JP7188698B2 - フッ素置換基を有するヘリセン類の製法 - Google Patents
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また、本発明者らは、得られた含フッ素[7]ヘリセン化合物を光学分割することにより、光学活性な含フッ素[7]ヘリセン化合物が得られることを見出した。
ここで、原料である含フッ素ジスチルベン化合物は、フッ素原子を有する5員環構造を骨格に持つ化合物であるため、フッ素原子の強い電子求引性により、スチルベン骨格上の電子密度が低下し、環化反応に供する原料としては非常に不利であるようにも考えられる。しかしながら、本発明者らが詳細な検討を行ったところ、かかる含フッ素ジスチルベン化合物であっても、非常に円滑に環化反応を進行させることが可能なことを見出した。
ヨウ素及びヨウ化水素捕捉剤の存在下で、構造式(II)で示される含フッ素ジスチルベン化合物に対して光照射を行い、環化させる工程を含む、
上記の構造式(I)で示される含フッ素[7]ヘリセン化合物の製造方法が提供される。
ヨウ素及びヨウ化水素捕捉剤の存在下で、構造式(II)で示される含フッ素ジスチルベン化合物に対して光照射を行い、環化させる工程、及び
得られた環化反応物を光学分割する工程を含む、
上記の構造式(I-a)又は(I-b)で示される含フッ素[7]ヘリセン化合物の製造方法が提供される。
ヨウ素及びヨウ化水素捕捉剤の存在下で、構造式(II’)で示される含フッ素ジスチルベン化合物に対して光照射を行い、環化させる工程、及び
得られた環化反応物と、アリールホウ素化合物、アルカリ金属のアリールオキシド又はアリール基でモノもしくはジ置換されたアミンを反応させる工程
を含む、Rがアリール基、アリールオキシ基又はアリール基でモノもしくはジ置換されたアミノ基である、上記の構造式(I)で示される含フッ素[7]ヘリセン化合物の製造方法が提供される。
得られた環化反応物と、アリールホウ素化合物、アルカリ金属のアリールオキシド又はアリール基でモノもしくはジ置換されたアミンを反応させる工程、及び
得られた反応物を光学分割する工程
を含む、Rがアリール基、アリールオキシ基又はアリール基でモノもしくはジ置換されたアミノ基である、上記の構造式(I-a)又は(I-b)で示される含フッ素[7]ヘリセン化合物の製造方法が提供される。
含フッ素[7]ヘリセン化合物は、ラセミ体、左巻き異性体(M体)、右巻き異性体(P体)として提供される。本発明に係る含フッ素[7]ヘリセン化合物は、フッ素を含むため、フッ素非含有の[7]ヘリセン化合物に対して、溶媒への溶解性が向上していることが推測され、広範囲の溶媒の適用が期待される。この化合物はまた、耐酸化性が高く、劣化し難いことが推測され、耐久性の高い材料として、特に、偏光材料、n型半導体材料等への応用が期待される。さらに、本発明に係る含フッ素[7]ヘリセン化合物は、光ルミネセンス現象を発現できる化合物であることが確認されたため、発光材料への展開も期待される。本発明によれば、これらの新規な含フッ素[7]ヘリセン化合物を簡便な方法で製造することができる。
本発明によれば、上記構造式(I)で示される含フッ素[7]ヘリセン化合物が提供される。この化合物はラセミ体である。
アリール基としては、炭素原子数6~25のアリール基が挙げられ、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、クリセニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、ピセニル基等であり、中でもフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、テトラセニル基、クリセニル基が好ましい。
アリールオキシ基としては、炭素原子数6~25のアリールオキシ基が挙げられ、例えば、フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラセニルオキシ基、フェナントレンオキシ基、クリセンオキシ基、ピレンオキシ基等であり、中でも、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、アントラセニルオキシ基、フェナントレンオキシ基が好ましい。
