以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、図中の同一又は相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る搬送装置の上面図である。図2には、図1に示された搬送装置の正面図が示される。
図1及び図2を参照して、実施の形態1に係る搬送装置5は、搬送コンベア20と、搬送ロボット30と、搬送シャトル40とを備える。搬送装置5は、前工程からの搬送物10を、連続運転される搬送コンベア20によって、「熱処理設備」の一例である熱処理炉50へ搬送する。
搬送シャトル40は、図示しない前工程から供給された搬送物10を搬送ロボット30の付近まで搬送する。搬送シャトル40は、前工程(図示せず)から送られてきた搬送物10が移動部40a上に受け渡されると、移動部40a上に搬送物10を乗せた状態で、移動部40aによって搬送物10を搬送ロボット30側へ移動させる。搬送シャトル40の駆動源は、搬送シャトル40の前工程側と、搬送ロボット30側の2箇所の位置で位置決めすることが可能であれば、電動モータ又はエアーシリンダ等を適用することができる。尚、前工程側の位置で搬送物10を受け取り、搬送ロボット30側の位置で搬送物10を停止させることが可能であれば、ピックアンドプレイスのように空中を移動させる移載装置、又は、ベルトコンベアによって、搬送シャトル40を構成することも可能である。
搬送ロボット30は、例えば、垂直多関節ロボットによって構成することが可能である。搬送ロボット30は、搬送物10を搬送シャトル40から取り出して、連続運転する搬送コンベア20に投入する。具体的には、搬送シャトル40によって搬送ロボット30側へ移動された搬送物10が、図示していない一般的な光電センサ等によって検出されることにより、搬送物10が搬送ロボット30側の定位置に到着していることが確認される。当該確認後、搬送ロボット30は、ロボットハンド35によって搬送物10を把持して搬送シャトル40から取出し、ロボットハンド35で搬送物10を把持した状態のままで搬送ロボット30を旋回させる。これにより、搬送物10は、連続運転する搬送コンベア20の上空側において、搬送物10の投入前の待機位置まで移動する。
図3は、搬送物10の正面図である。
図3を参照して、搬送物10の底面、即ち、搬送コンベア20との対向面には、突起部15が設けられる。本実施の形態において、搬送物10の底面に設けられた突起部15は、搬送物10そのものの底面に設けられた突起部15、及び、搬送装置5での搬送時に搬送物10と一体化される搬送用冶具の底面に設けられた突起部15の両方を含む概念である。
再び図1及び図2を参照して、搬送シャトル40の移動部40aには、搬送物10に設けられた突起部15を逃がすための穴加工等が施されている。これにより、搬送シャトル40の移動部40a上において、搬送物10は、突起部15及び移動部40aの干渉によって転倒することなく、直立状態を維持することができる。
図1に示されるように、搬送コンベア20は、連続的に穴が形成された領域を有するコンベアベルト20aを有する。例えば、コンベアベルト20aは、格子状の穴が全面に形成される、金属製のメッシュベルトによって構成することができる。尚、当該穴は、搬送コンベア20の全面に形成される必要はなく、少なくとも一部の領域において、穴が連続的に形成されていればよい。
図1及び図2に示されるように、突起部15が、連続運転された搬送コンベア20(コンベアベルト20a)に連続的に形成された穴のうちの1つに挿入されることで、搬送物10は搬送コンベア20へ投入される。図3に示されるように、突起部15の先端は、曲面形状(好ましくは、球面形状)を有する。
図4には、搬送ロボット30の先端に設けられたロボットハンド35の正面図が示される。
図4を参照して、搬送ロボット30の先端には、ロボットハンド35が設けられ、ロボットハンド35の先端には、搬送物10を把持するための把持アーム38が設けられる。把持アーム38は「把持部」の一実施例に対応する。搬送ロボット30は、ロボットハンド35を変位させるための力を発生するアクチュエータ(図示せず)を更に有しており、当該アクチュエータの制御により、図1及び図2中に示されたX,Y,Z軸方向のそれぞれに沿った、ロボットハンド35の変位方向及び変位速度を制御することができる。尚、本実施の形態において、Z軸方向は「垂直方向」に対応し、X軸方向及びY軸方向は「水平方向」に対応する。
