JP7188698B2 - フッ素置換基を有するヘリセン類の製法 - Google Patents

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Description

本発明は、含フッ素[7]ヘリセン化合物及びその製造方法に関する。
従来より、芳香環がらせん状に結合した化合物として、様々なヘリセン化合物が合成され、報告がなされている。芳香環の数としては、5個のペンタヘリセンから、最近では、14個のテトラデカヘリセンや16個のヘキサデカヘリセン等の長大なヘリセン化合物も知られている。
芳香環の数が7個のヘプタヘリセンについても報告がなされており、例えば、非特許文献1には、フェナントレンから誘導される1,2-ビス(3-フェナントリル)エチレンに対して、ヨウ素存在下で、光照射を行うことにより、黄色の結晶としてヘプタヘリセンが得られたことが記載されている。
非特許文献2には、ヘリセン骨格の芳香環の一部をヘテロ環構造に変更したアザ[7]ヘリセンが記載されている。具体的には、ジヨードカルバゾールとスチレンを、パラジウム触媒存在下でカップリングさせて、対応するスチルベン化合物に変換し、この化合物に、ヨウ素存在下で、光照射を行うことにより、アザ[7]ヘリセンが合成できた旨の記載がある。
非特許文献3には、ジメチルシラ[7]ヘリセンの合成が記載されている。具体的には、フェニルアセチレン基を2つ有する、9位がケイ素置換されたフルオレン化合物を、塩化白金下で環化させることにより、分子内にアントラセン骨格を形成させてジメチルシラ[7]ヘリセンを合成でき、また、ルミネセンス現象を発現する旨の記載がある。
非特許文献4には、含フッ素[7]-チアヘリセンが記載されている。この文献には、この物質について、紫外光を照射すると、閉環反応が起こり、7個の環が連なったらせん構造に変換されるが、可視光を照射すると、開環反応が起こり、元の分子構造に戻ることが記載され、ジアリールエテン誘導体のフォトクロミズム材料としての評価がなされている。
一方、特許文献1及び2、ならびに非特許文献5には、含フッ素窒素複素環化合物、含フッ素縮合多環芳香族化合物として、フェナントロリン化合物、フェナントレン化合物を、マロリー反応を利用して合成したことが記載されている。具体的には、1,2-ジ(2-ブロモピリジル)ヘキサフルオロシクロペンテン、1,2-ジ(3-ブロモフェニル)ヘキサフルオロシクロペンテン及び1,2-ジ(4-ブロモフェニル)ヘキサフルオロシクロペンテン等のビアリール化合物を有機溶媒に溶解し、得られた溶液に酸化剤を添加した後、溶液に光を照射することにより、ビアリール化合物の芳香環同士を結合させて、フェナントロリン化合物、フェナントレン化合物に変換することが記載されている。これらの文献には、上記化合物をポリマー合成に応用し、有機発光素子の発光材料、電気化学素子の電極材料等への展開を図ることも記載されている。また、これらの含フッ素芳香族化合物は、π電子共役性を十分に発現し、有機溶媒に対する溶解性が高いので、成膜性に優れることも言及されている。
特開2016-60722号公報 特開2016-84448号公報
M.Flammang-Barbieux et al.、"SYNTHESIS OF HEPTAHELICENE(1) BENZO[c]PHENANTHRO[4,3-g]PHENANTHRENE"、Tetrahedron Letters、1967年、Vol.8、p.743-744 G.M.Upadhyay et al.、"Synthesis of carbazole derived aza[7]helicenes"、Tetrahedron Letters、2014年、Vol.55、p.5394-5399 H.Oyama et al.、"Facile Synthetic Route to Highly Luminescent Sila[7]helicene"、Organic Letters、2013年、Vol.15、No.9、p.2104-2107 T.B.Norsten et al.、"Reversible [7]-Thiahelicene Formation Using a 1,2-Dithienylcyclopentene Photochrome"、Journal of American Chemical Society、2001年、Vol.123、p.7447-7448 H.Fukumoto et al.、"Efficient Synthesis of Fluorinated Phenanthrene Monomers Using Mallory Reaction and Their Copolymerization"、2017年、Macromolecules、Vol.50、No.3、p.865-871
本発明は、上記を背景になされたものであり、新規な含フッ素[7]ヘリセン化合物及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、含フッ素の5員環化合物に、スチルベン骨格を有する官能基を結合した化合物(以下「含フッ素ジスチルベン化合物」ともいう。)を原料にして、光反応による環化反応を検討したところ、分子内に新しい芳香環が3つ一挙に構築され、[7]ヘリセン構造を有する新規な含フッ素化合物に変換できることを見出した。
また、本発明者らは、得られた含フッ素[7]ヘリセン化合物を光学分割することにより、光学活性な含フッ素[7]ヘリセン化合物が得られることを見出した。
ここで、原料である含フッ素ジスチルベン化合物は、フッ素原子を有する5員環構造を骨格に持つ化合物であるため、フッ素原子の強い電子求引性により、スチルベン骨格上の電子密度が低下し、環化反応に供する原料としては非常に不利であるようにも考えられる。しかしながら、本発明者らが詳細な検討を行ったところ、かかる含フッ素ジスチルベン化合物であっても、非常に円滑に環化反応を進行させることが可能なことを見出した。
本発明は、上記の知見の下なされたものであり、本発明によれば、構造式(I)で示される含フッ素[7]ヘリセン化合物が提供される。構造式(I)で示される含フッ素[7]ヘリセン化合物はラセミ体である。
