JP2020044593A - 歯車加工装置及び歯車加工方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】歯車の歯の側面に対してねじれ角の異なる複数の歯面を切削加工で形成する場合において、複数の歯面を高精度に加工できる歯車加工装置及び歯車加工方法を提供する。【解決手段】工作物Wの軸線Lwの平行線に対して歯切り工具40の軸線Lを傾斜させた状態で、歯切り工具40と工作物Wとを同期回転させつつ、工作物Wの軸線L方向に沿って歯切り工具40を工作物Wに対して相対的に送ることにより、工作物Wを切削加工し、歯車を創成する歯車加工装置1であって、一回の送り動作の中で第一歯面及び第二歯面を連続して切削加工すると共に、第一歯面の切削加工時と第二歯面の切削加工時とで補正角を変更する、歯車加工装置1及び歯車加工方法。【選択図】図8

Description

本発明は、歯車加工装置及び歯車加工方法に関する。
車両に用いられるトランスミッションには、円滑な変速操作を行うためにシンクロメッシュ機構が設けられる。図9に示すように、キー式のシンクロメッシュ機構110は、メーンシャフト111、メーンドライブシャフト112、クラッチハブ113、キー114、スリーブ115、メーンドライブギヤ116、クラッチギヤ117、シンクロナイザーリング118等を備える。なお、メーンドライブギヤ116、クラッチギヤ117、シンクロナイザーリング118は、スリーブ115を挟んで両側に配置される。
メーンシャフト111とメーンドライブシャフト112は、同軸配置される。メーンシャフト111には、クラッチハブ113がスプライン嵌合され、メーンシャフト111とクラッチハブ113は共に回転する。クラッチハブ113の外周の3か所には、キー114が図略のスプリングで支持される。スリーブ115の内周には、内歯(スプライン)115aが形成され、スリーブ115はキー114とともにクラッチハブ113の外周に形成される図略のスプラインに沿って回転軸線LL方向に摺動する。
メーンドライブシャフト112には、メーンドライブギヤ116が嵌合され、メーンドライブギヤ116のスリーブ115側には、テーパコーン117bが突設されたクラッチギヤ117が一体形成される。スリーブ115とクラッチギヤ117の間には、シンクロナイザーリング118が配置される。クラッチギヤ117の外歯117a及びシンクロナイザーリング118の外歯118aは、スリーブ115の内歯115aと噛み合わせ可能に形成される。シンクロナイザーリング118の内周は、テーパコーン117bの外周と摩擦係合可能なテーパ状に形成される。
次に、シンクロメッシュ機構110の図9の左方に動作する場合を説明するが、図9の右方に動作する場合も同様である。図10Aに示すように、スリーブ115及びキー114は、図略のシフトレバーの操作により、図示矢印の回転軸線LL方向に移動する。キー114は、シンクロナイザーリング118を回転軸線LL方向に押して、シンクロナイザーリング118の内周をテーパコーン117bの外周に押し付ける。これにより、クラッチギヤ117、シンクロナイザーリング118及びスリーブ115は、同期回転を開始する。
図10Bに示すように、キー114は、スリーブ115に押し下げられてシンクロナイザーリング118を回転軸線LL方向にさらに押し付けるので、シンクロナイザーリング118の内周とテーパコーン117bの外周との密着度は増し、強い摩擦力が発生してクラッチギヤ117、シンクロナイザーリング118及びスリーブ115は同期回転する。クラッチギヤ117の回転数とスリーブ115の回転数が完全に同期すると、シンクロナイザーリング118の内周とテーパコーン117bの外周との摩擦力が消滅する。
そして、スリーブ115及びキー114が図示矢印の回転軸線LL方向にさらに移動すると、キー114はシンクロナイザーリング118の溝118bに嵌って止まるが、スリーブ115はキー114の凸部114aを越えて移動し、スリーブ115の内歯115aがシンクロナイザーリング118の外歯118aと噛み合う。
図10Cに示すように、スリーブ115は図示矢印の回転軸線LL方向にさらに移動し、スリーブ115の内歯115aがクラッチギヤ117の外歯117aと噛み合う。以上により変速が完了する。以上のようなシンクロメッシュ機構110では、走行中におけるクラッチギヤ117の外歯117aとスリーブ115の内歯115aとのギヤ抜けを防止するギヤ抜け防止部120が設けられている。
具体的には、図11及び図12に示すように、スリーブ115の内歯115aには、テーパ状のギヤ抜け防止部120が設けられる。一方、破線で示す各クラッチギヤ117の外歯117aには、ギヤ抜け防止部120にテーパ嵌合するテーパ状のギヤ抜け防止部117cが設けられる。
なお、図12では、クラッチギヤ117の外歯117aは、ギヤ抜け防止部120側のみを示す。また、図12に示すギヤ抜け防止部120は、内歯115aの頂面におけるスリーブ115の回転軸線LL方向の中央の仮想点に対し点対称形状で形成される。以下の説明では、図12に示すスリーブ115の内歯115aの左側の側面を「左側面115A」と称し、スリーブ115の内歯115aの右側の側面を「右側面115B」と称す。
左側面115Aは、左歯面115bと、左歯面115bよりもスリーブ115の回転軸線一方側Dfに設けられる左テーパ歯面121と、左歯面115bと左テーパ歯面121との間に設けられる左サブ歯面121aとを備える。左テーパ歯面121は、左歯面115bとはねじれ角が異なる歯面である。左サブ歯面121aは、左歯面115b及び左テーパ歯面121に連続する歯面であり、左サブ歯面121aのねじれ角は、左歯面115b及び左テーパ歯面121とは異なる。