更に、ロボットハンド35は、当該アクチュエータによって、把持アーム38から図中矢印方向に作用する力(把持力)を発生させることにより、搬送物10を把持することができる。ロボットハンド35には、6軸力覚センサ60が配置される。特に、搬送ロボット30は、6軸力覚センサ60の検出値に基づき、ロボットハンド35に作用するX,Y,Z軸方向の力、即ち、ロボットハンド35が把持された搬送物10に付与する移動力の制御(以下、単に「移動力制御」とも称する)が可能である。後述するように、本実施の形態に係る搬送装置5では、搬送物10の突起部15が搬送コンベア20上に連続的に設けられた穴のうちの1つに挿入されるように、搬送ロボット30が移動力制御を実行する。
再び図1を参照して、搬送コンベア20に投入された搬送物10は、熱処理炉50(熱処理設備)内を通過することで、ろう付けやアニール等の熱処理が施される。この際には、搬送コンベア20を連続運転することにより、各搬送物10への入熱力のばらつきを減少することができる。このような用途では、熱処理時における溶解防止、及び、軽量化のために、上述のように、金属製(代表的には、ステンレス)のメッシュベルトによって、コンベアベルト20aを構成することができる。
一方で、このようなコンベアベルト20aには、搬送コンベア20の周回的な連続運転により、搬送物10と共に、熱処理炉50内での入熱、及び、熱処理炉50外での放熱が繰り返される。この結果、コンベアベルト20aには、搬送コンベア20の1周毎に、加熱及び冷却を伴う熱履歴が蓄積される。当該熱履歴に従って、金属製のコンベアベルト20aに対して、加熱時の熱膨張による伸び、及び、冷却時の収縮が発生するが、加熱には金属内部の応力が解放されるとともに、搬送方向にある程度の張力が加えられた状態で加熱と冷却が施される。この結果、冷却後のコンベアベルト20aには、捻じれや伸びのような変形が生じる可能性があり、当該変形は、熱履歴が繰り返される程大きくなっていくことが懸念される。
図5には、搬送コンベア20上の変形が発生していない穴に対して搬送物10の突起部15が挿入される際のコンベアベルト20aの上面図が示される。
図5を参照して、コンベアベルト20aは、横桟22及び縦桟24によって構成される。横桟22は、一定ピッチで配置されており、各横桟22は、搬送コンベア20の搬送方向Dcmに対して直交する方向に沿って延在する。
縦桟24は、搬送方向Dcmに対して斜めに傾いた角度で、横桟22に対して編み込むように配置される。従って、縦桟24は、搬送物10に対して、表面側に配置される部分と、裏面側に配置される部位とを有する。尚、図5中において、縦桟24のうちの裏面側に配置される部位については、ハッチングを付与して表記する。
この結果、搬送コンベア20上には、コンベアベルト20aの横桟22と、縦桟24の表面側の部位とによって、連続的に穴25が形成される。当該穴25のサイズは、横桟22及び縦桟24の配置ピッチによって規定されるが、これらの各ピッチは、搬送物10の突起部15の底面の外径よりも長い。この結果、図5に示されるように、搬送物10の突起部15を、横桟22及び縦桟24を避けることによって、搬送コンベア20上の穴25に挿入することができる。尚、穴が非形成の部材によって、複数のメッシュベルトを連結する構成等により、上述のように、コンベアベルト20aの一部に、穴25が形成されていない領域を設けられてもよい。
一方で、コンベアベルト20aの横桟22及び縦桟24のピッチ精度はそれ程高くないため、穴25の形状及び面積の均一性は比較的低い。更に、上述のように、熱処理設備によって印加される熱履歴に起因して、コンベアベルト20aを構成する横桟22及び縦桟24が変形すると、穴25の均一性は更に低下する可能性がある。
図6には、搬送コンベア20上の変形した穴に対して搬送物10の突起部15が挿入される際のコンベアベルト20aの上面図が示される。図6においても、縦桟24のうちの裏面側に配置される部位は、ハッチングを付与して表記される。
図6を参照して、複数の穴25のうちの穴25xは、熱履歴によって変形した横桟22及び縦桟24によって形成されている。変形による横桟22及び縦桟24の配置ピッチの乱れにより、穴25xのサイズは、突起部15の外径よりも小さくなる可能性がある。図6の例では、搬送物10の突起部15は、縦桟24との干渉によって、穴25xに対する挿入が物理的に不可能な状態となっている。一方で、後続の穴25yは、突起部15を挿入可能な形状を維持している。
従って、図6のような状態が発生しても、後続の穴25のいずれかに突起部15を挿入することにより、図5と同様に、搬送コンベア20に搬送物10を投入することが可能である。
