(1.プリンタの構成)
以下、本願の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本願に係る画像形成装置の第1実施形態であるプリンタ1の断面図を示している。プリンタ1は、モノクロレーザプリンタであり、本体ケーシング2内にシート3(紙やOHPシートなど)を収容するトレイ4、画像形成部5、定着器7等を備えている。プリンタ1は、本体ケーシング2内の下部に配置されたトレイ4から供給されるシート3に対し、画像形成部5にてトナー像を形成する。プリンタ1は、シート3に形成したトナー像を、定着器7によって加熱してシート3に定着させる処理を行い、加熱した後のシート3を本体ケーシング2の上部に配置された排紙トレイ9に排出する。なお、以下の説明では、図1に示すように、図1の紙面右側を装置の前側と規定し、装置を前側から見た場合に左手に来る側(紙面手前側)を左側と規定し、前後、左右及び上下の各方向を用いて説明する。
画像形成部5は、スキャナ部11、現像カートリッジ13、感光ドラム17、帯電器18、転写ローラ19等を有している。スキャナ部11は、本体ケーシング2内の上方に配置されており、レーザ発光部(不図示)から発射されたレーザ光を、不図示のポリゴンミラー、反射鏡、レンズ等を介して感光ドラム17の表面上に高速走査にて照射させる。
現像カートリッジ13は、プリンタ1の本体に対して着脱可能に構成されており、その内部にはトナーを収容している。また、現像カートリッジ13は、現像ローラ21及び供給ローラ23を有している。現像ローラ21及び供給ローラ23は、前後方向で互いに対向した状態で設けられている。また、現像ローラ21は、感光ドラム17と前後方向で対向した状態で配置されている。現像カートリッジ13内のトナーは、供給ローラ23の回転により現像ローラ21に供給され、現像ローラ21に担持される。
感光ドラム17の後方側の上方には、帯電器18が間隔を隔てて配置されている。また、感光ドラム17の下方には、転写ローラ19が感光ドラム17に対向して配置されている。感光ドラム17は、回転しつつ、帯電器18によって表面を一様に、例えば正極性に帯電される。次いで、スキャナ部11からのレーザ光により感光ドラム17の表面上に静電潜像が形成される。その後、感光ドラム17と接触して回転する現像ローラ21上に担持されているトナーが、感光ドラム17の表面上の静電潜像に供給されて担持されることによって、感光ドラム17の表面上にトナー像が形成される。形成されたトナー像は、シート3を感光ドラム17と転写ローラ19との間に通過させる間に、転写ローラ19に印加される転写バイアスによって、シート3に転写される。
(2.ヒータ制御装置の構成)
定着器7は、画像形成部5に対してシート3の搬送方向の下流側(後方側)に配置され、定着ローラ27、定着ローラ27を押圧する加圧ローラ29、定着ローラ27を加熱するヒータ31,32等を有している。図2は、ヒータ31,32に供給する電力を制御するヒータ制御装置30の回路図を示している。ヒータ31,32は、例えば、ハロゲンヒータである。なお、本願のヒータは、ハロゲンヒータに限らず、他の発熱する素子、装置等でもよい。
ヒータ31,32は、ヒータ制御装置30の制御装置33によって通電を制御される。ヒータ31は、例えば、定着ローラ27の軸方向における中央付近において、定着ローラ27の内部に配設されている。また、ヒータ32は、例えば、定着ローラ27の軸方向における両端部において、定着ローラ27の内部に配設されている。これにより、例えば、サイズの大きいシート3に対しては、ヒータ31に加え、ヒータ32によっても定着ローラ27を加熱し、シート3の端部における印刷の定着性を向上させることができる。なお、上記したヒータ31,32の配置は一例である。定着ローラ27は、ヒータ制御装置30の制御装置33によって制御される電動モータ(不図示)の駆動に応じて回転し、シート3に転写されたトナーを加熱してトナーをシート3に定着させつつ、シート3に搬送力を付与する。一方、加圧ローラ29は、シート3を定着ローラ27側に押圧しながら従動回転する。
図2に示すように、ヒータ制御装置30は、上記したヒータ31,32、制御装置33の他に、AC/DCコンバータ34、DC/DCコンバータ35、ゼロクロス検出回路36、電流センサ37、リレー42、ヒータ制御回路43,44などを有する。制御装置33は、例えば、CPUを主体とするコンピュータで構成され、CPUによってプログラムを実行することで、他の装置を制御する。なお、制御装置33を、例えば、ASICなどの専用のハードウェアで構成してもよい。あるいは、制御装置33は、例えばソフトウェアによる処理と、ハードウェアによる処理とを併用して動作する構成でもよい。また、制御装置33は、制御や処理に係わる情報を保存等するためのメモリ33Aを有する。メモリ33Aは、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリなどを有する。メモリ33Aは、後述するヒータ制御処理(図4参照)を実行する制御プログラムPGや、制御プログラムPGの実行時に参照するテーブル(テーブルTB1,TB2)などを記憶している。以下の説明では、制御プログラムPGを実行する制御装置33等を装置名で記載する場合がある。例えば、「制御装置33は、ヒータ31,32の温度に基づいた制御を実行する」との記載は、「制御装置33が、CPUで制御プログラムPGを実行することで、ヒータ31,32の温度に基づいた制御を実行する」ことを意味する場合がある。また、メモリ33Aには、ヒータ制御処理に用いるヒータ31,32の目標温度の値が記憶されている。
ヒータ31,32は、交流電源101の通電に応じて発熱する。ヒータ32は、ヒータ31と並列に接続されている。ヒータ31の近傍には、温度センサ31Aが設けられている。温度センサ31Aは、検出したヒータ31の温度の値を、温度検出信号Sa1として制御装置33に出力する。また、ヒータ32の近傍には、温度センサ32Aが設けられている。温度センサ32Aは、検出したヒータ32の温度の値を、温度検出信号Sa2として制御装置33に出力する。これにより、制御装置33は、ヒータ31,32の温度に基づいた制御を実行する。温度センサ31A,32Aは、例えば、サーミスタや熱電対等などにより構成されている。
交流電源101は、例えば、100Vの交流電圧を供給する商用電源である。プリンタ1は、交流電源101と接続可能な電源コードを有している。AC/DCコンバータ34は、例えば、交流電源101から供給される100Vの交流電圧を24Vの直流電圧に変換し、DC/DCコンバータ35や他の装置へ出力する。DC/DCコンバータ35は、24Vの直流電圧を3.3Vの直流電圧に変換し、制御装置33などへ供給する。電流センサ37は、ヒータ31,32に直列接続されている。電流センサ37は、交流電源101からヒータ31へ流れる電流及び/又はヒータ32へ流れる電流の大きさに応じた信号である電流値信号Sig1を制御装置33へ出力する。これにより、制御装置33は、ヒータ31等に流れる電流の大きさに応じた制御を実行できる。リレー42は、制御装置33から出力されるリレー制御信号Sig2に応じて、交流電源101と、ヒータ31,32とを電気的に接続するか否かを切替える。
