JP2020050618A - フッ素置換基を有する含硫黄多環芳香族化合物の製法 - Google Patents

フッ素置換基を有する含硫黄多環芳香族化合物の製法 Download PDF

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【課題】新規な含フッ素ベンゾジチオフェン誘導体を提供する。【解決手段】下記構造式の何れかにより示される、含フッ素ベンゾジチオフェン誘導体である。【化1】【選択図】なし

Description

本発明は、フッ素置換基を有する含硫黄多環芳香族化合物(特には、含フッ素ベンソジチオフェン誘導体)の製法に関する。より具体的には、本発明は、含フッ素ベンソジチオフェン誘導体及びその製造方法に関するものである。
従来、オクタフルオロシクロペンテンを原料に、チオフェン骨格又はベンゾチオフェン骨格を有する化合物の合成及び用途開発が多数なされており、多くの報告がなされてきている。良く知られた化合物として、フォトクロミック材料に有用なジアリールエテン誘導体があり、1,2−ジ(ヘテロアリール)ヘキサフルオロシクロペンテン(ヘテロアリールは、チオフェン、ベンゾチオフェンを含む)として、広く開発がなされてきた。これらの1,2−ジ(ヘテロアリール)ヘキサフルオロシクロペンテンは、光スイッチング素子及び記録媒体材料等としての応用が期待される化合物である。
例えば、下記式に示すように、ジアリールエテン誘導体は、紫外光を照射すると、チオフェン骨格同士が結合して色を呈するようになるが、紫外光照射を停止し、可視光を照射すると、元のジアリールエテン誘導体に戻る。すなわち、ジアリールエテン誘導体は、光の照射によって可逆的に構造が変化する性質である、フォトクロミック性を有する化合物である(例えば、特許文献1、2、非特許文献1参照)。このような、フォトクロミック性を応用して、上記のスイッチング素子、トランジスター、及び記録媒体などの用途への展開が図られてきている。
Figure 2020050618
一方、我々は、以下のような構造を有する含フッ素窒素複素環化合物、含フッ素縮合多環芳香族化合物、及び、これらの化合物に由来する単位とフェナントレン環構造を有する単位とを含むポリマーを開発し、有機発光素子の発光材料、電気化学素子の電極材料などへの展開を図ってきた(例えば、特許文献3、4、及び非特許文献2参照)。これらの含フッ素芳香族化合物は、π電子共役性を十分に発現し、有機溶媒に対する溶解性が高いので、成膜性に優れる。
Figure 2020050618
これらの化合物は、まず、前駆体として所定の化合物を合成した後、得られた前駆体化合物を、Mallory反応を経てフェナントロリン誘導体又はフェナントレン誘導体へと変換することにより合成されていた。なお、前駆体化合物としては、例えば、1,2−ジ(2−ブロモピリジル)ヘキサフルオロシクロペンテン、1,2−ジ(3−ブロモフェニル)ヘキサフルオロシクロペンテン、及び1,2−ジ(4−ブロモフェニル)ヘキサフルオロシクロペンテン等のビアリール化合物が挙げられる。ここで、Mallory反応とは、上記前駆体のようなビアリール化合物を有機溶媒に対して溶解して得た溶液に対して、酸化剤を添加した後に、かかる溶液に対して光を与えることにより、ビアリール化合物の芳香環同士が結合する反応である。具体的には、非特許文献2では、1,2−ジ(4−ブロモフェニル)ヘキサフルオロシクロペンテンを原料に用いて、Mallory反応によりフェナントレン誘導体へと変換した例が報告されている。
国際公開第2007/105699号 国際公開第2013/044371号 特開2016−60722号公報 特開2016−84448号公報
Kenji Higashiguchi et al.著、「Fatigue Mechanism of Photochromic 1,2−Bis(3−thienyl)perfluorocyclopentene」、Chemistry Letters、日本化学会、2000年、Vol.29、No.12、p.1358−1359 Hiroki Fukumoto et al.著、「Efficient Synthesis of Fluorinated Phenanthrene Monomers Using Mallory Reaction and Their Copolymerization」、Macromolecules、2017年、Vol.50、No.3、p.865−871
近年、上述したような既知の化合物とは構造の異なる、新規な化合物が必要とされてきた。そこで、本発明は、かかる新規な化合物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成することを目的として、鋭意検討を行った。そして、本発明者らは、新規な化合物として、特許文献1〜4、及び非特許文献1〜2に記載されていない、含フッ素ベンゾジチオフェン誘導体を合成することに成功した。ここで、かかる含フッ素ベンゾジチオフェン誘導体の合成に際して、フッ素原子を有する5員環構造を骨格に持つ含フッ素ジチオフェン誘導体(当該含フッ素ジチオフェン誘導体には、含フッ素ジチオフェン及び含フッ素ジベンゾチオフェンが含まれる)を原料として用いている。原料とした含フッ素ジチオフェン誘導体は、フッ素原子を有する5員環構造を骨格に持つ化合物であるため、フッ素原子の強い電子求引性により、チオフェン、あるいは、ベンゾチオフェン上の電子密度が低下し、環化反応に供する原料としては非常に不利であるようにも考えられる。しかしながら、本発明者らが詳細な検討を行ったところ、かかる含フッ素ジチオフェン誘導体であっても、非常に円滑に環化反応を進行させることができることを見出した。そして、本発明者らはかかる知見に基づいて、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の含フッ素ベンゾジチオフェン誘導体は、下記構造式(1)〜(3)の何れかで示される化合物である。