同様に、右側面115Bは、右歯面115cと、右歯面115cよりもスリーブ115の回転軸線一方側Dfに設けられる右テーパ歯面122と、右歯面115cと右テーパ歯面122との間に設けられる右サブ歯面122aとを備える。右テーパ歯面122は、右歯面115cとはねじれ角が異なる歯面である。右サブ歯面122aは、右歯面115c及び右テーパ歯面122に連続する歯面であり、右サブ歯面122aのねじれ角は、右歯面115c及び右テーパ歯面122とは異なる。
そして、左テーパ歯面121、左サブ歯面121a、右テーパ歯面122及び右サブ歯面122aが、ギヤ抜け防止部120を構成する。なお、ギヤ抜け防止は、左テーパ歯面121とギヤ抜け防止部117cとがテーパ嵌合することにより達成される。
このように、スリーブ115の内歯115aの構造は、複雑である。一方、スリーブ115は、大量生産が必要な部品である。そのため、一般的に、スリーブ115の内歯115aは、ブローチ加工やギヤシェーパ加工等により形成されるのに対し、ギヤ抜け防止部120は、ローリング加工(特許文献1及び2参照)により形成される。しかし、ローリング加工は、塑性加工であり、加工精度が低くなる傾向にある。よって、加工精度を高めるには、切削加工が望ましい。この点に関し、特許文献3には、ギヤ抜け防止部120を切削加工により形成する技術が開示されている。
実開平6−61340号公報 特開2005−152940号公報 特開2018−79558号公報
特許文献3に記載の技術において、左サブ歯面121a(右サブ歯面122a)は、左テーパ歯面121(右テーパ歯面122)に対する切削動作を行った後、工具を左側面115A(右側面115B)から離す際に自ずと形成される。その結果、切削加工でギヤ抜け防止部120を形成した場合に、ローリング加工でギヤ抜け防止部120を形成した場合と比べて、左サブ歯面121a及び右サブ歯面122aのねじれ角が大きくなる。この点に関し、従来において、左サブ歯面121a及び右サブ歯面122aは、左テーパ歯面121及び右テーパ歯面122と比べて、ねじれ角の寸法管理が重要視されていなかった。
しかしながら、左サブ歯面121a(右サブ歯面122a)のねじれ角が大きすぎる場合に、シンクロメッシュ機構が円滑に動作せず、不良品となるおそれがあることが判明した。そこで、ギヤ抜け防止部120を切削加工で形成する場合に、左サブ歯面121a(右サブ歯面122a)についても寸法管理を行いたいとの要請がある。
本発明は、歯車の歯の側面に対してねじれ角の異なる複数の歯面を切削加工で形成する場合において、複数の歯面を高精度に加工できる歯車加工装置及び歯車加工方法を提供することを目的とする。
本発明の歯車加工装置は、工作物の軸線の平行線に対して歯切り工具の軸線を傾斜させた状態で、歯切り工具と工作物とを同期回転させつつ、前記工作物の軸線方向に沿って前記歯切り工具を前記工作物に対して相対的に送ることにより、前記工作物を切削加工し、歯車を創成する歯車加工装置である。前記歯車が有する複数の歯の各々の側面は、第一歯面と、前記第一歯面に連続して形成され、前記第一歯面とはねじれ角が異なる第二歯面とを備える。前記歯車加工装置は、前記工作物及び前記歯切り工具の回転を制御すると共に、前記工作物に対する前記歯切り工具の相対的な送り動作を制御する加工制御部を備える。
前記各々の側面に対して前記歯切り工具が切削する切削点とし、切削加工を開始した時点での前記切削点を始点とし、前記始点から前記歯切り工具を所定の送り量だけ送った時点での前記切削点を移動点と定義し、所定の基準同期回転状態で前記工作物及び前記歯切り工具を回転させながら、前記始点から前記所定の送り量だけ送った時点での前記切削点を基準移動点と定義し、前記始点から前記歯切り工具を前記所定の送り量だけ送る際に、前記基準移動点に対して前記移動点の位相をずらすときに設定する前記工作物の周方向一方側への位相ずれ角度を補正角と定義すると、前記加工制御部は、一回の前記送り動作の中で前記第一歯面及び前記第二歯面を連続して切削加工すると共に、前記第一歯面の切削加工時と前記第二歯面の切削加工時とで前記補正角を変更する。
また、本発明の歯車加工方法は、工作物の軸線の平行線に対して歯切り工具の軸線を傾斜させた状態で、歯切り工具と工作物とを同期回転させつつ、前記工作物の軸線方向に沿って前記歯切り工具を前記工作物に対して相対的に送ることにより、前記工作物を切削加工し、歯車を創成する歯車加工方法である。前記歯車が有する複数の歯の各々の側面は、第一歯面と、前記第一歯面に連続して形成され、前記第一歯面とはねじれ角が異なる第二歯面とを備える。
前記各々の側面に対して前記歯切り工具が切削する切削点とし、切削加工を開始した時点での前記切削点を始点とし、前記始点から前記歯切り工具を所定の送り量だけ送った時点での前記切削点を移動点と定義し、所定の基準同期回転状態で前記工作物及び前記歯切り工具を回転させながら、前記始点から前記所定の送り量だけ送った時点での前記切削点を基準移動点と定義し、前記始点から前記歯切り工具を前記所定の送り量だけ送る際に、前記基準移動点に対して前記移動点の位相をずらすときに設定する前記工作物の周方向一方側への位相ずれ角度を補正角と定義すると、前記歯車加工方法は、一回の送り動作の中で前記第一歯面及び前記第二歯面を連続して切削加工し、前記第一歯面の切削加工時と前記第二歯面の切削加工時とで前記補正角を変更する。
本発明の歯車加工装置及び歯車加工方法によれば、加工制御部は、一回の送り動作の中で第一歯面及び第二歯面を連続して切削加工する。そして、加工制御部は、第一歯面の切削加工時と第二歯面の切削加工時とで補正角を変更する。これにより、歯車加工装置1は、第一歯面及び第二歯面の双方について寸法管理を行うことができるので、第一歯面及び第二歯面を高精度に加工することができる。
