JP2020056066A - ラインパイプ用鋼板 - Google Patents
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Abstract
Description
C:0.06〜0.12%、
Si:0.10〜0.50%、
Mn:1.0〜1.8%、
P:0.02%以下、
S:0.001%以下、
Nb:0.005〜0.050%、
Ti:0.005〜0.030%、
Al:0.010〜0.040%、
N:0.001〜0.005%、
Cu:0〜0.50%、
Ni:0〜0.50%、
Cr:0〜0.50%、
Mo:0〜0.10%、
V:0〜0.50%、
B:0〜0.01%、
Ca:0〜0.02%、
REM:0〜0.02%
Mg:0〜0.02%、および
残部:Feおよび不純物であり、
下記(i)式で示されるPcmが0.15〜0.23であり、
下記(ii)式で示されるCeqが0.38〜0.43であり、
前記鋼板の表層部および板厚中心部における金属組織が、面積率で、
30〜70%のフェライト、および
3%以下の硬質相を含み、
残部がベイナイトであり、
かつ前記フェライトの平均結晶粒径が5.0〜15.0μmであり、
前記表層部におけるフェライト面積率と前記板厚中心部におけるフェライト面積率との差が0〜20%であり、
前記表層部におけるベイナイト面積率と前記板厚中心部におけるベイナイト面積率との差が0〜20%であり、
前記表層部および前記板厚中心部における硬さが、ビッカース硬さで、150〜250であり、
前記表層部における硬さと前記板厚中心部における硬さとの差が0〜30であり、
引張強さが460〜760MPa、降伏強度360〜600MPa、降伏比が85%以下、一様伸びが9.0%以上であり、前記引張強さと前記一様伸びとの積が4000(MPa・%)以上であり、
板厚15〜40mmである、ラインパイプ用鋼板。
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B ・・・(i)
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 ・・・(ii)
但し、上記(i)および(ii)式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
Cu:0.10〜0.50%、
Ni:0.10〜0.50%、
Cr:0.10〜0.50%、
Mo:0.05〜0.10%、および
V:0.10〜0.50%、
から選択される一種以上を含有する、上記(1)に記載のラインパイプ用鋼板。
B:0.0005〜0.01%、
を含有する、上記(1)または(2)に記載のラインパイプ用鋼板。
Ca:0.002〜0.02%、
REM:0.003〜0.02%、および
Mg:0.003〜0.02%、
から選択される一種以上を含有する、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のラインパイプ用鋼板。
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
Cは、鋼板の強度を向上させるために必要な元素である。460〜760MPaの引張強さを安定して得るためには、C含有量は0.06%以上とする。C含有量は、0.07%超とするのが好ましく、0.08%超とするのがより好ましい。しかしながら、C含有量が過剰であると、母材の靭性および溶接性、ならびにその溶接熱影響部(以下、「HAZ」という。)の靭性が低下する。さらに、耐歪時効特性の劣化が生ずる。このため、C含有量は、0.12%以下とし、0.10%以下とするのが好ましい。
Siは、セメンタイトの析出を抑制する効果を有する。この効果により歪時効前後で良好な変形性能、すなわち低いYR、および高いU.Elを得ることができる。このため、Si含有量は0.10%以上とし、0.20%超とするのが好ましい。しかしながら、Si含有量が過剰であると、母材およびHAZにおいて、靱性の低下が著しくなる。また、硬さが上昇するため、U.Elが低下する。このため、Si含有量は0.50%以下とし、0.40%以下とするのが好ましい。
