JP2018100436A - 低温靭性に優れた低降伏比高強度熱延鋼板の製造方法 - Google Patents

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【課題】低温靭性に優れた低降伏比高強度熱延鋼板の製造方法の提供。【解決手段】所定の成分を含み、数式(1)で定義されるPCM値が0.16〜0.22%を満足し、残部Fe及び不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼素材を加熱温度:1050〜1300℃に加熱し、930℃以下の温度域での累積圧下率を60%以上となる仕上圧延を施し熱延鋼板とし、仕上圧延終了後直ちに冷却を開始し、冷却停止温度:600〜450℃の温度域迄、板厚中央部の平均冷却速度を30℃/s以上で冷却する一次冷却と、冷却停止温度から巻取温度迄、板厚中央部の平均冷却速度を2℃/s以下で冷却する二次冷却とを施し、巻取温度を450℃以上で巻き取る、低降伏比高強度熱延鋼板の製造方法。PCM(%)=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5×B…(1)(各元素記号は含有量(質量%))【選択図】なし

Description

本発明は、ラインパイプに使用されるスパイラル鋼管あるいは電縫鋼管の素材として好適な、造管後の降伏強さの低下を防止する、低温靭性に優れた低降伏比高強度熱延鋼板の製造方法に関する。
鋼板をらせん状に巻きながら造管するスパイラル鋼管は、太径の鋼管を効率的に製造できることから、近年、原油、天然ガスを輸送するラインパイプ用として多用されるようになってきた。とくに、長距離輸送するパイプラインでは、輸送効率を高めることが要求され高圧化しており、また油井やガス井が寒冷地に多く存在することもあり、寒冷地を径由することが多い。このため、使用されるラインパイプは、高強度化、高靭性化することが要求されている。
さらに、耐座屈性、耐震性の観点から、ラインパイプは、低降伏比であることが求められている。スパイラル鋼管の管長手方向の降伏比は、造管によってほとんど変化せず、素材である熱延鋼板の降伏比とほぼ一致する。そのため、スパイラル鋼管製のラインパイプを低降伏比化するためには、素材である熱延鋼板の降伏比を低くすることが必要となる。
このような要求に対し、例えば特許文献1には、低温靭性に優れた低降伏比高張力ラインパイプ用熱延鋼板の製造方法が記載されている。特許文献1に記載された技術では、重量%で、C:0.03〜0.12%、Si:0.50%以下、Mn:1.70%以下、Al:0.070%以下を含有し、さらに、Nb:0.01〜0.05%、V:0.01〜0.02%、Ti:0.01〜0.20%のうちの少なくとも1種を含有する鋼スラブを、1180〜1300℃に加熱した後、粗圧延終了温度:950〜1050℃、仕上圧延終了温度:760〜800℃の条件で熱間圧延を行い、5〜20℃/sの冷却速度で冷却し、670℃に至るまでの間に空冷を開始し5〜20s間保持し、次いで20℃/s以上の冷却速度で冷却し、500℃以下の温度で巻き取り、熱延鋼板としている。特許文献1に記載された技術によれば、引張強さ:60kgf/mm2以上(590MPa以上)で85%以下の低降伏比と、破面遷移温度:−60℃以下の高靭性を有する熱延鋼板が製造できるとしている。
また、特許文献2には、高強度低降伏比パイプ用熱延鋼板の製造方法が記載されている。特許文献2に記載された技術は、重量%で、C:0.02〜0.12%、Si:0.1〜1.5%、Mn:2.0%以下、Al:0.01〜0.10%を含有し、さらに、Mo+Cr:0.1〜1.5%を含有する鋼を1000〜1300℃に加熱し、750〜950℃の範囲で熱間圧延を終了し、冷却速度:10〜50℃/sにて巻取温度まで冷却し、480〜600℃の範囲で巻き取る、熱延鋼板の製造方法である。特許文献2に記載された技術によれば、オーステナイト温度域からの急冷を行うことなく、フェライトを主体とし、面積率で1〜20%のマルテンサイトを有し、85%以下の低降伏比を有し、かつ造管後の降伏強さ低下量の少ない熱延鋼板が得られるとしている。
また、特許文献3には、低温靭性に優れた低降伏比電縫鋼管の製造方法が記載されている。特許文献3に記載された技術では、質量%で、C:0.01〜0.09%、Si:0.50%以下、Mn:2.5%以下、Al:0.01〜0.10%、Nb:0.005〜0.10%を含み、さらにMo:0.5%以下、Cu:0.5%以下、Ni:0.5%以下、Cr:0.5%以下のうちの1種または2種以上を、Mn、Si、P、Cr、Ni、Moの含有量の関係式であるMneqが2.0以上を満足するように含有する組成のスラブを熱間圧延し、5℃/s以上の冷却速度で500〜650℃まで冷却して巻取り、この温度範囲で10min以上滞留させてから500℃未満の温度まで冷却して熱延鋼板とし、該熱延鋼板を造管して電縫鋼管とする。特許文献3に記載された技術によれば、ベイニティックフェライトを主相とし、3%以上のマルテンサイトと、必要に応じ1%以上の残留オーステナイトを含む組織を有し、破面遷移温度が−50℃以下で、低温靭性に優れ、かつ高い塑性変形吸収能を有する電縫鋼管を製造できるとしている。