ゼロクロス検出回路36は、交流電源101のゼロクロスタイミングZC(図3参照)を検出すると、パルス信号であるゼロクロス信号Sig3を制御装置33へ出力する。詳しくは、ゼロクロス検出回路36は、ダイオードブリッジ51、フォトカプラPC21、抵抗R21,R22、及びNPN型バイポーラトランジスタであるトランジスタTr1などを有している。交流電源101の電力は、ダイオードブリッジ51により全波整流され、フォトカプラPC21のLEDに印加される。フォトカプラPC21のフォトトランジスタのコレクタ端子は、抵抗R21を介して24V直流電源に接続され、エミッタ端子は接地されている。トランジスタTr1のベース端子は、抵抗R21とフォトカプラPC21のフォトトランジスタとの接続点に抵抗R22を介して接続されている。トランジスタTr1のコレクタ端子は、制御装置33に接続されている。トランジスタTr1のエミッタ端子は接地されている。尚、トランジスタTr1のコレクタ端子と制御装置33とを接続する配線は、制御装置33内部にて電源電圧にプルアップされる。
図3は、ヒータへの通電の制御に係る信号のタイムチャートを示している。なお、図3においては、ヒータ31への通電状態のみを図示している。図2のゼロクロス検出回路36が有するフォトカプラPC21のLEDは、印加電力に応じた発光量で発光する。例えば、交流電源101の入力電圧V(図3参照)の電圧値が低下すると、フォトカプラPC21のLEDの印加電圧が小さくなり、フォトカプラPC21のフォトトランジスタのオン抵抗は大きくなる。その結果、トランジスタTr1のベース電圧は大きくなる。トランジスタTr1のベース電圧が閾値を超えると(例えば、図3に示す入力電圧Vの絶対値が閾値Vt以下となると)、トランジスタTr1はオンし、ゼロクロス信号Sig3はローレベルとなる。従って、ゼロクロス検出回路36が出力するゼロクロス信号Sig3は、図3に示すように、入力電圧VのゼロクロスタイミングZCの前後における所定時間Tw1(入力電圧Vの絶対値が閾値Vt以下の時間)だけローレベルのパルス信号となる。制御装置33は、例えば、入力されるゼロクロス信号Sig3のローレベルのパルス幅(所定時間Tw1)に基づき、入力電圧VのゼロクロスタイミングZCを特定することができる。
図2に示すように、ヒータ制御回路43は、トライアックTA1、フォトトライアックカプラPC1,抵抗R1,R2などを有する。ヒータ制御回路44は、トライアックTA11、フォトトライアックカプラPC11,抵抗R11,R12などを有する。トライアックTA1は、T2端子が交流電源101の一方の極に接続され、T1端子がヒータ31及びリレー42を介して交流電源101の他方の極に接続されている。トライアックTA1のゲート端子とT1端子とは抵抗R1を介して接続されている。また、トライアックTA1のT2端子とゲート端子とは、フォトトライアックカプラPC1のトライアック及び抵抗R2を介して接続されている。フォトトライアックカプラPC1のLEDのアノード端子には、制御装置33から出力されるヒータ制御信号Sig4が入力される。フォトトライアックカプラPC1のLEDのカソード端子は、接地されている。制御装置33は、ヒータ制御信号Sig4により、ヒータ31の通電を制御する。ヒータ制御回路44は、ヒータ制御回路43と同様の構成となっている。ヒータ制御回路44のフォトトライアックカプラPC11のLEDのアノード端子には、制御装置33から出力されるヒータ制御信号Sig5が入力される。制御装置33は、ヒータ制御信号Sig5により、ヒータ32の通電を制御する。つまり、制御装置33は、ヒータ31の制御とヒータ32の制御とを別個に行うことができる。
例えば、図3に示すように、ヒータ31を通電させる場合には、制御装置33は、ヒータ制御信号Sig4をローレベルからハイレベルに切替え、所定時間経過後にハイレベルからローレベルに切替える。つまり、制御装置33は、所定パルス幅のパルス信号であるヒータ制御信号Sig4をヒータ制御回路43へ出力する。これにより、トライアックTA1がターンオンし、ヒータ31は通電状態となる。図3に示すように、例えば、ヒータ制御信号Sig4のハイレベルを維持し続けた時間だけ、ヒータ31へヒータ電圧Vh(図3参照)が供給される。ヒータ制御信号Sig4をローレベルにすると、ヒータ制御信号Sig4をローレベルにしてから最初に到来するゼロクロスタイミングZCにおいてトライアックTA1はターンオフし、ヒータ31は非通電状態となる。また、制御装置33は、ヒータ31と同様に、ヒータ制御信号Sig5の信号レベル(ハイレベル又はローレベル)を切り替えることで、ヒータ32の通電状態を切り替える。
なお、以下の説明において、制御装置33がハイレベルのヒータ制御信号Sig4を出力した後、ヒータ31に電力が供給されている期間のことをオン期間Tonと記載する。同様に、制御装置33がハイレベルのヒータ制御信号Sig5を出力した後、ヒータ32に電力が供給されている期間のことをオン期間Tonと記載する。また、ヒータ31とヒータ32のオン期間Tonを区別して説明する場合には、ヒータ31のオン期間Tonを、オン期間Ton1と称し、ヒータ32のオン期間Tonを、オン期間Ton2と称して説明する。上述したように、ヒータ制御信号Sig4をローレベルにしても、ヒータ制御信号Sig4をローレベルにしてから最初に到来するゼロクロスタイミングZCまでトライアックTA1はターンオフせず、ヒータ31は通電状態となる。このような期間は、ヒータ31へ電力を供給する通電状態となるため、オン期間Tonと考えることができる。また、ヒータ31,32共に電力が供給されていない期間、即ち、オン期間Ton1及びオン期間Ton2のいずれにも該当しない期間を、オフ期間Toffと称して説明する。
