JP2020050999A - 炭素繊維不織布の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】シワや切れ目等の欠点の発生を低減し、シートの切断を抑制するとともに地合の均一性に優れた炭素繊維不織布の製造方法の提供。【解決手段】再生炭素繊維と熱可塑性樹脂繊維を含有する炭素繊維不織布を湿式抄造法により形成する製造方法であって、再生炭素繊維を水中で高速回転せん断型分散機を使って分散したスラリーを使用し、ワイヤーパートのフォーマー部5において、クーチロール3通過時の湿紙に対して、湿紙1平方メートルあたり、0.2L以上2.5L以下の水量で水滴を噴霧する炭素繊維不織布の製造方法。【選択図】図1
Description
本発明は、再生炭素繊維と熱可塑性樹脂繊維を含有する炭素繊維不織布を湿式抄造法により形成する製造方法に関する。
炭素繊維強化樹脂複合体は、炭素繊維が母材樹脂中に複合されている。炭素繊維強化樹脂複合体は、軽量である上に、比強度や比剛性が高いため、ゴルフシャフト、テニスラケット、釣竿などに利用されている。また、最近では、翼や胴体などの大型航空機の主要構造部材にも使用されていて、市場規模が拡大している。
この市場規模の拡大に伴い、廃棄される炭素繊維強化樹脂複合体の量も増大している。例えば、航空機の場合、安全性が非常に重要であるため、特に品質が第一に考えられ、炭素繊維強化樹脂複合体の歩留まりは50%と言われる。すなわち、トリミングのため、廃棄される部位も少なくない。また、型に合わせて切断されたプリプレグ、期限切れの未硬化状態、半硬化状態又は硬化状態のプリプレグも、廃棄される炭素繊維強化樹脂複合体の一種であり、大量に廃棄されている。
炭素繊維は通常の状態では不燃であるため、廃棄される炭素繊維強化樹脂複合体の最終廃棄処理は極めて面倒である。したがって、これまでは、廃棄される炭素繊維強化樹脂複合体は破砕され、埋め立て処分されていた。しかし、炭素繊維はその製造時に多くのエネルギーを消費するだけに、埋め立て処分することは、非常に無駄が多く、再利用が望まれている。
そこで、廃棄される炭素繊維強化樹脂複合体から炭素繊維をリサイクルする方法として、焼結処理、過熱水蒸気による焼成処理等によって、廃棄される炭素繊維強化樹脂複合体の母材樹脂を分解させて、不燃である炭素繊維を再生炭素繊維として回収する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
回収された再生炭素繊維を使って炭素繊維不織布を形成する方法としては、針や凹凸のあるロール間に繊維を通して機械的に解繊、交絡させてシート化するカード法(例えば、特許文献4参照)や繊維を気流中で浮遊、解繊させ、スクリーンに吸引してシート化するエアレイ法等の乾式法、繊維を水等の液体中に分散させ、パルパー等で解繊した後、網上に抄き上げ、付着した水等の液体を乾燥してシート化する湿式抄造法(例えば、特許文献5参照)等がある。地合の良さ及び比較的低い目付の炭素繊維不織布を得るためには、湿式抄造法が好ましいが、再生炭素繊維は繊維同士の結着力が強く、分散不良が生じやすく、炭素繊維不織布の炭素繊維の含有率が高くなると、炭素繊維の剛直性等の影響で抄造時にシワや切れ目等の欠点やシートの切断が発生する場合があるという問題があった。
本発明の課題は、シワや切れ目等の欠点の発生を低減し、シートの切断を抑制するとともに地合の均一性に優れた炭素繊維不織布の製造方法を提供することである。
上記課題は、下記発明によって解決することができる。
(1)再生炭素繊維と熱可塑性樹脂繊維を含有する炭素繊維不織布を湿式抄造法により形成する製造方法であって、再生炭素繊維を水中で高速回転せん断型分散機を使って分散したスラリーを使用し、ワイヤーパートのフォーマー部において、クーチロール通過時の湿紙に対して、湿紙1平方メートルあたり、0.2L以上2.5L以下の水量で水滴を噴霧することを特徴とする炭素繊維不織布の製造方法。
