JP2020041105A - 塩素含有樹脂組成物 - Google Patents
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塩化ビニル樹脂パイプは、通常カーボン含有顔料にて着色され生産されているが、夏場のパイプ温度上昇による曲りを防止する目的で、カーボンを使用しない有機顔料でグレー色を発色させることによりカーボン特有の熱吸収を抑え、パイプの曲りや変形を低減する技術が開発され、用いられている(特許文献1参照)。その他に、無機系遮熱顔料を用いた塩化ビニル系樹脂管が開示されている(特許文献2参照)。
本発明の塩素含有樹脂組成物は、塩素含有樹脂に対して、Fe−Cr系、Fe−Co−Cr系、及び、Bi−Mn系から選ばれる少なくとも1種の無機顔料と過塩素酸化合物とを配合したものである。
以下に、本発明の塩素含有樹脂組成物を構成する各成分について順に説明する。
本発明において塩素含有樹脂としては、塩素原子を含む樹脂(重合体)である限り特に限定されないが、塩化ビニル系樹脂が好ましい。これにより、柔軟性や難燃性に優れる成形体が得られる。
塩化ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン等の単独重合体;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−プロピレン共重合体、塩化ビニル−スチレン共重合体、塩化ビニル−イソブチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−ウレタン共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−スチレン−無水マレイン酸共重合体、塩化ビニル−スチレン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−ブタジエン共重合体、塩化ビニル−イソプレン共重合体、塩化ビニル−塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−マレイミド共重合体等の共重合体;等が挙げられる。なお、塩素含有樹脂と塩素非含有樹脂とのブレンド品を使用してもよいし、また塩化ビニル系樹脂を得るための重合方法は特に限定されない。
本発明の塩素含有樹脂組成物は、Fe−Cr系、Fe−Co−Cr系、及び、Bi−Mn系から選ばれる少なくとも1種の無機顔料又はこれらがアルキル基の炭素数が6〜20のアルキルアルコキシシラン化合物で表面処理されたものを含む。
Fe−Cr系無機顔料としては、例えばBlack 6340、Black 6350(アサヒ化成工業社製、何れも商品名)等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
Fe−Co−Cr系無機顔料としては、例えばBlack 9590(大日本精化社製、商品名)等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
Bi−Mn系無機顔料としては、例えばBlack 6301、Black 6303(アサヒ化成工業社製、商品名)等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
アルキルアルコキシシラン化合物、アルキルシラン化合物としては、より好ましくは、アルキル基の炭素数が6〜10のものであり、更に好ましくは、アルキル基の炭素数が8〜10のものである。
本発明の塩素含有樹脂組成物が含む過塩素酸化合物は、過塩素酸含有ハイドロタルサイト及び/又は過塩素酸金属塩であることが好ましい。
過塩素酸金属塩としては、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸アルカリ金属塩;過塩素酸マグネシウム、過塩素酸バリウム、過塩素酸カルシウム等の過塩素酸アルカリ土類金属塩等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
{(Mg)x(Zn)y}(Al)z(OH)2(An−)x/n・mH2O (1)
(式中、An−は、n価の層間アニオンを表す。x、y及びzは、0<x<1、0≦y<1、0.2≦z≦0.4、x+y+z=1を満たす数であって、かつx+yとzとの比{(x+y)/z}は2.0以上、3.0以下である。n及びmは、それぞれ1≦n≦4、及び、0≦mを満たす数である。)で表されるものである。これにより、塩素含有樹脂組成物の耐熱性や熱安定性がより向上する。
