JP2023149892A - 炭素繊維シートの連続製造方法及び炭素繊維強化複合材料の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の課題は、高密度で、繊維が脱離し難く、高分子材料を付与して炭素繊維強化複合材料を製造する際の加工性に優れた炭素繊維シートと該炭素繊維シートを用いた炭素繊維強化複合材料を得ることである。【解決手段】炭素繊維及びセルロース繊維を含有するスラリーから湿潤ウェブを抄造する工程、湿潤ウェブを連続的に円筒状支持体に押圧巻き付け積層する工程、積層された湿潤ウェブを断裁展開し、単板状とする工程、及び、単板状の湿潤ウェブを加圧、乾燥、加熱する工程を含み、炭素繊維で構成される結束を含有し、密度が0.15g/cm3以上である炭素繊維シートを製造することを特徴とする炭素繊維シートの連続製造方法、及び、該炭素繊維シートの連続製造方法に続いて、炭素繊維シートに高分子材料を付与する工程を含む炭素繊維強化複合材料の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、炭素繊維シートの連続製造方法及び炭素繊維強化複合材料の製造方法に関する。
炭素繊維と高分子材料(熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、高分子弾性化合物等)とを複合化してなる炭素繊維強化複合材料(Carbon Fiber Reinforced Plastic、「CFRP」と記す場合がある)は、金属材料に匹敵する強度・弾性率を有しつつ、金属材料よりも比重が小さいため、部材の軽量化を図ることができ、また、発錆の問題もなく、酸やアルカリにも強いという性質を有していることから、電子機器材料、電気機器材料、土木材料、建築材料、自動車材料、航空機材料、各種製造業で使用されるロボット、ロール等の製造部品等での利用が拡大されている。
最も一般的な炭素繊維強化複合材料は、連続炭素繊維からなる長繊維織布、開繊織物や一方向性(UD)シートと熱硬化性樹脂とを複合させたプリプレグを積層一体化した複合体である。また、不連続炭素繊維を含有する乾式製法による不織布(乾式不織布)、湿式製法(湿式抄紙法)による不織布(湿式不織布)等の炭素繊維不織布と熱可塑性樹脂とを複合した不織布状プリプレグから製造される炭素繊維強化複合材料が提案されている(例えば、特許文献1~3参照)。不織布製造においては、製造工程から発生した残材や炭素繊維強化複合材料からリサイクルされた非連続炭素繊維を安価で環境負荷を軽減する材料として活用することができる(例えば、特許文献1及び4参照)。
乾式不織布より得られた不織布状プリプレグは、炭素繊維強化複合材料を製造する場合に積層枚数を比較的容易に減じることができる点で有利であり、坪量が200g/mを超える高目付品を得ることができるが、低密度で嵩高であり、炭素繊維強化複合材料としてプレス成形する前の不織布状プリプレグ積層時の厚みが非常に大きくなり、プレス装置へ多数の不織布状プリプレグを挿入することが難しい。そのため、そのままでは金型内への挿入工程などでの扱いが難しく、予め熱プレス処理により、厚みを薄くする等の薄肉化の前処理が必要となる場合があり、経済的な負担が発生する。
湿式不織布より得られた不織布状プリプレグは、乾式不織布より得られた不織布状プリプレグに比べ、高密度ではあるものの、乾燥能力や抄紙機の能力にもよるが、安定的に抄紙するには坪量は100g/m未満で行う必要があり、炭素繊維強化複合材料に加工する場合、多く積層する必要がある。また、開繊織物、UDシートに比べると、やはり低密度である。
不織布状プリプレグを用いた炭素繊維強化複合材料の製造においては、上記不織布状プリプレグの高目付化、高密度化(薄肉化)により、積層工程を効率化し、経済的な負担の発生を抑えるといった課題を完全に満足させることのできる製造方法があれば、CFRPの加工を効率的に行うことができる。