また、図3に示す例では、制御装置33は、オン期間Tonにおいて、ヒータ制御信号Sig4を常にハイレベルとし、ヒータ31に対してヒータ電圧Vhの連続的な印加を実行した。しかしながら、制御装置33は、オン期間Tonにおいて、正弦波のヒータ電圧Vhに対する位相制御や波数制御を行い、ヒータ31に対してヒータ電圧Vhの断続的な印加を実行しても良い。ここでいう位相制御とは、例えば、交流電源101の入力電圧Vの半周期におけるヒータ31への給電を、半周期の開始のゼロクロスタイミングZCから所定時間経過したタイミングであって入力電圧Vの位相角に応じたタイミングで開始し、半周期の終了のゼロクロスタイミングZCまで行う制御である。また、波数制御とは、入力電圧Vの半周期におけるヒータ31への給電を、半周期の開始のゼロクロスタイミングZCから半周期の終了のゼロクロスタイミングZCまで行う半周期の数(波数)を増減させて変更する制御である。従って、制御装置33は、ゼロクロス信号Sig3に基づいて、オン期間Tonにおいて、断続的なヒータ制御信号Sig4(例えば、入力電圧Vの半周期よりも短いパルス幅のパルス信号)を出力しても良い。これにより、ヒータ31は、特定の位相や、波数で、ヒータ電圧Vhを印加されることとなる。即ち、本願におけるオン期間は、ヒータ31,32にヒータ電圧Vhを連続的に印加する期間に限らず、その期間内において一時的なヒータ電圧Vhの停止を含んだとしてもヒータ31,32へのヒータ電圧Vhの印加を目的とする期間であれば良い。
また、本実施形態の制御装置33は、所定の制御周期において、ヒータ31,32のオン期間Ton及びオフ期間Toffを制御する。制御装置33は、図3に示すように、例えば、入力電圧VのゼロクロスタイミングZCを開始点として、制御周期Tcを設定する。制御周期Tcの1周期の長さは、特に限定されないが、例えば、数百ミリ秒から数秒の値を設定できる。また、制御周期Tcの1周期の長さは、ヒータ31,32の抵抗値、ヒータ31等に印加するヒータ電圧Vhの電圧値などに応じて適宜変更される。
制御装置33は、例えば、プリンタ1の動作状態に応じて、制御周期Tcの長さを変更しても良い。ここでいう、動作状態とは、例えば、プリンタ1の起動時にヒータ31,32を温める状態、画像形成部5によって印刷処理を実行する状態である。あるいは、動作状態とは、印刷処理を完了させ、次の印刷指示を受けるまで一時的に待機する際に、ヒータ31,32の温度を一定温度に保つ待機状態でもよい。制御装置33は、このような動作状態に応じて、制御周期Tcの長さを変更しても良い。
また、制御装置33は、制御周期Tcの中で、ヒータ31,32のオン期間Tonをできるだけ重ならないように制御する。図2に示すように、制御装置33のメモリ33Aには、後述するように、ヒータ31のオン期間Ton1と、ヒータ32のオン期間Ton2を制御するための制御パターンCP(例えば、図5の制御パターンCP1~CP9参照)が設定されたテーブルTB1,TB2が記憶されている。制御装置33は、このテーブルTB1,TB2を切り替え、各テーブルの制御パターンCPに基づいて制御周期Tc内におけるオン期間Ton1,Ton2を制御する。制御装置33は、例えば、各動作状態において設定した目標温度と、温度検出信号Sa1,Sa2に基づいて検出したヒータ31,32の温度とを比較し、各テーブルの制御パターンCPから適切な制御パターンCPを選択する。
具体的には、例えば、制御装置33は、目標温度から検出した温度を減じた値が大きいほど、オン期間Tonのより長い制御パターンCPを、テーブルTB1,TB2から選択して用いる。例えば、制御装置33は、ヒータ31の目標温度から温度センサ31Aにより検出した温度を減じた値の増大に応じて、ヒータ31のオン期間Ton1の長い制御パターンCPを選択する。制御装置33は、ヒータ32についても同様に、ヒータ32の目標温度から温度センサ32Aにより検出した温度を減じた値の増大に応じて、ヒータ32のオン期間Ton2の長い制御パターンCPを選択する。制御装置33は、例えば、制御周期Tcごとに、目標温度から検出した温度を減じた値に基づいて制御パターンCPを選択し、選択した制御パターンCPを次の制御周期Tcで実行する。これにより、制御装置33は、ヒータ31,32の温度を所望の目標温度に維持できる。なお、制御装置33は、ヒータ31,32の検出温度が目標温度を超えた場合、例えば、オン期間Ton1,Ton2をゼロ(ヒータ31,32への通電を停止)する制御を行っても良い。
(3.ヒータ制御処理)
次に、制御装置33によって実行されるヒータ制御処理の内容について説明する。図4は、ヒータ制御処理の内容を示すフローチャートである。図5は、第1実施形態に係るテーブルTB1,TB2の各々の制御パターンCP1~CP9を示す図である。なお、以下の説明では、テーブルTB1の制御パターンCP1~CP9を、テーブルTB2の制御パターンCP1~CP9と区別して説明する場合には、制御パターンCP1A~CP9Aのように符号の最後に「A」(テーブルTB2の場合は「B」)を付して説明する。また、制御パターンCP1A~CP9A,CP1B~CP9Bを総称して説明する場合には、制御パターンCPと称して説明する。また、本実施形態では、テーブルTB1の制御周期Tcと、テーブルTB2の制御周期Tcとは同一の長さとなっている。以下の説明では、テーブルTB1の制御周期Tcを、テーブルTB2の制御周期Tcと区別して説明する場合には、テーブルTB1の制御周期Tcを、制御周期Tc1と称し、テーブルTB2の制御周期Tcを制御周期Tc2と称して説明する。
制御装置33は、例えば、印刷の指示を受け付けると、図4に示すヒータ制御処理を開始する。制御装置33は、例えば、メモリ33Aに記憶された制御プログラムPGをCPUで実行することで、ヒータ制御処理を実行する。なお、ヒータ制御処理を開始するタイミングは、印刷の指示を受け付けた場合に限らず、ヒータ31,32の通電を制御する他の場合でも良い。例えば、制御装置33は、プリンタ1の電源を投入されシステムを起動しヒータ31等を温める際に、図4のヒータ制御処理を実行しても良い。あるいは、制御装置33は、一定時間だけ印刷指示を受け付けなかったために、次の印刷指示を受け付けるまでヒータ31等の温度を一定温度に保つ待機状態において、図4のヒータ制御処理を実行しても良い。
制御装置33は、ヒータ制御処理を開始すると、図4のステップ(以下、単に「S」と記載する)11において、目標温度に応じてテーブルTB1の制御パターンCP1A~CP9Aから選択した制御パターンCPに基づいて、ヒータ31,32に対する通電を実行する。例えば、制御装置33は、温度センサ31A等による検出温度を、印刷処理で必要な目標温度から減じた値が大きい場合、オン期間Tonのより長い制御パターンCPを、テーブルTB1,TB2から選択して用いる。
次に、制御装置33は、S12において、目標温度に応じてテーブルTB2の制御パターンCP1B~CP9Bから選択した制御パターンCPに基づいて、ヒータ31,32に対する通電を実行する。なお、制御装置33は、図4に示すヒータ制御処理において、テーブルTB2を用いた制御(S12)を先に実行し、テーブルTB1を用いた制御(S11)を後から実行しても良い。
次に、制御装置33は、ヒータ制御処理を継続するか否かを判断する(S13)。例えば、制御装置33は、全ての印刷処理が完了した場合、ヒータ制御処理を継続しないと判断し(S13:NO)、図4に示すヒータ制御処理を終了する。また、制御装置33は、例えば、全ての印刷処理が終了していない場合、ヒータ制御処理を継続すると判断し(S13:YES)、S11からの処理を再度実行する。