Figure 0007188698000001
(ここで、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基又はアリール基でモノもしくはジ置換されたアミノ基を表す。)
また、本発明によれば、構造式(I-a)又は(I-b)で示される含フッ素[7]ヘリセン化合物が提供される。構造式(I-a)で示される含フッ素[7]ヘリセン化合物は、左巻き異性体(M体)であり、構造式(I-b)で示される含フッ素[7]ヘリセン化合物は、右巻き異性体(P体)である。
Figure 0007188698000002
(ここで、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基又はアリール基でモノもしくはジ置換されたアミノ基を表す。)
さらに、本発明によれば、
ヨウ素及びヨウ化水素捕捉剤の存在下で、構造式(II)で示される含フッ素ジスチルベン化合物に対して光照射を行い、環化させる工程を含む、
上記の構造式(I)で示される含フッ素[7]ヘリセン化合物の製造方法が提供される。
Figure 0007188698000003
(ここで、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基又はアリール基でモノもしくはジ置換されたアミノ基を表す。)
また、本発明によれば、
ヨウ素及びヨウ化水素捕捉剤の存在下で、構造式(II)で示される含フッ素ジスチルベン化合物に対して光照射を行い、環化させる工程、及び
得られた環化反応物を光学分割する工程を含む、
上記の構造式(I-a)又は(I-b)で示される含フッ素[7]ヘリセン化合物の製造方法が提供される。
Figure 0007188698000004
(ここで、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基又はアリール基でモノもしくはジ置換されたアミノ基を表す。)
さらに、本発明によれば、
ヨウ素及びヨウ化水素捕捉剤の存在下で、構造式(II’)で示される含フッ素ジスチルベン化合物に対して光照射を行い、環化させる工程、及び
得られた環化反応物と、アリールホウ素化合物、アルカリ金属のアリールオキシド又はアリール基でモノもしくはジ置換されたアミンを反応させる工程
を含む、Rがアリール基、アリールオキシ基又はアリール基でモノもしくはジ置換されたアミノ基である、上記の構造式(I)で示される含フッ素[7]ヘリセン化合物の製造方法が提供される。
Figure 0007188698000005
(ここで、R’は、それぞれ独立して、ハロゲン原子を表す。)
また、本発明によれば、ヨウ素及びヨウ化水素捕捉剤の存在下で、構造式(II’)で示される含フッ素ジスチルベン化合物に対して光照射を行い、環化させる工程、
得られた環化反応物と、アリールホウ素化合物、アルカリ金属のアリールオキシド又はアリール基でモノもしくはジ置換されたアミンを反応させる工程、及び
得られた反応物を光学分割する工程
を含む、Rがアリール基、アリールオキシ基又はアリール基でモノもしくはジ置換されたアミノ基である、上記の構造式(I-a)又は(I-b)で示される含フッ素[7]ヘリセン化合物の製造方法が提供される。
Figure 0007188698000006
(ここで、R’は、それぞれ独立して、ハロゲン原子を表す。)
さらに、本発明によれば、ヨウ素及びヨウ化水素捕捉剤の存在下で、構造式(II’)で示される含フッ素ジスチルベン化合物に対して光照射を行い、環化させる工程
環化反応物を光学分割する工程、及び
光学分割した環化反応物と、アリールホウ素化合物、アルカリ金属のアリールオキシド又はアリール基でモノもしくはジ置換されたアミンを反応させる工程
を含む、Rがアリール基、アリールオキシ基又はアリール基でモノもしくはジ置換されたアミノ基である、上記の構造式(I-a)又は(I-b)で示される含フッ素[7]ヘリセン化合物の製造方法が提供される。
Figure 0007188698000007
(ここで、R’は、それぞれ独立して、ハロゲン原子を表す。)
本発明によれば、新規な含フッ素[7]ヘリセン化合物が提供される。本発明に係る
含フッ素[7]ヘリセン化合物は、ラセミ体、左巻き異性体(M体)、右巻き異性体(P体)として提供される。本発明に係る含フッ素[7]ヘリセン化合物は、フッ素を含むため、フッ素非含有の[7]ヘリセン化合物に対して、溶媒への溶解性が向上していることが推測され、広範囲の溶媒の適用が期待される。この化合物はまた、耐酸化性が高く、劣化し難いことが推測され、耐久性の高い材料として、特に、偏光材料、n型半導体材料等への応用が期待される。さらに、本発明に係る含フッ素[7]ヘリセン化合物は、光ルミネセンス現象を発現できる化合物であることが確認されたため、発光材料への展開も期待される。本発明によれば、これらの新規な含フッ素[7]ヘリセン化合物を簡便な方法で製造することができる。
実施例2における含フッ素[7]ヘリセン化合物(4)を光学分割して得られた各成分に関するCDスペクトルの測定結果である。 実施例2における含フッ素[7]ヘリセン化合物(4)を光学分割して得られた各成分に関する単結晶X線構造解析により推定される結晶構造である。
〔含フッ素[7]ヘリセン化合物〕
本発明によれば、上記構造式(I)で示される含フッ素[7]ヘリセン化合物が提供される。この化合物はラセミ体である。
構造式(I)におけるRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基又はアリール基でモノもしくはジ置換されたアミノ基を表す。2つのRは、好ましくは同じである。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子である。
アリール基としては、炭素原子数6~25のアリール基が挙げられ、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントラセニル基、テトラセニル基、ペンタセニル基、クリセニル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、ピセニル基等であり、中でもフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、テトラセニル基、クリセニル基が好ましい。
