(1.プリンタの構成)
以下、本願の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本願に係る画像形成装置の第1実施形態であるプリンタ1の断面図を示している。プリンタ1は、モノクロレーザプリンタであり、本体ケーシング2内にシート3(紙やOHPシートなど)を収容するトレイ4、画像形成部5、定着器7等を備えている。プリンタ1は、本体ケーシング2内の下部に配置されたトレイ4から供給されるシート3に対し、画像形成部5にてトナー像を形成する。プリンタ1は、シート3に形成したトナー像を、定着器7によって加熱してシート3に定着させる処理を行い、加熱した後のシート3を本体ケーシング2の上部に配置された排紙トレイ9に排出する。なお、以下の説明では、図1に示すように、図1の紙面右側を装置の前側と規定し、装置を前側から見た場合に左手に来る側(紙面手前側)を左側と規定し、前後、左右及び上下の各方向を用いて説明する。
画像形成部5は、スキャナ部11、現像カートリッジ13、感光ドラム17、帯電器18、転写ローラ19等を有している。スキャナ部11は、本体ケーシング2内の上方に配置されており、レーザ発光部(不図示)から発射されたレーザ光を、不図示のポリゴンミラー、反射鏡、レンズ等を介して感光ドラム17の表面上に高速走査にて照射させる。
現像カートリッジ13は、プリンタ1の本体に対して着脱可能に構成されており、その内部にはトナーを収容している。また、現像カートリッジ13は、現像ローラ21及び供給ローラ23を有している。現像ローラ21及び供給ローラ23は、前後方向で互いに対向した状態で設けられている。また、現像ローラ21は、感光ドラム17と前後方向で対向した状態で配置されている。現像カートリッジ13内のトナーは、供給ローラ23の回転により現像ローラ21に供給され、現像ローラ21に担持される。
感光ドラム17の後方側の上方には、帯電器18が間隔を隔てて配置されている。また、感光ドラム17の下方には、転写ローラ19が感光ドラム17に対向して配置されている。感光ドラム17は、回転しつつ、帯電器18によって表面を一様に、例えば正極性に帯電される。次いで、スキャナ部11からのレーザ光により感光ドラム17の表面上に静電潜像が形成される。その後、感光ドラム17と接触して回転する現像ローラ21上に担持されているトナーが、感光ドラム17の表面上の静電潜像に供給されて担持されることによって、感光ドラム17の表面上にトナー像が形成される。形成されたトナー像は、シート3を感光ドラム17と転写ローラ19との間に通過させる間に、転写ローラ19に印加される転写バイアスによって、シート3に転写される。
(2.ヒータ制御装置の構成)
定着器7は、画像形成部5に対してシート3の搬送方向の下流側(後方側)に配置され、定着ローラ27、定着ローラ27を押圧する加圧ローラ29、定着ローラ27を加熱するヒータ31,32等を有している。図2は、ヒータ31,32に供給する電力を制御するヒータ制御装置30の回路図を示している。ヒータ31,32は、例えば、ハロゲンヒータである。なお、本願のヒータは、ハロゲンヒータに限らず、他の発熱する素子、装置等でもよい。
ヒータ31,32は、ヒータ制御装置30の制御装置33によって通電を制御される。ヒータ31は、例えば、定着ローラ27の軸方向における中央付近において、定着ローラ27の内部に配設されている。また、ヒータ32は、例えば、定着ローラ27の軸方向における両端部において、定着ローラ27の内部に配設されている。これにより、例えば、サイズの大きいシート3に対しては、ヒータ31に加え、ヒータ32によっても定着ローラ27を加熱し、シート3の端部における印刷の定着性を向上させることができる。なお、上記したヒータ31,32の配置は一例である。定着ローラ27は、ヒータ制御装置30の制御装置33によって制御される電動モータ(不図示)の駆動に応じて回転し、シート3に転写されたトナーを加熱してトナーをシート3に定着させつつ、シート3に搬送力を付与する。一方、加圧ローラ29は、シート3を定着ローラ27側に押圧しながら従動回転する。
図2に示すように、ヒータ制御装置30は、上記したヒータ31,32、制御装置33の他に、AC/DCコンバータ34、DC/DCコンバータ35、ゼロクロス検出回路36、電流センサ37、リレー42、ヒータ制御回路43,44などを有する。制御装置33は、例えば、CPUを主体とするコンピュータで構成され、CPUによってプログラムを実行することで、他の装置を制御する。なお、制御装置33を、例えば、ASICなどの専用のハードウェアで構成してもよい。あるいは、制御装置33は、例えばソフトウェアによる処理と、ハードウェアによる処理とを併用して動作する構成でもよい。また、制御装置33は、制御や処理に係わる情報を保存等するためのメモリ33Aを有する。メモリ33Aは、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリなどを有する。メモリ33Aは、後述するヒータ制御処理(図4参照)を実行する制御プログラムPGや、制御プログラムPGの実行時に参照するテーブルTBなどを記憶している。以下の説明では、制御プログラムPGを実行する制御装置33等を装置名で記載する場合がある。例えば、「制御装置33は、ヒータ31,32の温度に基づいた制御を実行する」との記載は、「制御装置33が、CPUで制御プログラムPGを実行することで、ヒータ31,32の温度に基づいた制御を実行する」ことを意味する場合がある。また、メモリ33Aには、ヒータ制御処理に用いるヒータ31,32の目標温度や必要温度の値が記憶されている。
ヒータ31,32は、交流電源101の通電に応じて発熱する。ヒータ32は、ヒータ31と並列に接続されている。ヒータ31の近傍には、温度センサ31Aが設けられている。温度センサ31Aは、検出したヒータ31の温度の値を、温度検出信号Sa1として制御装置33に出力する。また、ヒータ32の近傍には、温度センサ32Aが設けられている。温度センサ32Aは、検出したヒータ32の温度の値を、温度検出信号Sa2として制御装置33に出力する。これにより、制御装置33は、ヒータ31,32の温度に基づいた制御を実行する。温度センサ31A,32Aは、例えば、サーミスタや熱電対等などにより構成されている。