Mnは、鋼材の強度を向上させる効果を有するため、Mn含有量は1.0%以上とする。Mn含有量は1.1%以上とするのが好ましく、1.2%以上とするのがより好ましい。しかしながら、Mn含有量が過剰であると、溶接割れが生じやすくなる。さらに、Mn含有量が過剰な場合には、良好な変形特性、すなわち、低いYRと高いU.Elとを得ることが難しくなる。このため、Mn含有量は1.8%以下とする。Mn含有量は1.7%以下とするのが好ましく、1.6%以下とするのがより好ましい。
Pは、靱性低下の原因となる元素で、その含有量が高くなり、特に、0.02%を超えると、靱性の低下が著しくなる傾向にある。このため、P含有量は0.02%以下とし、0.015%以下とするのが好ましい。P含有量は少ないほど好ましい。
Sは、含有量が過剰であると、延性または靱性に有害な介在物を多く生成する。特に、S含有量が0.001%を超えると、介在物が多く生成し、延性および靱性の低下が著しくなる。このため、S含有量は0.001%以下とする。なお、S含有量は少ないほうが好ましく、0.0005%以下とするのが好ましい。
Nbは、鋼材の強度を向上させるとともに、適切な圧延条件で製造することで、鋼管母材の靱性を高める効果も有する。このため、Nb含有量は、0.005%以上とし、0.010%以上とするのが好ましい。しかしながら、Nb含有量が過剰であると、母材およびHAZにおける靱性が低下する。このため、Nb含有量は0.050%以下とし、0.030%以下とするのが好ましい。
Tiは、耐歪時効特性に有害なNと共に析出物(TiN)を形成し、N原子を安定化させる効果を有する。このようなTiNの形成は、耐歪時効特性を大幅に向上させるだけでなく、母材およびHAZにおける組織を微細化させる。この結果、高強度鋼の母材およびHAZの低温靭性を向上させる効果を有する。
Alは、脱酸作用がある。また、Alは母相に固溶することで、sol.Al(酸可溶Al)としてU.Elを改善する効果を有する。このため、Al含有量は0.010%以上とし、0.015%以上とするのが好ましい。しかしながら、Al含有量が過剰になると、sol.Alの量も多くなり、HAZにおける靱性が低下する。また、表層部と板厚中心部における硬さの差が大きくなり、U.Elが低下する場合がある。このため、Al含有量は0.040%以下とし、0.030%以下とするのが好ましい。
Nは、Tiと結びついてオーステナイト粒を細粒化させることで、低温靱性を大幅に向上させる効果がある。上記効果は、N含有量が0.001%未満では得ることができないため、N含有量は0.001%以上とする。N含有量は0.002%以上とするのが好ましい。しかしながら、Nを、0.005%を超えて含有させると、母相に固溶した固溶Nの量が増加し、低温靱性が低下する。また、表層部と板厚中心部における硬さの差が大きくなり、U.Elが低下する場合がある。このため、N含有量は0.005%以下とし、0.004%以下とするのが好ましい。
Cuは、鋼板の強度を向上させる効果を有するため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Cu含有量が過剰であると、鋼板の表面性状および靱性が顕著に低下する。このため、Cu含有量は0.50%以下とし、0.30%以下とするのが好ましい。一方、上記効果を得るためには、Cu含有量は0.10%以上とするのが好ましく、0.15%以上とするのがより好ましい。
Niは、鋼板の強度および靱性を改善する効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Ni含有量が0.50%を超えると、コストアップに見合う効果が得られない。このため、Ni含有量は0.50%以下とし、0.30%以下とするのが好ましい。一方、上記効果を確実に得るためには、Ni含有量は0.10%以上とするのが好ましく、0.15%以上とするのがより好ましい。
Crは、鋼材の強度を向上させる効果を有するので、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Crの含有量が0.50%を超えると、溶接割れが生じやすくなる。このため、Cr含有量は0.50%以下とし、0.30%以下とするのが好ましい。一方、上記効果を確実に得るためには、Cr含有量は0.10%以上とするのが好ましく、0.15%以上とするのがより好ましい。