アリールオキシ基としては、炭素原子数6~25のアリールオキシ基が挙げられ、例えば、フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラセニルオキシ基、フェナントレンオキシ基、クリセンオキシ基、ピレンオキシ基等であり、中でも、フェノキシ基、ナフチルオキシ基、アントラセニルオキシ基、フェナントレンオキシ基が好ましい。
アリール基でモノもしくはジ置換されたアミノ基としては、アリール基でジ置換されたアミノ基が好ましい。アリール基でジ置換されたアミノ基におけるアリール基は、同じであっても、異なっていてもよい。アリール基については、上記アリール基の例示及び好適な例の記載が適用される。アリール基でモノもしくはジ置換されたアミノ基としては、ジフェニルアミノ基、フェニルナフチルアミノ基、フェニルアントラセニルアミノ基、ジナフチルアミノ基等が挙げられ、中でも、ジフェニルアミノ基、フェニルナフチルアミノ基、フェニルアントラセニルアミノ基が好ましい。
構造式(I)としては、2つのRが同じであり、水素原子、臭素原子、ジフェニルアミノ基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基である含フッ素[7]ヘリセン化合物が好ましい。
〔含フッ素[7]ヘリセン化合物の製造方法〕
<原料>
構造式(I)で示される含フッ素[7]ヘリセン化合物の製造における原料としては、構造式(II)で示される含フッ素ジスチルベン化合物(含フッ素ジスチルベン化合物)を用いることができる。含フッ素ジスチルベン化合物のスチルベン骨格の構築には、ウィッティッヒ反応(Wittig reaction)を用いることができ、例えば、Organic Reactions、1965年、Vol.14、Chapter3“THE WITTIG REACTION”に記載の方法が挙げられる。
具体的には、構造式(II)で示される含フッ素ジスチルベン化合物は、構造式(III)で示されるベンズアルデヒド化合物を、ホスホニウム化合物(例えば、ベンジルトリフェニルホスホニウムブロミド等)と、強塩基(例えば、ナトリウムアミド、t-ブトキシカリウム、n-ブチルリチウム等)の存在下に、反応させることにより合成することができる。多くの場合、構造式(III)で示される含フッ素ジスチルベン化合物の二重結合部位の立体配置がシス-シス、シス-トランス、トランス-トランス配置の3種である幾何異性体が生成するが、それら幾何異性体を分離することなく、次工程の環化反応に処することができる。
Figure 0007188698000008
(ここで、
Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基又はアリール基でモノもしくはジ置換されたアミノ基を表し、
Xは、ハロゲン原子を表す。)
<環化反応工程>
環化反応工程では、構造式(II)で示される含フッ素ジスチルベン化合物を環化反応させて、構造式(I)で示される含フッ素[7]ヘリセン化合物を得ることができる。環化反応工程には、マロリー反応(Mallory reaction)を用いることができる。
マロリー反応を伴う環化反応工程では、ヨウ素及びヨウ化水素捕捉剤の存在下で、構造式(II)で示される含フッ素ジスチルベン化合物に対して光照射を行い、分子内で環化させる。環化は、溶媒の存在下で行うことが好ましい。
(1)酸化剤としてのヨウ素
ヨウ素(I)は、マロリー反応を伴う環化反応工程において酸化剤として作用する。より詳細には、まず、光照射により、含フッ素ジスチルベン化合物に含まれる、芳香環同士の間で閉環反応が起こり、閉環体が形成される。ヨウ素は、これらの閉環体を酸化する酸化剤として作用し、芳香環の2位又は3位の水素原子と反応してヨウ化水素を生成させる。生成したヨウ化水素は、環化反応物から遊離する。反応系中に存在する遊離ヨウ化水素は、光照射により分解されるなどして、副反応を併発するおそれがある。そのため、反応系中にヨウ化水素捕捉剤を配合して、ヨウ化水素を捕捉することが好ましい。
(2)ヨウ化水素捕捉剤
ヨウ化水素捕捉剤としては、エポキシ化合物等の酸素含有化合物を用いることができる。エポキシ化合物としては、マロリー反応を伴う環化反応工程において、生成するヨウ化水素を効率的に捕捉可能なエポキシ化合物であれば、特に限定されない。エポキシ化合物としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1,3-ブタジエンジオキシド、1,2-ヘキシレンオキシド、シクロペンテンオキシド、シクロヘキセンオキシド、シクロペンタデセンオキシド、1,4-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシ-1-メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系エポキシ化合物、塩化アリルオキシド、臭化アリルオキシド、2-(クロロメチル)-1,2-プロピレンオキシド等のハロゲン含有エポキシ化合物、2-フェニルプロピレンオキシド、2,3-ジフェニルエチレンオキシド、1-ベンジルオキシ-2,3-エポキシプロパン等の芳香族系エポキシ化合物、2,3-エポキシプロピルイソプロピルエーテル、イソホロンオキシド等のエポキシ化合物を挙げることができる。
これらの中でも、脂肪族炭化水素系エポキシ化合物が好ましく、中でも、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1,2-ヘキシレンオキシド、シクロペンテンオキシド及びシクロヘキセンオキシドが、取扱い易さ及び経済性の観点でより好ましい。
(3)溶媒
