JP2020056066A - ラインパイプ用鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】必要な強度と優れた変形性能とを有するラインパイプ用鋼板を提供することを目的とする。【解決手段】化学組成が、C:0.06-0.12%、Si:0.10-0.50%、Mn:1.0-1.8%、P≦0.02%、S≦0.001%、Nb:0.005-0.050%、Ti:0.005-0.030%、Al:0.010-0.040%、N:0.001-0.005%、任意元素、残部:Feおよび不純物であり、Pcmが0.15-0.23、Ceqが0.38-0.43であり、表層部および板厚中心部の組織が、30-70%のフェライト、および3%以下の硬質相を含み、残部がベイナイトであり、かつフェライトの平均結晶粒径が10μm以下であり、表層部のフェライトおよびベイナイトの面積率と板厚中心部における上記各相の面積率の差がそれぞれ0-20%、表層部および板厚中心部における硬さが、150-250HVであり、上記部位の硬さの差が0〜30HVであり、TSが460-760MPa、YSが360-600MPa、YRが85%以下、U.ELが9.0%、TS×U.ELが4000MPa%以上であり、板厚15-40mmである、ラインパイプ用鋼板。【選択図】なし

Description

本発明は、ラインパイプ用鋼板に関する。
ラインパイプは石油、天然ガス等を輸送する際に用いられる。特に、石油、天然ガス等の長距離輸送においては、径の大きい、いわゆる大径のラインパイプが用いられる。そして、その素材であるラインパイプ用鋼板には、高い強度および靭性が求められる。
また、地震、凍土の融解、凍結時等による地盤変動により、ラインパイプが大きく変形する場合がある。そこで、このような変形によりラインパイプが破損、損壊するのを防止するため、あらかじめ想定される歪に対し、鋼管が健全性を保てる歪の許容能力を考慮した設計(Strain−Based Design)が行なわれる。
上記の歪を考慮した設計では、パイプ形状に加工、溶接した後の母材において、軸圧縮力を受けて不均等に変形する局部座屈を防止するための性能、言い換えれば、高い変形性能が求められる。ここで、変形性能は、降伏比(以下、「YR」ともいう。)が低く、かつ一様伸び(以下、「U.El」ともいう。)が高い場合などに向上すると考えられる。
変形性能の向上と併せて、上記鋼板には耐歪時効特性の向上が要求される。ラインパイプは製管加工により蓄積された歪と、コーティング時の加熱とに起因して、歪時効硬化が生じる。一般的には、高強度になるほど、歪時効後に高い変形性能を確保することが困難になる。これは、歪時効硬化が生じると、鋼管の強度が上昇し、変形性能が低下するためである。
これら要求に対して、化学組成および組織を制御し、鋼板の耐歪時効特性を高める技術が開示されている。例えば、特許文献1および2には、フェライト、ベイナイト、および島状マルテンサイトの三相組織からなる鋼が開示されている。また、特許文献3には、フェライトと硬質相(マルテンサイト、ベイナイト)からなる組織とし、硬質相中に微細な残留オーステナイトを形成させた鋼が開示されている。
特開2008−248328号公報 特開2008−248330号公報 特開2003−253331号公報
鋼に、低いYRで、かつ高いU.Elを具備させるためには、軟質相と硬質相とを含んだ組織にするのが有効である。例えば、特許文献1および2に記載の発明では、フェライト、および3%以上の島状マルテンサイトを含む組織としている。また、特許文献3に記載の発明では、フェライトと、マルテンサイトおよび/またはベイナイトからなる組織としている。この結果、特許文献1〜3に開示された鋼では、低いYRで、かつ高いU.Elを達成している。
一方、鋼の金属組織を上述した軟質相と硬質相とを含んだ組織とする場合、製造工程が複雑になる。具体的には、特許文献1および2に開示された鋼では、製造時に圧延された鋼を、加速冷却し、加速冷却後に再加熱する工程を行う必要がある。また、特許文献3で開示された鋼では、圧延した鋼を加速冷却後に、昇温、保持、および冷速0.5℃/s以下の冷却、のうち1種以上を組み合わせた工程を行う必要がある。
実機での製造を考慮すると、複雑な製造工程は好ましくない。上述の加速冷却後に厚鋼板を再加熱するような工程は、製造コストの上昇、および製造時間のロスにつながるからである。
以上を踏まえ、本発明では、簡易な工程により製造でき、かつラインパイプ素材に必要な強度と優れた変形性能とを有するラインパイプ用鋼板を提供することを目的とする。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、下記のラインパイプ用鋼板を要旨とする。
(1)鋼板の化学組成が、質量%で、
C:0.06〜0.12%、
Si:0.10〜0.50%、
Mn:1.0〜1.8%、
P:0.02%以下、
S:0.001%以下、
Nb:0.005〜0.050%、
Ti:0.005〜0.030%、
Al:0.010〜0.040%、
N:0.001〜0.005%、
Cu:0〜0.50%、
Ni:0〜0.50%、
Cr:0〜0.50%、
Mo:0〜0.10%、
V:0〜0.50%、
B:0〜0.01%、
Ca:0〜0.02%、
REM:0〜0.02%
Mg:0〜0.02%、および
残部:Feおよび不純物であり、
下記(i)式で示されるPcmが0.15〜0.23であり、
下記(ii)式で示されるCeqが0.38〜0.43であり、
前記鋼板の表層部および板厚中心部における金属組織が、面積率で、
30〜70%のフェライト、および
3%以下の硬質相を含み、
残部がベイナイトであり、
かつ前記フェライトの平均結晶粒径が5.0〜15.0μmであり、
前記表層部におけるフェライト面積率と前記板厚中心部におけるフェライト面積率との差が0〜20%であり、