そのため、特許文献5では、炭素繊維及び熱可塑性樹脂を含有するスラリーから水分率が40~90質量%である湿潤ウェブを抄造する工程、湿潤ウェブを連続的に円筒状支持体に押圧巻き付け積層する工程、積層された湿潤ウェブを断裁展開し、単板状とする工程、及び、単板状の湿潤ウェブを加圧、乾燥、加熱にする工程を含むことを特徴とする不織布状プリプレグの連続製造方法が提案されている。この方法によれば、高目付(高坪量)で、高密度化(薄肉化)された不織布状プリプレグを得ることができ、この不織布状プリプレグを加圧・硬化することによって、熱可塑性樹脂を含有する炭素繊維強化複合材料を容易に作製することができる。ただし、この方法では、湿潤ウェブに含有される熱可塑性樹脂以外の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、高分子弾性化合物等の高分子材料を付与する方法については考慮されていない。また、炭素繊維がスラリー内で単繊維状に分散していることが好ましいと記載されており、優れた地合いが得られるものの、炭素繊維が複雑な立体構造を形成することにより、高分子材料を付与して炭素繊維強化複合材料を製造する際の加工性に問題があった。また、炭素繊維が単繊維状になることで、湿潤ウェブを加圧する際に炭素繊維の繊維長が短くなる場合があり、炭素繊維が脱離する場合があった。
特表2013-519546号公報 特許第5309563号公報 国際公開第2014/021366号パンフレット 特許第5347056号公報 特開2021-155553号公報
本発明の課題は、高密度で、繊維が脱離し難く、高分子材料を付与して炭素繊維強化複合材料を製造する際の加工性に優れた炭素繊維シートと該炭素繊維シートを用いた炭素繊維強化複合材料を得ることである。
前記課題は、以下の炭素繊維シートの連続製造方法及び炭素繊維強化複合材料の製造方法によって解決された。
(1)炭素繊維及びセルロース繊維を含有するスラリーから湿潤ウェブを抄造する工程、湿潤ウェブを連続的に円筒状支持体に押圧巻き付け積層する工程、積層された湿潤ウェブを断裁展開し、単板状とする工程、及び、単板状の湿潤ウェブを加圧、乾燥、加熱する工程を含み、炭素繊維で構成される結束を含有し、密度が0.15g/cm以上である炭素繊維シートを製造することを特徴とする炭素繊維シートの連続製造方法。
(2)上記(1)に記載の炭素繊維シートの連続製造方法に続いて、炭素繊維シートに高分子材料を付与する工程を含む炭素繊維強化複合材料の製造方法。
本発明によれば、高密度で、繊維が脱離し難く、高分子材料を付与して炭素繊維強化複合材料を製造する際の加工性に優れた炭素繊維シートと該炭素繊維シートを用いた炭素繊維強化複合材料を得ることができる。
本発明の炭素繊維シートの製造方法は、炭素繊維及びセルロース繊維を含有するスラリーから湿潤ウェブを抄造する工程、湿潤ウェブを連続的に円筒状支持体に押圧巻き付け積層する工程、積層された湿潤ウェブを断裁展開し、単板状とする工程、及び、単板状の湿潤ウェブを加圧、乾燥、加熱する工程を含み、炭素繊維で構成される結束を含有し、密度が0.15g/cm以上である炭素繊維シートを製造することを特徴とする炭素繊維シートの連続製造方法である。
炭素繊維は、前駆体繊維の種類によって、PAN(ポリアクリロニトリル)系、ピッチ(等方ピッチ、異方ピッチ)系、フェノール系、レーヨン系などが工業化されている。本発明において、炭素繊維は、炭素繊維シート及び炭素繊維強化複合材料の用途目的に応じて選択できる。
また、CFRPの製造工程から発生するプリプレグ又はCFRPの工程端材又は不良部分、退役廃材等を原料にして、常圧溶解法、亜臨界分解法、超臨界分解法、電解法、熱分解法、過熱水蒸気法等の再生処理方法により、高分子材料(熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、高分子弾性化合物等)を除去することで得られるリサイクル炭素繊維を利用することも可能である。
CFRPは、軽量である上に、比強度や比剛性が高いため、ゴルフシャフト、テニスラケット、釣竿などに利用されている。また、最近では、翼や胴体などの大型航空機の主要構造部材にも使用されていて、市場規模が拡大している。この市場規模の拡大に伴い、製造工程で廃棄されるCFRPの量も増大している。例えば、航空機の場合、安全性が非常に重要であるため、特に品質基準が非常に厳しく、CFRPの歩留まりは50~60%と言われる。すなわち、トリミングのため、廃棄される部位も少なくない。また、型に合わせて切断されたプリプレグ、期限切れの未硬化状態、半硬化状態又は硬化状態のプリプレグも、廃棄されるCFRPの一種であり、同様に大量に廃棄されている。このような状況からリサイクルされた炭素繊維を積極的に利用することは、環境負荷の軽減の観点からも好ましい。また、上記リサイクルに供される材料からリサイクルされた炭素繊維は不連続状態となり、不織布としての用途にも適している。