マロリー反応を伴う環化反応工程は、溶媒の存在下で行うことが好ましい。溶媒としては、原料としての含フッ素ジスチルベン化合物を溶解可能であるとともに、照射される光に対して透明(光透過率が80%以上)であり、反応に対して不活性な溶媒であれば、特に限定されない。溶媒としては、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、これら3種の異性体(o-キシレン、m-キシレン及びp-キシレン)の混合物、1,3,5-トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、ベンゾトリフルオリド、ヘキサフルオロ-m-キシレン、クロロベンゼン及び1,2-ジクロロベンゼン等の芳香族化合物が挙げられる。これらの中でも、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、これら3異性体の混合物、1,3,5-トリメチルベンゼンが取扱い易さの点でより好ましい。
(4)各成分の添加(使用)量
ヨウ素(I)の量は、原料である含フッ素ジスチルベン化合物1モルに対して、2.6モル以上6.0モル以下が好ましく、2.8モル以上4.5モル以下がより好ましい。上記下限値以上であれば、上述したような閉環体の酸化反応を十分に進行させることができ、結果的に、環化反応物の収率を高めることができる。また、上記上限値以下であれば、光照射による芳香族骨格のヨウ素化反応等の副反応が生じ難い。
ヨウ素は、ヨウ素の添加(使用)量の全部の量(以下、「全ヨウ素添加量」ともいう。)を、反応開始時点の前に、一括で反応器内に添加してもよいし、反応開始時点を挟んで、複数回に分割して反応器内に添加してもよいし、反応開始時点より前の時点から、反応開始時点の後の時点までの所定の期間にわたって少量ずつ連続的に添加してもよい。ここで、反応開始時点とは、原料、酸化剤、光照射等、反応に必要な全ての要素がそろった時点をいうこととする。
ヨウ素は、全ヨウ素添加量の少なくとも一部を反応開始時点の後に添加することが好ましい。これにより、光照射により励起されたヨウ素が、含フッ素ジスチルベン化合物等に含まれる芳香環をヨウ素化する等の副反応を効果的に抑制することができる。また、反応開始時点の前に、反応器内にヨウ素を一括添加した場合のように、反応器内におけるヨウ素濃度が一時的に高まり、ヨウ素によって照射された光の大部分が吸収され、マロリー反応の効率が低下することを回避できる。反応開始時点の後に添加するヨウ素の量は、全ヨウ素添加量を100質量%として、30質量%以上70質量%以下であることが好ましい。具体的には、反応開始時点の前に、全ヨウ素添加量の一部(例えば、30質量%以上70質量%以下)を反応器に添加し、反応開始時点から所定時間(例えば、0.5時間又は全反応時間の1/5相当の時間)経過後に、全ヨウ素添加量の残部を添加してもよい。
ヨウ化水素捕捉剤の量は、ヨウ素(I)1モルに対して、2モル以上50モル以下が好ましく、8モル以上35モル以下がより好ましい。上記下限値以上であれば、副生成物であるヨウ化水素を充分に捕捉することができ、副反応を効果的に抑制することができる。また、上記上限値以下であれば、光照射及びヨウ化水素等の作用により、過剰量のヨウ化水素捕捉剤が重合反応するといった望ましくない反応を十分抑制することができる。
溶媒の量は、原料である含フッ素ジスチルベン化合物1gに対して、500ml以上5000ml以下であることが好ましい。上記下限値以上であれば、反応系内の反応性成分の濃度が過度に高くならず、副生成物であるヨウ化水素とその他の成分との接触頻度が過度に高まることが回避でき、副反応の発生を十分に低減又は抑制することができる。また、上記上限値以下であれば、反応系が過度に希薄にならず、反応完了までの時間が過度に長くなることを回避することができる。
(5)光照射
ヨウ素及びヨウ化水素捕捉剤の存在下で、原料である含フッ素ジスチルベン化合物に光照射する。ここで、照射される光は、環化反応させるために十分な光エネルギーを与えることができる波長の活性エネルギー線であれば、特に限定されない。365nmの波長を含む活性エネルギー線が好ましく、例えば、紫外線が挙げられる。紫外線の照射源としては、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ等を用いることができ、中でも高圧水銀ランプが好ましい。照射源より発せられる紫外線は、そのまま照射してもよいし、フィルタ等の波長選択能を有する部材等を用いて、365nmの以外の波長域の光をカットして、照射してもよい。カットする波長域は、例えば、波長365nm未満の短波長領域であり得る。照射する光の強度は、特に限定されないが、例えば、1000lx以上5000lx以下とすることができる。
照射時間は、反応規模、基質(原料)の濃度にもより、変動させることができ、0.5時間以上20時間以下とすることができ、2時間以上10時間以下が好ましい。照射時間が上記下限値以上であれば、反応を充分に進行させることができ、原料を環化反応物に充分に変換することができる。また、上記上限値以下であれば、過剰照射に起因する副反応が充分に抑制できる。
(6)反応条件
反応は、0℃以上30℃以下の温度範囲で実施することができる。上記下限値以上であれば、環化反応が完結するまでに要する時間が過度に長くなることを回避できる。また、上記上限値以下であれば、好ましくない副反応の併発を抑制できる。
反応時間は、例えば、反応系から環化反応物を含む反応液を採取して、液体クロマトグラフィーにて分析し、反応液中に原料が確認されなくなった時点を反応終了時点とし、反応開始時点からの時間を求めることで決定できる。例えば、反応時間は、反応の規模や使用する反応装置にもよるが、0.5時間以上20時間以下であり得る。
(7)反応の手順の一例
本工程を実施する際の手順の一例は、以下のとおりである。
光照射源(例えば、高圧水銀ランプ)及び撹拌機(撹拌子)を付した反応器(例えば、パイレックス(登録商標)硝子製反応容器)に、原料、ヨウ化水素捕捉剤及び溶媒を仕込む。
次いで、反応器内の温度を任意の反応温度(例えば、0℃以上30℃以下)に設定して、撹拌を開始する。
高圧水銀ランプによる光照射を開始し、ヨウ素を複数回にわたり分割添加しながら反応を継続させる。
所定の反応時間経過後(例えば、0.5~2時間経過後)に、光照射を停止し、反応液を静置する。