交流電源101は、例えば、100Vの交流電圧を供給する商用電源である。プリンタ1は、交流電源101と接続可能な電源コードを有している。AC/DCコンバータ34は、例えば、交流電源101から供給される100Vの交流電圧を24Vの直流電圧に変換し、DC/DCコンバータ35や他の装置へ出力する。DC/DCコンバータ35は、24Vの直流電圧を3.3Vの直流電圧に変換し、制御装置33などへ供給する。電流センサ37は、ヒータ31,32に直列接続されている。電流センサ37は、交流電源101からヒータ31へ流れる電流及び/又はヒータ32へ流れる電流の大きさに応じた信号である電流値信号Sig1を制御装置33へ出力する。これにより、制御装置33は、ヒータ31等に流れる電流の大きさに応じた制御を実行できる。リレー42は、制御装置33から出力されるリレー制御信号Sig2に応じて、交流電源101と、ヒータ31,32とを電気的に接続するか否かを切替える。
ゼロクロス検出回路36は、交流電源101のゼロクロスタイミングZC(図3参照)を検出すると、パルス信号であるゼロクロス信号Sig3を制御装置33へ出力する。詳しくは、ゼロクロス検出回路36は、ダイオードブリッジ51、フォトカプラPH21、抵抗R21,R22、及びNPN型バイポーラトランジスタであるトランジスタTr1などを有している。交流電源101の電力は、ダイオードブリッジ51により全波整流され、フォトカプラPH21のLEDに印加される。フォトカプラPH21のフォトトランジスタのコレクタ端子は、抵抗R21を介して24V直流電源に接続され、エミッタ端子は接地されている。トランジスタTr1のベース端子は、抵抗R21とフォトカプラPH21のフォトトランジスタとの接続点に抵抗R22を介して接続されている。トランジスタTr1のコレクタ端子は、制御装置33に接続されている。トランジスタTr1のエミッタ端子は接地されている。尚、トランジスタTr1のコレクタ端子と制御装置33とを接続する配線は、制御装置33内部にて電源電圧にプルアップされる。
図3は、ヒータへの通電の制御に係る信号のタイムチャートを示している。なお、図3においては、ヒータ31への通電状態のみを図示している。図2のゼロクロス検出回路36が有するフォトカプラPH21のLEDは、印加電力に応じた発光量で発光する。例えば、交流電源101の入力電圧V(図3参照)の電圧値が低下すると、フォトカプラPH21のLEDの印加電圧が小さくなり、フォトカプラPH21のフォトトランジスタのオン抵抗は大きくなる。その結果、トランジスタTr1のベース電圧は大きくなる。トランジスタTr1のベース電圧が閾値を超えると(例えば、図3に示す入力電圧Vの絶対値が閾値Vt以下となると)、トランジスタTr1はオンし、ゼロクロス信号Sig3はローレベルとなる。従って、ゼロクロス検出回路36が出力するゼロクロス信号Sig3は、図3に示すように、入力電圧VのゼロクロスタイミングZCの前後における所定時間Tw1(入力電圧Vの絶対値が閾値Vt以下の時間)だけローレベルのパルス信号となる。制御装置33は、例えば、入力されるゼロクロス信号Sig3のローレベルのパルス幅(所定時間Tw1)に基づき、入力電圧VのゼロクロスタイミングZCを特定することができる。
図2に示すように、ヒータ制御回路43は、トライアックTA1、フォトトライアックカプラPH1,抵抗R1,R2などを有する。ヒータ制御回路44は、トライアックTA11、フォトトライアックカプラPH11,抵抗R11,R12などを有する。トライアックTA1は、T2端子が交流電源101の一方の極に接続され、T1端子がヒータ31及びリレー42を介して交流電源101の他方の極に接続されている。トライアックTA1のゲート端子とT1端子とは抵抗R1を介して接続されている。また、トライアックTA1のT2端子とゲート端子とは、フォトトライアックカプラPH1のトライアック及び抵抗R2を介して接続されている。フォトトライアックカプラPH1のLEDのアノード端子には、制御装置33から出力されるヒータ制御信号Sig4が入力される。フォトトライアックカプラPH1のLEDのカソード端子は、接地されている。制御装置33は、ヒータ制御信号Sig4により、ヒータ31の通電を制御する。ヒータ制御回路44は、ヒータ制御回路43と同様の構成となっている。ヒータ制御回路44のフォトトライアックカプラPH11のLEDのアノード端子には、制御装置33から出力されるヒータ制御信号Sig5が入力される。制御装置33は、ヒータ制御信号Sig5により、ヒータ32の通電を制御する。つまり、制御装置33は、ヒータ31の制御とヒータ32の制御とを別個に行うことができる。
例えば、図3に示すように、ヒータ31を通電させる場合には、制御装置33は、ヒータ制御信号Sig4をローレベルからハイレベルに切替え、所定時間経過後にハイレベルからローレベルに切替える。つまり、制御装置33は、所定パルス幅のパルス信号であるヒータ制御信号Sig4をヒータ制御回路43へ出力する。これにより、トライアックTA1がターンオンし、ヒータ31は通電状態となる。図3に示すように、例えば、ヒータ制御信号Sig4のハイレベルを維持し続けた時間だけ、ヒータ31へヒータ電圧Vh(図3参照)が供給される。ヒータ制御信号Sig4をローレベルにすると、ヒータ制御信号Sig4をローレベルにしてから最初に到来するゼロクロスタイミングZCにおいてトライアックTA1はターンオフし、ヒータ31は非通電状態となる。また、制御装置33は、ヒータ31と同様に、ヒータ制御信号Sig5の信号レベル(ハイレベル又はローレベル)を切り替えることで、ヒータ32の通電状態を切り替える。