本実施形態の制御装置33は、制御周期Tcごとに、テーブルTB1とテーブルTB2を交互に用いて、各テーブルから選択した制御パターンCPに基づいて通電を行うことで、ヒータ31,32の各々へ供給する電力を制御する。具体的には、制御装置33は、例えば、最初にS11を実行する前に、検出温度と目標温度に基づいて、S11で実行する制御パターンCPを予めテーブルTB1から選択する。制御装置33は、S11において、予め選択した制御パターンCPを用いた制御を実行する。また、制御装置33は、S11において、予め選択した制御パターンCPを用いた制御を実行しつつ、次のS12で実行する制御パターンCPを検出温度と目標温度とに基づいてテーブルTB2から選択する。制御装置33は、制御パターンCPを用いた制御と、次のS12(制御周期Tc2内)で実行する制御パターンCPの選択処理とをS11の処理として制御周期Tc1内で実行する。同様に、制御装置33は、S11で選択した制御パターンCPを用いた制御と、次のS11(制御周期Tc1内)で実行する制御パターンCPの選択処理をS12の処理として制御周期Tc2内で実行する。
なお、制御装置33は、S11やS12の処理と並列にS13の判断処理を実行しても良い。例えば、制御装置33は、S11の処理を実行しつつ、並列に実行したS13の処理で否定判断となった場合(S13:NO)、S11の処理を中断しても良い。また、制御装置33は、S12の処理を実行しつつ、並列に実行したS13の処理で否定判断となった場合(S13:NO)、テーブルTB1から制御パターンCPを予め選択する処理をS12において実行せず、S12で通電制御のみを実行した後図4のヒータ制御処理を終了しても良い。
また、テーブルTB1の制御周期Tc1の長さと、テーブルTB2の制御周期Tc2の長さとは、異なる長さでも良い。また、制御装置33は、テーブルTB1とテーブルTB2とを交互に用いなくとも良い。例えば、制御装置33は、テーブルTB1の制御パターンCP1A~CP9Aの何れかを2回実行した後、テーブルTB2の制御パターンCP1B~CP9Bの何れかを1回実行する処理を繰り返し実行しても良い。
図5は、テーブルTB1,TB2の制御パターンCP1A~CP9A,CP1B~CP9Bを示している。図5に示すように、テーブルTB1,TB2の各々には、例えば、9種類の制御パターンCPが設定されている。図5の最も左の列は、制御パターンCPの番号を示している。左から2番目の列は、3列目以降に示すデータと、ヒータ31又はヒータ32との対応関係を示している。
左から3列目は、制御周期Tcの1周期のうち、オン期間Ton1,Ton2のそれぞれの占める割合、即ち、制御周期Tcに対するオン期間Ton1,Ton2のそれぞれのデューティ比を示している。例えば、制御パターンCP1において、ヒータ31のオン期間Ton1は、制御周期Tcの内、20%を占めていることを示している。左から4列目は、テーブルTB1の制御パターンCP1A~CP9Aを示している。また、左から5列目は、テーブルTB2の制御パターンCP1B~CP9Bを示している。また、図5に示すように、本実施形態の制御パターンCP1,CP2,CP4の各々において、ヒータ31,32のデューティ比の合計は、100%未満(CP1なら合計が40%=20%+20%)となっている。このため、制御パターンCP1,CP2,CP4の各々では、ヒータ31,32共に電力を供給しないオフ期間Toffが発生する。換言すれば、本実施形態のテーブルTB1,TB2の制御パターンCPの中には、オン期間Ton1,Ton2のほかに、ヒータ31,32共に電力を供給しないオフ期間Toffを設定された制御パターンCP1,CP2,CP4が含まれている。
制御装置33は、上記した図4の処理において、例えば、印刷処理で必要な目標温度と、温度検出信号Sa1,Sa2に基づくヒータ31,32の検出温度の温度差に基づいて、テーブルTB1,TB2の制御パターンCPから制御パターンCPを選択する。例えば、制御装置33は、ヒータ31の検出温度が目標温度に比べて低いほど、ヒータ31のデューティ比の高い(オン期間Ton1の長い)制御パターンCPを選択する。これにより、制御装置33は、検出温度と目標温度の温度差に基づいて、ヒータ31,32の通電時間を変更し、ヒータ31,32の温度を所望の目標温度に維持できる。
また、図5に示すように、本実施形態のテーブルTB1に含まれる制御パターンCPの全て(制御パターンCP1A~CP9A)には、制御周期Tc1の最初にヒータ31のオン期間Ton1が設定され、且つ同一の制御周期Tc1の最後にヒータ32のオン期間Ton2が設定されている。ここでいう「制御周期Tc1の最初に設定されている」とは、制御周期Tc1の最初に設定されたオン期間Tonが制御周期Tc1の前半部分で終わっている場合(CP1など)や、制御周期Tc1の最初に設定されたオン期間Tonが後半部分まで連続している場合(CP8など)を含む概念である。つまり、「制御周期Tc1の最初に設定されている」とは、ヒータ31のオン期間Ton1の開始が制御周期Tc1の開始と一致していることであり、制御周期Tc1内であればオン期間Ton1の長さは問わない。「制御周期Tc1の最後に設定されている」という概念についても同様であり、ヒータ32のオン期間Ton2の終了が制御周期Tc1の終了と一致していることであり、制御周期Tc1内であればオン期間Ton2の長さは問わない。また、テーブルTB1とは対称に、テーブルTB2に含まれる制御パターンCPの全て(制御パターンCP1B~CP9B)には、制御周期Tc2の最初にヒータ32のオン期間Ton2が設定され、且つ同一の制御周期Tc2の最後にヒータ31のオン期間Ton1が設定されている。本実施形態の制御装置33は、図5に示すテーブルTB1,TB2を、制御周期Tcごとに切り替えて用いることで、ヒータ31,32のオン期間Ton1,Ton2を制御周期Tcの切り替わりで連続させることができる。
なお、図5に示す制御パターンCPの内容は一例である。例えば、テーブルTB1,TB2は、ヒータ31,32の少なくとも一方のオン期間Ton1,Ton2を有しない制御パターンCPを含んでも良い。制御装置33は、例えば、ヒータ31等の検出温度が目標温度を超えた場合に、制御周期Tcの1周期の間、目標温度の超えたヒータに対する通電を停止し、そのヒータの温度を下げる制御を実行しても良い。また、テーブルTB1,TB2は、例えば、制御周期Tcの開始から終了まで、全てオン期間Ton1,Ton2を連続させるデューティ比100%の制御パターンCPを含んでも良い。制御装置33は、例えば、ヒータ31等の検出温度と目標温度との温度差が所定の温度差以上である場合に、連続する制御周期Tcに亘ってデューティ比100%の制御パターンCPを用いて、ヒータの通電状態を継続させ、ヒータを速やかに温める制御を実行しても良い。