Moは、鋼板の強度を向上させる効果を有するので、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Mo含有量が過剰であると、歪時効により降伏強度が増大し、変形性能が損なわれる。また、HAZにおける靱性低下および溶接割れが発生しやすくなる。このため、Mo含有量は0.10%以下とし、0.08%以下とするのが好ましい。一方、上記効果を確実に得るためには、Mo含有量は0.05%以上とするのが好ましく、0.06%以上とするのがより好ましい。
Vは、鋼板の強度を向上させるので、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、V含有量が過剰であると、延性および靱性が低下する。このため、V含有量は0.50%以下とし、0.40%以下とするのが好ましい。一方、上記効果を顕著に得るためには、V含有量は0.10%以上とするのが好ましく、0.15%以上とするのがより好ましい。
Bは、鋼材の強度を向上させるのに有効な元素であるので、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、B含有量が過剰であると、延性および靱性が低下するおそれがある。このため、B含有量は0.01%以下とし、0.007%以下とするのが好ましい。一方、上記効果を顕著に得るためには、B含有量は0.0005%以上とするのが好ましく、0.0008%以上とするのがより好ましい。
REM:0〜0.02%
CaおよびREMは、硫化物(特にMnS)の形態を制御し、低温靱性を向上させるのに有効な元素であるので、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Caが0.02%を超える場合、または、REMが0.02%を超える場合には、これらの元素を含む介在物が粗大化し、クラスター化することがある。この結果、鋼材の清浄度を害し、溶接性にも悪影響を及ぼすことがある。このため、Ca含有量は0.02%以下とする。また、REM含有量は0.02%以下とする。一方、上記効果を顕著に得るためには、Ca含有量は0.002%以上とするのが好ましい。また、REM含有量は0.003%以上とするのが好ましい。
Mgは、微細に分散した酸化物を形成し、HAZにおける粒径の粗大化を抑制して、低温靭性を向上させる効果を有する。このため、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Mg含有量が過剰であると、粗大な酸化物を生成し、靭性を低下させることがある。このため、Mg含有量は0.02%以下とし、0.01%以下とするのが好ましい。一方、上記効果を確実に得るためには、Mg含有量は0.003%以上とするのが好ましい。
下記(i)式で算出されるPcmは、JIS G 3136:2012に準拠し定められており、溶接割れ感受性組成として知られている。Pcmは、0.15〜0.23とする。Pcmが0.15未満であると、HAZにおける強度が大きく低下する。このため、Pcmは0.15以上とし、0.16以上とするのが好ましい。一方、Pcmが0.23を超えると、溶接性が低下し、鋼板を管状に成形し(CUO成形し)、溶接した際に割れが生じやすくなる。このため、Pcmは0.23以下とし、0.22以下とするのが好ましい。
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B ・・・(i)
但し、上記(i)式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
下記(ii)式で算出されるCeqは、JIS G 3136:2012に準拠して定められており、炭素当量として知られている。Ceqは、0.38〜0.43とする。Ceqが0.38未満であると、焼きが十分に入らず、強度または靭性が不足する可能性がある。このため、Ceqは0.38以上とする。一方、Ceqが0.43を超えると、過剰に焼きが入り、ベイナイトまたはマルテンサイトを過剰に含む組織となり、母材靭性が低下する。このため、Ceqは0.43以下とし、0.42以下とするのが好ましい。
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 ・・・(ii)
但し、上記(ii)式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。