なお、以下の説明において、制御装置33がハイレベルのヒータ制御信号Sig4を出力した後、ヒータ31に電力が供給されている期間のことをオン期間Tonと記載する。同様に、制御装置33がハイレベルのヒータ制御信号Sig5を出力した後、ヒータ32に電力が供給されている期間のことをオン期間Tonと記載する。また、ヒータ31とヒータ32のオン期間Tonを区別して説明する場合には、ヒータ31のオン期間Tonを、オン期間Ton1と称し、ヒータ32のオン期間Tonを、オン期間Ton2と称して説明する。上述したように、ヒータ制御信号Sig4をローレベルにしても、ヒータ制御信号Sig4をローレベルにしてから最初に到来するゼロクロスタイミングZCまでトライアックTA1はターンオフせず、ヒータ31は通電状態となる。このような期間は、ヒータ31へ電力を供給する通電状態となるため、オン期間Tonと考えることができる。また、ヒータ31,32共に電力が供給されていない期間、即ち、オン期間Ton1,Ton2のいずれにも該当しない期間を、オフ期間Toffと称して説明する。
また、図3に示す例では、制御装置33は、オン期間Tonにおいて、ヒータ制御信号Sig4を常にハイレベルとし、ヒータ31に対してヒータ電圧Vhの連続的な印加を実行した。しかしながら、制御装置33は、オン期間Tonにおいて、正弦波のヒータ電圧Vhに対する位相制御や波数制御を行い、ヒータ31に対してヒータ電圧Vhの断続的な印加を実行しても良い。ここでいう位相制御とは、例えば、交流電源101の入力電圧Vの半周期におけるヒータ31への給電を、半周期の開始のゼロクロスタイミングZCから所定時間経過したタイミングであって入力電圧Vの位相角に応じたタイミングで開始し、半周期の終了のゼロクロスタイミングZCまで行う制御である。また、波数制御とは、入力電圧Vの半周期におけるヒータ31への給電を、半周期の開始のゼロクロスタイミングZCから半周期の終了のゼロクロスタイミングZCまで行う半周期の数(波数)を増減させて変更する制御である。従って、制御装置33は、ゼロクロス信号Sig3に基づいて、オン期間Tonにおいて、断続的なヒータ制御信号Sig4(例えば、入力電圧Vの半周期よりも短いパルス幅のパルス信号)を出力しても良い。これにより、ヒータ31は、特定の位相や、波数で、ヒータ電圧Vhを印加されることとなる。即ち、本願におけるオン期間は、ヒータ31,32にヒータ電圧Vhを連続的に印加する期間に限らず、その期間内において一時的なヒータ電圧Vhの停止を含んだとしてもヒータ31,32へのヒータ電圧Vhの印加を目的とする期間であれば良い。
また、本実施形態の制御装置33は、所定の制御周期において、ヒータ31,32のオン期間Ton及びオフ期間Toffを制御する。制御装置33は、図3に示すように、例えば、入力電圧VのゼロクロスタイミングZCを開始点として、制御周期Tcを設定する。制御周期Tcの1周期の長さは、特に限定されないが、例えば、数百ミリ秒から数秒の値を設定できる。また、制御周期Tcの1周期の長さは、ヒータ31,32の抵抗値、ヒータ31等に印加するヒータ電圧Vhの電圧値などに応じて適宜変更される。
制御装置33は、例えば、プリンタ1の動作状態に応じて、制御周期Tcの長さを変更しても良い。ここでいう、動作状態とは、例えば、プリンタ1の起動時にヒータ31,32を温める状態、画像形成部5によって印刷処理を実行する状態である。あるいは、動作状態とは、印刷処理を完了させ、次の印刷指示を受けるまで一時的に待機する際に、ヒータ31,32の温度を一定温度に保つ待機状態でもよい。制御装置33は、このような動作状態に応じて、制御周期Tcの長さを変更しても良い。
また、制御装置33は、制御周期Tcの中で、ヒータ31とヒータ32のオン期間Tonをできるだけ重ならないように制御する。図2に示すように、制御装置33のメモリ33Aには、後述するように、ヒータ31のオン期間Ton1と、ヒータ32のオン期間Ton2を制御するための制御パターンCP(図5及び図6参照)が設定されたテーブルTBが記憶されている。制御装置33は、このテーブルTBから制御パターンCPを選択し、選択した制御パターンCPに基づいて制御周期Tc内におけるオン期間Ton1,Ton2を制御する。制御装置33は、例えば、各動作状態において設定した目標温度と、温度検出信号Sa1,Sa2に基づいて検出したヒータ31,32の温度とを比較し、テーブルTBに含まれる制御パターンCPの中から適切な制御パターンCPを選択する。
(3.ヒータ制御処理)
次に、制御装置33によって実行されるヒータ制御処理の内容について説明する。図4は、ヒータ制御処理の内容を示すフローチャートである。図5及び図6は、テーブルTBの制御パターンCPを示す図である。なお、以下の説明では、温度センサ31Aにより検出したヒータ31の温度を、温度TR1と称し、温度センサ32Aにより検出したヒータ32の温度を、温度TR2と称して説明する。また、ヒータ31の目標温度を、目標温度T1と称し、ヒータ32の目標温度を、目標温度T2と称して説明する。
制御装置33は、例えば、印刷の指示を受け付けると、図4に示すヒータ制御処理を開始する。制御装置33は、例えば、メモリ33Aに記憶された制御プログラムPGをCPUで実行することで、ヒータ制御処理を実行する。なお、ヒータ制御処理を開始するタイミングは、印刷の指示を受け付けた場合に限らず、ヒータ31,32の通電を制御する他の場合でも良い。例えば、制御装置33は、プリンタ1の電源を投入されシステムを起動しヒータ31等を温める際に、図4のヒータ制御処理を実行しても良い。あるいは、制御装置33は、一定時間だけ印刷指示を受け付けなかったために、次の印刷指示を受け付けるまでヒータ31等の温度を一定温度に保つ待機状態において、図4のヒータ制御処理を実行しても良い。
制御装置33は、ヒータ制御処理を開始すると、図4のステップ(以下、単に「S」と記載する)11において、温度センサ31Aの温度検出信号Sa1に基づいて、ヒータ31の温度TR1を検出する。次に、制御装置33は、温度センサ32Aの温度検出信号Sa2に基づいて、ヒータ32の温度TR2を検出する(S13)。