本発明の一実施形態に係る歯車加工装置の斜視図である。 歯切り工具の概略構成を径方向から見た図であり、一部を断面で示す。 加工制御部のブロック図である。 斜め上方から見たスプライン歯を部分的に示した図である。 軸線方向から工作物を部分的に示した図である。 右テーパ歯面及び右サブ歯面を切削加工する際の工作物の回転速度設定値と送り速度設定値との関係を示すグラフである。 スプライン歯を径方向から見た状態を模式的に表した図である。 工作物に対する歯切り工具の相対位置を模式的に表した図であり、右テーパ歯面の切削加工を開始する前の状態を示す。 工作物に対する歯切り工具の相対位置を模式的に表した図であり、右テーパ歯面の切削加工が終了した時点の状態を示す。 工作物に対する歯切り工具の相対位置を模式的に表した図であり、右サブ歯面の切削加工が終了した時点の状態を示す。 加工制御部により実行される特殊歯形加工処理を示すフローチャートである。 スリーブを有するシンクロメッシュ機構を示す断面図である。 図9に示すシンクロメッシュ機構の作動開始前の状態を示す断面図である。 図9に示すシンクロメッシュ機構の作動中の状態を示す断面図である。 図9に示すシンクロメッシュ機構の作動完了後の状態を示す断面図である。 スリーブのギヤ抜け防止部を示す斜視図である。 図11に示すスリーブのギヤ抜け防止部を径方向から状態を模式的に表した図である。
(1.歯車加工装置1の概略構成)
以下、本発明に係る歯車加工装置及び歯車加工方法を適用した実施形態について、図面を参照しながら説明する。まず、図1を参照して、本発明の一実施形態における歯車加工装置1の概略構成を説明する。
図1に示すように、歯車加工装置1は、相互に直交する3つの直進軸(X軸、Y軸及びZ軸)と2つの回転軸(A軸及びC軸)を駆動軸として有するマシニングセンタである。歯車加工装置1は、ベッド10と、工具保持装置20と、工作物保持装置30と、加工制御部100とを主に備える。
ベッド10は、床上に配置される。ベッド10の上面には、X軸方向へ延びる一対のX軸ガイドレール11と、Z軸方向へ延びる一対のZ軸ガイドレール12とが設けられる。工具保持装置20は、コラム21と、X軸駆動装置22(図3参照)と、サドル23と、Y軸駆動装置24(図3参照)と、工具主軸25と、工具主軸モータ26(図3参照)とを備える。なお、図1では、X軸駆動装置22、Y軸駆動装置24、及び、工具主軸モータ26の図示が省略されている。
コラム21は、一対のX軸ガイドレール11に案内されながらX軸方向へ移動可能に設けられる。X軸駆動装置22は、ベッド10に対し、コラム21をX軸方向へ送るねじ送り装置である。また、コラム21の側面には、Y軸方向に沿って延びる一対のY軸ガイドレール27が設けられ、サドル23は、コラム21に対し、一対のY軸ガイドレール27に案内されながらY軸方向へ移動可能に設けられる。Y軸駆動装置24は、サドル23をY軸方向へ送るねじ送り装置である。
工具主軸25は、サドル23に対し、Z軸方向に平行な軸線まわりに回転可能に支持される。工具主軸25の先端には、工作物Wの加工に用いる歯切り工具40が着脱可能に装着される。歯切り工具40は、コラム21の移動に伴ってX軸方向へ移動し、サドル23の移動に伴ってY軸方向へ移動する。工具主軸モータ26は、工具主軸25を回転させるための駆動力を付与するモータであり、サドル23の内部に収容される。
工作物保持装置30は、送り台31と、Z軸駆動装置32(図3参照)と、チルト装置33と、工作物回転装置34とを備える。なお、図1では、Z軸駆動装置32の図示が省略されている。送り台31は、ベッド10に対し、一対のZ軸ガイドレール12に案内されながらZ軸方向へ移動可能に設けられる。Z軸駆動装置32は、送り台31をZ軸方向へ送るねじ送り装置である。
チルト装置33は、一対のテーブル支持部35と、チルトテーブル36と、A軸モータ37(図3参照)とを備える。一対のテーブル支持部35は、送り台31の上面に設置され、チルトテーブル36は、一対のテーブル支持部35に対し、X軸に平行なA軸まわりに揺動可能に支持される。A軸モータ37は、チルトテーブル36をA軸まわりに揺動させるための駆動力を付与するモータであり、テーブル支持部35の内部に収容される。
工作物回転装置34は、回転テーブル38と、C軸モータ39(図3参照)とを備える。回転テーブル38は、チルトテーブル36の底面に対し、A軸に直交するC軸まわりに回転可能に設置される。そして、回転テーブル38には、工作物Wを固定する保持部38aが設けられる。C軸モータ39は、回転テーブル38を回転させるための駆動力を付与するモータであり、チルトテーブル36の下面に設けられる。
歯車加工装置1は、歯車加工を行う際に、チルトテーブル36を揺動させることにより、工作物Wの軸線Lwの平行線に対して歯切り工具40の軸線Lを傾斜させる。その状態で、歯車加工装置1は、歯切り工具40と工作物Wとを同期回転させつつ、工作物Wの軸線Lw方向への歯切り工具40の相対的な送り動作を行うことにより、工作物Wに切削加工し、歯車を創成する。
(2.歯切り工具40の概略構成について)
次に、図2を参照して、歯切り工具40の概略構成について説明する。図2に示すように、歯切り工具40は、ねじれ角を有する複数の工具刃41を備える。複数の工具刃41は、歯切り工具40の軸線L方向から見た形状がインボリュート曲線形状に形成される。各々の工具刃41には、歯切り工具40の先端側(図2下側)を向く端面42に、歯切り工具40の軸線L方向に直交する平面に対して角度γだけ傾斜したすくい角を有するすくい面43が設けられる。また、各々の工具刃41は、歯切り工具40の軸線Lと平行な直線に対し、角度δだけ傾斜した前逃げ角が設けられる。
(3.加工制御部100)
次に、図3を参照して、加工制御部100について説明する。加工制御部100は、工作物W及び歯切り工具40の回転を制御すると共に、工作物Wに対する歯切り工具40の相対的な送り動作を行う。図3に示すように、加工制御部100は、工具回転制御部101と、工作物回転制御部102と、チルト制御部103と、位置制御部104と、加工プログラム記憶部105と、演算部106とを備える。