前記表層部におけるベイナイト面積率と前記板厚中心部におけるベイナイト面積率との差が0〜20%であり、
前記表層部および前記板厚中心部における硬さが、ビッカース硬さで、150〜250であり、
前記表層部における硬さと前記板厚中心部における硬さとの差が0〜30であり、
引張強さが460〜760MPa、降伏強度360〜600MPa、降伏比が85%以下、一様伸びが9.0%以上であり、前記引張強さと前記一様伸びとの積が4000(MPa・%)以上であり、
板厚15〜40mmである、ラインパイプ用鋼板。
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B ・・・(i)
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 ・・・(ii)
但し、上記(i)および(ii)式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
(2)前記化学組成が、質量%で、
Cu:0.10〜0.50%、
Ni:0.10〜0.50%、
Cr:0.10〜0.50%、
Mo:0.05〜0.10%、および
V:0.10〜0.50%、
から選択される一種以上を含有する、上記(1)に記載のラインパイプ用鋼板。
(3)前記化学組成が、質量%で、
B:0.0005〜0.01%、
を含有する、上記(1)または(2)に記載のラインパイプ用鋼板。
(4)前記化学組成が、質量%で、
Ca:0.002〜0.02%、
REM:0.003〜0.02%、および
Mg:0.003〜0.02%、
から選択される一種以上を含有する、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のラインパイプ用鋼板。
本発明によれば、簡易な工程により製造でき、かつラインパイプ素材に必要な強度と優れた変形性能とを有するラインパイプ用鋼板を得ることができる。
本発明者らは、引張強さを460〜760MPa、かつ降伏強度が360〜600MPaを目標強度として設定した。そして、上記の特性値を有し、かつ板厚が15〜40mmである鋼板に変形性能を具備させるため、種々の検討を行なった。その結果、以下の(a)〜(e)の知見を得た。
(a)歪時効後に高い変形性能を得る、すなわち、低いYRと高いU.Elとを両立するためには、金属組織をこれら二つの特性を発揮する複合組織とするのが好ましい。具体的には、フェライトおよびベイナイトを含む複合組織であることが有効である。
(b)フェライトの増加は、変形性能の向上に寄与するが、強度の向上には寄与しにくい。したがって、強度と変形性能との兼合いから、フェライト面積率を制限する必要がある。上述したように、フェライトは強度の向上には寄与しにくい。一方、フェライトの平均結晶粒径は、微細であるほど、強度が高くなる。ただし、この強度の上昇においては、引張強さの上昇よりも降伏強度の上昇が顕著であり、降伏比が上昇する。このため、強度、低降伏比を両立するためには、フェライトの平均結晶粒径の範囲を制限することが有効である。
(c)ベイナイトの増加は、強度を向上させるが、変形性能を低下させる。したがって、強度と変形性能との兼合いから、フェライトと同様、ベイナイト面積率も制限する必要がある。
(d)ラインパイプは、肉厚を一定量確保する必要があり、その素材である鋼板には、15〜40mm程度の板厚が必要となる。このように、板厚が比較的厚い場合は、鋼板の表層部と鋼板の中心部とにおいて、冷却速度等の違いに起因して、性状が異なる場合がある。そして、鋼板表層部と鋼板中心部との性状が大きく相違すると、このような性状の差に起因して、U.Elが低下する傾向にある。U.Elを低下させる性状の一例として、鋼板の表層部と中心部との金属組織の差が考えられる。加えて、表層部と中心部との硬さの差もU.Elに影響を与えると考えられる。また、硬さの差が大きいとU.Elの値が向上せず、変形性能が低くなる。
(e)上記を踏まえ、製造工程は、以下工程とすることが望ましい。具体的には、仕上圧延後、弱冷却をし、フェライト組織の制御をする。その後、強冷却を行ない、ベイナイトを生成させる工程を行う。これにより、鋼板を再加熱する等の複雑な工程を必要とせず、所望する強度と優れた変形性能とを有するラインパイプ用鋼板を得ることができる。
本発明は上記の知見に基づいてなされたものである。以下、本発明の各要件について詳しく説明する。
1.化学組成
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
C:0.06〜0.12%
Cは、鋼板の強度を向上させるために必要な元素である。460〜760MPaの引張強さを安定して得るためには、C含有量は0.06%以上とする。C含有量は、0.07%超とするのが好ましく、0.08%超とするのがより好ましい。しかしながら、C含有量が過剰であると、母材の靭性および溶接性、ならびにその溶接熱影響部(以下、「HAZ」という。)の靭性が低下する。さらに、耐歪時効特性の劣化が生ずる。このため、C含有量は、0.12%以下とし、0.10%以下とするのが好ましい。
Si:0.10〜0.50%
Siは、セメンタイトの析出を抑制する効果を有する。この効果により歪時効前後で良好な変形性能、すなわち低いYR、および高いU.Elを得ることができる。このため、Si含有量は0.10%以上とし、0.20%超とするのが好ましい。しかしながら、Si含有量が過剰であると、母材およびHAZにおいて、靱性の低下が著しくなる。また、硬さが上昇するため、U.Elが低下する。このため、Si含有量は0.50%以下とし、0.40%以下とするのが好ましい。
Mn:1.0〜1.8%
