係合する多数のループ部5が放射状に配置されるとともに、ボルトキャッチャー2の螺子部へのモルタルの浸入を阻止することが可能なヒゲ状の多数の突条6が設けられている。ヒゲ状の多数の突条6がモルタルと絡むことにより、ボルトキャッチャー2の螺子部へのモルタルの浸入を阻止することができる。
また、ボルトキャッチャー2のフランジ2a1の外周の一部は、2bで示すように上下方向に切除されている。このように、外周の一部を上下方向に切除することをDカットといい、Dカット2bが施されていると、不要な共回りを防止することができるので好ましい。さらに、ボルトキャッチャー2のフランジ2a1の外周において対向する2箇所(180度離れている2箇所)の一部を上下方向に切除することをIカットといい、Iカットを施すと、不要な共回りをより一層防止することができるので好ましい。
円形の本体1と円形の蓋体3を嵌合するために、図3に示すように、円形の本体1の外周の3ケ所には僅かに外方に向けて突出している爪部7が設けられている。図2に示すように、円形の蓋体3の外周の3ケ所には、爪部7を受け入れ可能な微少開口8が設けられている。また、図2に示すように、円形の蓋体3の内面側には突起9が複数個形成されている。突起9は複数個からなるので、ボルトキャッチャー2と当接することによって破損又は破壊されやすくなる。
図1において、円形の本体1にボルトキャッチャー2を挿通して、円形の蓋体3で円形の本体1に蓋をするように、円形の本体1の爪部7(図3)を円形の蓋体3の微少開口8(図2)に引っ掛けて、円形の本体1と円形の蓋体3とをプレスにより嵌合し、コンクリート型枠内にセットされるスペーサボルトがボルトキャッチャー2と螺合したとき、図4(a)に示すように、ボルトキャッチャー2のフランジ2aの端面2cと円形の蓋体3の内面側に設けた突起9のあいだに僅かな隙間C(約0.1〜0.5mm)があるので、この隙間Cがボルトキャッチャー2の伸長を吸収する。仮に、その隙間Cの長さ以上にボルトキャッチャー2が伸長しても、ボルトキャッチャー2と当接した突起9が破損又は破壊されることによって緩衝材となってボルトキャッチャー2を受け止めて、スペーサボルトからモルタル又はモルタル上の外壁タイルへの応力の伝達が遮断される。ボルトキャッチャー2のフランジ2aの端面2cと円形の蓋体3の内面側に設けた突起9のあいだに僅かな隙間Cがなくて円形の蓋体3の内面側に設けた突起9とボルトキャッチャー2のフランジ2aの端面2cが最初から当接しても、同様に、ボルトキャッチャー2と当接した突起9が破損又は破壊されることによって緩衝材となってボルトキャッチャー2を受け止めて、スペーサボルトからモルタル又はモルタル上の外壁タイルへの応力の伝達が遮断される。図4(b)において、斜線部は切除部分を示し、円形の蓋体3の内面側に設けた突起9はテーパ状である。ボルトキャッチャー2の伸長は突起9で阻止されるので、コンクリート型枠内にセットされるスペーサボルトからボルトキャッチャー2を経てモルタル又はモルタル上の外壁タイルへの応力の伝達は遮断される。また、ボルトキャッチャー2のフランジ2aを躯体コンクリート表面側に設けることにより、フランジ2aを円形の本体1の内側の環状突起10で受け止めることができる。
図5は、本発明のコネクター兼用モルタル接着補助具の使用例を示す図で、コンクリート型枠組み立て時の縦断面図である。上記のようにして円形の本体1と円形の蓋体3とを嵌合して、図5に示すように、ボルトキャッチャー2とスペーサボルト11を螺合し、型枠12aと12bを組み立てて、型枠締め付けボルト4をボルトキャッチャー2に螺合して、型枠12bを締め付ける。
このように、型枠12aと12bの組み付けが終了したら、型枠12aと12bのあいだのコンクリート打設空間にコンクリートを打設する。打設したコンクリートが硬化して、躯体コンクリート13が形成されると、次に、型枠12aと12bを撤去し、型枠締め付けボルト4を回動させて離脱させ、脱型作業を行う。一般に、スペーサボルト11の本数としては、コンクリートの単位面積当たり、4本/m2の割合で配置されることが多い。
図6は、図5からコンクリート型枠を脱型した状態の縦断面図であり、躯体コンクリート13の表面およびコネクター兼用モルタル接着補助具の表面にモルタルが塗付される。この際使用するモルタルは、タフバインダーと呼ばれるナイロン短繊維を含有する所定のLT工法に適合したモルタルが使用される。モルタルを塗付する際に、ループ部5にしっかりと塗り込むことが重要であるが、ボルトキャッチャー2の螺子部へモルタルを浸入させないようにすることが必要である。そのため、ボルトキャッチャー2の螺子部にモルタルを浸入させないように、図1に示すように、開口部の端面14を狭くするとともに、開口部にはヒゲ状の多数の突条6が設けられている。さらに、モルタル上にタイルが貼り付けられる。本発明では、図1に示すように、円形の蓋体3の端面にモルタルと係合する多数のループ部5が放射状に配置されているので、モルタルは脱落し難い。