また、特許文献4には、低降伏比高靭性厚鋼板が記載されている。特許文献4に記載された技術では、質量%で、C:0.03〜0.15%、Si:1.0%以下、Mn:1.0〜2.0%、Al:0.005〜0.060%、Ti:0.008〜0.030%、N:0.0020〜0.010%、O:0.010%以下を含む組成のスラブに、好ましくは950〜1300℃に加熱し、Ar3変態点+100℃〜Ar3変態点+150℃の温度範囲での圧下率を10%以上とし、仕上げ圧延温度を800〜700℃とした熱間圧延を施したのち、仕上げ圧延温度から−50℃以内で加速冷却を開始し、5〜50℃/sの平均冷却速度で400〜150℃まで水冷したのち、空冷することにより、平均粒径が10〜50μmのフェライトと、1〜20面積%の島状マルテンサイトが分散したベイナイトとの混合組織を有する低降伏比で高靭性の厚鋼板を得ることができるとしている。
特開昭63−227715号公報 特開平10−176239号公報 特開2006−299413号公報 特開2010−59472号公報
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、冷却速度等を所定の比較的速い冷却範囲内となるように制御する必要があり、とくに、厚肉の熱延鋼板を製造するためには、大掛かりな冷却設備等を必要とするという問題がある。また、特許文献1に記載された技術で得られる熱延鋼板は、軟質なポリゴナルフェライトを主とする組織を有し、所望の高強度を得にくいという問題もある。
また、特許文献2に記載された技術では、依然として造管後の降伏強さの低下が認められ、最近の鋼管強度の増加要求を満足できない場合が生じるという問題がある。
また、特許文献3に記載された技術では、最近の寒冷地仕様である、破面遷移温度vTrsが−80℃以下という優れた低温靭性を安定して確保できるまでには至っていないという問題がある。
また、特許文献4に記載された技術で得られた厚鋼板では、破面遷移温度vTrsで高々−30〜−41℃程度の靭性しか確保できておらず、最近の更なる靭性向上の要望には対処できないという問題がある。
本発明は、かかる従来技術の問題を解決し、複雑な熱処理を施すことなく、また、大掛かりな設備改造を行なうことなく、鋼管用素材、とくにスパイラル鋼管用として好適な、スパイラル造管後の強度低下が防止できる、低温靭性に優れた低降伏比高強度熱延鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
ここでいう「高強度」とは、圧延方向から30度方向の降伏強さが555MPa以上かつ板幅方向の引張強さが700MPa以上である場合を、また「低温靭性に優れた」とは、シャルピー衝撃試験の破面遷移温度vTrsが−90℃以下である場合を、また、「低降伏比」とは、連続降伏型の応力歪曲線を示し、降伏比が85%以下である場合を、それぞれ云うものとする。また、「鋼板」には鋼板および鋼帯を含むものとする。
本発明者らは、上記した目的を達成するために、造管後の鋼管強度、および鋼管靭性に及ぼす各種要因について鋭意研究した。その結果、造管による強度の低下は、圧縮応力が作用する管内面側でのバウシンガー効果による降伏強さの低下と、引張応力が作用する管外面側での降伏伸びの消失とによって引き起こされていることを見出した。そこで、本発明者らは、更なる研究を行った結果、鋼板の組織を、微細なベイニティックフェライトを主相とし、ベイニティックフェライト中に硬質な塊状マルテンサイトを微細分散させた組織とすることにより、造管後、とくにスパイラル造管後の強度低下を防止できるとともに、85%以下の低降伏比を有し、さらに優れた靭性をも兼備する鋼管とすることができることに想到した。このような組織とすることにより、鋼管素材である鋼板の加工硬化能が向上するため、造管時における管外面側での加工硬化により十分な強度上昇が得られ、造管後、とくにスパイラル造管後、の強度低下を抑制でき、さらに塊状マルテンサイトを微細に分散させることにより、靭性が顕著に向上することを知見した。
さらに、上記組織を有する鋼板の製造方法として、Si添加量を低減しながら、PCM値を所定範囲に制御することを中心とする成分組成、熱間圧延工程では、鋼素材の加熱温度、930℃以下の温度域での累積圧下率、冷却工程では、一次冷却、二次冷却の条件等を規定することで、上記組織を有する熱延鋼板が得られることも見出した。
本発明は、かかる知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は、次のとおりである。