Mnは、鋼材の強度を向上させる効果を有するため、Mn含有量は1.0%以上とする。Mn含有量は1.1%以上とするのが好ましく、1.2%以上とするのがより好ましい。しかしながら、Mn含有量が過剰であると、溶接割れが生じやすくなる。さらに、Mn含有量が過剰な場合には、良好な変形特性、すなわち、低いYRと高いU.Elとを得ることが難しくなる。このため、Mn含有量は1.8%以下とする。Mn含有量は1.7%以下とするのが好ましく、1.6%以下とするのがより好ましい。
P:0.02%以下
Pは、靱性低下の原因となる元素で、その含有量が高くなり、特に、0.02%を超えると、靱性の低下が著しくなる傾向にある。このため、P含有量は0.02%以下とし、0.015%以下とするのが好ましい。P含有量は少ないほど好ましい。
S:0.001%以下
Sは、含有量が過剰であると、延性または靱性に有害な介在物を多く生成する。特に、S含有量が0.001%を超えると、介在物が多く生成し、延性および靱性の低下が著しくなる。このため、S含有量は0.001%以下とする。なお、S含有量は少ないほうが好ましく、0.0005%以下とするのが好ましい。
Nb:0.005〜0.050%
Nbは、鋼材の強度を向上させるとともに、適切な圧延条件で製造することで、鋼管母材の靱性を高める効果も有する。このため、Nb含有量は、0.005%以上とし、0.010%以上とするのが好ましい。しかしながら、Nb含有量が過剰であると、母材およびHAZにおける靱性が低下する。このため、Nb含有量は0.050%以下とし、0.030%以下とするのが好ましい。
Ti:0.005〜0.030%
Tiは、耐歪時効特性に有害なNと共に析出物(TiN)を形成し、N原子を安定化させる効果を有する。このようなTiNの形成は、耐歪時効特性を大幅に向上させるだけでなく、母材およびHAZにおける組織を微細化させる。この結果、高強度鋼の母材およびHAZの低温靭性を向上させる効果を有する。
ここで、Ti含有量が0.005%未満では、上記効果を得ることができない。したがって、Ti含有量は0.005%以上とし、0.010%以上とするのが好ましい。しかしながら、Tiを、0.030%を超えて含有させると、母材およびHAZの靭性が低下する。このため、Ti含有量は0.030%以下とし、0.025%以下とするのが好ましい。さらにTiとNとの含有量の比(Ti/N)を4.0以上とするのが好ましい。
Al:0.010〜0.040%
Alは、脱酸作用がある。また、Alは母相に固溶することで、sol.Al(酸可溶Al)としてU.Elを改善する効果を有する。このため、Al含有量は0.010%以上とし、0.015%以上とするのが好ましい。しかしながら、Al含有量が過剰になると、sol.Alの量も多くなり、HAZにおける靱性が低下する。また、表層部と板厚中心部における硬さの差が大きくなり、U.Elが低下する場合がある。このため、Al含有量は0.040%以下とし、0.030%以下とするのが好ましい。
N:0.001〜0.005%
Nは、Tiと結びついてオーステナイト粒を細粒化させることで、低温靱性を大幅に向上させる効果がある。上記効果は、N含有量が0.001%未満では得ることができないため、N含有量は0.001%以上とする。N含有量は0.002%以上とするのが好ましい。しかしながら、Nを、0.005%を超えて含有させると、母相に固溶した固溶Nの量が増加し、低温靱性が低下する。また、表層部と板厚中心部における硬さの差が大きくなり、U.Elが低下する場合がある。このため、N含有量は0.005%以下とし、0.004%以下とするのが好ましい。
本発明に係るラインパイプ用鋼板には、上記元素に加え、Cu、Ni、Cr、Mo、およびVから選択される1種以上の元素を含有させてもよい。
Cu:0〜0.50%
Cuは、鋼板の強度を向上させる効果を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Cu含有量が過剰であると、鋼板の表面性状および靱性が顕著に低下する。このため、Cu含有量は0.50%以下とし、0.30%以下とするのが好ましい。一方、上記効果を得るためには、Cu含有量は0.10%以上とするのが好ましく、0.15%以上とするのがより好ましい。
Ni:0〜0.50%
Niは、鋼板の強度および靱性を改善する効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Ni含有量が0.50%を超えると、コストアップに見合う効果が得られない。このため、Ni含有量は0.50%以下とし、0.30%以下とするのが好ましい。一方、上記効果を確実に得るためには、Ni含有量は0.10%以上とするのが好ましく、0.15%以上とするのがより好ましい。
Cr:0〜0.50%
Crは、鋼材の強度を向上させる効果を有するので、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Crの含有量が0.50%を超えると、溶接割れが生じやすくなる。このため、Cr含有量は0.50%以下とし、0.30%以下とするのが好ましい。一方、上記効果を確実に得るためには、Cr含有量は0.10%以上とするのが好ましく、0.15%以上とするのがより好ましい。
Mo:0〜0.10%
Moは、鋼板の強度を向上させる効果を有するので、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Mo含有量が過剰であると、歪時効により降伏強度が増大し、変形性能が損なわれる。また、HAZにおける靱性低下および溶接割れが発生しやすくなる。このため、Mo含有量は0.10%以下とし、0.08%以下とするのが好ましい。一方、上記効果を確実に得るためには、Mo含有量は0.05%以上とするのが好ましく、0.06%以上とするのがより好ましい。
V:0〜0.50%