炭素繊維の繊維径は、3μm以上20μm未満であることが好ましく、5μm以上15μm未満であることがより好ましい。炭素繊維の繊維径が3μmより細い場合、水分散時の分散濃度が極端に低くなり、生産性が低下する場合がある。炭素繊維の繊維径が20μm以上である場合、湿潤ウェブの保水が悪く、抄造時の多孔質支持体からのピックアップと、円筒状支持体への転写が悪くなる場合がある。
炭素繊維の繊維長は、1mm以上50mm未満であることが好ましく、3mm以上20mm未満であることがより好ましい。炭素繊維の繊維長が1mmより短いと、湿潤ウェブの強度が弱くなり、多孔質支持体からのピックアップ時にウェブが切断する場合がある。また、炭素繊維シートを加工して作製したCFRPの力学的特性が低くなる場合がある。炭素繊維の繊維長が50mm以上である場合、水分散時に繊維同士のもつれが発生し、CFRPの欠点となり、力学的特性が低くなる場合がある。また、水分散時の分散濃度を極端に低くする必要があり、生産性が低下する場合がある。
炭素繊維の含有量は、炭素繊維シートに含まれる全繊維に対して、20質量%以上98質量%未満であることが好ましく、30質量%以上97質量%未満であることがより好ましい。炭素繊維の含有量が20質量%未満の場合、炭素繊維強化複合材料の力学的特性が不足する場合がある。また、炭素繊維の含有量が98質量%以上である場合、炭素繊維同士を繋ぎ止める成分が少ないため、炭素繊維間の高分子材料の連続性が不足し、炭素繊維強化複合材料の力学的特性が低下する場合がある。また、湿潤ウェブの抄造が著しく困難になる場合がある。
本発明では、炭素繊維シートが炭素繊維で構成される結束を含有する。結束は、10本以上の炭素繊維で構成されていることが好ましい。また、炭素繊維で構成される結束は、5個/cm以上であることが好ましく、10個/cm以上であることがより好ましい。結束が5個/cmよりも少ない場合、炭素繊維シートの密度が低くなり、高分子材料を均一に付与させることが難しくなる場合がある。また、結束が5個/cm以上であることにより、加圧工程で炭素繊維が砕け、繊維長が短くなることが抑制され、また、セルロース繊維が炭素繊維と絡みやすくなって、炭素繊維が脱離し難くなる。
結束を構成する炭素繊維の繊維本数を目視で測定することは極めて困難であることから、本発明では、以下の方法で結束を構成する炭素繊維の繊維本数を求める。
まず、炭素繊維を電子顕微鏡(SEM)撮影して、繊維一本辺りの断面積を測定する。次に、10本以上の炭素繊維で構成される結束を100個ランダムに炭素繊維シートから採取し、100個の結束の合計質量を測定する。その後、以下の計算方法で、結束100個の炭素繊維本数の合計を求め、その平均値を求めることで、結束を構成する炭素繊維の繊維本数[単位:本/結束]を算出する。
(炭素繊維の断面積)×(炭素繊維の平均繊維長)×(炭素繊維の密度)=(炭素繊維の一本あたりの質量)
(結束100個の質量の合計)÷(炭素繊維の一本あたりの質量)=(結束100個の炭素繊維本数の合計)
(結束100個の炭素繊維本数の合計)÷100=(結束を構成する炭素繊維の繊維本数)
セルロース繊維の種類としては、天然セルロース繊維、再生セルロース繊維等が挙げられる。天然セルロース繊維としては、針葉樹パルプ、広葉樹パルプなどの木材パルプ;藁パルプ、竹パルプ、リンターパルプ、ケナフパルプなどの木本類又は草本類のパルプが挙げられる。再生セルロース繊維としては、レーヨン、キュプラ、リヨセル等の再生セルロース繊維が挙げられる。これらのセルロース繊維は、フィブリル化(叩解)されていてもなんら差し支えない。さらに、古紙、損紙などから得られるパルプを使用してもよい。
上記セルロース繊維の中で、針葉樹パルプ、リンターパルプ及びリヨセルの群から選ばれる1種以上のセルロース繊維を使用することが好ましく、リンターパルプ又はリヨセルを使用することがより好ましく、リヨセルを使用することがさらに好ましい。また、セルロース繊維はフィブリル化されていることが好ましい。これらの好ましいセルロース繊維を使用することによって、繊維の脱落を抑制する効果が高まる。また、炭素繊維シートを連続製造する場合の操業性が安定するという効果も得られる。