本発明に係るラインパイプ用鋼板は、基本的にはフェライトおよびベイナイトからなる組織とするが、上記の相以外にも、面積率で3%以下であれば、不可避的に形成される硬質相が含まれていてもよい。このような金属組織とすることで、ラインパイプを製造する際に時効処理を行なったとしても、YRおよびU.Elが低下することはない。したがって、高い強度でかつ、優れた変形性能を有する鋼板とすることができる。
鋼板表層部の金属組織は、面積率で、30〜70%のフェライト、および3%以下の硬質相を含み、残部がベイナイトである。
鋼板表層部の金属組織において、フェライトは、面積率で、30〜70%とする。鋼板表層部の金属組織におけるフェライトは、低いYRで、かつ高いU.Elを実現するために有効である。このため、鋼板表層部の金属組織において、フェライトは、面積率で、30%以上とし、40%以上とするのが好ましい。しかしながら、フェライトが過剰であると、鋼板の強度を低下させる。このため、鋼板表層部の金属組織において、フェライトは、面積率で、70%以下とし、60%以下とするのが好ましい。
鋼板の表層部の金属組織は、基本的には、フェライトおよびベイナイトで構成される金属組織を有するが、上記以外にも、面積率で3%以下の硬質相を含んでもよい。ここでいう硬質相とは、パーライト、セメンタイト、MA(島状マルテンサイト)等の組織である。但し、硬質相の量が過剰になると、強度と変形性能との両立が困難になる。このため、鋼板表層部の金属組織において、上記の硬質相は、面積率で、3%以下とする。硬質層の面積率は、低ければ低いほど好ましい。硬質相は、面積率で、1%未満であるのが好ましく、0%であるのがより好ましい。
鋼板の表層部の金属組織において、フェライトおよび硬質相以外の残部は、ベイナイトとする。フェライト量を増加させると、鋼板の強度は低下する。このため、ベイナイトは強度を担保するため、一定量含有させる。具体的には、ベイナイトは、面積率で、30〜70%程度となる。鋼板表層部の金属組織において、ベイナイトは、面積率で、30%以上とするのが好ましく、40%以上とするのがより好ましい。しかしながら、ベイナイトが過剰であると、靭性が低下する場合がある。このため、鋼板表層部の金属組織において、ベイナイトは70%以下とするのが好ましく、60%以下とするのがより好ましい。なお、本発明において、ベイナイトとは、いわゆる「ベイニティックフェライト」、および「アシキュラーフェライト」を含む。
鋼板の板厚中心部の金属組織は、面積率で、30〜70%のフェライト、および3%以下の硬質相を含み、残部がベイナイトである。
鋼板の板厚中心部の金属組織において、フェライトは、面積率で、30〜70%とする。板厚中心部の金属組織においても、フェライトは、低いYRで、かつ高いU.Elを実現するために有効である。このため、板厚中心部の金属組織において、フェライトは、面積率で、30%以上とし、40%以上とするのが好ましい。しかしながら、フェライト量が過剰であると、鋼板の強度を低下させる。このため、板厚中心部の金属組織において、フェライトは、面積率で、70%以下とし、60%以下とするのが好ましい。
本発明に係る鋼板は、板厚中心部の金属組織として、基本的には、フェライトおよびベイナイトで構成される金属組織を有するが、上記以外にも、面積率で3%以下の硬質相を含んでもよい。硬質相とは、上述のとおりである。但し、硬質相の量が過剰になると、強度と変形性能との両立が困難になる。このため、板厚中心部の金属組織において、上記の硬質相は、面積率で、3%以下とする。硬質層の面積率は、低ければ低いほど好ましい。硬質相は、面積率で、1%未満であるのが好ましく、0%であるのがより好ましい。
板厚中心部の金属組織において、フェライトおよび硬質相以外の残部はベイナイトとする。フェライト量を増加させると、鋼板の強度は低下する。このため、ベイナイトは強度を担保するため、一定量含有させる。具体的には、ベイナイトは、面積率で、30〜70%程度となる。板厚中心部の金属組織において、ベイナイトは、面積率で、30%以上とするのが好ましく、40%以上とするのがより好ましい。しかしながら、ベイナイトが過剰であると、靭性が低下する場合がある。このため、板厚中心部の金属組織において、ベイナイトは70%以下とするのが好ましく、60%以下とするのがより好ましい。なお、上述したように、ベイナイトとは、いわゆる「ベイニティックフェライト」、および「アシキュラーフェライト」を含む。