Vは、鋼板の強度を向上させるので、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、V含有量が過剰であると、延性および靱性が低下する。このため、V含有量は0.50%以下とし、0.40%以下とするのが好ましい。一方、上記効果を顕著に得るためには、V含有量は0.10%以上とするのが好ましく、0.15%以上とするのがより好ましい。
本発明に係るラインパイプ用鋼板には、上記元素に加え、Bを含有させてもよい。
B:0〜0.01%
Bは、鋼材の強度を向上させるのに有効な元素であるので、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、B含有量が過剰であると、延性および靱性が低下するおそれがある。このため、B含有量は0.01%以下とし、0.007%以下とするのが好ましい。一方、上記効果を顕著に得るためには、B含有量は0.0005%以上とするのが好ましく、0.0008%以上とするのがより好ましい。
本発明に係るラインパイプ用鋼板には、上記元素に加え、Ca、REM、およびMgから選択される1種以上の元素を含有させてもよい。これらを含有させることにより化合物(硫化物、酸化物)の制御が可能になる。
Ca:0〜0.02%
REM:0〜0.02%
CaおよびREMは、硫化物(特にMnS)の形態を制御し、低温靱性を向上させるのに有効な元素であるので、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Caが0.02%を超える場合、または、REMが0.02%を超える場合には、これらの元素を含む介在物が粗大化し、クラスター化することがある。この結果、鋼材の清浄度を害し、溶接性にも悪影響を及ぼすことがある。このため、Ca含有量は0.02%以下とする。また、REM含有量は0.02%以下とする。一方、上記効果を顕著に得るためには、Ca含有量は0.002%以上とするのが好ましい。また、REM含有量は0.003%以上とするのが好ましい。
なお、REMとは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素の総称であり、これらの元素から選択される1種以上を含有させることができる。REMの含有量は上記元素の合計量を意味する。
Mg:0〜0.02%
Mgは、微細に分散した酸化物を形成し、HAZにおける粒径の粗大化を抑制して、低温靭性を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Mg含有量が過剰であると、粗大な酸化物を生成し、靭性を低下させることがある。このため、Mg含有量は0.02%以下とし、0.01%以下とするのが好ましい。一方、上記効果を確実に得るためには、Mg含有量は0.003%以上とするのが好ましい。
本発明の鋼板の化学組成において、残部はFeおよび不純物である。ここで「不純物」とは、鋼板を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
Pcm:0.15〜0.23
下記(i)式で算出されるPcmは、JIS G 3136:2012に準拠し定められており、溶接割れ感受性組成として知られている。Pcmは、0.15〜0.23とする。Pcmが0.15未満であると、HAZにおける強度が大きく低下する。このため、Pcmは0.15以上とし、0.16以上とするのが好ましい。一方、Pcmが0.23を超えると、溶接性が低下し、鋼板を管状に成形し(CUO成形し)、溶接した際に割れが生じやすくなる。このため、Pcmは0.23以下とし、0.22以下とするのが好ましい。
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B ・・・(i)
但し、上記(i)式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
Ceq:0.38〜0.43
下記(ii)式で算出されるCeqは、JIS G 3136:2012に準拠して定められており、炭素当量として知られている。Ceqは、0.38〜0.43とする。Ceqが0.38未満であると、焼きが十分に入らず、強度または靭性が不足する可能性がある。このため、Ceqは0.38以上とする。一方、Ceqが0.43を超えると、過剰に焼きが入り、ベイナイトまたはマルテンサイトを過剰に含む組織となり、母材靭性が低下する。このため、Ceqは0.43以下とし、0.42以下とするのが好ましい。
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 ・・・(ii)
但し、上記(ii)式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
2.金属組織
本発明に係るラインパイプ用鋼板は、基本的にはフェライトおよびベイナイトからなる組織とするが、上記の相以外にも、面積率で3%以下であれば、不可避的に形成される硬質相が含まれていてもよい。このような金属組織とすることで、ラインパイプを製造する際に時効処理を行なったとしても、YRおよびU.Elが低下することはない。したがって、高い強度でかつ、優れた変形性能を有する鋼板とすることができる。
2−1.鋼板表層部の金属組織
鋼板表層部の金属組織は、面積率で、30〜70%のフェライト、および3%以下の硬質相を含み、残部がベイナイトである。
2−1−1.フェライトの面積率および結晶粒径
鋼板表層部の金属組織において、フェライトは、面積率で、30〜70%とする。鋼板表層部の金属組織におけるフェライトは、低いYRで、かつ高いU.Elを実現するために有効である。このため、鋼板表層部の金属組織において、フェライトは、面積率で、30%以上とし、40%以上とするのが好ましい。しかしながら、フェライトが過剰であると、鋼板の強度を低下させる。このため、鋼板表層部の金属組織において、フェライトは、面積率で、70%以下とし、60%以下とするのが好ましい。