コンベアベルト20aに対して搬送物10の突起部15を挿入する動作は、連続運転する搬送コンベア20に対して、搬送ロボット30が、図1及び図2に示したZ軸下向きに、ロボットハンド35を下降させる動作によって実現される。従って、当該下降動作のタイミングに依存して、図6に示された変形した穴25xに対して突起部15を挿入しようとすることで、搬送コンベア20への搬送物10の投入に失敗する虞がある。或いは、図5のように、穴25が変形していないコンベアベルト20aに対しても、下降動作のタイミングによっては、突起部15が、横桟22又は縦桟24との接触により、そのままでは穴25に対して挿入できないことも懸念される。
上記の問題点の解消のために、一例として、カメラ等による画像処理によって正常な穴25の位置を検知することで、搬送ロボット30によるロボットハンド35の下降動作のタイミングを制御することが考えられる。より具体的には、連続運転する搬送コンベア20上の格子状の穴25をカメラによって予め撮像するとともに、当該画像データをパターンマッチング等の画像処理することで突起部15を挿入可能な穴25を、挿入対象の穴として認識することができる。更に、当該挿入対象の穴25の座標を導出するとともに、連続運転による当該穴25の移動量を反映した座標を目標として、即ち、連続運転する搬送コンベア20と同期しながらロボットハンド35を下降させることによって、搬送コンベア20に搬送物10を確実に投入するためのシステムを構成することが可能である。
しかしながら、このようなシステムを構成するためには、穴25を撮像するためのカメラ及びその移動機構の配置、画像処理ソフトの導入、並びに、搬送ロボット30の制御系の高機能化等によって、構成の複雑化及び高コスト化が問題となる。従って、実施の形態1に係る搬送装置5では、上記の様な画像処理及び同期制御を要しない、簡素な構成及び制御によって、搬送物10の突起部15を、搬送コンベア20上の穴25へ挿入する。
図7には、実施の形態1に係る搬送装置において搬送コンベア20上の穴25に対して搬送物10の突起部15が正常に挿入される際の搬送ロボットの正面図が示される。即ち、図7は図5の正面図に相当する。尚、図7において、コンベアベルト20a及び搬送物10の突起部15については、断面図が表記される。
図7を参照して、上述のように、ロボットハンド35には6軸力覚センサ60が設けられているため、搬送ロボット30は、6軸力覚センサ60の検出値に基づき、把持された状態の搬送物10に作用するX,Y,Z軸の力(移動力)を制御することができる。
従って、搬送ロボット30は、ロボットハンド35によって把持された搬送物10を、連続転する搬送コンベア20上の投入位置の上空まで移動させ、かつ、ロボットハンド35をZ軸下向きに下降させる。更に、6軸力覚センサ60によって検出されるZ軸上向きの力が予め定められた閾値を超えない範囲内で、ロボットハンド35をZ軸下向きに継続的に動作させる(即ち、押し込む)ことによって、搬送コンベア20上の穴25に、搬送物10の突起部15を挿入することができる。この際に、ロボットハンド35のZ軸下向きの変位量に基づいて、突起部15が穴25に挿入されたことを検知できる。
図8は、実施の形態1に係る搬送装置5において搬送物10の突起部15がコンベアベルト20aと接触する第1の例を説明する搬送ロボット30の正面図である。図8では、突起部15がコンベアベルト20aの横桟22(搬送コンベア20の上流側)と接触して、突起部15のX方向に搬送方向Dcmと同方向に力が加わった状態が第1の例として示される。図9は、図8の第1の例におけるコンベアベルト20aの上面図である。図8においても、コンベアベルト20a及び搬送物10の突起部15については、断面図が表記される。
図8及び図9に示された第1の例の場合、搬送ロボット30が、搬送物10を把持した状態のロボットハンド35をZ軸下向きに下降させて、搬送コンベア20へ押し込んだ時、搬送物10の突起部15がコンベアベルト20aの横桟22と接触することにより、突起部15と横桟22との間に力Fが発生する。力Fは水平方向の力Fxと、垂直方向の力Fzに分解される。水平方向の力Fxは、コンベアベルト20aの進行方向と同方向(+X方向)に発生している。
搬送ロボット30は、ロボットハンド35に設けられた6軸力覚センサ60によって、力Fx及びFzを検知することができる。搬送ロボット30は、力Fzについては、予め定められた閾値を超えない範囲内で、ロボットハンド35が搬送物10をZ軸下向きに押し続けるように制御する。一方で、搬送ロボット30は、水平方向の力Fxについては、力Fxをゼロに近付ける方向にロボットハンド35を移動させる。