[1]鋼素材に、熱間圧延工程、冷却工程、巻取工程を施して、熱延鋼板とするにあたり、前記熱間圧延工程は、質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:0.01〜0.50%、Mn:1.4〜2.2%、P:0.025%以下、S:0.005%以下、Al:0.005〜0.10%、Nb:0.02〜0.10%、Ti:0.001〜0.030%、Mo:0.01〜0.50%、 Cr:0.01〜0.50%、Cu:0.01〜0.50%、 Ni:0.01〜0.50%を含み、下記式(1)で定義されるPCM値が0.16〜0.22%を満足し、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼素材を加熱温度:1050〜1300℃に加熱し、930℃以下の温度域での累積圧下率:60%以上となる仕上圧延を施し熱延鋼板とする工程であり、前記冷却工程は、仕上圧延終了後直ちに冷却を開始し、冷却停止温度:600〜450℃の温度域まで、板厚中央部の平均冷却速度:30℃/s以上で冷却する一次冷却と、前記冷却停止温度から巻取温度まで、板厚中央部の平均冷却速度:2℃/s以下で冷却する二次冷却からなる工程であり、前記巻取工程は、巻取温度:450℃以上で巻き取る工程であることを特徴とする低温靭性に優れた低降伏比高強度熱延鋼板の製造方法。
PCM(%)=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5×B…(1)
但し、各元素記号は含有量(質量%)を示す。
[2]前記二次冷却は、冷却停止温度から巻取温度まで、板厚中央部の平均冷却速度:2℃/s以下での冷却に代わり、前記冷却停止温度から前記巻取温度までの温度域で20s以上滞留させることを特徴とする上記[1]に記載の低温靭性に優れた低降伏比高強度熱延鋼板の製造方法。
[3]前記成分組成が、質量%で、下記式(2)で定義されるMoeq が1.4〜2.2%を満足することを特徴とする上記[1]または[2]に記載の低温靭性に優れた低降伏比高強度熱延鋼板の製造方法。
Moeq(%)=Mo+0.36Cr+0.77Mn+0.07Ni ‥‥(2)
但し、各元素記号は含有量(質量%)を示す。
[4]前記成分組成が、さらに、質量%で、V:0.10%以下、B:0.0005%以下のうちの1種または2種を含有することを特徴とする上記[1]〜[3]のいずれかに記載の低温靭性に優れた低降伏比高強度熱延鋼板の製造方法。
[5]前記成分組成が、さらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.0050%を含有することを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかに記載の低温靭性に優れた低降伏比高強度熱延鋼板の製造方法。
本発明によれば、造管後の強度低下が少なく、圧延方向から30度方向の降伏強さが555MPa以上で板幅方向の引張強さが700MPa以上、シャルピー衝撃試験の破面遷移温度vTrsが−90℃以下、かつ降伏比が85%以下の低降伏比を有する、低温靭性に優れた低降伏比高強度熱延鋼板が得られる。
このような低温靭性に優れた低降伏比高強度熱延鋼板を、特別な熱処理を施すことなく、容易にかつ安価に製造できる。
本発明の低温靭性に優れた低降伏比高強度熱延鋼板は、特にスパイラル鋼管用素材として好適であり、耐震性に優れた建築用部材となる高強度スパイラル鋼管杭が製造できるという効果もある。
また、リールパージ法で敷設されるラインパイプや、耐震性を要求されるラインパイプ用の電縫鋼管を安価にかつ容易に製造できるという効果もある。
以上、本発明は産業上格段の効果を奏する。
まず、本発明熱延鋼板の成分組成限定理由について説明する。以下、特に断わらない限り質量%は単に%で記す。
C:0.03〜0.10%
Cは、炭化物として析出し、析出強化を介し鋼板の強度増加に寄与するとともに、結晶粒微細化を介し鋼板の靭性向上にも寄与する元素である。さらに、Cは、鋼中に固溶しオーステナイトを安定化し、未変態オーステナイトの形成を促進する作用を有する。このような効果を得るためには、0.03%以上の含有を必要とする。一方、0.10%を超える含有は、結晶粒界に粗大なセメンタイトを形成する傾向が強くなり、靭性が低下する。このため、Cは0.03〜0.10%の範囲に限定する。なお、好ましくは0.04〜0.09%である。
Si:0.01〜0.50%
Siは、固溶強化を介して鋼板の強度増加に寄与するとともに、硬質第二相(例えば、マルテンサイト)の形成を介し、降伏比低減に寄与する。このような効果を得るためには、0.01%以上の含有を必要とする。一方、0.50%を超える含有は、赤スケールの生成が顕著となり、鋼板外観性状が低下する。このため、Siは0.01〜0.50%の範囲に限定する。なお、好ましくは0.02〜0.20%である。
Mn:1.4〜2.2%
Mnは、固溶して鋼の焼入れ性を向上させ、マルテンサイトの生成を促進させるとともに、ベイニティックフェライト変態開始温度を低下させ、組織の微細化を介して鋼板靭性の向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、1.4%以上の含有を必要とする。一方、2.2%を超える含有は、溶接熱影響部の靭性を低下させる。このため、Mnは1.4〜2.2%の範囲に限定する。なお、塊状マルテンサイトの安定生成という観点からは、好ましくは1.6〜2.0%である。
P:0.025%以下
Pは、固溶して鋼板強度の増加に寄与するが、同時に靭性を低下させる。このため、本発明では、Pは不純物として可及的に低減することが望ましいが、0.025%までは許容できる。よって、0.025%以下である。
S:0.005%以下