(2)水滴の平均粒子径が400μm以下である上記(1)記載の炭素繊維不織布の製造方法。
(3)クーチロールがサクション機能を有し、クーチロール通過時の湿紙をサクションする上記(1)又は(2)記載の炭素繊維不織布の製造方法。
本発明によれば、シワや切れ目等の欠点の発生を低減し、シートの切断を抑制するとともに地合の均一性に優れた炭素繊維不織布を製造することができる。
本発明の炭素繊維不織布の製造方法は、再生炭素繊維と熱可塑性樹脂繊維を含有する炭素繊維不織布を湿式抄造法により形成する製造方法であり、再生炭素繊維を水中で高速回転せん断型分散機を使って分散したスラリーを使用し、ワイヤーパートのフォーマー部において、クーチロール通過時の湿紙に対して、湿紙1平方メートルあたり、0.2L以上2.5L以下の水量で水滴を噴霧することを特徴としている。
本発明に係る製造方法により製造する炭素繊維不織布は、少なくとも再生炭素繊維と熱可塑性樹脂繊維を含有する。炭素繊維不織布の目付は、10〜200g/m2であることが好ましく、20〜150g/m2であることがより好ましい。
本発明においては、再生炭素繊維を用いる。再生炭素繊維とは、炭素繊維と樹脂を複合化してなる炭素繊維強化樹脂複合体等から得られる再生品である。炭素繊維強化樹脂複合体は、長繊維織布、開繊織物、一方向性ウェブ、長繊維不織布、短繊維不織布等の炭素繊維布帛と、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の樹脂とを複合させた複合体である。最も一般的な炭素繊維強化樹脂複合体は、炭素長繊維布帛と熱硬化性樹脂とを複合させた複合体である。複合される炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)を原料とするPAN系炭素繊維やピッチを原料とするピッチ系炭素繊維が挙げられる。炭素繊維強化樹脂複合体から、熱処理法、焼結法、過熱法、過熱水蒸気法等の再生処理方法により、樹脂が除去されることによって得られる炭素繊維が再生炭素繊維である。
再生炭素繊維の繊維径は3〜20μmであることが好ましく、5〜15μmであることがより好ましい。また、再生炭素繊維の繊維長は1〜100mmであることが好ましく、3〜50mmであることがより好ましい。炭素繊維の含有量は、不織布中の全繊維に対して、50〜96質量%であることが好ましく、70〜93質量%であることがより好ましい。尚、炭素繊維の含有量は、再生炭素繊維とバージンの炭素繊維を併用する場合は、両者を合わせた含有量を示す。バージンの炭素繊維とは、例えばポリアクリロニトリルを原料として製造された再生されていない炭素繊維のことを示す。
上記で述べた再生炭素繊維は、数本の再生炭素繊維が束になった状態となり、この状態のまま、水中にゆるやかに分散しても、再生炭素繊維の束は解けず、湿式抄造法で炭素繊維不織布を製造した場合には、大きな欠点となり、炭素繊維不織布の均一性を損ねる。
本発明では、炭素繊維不織布を製造する場合、再生炭素繊維を水中で、高速回転せん断型分散機を使って分散したスラリーを用いる。尚、バージンの炭素繊維を併用する場合、再生炭素繊維とバージンの炭素繊維を混合して高速せん断型分散機で処理しても構わない。本発明において、「高速回転せん断型分散機」とは、分散刃を有して回転するローターと分散刃を有したステーターとの間に、炭素繊維を含むスラリーを通過させ、スラリー中の炭素繊維にせん断力を与えて分散させる分散機である。具体的な装置としては、シングルディスクリファイナー、ダブルディスクリファイナー、コニカルリファイナー等が挙げられる。
さらに、均一に効率良く、再生炭素繊維の束を分散させたスラリーを得るためには、高速回転せん断型分散機が、高速回転する細かなスリットを持つリング状刃物を構造の一部に有する高速回転せん断分散機であることが有効である。高速回転する細かなスリットを持つリング状刃物を構造の一部に有する高速回転せん断分散機においては、スリット間で発生する流体力学的な衝撃波が、再生炭素繊維の束に有効に作用する。具体的な装置としては、トップファイナー(相川鉄工製)、VFポンプ(新浜ポンプ製)、マイルダー(太平洋機工製)等が挙げられる。