反応系から環化反応物を含む反応液を採取して、液体クロマトグラフィーにて分析し、反応液中に原料が確認されなくなって時点をもって反応終了とする。
(8)後処理
環化反応後の反応液に、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム水溶液等の還元剤を添加して、未反応のヨウ素を中和することができる。さらに、中和後の反応液を、飽和塩化ナトリウム水溶液等の洗浄液で洗浄した後、有機層を分液し、得られた有機層を、無水硫酸ナトリウム、無水硫酸マグネシウム等の乾燥剤で乾燥させて、構造式(I)で示される環化化合物を得ることができる。さらに、カラムクロマトグラフィーによる精製を加え、純度を高めることができる。得られる化合物はラセミ体である。
(9)光学活性体の取得
ラセミ体の含フッ素[7]ヘリセン化合物から、光学活性分離カラムを用いて、構造式(I-a)で示される左巻き異性体(M体)及び構造式(I-b)で示される右巻き異性体(P体)をそれぞれ得ることができる。
光学活性分離カラムとしては、アミロース誘導体、セルロース誘導体がシリカゲル等の担体に担持された充填剤を使用したカラムが挙げられ、液体クロマトグラフィー等に接続して用いることができる。展開溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒と、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルキルアルコールとの混合溶媒を用いることができる。炭化水素系溶媒と低級アルキルアルコールとの混合比は、分割する含フッ素[7]ヘリセン化合物の構造にもよるが、低級アルキルアルコールに対し、体積で、炭化水素系溶媒を100倍以上とすることができ、好ましくは300倍以上であり、また、1000倍以下とすることができ、好ましくは600倍以下である。光学分割後、展開溶媒を留去することにより、光学活性体である右巻き異性体(P)及び左巻き異性体(M)をそれぞれ得ることができる。
(10)含フッ素[7]ヘリセン化合物への芳香族基導入
Rがハロゲン原子(例えば、臭素原子、ヨウ素原子)である、構造式(I)で示される含フッ素[7]ヘリセン化合物におけるハロゲン原子の部位には、置換基を導入することができる。置換基としては、アリール基、アリールオキシ基、アリール基でモノもしくはジ置換アミノ基から選択される置換基が挙げられる。アリール基、アリールオキシ基、アリール基でモノもしくはジ置換されたアミノ基から選択される置換基については、上記Rに関する例示及び好適な例の記載が適用される。
アリール基を導入する場合、対応するアリールホウ素化合物(例えば、アリールボロン酸)を、パラジウム触媒存在下で、構造式(I’)の含フッ素[7]ヘリセン化合物と反応させて、炭素-炭素結合を生成させることで導入することができる(鈴木カップリング反応)。例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基を導入する場合、それぞれ、フェニルボロン酸、ナフタレンボロン酸、アントラセンボロン酸を用いることができる。
アリールオキシ基又はアリール基でモノもしくはジ置換されたアミノ基を導入する場合、それぞれ対応するアルカリ金属のアリールオキシド又はアリール基でモノもしくはジ置換されたアミンをパラジウム触媒存在下に反応させて、炭素-酸素結合又は炭素-窒素結合を生成させることで導入することができる(バックバルド-ハートウィッグクロスカップリング反応(Buchwald-Hartwig cross coupling))。例えば、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基を導入する場合、それぞれ、アルカリ金属のフェノキシド(例えば、ナトリウムフェノキシド等)、アルカリ金属のナフチルオキシド(例えば、カリウムナフチルオキシド)等を用いることができる。ジフェニルアミノ基、フェニルナフチルアミノ基、ジナフチルアミノ基、フェニルアントラセニルアミノ基を導入する場合、それぞれ、ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、ジナフチルアミン、フェニルアントラニルアミンを用いることができる。
上記置換基導入後、構造式(I)で示される含フッ素[7]ヘリセン化合物を光学分割してもよい。
同様にして、Rがハロゲン原子(例えば、臭素、ヨウ素原子)である、構造式(Iーa)又は(Iーb)で示される光学活性体におけるハロゲン原子の部位に、置換基(アリール基、アリールオキシ基、アリール基でモノもしくはジ置換アミノ基から選択される置換基等)を導入してもよい。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例によってその範囲を限定されるものではない。
なお、各実施例で得られた物質についての各種の測定及び分析は、以下の方法に従って行った。
<NMR測定>
ブルカー・バイオスピン社製の核磁気共鳴装置「Bruker Avance III 400型」を用いて測定を行った。
<液体クロマトグラフィー測定>
島津製作所社製「Prominence HPLCシステム」を用いて測定を行った。
<X線構造解析>
単結晶X線構造解析装置「XtaLABmini(Rigaku社製)」を用いて行った。
加速電圧:50kV、12mA、
電力:0.6kW、600WのX線出力、
検出器:MARCURY CCD
<UV測定>
島津製作所社製「紫外可視近赤外分光光度計 UV-3101PC」を用いて測定を行った。
<フォトルミネセンス評価>
日立製作所社製「蛍光分光光度計F-4500」を用いて評価を行った。
<CDスペクトル測定>
日本分光社製「円二色分散計 J-600」を用いて測定を行った。
<旋光度測定>
日本分光社製「旋光計 DIP-140」を用いて測定を行った。
溶媒:クロロホルム、
測定波長:589nm(ナトリウムランプ)
測定温度:25℃
[製造例1]1,2-ビススチルベン化合物(2)の合成
Figure 0007188698000009