この際、搬送コンベア20(コンベアベルト20a)も連続運転し続けているため、ロボットハンド35の移動によって力Fxの値をゼロにするためには、コンベアベルト20aの進行方向Dcmと同一方向に、かつ、コンベアベルト20aの進行速度よりも高い速度で、ロボットハンド35を移動させることが必要である。
搬送ロボット30が垂直方向に力Fzを一定に加え続けながら、水平方向の力Fxをゼロにする方向へロボットハンド35を動かしていくと、搬送物10の突起部15の先端を曲面形状にしている効果により、突起部15は、横桟22と接触しながらも、横桟22に倣いながら滑ることで、コンベアベルト20aの穴25に挿入されていく。
突起部15が穴25に挿入されると、ロボットハンド35のZ方向の変位量が増加する。従って、ロボットハンド35のZ方向の変位が、搬送コンベア20の位置に対応させて予め定められた基準値に達すると、突起部15が穴25に挿入されたこと、即ち、搬送コンベア20への搬送物10の投入完了を検知できる。具体的には、当該基準値は、搬送コンベア20上の穴25に対して、突起部15の挿入完了時のロボットハンド35のZ座標値に対応して設定することができる。
搬送物10の投入完了が検知されると、搬送ロボット30は、ロボットハンド35による搬送物10の把持を解除した後、Z軸上方向へ上昇することで、搬送コンベア20から退避する。
このように、実施の形態1に係る搬送装置5では、突起部15が搬送コンベア20の上流側で横桟22と接触した場合に、ロボットハンド35に作用する力の制御(移動力制御)によって、搬送物10の突起部15を、コンベアベルト20aの横桟22及び縦桟24の両方と接触していない状態まで、搬送コンベア20の穴25に挿入することができる。
更に、ロボットハンド35のZ軸変位量(座標値)に基づき、搬送物10が既定の高さになるまで突起部15をコンベアベルト20aの穴25に挿入できていることを確認してからロボットハンド35の把持を解放することができる。この結果、突起部15の挿入失敗による、搬送コンベア20上での搬送物10の転倒を防ぐことができる。
図10は、実施の形態1に係る搬送装置5において搬送物10の突起部15がコンベアベルト20aと接触する第2の例を説明する搬送ロボット30の正面図である。図10では、突起部15がコンベアベルト20aの横桟22(搬送コンベア20の下流側)と接触して、突起部15のX方向に搬送方向Dcmと反対方向に力が加わった状態が第2の例として示される。図11は、図10の第2の例におけるコンベアベルト20aの上面図である。図10においても、コンベアベルト20a及び搬送物10の突起部15については、断面図が表記される。
図10及び図11の第2の例においても、第1の例と同様に、搬送ロボット30が、搬送物10を把持した状態のロボットハンド35をZ軸下向きに下降させた時、搬送物10の突起部15がコンベアベルト20aの横桟22と接触する。これにより、突起部15と横桟22との間に力Fが発生するが、第2の例では、第1の例とは異なり、水平方向の力Fxは、コンベアベルト20aの進行方向と逆方向(−X方向)に発生している。
従って、第2の例では、搬送ロボット30は、X方向については、力Fxの値をゼロにするために、コンベアベルト20aの進行方向Dcmと逆方向に、ロボットハンド35を移動させる。この場合は、ロボットハンド35の移動速度はコンベアベルト20aの進行速度よりも速くなくてもよいが、ロボットハンド35の移動速度を、移動方向によって変えたくなければ、ロボットハンド35の移動速度(絶対値)は、第1の例のときと同一値、即ち、コンベアベルト20aの進行速度(絶対値)よりも高く設定することができる。一方で、ロボットハンド35のZ方向の制御については、第1の例と同様であるので詳細な説明は繰り返さない。
これにより、突起部15が搬送コンベア20の下流側で横桟22と接触した場合にも、第1の例と同様に、ロボットハンド35に作用する力の制御(移動力制御)によって、搬送物10の突起部15をコンベアベルト20aの横桟22及び縦桟24の両方と接触していない状態まで移動させることで、搬送コンベア20の穴25挿入することができる。
又、搬送コンベア20への搬送物10の投入完了の検知、並びに、投入完了検知後のロボットハンド35による搬送物10の把持の解除、及び、搬送コンベア20からの搬送ロボット30の退避についても、第1の例と同様に制御することが可能である。従って、第2の例においても、突起部15の挿入失敗による、搬送コンベア20上での搬送物10の転倒を防ぐことができる。