上記分散機を使って、再生炭素繊維の束を分散させたスラリーを得る際には、スラリー濃度、処理時間、分散機のローターの回転数、ステーターとローターとのクリアランス等を調整することによって、再生炭素繊維の分散性を適宜調整することができる。
本発明では、再生炭素繊維とバージンの炭素繊維とを併用することができる。バージンの炭素繊維としては、ポリアクリロニトリルを原料とするPAN系炭素繊維、ピッチ類を原料とするピッチ系炭素繊維が挙げられる。バージンの炭素繊維の繊維径は3〜20μmであることが好ましく、5〜15μmであることがより好ましい。また、バージンの炭素繊維の繊維長は1〜30mmであることが好ましく、3〜12mmであることがより好ましい。
本発明で用いる熱可塑性樹脂繊維は、再生炭素繊維が不織布から脱離することを防止し、炭素繊維不織布に強度を付与するために添加される。熱可塑性樹脂繊維としては、ポリビニルアルコール(ビニロン)繊維、表面が低融点化されているポリエステル芯鞘繊維、未延伸ポリエステル繊維、ポリカーボネート(PC)繊維、ポリオレフィン繊維、表面が低融点化されているポリオレフィン芯鞘繊維、表面が酸変性ポリオレフィンよりなるポリオレフィン繊維、脂肪族ポリアミド繊維、未延伸ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリエーテルケトンケトン繊維等が挙げられる。
熱可塑性樹脂繊維が融点を示す場合、融点は60〜260℃であることが好ましく、60〜230℃であることがより好ましく、60〜180℃であることが更に好ましい。熱可塑性樹脂繊維の融点がこの温度範囲であることによって、不織布製造工程における加熱処理によって、結着性が付与され、炭素繊維不織布に強度が付与される。
熱可塑性樹脂繊維であるポリビニルアルコール(ビニロン)繊維は明確な融点を示さないが、水の存在下60〜100℃で溶融するため、湿式抄造法においては、ドライヤーでの加熱処理によって、湿熱溶融して結着性が付与され、炭素繊維不織布に強度が付与される。
熱可塑性樹脂繊維の繊維径は3〜40μmであることが好ましく、5〜20μmであることがより好ましい。また、熱可塑性樹脂繊維の繊維長は1〜20mmであることが好ましく、3〜12mmであることがより好ましい。
本発明において炭素繊維不織布を製造する際には、再生炭素繊維、熱可塑性樹脂繊維に加えて、熱硬化性樹脂繊維、ガラス繊維、セルロース繊維等の繊維を併用することができる。セルロース繊維の中でもフィブリル化セルロース繊維を併用することで、湿紙の強度を改善し、製造工程での断紙を防ぐ効果が高まる。また、再生炭素繊維や熱可塑性樹脂繊維と適度に絡み合い、強度に優れ、繊維の脱落の少ない炭素繊維不織布を提供することができる。
フィブリル化セルロース繊維とは、フィルム状ではなく、主に繊維軸と平行な方向に非常に細かく分割された部分を有する繊維状で、少なくとも一部が繊維径1μm以下であるセルロース繊維である。長さと幅のアスペクト比が20〜100000であることが好ましい。また、変法濾水度が0〜770mlであることが好ましく、0〜600mlであることがより好ましい。さらに、質量平均繊維長が0.1〜2mmであることが好ましい。フィブリル化セルロース繊維の含有量は、不織布中の全繊維に対して、2〜20質量%であることが好ましく、2〜10質量%であることがより好ましい。本発明における変法濾水度は、ふるい板として線径0.14mm、目開き0.18mmの金網(PULP AND PAPER RESEARCH INSTITUTE OF CANADA製)を用い、試料濃度を0.1%にした以外はJIS P8121−2:2012に準拠して測定した濾水度である。