撹拌子を付した容量100mlのシュレンク型フラスコに、ベンジルトリフェニルホスホニウムブロミド(0.45g、1mmol)、t-ブトキシカリウム(0.12g、1mmol)、及び、乾燥テトラヒドロフラン(20ml)を入れ、系内をアルゴン雰囲気下に置いた。内容物を0℃で2時間撹拌後、乾燥テトラヒドロフラン(1ml)に、アルデヒド体(1)(0.1g、0.25mmol)を溶解した溶液を添加し、20℃でさらに24時間撹拌した。フラスコ内に、飽和塩化アンモニウム水溶液(10ml)を加えて反応を停止させ、ジクロメタンを用いて水層を3回抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=8:2)により精製し、1,2-ビススチルベン化合物(2)を黄色の固体として0.14g得た(収率:98%)。1,2-ビススチルベン化合物(2)は、二重結合部位の幾何異性体混合物(以下、アイソマーA、B、Cという。)であった。これら異性体は分離せず、次の反応に用いた。
1,2-ビススチルベン化合物(2)について、NMR測定を実施した。結果を以下に示す。
H NMR(400MHz、CDCl):δ6.52(d、J=3.9Hz,2H、cis)、6.55(d、J=3.9Hz、2H、cis)、7.09(d、J=24.0Hz、2H、trans)、7.12(d、J=24.0Hz、2H、trans)、7.18-7.22(m、4H)、7.35-7.39(m、4H)、7.45-7.53(m、10H)
アイソマーA:19F NMR(376MHz、CDCl):δ-110.11(t,J=5.4Hz、4F)、-131.55(quint、J=5.0Hz、2F)
アイソマーB:19F NMR(376MHz、CDCl):δ-110.20(t,J=5.3Hz、4F)、-131.62(t、J=4.8Hz、2F)
アイソマーC:19F NMR(376MHz、CDCl):δ-110.28(t,J=5.5Hz、4F)、-131.66(quint、J=5.0Hz、2F)
19F-NMR測定結果から、アイソマーA、B、Cの比率は、アイソマーA:アイソマーB:アイソマーC=20:8:5と見積もられた。
[製造例2]1,2-ビススチルベン化合物(3)の合成
Figure 0007188698000010
撹拌子を付した容量100mlのシュレンク型フラスコに、(4-ブロモベンジル)トリフェニルホスホニウムブロミド(0.53g、1mmol)、及び、乾燥テトラヒドロフラン(20ml)を入れ、系内をアルゴン雰囲気下に置いた。フラスコに、n-ブチルリチウムのヘキサン溶液(濃度1.5mol/L、0.67ml、1.0mmol)を加え、0℃で2時間撹拌した。次に、乾燥テトラヒドロフラン(1ml)にアルデヒド体(1)(0.1g、0.25mmol)を溶解した溶液を添加し、20℃でさらに24時間撹拌した。フラスコ内に、飽和塩化アンモニウム水溶液(10ml)を加えて反応を停止させ、ジクロメタンを用いて水層を3回抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=8:2)により精製し、示される1,2-ビススチルベン化合物(3)を黄色の固体として0.15g得た(収率:84%)。1,2-ビススチルベン化合物(3)は、二重結合部位の幾何異性体混合物(アイソマーA、B、Cという。)であった。これら異性体は分離せず、次の反応に用いた。
1,2-ビススチルベン化合物(3)について、NMR測定を実施した。結果を以下に示す。
H NMR(400MHz、CDCl):δ5.60(d、J=14.5Hz,2H、trans)、6.57(d、J=1.7Hz、2H、cis)、7.18-7.22(m、4H)、7.03-7.22(m、8H)、7.43-7.80(m、8H)
アイソマーA:19F NMR(376MHz、CDCl):δ-110.15(t,J=5.5Hz、4F)、-131.58(quint、J=5.3Hz、2F)
アイソマーB:19F NMR(376MHz、CDCl):δ-110.23(t,J=2.6Hz、4F)、-131.62(t、J=4.7Hz、2F)
アイソマーC:19F NMR(376MHz、CDCl):δ-110.33(t,J=5.5Hz、4F)、-131.66(quint、J=4.5Hz、2F)
19F-NMR測定結果から、アイソマーA、B、Cの比率は、アイソマーA:アイソマーB:アイソマーC=2:3:2と見積もられた。
[実施例1]含フッ素[7]ヘリセン化合物(4)の合成
Figure 0007188698000011
撹拌子を付した容量200mlのシュレンク型フラスコに、製造例1で合成した1,2-ビススチルベン化合物(2)(0.05g、0.1mmol)、ヨウ素(0.075g、0.3mmol)、及び、トルエン(200ml)を入れ、系内をアルゴン雰囲気下に置いた。次に、1,2-エポキシブタン(0.3ml、3.4mmol)を加え、内容物を撹拌させながら、25℃で、超高圧水銀ランプ(500W、ウシオ社製)から紫外光(365nm)を5時間照射した。その後、反応混合物を飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液、蒸留水、飽和食塩水、蒸留水で1回ずつ洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒をロータリーエバポレーターにて留去し、液体クロマトグラフィー、及び、シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=8:2)で精製したところ、黄色の固体として含フッ素[7]ヘリセン化合物(4)が12mg得られた(収率23%)。
含フッ素[7]ヘリセン化合物(4)について、NMR測定、UV測定、フォトルミネセンス評価を実施した。結果を以下に示す。
H NMR(400MHz,CDCl):δ=6.44-6.48(m、2H)、6.94-6.98(m、4H)、7.31(d、J=8.7Hz、2H)、7.55(d、J=8.7Hz、2H)、7.73(d、J=8.7Hz、2H)、8.10(d、J=8.7Hz,2H)、8.44(d、J=8.7Hz、2H).