次に、制御装置33は、S11で検出した温度TR1と、S13で検出した温度TR2とに基づいて、メモリ33Aから読み出したテーブルTBの中から制御パターンCPを選択する(S15)。図5及び図6に示すように、テーブルTBには、複数の制御パターンCPが設定されている。図5及び図6の最も左側の列は、目標温度T1と温度TR1との温度差を示している。また、図5及び図6の最も上の行は、目標温度T2と温度TR2との温度差を示している。以下の説明では、図5及び図6に示すように、例えば、CPXの行とCPYの列の交差する制御パターンCPを、CPの番号を用いて制御パターンCPXYと称して、より具体的には2行目(CP1)の3列目(CP2)の制御パターンCPであれば、制御パターンCP12と称して説明する。制御パターンCP00〜CP98を総称して説明する場合には、制御パターンCPと称して説明する。
図5及び図6では、一例として、10行9列の合計90パターンの制御パターンCPを図示している。各制御パターンCPにおける斜線を付した四角は、ヒータ31のオン期間Ton1を示している。また、ドットを付した四角はヒータ32のオン期間Ton2を示している。また、各制御パターンCPの枠の横幅、即ち各列の幅は、制御周期Tcの1周期を示している。従って、制御パターンCPの枠内に示す斜線やドットを付した四角の横幅は、オン期間Ton1,Ton2のそれぞれの長さを示している。
また、白抜きの四角は、オン期間Ton1,Ton2の最初に設定されたソフトスタート期間Tsを示している。ここでいうソフトスタート期間Tsとは、例えば、位相制御により、ヒータ制御信号Sig4やヒータ制御信号Sig5のデューティ比を段階的に高くすることで、ヒータ電圧Vhの印加時間をゆっくりと増大させる期間である。これにより、ヒータ31,32に流れる突入電流を小さくし、オン期間Ton1,Ton2の開始時における電圧変動を抑制できる。なお、制御パターンCPは、ソフトスタート期間Tsを有しなくとも良い。また、ソフトスタート期間Ts、オン期間Ton1、オン期間Ton2のいずれにも該当しない期間は、ヒータ31,32の両方への通電を停止するオフ期間Toffとなっている。
図4のS15において、制御装置33は、温度TR1と目標温度T1との温度差に基づいて、図5及び図6に示すテーブルTBの各行から、制御パターンCPを選択するための行を特定する。図5及び図6に示すように、テーブルTBの各行は、温度TR1と目標温度T1との温度差に対応している。1行目(CP0の行)には、温度TR1が目標温度T1以上である場合の制御パターンCPが設定されている。また、2行目以降(CP1〜CP9の行)には、上から下に向かって順番に目標温度T1から温度TR1が1℃ずつ下がった場合の制御パターンCPが設定されている。
同様に、テーブルTBの各列は、温度TR2と目標温度T2との温度差に対応している。1列目(CP0の列)には、温度TR2が目標温度T2以上である場合の制御パターンCPが設定されている。また、2列目以降(CP1〜CP8の列)には、左から右に向かって順番に目標温度T2から温度TR2が1℃ずつ下がった場合の制御パターンCPが設定されている。
例えば、制御装置33は、温度TR1が目標温度T1以上であると判断した場合、制御パターンCPを選択するための行として1行目(CP0の行)を特定する。温度TR1が目標温度T1以上である場合、ヒータ31をさらに加熱する必要がないため、1行目の制御パターンCP00〜CP08には、オン期間Ton1が設定されていない。
また、例えば、制御装置33は、温度TR1が目標温度T1に比べて1℃低い場合、制御パターンCPを選択するための行として2行目(CP1の行)を特定する。また、制御装置33は、温度TR1が目標温度T1に比べて9℃以上低い場合、制御パターンCPを選択するための行として10行目を特定する。テーブルTBの各行において上から下に行くに従って温度TR1は低くなり、目標温度T1に対する温度TR1の温度差は、大きくなっている。これに対し、ヒータ31のオン期間Ton1は、温度差の増大に比例して、テーブルTBの上から下に行くに従って長くなっている。
同様に、制御装置33は、温度TR2と目標温度T2との温度差に基づいて、テーブルTBの各列から、制御パターンCPを選択するための列を特定する。図5及び図6に示すように、テーブルTBの各列において、左から右に行くに従って温度TR2は低くなり、目標温度T2に対する温度TR2の温度差は、大きくなっている。ヒータ32のオン期間Ton2は、テーブルTBの左から右に行くに従って長くなっている。
図4のS15において、例えば、温度TR1が目標温度T1より2℃低く、温度TR2が目標温度T2より3℃低い場合、制御装置33は、3行目4列目の制御パターンCP23を選択する。これにより、制御装置33は、ヒータの実際の温度と目標温度との温度差が大きいほど、オン期間Tonのより長い制御パターンCPを選択できる。換言すれば、本実施形態の制御装置33は、目標温度T1から温度TR1を減じた温度差(第1の差の一例)の増大に応じて、オン期間Ton1を長くする。また、制御装置33は、目標温度T2から温度TR2を減じた温度差(第2の差の一例)の増大に応じて、オン期間Ton2を長くする。なお、上記したように、本願では、「目標温度との温度差」との用語を、「目標温度から検出温度を減じた差」と同等の意味として用いる。
S15の次のS17において、制御装置33は、S15で選択した制御パターンCPによりオン期間Ton1,Ton2を制御した通電を行う。制御装置33は、選択した制御パターンCPに基づいてヒータ制御信号Sig4及びヒータ制御信号Sig5を制御し、制御パターンCPに応じたオン期間Ton1,Ton2となるように制御する。
次に、制御装置33は、ヒータ制御処理を継続するか否かを判断する(S19)。例えば、制御装置33は、全ての印刷処理が完了した場合、ヒータ制御処理を継続しないと判断し(S19:NO)、図4に示すヒータ制御処理を終了する。また、制御装置33は、例えば、全ての印刷処理が終了していない場合、ヒータ制御処理を継続すると判断し(S19:YES)、S11からの処理を再度実行する。