また、表層部のフェライトの平均結晶粒径は5.0〜15.0μmとする。上述したようにフェライトを増加させると、鋼板の強度は低下するが、フェライト組織を微細化することで、強度の低下を抑制できる。しかしながら、表層部のフェライトの平均結晶粒径が15.0μmを超えると、強度の低下を抑制できない。このため、表層部のフェライトの平均結晶粒径は15.0μm以下とする。一方、製造条件等を鑑み、表層部のフェライトの平均結晶粒径は5.0μm以上とする。
2−1−2.硬質相の面積率
鋼板の表層部の金属組織は、基本的には、フェライトおよびベイナイトで構成される金属組織を有するが、上記以外にも、面積率で3%以下の硬質相を含んでもよい。ここでいう硬質相とは、パーライト、セメンタイト、MA(島状マルテンサイト)等の組織である。但し、硬質相の量が過剰になると、強度と変形性能との両立が困難になる。このため、鋼板表層部の金属組織において、上記の硬質相は、面積率で、3%以下とする。硬質層の面積率は、低ければ低いほど好ましい。硬質相は、面積率で、1%未満であるのが好ましく、0%であるのがより好ましい。
2−1−3.ベイナイトの面積率
鋼板の表層部の金属組織において、フェライトおよび硬質相以外の残部は、ベイナイトとする。フェライト量を増加させると、鋼板の強度は低下する。このため、ベイナイトは強度を担保するため、一定量含有させる。具体的には、ベイナイトは、面積率で、30〜70%程度となる。鋼板表層部の金属組織において、ベイナイトは、面積率で、30%以上とするのが好ましく、40%以上とするのがより好ましい。しかしながら、ベイナイトが過剰であると、靭性が低下する場合がある。このため、鋼板表層部の金属組織において、ベイナイトは70%以下とするのが好ましく、60%以下とするのがより好ましい。なお、本発明において、ベイナイトとは、いわゆる「ベイニティックフェライト」、および「アシキュラーフェライト」を含む。
2−2.鋼板の板厚中心部の金属組織
鋼板の板厚中心部の金属組織は、面積率で、30〜70%のフェライト、および3%以下の硬質相を含み、残部がベイナイトである。
2−2−1.フェライトの面積率および結晶粒径
鋼板の板厚中心部の金属組織において、フェライトは、面積率で、30〜70%とする。板厚中心部の金属組織においても、フェライトは、低いYRで、かつ高いU.Elを実現するために有効である。このため、板厚中心部の金属組織において、フェライトは、面積率で、30%以上とし、40%以上とするのが好ましい。しかしながら、フェライト量が過剰であると、鋼板の強度を低下させる。このため、板厚中心部の金属組織において、フェライトは、面積率で、70%以下とし、60%以下とするのが好ましい。
また、板厚中心部のフェライトの平均結晶粒径は5.0〜15.0μmとする。上述したようにフェライトを増加させると、鋼板の強度は低下するが、フェライト組織を微細化することで、強度の低下を抑制できる。しかしながら、板厚中心部のフェライトの平均結晶粒径が15.0μmを超えると、強度の低下を抑制できない。このため、板厚中心部のフェライトの平均結晶粒径は15.0μm以下とする。一方、製造条件等を鑑み、板厚中心部のフェライトの平均結晶粒径は5.0μm以上とする。
2−2−2.硬質相の面積率
本発明に係る鋼板は、板厚中心部の金属組織として、基本的には、フェライトおよびベイナイトで構成される金属組織を有するが、上記以外にも、面積率で3%以下の硬質相を含んでもよい。硬質相とは、上述のとおりである。但し、硬質相の量が過剰になると、強度と変形性能との両立が困難になる。このため、板厚中心部の金属組織において、上記の硬質相は、面積率で、3%以下とする。硬質層の面積率は、低ければ低いほど好ましい。硬質相は、面積率で、1%未満であるのが好ましく、0%であるのがより好ましい。
2−2−3.ベイナイトの面積率
板厚中心部の金属組織において、フェライトおよび硬質相以外の残部はベイナイトとする。フェライト量を増加させると、鋼板の強度は低下する。このため、ベイナイトは強度を担保するため、一定量含有させる。具体的には、ベイナイトは、面積率で、30〜70%程度となる。板厚中心部の金属組織において、ベイナイトは、面積率で、30%以上とするのが好ましく、40%以上とするのがより好ましい。しかしながら、ベイナイトが過剰であると、靭性が低下する場合がある。このため、板厚中心部の金属組織において、ベイナイトは70%以下とするのが好ましく、60%以下とするのがより好ましい。なお、上述したように、ベイナイトとは、いわゆる「ベイニティックフェライト」、および「アシキュラーフェライト」を含む。
ここで、先の2−1.(鋼板表層部の金属組織)、および2−2.(鋼板の板厚中心部の金属組織)の観察は、以下の方法で行うことができる。
表層部の金属組織とは、鋼板の圧延方向に平行な板厚断面をナイタールで腐食後、表面から板厚方向に1.0mmの位置の組織とし、光学顕微鏡の500倍の倍率で、5視野、組織観察を行い、併せて画像解析も行う。同様に、板厚中心の位置においても5視野、組織観察を行い、併せて画像解析も行う。この結果に基づき、フェライトの面積率、フェライトの平均結晶粒径(円相当直径)、およびベイナイトの面積率を算出する。
2−3.フェライト面積率の差
表層部におけるフェライト量と板厚中心部におけるフェライト量との差が大きいと、鋼板内で降伏強度およびU.Elの差が大きくなる。この結果、局部歪により、鋼板の全断面においてU.Elが低下する。このため、鋼板の表層部におけるフェライト面積率と板厚中心部におけるフェライト面積率との差(以下、単に「フェライト面積率の差」と記載する。)は0〜20%とする。
なお、本発明に係る鋼板において「フェライト面積率の差」は、鋼板表層部におけるフェライトの面積率を板厚中心部におけるフェライトの面積率から差し引いた値とする。また、フェライト面積率の差は少なければ少ないほど好ましく、15%以下とするのが好ましい。