Figure 2020050618
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の含フッ素ベンゾジチオフェン誘導体の製造方法は、上述した何れかの含フッ素ベンゾジチオフェン誘導体の製造方法であって、ヨウ素及びヨウ化水素捕捉剤の存在下で、下記構造式(4)又は(5):
Figure 2020050618
〔上記構造式(4)中、R〜Rは、全て水素原子であるか、又は、RとR、及び、RとRがそれぞれ結合してベンゼン環を形成していても良い。〕で表わされる含フッ素ジチオフェン誘導体に対して365nmの波長を含む光を照射して環化反応物を得る環化反応工程を含む、ことを特徴とする。
さらにまた、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の含フッ素ベンゾジチオフェン誘導体の製造方法は、上記構造式(1)又は(3)に示された含フッ素ベンゾジチオフェン誘導体の製造方法であって、下記構造式(4):
Figure 2020050618
〔上記構造式(4)中、R〜Rは、全て水素原子であるか、又は、RとR、及び、RとRがそれぞれ結合してベンゼン環を形成していても良い。〕で表わされる含フッ素ジチオフェン誘導体を、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン及び有機スルホン酸の存在下で反応させて環化反応物を得る環化反応工程を含む、ことを特徴とする。
本発明によれば、既知の化合物とは構造の異なる、新規な化合物を提供することができる。
本発明に従う含フッ素ベンゾジチオフェン誘導体(以下、「本発明による新規化合物」又は、単に「新規化合物」と称する)は、本発明の含フッ素ベンソジチオフェン誘導体の製造方法により効率的に製造することができる。
(含フッ素ベンゾジチオフェン誘導体)
本発明に従う含フッ素ベンゾジチオフェン誘導体は、下記構造式(1)〜(3)の何れかにより示される化合物である。
Figure 2020050618
上記のような構造を有する、本発明による新規化合物には、有機トランジスター、有機EL、有機太陽電池、有機導電材料、有機感光体、あるいは、液晶等の材料としての応用が期待される。特に、本発明による新規化合物は、上記構造式(1)〜(3)で特定したような、特異な構造を有するため、上記のような従来の化合物が有していない性能を発揮しうると想定される。より具体的には、本発明による新規化合物は、耐酸化性が高いと想定され、酸化に起因して劣化し難く上記のような用途に応用した場合に、優れた耐久性を呈し得ると考えられる。また、本発明による新規化合物は、上記のような用途にて汎用されうる溶剤に対する溶解性が概して高く、利便性に優れると考えられる。また、本発明による新規化合物は、単独で低分子量の化合物として用いるだけではなく、ポリマー形成材料として用いて、共重合可能な他の単量体と重合することで、得られるポリマーに上記のような好適な性能を付与することができる可能性を秘めている。
(含フッ素ベンソジチオフェン誘導体の製造方法)
本発明の含フッ素ベンソジチオフェン誘導体の製造方法は原料としての所定の含フッ素ジチオフェン誘導体の環化反応物を得る、環化反応工程を含むことを特徴とする。さらに、本発明の製造方法は、環化反応工程に先立って、原料としての所定の含フッ素ジチオフェン誘導体を合成する含フッ素ジチオフェン誘導体合成工程を含むことが好ましい。さらにまた、本発明の製造方法にて、環化反応工程で得られた環化反応物を精製する精製工程を実施することが好ましい。以下、各工程について詳述する。
<含フッ素ジチオフェン誘導体合成工程>
含フッ素ジチオフェン誘導体合成工程では、下記構造式(4)又は(5):
Figure 2020050618
〔上記構造式(4)中、R〜Rは、全て水素原子であるか、又は、RとR、及び、RとRがそれぞれ結合して結合してベンゼン環を形成していても良い。〕で表わされる含フッ素ジチオフェン誘導体を合成する。合成方法としては、特に限定されることなく、例えば、Shigeyuki Yamada et al.著「Reaction of perfluorocyclopentene with various carbon nucleophiles−heteroaromatic lithium reagents, enolate and phosphonium ylide」、Organic & Biomolecular Chemistry、2007年、Vol.5、p.1442−1449に記載の方法に従って合成することができる。