19F NMR(376MHz、CDCl):δ=-102.24(d、J=263Hz、2F)、-104.99(d、J=263Hz、2F)、-128.05(quint、J=4.2Hz、2F).
UV-vis(CHCl):λmax360nm(ε1.1×10
Fluorescence spcectrum:λmax441(Φ0.12)
[実施例2]含フッ素[7]ヘリセン化合物(4)の光学分割
Figure 0007188698000012
ラセミ体の含フッ素[7]ヘリセン化合物(4)(10mg)をヘキサン:イソプロパノール(体積比で、500:1)に溶解し、光学活性分離カラム(ダイセル社製、キラルパックIAカラム:長さ500mm×内径50mm、粒子径20μm)に、流速3ml/minの速度で流し(検出波長:254nm)、光学分割を行った。
分割した各成分(Fr1及びFr2)について、塩化メチレンを溶媒としてCD(円偏光ニ色性)スペクトルを測定した。測定結果を図1に示す。CDスペクトル結果と、時間依存密度汎関数法を用いたCDスぺクトルのシミュレーション結果の比較により、フラクション1(Fr1)が右巻き異性体(P体)、フラクション2(Fr2)が左巻き異性体(M体)と決定された。
次に、得られた各成分(Fr1、Fr2)をクロロホルムに溶解し、比旋光度を測定した。結果を以下に示す。
Fr1:[α]25 589 +2600±100
Fr2:[α]25 589 -2700±100
この結果は、CDスペクトルの結果と一致し、Fr1及びFr2の絶対配置が決定された。
得られた各成分(Fr1、Fr2)についての単結晶X線構造解析の結果から推定される結晶構造を図2に示す。
[実施例4]含フッ素[7]ヘリセン化合物(5)の合成
Figure 0007188698000013
撹拌子を付した容量200mlのシュレンク型フラスコに、製造例2で合成した1,2-ビススチルベン化合物(3)(0.05g、0.07mmol)、ヨウ素(0.054g、0.21mmol)、及び、トルエン(150ml)を入れ、系内をアルゴン雰囲気下に置いた。次に、1,2-エポキシブタン(0.21ml、2.4mmol)を加え、内容物を撹拌させながら、25℃で、超高圧水銀ランプ(500W、ウシオ社製)から紫外光(365nm)を8時間照射した。その後、反応混合物を飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液、蒸留水、飽和食塩水、蒸留水で1回ずつ洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒をロータリーエバポレーターにて留去し、液体クロマトグラフィー、及び、シリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=8:2)で精製したところ、黄色の固体として含フッ素[7]ヘリセン化合物(5)が5mg得られた(収率10%)。
含フッ素[7]ヘリセン化合物(5)について、NMR測定を実施した。結果を以下に示す。
H NMR(400MHz,CDCl):δ=7.09-7.04(m、4H、)、7.24(d、J=9.0Hz、2H)、7.61(d、J=8.7Hz、2H)、7.86(d、J=8.6Hz、2H)、8.18(d、J=8.4Hz,2H)、8.49(d、J=8.5Hz、2H).
19F NMR(376MHz、CDCl):δ=-102.24(d、J=263Hz、2F)、-102.33(d、J=263Hz、2F)、-14.97(d、J=263Hz、2F)、-128.14(quint、J=5.1Hz、2F).
[実施例5]含フッ素[7]ヘリセン化合物(6)の合成
Figure 0007188698000014
撹拌子を付した容量50mlのシュレンク型フラスコに、実施例4で合成した含フッ素[7]ヘリセン化合物(5)(0.05g、0.07mmol)、ジフェニルアミン(0.05g、0.3mmol)、ビスジベンジリデンアセトンパラジウム(12mg、0.021mmol)、2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)-2’、4’、6’-トリイソプロピル-1’,1-ビフェニル(10mg、0.021mmol)、t-ブトキシナトリウム(40mg、0.42mmol)、及び、乾燥トルエン(10ml)を入れ、系内を窒素雰囲気下に置いた。フラスコを100℃で24時間加熱撹拌した。フラスコを室温まで冷却後、飽和塩化アンモニウム水溶液(10ml)を加えて反応を停止させ、ジクロメタンを用いて水層を3回抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒 ヘキサン:酢酸エチル=7:3)、及び、液体クロマトグラフィーにより精製し、含フッ素[7]ヘリセン化合物(6)をオレンジ色の固体として15mg得た(収率:25%)。
含フッ素[7]ヘリセン化合物(6)について、NMR測定を実施した。結果を以下に示す。
H NMR(400MHz,CDCl):δ=6.62(d、J=2.2Hz、2H)、6.71-6.68(m、8H)、6.85(dd、J=2.1Hz、J=2.4Hz、2H)、6.90-6.95(m、4H),7.06-7.11(m、8H)、7.33(d、J=8.8Hz、2H)、7.61(quint、J=23.6Hz、4H)、7.97(d、J=9.0Hz,2H).