(4.第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係るテーブルTB3,TB4の各々の制御パターンCPを示している。テーブルTB3は、図5に示す第1実施形態のテーブルTB1と、制御パターンCP1,CP2,CP4のみが異なっている。同様に、テーブルTB4は、図5に示す第1実施形態のテーブルTB2と、制御パターンCP1,CP2,CP4のみが異なっている。
図6に示すように、第2実施形態の制御パターンCP1,CP2,CP4は、デューティ比の合計が100%未満で、且つオン期間Ton1と、オン期間Ton2とが連続している。このため、制御パターンCP1,CP2,CP4には、制御周期Tcの最後にオフ期間Toffが設定されている。従って、第2実施形態のテーブルTB3は、制御周期Tc1の最後にヒータ31,32共に電力を供給しないオフ期間Toffを設定され、且つ同一の制御周期Tc1の最初に設定されたオン期間Ton1に連続してオン期間Ton2を設定された制御パターンCP1,CP2,CP4を含んでいる。同様に、第2実施形態のテーブルTB4は、制御周期Tc2の最後にオフ期間Toffを設定され、且つ同一の制御周期Tc2の最初に設定されたオン期間Ton2に連続してオン期間Ton1を設定された制御パターンCP1,CP2,CP4を含んでいる。
(5.第1実施形態、第2実施形態、比較例の電圧変動)
次に図7~図10を用いて、第1実施形態及び第2実施形態において電圧の変動が抑制される効果について説明する。図7~図10は、異なるデューティ比の制御パターンCPにより制御した場合のオン期間Ton1,Ton2の状態や電圧変動の状態を示している。図7~図10に示す「第1実施形態」は、図5に示すテーブルTB1,TB2を交互に用いる第1実施形態の場合を示している。また、図7~図10に「第2実施形態」は、図6に示すテーブルTB3,TB4を交互に用いる第2実施形態の場合を示している。また、図7~図10に示す「比較例」は、同一のテーブル(例えば、第2実施形態のテーブルTB3)のみを繰り返し用いる実施形態を示している。なお、図7~図10は、電圧変動の説明を分かり易くするため、図5及び図6とは異なり、オン期間Ton1とオン期間Ton2を、同じ波形上に図示している。
まず、図7について説明する。なお、後述する図8~図10の説明において、図7と同様の内容については、その説明を適宜省略する。図7に示す例では、制御パターンCP1(ヒータ31のデューティ比20%、ヒータ32のデューティ比20%)を3回(3周期)切り替えた場合を示している。図7に示す上向きの黒塗り矢印は、ヒータ31,32の電圧変動が起こる変化点VPを示している。変化点VPは、ヒータ31,32の印加電圧が変動することで、交流電源101の入力電圧Vに変動を発生させる点である。そして、変化点VPによって入力電圧Vに変動が発生することで、プリンタ1と同一の交流電源101を使用する他の電子機器等にフリッカが発生する虞がある。そこで、このような変化点VPの数を少なくすることで、入力電圧V、引いてはプリンタ1を接続した電源の電圧変動を抑制し、フリッカの発生や、フリッカによる影響を抑制できる。なお、図7は、図面が煩雑となるため、変化点VPの符号の一部を省略している。
例えば、図7に示す変化点VP1は、ヒータ31又はヒータ32のみに通電した状態から、その通電を停止する変化点を示している。また、例えば、変化点VP2は、ヒータ31,32共に通電を停止した状態(オフ期間Toff)から、ヒータ31又はヒータ32の一方へ通電を開始する変化点を示している。また、例えば、変化点VP3は、ヒータ31,32のうち、一方の通電を停止し、他方の通電を開始する変化点である。
第2実施形態では、オン期間Ton1,Ton2を連続させることで、変化点VP1のような通電を完全に停止する変化点VPや、変化点VP2のような完全に停止した状態から通電を開始する変化点VPを減らすことができる。これにより、フリッカの影響を抑制することができる。一方で、第2実施形態では、制御周期Tcの最後にオフ期間Toffを設定された制御パターンCP1を使用すると、制御周期Tcの最後に必ず変化点VP2が発生する。換言すれば、制御周期Tcの最初に、通電を停止した状態から通電を開始する変化点VP2が発生する。比較例においても、同様に、制御周期Tcの最初に変化点VP2が発生する。
一方、第1実施形態では、テーブルTB1の制御パターンCP1Aにおいて制御周期Tc1の最後に設定されたオン期間Ton2と、テーブルTB2の制御パターンCP1Bにおいて制御周期Tc2の最初に設定されたオン期間Ton2を連続させる(図7中の連続点WP1参照)。同様に、次の制御周期Tcの最後では、オン期間Ton1を連続させる(図7中の連続点WP2参照)。これにより、同一のヒータ(ヒータ31又はヒータ32)への通電状態を連続させ、変化点VPの数を減らすことができる。図7に示すように、第1実施形態、第2実施形態、比較例を比較した場合、第1実施形態の変化点VPの数(3周期で合計6個)は、第2実施形態及び比較例の変化点VPの数(8個)に比べて少なくなっている。従って、第1実施形態では、変化点VPを減らし、電源の電圧変動を抑制できる。
図8は、制御パターンCP5(デューティ比が50%:50%)を3回(3周期)切り替えた場合であり、オフ期間Toffが発生しない場合を示している。この場合にも、図8に示すように、第1実施形態では、制御周期Tcごとに、オン期間Ton1,Ton2の連続する連続点WP1,WP2を発生させ、変化点VPの数を減し、電圧変動を抑制できる。また、図8のケースでは、第2実施形態は、第1実施形態と同様に、変化点VPを減らすことができ、電圧変動を抑制できる。一方、同一のテーブルTB3(CP5)のみを繰り返し用いる比較例では、制御周期Tcの最後に、ヒータ31とヒータ32の通電を切り替える変化点VP3が必ず発生する。このため、合計の変化点VPの数は、3つの実施形態のうち、最も多くなっている(5回)。
また、図9は、制御パターンCPの番号を切り替えた場合(CP5→CP4→CP4)を示している。この場合、第1実施形態では、制御周期Tcごとに、オン期間Ton1又はオン期間Ton2を連続させる連続点WP1,WP2を発生させている。一方、第2実施形態では、制御パターンCP5のようにヒータ31とヒータ32の合計デューティ比が100%以上となる(オフ期間Toffのない)制御パターンCPの場合、制御周期Tcの最後で連続点WP1を発生させ、変化点VPの数を減らすことができる。しかし、制御パターンCP4(あるいは、制御パターンCP1,CP2)のように合計デューティ比が100%未満となる(オフ期間Toffのある)制御パターンCPの場合、制御周期Tcの最後で変化点VP2(通電を開始する変化点VP)が発生する。このため、図9に示す2周期目以降では、変化点VPの数が増加することとなる。また、比較例では、制御周期Tcの最後に変化点VPが必ず発生する。従って、図9に示す場合においても、第1実施形態は、最も変化点VPを少なくできる。