ここで、y=0であるものは、Mg/Al系ハイドロタルサイトと称され、0<yであるものは、亜鉛変性ハイドロタルサイトと称される。本発明では、これらのいずれも好適に使用できる。
ハイドロタルサイトの吸油量は、JIS K5101−13−1(2004年:精製あまに油法)に準拠して測定することができる。
本発明の塩素含有樹脂組成物は、更に鉛系安定剤、非鉛系安定剤、及び、有機スズ系安定剤の少なくとも1つを含むことが好ましい。これらの安定剤を含むことで、塩素含有樹脂組成物が加工時の熱安定性に優れたものとなる。
本発明の塩素含有樹脂組成物はまた、酸化亜鉛を含むことが好ましい。酸化亜鉛を含むことで、塩素含有樹脂組成物が耐熱性に優れたものとなる。
酸化亜鉛の比表面積は、窒素吸着法により測定することができる。
本発明の塩素含有樹脂組成物は更に、離型剤を含んでいてもよい。離型剤としては、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート等が挙げられるが、これらの中でもジペンタエリスリトールヘキサステアレートを含むことが好ましい。これにより、本発明の塩素含有樹脂組成物のかすれや筋引きの発生を抑制することができる。
本発明の塩素含有樹脂組成物は更に、充填剤を含んでいてもよい。これにより、成形品の寸法安定性や成形品の強度が向上するので、成形体用途に好ましい樹脂組成物となる。
本発明の塩素含有樹脂組成物は更に、必要に応じてその他の成分を含んでもよい。例えば、耐熱助剤、滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、架橋助剤、可塑剤等の各種添加剤が挙げられる。添加剤はそれぞれ特に限定されないが、例えば、耐熱助剤としてはジペンタリスリトール等の多価アルコール化合物や、エポキシ樹脂等のエポキシ化合物が挙げられ、滑剤としてはステアリン酸モノグリセライド、パルミチン酸モノグリセライド、ステアリン酸、パルミチン酸、ポリエチレンワックス等が挙げられ、紫外線吸収剤としてはベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、芳香族ベンゾエート系化合物等が挙げられ、酸化防止剤としてはフェノール系化合物等が挙げられ、架橋助剤としてはトリメチロールプロパントリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられ、可塑剤としてはジオクチルフタレート(DOP)やトリオクチルトリメリテート(TOTM)、ジオクチルアジペート(DOA)等が挙げられる。
本発明の塩素含有樹脂組成物は、メタメリズムや色変化が発生しにくく、耐候性に優れ、塩素含有樹脂の劣化も抑制された組成物であるから、パイプ等に成形して好適に用いることができる。このような、本発明の塩素含有樹脂組成物を用いてなる成形体もまた、本発明の1つである。
成形体の形状は特に限定されず、板状、シート状、フィルム状、膜状等の平面形状の他、ひも状、棒状、ペレット状、管状等のいずれの形状であってもよい。
後述の表1〜3に記載する原料は以下のとおりである。
[塩素含有樹脂]
塩化ビニル系樹脂:信越化学工業社製、TK−1000、重合度1000
カーボン系グレー顔料:
カーボンブラック(大日精化社製PMP1720):酸化チタン(堺化学社製R−3L)=1:9(重量比)の混合顔料
酸化チタン:堺化学社製、R−3L
有機系グレー顔料:大日精化社製、クロモブラックA−1103(遮熱用有機黒色顔料)
Fe−Cr系黒色顔料:アサヒ化成工業社製、BLACK6350(化学組成:Chromium Greeen−Black Hematite)
Fe−Cr系黒色顔料表面A処理品:上記Fe−Cr系黒色顔料に対し、3%のメチルハイドロジェンポリシロキサン処理をしたもの
Fe−Cr系黒色顔料表面B処理品:上記Fe−Cr系黒色顔料に対し、3%のデシルトリメトキシシラン処理をしたもの
Bi−Mn系黒色顔料:アサヒ化成工業社製、BLACK6301(化学組成:Bismuth Manganese Perovskite)
Bi−Mn系黒色顔料表面C処理品:上記Bi−Mn系黒色顔料に対し、3%のジメチルポリシロキサン処理をしたもの
Bi−Mn系黒色顔料表面D処理品:上記Bi−Mn系黒色顔料に対し、3%のデシルトリメトキシシラン処理をし、その後に3%メチルハイドロジェンポリシロキサン処理をしたもの