フィブリル化セルロース繊維用のセルロース材料としては、植物パルプ、溶剤紡糸セルロース、半合成セルロース等が挙げられる。植物パルプとしては、広葉樹材(L材)や針葉樹材(N材)を用いたクラフトパルプ(KP)、溶解パルプ(DP)、溶解クラフトパルプ(DKP)等の木質系パルプが挙げられる。また、藁パルプ、麻パルプ、コットンパルプ、コットンリンターパルプ、ケナフパルプ等の非木質系パルプも挙げられる。市販品としては、セリッシュ(登録商標、ダイセルファインケム社製)が挙げられる。
フィブリル化セルロース繊維を得る方法としては、セルロース材料を水中で分散したスラリーを機械的に粉砕することにより、セルロース材料の繊維を解繊してミクロフィブリルを形成する方法が挙げられる。セルロース材料を解繊する装置としては、ディスクリファイナー、石臼型磨砕機、高圧ホモジナイザー、ボールミル、水中カウンターコリジョン法用装置、超音波破砕機等が挙げられる。これらの装置を適宜組み合わせて使用することもできる。
本発明において、炭素繊維不織布は、湿式抄造法で製造される。湿式抄造法では、まず、再生炭素繊維と熱可塑性樹脂繊維、場合によって他の併用する繊維とを均一に水中に混合分散させてスラリーとし、その後、スクリーン(異物、塊等除去)等の工程を通り、最終の繊維濃度が0.01〜0.50質量%に調整されたスラリーを得る。該スラリーが抄紙機で抄き上げられ、湿紙(湿潤状態の不織布)が得られる。繊維の分散性の均一化等のために、工程中で分散剤、消泡剤、親水化剤、帯電防止剤、高分子粘剤、離型剤、抗菌剤、殺菌剤等の薬品を添加する場合もある。
抄紙機としては、例えば、長網、円網、傾斜ワイヤー等の抄紙網を単独で使用した抄紙機、同種又は異種の2以上の抄紙網がオンラインで設置されているコンビネーション抄紙機等を使用することができる。また、炭素繊維不織布が2層以上の多層構造の場合には、各々の抄紙機で抄き上げた湿紙を積層する抄き合わせ法や、一方の層を形成した後に、該層上に繊維を分散したスラリーを流延して積層とする流延法等で、炭素繊維不織布を製造することができる。繊維を分散したスラリーを流延する際に、先に形成した層は湿紙状態であっても、乾燥状態であってもいずれでも良い。また、2枚以上の乾燥状態の層を熱融着させて、多層構造の炭素繊維不織布とすることもできる。
本発明において、炭素繊維不織布が多層構造である場合、各層の繊維配合が同一である多層構造であっても良く、各層の繊維配合が異なっている多層構造であっても良い。多層構造である場合、各層の目付が下がることにより、スラリーの繊維濃度を下げることができるため、炭素繊維不織布の地合が良くなり、その結果、炭素繊維不織布の地合の均一性が向上する。また、各層の地合が不均一であった場合でも、積層することで補填できる。さらに、抄紙速度を上げることができ、操業性が向上するという効果も得られる。
湿式抄造法では、抄紙網で抄造された湿紙をフェルト等の搬送支持体上に転写し、プレスロール等で加圧脱水して、含有水分量を制御した上で、ヤンキードライヤー、エアードライヤー、シリンダードライヤー、サクションドラム式ドライヤー、赤外方式ドライヤー等で乾燥することによって、シート状の湿式抄紙不織布が得られる。湿紙の乾燥の際に、ヤンキードライヤー等の熱ロールに密着させて熱圧乾燥させることによって、密着させた面の平滑性が向上する。熱圧乾燥とは、タッチロール等で熱ロールに湿紙を押しつけて乾燥させることを言う。熱ロールの表面温度は、100〜180℃が好ましく、100〜160℃がより好ましく、110〜160℃がさらに好ましい。圧力は、好ましくは50〜1000N/cmであり、より好ましくは100〜800N/cmである。
本発明の炭素繊維不織布の製造方法について、図1を例にして具体的に説明する。図1は円網抄紙機の一部であるフォーマー部、ワイヤーパート及びプレス部等を示している。