表層部におけるフェライト量と板厚中心部におけるフェライト量との差が大きいと、鋼板内で降伏強度およびU.Elの差が大きくなる。この結果、局部歪により、鋼板の全断面においてU.Elが低下する。このため、鋼板の表層部におけるフェライト面積率と板厚中心部におけるフェライト面積率との差(以下、単に「フェライト面積率の差」と記載する。)は0〜20%とする。
表層部におけるベイナイト量と板厚中心部におけるベイナイト量との差が大きい場合にも、鋼板内で降伏強度およびU.Elの差が大きくなる。この結果、局部歪により、鋼板の全断面においてU.Elが低下する。このため、鋼板の表層部におけるベイナイト面積率と板厚中心部におけるベイナイト面積率との差(以下、単に「ベイナイト面積率の差」と記載する。)は、0〜20%とする。
本発明に係る鋼板では、金属組織だけでなく、硬さも重要である。このため、表層部および板厚中心部における硬さを以下に記載の範囲に制御する。
表層部における硬さは、ビッカース硬さ(以下、「HV硬さ」という。)で、150〜250とする。表層部における硬さが、HV硬さで、150未満であると、十分な強度を得ることができない。このため、鋼板表層部の硬さは、HV硬さで、150以上とし、170以上とするのが好ましい。一方、鋼板表層部の硬さが、HV硬さで、250超であると、U.Elおよび低温靭性が確保できない。このため、鋼板表層部の硬さが、HV硬さで、250以下とし、230以下とするのが好ましい。
板厚中心部における硬さは、HV硬さで、150〜250とする。鋼板表層部における硬さと同様の理由で、板厚中心部の硬さは、HV硬さで、150以上とし、160以上とするのが好ましい。また、板厚中心部の硬さは、HV硬さで、250以下とし、220以下とするのが好ましい。
表層部における硬さと板厚中心部における硬さとの差(以下、単に「硬さの差」と記載する。)が大きいと、表層部と鋼板内部(板厚中心部)とのU.Elの差が大きくなり、局所歪により鋼板全断面でのU.Elが低下する。このため、硬さの差は0〜30とし、硬さの差は25以下とするのが好ましい。なお、鋼板表層部における硬さから板厚中心部における硬さを差し引いた値とする。
本発明に係る鋼板の引張特性は、次のとおりである。強度は、アメリカ石油協会規格API 5L(以下、単に「API 5L」という。)におけるX52〜65グレードに相当する引張強さおよび降伏強度とする。具体的には、引張強さ(「TS」ともいう。)が460〜760MPa、降伏強度(「YS」ともいう。)が360〜600MPaとする。また、降伏比(「YR」ともいう。)は85%以下、一様伸び(「U.El」ともいう。)が9.0%以上で、TS(MPa)とU.El(%)との積(TS×U.El)が4000(MPa・%)以上とする。
本発明に係る鋼板は、板厚を15〜40mmの範囲とする。
本発明に係る鋼板は、製造方法によらず、上述の構成を有していれば、その効果を得られるが、例えば、以下のような製造方法により、本発明に係る鋼板を安定して得ることができる。具体的には、先ず、上記化学組成を有する鋼片を、例えば、常法の連続鋳造法等により製造した後、以下に示す工程を実施するのが好ましい。
製造した上記鋼片を1100〜1250℃の温度域で加熱して均熱化するのが好ましい。鋼片にはNbが含有されており、鋼片の加熱によって、マトリックス中でNbを固溶させることで、Nbの効果を確実に得ることができる。また、鋼片を加熱することで、熱間圧延が容易になる。このため、鋼片の加熱温度は1100℃以上とするのが好ましい。一方、鋼片の加熱温度が高すぎると、不要なエネルギーコストが発生する。このため、鋼片の加熱温度は1250℃以下とするのが好ましく、1200℃以下とするのがより好ましい。
続いて、均熱化した鋼片に熱間圧延を施し、所定の厚さにするのが好ましい。圧延のパススケジュールは、特に問わないが、仕上圧延温度は鋼板の特性を大きく左右する条件である。このため、750〜850℃の温度域で仕上圧延を行うのが好ましい。なお、以下においては仕上圧延時の鋼片の表面温度を仕上圧延温度と表記する。
続いて、熱間圧延された鋼板を750〜850℃の温度域から水冷を開始するのが好ましい。また、15〜30℃/sの冷却速度で水冷を行うのが好ましい。仕上圧延温度と同じ温度域から水冷を開始するため、熱間圧延後、直ちに水冷を開始すればよい。
鋼板の表面温度が600〜700℃となったら、再度水冷を行う。この水冷は、水冷装置内に搬送して600〜700℃の温度域から水冷を開始し、35〜50℃/sの冷却速度で水冷を行うのが好ましい。