例えば、構造式(4)又は(5)で示される含フッ素ジチオフェン誘導体は、エーテル系溶媒に対してオクタフルオロシクロペンテンを溶解又は分散させて、所定の温度条件下で、ヘテロ芳香族リチウム試薬を含むエーテル系溶液と混合して反応させることにより合成することができる。より具体的には、構造式(4)で示される含フッ素ジチオフェン誘導体のうち、R〜Rが、水素原子である場合に対応する化合物である、1,2−ビス(3−チエニル)ヘキサフルオロシクロペンテンを合成する際には、例えば、まず、テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒に対してオクタフルオロシクロペンテンを溶解させてオクタフルオロシクロペンテン−テトラヒドロフラン溶液(C−THF溶液)を得る。かかるC−THF溶液に対して、−78℃に冷却した、ヘテロ芳香族リチウム試薬としての3−チエニルリチウムを含有するエーテル溶液を添加することにより、合成することができる。ここで、オクタフルオロシクロペンテンに対するヘテロ芳香族リチウム試薬の割合は、2当量以上であることが好ましい。また、構造式(4)で示される含フッ素ジチオフェン誘導体のうち、R/R、及び、R/Rが結合してベンゼン環を形成している場合に対応する化合物である、1,2−ビス(3−ベンゾ[b]チエニル)ヘキサフルオロシクロペンテンの場合には、ヘテロ芳香族リチウム試薬として3−ベンゾ[b]チエニルリチウムを用いること以外は上記と同様にして、合成することができる。さらにまた、構造式(5)の含フッ素ジチオフェン、1,2−ビス(2−チエニル)ヘキサフルオロシクロペンテンの場合には、ヘテロ芳香族リチウム試薬として2−チエニルリチウムを用いること以外は上記と同様にして、合成することができる。
<環化反応工程>
環化反応工程では、構造式(4)又は(5)で示される含フッ素ジチオフェン誘導体を環化反応させて、環化反応物を得る。かかる環化反応工程としては、(A)Mallory反応を伴う工程と、(B)Scholl反応を伴う工程との何れかを実施する。中でも、高い収率で環化反応物が得られることから、環化反応工程として、(A)Mallory反応を伴う工程を実施することが好ましい。
(A)Mallory反応を伴う環化反応工程
Mallory反応を伴う環化反応工程では、ヨウ素及びヨウ化水素捕捉剤の存在下で、構造式(4)又は(5)で示される含フッ素ジチオフェン誘導体に対して365nmの波長を含む光を照射して環化反応物を得る。さらに、かかる反応は、溶媒の存在下で行うことが好ましい。
(A−1)酸化剤としてのヨウ素
ヨウ素(I)は、Mallory反応を伴う環化反応工程において酸化剤として作用する。より詳細には、まず、365nmの波長を含む光(以下、略して「照射光」とも称することがある。)により、含フッ素ジチオフェン誘導体に含まれる、チオフェン骨格同士、又は、ベンゾチオフェン骨格同士の間で閉環反応が起こり、閉環体が形成される。ここに、ヨウ素がこれらの閉環体を酸化する酸化剤として作用して、チオフェン骨格又はベンゾチオフェン骨格の2位又は3位の水素原子と反応してヨウ化水素を生成する。そして、生成されたヨウ化水素は、環化反応物から遊離する。反応系中に存在する遊離ヨウ化水素は、照射光により分解される等して、不所望の副反応を併発するおそれがある。そこで、反応系中にヨウ化水素捕捉剤を配合することで、ヨウ化水素を捕捉することができる。
(A−2)ヨウ化水素捕捉剤
ヨウ化水素捕捉剤としては、エポキシ化合物等の酸素含有化合物を用いることができる。エポキシ化合物としては、Mallory反応を伴う環化反応工程において生成されるヨウ化水素を効率的に捕捉可能なエポキシ化合物であれば特に限定されない。例えば、エポキシ化合物としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1,3−ブタジエンジオキシド、1,2−ヘキシレンオキシド、シクロペンテンオキシド、シクロヘキセンオキシド、シクロペンタデセンオキシド、1,4−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシ−1−メチルシクロヘキサンなどの炭化水素系エポキシ化合物、塩化アリルオキシド、臭化アリルオキシド、2−(クロロメチル)−1,2−プロピレンオキシドなどのハロゲン含有エポキシ化合物、2−フェニルプロピレンオキシド、2,3−ジフェニルエチレンオキシド、1−ベンジルオキシ−2,3−エポキシプロパンなどの芳香族含有エポキシ化合物、2,3−エポキシプロピルイソプロピルエーテル、イソホロンオキシドなどのエポキシ化合物を挙げることができる。
これらの中でも、炭化水素系エポキシ化合物が好ましく、中でも、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド、2,3−ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1,2−ヘキシレンオキシド、シクロペンテンオキシド、及びシクロヘキセンオキシドが、取扱い易さ及び経済性の観点でより好ましい。
(A−3)溶媒
本工程にて用いる溶媒としては、原料としての含フッ素ジチオフェン誘導体を溶解可能であるとともに、365nmの波長を含む光に対して透明(365nmの波長を含む光の透過率が80%以上)かつ安定な溶媒であれば特に限定されることなく、あらゆる溶媒を用いることができる。中でも、ベンゼン、トルエン、0−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、これら3種の異性体(0−キシレン、m−キシレン及びp−キシレン)の混合物、1,3,5−トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、ベンゾトリフルオリド、ヘキサフルオロ−m−キシレン、クロロベンゼン、及び1,2−ジクロロベンゼンなどの芳香族化合物を挙げることができる。これらの中でも、トルエン、O−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、これら3異性体の混合物、1,3,5−トリメチルベンゼンが取扱い易さの点でより好ましい。