19F NMR(376MHz、CDCl):δ=-102.44(d、J=263Hz、2F)、-104.95(d、J=263Hz、2F)、-127.86(quint、J=4.1Hz、2F).
UV-vis(CHCl):λmax469nm(ε6.2×10
Fluorescence spcectrum:λmax582(Φ0.10)
実施例1及び5の結果から、含フッ素[7]ヘリセン化合物は光ルミネセンス現象を誘起する材料であることが確認された。
本発明に係る新規な含フッ素[7]ヘリセン化合物(ラセミ体、左巻き異性体(M体)、右巻き異性体(P体))は、フッ素を含むため、フッ素非含有の[7]ヘリセン化合物に対して、溶媒への溶解性が向上していることが推測され、広範囲の溶媒の適用が期待される。また、耐酸化性が高く、劣化し難いことが推測され、耐久性の高い材料として、特に、偏光材料、n型半導体材料等への応用が期待される。さらに、本発明に係る含フッ素[7]ヘリセン化合物は、光ルミネセンス現象を発現できる化合物であることが確認され、発光材料への展開も期待される。本発明によれば、これらの新規な含フッ素[7]ヘリセン化合物を簡便な方法で製造することができる。

Claims (7)

  1. 構造式(I)で示される、含フッ素[7]ヘリセン化合物。
    Figure 0007188698000015
    (ここで、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基又はアリール基でモノもしくはジ置換されたアミノ基を表す。)
  2. 構造式(I-a)又は(I-b)で示される、含フッ素[7]ヘリセン化合物。
    Figure 0007188698000016
    (ここで、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基又はアリール基でモノもしくはジ置換されたアミノ基を表す。)
  3. ヨウ素及びヨウ化水素捕捉剤の存在下で、構造式(II)で示される含フッ素ジスチルベン化合物に対して光照射を行い、環化させる工程を含む、
    請求項1に記載の構造式(I)で示される含フッ素[7]ヘリセン化合物の製造方法。
    Figure 0007188698000017
    (ここで、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基又はアリール基でモノもしくはジ置換されたアミノ基を表す。)
  4. ヨウ素及びヨウ化水素捕捉剤の存在下で、構造式(II)で示される含フッ素ジスチルベン化合物に対して光照射を行い、環化させる工程、及び
    得られた環化反応物を光学分割する工程を含む、
    請求項2に記載の構造式(I-a)又は(I-b)で示される含フッ素[7]ヘリセン化合物の製造方法。
    Figure 0007188698000018
    (ここで、Rは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アリール基、アリールオキシ基又はアリール基でモノもしくはジ置換されたアミノ基を表す。)
  5. ヨウ素及びヨウ化水素捕捉剤の存在下で、構造式(II’)で示される含フッ素ジスチルベン化合物に対して光照射を行い、環化させる工程、及び
    得られた環化反応物と、アリールホウ素化合物、アルカリ金属のアリールオキシド又はアリール基でモノもしくはジ置換されたアミンを反応させる工程
    を含む、Rがアリール基、アリールオキシ基又はアリール基でモノもしくはジ置換されたアミノ基である、請求項1記載の構造式(I)で示される含フッ素[7]ヘリセン化合物の製造方法。
    Figure 0007188698000019
    (ここで、R’は、それぞれ独立して、ハロゲン原子を表す。)
  6. ヨウ素及びヨウ化水素捕捉剤の存在下で、構造式(II’)で示される含フッ素ジスチルベン化合物に対して光照射を行い、環化させる工程、
    得られた環化反応物と、アリールホウ素化合物、アルカリ金属のアリールオキシド又はアリール基でモノもしくはジ置換されたアミンを反応させる工程、及び
    得られた反応物を光学分割する工程
    を含む、Rがアリール基、アリールオキシ基又はアリール基でモノもしくはジ置換されたアミノ基である、請求項2記載の構造式(I-a)又は(I-b)で示される含フッ素[7]ヘリセン化合物の製造方法。
    Figure 0007188698000020
    (ここで、R’は、それぞれ独立して、ハロゲン原子を表す。)
  7. ヨウ素及びヨウ化水素捕捉剤の存在下で、構造式(II’)で示される含フッ素ジスチルベン化合物に対して光照射を行い、環化させる工程
    得られた環化反応物を光学分割する工程、及び
    光学分割した環化反応物と、アリールホウ素化合物、アルカリ金属のアリールオキシド又はアリール基でモノもしくはジ置換されたアミンを反応させる工程
    を含む、Rがアリール基、アリールオキシ基又はアリール基でモノもしくはジ置換されたアミノ基である、請求項2に記載の構造式(I-a)又は(I-b)で示される含フッ素[7]ヘリセン化合物の製造方法。
    Figure 0007188698000021
    (ここで、R’は、それぞれ独立して、ハロゲン原子を表す。)
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