フィブリル化(叩解)セルロース繊維は、上記のセルロース繊維をフィブリル化することによって製造することができる。フィブリル化するための装置としては、ビーター、PFIミル、シングルディスクリファイナー(SDR)、ダブルディスクリファイナー(DDR)、また、顔料等の分散や粉砕に使用するボールミル、ダイノミル、ミキサー、摩砕装置、高速の回転刃により剪断力を与える回転刃式ホモジナイザー、高速で回転する円筒形の内刃と固定された外刃との間で剪断力を生じる二重円筒式の高速ホモジナイザー、超音波による衝撃で微細化する超音波破砕器、繊維懸濁液に少なくとも20MPaの圧力差を与えて小径のオリフィスを通過させて高速度とし、これを衝突させて急減速することにより繊維に剪断力、切断力を加える高圧ホモジナイザー等の装置が挙げられる。これらの装置を、単独又は組み合わせて用いることによって、フィブリル化セルロース繊維を製造することができる。そして、これらの装置の種類、処理条件(繊維濃度、温度、圧力、回転数、リファイナーの刃の形状、リファイナーのプレート間のギャップ、処理回数)等のフィブリル化条件の調整により、目的のフィブリル化状態を得ることができる。
セルロース繊維の配合比率は、炭素繊維シートに含まれる全繊維に対して、2質量%以上80質量%未満であることが好ましく、3質量%以上70質量%未満であることがより好ましい。セルロース繊維の配合比率が2質量%以上80質量%未満であることにより、高分子材料が炭素繊維シート内に均一に行き渡りやすくなる。セルロース繊維の配合比率が2質量%未満である場合、セルロース繊維の量が少なく、セルロース繊維を配合したことによる効果が十分に得られないため、炭素繊維シートの連続製造が不安定になる場合がある。セルロース繊維の配合比率が2質量%以上であると、セルロース繊維同士の接触点が増え、抄造の際に紙切れが起こり難くなり、より安定した連続製造が可能になる。セルロース繊維の配合比率が80質量%以上である場合、炭素繊維シート又は炭素繊維強化複合材料の力学的特性が十分に得られない場合がある。
本発明において、湿潤ウェブは湿式抄造法にて抄造する。湿式抄造法においては、炭素繊維を水中に分散させ、その後、スクリーン(異物、塊等除去)等の工程を通り、最終の繊維濃度を0.01~0.50質量%に調整されたスラリーを多孔質支持体(抄紙ワイヤー)上に抄き上げることによって、湿潤ウェブが得られる。工程中で、分散剤、消泡剤、親水化剤、帯電防止剤、高分子粘剤、離型剤等の薬品を添加する場合もある。
本発明では、スラリーの調成は、抄紙機の調成工程で一般的に使用されている撹拌機(例えばパルパーやミキサー)での撹拌により分散処理を行うことができる。
セルロース繊維は、炭素繊維とは別にパルパー等によって水中で分散した後、炭素繊維のスラリーと混合しても構わないし、炭素繊維と共に水中で分散しても構わない。
該スラリーを用い、湿紙を形成する抄紙機のワイヤーパートとしては、例えば、多孔質支持体である長網、円網、傾斜ワイヤー等の抄紙ワイヤーを、単独で使用した抄紙機、同種又は異種の2以上の抄紙網がオンラインで設置されているコンビネーション抄紙機等を使用することができる。また、湿潤ウェブが2層以上の多層構造の場合には、各々の抄紙機で抄き上げた湿潤ウェブを積層する、抄き合わせ法や、一方の層を形成した後に、該層上に繊維を分散したスラリーを流延して積層する流延法等で、湿潤ウェブを製造することができる。
湿潤ウェブ単層の目付は、効率的に炭素繊維シートを生産できることから、10~150g/mが好ましく、20~100g/mがより好ましい。湿潤ウェブ単層の目付が10g/mより小さいと、所望する高目付の炭素繊維シートを得るためには、積層枚数が多くなり、円筒状支持体への押圧巻き付け積層の際にしわが入る場合がある。湿潤ウェブ単層の目付が150g/mを超えると、湿潤ウェブの濾水性が悪く、抄紙ワイヤー下への脱水時間が長くかかるため、生産性が悪くなる場合がある。また、湿潤ウェブを抄造する工程において、湿潤ウェブ表裏での水分率に差が生じ、表面(抄紙ワイヤーの反対面)に凹凸が発生し、積層時の層間の貼り付きが悪くなる場合がある。特に、欠点のない湿潤ウェブを効率良く抄造するためは、湿潤ウェブ単層の目付は100g/m以下であることがより好ましい。