(A−4)各成分の添加(使用)量
Mallory反応を伴う環化反応工程で添加する、酸化剤としてのヨウ素(I)の量は、原料となる、構造式(4)又は(5)で示される含フッ素ジチオフェン誘導体に対して、1当量以上2当量以下とすることが好ましく、1.1当量以上1.5当量以下とすることがより好ましい。ヨウ素の添加量を上記下限値以上とすることで、上述したような閉環体の酸化反応を十分に進行させることができ、結果的に、環化反応物の収率を高めることができる。また、ヨウ素の添加量を上記上限値以下とすることで、照射光によりチオフェン骨格又はベンゾチオフェン骨格のヨウ素化反応等の不所望な副反応が生じ難くすることができる。
本工程におけるヨウ素の添加態様としては、Mallory反応を伴う環化反応工程を通じて添加すべきヨウ素の添加量(以下、「全ヨウ素添加量」とも称する。)を反応開始時点(即ち、原料、酸化剤、照射光等、反応に必要な全ての要素が揃った時点。)に先立って一括で反応器内に添加するのではなく、反応開始時点を挟んで、複数回に分割して反応器内に添加するか、或いは、反応開始時点より前の時点から、反応開始時点の後の時点までの所定の期間にわたり少量ずつ連続的に添加することが好ましい。反応開始時点以前までにヨウ素の全量を添加するのではなく、全添加量の少なくとも一部を反応開始時点の後に添加することで、照射光により励起されたヨウ素が、含フッ素ジチオフェン誘導体等に含まれるチオフェン骨格又はベンゾチオフェン骨格をヨウ素化する等、不所望な副反応が生じることを効果的に抑制することができる。加えて、上記のような添加態様とすることで、例えば、反応開始時点の前に反応器内にヨウ素を一括添加した場合のように、反応器内におけるヨウ素濃度が一時的に高まり、ヨウ素による照射光の大部分が吸収されてしまうことで、Mallory反応が阻害されることを回避することができる。なお、反応開始後に添加するヨウ素の量は、ヨウ素の全添加量を100質量%として、30質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
より具体的には、反応開始時点以前までに1回ヨウ素を添加し、反応開始時点から所定時間(例えば、0.5時間、又は、全反応時間の1/5相当の時間)経過後に、1回ヨウ素を添加しても良い。
また、本工程で添加するヨウ化水素捕捉剤の添加量は、ヨウ素に対して、2当量以上50当量以下が好ましく、10当量以上35当量以下がより好ましい。ヨウ化水素捕捉剤の添加量が上記下限値以上であれば、本工程にて生成されうる副生成物であるヨウ化水素を充分に捕捉することができ、不所望な副反応が生じることを効果的に抑制することができる。また、ヨウ化水素捕捉剤の添加量が上記上限値以下であれば、照射光及びヨウ化水素等の作用により、過剰量のヨウ化水素捕捉剤が重合反応すること等の不所望な副反応が生じることを抑制することができる。
さらに、本工程における溶媒の使用量は、原料である含フッ素ジチオフェン誘導体に対して、500ml/g以上2000ml/g以下の比率範囲であることが好ましい。溶媒の使用量が上記下限値以上であれば、反応系内の反応性成分の濃度が過度に高くなることを抑制して、副生物であるヨウ化水素とその他の成分との接触頻度が過度に高まることを抑制して、副反応の発生を低減又は抑制することができる。逆に、溶媒の使用量が上記上限値以下であれば、反応系が過度に希薄にならないようにして、反応が完了するまでの時間が過度に長引くことを抑制することができる。
(A−5)照射光:365nmの波長を含む光
本工程においては、365nmの波長を含む光を、上記原料、ヨウ素、及びヨウ化水素捕捉剤を少なくとも含む反応組成物に対して照射する。365nmの波長を含む光とは、換言すれば、紫外光を含む活性エネルギー線である。照射源としては、一般的な、高圧水銀ランプを好適に用いることができる。高圧水銀ランプのような照射源は、365nmの波長以外の波長帯の光も発し得る。照射源より発せられる光(例えば、波長365nm以外の波長帯の光も含む光)をそのまま反応組成物に対して照射しても良いし、フィルタ等の波長選択能を有する部材を用いて反応に不要な、或いは反応に不利益をもたらし得る波長域の光をカットした光を反応組成物に対して照射しても良い。カットする波長域は、例えば、波長365nm未満の短波長領域であり得る。
照射光を反応組成物に対して照射する時間は、反応規模や、基質(原料)の濃度にもよるが、通常、0.5時間以上20時間以下であり、2時間以上10時間以下がより好ましい。照射時間が上記下限値以上であれば、反応を充分に進行させることができ、原料を環化反応物に充分に変換することができる。また、照射時間が上記上限値以下であれば、過剰照射に起因する不所望な副反応が発生することを充分に抑制することができる。
また、照射光の強度は、特に限定されないが、例えば、1000lx以上5000lx以下であり得る。
(A−6)反応条件
