JP2012126925A - ラインパイプ用鋼材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.04〜0.10%、Si:0.05〜0.60%、Mn:1.3〜1.9%、Cr:0.01〜0.60%、V:0.01〜0.09%、Nb:0.001〜0.09%、Ti:0.005〜0.040%およびsol.Al:0.005〜0.060%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物としてのP:0.02%以下、S:0.005%以下、N:0.010%以下およびO:0.005%以下である化学組成を有し、面積率で、平均結晶粒径が10μm以下のフェライト:40〜80%、ベイナイト:20〜60%、島状マルテンサイト:1.0〜5.0%で構成されるミクロ組織を有するラインパイプ用鋼材。
【選択図】 なし
Description
C:0.04〜0.10%
Cは、鋼材の強度を高めるために必要な元素である。520〜760MPaの引張強度を安定して得るために、Cは0.04%以上の含有量とする必要がある。またCはSiとの相互作用によりMA生成を促進させる効果がある。一方、Cの含有量が大きくなり過ぎると、母材の靭性および溶接性、さらにはその溶接熱影響部(以下、「HAZ」という。)の靭性が低下するだけでなく、耐歪時効特性の劣化が生ずる。したがって、Cの含有量を0.04〜0.10%とした。Cは0.05%を超えて含有させるのが好ましく、0.06%を超えて含有させるのがより好ましい。また、C含有量の好ましい上限は0.08%である。
Siは、セメンタイトの析出を抑制し、MAの生成を促進させる効果があり、歪時効前後で良好な変形性能、すなわち低YRおよび高U.Elを得るのに効果がある。これらの効果を得るために、Siを0.05%以上含有させる。しかしながら、Siの含有量が大きくなりすぎると、母材およびHAZの靱性の悪化が著しくなる。したがって、Siの含有量を0.05〜0.60%とした。Siは0.20%を超えて含有させるのが好ましい。また、Si含有量の好ましい上限は0.50%である。
Mnは、鋼材の強度を高める作用を有する。この効果を充分に得るためにMnを1.3%以上含有させる。一方、その含有量が過大となると溶接割れが起こりやすくなる。また、Mn含有量が過剰な場合には、良好な変形特性、すなわち、低YRおよび高U.Elを得ることが難しくなる。したがって、Mnの含有量を1.3〜1.9%とした。Mn含有量の好ましい下限は1.4%であり、より好ましい下限は1.5%である。また、Mn含有量の好ましい上限は1.8%であり、より好ましい上限1.7%である。
Crは、鋼材の強度を向上させるのに有効な元素であるので含有させる。この効果を得るにはCrを0.01%以上含有する必要である。一方、Cr含有量が過剰な場合、溶接割れが起こりやすくなる。したがって、Cr含有量は0.01〜0.60%とする。Cr含有量の好ましい下限は0.04%であり、より好ましい下限は0.08%である。一方、Crの含有量の好ましい上限は0.50%である。
Vは、鋼材の強度を向上させるのに有効な元素である。この効果を得るにはVを0.01%以上含有させる必要がある。一方、V含有量が過剰な場合、延性および靱性が悪化する。したがって、V含有量は0.01〜0.09%とした。Vの含有量の好ましい下限は0.02%であり、より好ましい下限は0.03%である。一方、Vの含有量の好ましい上限は0.08%である。
Nbは、鋼材の強度を向上させる効果を有するとともに、適切な圧延条件と組合せることにより、母材靱性を高める作用もある。このため、Nbは、0.001%以上含有させる必要がある。しかしながら、その含有量が多すぎると、母材とHAZの靱性が悪化する。したがって、Nbの含有量を0.001〜0.09%とした。好ましい下限は0.01%であり、より好ましい下限はである。また、好ましい上限は0.08%であり、より好ましい上限は0.07%である。
Tiは、耐歪時効特性に有害な元素のNと共に析出物(TiN)を形成し、N原子を安定化させ、耐歪時効特性を大幅に向上させるだけでなく、母材およびHAZの組織を微細化させて高強度鋼の母材とHAZの低温靭性を向上させる効果がある。しかし、その含有量が0.005%未満では前記の効果が得られず、逆に0.040%を超えて含有させると母材およびHAZの靭性が悪化する。よって、Ti含有量は0.005〜0.040%とした。好ましい下限は0.010%であり、好ましい上限は0.030%である。さらにTiとNの含有量の比(Ti/N)を4.0以上とすることが好ましい。