また、図10は、オン期間Ton1,Ton2の重なる制御パターンCP(CP9,CP8)を実行した場合を示している。なお、図10では、オン期間Ton1,Ton2の位置を見やすくするため、各パルス波形の高さを異なる高さで示している。図10の場合、各実施例において、ヒータ31,32のうち、一方のヒータの通電中(オン期間Ton中)に他方のヒータの通電を開始する変化点VP5が発生する。また、各実施例において、両ヒータの通電中に、一方のヒータの通電を停止する変化点VP6が発生する。第1実施形態及び第2実施形態は、同一波形となり、変化点VPの数も同一(合計5個)となる。しかしながら、比較例では、制御周期Tcの最後に変化点VPが必ず発生する。従って、図10に示す場合に、第1実施形態や第2実施形態では、変化点VPをより少なくできる。
図11は、テーブルTB1,TB2,TB3,TB4の各テーブルを組み合わせたときのヒータ通電状態の遷移と電圧の変動の発生頻度を示している。まず、図11の最も左の列は、各状態遷移を識別するための通し番号である。左から2列目の遷移の列は、ヒータ31とヒータ32に対する通電の状態遷移を示している。遷移の列の「M」は、ヒータ31へ通電している状態を示している。「S」は、ヒータ32へ通電している状態を示している。例えば、M+S→Mは、両ヒータに通電する状態からヒータ31のみに通電する状態へ遷移することを示している。遷移の右側には、テーブルの切り替わる条件と、各遷移の該当数が示されている。また、テーブルの切り替わる条件の右側には、テーブル中の切り替わる条件と、各遷移の該当数が示されている。
一例として、テーブルの切り替わりの最も左側の列(TB3→TB3)について説明する。遷移の列の条件は、「テーブルの切り替わり」と、「テーブル中」とでは、意味が異なっている。遷移の列の条件は、「テーブルの切り替わり」に対しては、そのテーブルの切り替わりの条件を実施した場合に、切り替わる際(制御周期Tcの最後)において遷移する条件となる。具体的には、例えば、遷移の項目が「A→B」の場合、「A」は、切り替える前のテーブルにおける各制御パターンCPの制御周期Tcの最後の状態を示している。「B」は、切り替えた後のテーブルにおける各制御パターンCPの制御周期Tcの最初の状態を示している。より具体的には、テーブルの切り替わり(TB3→TB3)且つ「M+S→M+S」は、テーブルTB3からテーブルTB3に切り替えた場合に、ヒータ31とヒータ32の両方に通電する状態から(M+S→)、ヒータ31とヒータ32の両方に通電する状態(M+S)へ遷移する条件となる。
図6に示すように、テーブルTB3の制御パターンCP1~CP9の全て(9つ)は、制御周期Tc1の最初でヒータ31のみに通電するパターン(最初にオン期間Ton1のみのパターン)である。一方、テーブルTB3の制御パターンCP1~CP9のうち、制御周期Tc1の最後にヒータ32のみに通電するパターン(最後にオン期間Ton2のみのパターン)は、6つ存在する(CP3,CP5~CP9)。また、テーブルTB3の制御パターンCP1~CP9のうち、残りの制御パターンCP1,CP2,CP4は、制御周期Tc1の最後にオフ期間Toffを設定されたパターンである。
従って、図11に示すように、テーブルの切り替わりの最も左側の列(TB3→TB3)且つ状態遷移「S→M」(NO.10)の条件に該当する数は、54(=最後にヒータ32のみに通電する6パターン×最初にヒータ31のみに通電する9パターン)となる。また、状態遷移「OFF→M」(NO.14)の条件に該当する数は、27(=最後にオフ期間Toffとなる3パターン×最初にヒータ31のみに通電する9パターン)となる。そして、合計数は、テーブルTB3(9パターン)×テーブルTB3(9パターン)の81となる。上記した遷移以外は、発生しないため空白(該当数ゼロ)となる。
一方、図5に示すように、第1実施形態のテーブルTB1,TB2は、制御周期Tcの最初と最後にオン期間Ton1,Ton2のいずれかを配置している。また、テーブルTB1とテーブルTB2とは、オン期間Ton1,Ton2を、制御周期Tcの前後で対称な配置となっている。このため、図11に示すように、テーブルの切り替わりの左から4列目(TB1→TB2)では、ヒータ32のオン期間Ton2を連続させる「S→S」(NO.11)のみが発生する。
次に、図11の表における「テーブルの切り替わり」の右側の「テーブル中」について説明する。遷移の列の条件は、「テーブル中」に対しては、そのテーブル内において遷移する条件となる。具体的には、例えば、テーブルTB3には、図6に示すように、ヒータ31とヒータ32の両方に通電する状態から、ヒータ32のみに通電する状態へ遷移する制御パターンCP(図11のNO.3に該当する制御パターンCP)が、3つ存在する(CP6,CP8,CP9)。同様に、NO.5(M→M+S)に該当する制御パターンCPが、3つ存在する(CP6,CP8,CP9)。また、NO.7(M→S)に該当する制御パターンCPが、6つ存在する(CP1~CP5,CP7)。また、NO.12(S→OFF)に該当する制御パターンCPが、3つ存在する(CP1,CP2,CP4)。このように「テーブル中」の列は、各テーブル中の制御パターンCPの遷移を集計したものである。
「テーブル中」の右側の「テーブルの切り替わり+テーブル中」の列は、上記した「テーブルの切り替り」や「テーブル中」と同様に、3つのテーブルを切り替えた場合の該当数を集計したものである。具体的には、「テーブルの切り替わり」における該当数と、「テーブル中」の該当数とを合計した値である。例えば、「TB3→TB3→TB3」のNO.3(M+S→S)は、「TB3→TB3」の切り替わり2回分(0×2)と、TB3中の切り替わり3回分(3×3)を合計した値(9)となる。また、例えば、「TB3→TB3→TB3」のNO.10(S→M)は、「TB3→TB3」の切り替わり2回分(54×2)と、TB3中の切り替わり3回分(0×3)を合計した値(108)となる。
そして、最も右側の「変動」の列は、各遷移における電圧変動を評価したものである。二重丸の遷移は、最も電圧変動の少ない、即ち、フリッカの影響の最も少ないと考えられる遷移である。具体的には、遷移の前後でヒータ31とヒータ32の両方に通電する遷移(S+M→S+M)、遷移の前後でヒータ31のみに通電する遷移(S→S)、遷移の前後でヒータ32のみに通電する遷移(M→M)である。即ち、二重丸の遷移は、遷移の前後で通電対象の変更がないものである。