本工程における反応は、通常、0℃以上30℃以下の温度範囲で実施することができる。反応温度が上記下限値以上であれば、環化反応が完結するまでに要する時間が過度に長くならないようにすることができる。また、反応温度が上記上限値以下であれば、好ましくない副反応が併発することを抑制することができる。
本工程における反応の反応時間は、後述するように、反応液を所定の方法にて分析し、反応液中に原料が確認されなくなったタイミングで反応を終了させることで、決定することができる。例えば、反応時間は、反応の規模や使用する反応装置にもよるが、通常、0.5時間以上20時間以下でありうる。
(A−7)反応の手順の一例
本工程を実施する際の手順の一例は、以下の通りである。まず、照射源としての高圧水銀ランプ及び撹拌機(撹拌子)を付したパイレックス(登録商標)硝子製反応器に対して、原料、ヨウ化水素捕捉剤、及び溶媒を仕込む。次いで、反応器内の温度を任意の反応温度に設定して、撹拌を開始する。高圧水銀ランプによる光照射を開始し、ヨウ素を複数回にわたり分割添加しながら反応組成物について反応を継続する。所定の反応時間経過後に、光照射を停止し、反応液を静置する。なお、反応終了タイミングは、反応系中から、環化反応物を含む反応液を採取して、ガスクロマトグラフィー又は液体クロマトグラフィーにて分析し、反応液中に原料が確認されなくなったことを確認することによって、定めることもできる。
(A−8)後処理
以上、説明してきたような、Mallory反応を伴う環化反応工程における、環化反応後の後処理では、まず、反応液に対して、チオ硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウム水溶液などの還元剤を添加して、未反応のヨウ素を中和する。次いで、反応液を、飽和塩化ナトリウム水溶液等の洗浄液で洗浄してから、有機層を分液する。さらに、得られた有機層は、無水硫酸ナトリウム及び無水硫酸マグネシウムなどの乾燥剤で乾燥して、環状反応物を含む乾燥物を得る。
(B)Scholl反応を伴う環化反応工程
Scholl反応を伴う環化反応工程では、構造式(4)で表される含フッ素ジチオフェン誘導体を、酸化剤としての2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン(以下、略して「DDQ」とも称することがある。)、有機スルホン酸の存在下で反応させて環化反応物を得る。さらに、かかる反応は、溶媒の存在下で行うことが好ましい。
(B−1)酸化剤としてのDDQ
DDQは、Scholl反応を伴う環化反応工程において酸化剤として機能する。DDQは、ルイス酸としての有機スルホン酸と協働して、環化反応を進行する。
(B−2)有機スルホン酸
有機スルホン酸としては、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸などの、パーフルオロアルキルスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、及びプロパンスルホン酸などのアルキルスルホン酸を挙げることができる。中でも、酸性度の強い、トリフルオロメタンスルホン酸、及びメタンスルホン酸を好適に用いることができる。
(B−3)溶媒
本工程にて用いる溶媒としては、原料としての含フッ素ジチオフェン誘導体を溶解可能であるとともに、有機スルホン酸と反応しない溶媒であれば特に限定されることなく、あらゆる溶媒を用いることができる。かかる溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、及び1,1,2,2−テトラクロロエタンなどの塩素系溶媒、並びに、トリクロロトリフルオロエタン、ジクロロペンタフルオロプロパン、ペンタフルオロブタン、デカフルオロペンタン、1−メトキシノナフルオロブタン、1−エトキシノナフルオロブタン、及びテトラフルオロエチルトリフルオロエチルエーテルなどのフッ素系溶媒を挙げることができる。これらのハロゲン系溶媒の中でも、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、及び1,1,2,2−テトラクロロエタンなどの塩素系溶媒が、取り扱い易さ及び経済性の観点で好適に用いることができる。
(B−4)各成分の添加(使用)量
Scholl反応を伴う環化反応工程において添加する、酸化剤としてのDDQの量は、原料である構造式(4)で表される含フッ素ジチオフェン誘導体に対して、0.8当量以上3当量以下とすることが好ましく、1当量以上2当量以下とすることがより好ましい。DDQの添加量が上記下限値以上であれば、環化反応効率を高めることができる。また、DDQの添加量が上記上限値以下であれば、DDQに要するコストを削減するとともに、反応生成物からDDQ及びその副生物を分離するための精製操作等の負荷が大きくなることを抑制することができる。
本工程における有機スルホン酸の添加量は、有機溶媒の体積に対する有機スルホン酸の体積の比率(有機スルホン酸/有機溶媒)が、0.01以上1以下となる量であることが好ましく、0.05以上0.25以下となる量であることがより好ましい。上記比率が上記下限値以上であれば、環化反応効率を高めることができる。また、上記比率が上記上限値以下であれば、本発明の含フッ素ベンソジチオフェン誘導体の製造方法の経済性を高めることができる。
さらに、有機スルホン酸の添加量は、DDQ1当量に対して、10当量以上200当量以下が好ましく、20当量以上150当量以下がより好ましい。