2−4.ベイナイト面積率の差
表層部におけるベイナイト量と板厚中心部におけるベイナイト量との差が大きい場合にも、鋼板内で降伏強度およびU.Elの差が大きくなる。この結果、局部歪により、鋼板の全断面においてU.Elが低下する。このため、鋼板の表層部におけるベイナイト面積率と板厚中心部におけるベイナイト面積率との差(以下、単に「ベイナイト面積率の差」と記載する。)は、0〜20%とする。
なお、本発明において、「ベイナイト面積率の差」は、鋼板表層部におけるベイナイトの面積率から板厚中心部におけるベイナイトの面積率を差し引いた値とする。また、ベイナイト面積率の差は少なければ少ないほど好ましく、15%以下であるのが好ましい。
2−5.鋼板の硬さ
本発明に係る鋼板では、金属組織だけでなく、硬さも重要である。このため、表層部および板厚中心部における硬さを以下に記載の範囲に制御する。
2−5−1.鋼板表層部の硬さ
表層部における硬さは、ビッカース硬さ(以下、「HV硬さ」という。)で、150〜250とする。表層部における硬さが、HV硬さで、150未満であると、十分な強度を得ることができない。このため、鋼板表層部の硬さは、HV硬さで、150以上とし、170以上とするのが好ましい。一方、鋼板表層部の硬さが、HV硬さで、250超であると、U.Elおよび低温靭性が確保できない。このため、鋼板表層部の硬さが、HV硬さで、250以下とし、230以下とするのが好ましい。
2−5−2.板厚中心部の硬さ
板厚中心部における硬さは、HV硬さで、150〜250とする。鋼板表層部における硬さと同様の理由で、板厚中心部の硬さは、HV硬さで、150以上とし、160以上とするのが好ましい。また、板厚中心部の硬さは、HV硬さで、250以下とし、220以下とするのが好ましい。
2−5−3.硬さの差
表層部における硬さと板厚中心部における硬さとの差(以下、単に「硬さの差」と記載する。)が大きいと、表層部と鋼板内部(板厚中心部)とのU.Elの差が大きくなり、局所歪により鋼板全断面でのU.Elが低下する。このため、硬さの差は0〜30とし、硬さの差は25以下とするのが好ましい。なお、鋼板表層部における硬さから板厚中心部における硬さを差し引いた値とする。
上述した硬さは、鋼板の断面を、JIS Z 2244:2009に準拠し、ビッカース硬さ試験によって測定する。ここで、表層部における硬さとは、表面から板厚方向に0.1mm深さ位置を測定した硬さである。また、硬さは、1カ所の測定値ではばらつきがあるので、10カ所測定して平均値とする。
2−6.特性
本発明に係る鋼板の引張特性は、次のとおりである。強度は、アメリカ石油協会規格API 5L(以下、単に「API 5L」という。)におけるX52〜65グレードに相当する引張強さおよび降伏強度とする。具体的には、引張強さ(「TS」ともいう。)が460〜760MPa、降伏強度(「YS」ともいう。)が360〜600MPaとする。また、降伏比(「YR」ともいう。)は85%以下、一様伸び(「U.El」ともいう。)が9.0%以上で、TS(MPa)とU.El(%)との積(TS×U.El)が4000(MPa・%)以上とする。
なお、上記YRとは、降伏強度を引張強さで除して百分率で表記したものである。また、TS×U.Elは、強度と一様伸びとのバランスを評価する指標である。TS×U.Elが大きい程、強度と一様伸びとのバランスが良好である。なお、これらの評価指標については、API 5Lに基づく引張試験片を用いて、室温で引張試験を行うことで算出することができる。
2−7.板厚
本発明に係る鋼板は、板厚を15〜40mmの範囲とする。
2−8.製造方法
本発明に係る鋼板は、製造方法によらず、上述の構成を有していれば、その効果を得られるが、例えば、以下のような製造方法により、本発明に係る鋼板を安定して得ることができる。具体的には、先ず、上記化学組成を有する鋼片を、例えば、常法の連続鋳造法等により製造した後、以下に示す工程を実施するのが好ましい。
2−8−1.鋼片加熱工程
製造した上記鋼片を1100〜1250℃の温度域で加熱して均熱化するのが好ましい。鋼片にはNbが含有されており、鋼片の加熱によって、マトリックス中でNbを固溶させることで、Nbの効果を確実に得ることができる。また、鋼片を加熱することで、熱間圧延が容易になる。このため、鋼片の加熱温度は1100℃以上とするのが好ましい。一方、鋼片の加熱温度が高すぎると、不要なエネルギーコストが発生する。このため、鋼片の加熱温度は1250℃以下とするのが好ましく、1200℃以下とするのがより好ましい。
2−8−2.圧延工程
続いて、均熱化した鋼片に熱間圧延を施し、所定の厚さにするのが好ましい。圧延のパススケジュールは、特に問わないが、仕上圧延温度は鋼板の特性を大きく左右する条件である。このため、750〜850℃の温度域で仕上圧延を行うのが好ましい。なお、以下においては仕上圧延時の鋼片の表面温度を仕上圧延温度と表記する。
仕上圧延温度が750℃未満であると、強度の確保が難しくなる。このため、仕上圧延温度は750℃以上とするのが好ましい。一方、仕上圧延温度が850℃超であると、フェライト粒が粗大になり、強度および靭性の確保が難しくなる。このため、仕上圧延温度は850℃以下とするのが好ましい。
2−8−3.一段目冷却工程
続いて、熱間圧延された鋼板を750〜850℃の温度域から水冷を開始するのが好ましい。また、15〜30℃/sの冷却速度で水冷を行うのが好ましい。仕上圧延温度と同じ温度域から水冷を開始するため、熱間圧延後、直ちに水冷を開始すればよい。
水冷を開始する温度(以下、「水冷開始温度」と記載する。)が750℃未満であると、水冷を開始する前に粗大なフェライトが生成し、低温靭性が低下する。このため、水冷開始温度は750℃以上とするのが好ましい。一方、水冷開始温度が850℃超であると、水冷開始前のオーステナイトの結晶粒が十分微細化せず、その後の金属組織も粗大になり、低温靭性が低下する。このため、水冷開始温度は850℃以下とするのが好ましい。