本発明の炭素繊維シートの目付(坪量、JIS L 1913:2010 6.2記載の単位面積当たりの質量準拠法)は100g/m以上が好ましく、150g/m以上がさらに好ましい。該目付100g/m未満の場合、炭素繊維強化複合材料を加工する際に炭素繊維シートの積層枚数が増え、作業が煩雑になる場合がある。
本発明の炭素繊維シートの密度は、上記目付を厚み(JIS L 1913:2010 6.1記載のA法準拠法)により除すことで求めることができ、0.15g/cm以上であり、より好ましくは、0.16g/cm以上である。密度が0.15g/cm未満では、炭素繊維シートに空隙が多く存在することから、高分子材料を均一に付与させることが難しく、空隙内に高分子材料を十分に浸透させるには、多量の高分子材料が必要となることから、得られる炭素繊維強化複合材料中に占める炭素繊維含有量が低下し、力学的物性が不足する場合がある。また炭素繊維シート内において、高分子材料の含有量にムラができることにより、強度にムラが生じる場合がある。
湿潤ウェブの抄紙ワイヤーからのピックアップを行いやすくし、生産性を向上させるために、熱融着性バインダー、湿熱接着性バインダー等を湿潤ウェブに含有させても良い。これらのバインダーは、繊維状、粉体上、エマルジョン状等の形態で使用することができる。また、バインダーはスラリーに混合しても良いし、塗工又は含浸によって湿潤ウェブに付与しても良い。
本発明において、必要であれば、炭素繊維との表面改質効果があるサイジング剤を付与することもできる。これらサイジング剤は、スラリーに混合しても良いし、塗工又は含浸によって湿潤ウェブに付与しても良い。本発明では、必要であれば、他の天然繊維、合成繊維、無機繊維、有機填料、無機填料などを混合することも可能である。ただし、これらの含有量が、炭素繊維シートの性能を阻害する範囲であってはならない。
本発明では、湿式抄造法において、ネット状支持体(抄紙ワイヤー)上に形成された湿潤ウェブの水分率が好ましくは40~90質量%である状態で、円筒状支持体に押圧巻き付け積層する。水分率は、必要に応じて、プレスロール等での加圧脱水、サクションによる吸引脱水等によって調整することができる。
円筒状支持体としては、メーキングロール、メーキングドラムなどと称する金属表面を持つ円筒体が例示される。円筒状支持体のサイズは、所望する炭素繊維シートのサイズにより選択することができる。湿潤ウェブの積層後のハンドリングを考慮すると、直径30~1500cmであることが好ましい。
湿潤ウェブの水分率は、好ましくは40~90質量%であり、より好ましくは50~70質量%である。該水分率であることによって、円筒状支持体に好適に転写され、押圧巻き付け積層がやりやすくなる。湿潤ウェブの水分率とは、湿潤ウェブ全体の質量に対し、含有された水分の質量を百分率で示した値である。水分率が40質量%より少ないと、抄紙ワイヤーからのピックアップ不良が発生する場合や、積層した湿潤ウェブが層間剥離を起こしやすくなる場合がある。また、円筒状支持体への転写が悪くなり、安定生産に支障が出る場合がある。水分率が90質量%より多いと、湿潤ウェブの自重で円筒状支持体への貼り付きが悪くなる場合がある。また、押圧巻き付け積層時に、水が溢れ出し、その水流により、湿潤ウェブに割れが生じる場合や、表面状態が悪化する場合があり、均一な炭素繊維シートを得ることができない場合がある。
所望する厚み及び目付になるまで、円筒状支持体に押圧巻き付け積層された湿潤ウェブは、その後、断裁展開され、円筒状支持体から分離され、単板状とされる。続いて、加圧、乾燥、加熱にすることにより、セルロース繊維の水素結合により単板状の炭素繊維シートが製造される。これにより、通常の湿式製法や乾式製法では安定して抄造することが難しい高坪量の炭素繊維シートを連続して製造することが可能となり、炭素繊維強化複合材料を作製することが可能な炭素繊維シートを簡便な方法で得ることができる。
押圧巻き付け積層された湿潤ウェブを加圧することにより、余剰水を脱水除去し、加圧、乾燥、加熱により水分を蒸発させる。これにより、高密度な炭素繊維シートを得ることができ、炭素繊維シート内の空隙が少なくなるため、高分子材料を均一に付与することが容易になる。湿潤ウェブが熱可塑性バインダー又は湿熱接着性バインダーを含む場合、加圧を継続し、該バインダーの軟化点又は融点より高い温度にて加熱することによって、軟化又は溶融したバインダーと炭素繊維及びセルロース繊維とが一体化し、単板状の炭素繊維シートを製造することができる。加圧装置は単段プレス装置でも良いし、多段プレス装置を用いてもよい。