(B−5)反応条件
本工程における反応は、反応温度が−20℃以上30℃以下の範囲内であることが好ましく、0℃以上20℃以下の範囲内であることがより好ましい。反応温度が上記下限値以上であれば、環化反応が完結するまでに要する時間が過度に長くならないようにすることができる。また、反応温度が上記上限値以下であれば、反応が急激に進行することを抑制するとともに、望ましくない生成物が生成することを抑制することができる。
本工程における反応の反応時間は、反応の規模や使用する反応装置にもよるが、通常、0.5時間以上20時間以下であり、好ましくは、1時間以上5時間以下である。反応時間が上記下限値以上であれば、環化反応を充分に進行させることで、反応液中に原料が残存することを抑制することができる。また、反応時間が上記上限値以下であれば、望ましくない副反応が生じることを抑制することができる。
(B−6)反応の手順の一例
本工程を実施する際の手順の一例は、以下の通りである。まず、撹拌機(撹拌子)を付した硝子製反応器内に対して、原料及びハロゲン系溶媒を仕込み、反応器内を不活性ガス(例えば、アルゴンガス)雰囲気として、ハロゲン系溶媒に対して原料を溶解させる。ここに、DDQを添加してから、反応器内の温度を任意の反応温度に設定する。次いで、反応器内に有機スルホン酸を加え、設定された反応温度で、上述したような任意の反応時間にわたり、反応器内の反応組成物を撹拌して、環化反応物を含む反応液を得る。
(B−7)後処理
以上、説明してきたような、Scholl反応を伴う環化反応工程における環化反応後の後処理では、まず、有機スルホン酸を中和するために、炭酸水素ナトリウムや、炭酸ナトリウムのようなアルカリ水溶液で中和する。次いで、反応液を、ジエチルエーテル及び酢酸エチルのような有機溶媒で抽出して抽出液を得る。そして、得られた抽出液を、無水硫酸ナトリウム及び無水硫酸マグネシウムなどの乾燥剤で乾燥して、環状反応物を含む乾燥物を得る。
<濃縮−精製工程>
上述した何れかの方途に従う<環化反応工程>で得られた乾燥物は、濃縮−精製工程に供して精製することが好ましい。なお、精製を行うことなく、濃縮のみを行っても良い。濃縮及び精製のための方法としては、特に限定されることなく、一般的な方法を採用することができる。例えば、ロータリーエバポレーター等を用いて、上記で得られた乾燥物から溶媒を留去して濃縮物を得ることができる。また、例えば、得られた濃縮物をカラムクロマトグラフィー等で精製することで、精製された環化反応物を得ることができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例によってその範囲を限定されるものではない。
なお、各実施例で得られた物質についての、各種の測定および分析は、以下の方法に従って行った。
<NMR測定>
ブルカー・バイオスピン社製の核磁気共鳴装置「Bruker Avance III 400型」を用いて測定を行った。
<X線構造解析>
単結晶X線構造解析装置「XtaLABmini(Rigaku製)」を用いて行った。
加速電圧:50kV、12mA、電力:0.6kW、600WのX線出力
検出器:MARCURY CCD
[製造例1]1,2−ビス(3−ベンゾ[b]チエニル)ヘキサフルオロシクロペンテンの合成
製造例1では、原料としての、1,2−ビス(3−ベンゾ[b]チエニル)ヘキサフルオロシクロペンテンを合成した。なお、かかる化合物は、構造式(4)において、RとR、及び、RとRがそれぞれ結合してベンゼン環を形成している場合に相当する含フッ素ジチオフェン誘導体に相当する化合物である。
−ヘテロ芳香族リチウム試薬の調製
まず、撹拌子を付した容量100mlのガラス製反応器に、3−ブロモベンゾチオフェン(0.78ml、6mmol)、ジエチルエーテル40mlを仕込み、アルゴン雰囲気下に置いた。反応器を−78℃に冷却した後、n−ブチルリチウムのヘキサン溶液(濃度:1.55mol/L、3.9ml、6mmol)を滴下し、−78℃で1時間撹拌しヘテロ芳香族リチウム試薬を得た。
−オクタフルオロシクロペンテンとヘテロ芳香族リチウム試薬との反応
次に、テトラヒドロフラン(12ml)で希釈したオクタフルオロシクロペンテン(0.4ml、3mmol)を上記と同じ反応器に入れ、さらに、2時間撹拌して、オクタフルオロシクロペンテンとヘテロ芳香族リチウム試薬とを反応させた。得られた反応液に、飽和塩化アンモニウム水溶液40mlを添加して反応を停止させ、ジエチルエーテル用いて3回水層を抽出した。
−後処理
そして、得られた抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、濾過して得られた濾液をロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)で精製し、無色透明な固体として、1,2−ビス(3−ベンゾ[b]チエニル)ヘキサフルオロシクロペンテン0.75g(収率:57%)を得た。
−分析結果
上記に従って、得られた反応生成物のNMR測定を行ったところ、結果は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz、CDCl):δ7.07(ddd、2H、J=8.3、7.2、1.1Hz)、7.19(ddd、2H、J=8.3、7.2、1.1Hz)、7.33(d、2H、J=8.1Hz)、7,71(d、2H、J=8.1Hz)、7.82(s、2H).