本発明の炭素繊維不織布の製造方法では、フォーマーインレット1から原料スラリーが円網2に供給され、円網上に抄き上げられた再生炭素繊維と熱可塑性樹脂繊維を含有する湿紙がクーチロール3と接したフェルト6に転写される。フェルト上に転写された湿紙がクーチロール通過時に水滴供給装置4から湿紙に対して水滴を噴霧し、湿紙とフェルトを密着させた後、フェルトと共に搬送し、プレス部9のプレスロール7等で脱水し、湿紙の水分量を適宜調整した後、ドライヤーで乾燥して炭素繊維不織布を製造する。
本発明の製造方法においてクーチロール通過時とは、フェルトが円筒状のクーチロールの胴面に接している間である。炭素繊維不織布の抄造において、炭素繊維を主として含有する湿紙は、柔軟性が低く、剛直性があり、工程中のフェルトが搬送ロール等を介して曲がる際に湿紙がフェルトの曲がりに追随できず、湿紙とフェルトの間に空隙が生じやすく、これが原因となって、シワや切れ目の発生、更にはシートの切れが発生する場合がある。本発明の製造方法により、クーチロール通過時の湿紙に水滴を噴霧し水分を供給することにより、フェルトと湿紙の密着性が向上し、さらにサクション装置8を有するクーチロールを使用し、フェルト背面からクーチロール通過時の湿紙をサクションすることにより、より一層フェルトと湿紙の密着性を向上させることにより、これらの不具合を改善することができる。サクションするタイミングは、水滴を噴霧する前又は同時であるのが好ましい。サクションの吸引力は、10〜300mmAqが好ましく、40〜200mmAqがより好ましい。水滴の水量は、湿紙1平方メートルあたり、0.2L以上2.5L以下であり、より好ましくは、0.8L以上2.0L以下である。水滴の水量が湿紙1平方メートルあたり、0.2L未満では、フェルトと湿紙の密着性が不十分となり、一方、2.5Lを超えると、紙層に不具合が発生しやすくなり、地合が悪化する。水滴の供給装置としては、微細化した水滴を供給できるスプレーノズルを湿紙の抄紙幅に合わせて1つ又は複数設置することが望ましい。スプレーノズルとしては、ノズルから円錐状に水滴が噴霧されるものや、ノズルから扇形に水滴が噴霧されるものが使用できる。水滴を供給する角度としては、噴霧される水滴の中心線と湿紙との接触点におけるクーチロールの接線とが成す角度が90度以下であることが好ましい。ただし、この角度は水滴が供給される前の方向に伸ばした接線と噴霧される水滴の中心線が成す角度である。水滴供給装置と湿紙との距離は、50mm以上600mm以下が好ましい。本発明の製造方法においては、水滴の平均粒子径は400μm以下であることが好ましい。水滴の平均粒子径は、液浸法やレーザー回折法等により測定できるが、本発明においては、液浸法により測定した平均粒子径を示している。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。
表1記載の装置、処理条件で再生炭素繊維の分散処理を行い、得られた炭素繊維スラリーを使用し、表2記載の「繊維配合」で原料繊維を水中に加え、パルパーを使用して濃度1.0質量%で5分間分散処理してスラリーとし、水を加えて分散濃度0.2質量%の抄紙用スラリーとした。この抄紙用スラリーをフォーマーインレットから供給し、90メッシュの金属ワイヤーを有した円網で抄き上げ、再生炭素繊維と熱可塑性樹脂繊維を含有する湿紙を形成し、クーチロールと接したフェルト上に湿紙を転写させた後、クーチロール通過時の湿紙に、表2記載の「水滴供給条件」で水滴供給装置から水滴を噴霧し、あるいは表2記載の「吸引条件」でクーチロールにてサクションし、水滴を噴霧した後、プレスロールで加圧脱水して湿紙の水分を調整し、表面温度150℃のヤンキードライヤーに密着させて乾燥し、巻長さ100m、平均目付50g/m2の実施例1〜9及び比較例1〜4の炭素繊維不織布を作製した。
「再生炭素繊維」:PAN系炭素繊維とエポキシ樹脂からなる炭素繊維強化樹脂複合体を過熱水蒸気法によりエポキシ樹脂を除去して再生した再生炭素繊維、繊維径7μm、繊維長10mm