Sは、鋼中ではMnS等の粗大な硫化物系介在物を形成し、スラブ等の割れを生起するとともに、鋼板の延性を低下させる。このような現象は0.005%を超える含有で顕著になる。このため、Sは0.005%以下に限定する。なお、好ましくは0.002%以下である。
Al:0.005〜0.10%
Alは、脱酸剤として作用するとともに、歪時効の原因となるNを固定するのに有効な元素である。このような効果を得るためには、0.005%以上の含有を必要とする。一方、0.10%を超える含有は、鋼中酸化物が増加し母材および溶接部の靭性を低下させる。また、スラブ等の鋼素材、鋼板を加熱炉で加熱する際に、表層で窒化層を形成しやすく、降伏比の増加をもたらす恐れがある。このため、Alは0.005〜0.10%の範囲に限定する。なお、好ましくは0.08%以下である。
Nb:0.02〜0.10%
Nbは、鋼中に固溶し、あるいは炭窒化物として析出し、オーステナイト粒の粗大化を抑制するとともに、オーステナイト粒の再結晶を抑制する作用を有し、オーステナイトの未再結晶温度域圧延を可能とする。また、炭化物あるいは炭窒化物として微細に析出して、鋼板の強度増加に寄与する元素である。熱間圧延後の冷却中に、熱間圧延により導入された転位上に炭化物あるいは炭窒化物として析出し、γ→α変態の核として作用し、ベイニティックフェライトの粒内生成を促進し、微細な塊状の未変態オーステナイト、ひいては微細な塊状のマルテンサイトの生成に寄与する。このような効果を得るためには0.02%以上の含有を必要とする。一方、0.10%を超える過剰な含有は、熱間圧延時の変形抵抗が増大し、熱間圧延が困難となる恐れがある。また、0.10%を超える過剰な含有は、主相であるベイニティックフェライトの降伏強さの増加を招き、85%以下の降伏比を確保することが困難となる。このため、Nbは0.02〜0.10%の範囲に限定する。なお、好ましくは0.03〜0.07%である。
Ti:0.001〜0.030%
Tiは、Nを窒化物として固定し、スラブ割れの防止に寄与するとともに、炭化物として微細に析出して鋼板強度を増加させる作用を有する。このような効果を得るためには、0.001%以上の含有を必要とする。一方、0.030%を超えて多量に含有するとベイニティックフェライト変態点を過度に上昇させ、鋼板の靭性が低下する。このため、Tiは0.001〜0.030%の範囲に限定する。なお、好ましくは0.005〜0.025%である。
Mo:0.01〜0.50%
Moは、焼入れ性向上に寄与し、ベイニティックフェライト中のCを未変態オーステナイト中に引き寄せ、未変態オーステナイトの焼入性を向上させることを介してマルテンサイト形成を促進する作用を有する。さらに、鋼中に固溶し固溶強化により鋼板強度の増加に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上の含有を必要とする。一方、0.50%を超える含有は、必要以上にマルテンサイトを形成させ、鋼板の靭性を低下させる。また、Moは高価な元素であり、多量の含有は材料コストの高騰を招く。以上から、Moは0.01〜0.50%の範囲に限定する。なお、好ましくは0.10〜0.40%である。
Cr:0.01〜0.50%
Crは、γ→α変態を遅延させ、焼入れ性向上に寄与し、マルテンサイト形成を促進する作用を有する。このような効果を得るためには、0.01%以上の含有を必要とする。一方、0.50%を超える含有は、溶接部に欠陥を多発させる傾向となる。このため、Crは0.01〜0.50%の範囲に限定する。なお、好ましくは0.20〜0.45%である。
Cu:0.01〜0.50%
Cuは、焼入れ性向上に寄与し、マルテンサイト形成を促進することに加えて、さらに靭性の向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上の含有を必要とする。一方、0.50%を超えて含有しても、効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できないため経済的に不利となる。このため、Cuは0.01〜0.50%の範囲に限定する。なお、好ましくは0.05〜0.45%である。
Ni:0.01〜0.50%
Niは、焼入れ性向上に寄与し、マルテンサイト形成を促進することに加えて、さらに靭性の向上に寄与する元素である。このような効果を得るためには、0.01%以上の含有を必要とする。一方、0.50%を超えて含有しても、効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できないため経済的に不利となる。このため、Niは0.01〜0.50%の範囲に限定する。なお、好ましくは0.05〜0.45%である。
上記した成分が基本の成分であるが、本発明では、上記した成分を、上記した含有範囲内で、かつ、下記式(1)で定義されるPCM値(単位は%)が0.16≦PCM≦0.22を満足するように含有する。
PCM(%)=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5×B…(1)
但し、各元素記号は含有量(質量%)を示す。