本実施形態の制御装置33は、制御周期Tcごとに、上記したS11からS17の処理を実行する。具体的には、制御装置33は、例えば、S17において、S15で選択した制御パターンCPに基づく通電を実行しつつ、並列にS19の判断処理を実行する。制御装置33は、S17の通電制御を実行しつつ、並列に実行したS19の処理で肯定判断となった場合(S19:YES)、S11〜S15の処理を実行し、次の制御周期Tcで用いる制御パターンCPを予め選択する。制御装置33は、前の制御周期Tc(S17の通電制御)の終了に合わせて、予め選択した制御周期Tcを用いて次の制御周期Tcの処理(S17の通電制御)を開始する。同様に、制御装置33は、S17の通電制御を開始しつつ、並列にS19の判断処理を実行する。また、制御装置33は、S17の通電制御を実行しつつ、並列に実行したS19の処理で否定判断となった場合(S19:NO)、制御周期Tcの終了に合わせて、図4のヒータ制御処理を終了する。
このように、制御装置33は、制御パターンCPを用いた通電制御と、次の制御周期Tcで実行する制御パターンCPの選択処理とを、制御周期Tcごとに繰り返し実行する。これにより、制御装置33は、温度TR1,TR2を所望の目標温度T1,T2に維持できる。なお、制御装置33は、テーブルTBから制御パターンCPを選択する処理を、制御周期Tcごとに実行しなくとも良い。例えば、制御装置33は、1度選択した制御パターンCPを、制御周期Tcの2周期や3周期以上連続して使用しても良い。また、制御装置33は、例えば、制御パターンCPを選択するごとに、制御周期Tcの長さを変更しても良い。
ここで、図5及び図6に示すように、本実施形態のテーブルTBに含まれる制御パターンCPは全て、オン期間Ton1,Ton2のうち、期間の短いオン期間よりも先に、期間の長いオン期間が開始するように設定されている。換言すれば、テーブルTBに含まれる制御パターンCPは全て、制御周期Tcに対するデューティ比の比率が小さいオン期間Tonよりも先に、デューティ比の比率が大きいオン期間Tonが開始するように設定されている。具体的には、制御周期Tcに対するオン期間Ton1の比率を、デューティ比DT1とする。また、制御周期Tcに対するオン期間Ton2の比率を、デューティ比DT2とする。図5及び図6に示す制御パターンCPのオン期間Ton1は、テーブルTBの上から下に行くに従って長くなっている。このため、デューティ比DT1の比率は、テーブルTBの上から下に行くに従って大きくなる。同様に、各制御パターンCPのオン期間Ton2は、テーブルTBの左から右に行くに従って長くなっている。このため、デューティ比DT2の比率は、テーブルTBの左から右に行くに従って大きくなる。
図5及び図6に示すテーブルTBの制御パターンCPでは、例えば、検出した温度が目標温度より1℃だけ低くなるごとに、デューティ比が10%だけ大きくなっている。制御パターンCP00,CP10,CP20,・・・CP90の各々のデューティ比DT1は、この順番に、0%、10%、20%・・・・90%と増加している。同様に、制御パターンCP00,CP01,CP02,・・・CP08の各々のデューティ比DT2は、この順番に、0%、10%、20%・・・・80%と増加している。
そして、例えば、制御パターンCP21(3行目且つ2列目)では、デューティ比DT1が20%、デューティ比DT2が10%となっている。この場合、デューティ比DT1の比率は、デューティ比DT2の比率に比べて大きくなり、オン期間Ton1は、オン期間Ton2に比べて長くなる。このため、オン期間Ton1が、時間のより短いオン期間Ton2よりも先に開始するように設定されている。この制御パターンCP21のオン期間Ton1は、制御周期Tcの最初のソフトスタート期間Tsの終わりに連続して開始される期間となっている。また、制御パターンCP21のオン期間Ton2は、オン期間Ton1の終わりに連続して開始される期間となっている。
一方、例えば、制御パターンCP13(2行目且つ4列名)では、デューティ比DT1が10%、デューティ比DT2が30%となる。この場合、デューティ比DT2の比率が、デューティ比DT1の比率に比べて大きくなっている。このため、オン期間Ton2が、時間のより短いオン期間Ton1よりも先に開始するように設定されている。制御パターンCP13のオン期間Ton2は、制御周期Tcの最初のソフトスタート期間Tsの終わりに連続して開始される期間となっている。また、制御パターンCP13のオン期間Ton1は、オン期間Ton2の終わりに連続して開始される期間となっている。
また、本実施形態のテーブルTBの各制御パターンCPでは、例えば、制御パターンCP11のように、デューティ比DT1とデューティ比DT2とが同一の比率(例えば、10%)である場合、即ち、オン期間Ton1,Ton2が同一の長さである場合、オン期間Ton1が、オン期間Ton2よりも先に開始されるように設定されている。なお、上記した各制御パターンCPは、一例である。例えば、オン期間Ton1とオン期間Ton2とは、連続した期間ではなく、間にオフ期間Toffを挟んだ不連続な期間でも良い。また、オン期間Ton1とオン期間Ton2とは、互いに重複する重複期間を有しても良い。
上記したように、制御装置33は、テーブルTBを用いて制御パターンCPを選択することで、時間の長い、即ち、デューティ比の大きいオン期間Tonを先に開始できる。本実施形態の制御装置33は、目標温度との温度差が大きいほど、オン期間Tonを長くする制御を行う。換言すれば、ヒータ31とヒータ32のうち、目標温度との温度差が大きいヒータのオン期間Tonが長くなる。その結果、オン期間Tonの時間の長いヒータは、制御周期Tc内において先に通電される。
図7は、第1実施形態のテーブルTBを用いた制御と、比較例の制御における温度TR1,TR2の変化を示している。図7に示す例では、制御周期Tcを横軸とし、制御周期Tcの1周期を10個に等分して示している。図7は、オン期間Ton1の時間に比べてオン期間Ton2の時間が長い場合を例示している。この場合、第1実施形態では、オン期間Ton2をオン期間Ton1よりも先に開始する。一方、比較例では、時間の短いオン期間Ton1を時間の長いオン期間Ton2よりも先に開始する例を示している。
図7における太い実線の線グラフW1は、比較例におけるヒータ31の温度TR1の変化を示している。波線の線グラフW2は、第1実施形態におけるヒータ31の温度TR1の変化を示している。細い実線の線グラフW3は、比較例におけるヒータ32の温度TR2の変化を示している。一点鎖線の線グラフW4は、第1実施形態におけるヒータ32の温度TR2の変化を示している。また、図7では、説明を分かり易くするため、目標温度T1と目標温度T2とを同一温度として図示している。また、図7に示す必要温度は、例えば、トナーのシート3への定着性を良好に維持するために必要な温度TR1,TR2である。