「芯鞘PET繊維」:芯鞘型ポリエチレンテレフタレート系繊維、繊維径12μm、繊維長5mm(鞘部のポリエチレンテレフタレートのガラス転移点72℃)
「PVA繊維」:ポリビニルアルコール(ビニロン)繊維、繊維径11μm、繊維長3mm(水中溶解温度70℃)
「フィブリル化セルロース繊維」:ダイセルファインケム社製「セリッシュ(登録商標)KY−100G」
「芯鞘PET繊維」:芯鞘型ポリエチレンテレフタレート系繊維、繊維径12μm、繊維長5mm(鞘部のポリエチレンテレフタレートのガラス転移点72℃)
「PVA繊維」:ポリビニルアルコール(ビニロン)繊維、繊維径11μm、繊維長3mm(水中溶解温度70℃)
「フィブリル化セルロース繊維」:ダイセルファインケム社製「セリッシュ(登録商標)KY−100G」
実施例及び比較例で製造した炭素繊維不織布に対して、以下の評価を行い、結果を表3に示した。
(抄造性の評価)
炭素繊維不織布の抄紙100m中で発生したシート中のシワ、切れ目の数を確認し、結果を表3に示した。また100mの抄紙中に発生したシートの切断回数を表3に示した。
炭素繊維不織布の抄紙100m中で発生したシート中のシワ、切れ目の数を確認し、結果を表3に示した。また100mの抄紙中に発生したシートの切断回数を表3に示した。
(不織布の均一性の評価)
実施例及び比較例で得られた炭素繊維不織布から縦横250mm角のシートを切り取り、この炭素繊維不織布を透過光で観察し、シート中に存在する未離解繊維束(離解せず束になった状態の繊維塊)の数を数えた。未離解繊維束の数が少ない方が均一性に優れ好ましい。結果を表3に示す。
実施例及び比較例で得られた炭素繊維不織布から縦横250mm角のシートを切り取り、この炭素繊維不織布を透過光で観察し、シート中に存在する未離解繊維束(離解せず束になった状態の繊維塊)の数を数えた。未離解繊維束の数が少ない方が均一性に優れ好ましい。結果を表3に示す。
(不織布の地合の評価)
幅方向400mm×流れ方向500mmの炭素繊維不織布を採取して、炭素繊維不織布を透過光で観察した場合の地合及び炭素繊維不織布の表面の状態を下記の基準に従って目視評価を実施した。結果を表3に示す。ここで地合ムラとは、不織布を透過光で観察した場合に濃淡差が生じる部分があることを示す。
幅方向400mm×流れ方向500mmの炭素繊維不織布を採取して、炭素繊維不織布を透過光で観察した場合の地合及び炭素繊維不織布の表面の状態を下記の基準に従って目視評価を実施した。結果を表3に示す。ここで地合ムラとは、不織布を透過光で観察した場合に濃淡差が生じる部分があることを示す。
「◎」:炭素繊維不織布の表面に筋や凹凸が見られず、透過光で観察した場合に、地合ムラが全く無く均一で非常に良好である。
「○」:炭素繊維不織布の表面に若干筋や凹凸が見られるが、透過光で観察した場合に、地合ムラが殆ど無く均一で良好である。
「△」:炭素繊維不織布の表面に筋や凹凸が見られ、透過光で観察した場合に、地合ムラがやや多く見られあまり良くない。
「×」:炭素繊維不織布の表面に凹凸と筋が多数見られ、透過光で観察した場合に、地合ムラが多く見られ悪い。
「○」:炭素繊維不織布の表面に若干筋や凹凸が見られるが、透過光で観察した場合に、地合ムラが殆ど無く均一で良好である。
「△」:炭素繊維不織布の表面に筋や凹凸が見られ、透過光で観察した場合に、地合ムラがやや多く見られあまり良くない。
「×」:炭素繊維不織布の表面に凹凸と筋が多数見られ、透過光で観察した場合に、地合ムラが多く見られ悪い。
実施例の製造方法を実施することにより、炭素繊維不織布の抄造時にシワや切れ目の発生を低減し、シートの切断が発生することなく連続抄紙が可能となり、地合の均一性に優れた炭素繊維不織布を得ることができ優れている。
実施例1と比較例1を比較すると、比較例1では、再生炭素繊維を水中で高速回転せん断型分散機を使用して分散しておらず、クーチロール通過時に水滴を噴霧していないため、炭素繊維不織布中にシワや切れ目が多数発生し、更には抄造中にシートの切断が複数回発生し、抄造性が大きく劣るとともに、未離解繊維束が非常に多く残留し、地合も悪く劣っている。