PCMは、溶接割れ感受性指数である。上記式(1)において、各元素記号は含有量(質量%)とし、含有しない元素は0とする。PCMが0.16%未満では目標の強度レベルに到達せず、PCMが0.22%超えでは溶接性や溶接部靱性が著しく劣化するため、PCM値は0.16〜0.22%の範囲とする。特に0.17〜0.21%とすることが好ましい。
また、さらに、下記式(2)で定義されるMoeq値(単位は%) が1.4≦Moeq≦2.2%の範囲を満足することが好ましい。
Moeq(%)=Mo+0.36Cr+0.77Mn+0.07Ni ‥‥(2)
但し、各元素記号は含有量(質量%)を示す。
Moeqは、冷却工程を経た後に、鋼板中に残存する未変態オーステナイトの焼入れ性を表す指標である。Moeqが1.4%未満では、未変態オーステナイトの焼入れ性が不足し、その後の巻取工程中にパーライト等に変態する。一方、Moeqが2.2%を超えると、必要以上にマルテンサイトが生成し、靭性が低下する。このため、Moeqは1.4〜2.2%の範囲に限定することが好ましい。Moeqが1.5%以上あれば、低降伏比となり、さらに変形能が向上する。このため、1.5%以上とすることがより好ましい。
本発明では、上記した成分に加え、さらに必要に応じて、選択元素として、V:0.10%以下、B:0.0005%以下のうちの1種または2種、および/または、Ca:0.0005〜0.0050%を含有することができる。
V:0.10%以下、B:0.0005%以下のうちの1種または2種
V、Bはいずれも、鋼板の高強度化に寄与する元素であり、必要に応じて選択して含有できる。Vは、固溶強化、あるいは析出強化を介して、またBは、結晶粒界に偏析して、焼入れ性向上を介し、鋼板の高強度化に寄与する。このような効果を得るためには、V:0.01%以上、B:0.0001%以上、含有することが好ましい。一方、V:0.10%を超える含有は溶接性を低下させ、B:0.0005%を超える含有は鋼板の靭性や熱間加工性を低下させる。このため、含有する場合には、V:0.10%以下、B:0.0005%以下に限定することが好ましい。
Ca:0.0005〜0.0050%
Caは、粗大な硫化物を球状の硫化物とする硫化物の形態制御に寄与する元素であり、必要に応じて含有できる。このような効果を得るためには、Ca:0.0005%以上含有することが好ましい。一方、Ca:0.0050%を超える含有は、鋼板の清浄度を低下させる。このため、含有する場合にはCa:0.0005〜0.0050%の範囲に限定することが好ましい。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。不可避的不純物としては、N:0.005%以下、O:0.005%以下、Mg:0.003%以下、Sn:0.005%以下が許容できる。
次に、本発明の低温靭性に優れた低降伏比高強度熱延鋼板の製造方法について説明する。
本発明では、上記した成分組成を有する鋼素材に、熱間圧延工程、冷却工程、巻取工程を施して、熱延鋼板とする。
なお、使用する鋼素材の製造方法はとくに限定する必要はなく、上記した成分組成の溶鋼を、転炉、電気炉等の通常公知の溶製方法を用いて、溶製し、連続鋳造法等の通常公知の溶製方法により、スラブ等の鋼素材とすることが好ましい。
得られた鋼素材には、熱間圧延工程を施す。熱間圧延工程は、上記した成分組成を有する鋼素材を、加熱温度:1050〜1300℃に加熱し、例えば粗圧延を施しシートバーとしたのち、シートバーに、930℃以下の温度域での累積圧下率:60%以上となる仕上圧延を施し熱延鋼板とする。
加熱温度:1050〜1300℃
本発明で使用する鋼素材は、上記したようにNb、Tiを必須含有する。析出強化により所望の高強度を確保するためには、これらの粗大な炭化物、窒化物等を一旦溶解させて、その後微細析出させることが必要となる。そのため、鋼素材の加熱温度は1050℃以上とする。1050℃未満では、各元素が未固溶のままとなり、所望の鋼板強度が得られない。一方、1300℃を超えて高温になると、結晶粒の粗大化が生じ、鋼板靭性が低下する。このため、鋼素材の加熱温度は1050〜1300℃に限定する。
上記した加熱温度に加熱された鋼素材は、好ましくは粗圧延を施されてシートバーとされる。粗圧延の条件はとくに限定する必要はなく、所望の寸法形状のシートバーが確保できる条件であればよい。
次いで、仕上圧延され、所望の寸法形状の熱延鋼板とする。仕上圧延は、930℃以下の温度域での累積圧下率が60%以上の圧延とする。
930℃以下の温度域での累積圧下率:60%以上
ベイニティックフェライトの微細化、および塊状マルテンサイトの微細分散のために、930℃以下の温度域での累積圧下率を60%以上とする。930℃以下の温度域での累積圧下率が60%未満では、圧下量が不足し、主相である微細なベイニティックフェライトおよび第二相の微細な塊状マルテンサイトを確保できない。また、γ→α変態の核生成を促進するNbC等の析出サイトとなる転位が不足し、ベイニティックフェライトの粒内生成が不足し、塊状マルテンサイトを形成するための塊状の未変態γを微細かつ多数分散して残留させることができなくなる。このため、仕上圧延における930℃以下の温度域での累積圧下率は60%以上に限定する。なお、好ましくは、累積圧下率は80%以下である。圧下率が80%を超えて大きくしても、効果が飽和し、さらにセパレーションの発生が著しくなり、シャルピ−吸収エネルギーの低下を招く場合がある。