また、一重丸は、ヒータ31,32の一方へ通電する状態から他方へ通電する状態へ切り替える遷移である。一重丸の遷移は、遷移の前後で通電対象を変更するため、二重丸の遷移に比べて電圧変動を生じさせる可能性がある。このため、一重丸の遷移によるフリッカの影響は、二重丸の遷移に比べて大きくなると考えられる。
また、三角の遷移は、ヒータ31,32の両方へ通電する状態から一方の通電を停止する状態への遷移、あるいはヒータ31,32のうち一方の通電を停止した状態から両方へ通電する状態への遷移である。三角の遷移は、2つのヒータのうち、一方のヒータの通電停止や通電開始をともなうため、丸の遷移に比べて電圧変動を生じさせる可能性がある。
また、バツの遷移は、通電を停止する状態(オフ期間Toff)から通電する状態への遷移、又はその逆の遷移である。バツの遷移は、ヒータ31,32の両方の通電の完全な停止をともなうため、最も電圧変動の大きい遷移となる。従って、電圧変動の大きさ、即ち、フリッカの発生に寄与する度合いは、二重丸、丸、三角、バツの順に大きくなる。
図12は、図11の「テーブルの切り替わり+テーブル中」の列に基づいて、上記した第1実施形態、第2実施形態、比較例の電圧変動をまとめた表である。図7~図10に示す比較例のように、同一のテーブル(テーブルTB3)のみを繰り返し切り替える場合、電圧変動の影響の大きい丸やバツの遷移が、多く発生する。
一方、第2実施形態では、制御周期Tcの前後にオン期間Ton1,Ton2を配置したテーブルTB3及びテーブルTB4を交互に使用することで、二重丸の遷移を多数発生させ(図12では108個)、電圧変動を抑制できることが分かる。さらに、第1実施形態では、全ての制御パターンCP1~CP9において制御周期Tcの前後にオン期間Ton1,Ton2を配置したテーブルTB1,TB2を交互に使用することで、二重丸の遷移をさらに多く発生させ(図12では162個)、電圧変動をより抑制できることが分かる。図7~図12に示すように、テーブルの切り替えを2回する(3周期)の間(例えば、数ミリ秒から数秒の間)に、数回の電圧変動を抑制できる。このため、数秒から数分掛かる印刷処理において、数十回から数千回以上もの電圧変動の発生を抑制できる。このようにして、上記した第1及び第2実施形態では、2種類のテーブルを用意し、そのテーブルを切り替えて使用することで、電源の電圧に生じる変動を抑制し、フリッカの影響をより抑制することが可能となっている。
因みに、ヒータ31は、第1ヒータの一例である。ヒータ32は、第2ヒータの一例である。テーブルTB1,TB3は、第1テーブルの一例である。テーブルTB2,TB4は、第2テーブルの一例である。制御周期Tc1は、第1制御周期の一例である。制御周期Tc2は、第2制御周期の一例である。
(5.効果)
以上、上記した各実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)上記各実施形態のヒータ制御装置30は、交流電源101から電力を供給されるヒータ31と、交流電源101から電力を供給されるヒータ32と、交流電源101からヒータ31,32の各々へ電力を供給する期間であるオン期間Ton1,Ton2を、制御パターンCPに基づいて制御する制御装置33と、を備える。制御パターンCPは、所定の制御周期Tc内においてヒータ31,32の各々へ電力を供給するオン期間Ton1,Ton2を設定するものである。制御装置33は、制御周期Tc1の最初にヒータ31のオン期間Ton1を設定され、且つ制御周期Tc1内にヒータ32のオン期間Ton2を設定された制御パターンCPを含むテーブルTB1,TB3と、制御周期Tc2の最後にヒータ31のオン期間Ton1を設定され、且つ制御周期Tc2内にヒータ32のオン期間Ton2を設定された制御パターンCPを含むテーブルTB2,TB4のうち、一方のテーブルを用いてヒータ31,32の各々へ供給する電力を制御した後、他方のテーブルを用いてヒータ31,32の各々へ供給する電力を制御する。
これによれば、テーブルTB1,TB3に含まれる制御パターンCPには、制御周期Tc1の最初にヒータ31のオン期間Ton1が設定される。また、テーブルTB2,TB4に含まれる制御パターンCPには、制御周期Tc2の最後にヒータ31のオン期間Ton1が設定される。そして、制御装置33は、この2つのテーブルのうち、一方のテーブルを用いてヒータ31,32の電力制御を実行した後、他方のテーブルを用いて電力制御を実行する。これにより、ヒータ31は、制御周期Tc2の最後に電力を供給された後、連続する制御周期Tc1の最初に電力を供給される可能性が高くなる。換言すれば、ヒータ32への電力供給を行いつつ、ヒータ31のオン期間Ton1を連続させることができる。ヒータ31に対して供給する電力を停止する回数を減らし、交流電源101から供給する電力の電圧変動を低減できる。従って、当該ヒータ制御装置30と同一の交流電源101を使用する他の電子機器等で発生するフリッカの影響を抑制できる。
(2)また、上記各実施形態のテーブルTB1,TB3は、制御周期Tc1の最初にヒータ31のオン期間Ton1を設定され、且つ制御周期Tc1の最後にヒータ32のオン期間Ton2を設定された制御パターンCP(図5のテーブルTB1のCP1~CP9、図6のテーブルTB3のCP3,CP5~CP9)を含む。テーブルTB2,TB4は、制御周期Tc2の最後にヒータ31のオン期間Ton1を設定され、且つ制御周期Tc2の最初にヒータ32のオン期間Ton2を設定された制御パターンCP(図5のテーブルTB2のCP1~CP9、図6のテーブルTB4のCP3,CP5~CP9)を含む。
これによれば、ヒータ31に加え、ヒータ32も、制御周期Tc1の最後に電力を供給された後、連続する制御周期Tc2の最初に電力を供給される可能性が高くなる。従って、ヒータ31,32の両方に対して供給する電力を停止する回数を減らし、フリッカの影響をより抑制できる。
(3)また、上記各実施形態のテーブルTB1,TB3は、制御周期Tc1の最初にオン期間Ton1を設定され、最後にオン期間Ton2を設定され、且つ制御周期Tc1においてヒータ31,32共に電力を供給しないオフ期間Toffを設定された制御パターンCP1,CP2,CP4を含む。テーブルTB2,TB4は、制御周期Tc2の最後にオン期間Ton1を設定され、最初にオン期間Ton2を設定され、且つオフ期間Toffを設定された制御パターンCP1,CP2,CP4を含む。
同一の制御周期Tc内においてヒータ31,32の各々へ電力を供給するオン期間Ton1,Ton2の合計が、制御周期Tcよりも短くなる場合、即ち、制御周期Tcに対する合計オン期間のデューティ比が100%未満となる場合、ヒータ31,32共に電力を供給しないオフ期間Toffが発生する。このため、オフ期間Toffが発生するデューティ比で制御するような場合に、テーブルTB1~TB4を切り替えてオン期間Ton1,Ton2を連続させる制御を行うことは、フリッカの影響を抑制する点で特に有効である。