図12は、実施の形態1に係る搬送装置5において搬送物10の突起部15がコンベアベルト20aと接触する第3の例を説明する搬送ロボット30の正面図である。図12では、突起部15がコンベアベルト20aの縦桟24と接触して、突起部15のX方向及びY方向の両方に力が加わった状態が第3の例として示される。図13は、図12の第3の例におけるコンベアベルト20aの上面図である。図12においても、コンベアベルト20a及び搬送物10の突起部15については、断面図が表記される。
図12及び図13に示された第3の例の場合、搬送ロボット30によりロボットハンド35に把持された状態でZ軸下向きに下降した搬送物10の突起部15がコンベアベルト20aの縦桟24と接触することにより、突起部15と縦桟24との間に力Fが発生する。力Fは、垂直方向の力Fz(図12)と、水平方向の力Fxy(図13)とに分解される。力Fxyは、X方向の力Fxと、Y方向の力Fyとに更に分解される(図13)。図12及び図13の例では、水平方向の力のうち、X方向の力Fxは、コンベアベルト20aの進行方向と逆方向(−X方向)に発生しており、Y方向の力Fyは、コンベアベルト20aの進行方向と直交する方向に発生している。
搬送ロボット30は、6軸力覚センサ60の検出値に基づき、鉛直方向の力Fzについては、第1及び第2の例と同様に、ロボットハンド35が搬送物10をZ軸下向きに押し続けるように制御する。一方で、搬送ロボット30は、水平方向の力Fx及びFyについては、力Fx及びFyの各々をゼロに近付ける方向にロボットハンド35を移動させる。この結果、水平方向におけるロボットハンド35の移動方向は、概略的には、図13中における力Fxyと反対方向に沿ったものとなる。
これにより、突起部15が搬送コンベア20の縦桟24と接触した場合にも、第1及び第2の例と同様に、ロボットハンド35に作用する力の制御(移動力制御)によって、搬送物10の突起部15を、コンベアベルト20aの横桟22及び縦桟24の両方と接触していない状態まで、搬送コンベア20の穴25に挿入することができる。
又、搬送コンベア20への搬送物10の投入完了の検知、並びに、投入完了検知後のロボットハンド35による搬送物10の把持の解除、及び、搬送コンベア20からの搬送ロボット30の退避についても、第1及び第2の例と同様に制御することが可能である。従って、第3の例においても、突起部15の挿入失敗による、搬送コンベア20上での搬送物10の転倒を防ぐことができる。
尚、図6に示したように搬送コンベア20上の変形した穴25xに対しては、水平方向の力Fx及び力Fyをゼロにするようにロボットハンド35をX方向及びY方向に移動させても、搬送物10の突起部15を物理的に挿入することができないことが懸念される。このようなケースに対しては、ロボットハンド35の移動力制御開始からの経過時間が予め定められた上限時間を超過すると、タイムオーバーを検知して、搬送物10を把持したままの状態でロボットハンド35をZ軸上方向に一旦退避させることが可能である。例えば、搬送物10の投入開始位置までロボットハンド35を上昇させた後、再び、ロボットハンド35をZ軸下方向に下降させて、搬送コンベア20への搬送物10の投入に再トライすることができる。
次に、図7〜図13で説明した搬送ロボット30による搬送物10の投入制御を実現するための制御構成及び制御処理について、図14の機能ブロック図及び図15のフローチャートを用いて説明する。
図14は、実施の形態1に係る搬送装置5における搬送ロボット30による搬送物10の投入制御のための機能ブロック図である。
図14を参照して、搬送ロボット30は、ロボットハンド35と、アクチュエータ36と、6軸力覚センサ60と、制御部70とを有する。制御部70は、相互接続された、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ71、メモリ72、及び、インターフェイス部(I/F)73を有する。
メモリ72は、例えば、プロセッサ71で実行されるプログラムを記憶するためのメモリであるROM(Read Only Memory)、及び、プロセッサ71でプログラムを実行する際の作業領域となったり計算値を記憶したりするためのメモリであるRAM(Random Access Memory)を含む。
インターフェイス部73は、A/D(Analog to Digital)変換機能、及び、D/A(Digital to Analog)変換機能も具備しており、6軸力覚センサ60に代表される各種センサからの検出値を示すアナログ信号をデジタル信号に変換して、プロセッサ71及びメモリ72に出力することができる。更に、インターフェイス部73は、プロセッサ71及びメモリ72から出力されたデジタル信号を、アクチュエータ36への制御信号に変換して出力することができる。尚、インターフェイス部73に信号バッファ機能を具備することにより、制御部70の内部及び外部の間でのデジタル信号を授受することも可能である。