工具回転制御部101は、工具主軸モータ26の駆動制御を行い、工具主軸25に装着された歯切り工具40を回転させる。工作物回転制御部102は、C軸モータ39の駆動制御を行い、回転テーブル38に固定された工作物Wを軸線Lw周り(C軸周り)に回転させる。チルト制御部103は、A軸モータ37の駆動制御を行い、チルトテーブル36を揺動させる。これにより、回転テーブル38に固定された工作物Wは、A軸まわりに揺動し、歯切り工具40の軸線Lが工作物Wの軸線Lwの平行線に対して傾斜する。
位置制御部104は、X軸駆動装置22の駆動制御を行い、コラム21をX軸方向へ移動させると共に、Y軸駆動装置24の駆動制御を行い、サドル23をY軸方向へ移動させる。これにより、工具保持装置20に保持された歯切り工具40は、工作物保持装置30に保持された工作物Wに対し、X軸方向及びY軸方向へ相対移動する。また、位置制御部104は、Z軸駆動装置32の駆動制御を行い、送り台31をZ軸方向へ移動させる。これにより、工作物保持装置30に保持された工作物Wは、工具保持装置20に保持された歯切り工具40に対してZ軸方向へ相対移動し、工作物Wに対する歯切り工具40の相対的な送り動作が行われる。
加工プログラム記憶部105は、切削加工に用いる加工プログラムを記憶する。演算部106は、加工プログラム記憶部105に記憶された加工プログラムに基づき、工作物Wに対して歯切り工具40が切削加工を行う加工軌跡を特定する。
演算部106は、特定した加工軌跡に基づき、交差角α、補正角β、及び、工作物Wに対する歯切り工具40の相対的な送り量Fを導出する。なお、交差角αは、工作物Wの軸線Lwに対する歯切り工具40の軸線Lの傾斜角度であり、工作物Wに形成する歯面の形状や工具刃41のねじれ角等に基づいて決定される。そして、チルト制御部103は、演算部106が演算した交差角αに基づき、工作物Wの軸線Lwに対する歯切り工具40の軸線Lの傾斜角度が交差角αとなるようにチルトテーブル36を揺動させる。
(4.補正角β)
次に、補正角βについて説明する。本実施形態において、補正角βは、以下のように定義される。即ち、歯切り工具40が工作物Wを切削する位置を「切削点C」とした場合、切削加工を開始する時点での切削点Cを「始点S」とし、始点Sから歯切り工具40を所定の送り量Fだけ送った時点での切削点Cを「移動点M」と定義する。また、所定の基準同期回転状態で工作物W及び歯切り工具40を回転させながら、始点Sから所定の送り量Fだけ送った時点での切削点Cを「基準移動点MR」と定義する。そして、始点Sから歯切り工具40を所定の送り量Fだけ送る際に、基準移動点MRに対して移動点Mの位相をずらすときに設定する工作物Wの周方向一方側への位相ずれ角度を「補正角β」と定義する。
ここで、「基準同期回転状態」とは、送り動作に伴って移動する切削点Cが、工作物Wに形成する歯車の歯のねじれ方向に沿って移動するように、工作物W及び歯切り工具40を同期回転させた状態のことである。即ち、工作物Wにはすば歯車を形成する場合、基準同期回転状態とは、工作物Wに形成する歯車のねじれ方向に沿って切削点Cが移動するように工作物W及び歯切り工具40を同期回転させた状態のことである。一方、工作物Wに平歯車を形成する場合、基準同期回転状態とは、工作物Wの軸線Lw方向に沿って切削点Cが移動するように工作物W及び歯切り工具40を同期回転させた状態のことである。
つまり、加工制御部100は、基準同期回転状態で工作物W及び歯切り工具40を回転させながら送り動作を行うことで、工作物Wに形成する歯車の歯すじ方向に沿って切削点Cを移動させることができる。これに対し、加工制御部100は、工作物W及び歯切り工具40を基準同期回転状態とは異なる回転速度比で回転させた状態で送り動作を行うことで、切削点Cを歯すじ方向とは異なる方向へ移動させることができる。
また、本実施形態において、加工制御部100は、歯切り工具40の回転速度を一定としつつ、工作物Wの回転速度を変えることにより、工作物Wと歯切り工具40との回転速度比(以下において単に「回転速度比」と称す)を変更する。この場合、加工制御部100は、基準同期回転状態よりも工作物Wの回転速度を上げることで、移動点Mの位相を、基準移動点MRの位相よりも工作物Wの周方向一方側へずらすことができる。その一方、加工制御部100は、基準同期回転状態よりも工作物Wの回転速度を下げることで、移動点Mの位相を、基準移動点MRの位相よりも工作物Wの周方向他方側へずらすことができる。
このように、加工制御部100は歯切り工具40の回転速度を一定としつつ、工作物Wの回転速度を変えることで、回転速度比の変更を円滑に行うことができる。なお、本実施形態では、歯切り工具40の回転速度を一定としつつ、工作物Wの回転速度を変えているが、工作物Wの回転速度を一定としつつ、歯切り工具40の回転速度を変えてもよい。
またこの場合、送り動作での送り量Fが大きくなるほど、基準移動点MRに対する移動点Mの位相ずれ角度が大きくなる。従って、回転速度比は、補正角βと送り量Fとに基づいて決定する必要がある。このように、加工制御部100は、加工プログラムに基づいて加工軌跡を特定した後、加工軌跡から補正角β及び送り量Fを導出し、補正角β及び送り量Fを用いて回転速度比を演算により求める。
続いて、図4A及び図4Bを参照しながら補正角βについての具体例を説明する。ここでは、図11及び図12に示すギヤ抜け防止部120の右テーパ歯面122及び右サブ歯面122aを形成する場合について説明する。
図4A及び図4Bには、工作物Wの内周面にスプライン歯115a0を形成した後の状態が図示されている。このスプライン歯115a0には、左側面115A及び右側面115Bの全域に亘って左歯面115b及び右歯面115cが形成されている。そして、歯車加工装置1は、一点鎖線で示す加工軌跡に沿って切削点Cを移動させることにより、スプライン歯115a0の右歯面115cに右テーパ歯面122及び右サブ歯面122aを形成する。なお、図4A及び図4Bでは、図面を見やすくするために工作物Wの端面にハッチングを付している。