上記したように、制御装置33は、目標温度との温度差が大きい程、オン期間Tonを長くする。このため、同一の目標温度を設定した2つのヒータでは、よりオン期間Tonの長いヒータの温度が、制御周期Tcの開始時点において、オン期間Tonの短いヒータの温度に比べて低くなる。図7に示すように、オン期間Tonの長いヒータ32の温度TR2は、制御周期Tcの開始時点において、温度TR1に比べて低くなっている。
電圧変動を抑制する観点では、オン期間Ton1とオン期間Ton2とを制御周期Tc内で重複させずに、2つのヒータを片方ずつ通電することが好ましい。このような2つのヒータのオン期間Tonの重複を避ける制御を実行した場合、一方のヒータを通電する間、他方のヒータは、通電されず、温度を低下させる。図7の線グラフW1〜W4に示すように、ヒータ31のオン期間Ton1の間、ヒータ32の温度TR2は、低下する。同様に、ヒータ32のオン期間Ton2の間、ヒータ31の温度TR1は、低下する。
比較例のように、例えば、オン期間Tonの長さに係わらず一律にオン期間Ton1を先に開始し、次いでオン期間Ton2を開始させる制御を行ったとする。この場合、ヒータ32の温度TR2は、制御周期Tcの開始時点でヒータ31の温度TR1に比べて低いにも係わらず、オン期間Ton2を開始されるまでの間低下する(線グラフW3参照)。その結果、温度TR2は、印刷処理に必要な必要温度を下回る可能性が高くなる。
これに対し、本実施形態では、2つのオン期間Tonのうち、時間の長いオン期間Tonを先に開始する制御を実行する。これにより、図7の線グラフW4に示すように、オン期間Ton2を制御周期Tcの早い段階で開始させ、温度TR2が必要温度を下回るのを抑制できる。図7の温度差USに示すように、オン期間Ton2をより早く開始した分だけ、温度TR2の温度低下を抑制できる。このような制御を実行することで、本実施形態の制御装置33では、温度TR1,TR2の両方について、必要温度を下回るのを抑制できる。その結果、必要温度を確実に確保し、トナーのシート3への定着性を良好に保つことができる。
因みに、ヒータ31は、第1ヒータの一例である。ヒータ32は、第2ヒータの一例である。オン期間Ton1は、第1オン期間の一例である。オン期間Ton2は、第2オン期間の一例である。温度TR1は、第1温度の一例である。温度TR2は、第2温度の一例である。目標温度T1は、第1目標温度の一例である。目標温度T2は、第2目標温度の一例である。
(5.効果)
以上、上記した第1実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)第1実施形態のヒータ制御装置30は、交流電源101から電力を供給されるヒータ31と、交流電源101から電力を供給されるヒータ32と、ヒータ31の発熱状態に応じて変動する温度TR1と、ヒータ32の発熱状態に応じて変動する温度TR2とを検出する温度センサ31A,32Aと、検出された温度TR1に基づいて、交流電源101からヒータ31へ電力が供給されるオン期間Ton1を制御し、検出された温度TR2に基づいて、交流電源101からヒータ32へ電力が供給されるオン期間Ton2を制御する制御装置33と、を備える。制御装置33は、所定の制御周期Tcにおけるオン期間Ton1,Ton2の制御において、オン期間Ton1とオン期間Ton2のうち、時間の長いオン期間Tonが、時間の短いオン期間Tonよりも先に開始するように制御する。
これによれば、制御装置33は、ヒータ31のオン期間Ton1と、ヒータ32のオン期間Ton2を、温度TR1,TR2に基づいて制御する。例えば、目標温度と、温度TR1,TR2の温度差に基づいて、オン期間Ton1,Ton2を増減させることができる。一般的に、目標温度と実際の温度との温度差が増大すれば、オン期間Tonの時間を長くする可能性が高い。即ち、温度差と、オン期間の長さとは比例する関係にある。そこで、制御装置33は、オン期間Ton1,Ton2のうち、期間の長いオン期間Tonが、期間の短いオン期間Tonより先に開始する制御を行う。これにより、目標温度と実際の温度との差が大きいヒータに対して先に電力の供給を開始することができ、目標温度と実際の温度の温度差の増大を抑制できる(図7の温度差US参照)。その結果、温度TR1,TR2を、目標温度T1,T2に対して一定の温度差に保つことができる。また、目標温度と実際の温度との温度差の増大を抑制することで、オン期間Ton1,Ton2を長くする必要がなくなり、ヒータ31等における消費電力を抑制できる。
(2)また、制御装置33は、時間の長いオン期間Tonの終了に応じて、時間の短いオン期間Tonが開始するように制御する。これによれば、先に開始するオン期間Tonの終了、即ち、先にオンしたヒータをオフするのに応じて、後からオンするヒータをオンすることができる。これにより、2つのオン期間Tonを、一方の終了するタイミングで他方を開始させるように連続させることができる。ヒータ31,32の少なくとも一方へ電力を供給する状態から両方のヒータへの電力供給を停止する状態(オフ期間Toff)への遷移や、両方のヒータへの電力供給を停止した状態(オフ期間Toff)から供給を開始する状態への遷移などの遷移の発生回数を低減できる。即ち、オン期間Tonからオフ期間Toff、又はオフ期間Toffからオン期間Tonへの遷移の発生回数を低減できる。これにより、ヒータ31等へ供給する電圧の変動を抑制できる。その結果、ヒータ制御装置30と同一の交流電源101を使用する他の電子機器等で発生するフリッカの影響を抑制できる。
(3)また、制御装置33は、目標温度T1から温度TR1を減じた第1の差の増大に応じて、オン期間Ton1を長くし、目標温度T2から温度TR2を減じた第2の差の増大に応じて、前記第2オン期間を長くする。これによれば、目標温度T1,T2と温度TR1,TR2の温度差の増大に応じて、オン期間Ton1,Ton2を長くすることで、温度TR1,TR2の各々を、目標温度T1,T2に対して一定の温度差で保つことができる。