なお、仕上圧延の圧延終了温度は、鋼板靭性、鋼板強度、圧延負荷等の観点から、850〜760℃とすることが好ましい。仕上圧延の圧延終了温度が850℃を超えて高温となると、930℃以下の温度域での累積圧下率を60%以上とするために、1パス当たりの圧下量を大きくする必要があり、圧延荷重の増加を招く場合がある。一方、760℃未満と低温となると、圧延中にフェライトが生成し、組織、析出物の粗大化を招き、低温靭性、強度が低下する場合がある。
得られた熱延鋼板は、次いで冷却工程を施される。
冷却工程は、仕上圧延終了後直ちに冷却を開始し、冷却停止温度:600〜450℃の温度域まで、板厚中央部の平均冷却速度:30℃/s以上で冷却する一次冷却と、さらに、二次冷却として、冷却停止温度から巻取温度まで、板厚中央部の平均冷却速度:2℃/s以下で冷却するか、あるいは、冷却停止温度から前記巻取温度までの温度域で20s以上滞留させる。
一次冷却の冷却速度:板厚中央部の平均冷却速度:30℃/s以上
仕上圧延終了後、直ちに、好ましくは15s以内に冷却を開始する。一次冷却の冷却速度は、板厚中央部の平均冷却速度で、30℃/s以上の範囲とする。平均冷却速度が30℃/s未満では、所望の微細なベイニティックフェライトおよび塊状マルテンサイトを確保することが難しくなる。このため、仕上圧延終了後の一次冷却の平均冷却速度は30℃/s以上の範囲に限定する。なお、好ましくは50℃/s以上である。
冷却停止温度:600〜450℃
一次冷却の冷却停止温度は600〜450℃の範囲の温度とする。冷却停止温度が600℃より高温では、所望のベイニティックフェライトを主相とする組織を確保することが難しくなる。一方、冷却停止温度が450℃より低温では、未変態γがほぼ変態を完了して所望量の塊状マルテンサイトを確保できなくなる。なお、冷却停止温度は板厚中央部の温度である。
本発明では、上記した一次冷却に続いて、二次冷却として、上記した冷却停止温度から巻取温度までの温度域の冷却を、緩冷却とする。この温度域を緩冷却とすることにより、C等の合金元素がさらに未変態γ中へ拡散して、未変態γが安定化して、その後の冷却により塊状マルテンサイトの生成が容易となる。このような緩冷却方法としては以下の2つの方法のいずれかである。上記した冷却停止温度から巻取温度までを、板厚中央部の平均冷却速度で2℃/s以下、好ましくは1.5℃/s以下で冷却する。あるいは、上記した冷却停止温度から巻取温度までの温度域で20s以上滞留させる。冷却停止温度から巻取温度までを、2℃/s超の平均冷却速度で冷却すると、C等の合金元素が未変態γ中へ十分に拡散できず、未変態γの安定化が不十分となり、未変態γがベイニティックフェライト間に残存する形で棒状となり、所望の塊状マルテンサイトの生成が困難となる。
なお、この二次冷却は、ランナウトテーブルの後段での注水を停止して行うことが好ましい。板厚の薄い鋼板では、所望の冷却条件を確保するために、鋼板上に残存する冷却水の完全除去、保温カバーの設置等で調整することが好ましい。さらに、上記した温度域で20s以上の滞留時間を確保するためには搬送速度を調整することが好ましい。二次冷却後、熱延鋼板は巻取工程を施される。
巻取工程は、巻取温度:450℃以上で巻き取る工程とする。
巻取温度:450℃以上
巻取温度が450℃未満では、所望の低降伏比化を実現できなくなる。このため、巻取温度は450℃以上に限定する。巻取温度:450℃以上で巻き取ることにより、フェライトとオーステナイトが共存する温度域で所定時間以上滞留させることができる。なお、巻取温度は鋼板表面の温度である。
以上により本発明の低温靭性に優れた低降伏比高強度熱延鋼板が得られる。なお、上記した製造方法で製造された熱延鋼板を造管素材として、通常の造管工程を経て、スパイラル鋼管、電縫鋼管とすることができる。造管工程はとくに限定する必要はなく、通常の工程がいずれも適用できる。
本発明の熱延鋼板は以下の組織を有することを特徴とする。以下、限定理由について説明する。
本発明の熱延鋼板は、ベイニティックフェライトを主相とし、第二相として、アスペクト比:5.0未満、かつ、結晶粒径の大きさが、最大で5μm以下、平均で0.5〜2.0μmである、塊状マルテンサイトを面積率で1〜15%含む組織を有する。また、ベイニティックフェライトの平均結晶粒径は10μm以下である。
ベイニティックフェライトを主相とし、主相と第二相とからなる組織を有する。
ここで、主相とは、面積率で50%以上の占有面積を有する相をいう。主相であるベイニティックフェライトは、転位密度が高い下部組織を有する相であり、針状フェライト、アシキュラーフェライトを含む。なお、ベイニティックフェライトには、転位密度が極めて低いポリゴナルフェライトや、細かいサブグレン等の下部組織をともなう準ポリゴナルフェライトは含まれない。なお、所望の高強度を確保するために、主相であるベイニティックフェライトには、微細な炭窒化物が析出していることが必要となる。
主相であるベイニティックフェライトの平均結晶粒径は10μm以下とする。平均結晶粒径が10μmを超えて大きくなると、5%未満の低歪域での加工硬化能が不十分で、スパイラル造管時の曲げ加工により降伏強さが低下する恐れがある。このため、主相であるベイニティックフェライトの平均結晶粒径は10μm以下に限定する。主相の平均結晶粒径を微細にすることにより、マルテンサイトを多く含む場合であっても、所望の低温靭性を確保することができるようになる。