実施例1と比較例2を比較すると、比較例2では再生炭素繊維を水中で高速回転せん断型分散機を使用して分散しているため、未離解繊維束は比較例1よりは少ないが、クーチロール通過時に水滴を噴霧していないため、炭素繊維不織布中にシワや切れ目が多数発生し、更には抄造中にシートの切断が複数回発生し抄造性が劣る。
実施例8と比較例3を比較すると、比較例3では、再生炭素繊維を水中で高速回転せん断型分散機を使用して分散しておらず、未離解繊維束が非常に多く残留している。またクーチロール通過時に水滴を噴霧しているが、必要な噴霧水量に満たないため、炭素繊維不織布中にシワや切れ目が発生し、抄造中にシートの切断も発生し、地合も悪く、実施例8に比べ劣っている。
実施例8と比較例4を比較すると、比較例4では再生炭素繊維を水中で高速回転せん断型分散機を使用して分散しているため、未離解繊維束は実施例8と同等であるが、クーチロール通過時の水滴噴霧水量が多いため、シートの切断の発生は抑制できているものの、実施例8に比べ、シワや切れ目の発生が多く、地合も悪く劣っている。
実施例1と実施例2を比較すると、フィブリル化セルロース繊維を含有する実施例2の方が、炭素繊維及び熱可塑性樹脂繊維との相互作用を強めるためか、シワや切れ目の発生がやや少なく、地合も良好で優れている。
実施例2と実施例3を比較すると、クーチロール通過時の水滴噴霧水量がより好ましい範囲にある実施例3の方が、シワや切れ目が少なく優れている。
実施例3と実施例4を比較すると、クーチロール通過時にサクションによる吸引を実施した実施例4の方がシワの発生が少なく、地合も良好であり優れている。
実施例5から実施例7を比較すると、クーチロール通過時の水滴噴霧水量がより好ましい範囲にある実施例5及び6の方が、実施例7に比べ、シワが少なく、地合も良好であり優れている。
実施例7と実施例8を比較すると、クーチロール通過時にサクションによる吸引を実施した実施例7の方がシワや切れ目の発生が少なく優れている。
実施例8と実施例9を比較すると、クーチロール通過時に噴霧される水滴の平均粒子径がより好ましい範囲にある実施例8の方が、シワや切れ目の発生が少なく、地合も良好で優れている。
本発明の炭素繊維不織布の製造方法で得られた炭素繊維不織布は、電子機器材料、電気機器材料、土木材料、建築材料、自動車材料、航空機材料、各種製造業で使用されるロボット、ロール等の製造部品等に利用可能である。
1 フォーマーインレット
2 円網
3 クーチロール
4 水滴供給装置
5 ワイヤーパートのフォーマー部
6 フェルト
7 プレスロール
8 サクション装置
9 プレス部
2 円網
3 クーチロール
4 水滴供給装置
5 ワイヤーパートのフォーマー部
6 フェルト
7 プレスロール
8 サクション装置
9 プレス部
Claims (3)
- 再生炭素繊維と熱可塑性樹脂繊維を含有する炭素繊維不織布を湿式抄造法により形成する製造方法であって、再生炭素繊維を水中で高速回転せん断型分散機を使って分散したスラリーを使用し、ワイヤーパートのフォーマー部において、クーチロール通過時の湿紙に対して、湿紙1平方メートルあたり、0.2L以上2.5L以下の水量で水滴を噴霧することを特徴とする炭素繊維不織布の製造方法。
- 水滴の平均粒子径が400μm以下である請求項1記載の炭素繊維不織布の製造方法。
- クーチロールがサクション機能を有し、クーチロール通過時の湿紙をサクションする請求項1又は2記載の炭素繊維不織布の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018182475A JP2020050999A (ja) | 2018-09-27 | 2018-09-27 | 炭素繊維不織布の製造方法 |
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