19F−NMR(376MHz、CDCl):δ−131.63(quint、2F、J=5.6Hz)、−109.46(t、4F、J=5.6Hz).
[製造例2]1,2−ビス(2−チエニル)ヘキサフルオロシクロペンテンの合成
製造例2では、原料としての、1,2−ビス(2−チエニル)ヘキサフルオロシクロペンテンを合成した。なお、かかる化合物は、構造式(5)の含フッ素ジチオフェン誘導体に相当する化合物である。
本製造例では、ヘテロ芳香族リチウム試薬の調製にあたり、3−ブロモベンゾチオフェン(0.78ml、6mmol)を、2−ブロモチオフェン(0.58ml、6mmol)に変更したこと以外は、製造例1と同様の操作を行って反応生成物を得た。その結果、目的物である1,2−ビス(2−チエニル)ヘキサフルオロシクロペンテンが、0.53g(収率52%)得られた。
−分析結果
上記に従って、得られた反応生成物のNMR測定を行ったところ、結果は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz、CDCl):δ7.15(dd、2H、J=5.0、3.8Hz)、7.47(d、2H、J=3.5Hz)、7.55(dd、2H、J=5.1、0.7Hz).
19F−NMR(376MHz、CDCl):δ−131.56(tt、2F、J=4.9、4.9Hz)、−110.68(t、4F、J=4.9Hz).
[製造例3]1,2−ビス(3−チエニル)ヘキサフルオロシクロペンテンの合成
製造例3では、原料としての、1,2−ビス(3−チエニル)ヘキサフルオロシクロペンテンを合成した。なお、かかる化合物は、構造式(4)のR〜Rが全て水素原子である場合の含フッ素ジチオフェン誘導体に相当する化合物である。
本製造例では、ヘテロ芳香族リチウム試薬の調製にあたり、3−ブロモベンゾチオフェン(0.78ml、6mmol)を、3−ブロモチオフェン(0.57ml、6mmol)に変更したこと以外は、製造例1と同様の操作を行って反応生成物を得た。その結果、目的物である1,2−ビス(2−チエニル)ヘキサフルオロシクロペンテンが、0.52g(収率51%)得られた。
−分析結果
上記に従って、得られた反応生成物のNMR測定を行ったところ、結果は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz、CDCl):δ7.04(d、2H、J=5.0Hz)、7.36(dd、2H、J=5.0、3.0Hz)、7.63(brs、2H).
19F−NMR(376MHz、CDCl):δ−131.56(tt、2F、J=4.9、4.9Hz)、−110.68(t、4F、J=4.9Hz).
[実施例1]
室温条件下で、撹拌子を付した容量300mlのガラス製反応器に、原料としての、製造例2で合成した1,2−ビス(2−チエニル)ヘキサフルオロシクロペンテン0.066g(0.19mmol)、酸化剤としてのヨウ素0.025g(0.1mmol)を溶解したトルエン溶液(100ml)、及び、ヨウ化水素捕捉剤としての1,2−エポキシブタン0.56ml(6.5mmol)を加え、アルゴン雰囲気下に置いた。この内容物(反応組成物)を撹拌しながら、照射源としての超高圧水銀ランプ(ウシオ電機製)を用いて紫外光(フィルタにより波長365nm未満の短波長域をカットした光)を0.5時間照射した。その後、反応組成物に対して、再度、ヨウ素0.028mg(0.11mmol)を加え、更に2時間にわたり、上記と同様の紫外光を照射して、反応液を得た。シリカゲル薄層クロマトグラフィーによって原料の消失を確認した後、得られた反応液を飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液、及び蒸留水で1回ずつ洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、濾液をロータリーエバポレーターにて濃縮したところ、濃縮物である黄色の固体が0.065g得られた(収率100%)。
−分析結果
上記に従って、得られた濃縮物のNMR測定及びX線構造解析を行ったところ、結果は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ=7.77(d、2H、J=5.4Hz)、7.84(d、2H、J=5.4Hz).