(4)また、上記各実施形態の制御装置33は、テーブルTB1,TB3とテーブルTB2,TB4を交互に用いてヒータ31,32の各々へ供給する電力を制御する。これによれば、テーブルTB1,TB3とテーブルTB2,TB4とを交互に用いることで、オン期間Ton1,Ton2を連続させる回数を増加させ、フリッカの影響をより抑制できる。
(5)また、上記第1実施形態において、テーブルTB1に含まれる制御パターンCPは全て、制御周期Tc1の最初にオン期間Ton1を設定され、且つ最後にオン期間Ton2を設定された制御パターンである。また、テーブルTB2に含まれる制御パターンCPは全て、制御周期Tc2の最初にオン期間Ton2を設定され、且つ最後にオン期間Ton1を設定された制御パターンCPである(図5参照)。これによれば、全ての制御パターンCP1~CP9において、制御周期Tc1,Tc2の最初と最後にオン期間Ton1,Ton2のどちらかを設定することで、テーブルTB1,TB2を切り替えた場合に、オン期間Ton1,Ton2を連続させる回数をより増加させることが可能となる。
(6)また、上記第2実施形態において、テーブルTB3は、制御周期Tc1の最後にオフ期間Toffを設定され、且つ最初に設定されたオン期間Ton1に連続してオン期間Ton2を設定された制御パターンCP1,CP2,CP4を含む。また、テーブルTB4は、制御周期Tc2の最後にオフ期間Toffを設定され、且つ最初に設定されたオン期間Ton2に連続してオン期間Ton1を設定された制御パターンCP1,CP2,CP4を含む(図6参照)。これによれば、制御周期Tcに対する合計オン期間のデューティ比が100%未満となる場合に、ヒータ31のオン期間Ton1と、ヒータ32のオン期間Ton2とを連続させることで、交流電源101から供給する電力の電圧変動を低減し、フリッカの影響を抑制できる。
(7)また、制御周期Tc1の長さと、制御周期Tc2の長さとは、同一である。これによれば、テーブルTB1,TB3の制御周期Tc1の長さとテーブルTB2,TB4の制御周期Tc2の長さを一致させることで、テーブルTB1~TB4を切り替えてヒータ31,32の各々へ電力を供給する制御の処理負荷を軽減することが可能となる。
(8)また、ヒータ制御装置30は、ヒータ31の発熱状態に応じて変動する温度を検出する温度センサ31Aを備える。制御装置33は、ヒータ31の目標温度から温度センサ31Aにより検出した温度を減じた値の増大に応じて、テーブルTB1,TB3及びテーブルTB2,TB4に含まれている制御パターンCPのうち、ヒータ31のオン期間Ton1がより長い制御パターンCPを用いてヒータ31へ供給する電力を制御する。これによれば、ヒータ31の検出した温度と、目標温度との温度差の増大に応じて、ヒータ31のオン期間Ton1をより長くし、通電時間を長くすることで、ヒータ31を適切に温めることができる。このような電力制御においてテーブルTB1~TB4を用いることで、ヒータ31を目標温度まで温めつつ、交流電源101から供給する電力の電圧変動を低減できる。
(6.その他)
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内での種々の改良、変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、ヒータ制御装置30は、AC/DCコンバータ34やDC/DCコンバータ35を備えなくとも良い。例えば、ヒータ制御装置30は、プリンタ1の外部の直流電源から直流電圧(24Vや3.3V)を供給される構成でも良い。
また、上記各実施形態において、テーブルTB1は、制御周期Tc1の最初にオン期間Ton1を設定され、オン期間Ton2を任意の位置に設定された制御パターンCPを含んでもよい。例えば、テーブルTB1の制御パターンCPの全てが、制御周期Tc1の最後にヒータ32のオン期間Ton2を設定されていない制御パターンCPでも良い。同様に、テーブルTB2は、制御周期Tc2の最後にオン期間Ton1を設定され、オン期間Ton2を任意の位置に設定された制御パターンCPを含んでもよい。この場合、ヒータ31のオン期間Ton1のみを連続させることができる。
また、テーブルTB1の制御パターンCPの全ては、デューティ比が100%以上の制御パターンCPでも良い(CP5など)。あるいは、テーブルTB1の制御パターンCPの全ては、デューティ比が100%未満の制御パターンCPでも良い(CP1など)。
また、制御装置33は、制御周期TcごとにテーブルTB1とテーブルTB2とを切り替えずに、例えば、TB1→TB1→TB2→TB1→TB1→TB2・・のように所定の回数ごとにテーブルを切り替えても良い。
また、テーブルTB1,TB3の制御周期Tc1と、テーブルTB2,TB4の制御周期Tc2は、異なる長さの時間でも良い。
また、ヒータ制御回路43,44は、トライアックTA1,TA11を有する構成であったが、トライアックに替えて例えばFETなどの他の半導体素子を有する構成でも良い。
また、上記各実施形態では、本願の第1ヒータ及び第2ヒータの一例として、ヒータ31,32を採用したが、これに限らない。本願の第1ヒータ及び第2ヒータは、同一形状のヒータでもよく、全く別の位置に配置されたヒータでも良い。
また、上記各実施形態において、ヒータ31をテーブルTB2,TB4で、ヒータ32をテーブルTB1,TB3で制御しても良い。
また、本願のヒータ制御装置30は、2つのヒータ(第1及び第2ヒータ)を制御する装置に限らず、3つ以上の複数のヒータを制御する装置でも良い。即ち、ヒータ制御装置30は、3つ以上のヒータの各々におけるオン期間Tonを配置した2種類以上のテーブルを切り替えて、各ヒータの電力を制御しても良い。
また、上記各実施形態において、オン期間Ton1,Ton2の最初にソフトスタート期間を設定しても良い。ここでいうソフトスタート期間とは、例えば、位相制御により、ヒータ制御信号Sig4やヒータ制御信号Sig5のデューティ比を段階的に高くすることで、ヒータ電圧Vhの印加時間をゆっくりと増大させる期間である。これにより、ヒータ31,32に流れる突入電流を小さくし、オン期間Ton1,Ton2の開始時における電圧変動を抑制できる。
また、本願のヒータ制御装置30は、プリンタ1などの画像形成装置が備えるヒータを制御する装置に限らない。例えば、ヒータ制御装置30は、ミシンや工作機械に用いられるヒータを制御する装置でもよい。
また、上記各実施形態では、本願の画像形成装置の一例として、モノクロレーザプリンタであるプリンタ1を採用したが、これに限定されず、例えばカラーレーザプリンタ、インクジェットプリンタ、コピー機能などの複数の機能を備える所謂複合機を採用することができる。インクジェットプリンタの場合、ヒータ制御装置は、噴射したインクの乾きを早くするために用いるヒータ等を制御しても良い。