図4A及び図4Bに示すように、スプライン歯115a0の歯すじ方向は、工作物Wの軸線Lwに平行である。加工軌跡は、右テーパ歯面122を形成するときに切削点Cが移動する第一軌跡P1と、右サブ歯面122aを形成するときに切削点Cが移動する第二軌跡P2とを含み、第一軌跡P1及び第二軌跡P2は、工作物Wの軸線Lwに対して傾斜している。
そこで、演算部106は、まず、第一軌跡P1を切削加工する際の回転速度比を演算により求める。具体的に、演算部106は、第一軌跡P1を特定した後、第一軌跡P1に基づいて始点S1及び移動点M1を導出する。そして、演算部106は、始点S1及び移動点M1に基づき、第一軌跡P1に沿って切削点Cを移動させる際の送り量F1を導出し、始点S1及び送り量F1に基づいて基準移動点MR1を導出する。その後、演算部106は、基準移動点MR1と移動点M1とに基づいて補正角β1を導出する。なお、移動点M1は、基準移動点MR1よりも工作物Wにおける周方向一方側(図4B左側)に位置するので、補正角β1は、正の値となる。その後、演算部106は、補正角β1及び送り量Fを用いて回転速度比を演算により求める。
同様に、演算部106は、第二軌跡P2を形成する際の回転速度比を演算する。この場合、演算部106は、第二軌跡P2に基づいて第二軌跡P2の始点S2及び移動点M2を特定する。なお、第二軌跡P2において、始点S2は、第一軌跡P1の移動点M1と同位置である。そして、演算部106は、基準移動点MR2と移動点M2とに基づいて補正角β2を導出すると共に、始点S2と移動点M2と基づいて送り量F2を導出する。なお、移動点M2は、基準移動点MR2よりも工作物Wにおける周方向他方側(図4B右側)に位置するので、補正角β2は、負の値となる。その後、演算部106は、補正角β2及び送り量F2を用いて回転速度比を演算により求める。
(5.歯車加工装置1の動作)
ここで、図5から図7Bを参照して、右歯面115cに右テーパ歯面122及び右サブ歯面122aを形成する際の歯車加工装置1の動作を説明する。なお、図5に示すグラフの横軸は、送り動作を開始してからの経過時間を示す。また、t1は、右テーパ歯面122を切削加工する際の送り動作を終了した時間を示し、t2は、右サブ歯面122aを切削加工する際の送り動作を開始した時間を示す。
また、図6には、スプライン歯115a0が形成された後の工作物Wを図示している。なお、図6には、一部のスプライン歯115a0のみを図示し、右テーパ歯面122及び右サブ歯面122aを形成する際の加工軌跡である第一軌跡P1及び第二軌跡と、左テーパ歯面121及び左サブ歯面121aを形成する際の加工軌跡である第三軌跡P3及び第四軌跡P4とを一点鎖線で図示する。
図5及び図7Aに示すように、右テーパ歯面122を形成する際に、加工制御部100は、演算部106が予め演算した回転速度比で工作物W及び歯切り工具40を回転させながら、工作物Wにおける回転軸線一方側Dfから回転軸線他方側Dbへの送り動作を行い、切削点Cを始点S1から移動点M1に移動させる。なお、補正角β1が正の値であるため、工作物回転制御部102は、工作物Wの回転速度Vw1を、基準同期回転状態での回転速度Vw0よりも高速にする。またこのとき、加工制御部100は、送り速度を一定(Vf)にする。
図5及び図7Bに示すように、加工制御部100は、右テーパ歯面122の切削加工する際の送り動作を終了した時点(図5に示す時間t1)で、送り動作を一旦停止し、工作物Wの回転速度をVw0に設定する。つまり、歯車加工装置1は、工作物W及び歯切り工具40を基準同期回転状態とする。そして、演算部106は、第二軌跡P2に沿って切削点Cを移動させるための回転速度比を演算により求める。
図5及び図7Cに示すように、加工制御部100は、回転速度比の演算が終了した時点(図5に示すt2)で、演算により求めた回転速度比に基づき、工作物Wの回転速度をVw0からVw2に変更する。そして、加工制御部100は、回転軸線一方側Dfから回転軸線他方側Dbへの送り動作を再開し、切削点Cを移動点M2に移動させる。なお、補正角の値β2が負の値であるため、工作物回転制御部102は、工作物Wの回転速度Vw2を基準同期回転状態での回転速度Vw0よりも低速にする。またこのとき、加工制御部100は、送り速度を一定(Vf)にする。
そして、右サブ歯面122aの切削加工が終了すると、加工制御部100は、工作物W及び歯切り工具40の回転を一旦停止し、歯切り工具40の戻し動作を行う。つまり、加工制御部100は、回転軸線一方側Dfから回転軸線他方側Dbへの歯切り工具40を送り、左テーパ歯面121及び左サブ歯面121aを形成する際の切削開始へ移動させる。そして、加工制御部100は、工作物Wに形成されたスプライン歯115a0と歯切り工具40の工具刃41との位相合わせを行った後に、右テーパ歯面122及び右サブ歯面122aの切削加工と同様の手順で、左テーパ歯面121及び左サブ歯面121aを切削加工する。
このように、加工制御部100は、一回の送り動作の中で右テーパ歯面122及び右サブ歯面122aを連続して切削加工する。そして、加工制御部100は、右テーパ歯面122の切削加工時と右サブ歯面122aの切削加工時とで補正角βを変更する。これにより、歯車加工装置1は、右テーパ歯面122及び右サブ歯面122aの双方について寸法管理を行うことができるので、右テーパ歯面122及び右サブ歯面122aを高精度に加工することができる。
またこの場合において、加工制御部100は、工作物W及び歯切り工具40を回転させた状態で、補正角βの変更を行う。よって、歯車加工装置1は、例えば、歯切り工具40を工作物Wから離して工作物W及び歯切り工具40の回転を一旦停止し、再度位相合わせを行うような場合と比べて、サイクルタイムの短縮を図ることができる。
(6.特殊歯形加工処理)