また、冷却速度が15℃/s未満であると、フェライト粒が粗大になり、強度が低下する。このため、冷却速度は15℃/s以上とするのが好ましい。一方、冷却速度が30℃/s超であると、フェライトの面積率が低下し、硬さが上昇し、U.Elが低下する。このため、冷却速度は30℃/s以下とするのが好ましい。
続いて、600〜700℃の温度域で水冷を停止する。水冷を停止する温度(以下、「水冷停止温度」と記載する。)が、600℃未満であると、鋼板がベイナイト域に入り空冷時に復熱してもオーステナイト域まで十分に復熱されず、その後の空冷での冷却時にフェライトが十分に生成されなくなり、低温靭性およびU.Elが低下する。空冷は、鋼板の大きさ、気温等にもよるが、目安として300s程度を最大として実施すればよい。このため、水冷停止温度は600℃以上とするのが好ましい。一方、水冷停止温度が700℃超であると、フェライト粒が粗大化する。このため、水冷停止温度は700℃以下とするのが好ましい。
上記冷却工程の後、600℃超の温度域で、60s以上、空冷を行うのが好ましい。空冷が60s未満であると、フェライトの面積率が低くなり、面積率および硬さの差が大きくなる。この結果、U.Elが低下する。空冷の方法としては、具体的には、冷装置内を移動する鋼板を水冷装置外に搬出して放置して、空冷(放冷)すればよい。この際、鋼板の表面と内部とで温度差があるため、鋼板内部の熱が鋼板表面に放出され、表面温度が上昇する、所謂、復熱により鋼板の表面温度は上昇する。このため、鋼板の表面温度は空冷中に600℃以下の温度域とはならない。なお、上記の水冷開始から空冷終了までを一段目冷却工程とする。
2−8−4.二段目冷却工程
鋼板の表面温度が600〜700℃となったら、再度水冷を行う。この水冷は、水冷装置内に搬送して600〜700℃の温度域から水冷を開始し、35〜50℃/sの冷却速度で水冷を行うのが好ましい。
上記二度目の水冷における水冷開始温度(以下、「二次水冷開始温度」と記載する。)が600℃未満であると、ベイナイトが十分硬化せず、必要な強度が得られない。このため二次水冷開始温度は600℃以上とするのが好ましい。一方、二次水冷開始温度が700℃超であると、フェライトが十分に生成しない。このため、二次水冷開始温度は700℃以下とするのが好ましい。
また、上記二度目の水冷における冷却速度(以下、「二次冷却速度」と記載する。)が35℃/s未満であると、ベイナイトが十分硬化しない。このため、二次冷却速度は35℃/s以上とするのが好ましい。一方、二次冷却速度が50℃/s超であると、低温靭性およびU.Elが低下する。このため、二次冷却速度は50℃/s以下とするのが好ましい。
この際、400〜500℃の温度域で二度目の水冷を停止する。上記の二度目の水冷を停止する温度(以下、「二次水冷停止温度」と記載する。)が400℃未満であると、低温靭性およびU.Elが低下する。このため、二次水冷停止温度は400℃以上とするのが好ましい。一方、二次水冷停止温度が500℃超であると、強度が確保できなくなる。このため、二次水冷停止温度は500℃以下とするのが好ましい。当該水冷停止後は、室温まで空冷(放冷)または徐冷すればよい。なお、上記の再度の水冷開始から空冷(放冷)終了までを二段目冷却工程とする。
ここで、上述の各温度は、鋼片および鋼板の表面部における平均温度、つまり表面温度を指し、「冷却速度」は、冷却の開始時と停止時における当該鋼板の表面部の温度差を冷却時間で除した値を指す。
上記製造条件により製造された本発明に係る鋼板を管状に成形し、突合せ部を接合し、必要に応じて、拡管および防食のためのコーティングを施すことによって、ラインパイプを製造することができる。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学組成を有し、厚さが140mmの鋼片を、表2に示す条件の、加熱、圧延、および冷却等を行い、その後、室温まで空冷し、鋼板を得た。なお、表2に示した各温度は放射温度計を用いて測定した被圧延体、つまり鋼片または鋼板の表面温度である。
Figure 2020056066
Figure 2020056066
得られた各鋼板について組織観察、硬さ測定、および引張試験により引張特性の調査を行った。
(組織観察)
組織観察においてはフェライトおよびベイナイトの面積率は、圧延方向に平行な板厚断面(L断面)の金属組織をナイタールで現出し、表層部および板厚中心部について光学顕微鏡を用いて500倍で、5視野を観察し、画像解析を行い、各相の面積率、フェライトの平均結晶粒径を算出した。表層部の金属組織は表面から板厚方向に1.0mm深さ位置の組織として、組織観察を行った。
(硬さ試験)
硬さは、板幅の中央部近傍における鋼板表層部と板厚中心部について、JIS Z 2244:2009に準拠して行った。ここで、表層部における硬さとは、表面から板厚方向に0.1mm深さ位置を測定した硬さである。試験力は0.98N(0.1kgf)とし、各10か所の平均値を測定硬度とした。
(引張試験)
引張試験は、鋼板の板厚中心から、圧延方向に対して直角方向(C方向)に、幅38.1mm、標点距離50.8mmの丸棒引張試験片を採取し、API 5L(45th)に準拠して、室温で実施した。引張試験の結果から0.5%耐力(降伏強度)、引張強さ、一様伸び、およびYR(0.5%耐力/引張強さ)を得た。
以下、結果をまとめて表3に示す。
Figure 2020056066
表3に示されるように、本発明で規定される化学組成を満足し、本発明で規定される好ましい製造条件で製造された鋼種No.1〜18は、本発明で規定される金属組織を満足し、これらは、X52〜65グレードの引張強さ、降伏強度(引張強さ460〜760MPa、降伏強度360〜600MPa)を有していた。また、これらの鋼種は、YRが85%以下であり、かつU.Elも11.0%以上と良好な値であり、優れた変形性能を有していた。