アリール基でモノもしくはジ置換されたアミノ基としては、アリール基でジ置換されたアミノ基が好ましい。アリール基でジ置換されたアミノ基におけるアリール基は、同じであっても、異なっていてもよい。アリール基については、上記アリール基の例示及び好適な例の記載が適用される。アリール基でモノもしくはジ置換されたアミノ基としては、ジフェニルアミノ基、フェニルナフチルアミノ基、フェニルアントラセニルアミノ基、ジナフチルアミノ基等が挙げられ、中でも、ジフェニルアミノ基、フェニルナフチルアミノ基、フェニルアントラセニルアミノ基が好ましい。
<原料>
構造式(I)で示される含フッ素[7]ヘリセン化合物の製造における原料としては、構造式(II)で示される含フッ素ジスチルベン化合物(含フッ素ジスチルベン化合物)を用いることができる。含フッ素ジスチルベン化合物のスチルベン骨格の構築には、ウィッティッヒ反応(Wittig reaction)を用いることができ、例えば、Organic Reactions、1965年、Vol.14、Chapter3“THE WITTIG REACTION”に記載の方法が挙げられる。
環化反応工程では、構造式(II)で示される含フッ素ジスチルベン化合物を環化反応させて、構造式(I)で示される含フッ素[7]ヘリセン化合物を得ることができる。環化反応工程には、マロリー反応(Mallory reaction)を用いることができる。
ヨウ素(I2)は、マロリー反応を伴う環化反応工程において酸化剤として作用する。より詳細には、まず、光照射により、含フッ素ジスチルベン化合物に含まれる、芳香環同士の間で閉環反応が起こり、閉環体が形成される。ヨウ素は、これらの閉環体を酸化する酸化剤として作用し、芳香環の2位又は3位の水素原子と反応してヨウ化水素を生成させる。生成したヨウ化水素は、環化反応物から遊離する。反応系中に存在する遊離ヨウ化水素は、光照射により分解されるなどして、副反応を併発するおそれがある。そのため、反応系中にヨウ化水素捕捉剤を配合して、ヨウ化水素を捕捉することが好ましい。
ヨウ化水素捕捉剤としては、エポキシ化合物等の酸素含有化合物を用いることができる。エポキシ化合物としては、マロリー反応を伴う環化反応工程において、生成するヨウ化水素を効率的に捕捉可能なエポキシ化合物であれば、特に限定されない。エポキシ化合物としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1,3-ブタジエンジオキシド、1,2-ヘキシレンオキシド、シクロペンテンオキシド、シクロヘキセンオキシド、シクロペンタデセンオキシド、1,4-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシ-1-メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系エポキシ化合物、塩化アリルオキシド、臭化アリルオキシド、2-(クロロメチル)-1,2-プロピレンオキシド等のハロゲン含有エポキシ化合物、2-フェニルプロピレンオキシド、2,3-ジフェニルエチレンオキシド、1-ベンジルオキシ-2,3-エポキシプロパン等の芳香族系エポキシ化合物、2,3-エポキシプロピルイソプロピルエーテル、イソホロンオキシド等のエポキシ化合物を挙げることができる。
マロリー反応を伴う環化反応工程は、溶媒の存在下で行うことが好ましい。溶媒としては、原料としての含フッ素ジスチルベン化合物を溶解可能であるとともに、照射される光に対して透明(光透過率が80%以上)であり、反応に対して不活性な溶媒であれば、特に限定されない。溶媒としては、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、これら3種の異性体(o-キシレン、m-キシレン及びp-キシレン)の混合物、1,3,5-トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、ベンゾトリフルオリド、ヘキサフルオロ-m-キシレン、クロロベンゼン及び1,2-ジクロロベンゼン等の芳香族化合物が挙げられる。これらの中でも、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、これら3異性体の混合物、1,3,5-トリメチルベンゼンが取扱い易さの点でより好ましい。
ヨウ素(I2)の量は、原料である含フッ素ジスチルベン化合物1モルに対して、2.6モル以上6.0モル以下が好ましく、2.8モル以上4.5モル以下がより好ましい。上記下限値以上であれば、上述したような閉環体の酸化反応を十分に進行させることができ、結果的に、環化反応物の収率を高めることができる。また、上記上限値以下であれば、光照射による芳香族骨格のヨウ素化反応等の副反応が生じ難い。