*上記A〜Dの表面処理は、全て20Lヘンシェルミキサーに原料となる顔料を所定量仕込み、高速撹拌しながら、各処理剤を所定量投入した。その後、120℃まで高速撹拌し、取り出し後に冷却した後、アトマイザーで粉砕することにより行った。
過塩素酸含有ハイドロタルサイト:協和化学社製、アルカマイザー5
過塩素酸ナトリウム:和光純薬社製、1級試薬
ステアリン酸鉛:堺化学工業社製、SZ−2000
カルシウム亜鉛系安定剤:堺化学工業社製、LHR−219(含有量25%)
酸化亜鉛:堺化学工業社製、微細酸化亜鉛(比表面積:8.9m2/g)
[充填剤]
炭酸カルシウム:日東粉化社製、ソフトン1200
20Lヘンシェルミキサーに表1、2に記載のとおりに各成分を添加し、40℃まで撹拌混合して塩素含有樹脂組成物を調製した。得られた塩素含有樹脂組成物について、以下の方法により特性の評価を行った。結果を表1、2に示す。
<特性評価>
上記のようにして得られた塩素含有樹脂組成物のコンパウンドを180℃の8インチロールで5分混練し、得られたロールシートを180℃5分プレスし、1mm厚の試験片を作成した。その試験片を用いて、下記条件で試験を実施した。
(1)ギアオーブン耐熱性試験:
上記試験片をギアオーブン(ESPEC社製ギアオーブン;条件180℃)に入れ、30分後に取出し、変色の程度を確認し、全く変色ないもの◎、やや変色するものを○、変色しているが許容できるものを△、変色が明らかに認められるものを×とした。
(2)プレス耐熱性試験:
上記試験片を用い、190℃で10分、50kg/cm2の圧力で加熱し、常温まで冷却後、プレスシートの変色の程度を確認した。全く変色ないもの◎、やや変色するものを○、変色しているが許容できるものを△、変色が明らかに認められるものを×とした。
(3)サンシャインウェザー耐候性試験:上記試験片を用い、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機製,BP63℃)にて200時間後の変色の程度を確認し、全く変色ないもの◎、やや変色するものを○、変色しているが許容できるものを△、変色が明らかに認められるものを×とした。
(4)フェードメーター耐候性試験:
上記試験片を用い、フェードメーター(スガ試験機社製)にて200時間後の変色の程度を確認し、全く変色ないもの◎、やや変色するものを○、変色しているが許容できるものを△、変色が明らかに認められるものを×とした。
(5)パイプ表面温度測定:
3灯式赤外線ランプを用い、試料(試験片)との距離30cmで、照射10分後のパイプ表面の温度を非接触温度計で測定した。
(6)メタメリズム評価
上記試験片を用い、170℃で10分50kg/cm2の圧力で加熱し、常温まで冷却し、プレスシートを作成した。そのシートを太陽光と蛍光灯光で観察し、色変化がないものを○、赤っぽくみえたり、青っぽく見えたり、2つの光源で変化が認められるものを×とした。
表3に記載のとおりに各成分を使用した以外は実施例1〜8、比較例1〜8と同様にして塩素含有樹脂組成物を調製し、特性の評価を行った。結果を表3に示す。
Claims (7)
- 塩素含有樹脂と、Fe−Cr系、Fe−Co−Cr系、及び、Bi−Mn系から選ばれる少なくとも1種の無機顔料と、過塩素酸化合物とを含むことを特徴とする塩素含有樹脂組成物。
- 前記過塩素酸化合物は、過塩素酸含有ハイドロタルサイト及び/又は過塩素酸金属塩であることを特徴とする請求項1に記載の塩素含有樹脂組成物。
- 塩素含有樹脂100重量部に対して、過塩素酸化合物を0.01〜0.3重量部含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の塩素含有樹脂組成物。
- 前記無機顔料は、シリコーン化合物及び/又はシラン化合物で表面処理されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の塩素含有樹脂組成物。
- 更に鉛系安定剤、非鉛系安定剤、及び、有機スズ系安定剤の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の塩素含有樹脂組成物。
- 更に酸化亜鉛を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の塩素含有樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の塩素含有樹脂組成物を用いてなることを特徴とする成形体。
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