一方、本発明で規定される化学組成および金属組織を満足しない鋼種No.19〜29は、強度または変形性能のいずれかが目標とする値を満足しなかった。
以下、鋼種No.19〜29について具体的に説明する。
鋼種のNo.19は、(一段目)冷却速度が高かったので、表層部のフェライトの面積率が低下し、フェライト面積率の差およびベイナイト面積率の差が大きくなり、硬さの差も大きくなった。この結果、鋼板のU.Elが低い値となった。
No.20は、二次水冷停止温度が低かったので、表層部と板厚中心部の硬さの差も大きくなった。この結果、鋼板のU.Elが低下した。また、No.21は、空冷時間が短かったため、表層部のフェライト面積率が低くなり、フェライト面積率の差およびベイナイト面積率差が大きくなり、硬さの差も大きくなった。このため、鋼板のU.Elが低い値となった。
鋼種No.22は、水冷停止温度が低かったため、フェライト面積率が高く、かつ板厚中心部の硬度も低下し、U.Elが低下した。鋼種No.23は、一段目冷却速度が低く、表層部と板厚中心部のフェライト粒径と面積率とが高くなったため、TSが低下した。
鋼種No.24は、仕上圧延温度が高かったため、フェライトの平均結晶粒径が大きくなり、低いTSおよびYSとなった。鋼種No.25は、C含有量が本発明で規定する範囲外であったため、硬さが上昇し、TSが高く、U.Elが低い値となった。
鋼種No.26は、Si含有量が本発明で規定する範囲外であったため、表層部の硬さが大きく、かつ表層部と板厚中心部との硬さの差も大きくなり、YSが高く、U.Elが低い値となった。鋼種No.27は、Mn含有量が本発明で規定する範囲外であったため、表層部の硬さが上昇し、かつ表層部と板厚中心部との硬さの差も大きくなり、YSおよびYRが高く、さらにU.Elが低い値となった。
No.28は、Al含有量が本発明で規定する範囲外であったため、表層部と板厚中心部との硬さの差が大きくなり、U.Elが低い値となった。No.29は、N含有量が本発明で規定する範囲外であったため、表層部と板厚中心部との硬さの差が大きくなり、U.Elが低い値となった。

Claims (4)

  1. 鋼板の化学組成が、質量%で、
    C:0.06〜0.12%、
    Si:0.10〜0.50%、
    Mn:1.0〜1.8%、
    P:0.02%以下、
    S:0.001%以下、
    Nb:0.005〜0.050%、
    Ti:0.005〜0.030%、
    Al:0.010〜0.040%、
    N:0.001〜0.005%、
    Cu:0〜0.50%、
    Ni:0〜0.50%、
    Cr:0〜0.50%、
    Mo:0〜0.10%、
    V:0〜0.50%、
    B:0〜0.01%、
    Ca:0〜0.02%、
    REM:0〜0.02%
    Mg:0〜0.02%、および
    残部:Feおよび不純物であり、
    下記(i)式で示されるPcmが0.15〜0.23であり、
    下記(ii)式で示されるCeqが0.38〜0.43であり、
    前記鋼板の表層部および板厚中心部における金属組織が、面積率で、
    30〜70%のフェライト、および
    3%以下の硬質相を含み、
    残部がベイナイトであり、
    かつ前記フェライトの平均結晶粒径が5.0〜15.0μmであり、
    前記表層部におけるフェライト面積率と前記板厚中心部におけるフェライト面積率との差が0〜20%であり、
    前記表層部におけるベイナイト面積率と前記板厚中心部におけるベイナイト面積率との差が0〜20%であり、
    前記表層部および前記板厚中心部における硬さが、ビッカース硬さで、150〜250であり、
    前記表層部における硬さと前記板厚中心部における硬さとの差が0〜30であり、
    引張強さが460〜760MPa、降伏強度360〜600MPa、降伏比が85%以下、一様伸びが9.0%以上であり、前記引張強さと前記一様伸びとの積が4000(MPa・%)以上であり、
    板厚15〜40mmである、ラインパイプ用鋼板。
    Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B ・・・(i)
    Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 ・・・(ii)
    但し、上記(i)および(ii)式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
  2. 前記化学組成が、質量%で、
    Cu:0.10〜0.50%、
    Ni:0.10〜0.50%、
    Cr:0.10〜0.50%、
    Mo:0.05〜0.10%、および
    V:0.10〜0.50%、
    から選択される一種以上を含有する、請求項1に記載のラインパイプ用鋼板。
  3. 前記化学組成が、質量%で、
    B:0.0005〜0.01%、
    を含有する、請求項1または2に記載のラインパイプ用鋼板。
  4. 前記化学組成が、質量%で、
    Ca:0.002〜0.02%、
    REM:0.003〜0.02%、および
    Mg:0.003〜0.02%、
    から選択される一種以上を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載のラインパイプ用鋼板。

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