ヨウ素及びヨウ化水素捕捉剤の存在下で、原料である含フッ素ジスチルベン化合物に光照射する。ここで、照射される光は、環化反応させるために十分な光エネルギーを与えることができる波長の活性エネルギー線であれば、特に限定されない。365nmの波長を含む活性エネルギー線が好ましく、例えば、紫外線が挙げられる。紫外線の照射源としては、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等を用いることができ、中でも高圧水銀ランプが好ましい。照射源より発せられる紫外線は、そのまま照射してもよいし、フィルタ等の波長選択能を有する部材等を用いて、365nmの以外の波長域の光をカットして、照射してもよい。カットする波長域は、例えば、波長365nm未満の短波長領域であり得る。照射する光の強度は、特に限定されないが、例えば、1000lx以上5000lx以下とすることができる。
反応は、0℃以上30℃以下の温度範囲で実施することができる。上記下限値以上であれば、環化反応が完結するまでに要する時間が過度に長くなることを回避できる。また、上記上限値以下であれば、好ましくない副反応の併発を抑制できる。
本工程を実施する際の手順の一例は、以下のとおりである。
光照射源(例えば、高圧水銀ランプ)及び撹拌機(撹拌子)を付した反応器(例えば、パイレックス(登録商標)硝子製反応容器)に、原料、ヨウ化水素捕捉剤及び溶媒を仕込む。
次いで、反応器内の温度を任意の反応温度(例えば、0℃以上30℃以下)に設定して、撹拌を開始する。
高圧水銀ランプによる光照射を開始し、ヨウ素を複数回にわたり分割添加しながら反応を継続させる。
所定の反応時間経過後(例えば、0.5~2時間経過後)に、光照射を停止し、反応液を静置する。
反応系から環化反応物を含む反応液を採取して、液体クロマトグラフィーにて分析し、反応液中に原料が確認されなくなって時点をもって反応終了とする。
環化反応後の反応液に、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム水溶液等の還元剤を添加して、未反応のヨウ素を中和することができる。さらに、中和後の反応液を、飽和塩化ナトリウム水溶液等の洗浄液で洗浄した後、有機層を分液し、得られた有機層を、無水硫酸ナトリウム、無水硫酸マグネシウム等の乾燥剤で乾燥させて、構造式(I)で示される環化化合物を得ることができる。さらに、カラムクロマトグラフィーによる精製を加え、純度を高めることができる。得られる化合物はラセミ体である。
ラセミ体の含フッ素[7]ヘリセン化合物から、光学活性分離カラムを用いて、構造式(I-a)で示される左巻き異性体(M体)及び構造式(I-b)で示される右巻き異性体(P体)をそれぞれ得ることができる。
Rがハロゲン原子(例えば、臭素原子、ヨウ素原子)である、構造式(I)で示される含フッ素[7]ヘリセン化合物におけるハロゲン原子の部位には、置換基を導入することができる。置換基としては、アリール基、アリールオキシ基、アリール基でモノもしくはジ置換アミノ基から選択される置換基が挙げられる。アリール基、アリールオキシ基、アリール基でモノもしくはジ置換されたアミノ基から選択される置換基については、上記Rに関する例示及び好適な例の記載が適用される。
なお、各実施例で得られた物質についての各種の測定及び分析は、以下の方法に従って行った。
ブルカー・バイオスピン社製の核磁気共鳴装置「Bruker Avance III 400型」を用いて測定を行った。
<液体クロマトグラフィー測定>
島津製作所社製「Prominence HPLCシステム」を用いて測定を行った。
<X線構造解析>
単結晶X線構造解析装置「XtaLABmini(Rigaku社製)」を用いて行った。
加速電圧:50kV、12mA、
電力:0.6kW、600WのX線出力、
検出器:MARCURY CCD
<UV測定>
島津製作所社製「紫外可視近赤外分光光度計 UV-3101PC」を用いて測定を行った。
<フォトルミネセンス評価>
日立製作所社製「蛍光分光光度計F-4500」を用いて評価を行った。
<CDスペクトル測定>
日本分光社製「円二色分散計 J-600」を用いて測定を行った。
<旋光度測定>
日本分光社製「旋光計 DIP-140」を用いて測定を行った。
溶媒:クロロホルム、
測定波長:589nm(ナトリウムランプ)
測定温度:25℃