加圧時の圧力は0.1~300MPaの範囲が好ましい。圧力が0.1MPaより低いと、湿潤ウェブの水分が残りすぎて、乾燥負荷が高く、生産性が低下する場合がある。圧力が300MPaより大きいと、湿潤ウェブに亀裂が発生する場合がある。
加圧開始時には、相対的に低い圧力を所定時間加え、圧力を段階的に高めることによって、加圧開始時に水分を多く含む湿潤ウェブ積層体から緩やかに水を排出させることができるため、湿潤ウェブの破壊を抑えることができる。
湿潤ウェブの積層枚数に特に制限はないが、押圧巻き付け積層された湿潤ウェブの固形分は100~3000g/mが好ましい。押圧巻き付け積層された湿潤ウェブの固形分が100g/m未満の場合、本発明の方法を用いなくても、通常の湿式抄造法によって効率良く炭素繊維シートを製造することができる。押圧巻き付け積層された湿潤ウェブの固形分が3000g/mを超えると、加圧時に湿潤ウェブ間のずれが起こり、層間が乱れる場合がある。
本発明の炭素繊維シートは、高密度でセルロース繊維を含有するため、高分子材料(熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、高分子弾性化合物等)を、含浸又は塗工によって、効率良く付与することができ、これにより効率良く炭素繊維強化複合材料を作製することができる。付与された高分子材料は、硬化させることができる。高分子化合物の種類は特に限定されず、目的とする性能によって高分子化合物の材料を選択することができる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂や、不飽和ポリエステル、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリイミドなどが挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリスチレン、ゴム補強ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂(ABS樹脂)等のスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂;ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル等のポリエーテル系樹脂;ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド等のエンジニアリング樹脂;熱可塑性エポキシ樹脂等が挙げられる。高分子弾性化合物としては、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、シリコーンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、エチレン酢酸ビニルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム等が挙げられる。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は本実施例に限定されるものではない。実施例及び比較例において記載の部や百分率は断りのない限り、全て質量によるものである。実施例及び比較例で得られた炭素繊維シート及び炭素繊維強化複合材料の物性についての評価を行い、本発明の有効性の確認を行った。
実施例1~15、比較例1~2
炭素繊維、セルロース繊維を、表1記載の配合比率(質量基準)で水中に投入後、パルパーにて5分間撹拌することで、繊維の解繊・分散を同時に行った。これを横回流型マシンチェスト内にて、水で希釈し、さらに増粘することにより、分散濃度0.2%で分散状態が安定したスラリーを調成した。該スラリーを用い、90メッシュの平織り金属ワイヤーを有した円網抄紙機で、固形分質量50g/mの湿潤ウェブを形成した後、ウェットフェルト上でプレスロールでの加圧脱水により、水分率が50%である湿潤ウェブとし、連続的に直径70cmのメーキングドラムに転写し、固形分質量(表1記載の炭素繊維シート坪量に相当する)になる積層数で押圧巻き付け積層することによって、湿潤ウェブ積層体を得た。