アクチュエータ36は、制御部70からの制御信号に従って、ロボットハンド35をX,Y,Z軸で変位させるための移動力を発生する。代表的には、アクチュエータ36は、モータによって構成することが可能である。制御部70によるアクチュエータ36の制御により、上述した、X,Y,Z軸方向のそれぞれに沿った、ロボットハンド35の変位方向及び変位速度の制御、並びに、6軸力覚センサ60の検出値を用いた移動力制御が可能となる。
図15は、実施の形態1に係る搬送装置5における搬送ロボット30による搬送物10の投入制御を説明するための機能ブロック図である。図15には、1個の搬送物10の投入に係る制御処理が示される。図15に示されたフローチャートに従う制御処理は、図14に示された制御部70によって実行することができる。
図15を参照して、搬送シャトル40(図1)によって搬送物10が搬送ロボット30側へ移動されたことが検知されると、当該搬送物の投入制御が開始される。制御部70は、搬送物10の投入制御が開始されると、ステップ(以下、単に「S」と表記する)110により、搬送物10の把持力を発生するように、ロボットハンド35の先端の把持アーム38を制御する。当該把持力は、制御部70から解除が指示されるまで連続的に発生される。
更に、制御部70は、把持状態を維持された搬送物10を、搬送コンベア20上の予め定められた待機位置へ移動するように、ロボットハンド35を制御する。これにより、ロボットハンド35のX座標及びY座標は、搬送物10の投入位置に対応したものとなる。
制御部70は、S130により、把持状態を維持された搬送物10を、待機位置(S120)からZ軸下向きに移動させるようにロボットハンドを制御するとともに、S140により、搬送物10が投入開始位置に到達したか否かを、ロボットハンド35の変位量(或いは、Z座標)に基づいて判定する。投入開始位置は、搬送物10の突起部15がコンベアベルト20aに接触しないような、ロボットハンド35のZ座標値と対応させて予め定められる。搬送物10が投入開始位置に到達するまで(S140のNO判定時)、搬送物10の下降(S130)が継続される。
制御部70は、搬送物10が投入開始位置に到達すると(S140のYES判定時)、S150により、6軸力覚センサ60の検出値に基づく、ロボットハンド35の移動力制御をオンする。移動力制御の開始に応じて、タイマ値Ttm=0へのクリア後に計時が開始される。更に、初回の移動力制御の開始の際には、再トライ回数のカウント値Ntr=0に初期化される。
制御部70は、移動力制御のオン時には、6軸力覚センサ60によって検知されるZ軸上向きに作用する力Fzが予め設定された閾値に達するまで、搬送物10を下降させる。即ち、ロボットハンド35は、Z軸上方向に当該閾値に相当する予め設定した力が加わるまで、搬送物10を搬送コンベア20に押し込むように制御される。
制御部70は、上記押し込み動作のためのZ方向(Z軸下向き)の移動力を搬送物10に付与することによって、Z軸上方向に上記閾値に相当する力が加わると、当該Z方向の移動力の付与を継続した状態にて、S170により、6軸力覚センサ60の検出値に基づき、搬送物10に対してX方向及びY方向に加わる力があるか否かを判定する。
図8〜図11、並びに、図12及び図13で説明したように、搬送物10の突起部15が横桟22又は縦桟24と接触すると、6軸力覚センサ60によって、ロボットハンド35に作用する、X方向及びY方向の少なくとも一方の力が検出される。この場合、制御部70は、S170をYES判定として、S180により、X方向の力を打ち消すためのX方向の移動力、及び、Y方向の力を打ち消すためのY方向の移動力の少なくとも一方が搬送物10に付与されるように、ロボットハンド35を制御する。この結果、ロボットハンド35は、X方向及びY方向の少なくとも一方の移動力と、S160によるZ方向(Z軸下方向)の移動力との両方を発生するように制御される。
一方で、図5及び図7で説明したように、突起部15が横桟22及び縦桟24のいずれともも接触せずに穴25に挿入されると、X方向及びY方向の力は検出されない。この場合、制御部70は、S170をNO判定として、S180の処理をスキップする。この結果、ロボットハンド35は、X方向及びY方向の移動力を発生することなく、S160によるZ方向(Z軸下方向)の移動力のみを発生するように制御される。