次に、図8に示すフローチャートを参照して、加工制御部100により実行される特殊歯形加工処理について説明する。特殊歯形加工処理は、工作物Wの内周面にスプライン歯115a0を形成した後、右側面115Bに右テーパ歯面122及び右サブ歯面122aを形成する際に実行される処理である。
図8に示すように、特殊歯形加工処理において、加工制御部100は、最初に、加工プログラム記憶部105に記憶された加工プログラムを読み込む(S1)。そして、加工制御部100は、加工プログラムに基づいて第一軌跡P1及び第二軌跡P2を特定する。その後、加工制御部100は、第一軌跡P1に基づいて交差角α、補正角β1及び送り量F1を導出すると共に、回転速度比を演算により求める(S2)。その後、加工制御部100は、演算により求めた回転速度比で工作物W及び歯切り工具40を回転させながら、回転軸線一方側Dfから回転軸線他方側Dbへの送り動作を行い、右テーパ歯面122を切削加工する(S3:第一切削工程)。
S4の処理は、右テーパ歯面122の切削加工が終了したか否かの判定を行う処理であり、加工制御部100は、右テーパ歯面122の切削加工が終了していなければ(S4:No)、S4の処理を反復して実行する。そして、右テーパ歯面122の切削加工が終了した場合(S4:Yes)、加工制御部100は、送り動作を停止し(S5)、補正角を0度に設定する(S6)。つまり、S5及びS6の処理は、歯車加工装置1は、回転軸線他方側Dbから回転軸線一方側Dfへの送り動作を停止した状態で、工作物W及び歯切り工具40を基準同期回転状態で回転させる処理である。そして、加工制御部100は、第二軌跡P2に基づいて補正角β2及び送り量F2を導出すると共に、回転速度比を演算により求める(S7:補正角変更工程)。なおこのとき、工作物Wの軸線Lwに対する歯切り工具40の軸線Lの傾斜角度は、交差角αのまま維持される。
このように、加工制御部100は、右テーパ歯面122の切削加工を終了してから右サブ歯面122aの切削加工を開始するまでの間、補正角を0度にする。これにより、歯車加工装置1は、右テーパ歯面122の切削加工が終了してから右サブ歯面122aを開始するまでの間に、歯切り工具40が隣接する内歯115aに干渉することを防止できる。また、歯車加工装置1は、切削点Cが加工軌跡から工作物Wの周方向へ逸れた位置に相対移動することを抑制できるので、加工精度の向上を図ることができる。またこのとき、加工制御部100は、右テーパ歯面122の切削加工を終了してから右サブ歯面122aの切削加工を開始するまでの間、送り動作を一時停止する。これにより、歯車加工装置1は、切削点Cが加工軌跡から工作物Wの軸線Lw方向へ逸れた位置に相対移動することを抑制できる。
S7の処理が終了すると、加工制御部100は、演算により求めた回転速度比で工作物W及び歯切り工具40を回転させながら、回転軸線一方側Dfから回転軸線他方側Dbへの送り動作を行い、右サブ歯面122aを切削加工する(S8:第二切削工程)。
S9の処理は、右サブ歯面122aの切削加工が終了したか否かの判定を行う処理であり、加工制御部100は、右サブ歯面122aの切削加工が終了していなければ(S9:No)、S9の処理を反復して実行する。一方、右サブ歯面122aの切削加工が終了した場合(S9:Yes)、加工制御部100は、送り動作を停止し(S10)、工作物W及び歯切り工具40の回転を停止する(S11)。その後、加工制御部100は、回転軸線他方側Dbから回転軸線一方側Dfへの戻し動作を行い(S12)、本処理を終了する。
上記した特殊歯形加工処理が終了すると、加工制御部100は、工作物Wに形成されたスプライン歯115a0と歯切り工具40の工具刃41との位相合わせを行う。その後、加工制御部100は、工作物W及び歯切り工具40を、右テーパ歯面122及び右サブ歯面122aの切削加工時とは反対方向へ回転させながら、左テーパ歯面121及び左サブ歯面121aを切削加工する。なお、左テーパ歯面121及び左サブ歯面121aの切削加工は、特殊歯形加工処理と同様の処理により実行される。
このように、加工制御部100は、右テーパ歯面122及び右サブ歯面122aを連続して切削加工した後、左テーパ歯面121及び左サブ歯面121aの切削加工を連続して行うので、工作物W及び歯切り工具40の回転を停止させる回数を少なくすることができる。よって、歯車加工装置1は、右側面115Bに対してねじれ角の異なる2つの歯面(右テーパ歯面122及び右サブ歯面122a)を切削加工で形成する場合においても、効率よく切削加工を行うことができるので、サイクルタイムの短縮を図ることができる。
なお、上記した特殊歯形加工処理において、右テーパ歯面122及び右サブ歯面122aが一回の送り動作で切削加工される場合を例に挙げて説明したが、複数回の送り動作で右テーパ歯面122及び右サブ歯面122aを行ってもよい。また、上記の例では、右テーパ歯面122及び右サブ歯面122aを形成した後に、左テーパ歯面121及び左サブ歯面121aを形成する場合について説明したが、左テーパ歯面121及び左サブ歯面121aを形成した後に右テーパ歯面122及び右サブ歯面122aを形成してもよい。この場合においても、加工制御部100は、工作物W及び歯切り工具40の回転を停止させる回数を少なくすることができるので、サイクルタイムの短縮を図ることができる。
ここで、歯車加工装置1は、歯切り工具40を用いてスプライン歯115a0の加工を行うことも可能である。この場合、歯車加工装置1は、ブローチ加工やギヤシェーパ加工でスプライン歯115a0を形成する場合と比べて、工作物Wの移動を不要とすることができる。即ち、歯車加工装置1は、スプライン歯115a0を形成した後、工作物保持装置30から工作物Wを取り外さずにギヤ抜け防止部120の加工に移行できるので、ギヤ抜け防止部120の切削加工を開始する前の心出し作業を不要とすることができる。その結果、歯車加工装置1は、サイクルタイムの短縮を図ることができると共に、加工精度の向上を図ることができる。