Alは、脱酸作用を有する元素であり、またU.Elの改善にも効果があるので、sol.Al(酸可溶Al)として0.005%以上含有させる。しかしながら、sol.Alの含有量が大きくなり過ぎると、HAZの靱性が悪化する。したがって、sol.Alの含有量を0.005〜0.060%とした。なお、sol.Alの含有量は下限を0.010%とするのが好ましく、上限を0.050%とすることが好ましい。
Pは、靱性悪化の原因となる元素で、その含有量が多くなり、特に、0.02%を超えると、靱性の悪化が著しくなり易い。したがって、Pの含有量を0.02%以下とした。なお、Pの含有量は少ないほうがよく、0.01%以下とすることが好ましい。
Sは、含有量が多くなると延性または靱性に有害な介在物を多く生成する。特に、0.005%を超えると、介在物が多くなって延性の低下や靱性の悪化が著しくなる。したがって、Sの含有量を0.005%以下とした。なお、Sの含有量は少ないほうがよく、0.003%以下とすることが好ましい。
Nは、耐歪時効特性に極めて有害な不純物元素であり、その含有量が0.010%を超えると、母材およびその溶接部の靭性低下が著しくなるだけでなく、他の耐歪時効特性向上対策を講じても良好な耐歪時効特性が得られなくなる。よって、N含有量は0.010%以下とした。なお、N含有量は少ないほうがよく、好ましい上限は0.005%である。
Oは、含有量が微量であればフェライト生成核となる酸化物の生成に有効である場合があるものの、上記のNと同様に、耐歪時効特性に極めて有害な不純物元素であり、その含有量が多くなると母材およびその溶接部の靭性低下が著しくなるだけでなく、他の耐歪時効特性向上対策を講じても良好な耐歪時効特性が得られなくなる。したがって、Oの含有量を0.005%以下とした。なお、O含有量は少ないほうがよく、好ましい上限は0.0020%、より好ましい上限は0.0015%である。
Cuは、鋼材の強度を向上させる効果を有するので、必要に応じて含有させてもよいが、その含有量が大きいと、鋼材の表面性状や靱性が顕著に悪化する。したがって、Cuを含有させる場合の含有量を1.0%以下とした。上記の効果は0.05%以上含有させた場合に顕著となる。Cu含有量の好ましい下限は0.1%であり、より好ましい下限は0.2%である。また、好ましい上限は0.6%であり、より好ましい上限は0.5%である。
Niは、鋼材の強度を向上させる作用があり、また、靱性を改善する作用もあるので、必要に応じて含有させてもよいが、Niの含有量が1.0%を超えると、コストアップに見合う効果が得られない。よって、Niを含有させる場合の含有量を1.5%以下とした。上記の効果は0.05%以上含有させた場合に顕著となる。Ni含有量の好ましい下限は0.1%であり、より好ましい下限は0.2%である。また、好ましい上限は0.8%であり、より好ましい上限は0.6%である。
Moは、鋼材の強度を向上させる効果を有し、さらにMA生成を促進する効果があるので、必要に応じて含有させてもよいが、その含有量が過大であると、歪時効による降伏強度の増加が大きくなり、変形特性が損なわれる。また、HAZの靱性悪化および溶接割れが発生し易くなる。そのため、Moを含有させる場合の含有量を0.50%以下とした。この効果が顕著となるのは0.04%以上含有させた場合である。Mo含有量の好ましい下限は0.05%であり、より好ましい下限は0.07%である。また、好ましい上限は0.4%であり、より好ましい上限は0.3%である。
Bは、鋼材の強度を向上させるのに有効な元素であるので、必要に応じて含有させてもよいが、その含有量が過剰な場合、延性および靱性が悪化するおそれがある。したがって、Bを含有させる場合には、その含有量を0.01%以下とする。上記の効果が顕著となるのは0.0004%以上含有させた場合である。B含有量の好ましい下限は0.0008%である。また、好ましい上限は0.002%である。
REM:0.02%以下
CaおよびREMは、硫化物(特にMnS)の形態を制御し、低温靱性を向上させるのに有効な元素であるので、必要に応じて含有させてもよいが、Caが0.01%を超える場合、または、REMが0.02%を超える場合には、CaおよびREMを含む介在物が粗大化し、クラスター化することがあり、鋼材の清浄度を害し、溶接性にも悪影響を及ぼすことがある。このため、CaおよびREMを含有させる場合の含有量をそれぞれ0.01%以下および0.02%以下とする。。上記の効果が顕著となるのは、Caは0.0005%以上、REMは0.001%以上含有させた場合である。特に溶接性の観点よりCaの含有量の上限は0.006%にすることが好ましい。なお、REMとは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素の総称であり、これらの元素から選択される1種以上を含有させることができる。REMの含有量は上記元素の合計量を意味する。