第二相として、アスペクト比:5.0未満、かつ結晶粒径の大きさが、最大で5.0μm以下、平均で0.5〜2.0μmの塊状マルテンサイトを面積率で1〜15%で分散させた組織を有する。本発明でいう塊状マルテンサイトとは、圧延後の冷却過程で未変態オーステナイトから旧γ粒界、あるいは旧γ粒内に生成したマルテンサイトである。本発明では、このような塊状マルテンサイトを、旧γ粒界、あるいは主相であるベイニティックフェライト粒とベイニティックフェライト粒の間に分散させる。マルテンサイトは、主相と比べ硬質であり、加工時にベイニティックフェライト中に可動転位を多量に導入することができ、降伏挙動を連続降伏型とすることができる。
また、マルテンサイトはベイニティックフェライトより高い引張強さを有するため、低降伏比を達成できることになる。また、マルテンサイトを、アスペクト比:5.0未満の塊状マルテンサイトとすることにより、周囲のベイニティックフェライトに、より多くの可動転位を導入することができ、変形能向上に効果を発揮する。マルテンサイトのアスペクト比が5.0以上になると、棒状なマルテンサイト(非塊状マルテンサイト)となり、所望の低降伏比を達成できなくなる。しかし、アスペクト比が5.0以上のマルテンサイト全量に対する面積率で30%未満であれば許容できる。塊状マルテンサイトはマルテンサイト全量の面積率で70%超えとすることが好ましい。
以上のような効果を確保するためには、組織全体に対して、面積率で1%以上の塊状マルテンサイトを分散させることが必要となる。塊状マルテンサイトが1%未満では、所望の低降伏比を確保することが難しくなる。一方、塊状マルテンサイトが面積率で15%を超えると、低温靭性が著しく低下する。このため、塊状マルテンサイトは1〜15%の範囲に限定する。なお、好ましくは10%以下である。
また、塊状マルテンサイトの結晶粒径の大きさは、最大で5μm以下、平均で0.5〜2.0μmとする。塊状マルテンサイトの大きさが平均で2.0μmを超えて、もしくは最大で5.0μmを超えて粗大化すると、脆性破壊の起点となりやすく、あるいは亀裂の伝播が促進させやすく、低温靭性が低下する。また、平均で0.5μm未満となると、粒が細かくなりすぎて、周辺のベイニティックフェライトへの可動転位の導入量が少なくなる。このため、塊状マルテンサイトの結晶粒径の大きさは、最大で5.0μm以下、平均で0.5〜2.0μmとすることが好ましい。
なお、大きさは長辺長さと短辺長さの和の1/2を「直径」とした。そして、そのうちの最大のものを「最大」とし、得られた各粒の「直径」を算術平均した値を「平均」とした。なお、測定するマルテンサイトは100個以上とする。
また、組織の有無および面積率、アスペクト比、結晶粒径の大きさ、平均結晶粒径は後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。
以下、実施例に基いて、さらに本発明について詳しく説明する。
表1に示す組成の溶鋼を、連続鋳造法でスラブ(肉厚220mm)とし、鋼素材とした。次いで、これら鋼素材を表2に示す加熱温度に加熱して、粗圧延を行い、シートバーとしたのち、シートバーに、表2に示す条件で仕上圧延を行い熱延鋼板(板厚:8〜25mm)とする熱間圧延工程を施した。得られた熱延鋼板に、仕上圧延終了後直ちに(表2に示す時間内に)冷却を開始し、表2に示す平均冷却速度で、表2に示す冷却停止温度まで冷却する一次冷却と、表2に示す条件で二次冷却を行う冷却工程を施した。冷却工程後、表2に示す巻取温度で、コイル状に巻き取った後、放冷を施した。
得られた熱延鋼板から、試験片を採取し、組織観察、引張試験、衝撃試験、溶接性評価試験を実施した。試験方法は以下のとおりである。
(1)組織観察
得られた熱延鋼板から、圧延方向断面(L断面)が観察面となるように、組織観察用試験片を採取した。試験片を研磨し、ナイタール腐食して、光学顕微鏡(倍率:500倍)または電子顕微鏡(倍率:2000倍)を用いて、組織観察を行い、撮像して、画像解析装置を用いて、組織の種類、各相の組織分率(面積率)、平均結晶粒径を測定した。主相であるベイニティックフェライトの平均結晶粒径は、JIS G 0552に準拠して切断法で求めた。なお、マルテンサイト粒のアスペクト比は、各粒における長手方向の長さ(長辺)とそれに直角な方向の長さ(短辺)との比、(長辺)/(短辺)、で算出するものとする。アスペクト比が5.0未満のマルテンサイト粒を塊状マルテンサイトと定義する。アスペクト比が5.0以上のマルテンサイトは、「棒状」マルテンサイトと称する。また、塊状マルテンサイトの結晶粒径の大きさは、塊状マルテンサイト各粒の長辺長さと短辺長さの和の1/2を直径とし、得られた各粒の直径を算術平均し、その鋼板における塊状マルテンサイトの大きさの平均を結晶粒径の平均とした。なお、塊状マルテンサイト各粒の直径のうちの最大の値を塊状マルテンサイトの結晶粒径の大きさの最大とした。測定したマルテンサイト粒は100個以上とした。
(2)引張試験