組織観察においてはフェライトおよびベイナイトの面積率は、圧延方向に平行な板厚断面(L断面)の金属組織をナイタールで現出し、表層部および板厚中心部について光学顕微鏡を用いて500倍で、5視野を観察し、画像解析を行い、各相の面積率、フェライトの平均結晶粒径を算出した。表層部の金属組織は表面から板厚方向に1.0mm深さ位置の組織として、組織観察を行った。
硬さは、板幅の中央部近傍における鋼板表層部と板厚中心部について、JIS Z 2244:2009に準拠して行った。ここで、表層部における硬さとは、表面から板厚方向に0.1mm深さ位置を測定した硬さである。試験力は0.98N(0.1kgf)とし、各10か所の平均値を測定硬度とした。
引張試験は、鋼板の板厚中心から、圧延方向に対して直角方向(C方向)に、幅38.1mm、標点距離50.8mmの丸棒引張試験片を採取し、API 5L(45th)に準拠して、室温で実施した。引張試験の結果から0.5%耐力(降伏強度)、引張強さ、一様伸び、およびYR(0.5%耐力/引張強さ)を得た。
鋼種のNo.19は、(一段目)冷却速度が高かったので、表層部のフェライトの面積率が低下し、フェライト面積率の差およびベイナイト面積率の差が大きくなり、硬さの差も大きくなった。この結果、鋼板のU.Elが低い値となった。
Claims (4)
- 鋼板の化学組成が、質量%で、
C:0.06〜0.12%、
Si:0.10〜0.50%、
Mn:1.0〜1.8%、
P:0.02%以下、
S:0.001%以下、
Nb:0.005〜0.050%、
Ti:0.005〜0.030%、
Al:0.010〜0.040%、
N:0.001〜0.005%、
Cu:0〜0.50%、
Ni:0〜0.50%、
Cr:0〜0.50%、
Mo:0〜0.10%、
V:0〜0.50%、
B:0〜0.01%、
Ca:0〜0.02%、
REM:0〜0.02%
Mg:0〜0.02%、および
残部:Feおよび不純物であり、
下記(i)式で示されるPcmが0.15〜0.23であり、
下記(ii)式で示されるCeqが0.38〜0.43であり、
前記鋼板の表層部および板厚中心部における金属組織が、面積率で、
30〜70%のフェライト、および
3%以下の硬質相を含み、
残部がベイナイトであり、
かつ前記フェライトの平均結晶粒径が5.0〜15.0μmであり、
前記表層部におけるフェライト面積率と前記板厚中心部におけるフェライト面積率との差が0〜20%であり、
前記表層部におけるベイナイト面積率と前記板厚中心部におけるベイナイト面積率との差が0〜20%であり、
前記表層部および前記板厚中心部における硬さが、ビッカース硬さで、150〜250であり、
前記表層部における硬さと前記板厚中心部における硬さとの差が0〜30であり、
引張強さが460〜760MPa、降伏強度360〜600MPa、降伏比が85%以下、一様伸びが9.0%以上であり、前記引張強さと前記一様伸びとの積が4000(MPa・%)以上であり、
板厚15〜40mmである、ラインパイプ用鋼板。
Pcm=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5B ・・・(i)
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Ni/40+Cr/5+Mo/4+V/14 ・・・(ii)
但し、上記(i)および(ii)式中の各元素記号は、鋼中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表し、含有されない場合はゼロとする。 - 前記化学組成が、質量%で、
Cu:0.10〜0.50%、
Ni:0.10〜0.50%、
Cr:0.10〜0.50%、
Mo:0.05〜0.10%、および
V:0.10〜0.50%、
から選択される一種以上を含有する、請求項1に記載のラインパイプ用鋼板。 - 前記化学組成が、質量%で、
B:0.0005〜0.01%、
を含有する、請求項1または2に記載のラインパイプ用鋼板。 - 前記化学組成が、質量%で、
Ca:0.002〜0.02%、
REM:0.003〜0.02%、および
Mg:0.003〜0.02%、
から選択される一種以上を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載のラインパイプ用鋼板。
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