またこの場合、歯車加工装置1は、スプライン歯115a0を切削加工する際の交差角αを、右テーパ歯面122及び右サブ歯面122aを切削加工する際の歯切り工具40の交差角αと同一角度に設定することができる。この場合、加工制御部100は、上記した特殊歯形加工処理のS2の処理の中で行った交差角の演算を、スプライン歯115a0を切削加工する前に行う。これにより、歯車加工装置1は、スプライン歯115a0の切削加工した後、工作物Wの軸線Lwに対する歯切り工具40の軸線Lの傾斜角度を変更する作業を不要にできるので、サイクルタイムの短縮を図ることができる。
以上説明したように、加工制御部100は、スプライン歯115a0の右側面115Bに右テーパ歯面122及び右サブ歯面122aを形成する場合に、一回の送り動作の中で右テーパ歯面122と右サブ歯面122aとを連続して切削加工する。つまり、歯車加工装置1は、右テーパ歯面122の切削加工時と右サブ歯面122aの切削加工時との双方において、送り動作を行いながら切削加工を行う。
そして、加工制御部100は、右テーパ歯面122の切削加工時と右サブ歯面122aの切削加工時とで補正角βを変更する。これにより、歯車加工装置1は、右テーパ歯面122及び右サブ歯面122aの双方について寸法管理を行うことができるので、右テーパ歯面122及び右サブ歯面122aを高精度に加工することができる。
また、加工制御部100は、右テーパ歯面122の切削加工時と右サブ歯面122aの切削加工時とで歯切り工具40に対する工作物Wの回転速度比を変更することにより、工作物W及び歯切り工具40を回転させた状態を維持しながら、ねじれ角の異なる右テーパ歯面122及び右サブ歯面122aを連続して切削加工することができる。
そして、加工制御部100は、一回の送り動作の中で右テーパ歯面122及び右サブ歯面122aを連続して切削加工を行う際に、右テーパ歯面122の切削加工が終了した時点で補正角βを変更する。この場合において、加工制御部100は、工作物W及び歯切り工具40を回転させた状態で、補正角βの変更を行う。よって、歯車加工装置1は、例えば、歯切り工具40を工作物Wから一旦離し、工作物W及び歯切り工具40を一時停止させる場合と比べて、サイクルタイムの短縮を図ることができる。
また、右テーパ歯面122は、工作物Wの軸線Lwに対して工作物Wの周方向一方側へ傾斜するのに対し、右サブ歯面122aは、軸線Lwに対して工作物Wの周方向他方側へ傾斜する。このような特殊歯形を歯車加工装置1で形成する場合において、加工制御部100は、一回の送り動作の中で右テーパ歯面122及び右サブ歯面122aを連続して切削加工を行い、右テーパ歯面122の切削加工が終了した時点で補正角βを変更する。そして、加工制御部100は、右テーパ歯面122の切削時において補正角βを正の角度に設定しつつ、右サブ歯面122aの切削時において補正角βを負の角度に設定する。よって、加工制御部100は、内歯151が特殊な歯形を有する場合であっても、サイクルタイムの短縮を図ることができると共に、加工精度の向上を図ることができる。
(6.その他)
以上、上記実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。また、上記実施形態では、スプライン歯115a0にギヤ抜け防止部120を形成する場合に本発明を適用する場合について説明したが、ギヤ抜け防止部120を形成する場合以外にも本発明を適用することが可能である。
例えば、本実施形態では、第一歯面(右テーパ歯面122)と第二歯面(右サブ歯面122a)とでねじれ方向が異なるについて説明したが、これに限られるものではない。即ち、第一歯面と第二歯面とのねじれ方向が同一である場合であっても、本発明を適用することができる。この場合、加工制御部100は、第一歯面を形成する場合と第二歯面を形成する場合の双方において、補正角を正の値又は負の値に設定しつつ、第一歯面を形成する場合と第二歯面を形成する場合とで回転速度比を変更することで、ねじれ角の異なる第一歯面及び第二歯面を高精度且つ効率的に形成することができる。
上記実施形態において、加工制御部100は、右テーパ歯面122の切削加工を終了してから右サブ歯面122aの切削加工を開始するまでの間、送り動作を一時停止する場合について説明したが、これに限られるものではない。即ち、加工制御部100は、右テーパ歯面122の切削加工を終了してから右サブ歯面122aの切削加工を開始するまでの間、送り動作を減速しながら行ってもよい。また、加工制御部100は、右テーパ歯面122の切削加工を開始してから右サブ歯面122aの切削加工を終了するまでの間、送り動作を一定速度で行ってもよい。
この場合、加工制御部100は、右テーパ歯面122の切削加工時における回転速度比を演算する際に、右サブ歯面122aの切削加工時における回転速度比を併せて演算することにより、右テーパ歯面122の切削加工を右サブ歯面122aの切削加工を開始するまでの時間を短縮できる。これに加え、歯車加工装置1は、右テーパ歯面122の切削加工を終了してから右サブ歯面122aの切削加工を開始するまでの間に送り動作を減速しながら行う場合には、工作物Wの回転速度を変更している間に切削点Cが加工軌跡から工作物Wの軸線Lw方向へ逸れることを抑制できる。一方、歯車加工装置1は、右テーパ歯面122の切削加工を開始してから右サブ歯面122aの切削加工を終了するまでの間、送り動作を一定速度で行う場合には、送り動作の減速又は停止が行われない分、サイクルタイムの短縮を図ることができる。
1:歯車加工装置、 40:歯切り工具、 100:加工制御部、 106:演算部、 115A:左側面(歯の側面)、 115B:右側面(歯の側面)、 122:右テーパ歯面(第一歯面の一例)、122a:右サブ歯面(第二歯面の一例)、 C:切削点、 F,F1,F2:送り量、 L:工作物の軸線、 Lw:歯切り工具の軸線、 M,M1,M2:移動点、 MR,MR1,MR2:基準移動点、 S,S1,S2:始点、 Vw0,Vw1,Vw2:工作物の回転速度、 W:工作物、 β:補正角、 β1:補正角(第一角度)、 β2:補正角(第二角度)、 S3:第一切削工程、 S7:補正角変更工程、 S8:第二切削工程