制御部70は、S160〜S180による移動力の制御とともに、S190により、ロボットハンド35のZ方向の変位量に基づき、穴25への突起部15の挿入完了を判定する。具体的には、搬送物10に対して、Z方向(Z軸上向き)にS160による設定値の力が加わっており、かつ、ロボットハンド35のZ方向(Z軸下向き)の変位量が上述の基準値に達しているときに、S190をYES判定とする。
制御部70は、S190のYES判定時には、S200により、穴25に対する搬送物10の突起部15の挿入完了を検知する。S200では、ロボットハンド35による移動力制御(S150〜S180)がオフされて、搬送物10に対するX,Y,Z方向への移動力の付与が終了される。更に、ロボットハンド35の先端の把持アーム38による搬送物10の把持が解除される。これにより、当該搬送物10の投入制御が正常に終了されて、ロボットハンド35は、搬送コンベア20から退避するように、上空側(Z軸上方向)へ移動する。
これに対して、制御部70は、突起部15の挿入完了が検知されないとき(S190のNO判定時)には、S210により、移動力制御の開始からの経過時間を示すタイマ値Ttmを上限値Tlmtと比較する。制御部70は、タイマ値Ttmが上限値Tlmtに達するまでは(S210のNO判定時)、S160〜S190の処理を繰り返す。
制御部70は、突起部15の挿入完了が検知されないままでタイマ値Ttmが上限値Tlmtに達すると(S210のYES判定時)、S215により、再トライ回数を示すカウント値Ntrを1増加するとともに、S220により、S215による増加後のカウント値Ntrを上限値Nlmtと比較する。カウント値Ntr(再トライ回数)が上限値Nlmtに達するまでは(S220のNO判定時)、投入動作の再トライの為に、処理はS230へ進められる。
制御部70は、S230により、一旦移動力制御をオフするとともに、搬送物10をZ軸上向きに移動させるようにロボットハンド35を制御する。制御部70は、S240により、搬送物10がS140と同様の投入開始位置に到達するまで上昇したか否かを判定する。ロボットハンド35は、搬送物10が投入開始位置に到達するまで(S240のNO判定時)、S230により、搬送物をZ軸上向きに移動させる。
制御部70は、搬送物10が投入開始位置に到達すると(S240のYES判定時)、処理をS150に戻して、移動力制御を再びオンする。これにより、S150〜S190の処理による、穴25への突起部15の投入動作が再び実行される。尚、再トライの際の移動力制御の開始時には、タイマ値Ttm=0へのクリア後に計時が再開される一方で、カウント値Ntrはクリアされずに維持される。
尚、カウント値Ntrが上限値Nlmtに達すると(S220のYES判定時)、制御部70は、これ以上の再トライを開始することなく、S250により異常検知した上で、当該搬送物10の投入制御を終了する。この場合にも、S200と同様に、ロボットハンド35の移動力制御がオフされるが、搬送物10の把持については、解除することなく、維持したままとされる。更に、S250では、搬送装置5のユーザに対してメッセージ出力等によって異常が報知されることが好ましい。
以上説明したように、実施の形態1に係る搬送装置5によれば、連続運転する搬送コンベア20上で穴25の位置を画像認識することなく、ロボットハンド35によるX,Y,Z軸方向の移動力制御によって、搬送物10に設けられた突起部15を穴25に挿入することが可能である。この結果、画像処理及び搬送コンベア20との同期動作を要することなく、簡易な構成及び制御によって、突起部15が設けられた搬送物10を、穴25が連続的に形成された領域を有する搬送コンベア20に対して投入することができる。
又、ロボットハンド35のZ軸座標値に基づき、搬送物10が既定の高さになるまで突起部15をコンベアベルト20aの穴25に挿入できていることを確認してからロボットハンド35による搬送物の把持を解放することにより、突起部15の挿入失敗による、搬送コンベア20上での搬送物10の転倒を防ぐことができる。
更に、図15のS190のNO判定時における、S210〜S250の処理によって、図6に示したような変形した穴25、又は、搬送コンベア20の一部に形成された穴25が非形成な領域を対象として、突起部15が投入された場合にも、自動的に投入動作の再トライを実行することができる。更に、再トライ回数が上限値に達すると、自動的に異常を検知することが可能である。
尚、搬送コンベア20には連続的に穴25が形成されているため、再トライの際のロボットハンド35の下降タイミングについては、厳密に制御する必要がない。或いは、搬送コンベア20の一部に穴25が非形成の領域(つなぎ目等)が存在する場合にも、当該領域への搬送物10の投入がタイムオーバーに終わった後、自動的に再トライを開始することが可能である。
実施の形態2.