本発明のコネクター兼用モルタル接着補助具は、スペーサボルト11と型枠締め付けボルト4とのコネクターとして使用され、コンクリートの硬化後は、これを取り外すことなくそのままモルタル接着補助具として使用される。本発明ではボルトキャッチャー2のフランジ2aをモルタル接着補助具本体に留めるため、コンクリート躯体13内に取り残されることはない。また、コネクターの離脱作業とその次のモルタル接着補助具の装着作業が不要になるため、モルタル剥落防止前処理用の作業時間を著しく短縮することができる。
段落0028に記載したように、円形の本体1の3ケ所の爪部7を円形の蓋体3の3ケ所の微少開口8に引っ掛け、プレスにより円形の本体1と円形の蓋体3は嵌合される。そして、硬化後の躯体コンクリートの表面に塗布されるモルタル及びタイルの接着強度は、爪部7の強度に左右されると考えられる。そのため、プレスによる嵌合時に、図4(a)に示すように、円形の本体1が円形の蓋体3に対して全面的に当接するのではなく、僅かでも円形の本体1が円形の蓋体3に対して斜めに当接すると、円形の本体1の3ケ所の爪部7が円形の蓋体3の3ケ所の微少開口8で受け入れられずに、1ケ所の爪部7のみが微少開口8で受け入れる結果、その爪部7に応力が集中してしまい、接着力が低くなってしまう。そこで、図7に示すように、円形の本体1に3つのピン15を設ければ、円形の本体1と円形の蓋体3をプレスにより嵌合するときにピン15が潰れると、図8(a)に示すように、潰れたピン15が障害となって、円形の本体1と円形の蓋体3は一定距離を保持される。このように、ピン15が障害となるので、円形の本体1が円形の蓋体3に対して斜めに当接することは防がれ、円形の本体1の3ケ所の爪部7を円形の蓋体3の3ケ所の微少開口8で同じように受け入れて、硬化後の躯体コンクリートの表面に塗布されるモルタル及びタイルの接着強度は、3ケ所の爪部7に均等に負荷される。そこで、接着力が低くなることはない。そのためには、ピン15の高さは、図8(a)に示す突起9の高さH以上であることが好ましい。
図7では、ピン15は3個であり、円形の本体1の中心を円の中心とする円周方向に均等間隔で設けられている。互いの円周方向の間隔が等しければ、ピン15は4個以上でもよい。また、ピン15は2個でもよい。ピン15が2個の場合は、180度反対方向に設けるのが好ましい。ピン15の半径方向の位置は特に限定されるものではない。なお、ピン15が1個では、段落0033に記載した効果を得ることができないので、ピン15は2個以上であることが好ましい。ピン15自体は強度を備えている必要はないが、段落0033に記載したように、円形の本体1が円形の蓋体3に対して斜めに当接することを防ぐための緩衝材の機能を果たすものであるから、不必要な製造コストの上昇を招かない範囲において、ピン15の数量は多い方が好ましい。
本発明のコネクター兼用モルタル接着補助具を製造するために使用される樹脂としては、射出成形が容易な熱可塑性樹脂が好ましいが、必要により熱硬化性樹脂であってもよい。例えば熱可塑性樹脂としては、ナイロン、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、高衝撃ポリスチレン(HIPS)、ABS樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド(変性PPO)、ポリアミドエラストマー(例えば、東レ(株)製“ペバックス”など)、ポリエステルエラストマー(例えば、東レ・デュポン(株)製“ハイトレル”など)などを例示することができる。しかし、コンクリートはアルカリ性であるので、これらのうちでも耐アルカリ性に優れ、かつ耐熱性に優れているPPS樹脂やナイロン樹脂が特に好ましい。
また、これらの樹脂には、ガラス繊維、炭素繊維などの短繊維状の補強繊維を混入させた繊維強化樹脂を使用してもよい。繊維強化樹脂の場合は、モルタルの接着力を一層向上させ、剥落防止性能をさらに向上させることができる。
本発明のコネクター兼用モルタル接着補助具は、1個当たりが有するモルタルに対する接着力が50kg/個以上になるように設計することが好ましい。このような特性を満足させるため、係止部の寸法としては、ループ形状の場合は、ループ太さ(直径)を0.1〜3.0mm、ループ径を2.0〜10.0mmにすることが好ましい。
本発明は、コンクリート構造物のコネクター兼用モルタル接着補助具として好適である。
1 円形の本体
2 ボルトキャッチャー
2a、2a1 フランジ
2b Dカット
2c 端面
3 円形の蓋体
4 型枠締め付けボルト
5 ループ部
6 突条
7 爪部
8 微少開口
9 突起
10 環状突起
11 スペーサボルト
12a、12b 型枠
13 躯体コンクリート
14 端面
15 ピン