Claims (14)

  1. 工作物の軸線の平行線に対して歯切り工具の軸線を傾斜させた状態で、歯切り工具と工作物とを同期回転させつつ、前記工作物の軸線方向に沿って前記歯切り工具を前記工作物に対して相対的に送ることにより、前記工作物を切削加工し、歯車を創成する歯車加工装置であって、
    前記歯車が有する複数の歯の各々の側面は、
    第一歯面と、
    前記第一歯面に連続して形成され、前記第一歯面とはねじれ角が異なる第二歯面と、
    を備え、
    前記歯車加工装置は、前記工作物及び前記歯切り工具の回転を制御すると共に、前記工作物に対する前記歯切り工具の相対的な送り動作を制御する加工制御部を備え、
    前記各々の側面に対して前記歯切り工具が切削する切削点とし、切削加工を開始した時点での前記切削点を始点とし、前記始点から前記歯切り工具を所定の送り量だけ送った時点での前記切削点を移動点と定義し、
    所定の基準同期回転状態で前記工作物及び前記歯切り工具を回転させながら、前記始点から前記所定の送り量だけ送った時点での前記切削点を基準移動点と定義し、
    前記始点から前記歯切り工具を前記所定の送り量だけ送る際に、前記基準移動点に対して前記移動点の位相をずらすときに設定する前記工作物の周方向一方側への位相ずれ角度を補正角と定義すると、
    前記加工制御部は、一回の前記送り動作の中で前記第一歯面及び前記第二歯面を連続して切削加工すると共に、前記第一歯面の切削加工時と前記第二歯面の切削加工時とで前記補正角を変更する、歯車加工装置。
  2. 前記加工制御部は、前記第一歯面の切削加工を終了してから前記第二歯面の切削加工を開始するまでの間、前記送り動作を一時停止する、請求項1に記載の歯車加工装置。
  3. 前記加工制御部は、前記第一歯面の切削加工を終了してから前記第二歯面の切削加工を開始するまでの間、前記送り動作を減速しながら行う、請求項1に記載の歯車加工装置。
  4. 前記加工制御部は、前記第一歯面の切削加工を開始してから前記第二歯面の切削加工を終了するまでの間、前記送り動作を一定速度で行う、請求項1に記載の歯車加工装置。
  5. 前記加工制御部は、前記第一歯面の切削加工を終了してから前記第二歯面の切削加工を開始するまでの間、前記補正角を0度に設定する、請求項2−4の何れか一項に記載の歯車加工装置。
  6. 前記加工制御部は、前記第一歯面の切削時及び前記第二歯面の切削時の何れか一方において前記補正角を正の角度に設定しつつ、前記第一歯面の切削時及び前記第二歯面の切削時の何れか他方において前記補正角を負の角度に設定する、請求項1−5の何れか一項に記載の歯車加工装置。
  7. 前記加工制御部は、前記第一歯面の切削加工時と前記第二歯面の切削加工時とで前記歯切り工具に対する前記工作物の回転速度比を変更する、請求項1−6の何れか一項に記載の歯車加工装置。
  8. 前記加工制御部は、前記第一歯面の切削加工時と前記第二歯面の切削加工時とで、前記工作物及び前記歯切り工具の何れか一方の回転速度を一定としつつ、前記工作物及び前記歯切り工具の何れか他方の回転速度を変更する、請求項7に記載の歯車加工装置。
  9. 工作物の軸線の平行線に対して歯切り工具の軸線を傾斜させた状態で、歯切り工具と工作物とを同期回転させつつ、前記工作物の軸線方向に沿って前記歯切り工具を前記工作物に対して相対的に送ることにより、前記工作物を切削加工し、歯車を創成する歯車加工方法であって、
    前記歯車が有する複数の歯の各々の側面は、
    第一歯面と、
    前記第一歯面に連続して形成され、前記第一歯面とはねじれ角が異なる第二歯面と、
    を備え、
    前記各々の側面に対して前記歯切り工具が切削する切削点とし、切削加工を開始した時点での前記切削点を始点とし、前記始点から前記歯切り工具を所定の送り量だけ送った時点での前記切削点を移動点と定義し、
    所定の基準同期回転状態で前記工作物及び前記歯切り工具を回転させながら、前記始点から前記所定の送り量だけ送った時点での前記切削点を基準移動点と定義し、
    前記始点から前記歯切り工具を前記所定の送り量だけ送る際に、前記基準移動点に対して前記移動点の位相をずらすときに設定する前記工作物の周方向一方側への位相ずれ角度を補正角と定義すると、
    前記歯車加工方法は、一回の送り動作の中で前記第一歯面及び前記第二歯面を連続して切削加工し、前記第一歯面の切削加工時と前記第二歯面の切削加工時とで前記補正角を変更する、歯車加工方法。
  10. 前記歯車加工方法は、
    前記補正角を第一角度に設定した状態で、前記第一歯面を切削する第一切削工程と、
    前記工作物及び前記歯切り工具を回転させながら、前記補正角を前記第一角度から第二角度へ変更する補正角変更工程と、
    前記補正角を前記第二角度に設定した状態で、前記第二歯面を切削する第二切削工程と、
    を備える、請求項9に記載の歯車加工方法。
  11. 前記補正角変更工程は、前記送り動作を停止した状態で行う、請求項10に記載の歯車加工方法。
  12. 前記補正角変更工程は、前記送り動作を減速させながら行う、請求項10に記載の歯車加工方法。
  13. 前記補正角変更工程は、前記送り動作を前記第一切削工程及び前記第二切削工程と同じ速度に設定した状態で行う、請求項10に記載の歯車加工方法。
  14. 前記補正角変更工程は、前記補正角の0度に設定した状態で行う、請求項11−13の何れか一項に記載の歯車加工方法。
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