実施の形態1で説明したロボットハンド35の移動力制御では、把持された状態の搬送物10に対してZ方向(Z軸下向き)の移動力が付与された状態で、さらに、搬送物10の突起部15がコンベアベルト20aの横桟22又は縦桟24と接触するケースが想定されている。当該ケースでは、搬送物10に対するZ軸下方向への移動力が増えていくと、ロボットハンド35に把持された搬送物10がZ方向に滑り上がる可能性がある。これにより、6軸力覚センサ60によって検出される力に誤差が生じたり、搬送物10がロボットハンド35から外れてしまうことが懸念される。
従って、実施の形態2では、ロボットハンド35による搬送物10の把持力を高めるための構成について説明する。
図16は、実施の形態2に係る搬送装置におけるロボットハンド35の正面図である。
図16を図4と比較して、実施の形態2に係る搬送装置では、ロボットハンド35の先端に設けられた把持アーム38には、凸部としての滑り止めピン39が設けられる。
図17には、実施の形態2に係る搬送装置で取り扱いの対象となる搬送物の正面図が示される。
図17を図3と比較して、実施の形態2に係る搬送装置で取り扱われる搬送物10では、把持アーム38によって把持される部位に、滑り止めピン39に対応する凹部としての穴16が更に設けられる。
穴16は、把持アーム38の滑り止めピン39と対応する位置に設けられる。例えば、把持アーム38が、搬送物10の外周面を180度間隔で挟み込むように2本設けられる場合には、搬送物10の外部面に180度間隔で2個の穴16を設けることができる。
図18には、実施の形態2に係る搬送装置において搬送物を把持した状態のロボットハンドの正面図が示される。
図18を参照して、ロボットハンド35の把持アーム38によって搬送物10を把持する際に、滑り止めピン39が穴16の内部に収容されることにより、搬送物10の把持力を向上することができる。これにより、突起部15がコンベアベルト20aの横桟22又は縦桟24と接触した状態で、搬送物10に対してZ軸下向きの移動力をさらに付与しても、ロボットハンド35に把持された搬送物10が滑り上がることを防止することができる。
尚、搬送物10に対しては把持アーム38による把持力(図3の矢印方向)が印加されるため、滑り止めピン39(凸部)及び穴16(凹部)の形状には互いに嵌合する程の精度は要求されることはなく、滑り止めピン39の外径が穴16の内部に収まれば、凹部及び凸部が当接することによって、把持力が増加する効果を生じさせることができる。
又、図16〜図18では、搬送物10側に滑り止めピン39(凸部)、ロボットハンド35(把持アーム38)側に穴16(凹部)を設ける構成を例示したが、これとは反対に、搬送物10側に凹部を設ける一方で、ロボットハンド35(把持アーム38)側に凸部を設ける構成としても、同様の効果を享受することが可能である。
実施の形態3.
実施の形態1では、搬送ロボット30として、垂直多関節ロボットを適用する例を説明したが、X軸方向、Y軸方向、及び、Z軸方向の直行軸を組み合わせた直行搬送装置によって、搬送ロボット30を構成することも可能である。
図19は、実施の形態3に係る搬送装置の上面図である。図20には、図19に示された搬送装置の正面図が示される。
図19及び図20を参照して、搬送ロボット30は、X軸、Y軸、及び、Z軸の直行軸に沿った直行搬送装置32a〜32cと、6軸力覚センサ60が設けられたロボットハンド35とを含む。実施の形態3に係る搬送装置5においても、X、Y,Z軸方向のそれぞれについて、ロボットハンド35の変位方向及び変位速度、並びに、ロボットハンド35が搬送物10に付与する移動力について、直行搬送装置32a〜32cによって同様に制御することが可能である。
従って、実施の形態1では、X、Y,Z軸方向でのロボットハンド35の動作が、垂直多関節ロボットを適用した搬送ロボット30によって一体的に制御されるのに対して、実施の形態3では、X、Y,Z軸方向でのロボットハンド35の動作が、別個の直行搬送装置32a〜32cによってそれぞれ制御されることになる。しかしながら、実施の形態3に係る搬送装置5においても、搬送シャトル40から供給された搬送物10を、連続運転する搬送コンベア20へ投入する一連の動作のための、ロボットハンド35のX、Y,Z軸方向での動作の制御は、図15に示された搬送物の投入制御を含めて、実施の形態1と同様に実行することができる。又、実施の形態3に係る搬送装置においても、実施の形態2で説明したように、ロボットハンド35の把持アーム38及び搬送物10の一方ずつに、搬送物10の把持力を向上するための凹部及び凸部を配置することも可能である。
実施の形態1及び3から理解されるように、搬送装置への本発明の適用において、搬送ロボット30の構成は、X方向、Y方向、及び、Z方向でのロボットハンド35の動作が制御可能であれば、特に限定されることはない。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。