Mgは、微細に分散した酸化物を形成し、HAZの粒径の粗大化を抑制して低温靭性を向上させる効果を発揮するので、必要に応じて含有させてもよいが、その含有量が過大であると、粗大な酸化物を生成し靭性を劣化させることがある。このため、Mgを含有させる場合には、その含有量を0.008%以下とする。上記の効果が顕著となるのはMgを0.0005%以上含有させた場合である。
本発明に係るラインパイプ用鋼材は、ミクロ組織をフェライト、ベイナイトおよびMA(島状マルテンサイト)で構成される複合組織とし、しかも組織の構成比を最適化することで、高強度で高い変形性能、すなわち低YRで、かつ高U.Elを有するものである。本発明のラインパイプ用鋼材(鋼板)を使用し、鋼管を製造した場合には、予めの鋼板が高い変形性能を有することから、製管の製造の際、時効処理を行ったとしても、YRおよびU.Elが悪化することが少ない。
フェライトは、低YRおよび高U.Elを実現するために有効であるが、フェライト組織の増加は鋼材の強度を低下させる。よって、上記複合組織におけるフェライト占有面積率を40〜80%とした。フェライト占有面積率の好ましい上限は70%である。また、フェライト占有面積率の好ましい下限は50%である。
上記のように、フェライト組織を増加させると鋼材の強度が低下するし、API 5L X60〜70グレードの鋼材が得られにくくなるが、ベイナイトはこの強度低下を補償する作用を有する。この効果を得るためには、ベイナイト占有面積率を20%以上とする必要がある。しかし、ベイナイト占有面積率が60%を超えると、X70グレードを超えるほど強度が過剰に上昇する場合がある。よって、上記複合組織におけるベイナイト占有面積率を20〜60%とした。ベイナイト占有面積率は50%未満とするのが好ましい。
MA占有面積率の増加は、引張強度を増加させるとともに、低YRおよび高U.Elを得るのに有効である。この効果は、MA占有面積率が1.0%以上の場合に発揮される。一方、MA占有面積率が5.0%を超えると変形性能の向上効果はやや飽和し、母材靱性を劣化させる。また、引張強度が増加して、X70グレードを超えるほど強度が過剰に上昇する場合がある。よって、MA占有面積率は、1.0〜5.0%とした。MA占有面積率の好ましい下限は1.5%である。MA占有面積率は3.0%未満とするのが好ましい。
本発明に係るラインパイプ用鋼材の製造方法には制約はないが、例えば下記の方法を採用できる。
Claims (3)
- 520〜760MPaの引張強度と、415〜635MPaの降伏強度と、0.75未満の降伏比を有するラインパイプ用鋼材であって、
質量%で、C:0.04〜0.10%、Si:0.05〜0.60%、Mn:1.3〜1.9%、Cr:0.01〜0.60%、V:0.01〜0.09%、Nb:0.001〜0.09%、Ti:0.005〜0.040%およびsol.Al:0.005〜0.060%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物としてのP、S、NおよびOがそれぞれP:0.02%以下、S:0.005%以下、N:0.010%以下およびO:0.005%以下である化学組成を有し、かつ
面積率で、平均結晶粒径が10μm以下のフェライト:40〜80%、ベイナイト:20〜60%、島状マルテンサイト:1.0〜5.0%で構成されるミクロ組織を有することを特徴とするラインパイプ用鋼材。 - Feの一部に代えて、さらに質量%で、Cu:1.0%以下、Ni:1.0%以下、Mo:0.5%以下およびB:0.01%以下から選択される1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のラインパイプ用鋼材。
- Feの一部に代えて、さらに質量%で、Ca:0.01%以下、REM:0.02%以下およびMg:0.008%以下から選択される1種以上を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のラインパイプ用鋼材。
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