(4)また、制御装置33は、1つの制御周期Tcにおいて第1の差と第2の差に対応してオン期間Ton1とオン期間Ton2とを設定された制御パターンCPを複数有するテーブルTBを用いて、テーブルTBから選択した第1の差と第2の差に対応する制御パターンCPに基づいてオン期間Ton1,Ton2を制御する。テーブルTBの制御パターンCPは、時間の長いオン期間Tonが、時間の短いオン期間Tonよりも先に開始するように設定されている(図5及び図6参照)。これによれば、制御装置33は、テーブルTBを参照し、温度差に応じた制御パターンCPを選択して実行することで、オン期間Tonの長さに応じた開始タイミングの制御を実行できる。
(5)また、テーブルTBにおいて、オン期間Ton1,Ton2は、互いにの期間を重複させないように、連続した期間となっている(図5及び図6参照)。従って、制御装置33は、所定の制御周期Tcよりもオン期間Ton1とオン期間Ton2との合計期間が長くなる場合に、オン期間Ton1,Ton2を同時に開始させた場合に2つのオン期間Tonが重なる重複期間の長さに比べて、重複期間の長さをより短くするようにオン期間Ton1,Ton2を制御することができる。オン期間Ton1,Ton2が重なると、ヒータ31,32の両方へ電力を供給するため、電圧の変動が増大する。このため、重複期間をできるだけ短くすることで、電圧変動の増大を抑制し、ヒータ制御装置30と同一の交流電源101を使用する他の電子機器等で発生するフリッカの影響を抑制できる。
(第2実施形態)
次に、本願の第2実施形態について説明する。上記した第1実施形態では、制御装置33は、時間の長いオン期間Tonを先に開始する制御を実行した。これに対し、第2実施形態では、目標温度T1から温度TR1を減じた値である第1の差と、目標温度T2から温度TR2を減じた値である第2の差とを比較して、差の大きいオン期間Tonを先に開始する。以下の説明では、上記した第1実施形態と同様の内容については同一符号を付し、その説明を適宜終了する。
図8は、第2実施形態のヒータ制御処理の内容を示すフローチャートである。制御装置33は、図8に示すヒータ制御処理を開始すると、S11において、ヒータ31の温度TR1を検出し、S13においてヒータ32の温度TR2を検出する。次に、制御装置33は、目標温度T1からS11で検出した温度TR1を減じた第1の差と、目標温度T2からS13で検出した温度TR2を減じた第2の差とを比較する(S21)。制御装置33は、第1の差が第2の差以上である場合(S21:YES)、S23を実行し、第1の差が第2の差より小さい場合(S21:NO)、S25を実行する。
S23において、制御装置33は、オン期間Ton1をオン期間Ton2よりも先に開始する制御を実行する(S23)。例えば、制御装置33は、第1の差の大きさに応じて、次の制御周期Tcにおけるオン期間Ton1の時間の長さを設定する。また、制御装置33は、第2の差の大きさに応じて、次の制御周期Tcにおけるオン期間Ton2の時間の長さを設定する。
なお、オン期間Ton1の時間の長さを設定する方法は、特に限定されない。例えば、制御装置33は、図5及び図6に示すようなテーブルTBを用いて、第1の差に応じたオン期間Ton1を設定しても良い。あるいは、制御装置33は、第1の差の値に所定の係数を乗算等してオン期間Ton1を演算しても良い。また、制御装置33は、第1の差と第2の差の両方の値を用いて、オン期間Ton1を演算しても良い。
そして、制御装置33は、オン期間Ton1,Ton2の各々の長さを設定した後、2つのオン期間Tonの長さに係わらず、オン期間Ton1をオン期間Ton2よりも先に開始するように制御する(S23)。制御装置33は、例えば、オン期間Ton1を開始した後、オン期間Ton1の終わりに連続させてオン期間Ton2を開始する。
ここで、例えば、ヒータの構造の違い、各ヒータの温度上昇率の違い、目標温度の違いなどから、目標温度と実際の温度との差が大きいほど、オン期間Tonが必ず長くなるとは限らない。例えば、通電時間に対する温度上昇率が大きいヒータは、温度上昇率の小さいヒータよりも短いオン期間Tonで温度を上昇させることができる。このため、第1の差とオン期間Ton1の比例関係と、第2の差とオン期間Ton2の比例関係とは同様にならない場合がある。ヒータ制御装置30の構造等によっては、第1の差が第2の差に比べて大きいにも係わらず、オン期間Ton1が、オン期間Ton2よりも短い可能性がある。
そこで、第2実施形態では、第1及び第2の差、即ち、目標温度に対する温度差に着目して、温度差の大きいヒータへの通電を優先する。これにより、目標温度と実際の温度との差が大きいヒータに対して先に電力の供給を開始することができ、目標温度と実際の温度の温度差の増大を抑制できる。
また、制御装置33は、S25において、S23と同様に、オン期間Ton2をオン期間Ton1よりも先に開始する制御を実行する(S25)。制御装置33は、S23又はS25を実行した後、S19を実行する。制御装置33は、ヒータ制御処理を継続しないと判断すると(S19:NO)、図8に示すヒータ制御処理を終了する。また、制御装置33は、ヒータ制御処理を継続すると判断すると(S19:YES)、S11からの処理を再度実行する。制御装置33は、制御周期Tcごとに、上記したS11からS17の処理を実行する。このように、制御装置33は、第1及び第2の差に基づくオン期間Ton1,Ton2の前後関係の調整を制御周期Tcごとに繰り返し実行する。
(6.効果)
以上、上記した第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。
また、第2実施形態の制御装置33は、所定の制御周期Tcにおけるオン期間Ton1,Ton2の制御において、目標温度T1から温度TR1を減じた第1の差が、目標温度T2から温度TR2を減じた第2の差に比べて大きい場合(S21:YES)、オン期間Ton1がオン期間Ton2よりも先に開始するように制御する(S23)。これによれば、目標温度と実際の温度との温度差が大きいヒータに対して先に電力の供給を開始でき、目標温度と実際の温度との温度差の増大を抑制できる。その結果、温度TR1,TR2を、目標温度T1,T2に対して一定の温度差で保つことができる。