メーキングドラム上の該湿潤ウェブ積層体を断裁展開し、約2.1m長の単板状とした後、表面温度260℃の平板金型を備えたプレス装置間に挿入し、初期加圧が0.1MPaにて脱水乾燥を開始し、端面からの落水・浸水がなくなった後、加圧が2MPaになるように昇圧し、2分間加熱した後、水冷装置にて50℃まで冷却することにより、表1記載の炭素繊維シートを得た。
表1に記載されている繊維の詳細は、以下のとおりである。
炭素繊維:PAN系炭素繊維(東レ社製、T-700、繊維径7μm、繊維長6mm)
叩解リヨセル:リヨセル繊維(繊度1.4dtex、繊維長3mm)を、ダブルディスクリファイナーを用いて処理し、平均繊維径14.0μmの幹部から平均繊維径1μm以下の枝部を発生させるように調製した繊維。
叩解針葉樹パルプ:ろ水度500mlCSFとなるように調製した天然針葉樹パルプ。
<炭素繊維シート坪量及び密度>
炭素繊維シートの目付(坪量)は、JIS L 1913:2010 6.2記載の単位面積当たりの質量準拠法)に則って測定し、炭素繊維シートの密度は、該目付を厚み(JIS L 1913:2010 6.1記載のA法準拠法)により除すことで求めた。
<抄造性評価>
湿潤ウェブを抄造する際にロールや機械に付着した炭素繊維や、抄造の際の紙切れなどを確認して、抄造性の評価を行った。
○:抄造の際に問題は発生せず、安定した抄造を行うことができた。
△:抄造の際に問題が発生するも、抄造条件の調節により解決できた。
×:抄造の際に問題が発生し、解決することができなかった。
<繊維脱離評価>
湿潤ウェブをプレス機で加圧加工する際に炭素繊維の脱離を確認して、炭素繊維脱離の評価を行った。
○:炭素繊維がほぼ脱離せずプレス機にも付着しなかった。
×:炭素繊維が多く脱離してプレス機に付着した
<炭素繊維強化複合材料加工性評価>
炭素繊維が3,000g/mとなるように炭素繊維シートを積層して型に入れ、熱硬化性樹脂を3,000g/mとなるように型に入れて炭素繊維シートに付与し、次にプレス加工を行い、炭素繊維強化複合材料を得た。
熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂):GM-6800(ブレニー技研社)
硬化剤混合後粘度:505cps
熱硬化性地樹脂エポキシ樹脂は硬化剤を主剤/硬化剤が10部/3部となるように混合した後、炭素繊維シートに含浸させた。
得られた炭素繊維強化複合材料の加工性を目視で評価した。
○:炭素繊維と熱硬化性樹脂は均一に分布されていた。
×:炭素繊維と熱硬化性樹脂とが不均一に分布していた。
<炭素繊維強化複合材料加工後強度評価>
炭素繊維強化複合材料の強度をJIS K 7074:1988に則って、サンプルごとにN=10回測定して、評価を行った。
○:炭素繊維強化複合材料として十分高い強度が得られた。
×:炭素繊維強化複合材料として強度が不足していた。
実施例1~15は、抄造性に優れ、繊維の脱離も見られず、炭素繊維強化複合材料への加工性や加工後の強度も優れていることが分かる。
炭素繊維シートを作製する際に分散条件を強くして、炭素繊維が単繊維状になるまで分散することで炭素繊維シートの結束が残らないようにした比較例1においては、炭素繊維が複雑な立体構造を形成することから、炭素繊維シートに熱硬化性樹脂を付与した際にムラが生じ、炭素繊維強化複合材料の加工性及び加工後の強度が劣る結果となった。
炭素繊維シートの密度が0.15g/cm未満である比較例2においては、抄造性が悪く、繊維の脱離も確認された。
本発明は、電子機器材料、電気機器材料、土木材料、建築材料、自動車材料、航空機材料、各種製造業で使用されるロボット、ロール等の製造部品等に利用可能である。

Claims (2)

  1. 炭素繊維及びセルロース繊維を含有するスラリーから湿潤ウェブを抄造する工程、湿潤ウェブを連続的に円筒状支持体に押圧巻き付け積層する工程、積層された湿潤ウェブを断裁展開し、単板状とする工程、及び、単板状の湿潤ウェブを加圧、乾燥、加熱する工程を含み、炭素繊維で構成される結束を含有し、密度が0.15g/cm以上である炭素繊維シートを製造することを特徴とする炭素繊維シートの連続製造方法。
  2. 請求項1に記載の炭素繊維シートの連続製造方法に続いて、炭素繊維シートに高分子材料を付与する工程を含む炭素繊維強化複合材料の製造方法。
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