1H NMR(400MHz、CDCl3):δ6.52(d、J=3.9Hz,2H、cis)、6.55(d、J=3.9Hz、2H、cis)、7.09(d、J=24.0Hz、2H、trans)、7.12(d、J=24.0Hz、2H、trans)、7.18-7.22(m、4H)、7.35-7.39(m、4H)、7.45-7.53(m、10H)
アイソマーA:19F NMR(376MHz、CDCl3):δ-110.11(t,J=5.4Hz、4F)、-131.55(quint、J=5.0Hz、2F)
アイソマーB:19F NMR(376MHz、CDCl3):δ-110.20(t,J=5.3Hz、4F)、-131.62(t、J=4.8Hz、2F)
アイソマーC:19F NMR(376MHz、CDCl3):δ-110.28(t,J=5.5Hz、4F)、-131.66(quint、J=5.0Hz、2F)
19F-NMR測定結果から、アイソマーA、B、Cの比率は、アイソマーA:アイソマーB:アイソマーC=20:8:5と見積もられた。
1H NMR(400MHz、CDCl3):δ5.60(d、J=14.5Hz,2H、trans)、6.57(d、J=1.7Hz、2H、cis)、7.18-7.22(m、4H)、7.03-7.22(m、8H)、7.43-7.80(m、8H)
アイソマーA:19F NMR(376MHz、CDCl3):δ-110.15(t,J=5.5Hz、4F)、-131.58(quint、J=5.3Hz、2F)
アイソマーB:19F NMR(376MHz、CDCl3):δ-110.23(t,J=2.6Hz、4F)、-131.62(t、J=4.7Hz、2F)
アイソマーC:19F NMR(376MHz、CDCl3):δ-110.33(t,J=5.5Hz、4F)、-131.66(quint、J=4.5Hz、2F)
19F-NMR測定結果から、アイソマーA、B、Cの比率は、アイソマーA:アイソマーB:アイソマーC=2:3:2と見積もられた。
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=6.44-6.48(m、2H)、6.94-6.98(m、4H)、7.31(d、J=8.7Hz、2H)、7.55(d、J=8.7Hz、2H)、7.73(d、J=8.7Hz、2H)、8.10(d、J=8.7Hz,2H)、8.44(d、J=8.7Hz、2H).
19F NMR(376MHz、CDCl3):δ=-102.24(d、J=263Hz、2F)、-104.99(d、J=263Hz、2F)、-128.05(quint、J=4.2Hz、2F).
UV-vis(CH2Cl2):λmax360nm(ε1.1×104)
Fluorescence spcectrum:λmax441(Φ0.12)
Fr1:[α]25 589 +2600±100
Fr2:[α]25 589 -2700±100
この結果は、CDスペクトルの結果と一致し、Fr1及びFr2の絶対配置が決定された。
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=7.09-7.04(m、4H、)、7.24(d、J=9.0Hz、2H)、7.61(d、J=8.7Hz、2H)、7.86(d、J=8.6Hz、2H)、8.18(d、J=8.4Hz,2H)、8.49(d、J=8.5Hz、2H).
19F NMR(376MHz、CDCl3):δ=-102.24(d、J=263Hz、2F)、-102.33(d、J=263Hz、2F)、-14.97(d、J=263Hz、2F)、-128.14(quint、J=5.1Hz、2F).
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=6.62(d、J=2.2Hz、2H)、6.71-6.68(m、8H)、6.85(dd、J=2.1Hz、J=2.4Hz、2H)、6.90-6.95(m、4H),7.06-7.11(m、8H)、7.33(d、J=8.8Hz、2H)、7.61(quint、J=23.6Hz、4H)、7.97(d、J=9.0Hz,2H).
19F NMR(376MHz、CDCl3):δ=-102.44(d、J=263Hz、2F)、-104.95(d、J=263Hz、2F)、-127.86(quint、J=4.1Hz、2F).
UV-vis(CH2Cl2):λmax469nm(ε6.2×103)
Fluorescence spcectrum:λmax582(Φ0.10)
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