得られた熱延鋼板から、引張方向が、圧延方向と直角方向(板幅方向)および圧延方向から30°方向となるように、それぞれ引張試験片(API−5Lに定める全厚試験片;GL50mm、幅38.1mm)を採取し、ASTM A 370の規定に準拠して、引張試験を実施し、引張特性(降伏強さYS、引張強さTS)を求めた。
(3)衝撃試験
得られた熱延鋼板から、試験片長手方向が、圧延方向に直角方向となるように、Vノッチ試験片を採取し、ASTM A 370の規定に準拠して、シャルピー衝撃試験を実施し、破面遷移温度vTrs(℃)を求めた。
(4)溶接性評価試験
得られた熱延鋼板から、試験片長手方向が、圧延方向に直角方向となるように、試験片を採取し、四周を拘束した後、突合せ部を円周溶接のGMAWを模擬した入熱量で溶接し、予熱100℃の条件で割れの見られなかったものを溶接性良好とした。
得られた結果を表3に示す。
また、得られた熱延鋼板を管素材として、スパイラル造管工程により、スパイラル鋼管(外径:1067mmφ)を製造した。得られた鋼管から、引張方向が管周方向となるように、引張試験片(APIに定める試験片)を採取し、ASTM A 370の規定に準拠して、引張試験を実施し、引張特性(降伏強さYS、引張強さTS)を測定した。得られた結果から、ΔYS(=鋼管YS−鋼板YS)を算出し、造管による強度低下の程度を評価した。
得られた結果を表3に併記する。
Figure 2018100436
Figure 2018100436
Figure 2018100436
本発明例はいずれも、特別な熱処理を施すこともなく、圧延方向から30度方向の降伏強さが555MPa以上で、板幅方向の引張強さが700MPa以上で、破面遷移温度vTrsが−90℃以下で、かつ降伏比が85%以下の低降伏比を有する、低温靭性に優れた低降伏比高強度熱延鋼板となっており、溶接性にも優れている。さらに、本発明例はいずれも、造管され鋼管となったのちも、造管による強度低下も少なく、スパイラル鋼管あるいは電縫鋼管用素材として、好適な熱延鋼板となっている。
一方、本発明の範囲を外れる比較例は、いずれかの特性が劣っている。

Claims (5)

  1. 鋼素材に、熱間圧延工程、冷却工程、巻取工程を施して、熱延鋼板とするにあたり、
    前記熱間圧延工程は、質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:0.01〜0.50%、Mn:1.4〜2.2%、P:0.025%以下、S:0.005%以下、Al:0.005〜0.10%、Nb:0.02〜0.10%、Ti:0.001〜0.030%、Mo:0.01〜0.50%、 Cr:0.01〜0.50%、Cu:0.01〜0.50%、 Ni:0.01〜0.50%を含み、下記式(1)で定義されるPCM値が0.16〜0.22%を満足し、残部Feおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼素材を加熱温度:1050〜1300℃に加熱し、930℃以下の温度域での累積圧下率:60%以上となる仕上圧延を施し熱延鋼板とする工程であり、
    前記冷却工程は、仕上圧延終了後直ちに冷却を開始し、冷却停止温度:600〜450℃の温度域まで、板厚中央部の平均冷却速度:30℃/s以上で冷却する一次冷却と、前記冷却停止温度から巻取温度まで、板厚中央部の平均冷却速度:2℃/s以下で冷却する二次冷却からなる工程であり、
    前記巻取工程は、巻取温度:450℃以上で巻き取る工程である
    ことを特徴とする低温靭性に優れた低降伏比高強度熱延鋼板の製造方法。
    PCM(%)=C+Si/30+Mn/20+Cu/20+Ni/60+Cr/20+Mo/15+V/10+5×B…(1)
    但し、各元素記号は含有量(質量%)を示す。
  2. 前記二次冷却は、冷却停止温度から巻取温度まで、板厚中央部の平均冷却速度:2℃/s以下での冷却に代わり、前記冷却停止温度から前記巻取温度までの温度域で20s以上滞留させることを特徴とする請求項1に記載の低温靭性に優れた低降伏比高強度熱延鋼板の製造方法。
  3. 前記成分組成が、質量%で、下記式(2)で定義されるMoeq が1.4〜2.2%を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の低温靭性に優れた低降伏比高強度熱延鋼板の製造方法。
    Moeq(%)=Mo+0.36Cr+0.77Mn+0.07Ni ‥‥(2)
    但し、各元素記号は含有量(質量%)を示す。
  4. 前記成分組成が、さらに、質量%で、V:0.10%以下、B:0.0005%以下のうちの1種または2種を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の低温靭性に優れた低降伏比高強度熱延鋼板の製造方法。
  5. 前記成分組成が、さらに、質量%で、Ca:0.0005〜0.0050%を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の低温靭性に優れた低降伏比高強度熱延鋼板の製造方法。
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