119F−NMR(376MHz、CDCl):δ=−129.35(quint、2F,J=5.4Hz)、−108.07(t、4F,J=5.4Hz).
また、単結晶X線構造解析により推定された結晶構造は、構造式(2)に一致するものであった。よって、本例にて、構造式(2)で示される、含フッ素ベンゾジチオフェン誘導体が得られたことを確認した。
[実施例2]
撹拌子を付した容量50mlのガラス製反応器に、原料としての、製造例1で合成した1,2−ビス(3−ベンゾ[b]チエニル)ヘキサフルオロシクロペンテン0.035g(0.08mmol)及び溶媒としてのジクロロメタン(9ml)を仕込み、アルゴン雰囲気下にて溶媒に対して原料を溶解させた。ここに、酸化剤としての2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン0.018g(0.08mmol)を仕込んだ。反応器を0℃に冷却し、有機スルホン酸としてのトリフルオロメタンスルホン酸(1ml)を添加し、1時間撹拌を行った。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20ml)を加えて、反応を停止した。反応液をジエチルエーテルで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去し濃縮物を得た。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトフラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=8/2)で精製したところ、精製物が0.022g(収率63%)得られた。
上記に従って、得られた精製物のNMR測定及びX線構造解析を行ったところ、結果は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ=7.60(m、4H)、7.96(m、2H)、8.62(d、2H、J=9.1Hz).
19F−NMR(376MHz、CDCl):δ=−126.66(quint、2F,J=4.7Hz)、−101.68(t、4F,J=4.3Hz).
また、単結晶X線構造解析により推定された結晶構造は、構造式(3)に一致するものであった。よって、本例にて、構造式(3)で示される、含フッ素ベンゾジチオフェン誘導体が得られたことを確認した。
[実施例3]
撹拌子を付した容量50mlのガラス製反応器に、原料としての、製造例3で合成した1,2−ビス(3−チエニル)ヘキサフルオロシクロペンテン0.1g(0.3mmol)及び溶媒としてのジクロロメタン(9.5ml)を仕込み、アルゴン雰囲気下にて溶媒に対して原料を溶解させた。ここに、酸化剤としての2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン0.068g(0.3mmol)を仕込んだ。反応器を0℃に冷却し、有機スルホン酸としてのトリフルオロメタンスルホン酸(0.5ml)を添加し、0.5時間撹拌を行った。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(20ml)を加えて、反応を停止した。反応液をジエチルエーテルで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去し濃縮物を得た。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトフラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=8/2)で精製したところ、精製物が0.043g(収率43%)得られた。
上記に従って、得られた精製物のNMR測定及びX線構造解析を行ったところ、結果は以下の通りであった。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ=7.70(d、2H、J=5.4Hz)、7.76(d、2H、J=5.4Hz)
19F−NMR(376MHz、CDCl):δ=−129.09(quint、2F,J=5.2Hz)、−105.29(t、4F,J=5.2Hz).
また、単結晶X線構造解析により推定される結晶構造は、構造式(1)に一致するものであった。よって、本例にて、構造式(1)で示される、含フッ素ベンゾジチオフェン誘導体が得られたことを確認した。

Claims (5)

  1. 下記構造式(1)で示される、含フッ素ベンゾジチオフェン誘導体。
    Figure 2020050618
  2. 下記構造式(2)で示される、含フッ素ベンゾジチオフェン誘導体。
    Figure 2020050618
  3. 下記構造式(3)で示される、含フッ素ベンゾジチオフェン誘導体。
    Figure 2020050618
  4. 請求項1〜3の何れかに記載された含フッ素ベンゾジチオフェン誘導体の製造方法であって、
    ヨウ素及びヨウ化水素捕捉剤の存在下で、
    下記構造式(4)又は(5):
    Figure 2020050618
    〔上記構造式(4)中、R〜Rは、全て水素原子であるか、又は、RとR、及び、RとRがそれぞれ結合してベンゼン環を形成していても良い。〕で表わされる含フッ素ジチオフェン誘導体に対して365nmの波長を含む光を照射して環化反応物を得る環化反応工程を含む、
    含フッ素ベンソジチオフェン誘導体の製造方法。
  5. 請求項1又は3に記載された含フッ素ベンゾジチオフェン誘導体の製造方法であって、下記構造式(4):
    Figure 2020050618
    〔上記構造式(4)中、R〜Rは、全て水素原子であるか、又は、RとR、及び、RとRがそれぞれ結合してベンゼン環を形成していても良い。〕で表わされる含フッ素ジチオフェン誘導体を、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン及び有機スルホン酸の存在下で反応させて環化反応物を得る環化反応工程を含む、
    含フッ素ベンゾジチオフェン誘導体の製造方法。
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