(第3実施形態)
次に、本願の第3実施形態について説明する。上記した第1実施形態では、予め制御パターンCPが設定されたテーブルTBから温度差に応じた制御パターンCPを選択することで、時間の長いオン期間Tonを先に開始する制御を実行した。これに対し、第3実施形態では、オン期間Ton1,Ton2を演算し、演算結果のオン期間Ton1,Ton2を比較して前後関係を調整する。以下の説明では、上記した第1及び第2実施形態と同様の内容については同一符号を付し、その説明を適宜終了する。
図9は、第3実施形態のヒータ制御処理の内容を示すフローチャートである。制御装置33は、図9に示すヒータ制御処理を開始すると、S31において、ヒータ31の温度TR1を検出し、検出した温度TR1に基づいてオン期間Ton1を演算する。次に、S33において、制御装置33は、ヒータ32の温度TR2を検出し、検出した温度TR2に基づいてオン期間Ton2を演算する。なお、オン期間Ton1,Ton2を演算する方法は、特に限定されない。例えば、制御装置33は、温度TR1の値に所定の係数を乗算等してオン期間Ton1を演算しても良い。
次に、制御装置33は、制御周期Tcに対するオン期間Ton1の比率であるデューティ比DT1と、制御周期Tcに対するオン期間Ton2の比率であるデューティ比DT2を演算する(S35)。制御装置33は、例えば、オン期間Ton1の時間の長さを、制御周期Tcの1周期の長さで除算することで、デューティ比DT1を演算する。
制御装置33は、S35で演算したデューティ比DT1の比率とデューティ比DT2の比率とを比較する(S37)。制御装置33は、デューティ比DT1の比率がデューティ比DT2の比率よりも大きい場合(S37:YES)、S23を実行し、デューティ比DT1の比率がデューティ比DT2の比率以下の場合(S37:NO)S25を実行する。これにより、例えば、制御周期Tcごとにオン期間Ton1,Ton2を演算し、時間の長いオン期間Ton1を先に開始する制御を実行することができる。また、制御装置33は、オン期間Ton1,Ton2を予め設定したテーブルTBを備える必要がなくなる。
なお、制御装置33は、デューティ比DT1,DT2を演算せずに、S31で演算したオン期間Ton1の長さと、S33で演算したオン期間Ton2の長さを直接比較しても良い。そして、制御装置33は、オン期間Ton1がオン期間Ton2に比べて長い場合S23を実行し、オン期間Ton1がオン期間Ton2以下の場合にS25を実行しても良い。この場合、制御装置33は、S35のデューティ比の演算を実行しなくとも良い。
S23において、制御装置33は、第2実施形態と同様に、オン期間Ton1をオン期間Ton2よりも先に開始する制御を実行する(S23)。また、制御装置33は、S25において、第2実施形態と同様に、オン期間Ton2をオン期間Ton1よりも先に開始する制御を実行する(S25)。制御装置33は、S23又はS25を実行した後、S19を実行する。このように第3実施形態の制御装置33は、演算したオン期間Ton1,Ton2の長さ(デューティ比DT1,DT2の比率)に基づくオン期間Ton1,Ton2の前後関係の調整を制御周期Tcごとに繰り返し実行できる。
(7.効果)
以上、上記した第3実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。
また、第3実施形態の制御装置33は、検出された温度TR1に基づいてオン期間Ton1の長さを演算し(S31)、検出された温度TR2に基づいてオン期間Ton2の長さを演算する(S33)。制御装置33は、オン期間Ton1,Ton2のうち、演算した時間の長いオン期間Tonが、演算した時間の短いオン期間Tonよりも先に開始するように制御する(S23,S25)。これによれば、実際の温度(温度TR1,TR2)に基づいて演算したオン期間Ton1,Ton2を比較しながら、オン期間Tonの長いヒータに対して先に電力の供給を開始することができる。その結果、ヒータの実際の温度と目標温度の温度差の増大を抑制できる。
(8.その他)
尚、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内での種々の改良、変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、テーブルTBは、オン期間Ton1,Ton2の連続していない制御パターンCPや重複している制御パターンCPを有しても良い。
また、ヒータ制御回路43,44は、トライアックTA1,TA11を有する構成であったが、トライアックに替えて例えばFETなどの他の半導体素子を有する構成でも良い。
また、上記各実施形態では、本願の第1ヒータ及び第2ヒータの一例として、ヒータ31,32を採用したが、これに限らない。本願の第1ヒータ及び第2ヒータは、同一形状のヒータでもよく、全く別の位置に配置されたヒータでも良い。
また、本願のヒータ制御装置30は、2つのヒータ(第1及び第2ヒータ)を制御する装置に限らず、3以上の複数のヒータを制御する装置でも良い。即ち、ヒータ制御装置30は、3以上のヒータの各々におけるオン期間Tonを配置した2種類以上のテーブルを切り替えて、各ヒータを制御しても良い。
また、本願のヒータ制御装置30は、プリンタ1などの画像形成装置が備えるヒータを制御する装置に限らない。例えば、ヒータ制御装置30は、ミシンや工作機械に用いられるヒータを制御する装置でもよい。
また、上記各実施形態では、本願の画像形成装置の一例として、モノクロレーザプリンタであるプリンタ1を採用したが、これに限定されず、例えばカラーレーザプリンタ、インクジェットプリンタ、コピー機能などの複数の機能を備える所謂複合機を採用できる。インクジェットプリンタの場合、ヒータ制御装置は、噴射したインクの乾きを早くするために用いるヒータ等を制御しても良い。