JP2020039340A - ウイルスベクターの作製 - Google Patents
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Abstract
【課題】ポックスウイルスに基づく薬剤を製造するために好適な細胞および細胞株の提供。治療薬または予防薬の製造のためのポックスウイルスを増殖させるための方法の提供。
【解決手段】改変細胞株が、非改変細胞ではほとんど増殖できない、または増殖不能であるポックスウイルスの増殖を保持するよう、プロモーターの制御下にCP77をコードする配列を含んでなるように細胞のゲノムが改変された、改変哺乳動物細胞。また、CHO細胞では増殖しないオルソポックスウイルスを増殖させるための方法であって、in vitroで哺乳動物細胞株においてポックスウイルスを増殖させることを含んでなり、前記細胞株がプロモーターの制御下にCP77をコードおよび発現するように改変されている、方法。
【選択図】なし
【解決手段】改変細胞株が、非改変細胞ではほとんど増殖できない、または増殖不能であるポックスウイルスの増殖を保持するよう、プロモーターの制御下にCP77をコードする配列を含んでなるように細胞のゲノムが改変された、改変哺乳動物細胞。また、CHO細胞では増殖しないオルソポックスウイルスを増殖させるための方法であって、in vitroで哺乳動物細胞株においてポックスウイルスを増殖させることを含んでなり、前記細胞株がプロモーターの制御下にCP77をコードおよび発現するように改変されている、方法。
【選択図】なし
Description
本出願は2013年11月1日出願のオーストラリア特許出願第2013904242号および2014年2月7日出願のオーストラリア特許出願第2014900370号に関連し、これらの出願からの優先権を主張するものであり、これらの各出願の全内容は引用することにより本明細書の一部とされる。
本発明は、ポックスウイルスを増殖させるため、従って、ポックスウイルスに基づく薬剤を製造するために好適な細胞および細胞株の開発に関する。特に、本明細書は、治療薬または予防薬の製造のためのこのようなポックスウイルスを増殖させるための組換え改変細胞基質に関する。
本明細書中の参照文献の書誌詳細は本明細書の末尾に一覧化されている。
本明細書におけるいずれの事前掲載(またはそれに由来する情報)、または既知のいずれの事項に対する言及も、その事前掲載(またはそれに由来する情報)または既知事項は本明細書が関連する努力傾注分野での共通の一般知識の一部を成すことの承認または容認または何らかの形態の示唆と見なされず、また、見なされるべきでない。
本明細書に記載の総ての刊行物は、引用することによりそれらの全内容が本明細書の一部とされる。
ポックスウイルス科は、コードポックスウイルス亜科(Chordopoxvirinae)およびエントモポックスウイルス亜科(Entomopoxvirinae)の2つ亜科を含んでなる。コードポックスウイルス亜科は、ヒトに感染する種(例えば、痘瘡の病原体である天然痘ウイルス、牛痘ウイルス(1796年にJennerによって報告された原痘瘡ワクチンを形成した)、ワクシニアウイルス(第二世代痘瘡ワクチンとして使用)およびサル痘ウイルス)を含んでなるオルソポックスウイルス科(Orthopoxviridae)ならびに鳥類に感染する鶏痘ウイルスおよびカナリア痘ウイルスなどの種を含んでなるアビポックスウイルス科(Avipoxviridae)ウイルスをはじめとする8属を含んでなる。痘瘡ワクチンにおける抗原としてのそれらの使用に加え、組換えワクシニアに基づくウイルスおよびアビポックスウイルスの「骨格」ベクターとしての使用においても多大な関心が寄せられている。細胞質内ベクター、オルソポックスウイルス科は、とりわけ、宿主細胞質および抗原プロセシング経路(細胞表面に提示するために抗原を処理してペプチドとする)に外来抗原を送達することができる。外来抗原を発現するこのようなベクターは、他のワクチン接種戦略によっては治療が難しいことが分かっているAIDS、結核、マラリアおよび癌などの疾患のためのワクチンの開発に使用される。
コードポックスウイルス亜科は、パラポックスウイルスの130kbからアビポックスウイルスの300kbを超えるまでのサイズ範囲の線状二本鎖DNAゲノムを有し、宿主内でのそれらの生活環は完全に宿主細胞の細胞質内で費やされる。ポックスウイルスは、特に初期mRNA合成に関与するプロセスについては、それらの宿主細胞および宿主細胞分子とは実質的に独立に機能する。しかしながら、宿主分子は中期の開始時または終了時および後期のウイルス転写には使用されると思われる。ポックスウイルスは、ウイルス複製を可能とする細胞条件を許容する宿主シグナル伝達経路を特異的に標的として操作する構造的に多様な「宿主域因子」を産生する。ほとんどのポックスウイルスは哺乳動物細胞に結合して感染することができるが、続いての感染が許容される(感染性ビリオンを産生できる)か許容されない(感染性ビリオンを実質的に産生できない)かは、関与する特定のポックスウイルスおよび特定の細胞種に依存する。現在のところ、ポックスウイルス−宿主相互作用の分子レベルでの理解、特に、宿主域遺伝子、およびウイルスと細胞の両方の増殖を助長するための関係を変調するためにはどの因子が必要かについての理解は比較的低い。宿主域遺伝子については、引用することによりその全内容が本明細書の一部とされるWerden et al. 2008を参照することができる。
天然痘ワクチンとしての、続いてウイルスベクターとしてのそれらの使用に関連するワクシニア株に関する所見は、1960年代の初めから今日まで報告されている。天然痘ワクチンとして使用される株を含むある種のワクシニア株はヒト細胞で増殖可能であるので、 ウイルス性脳炎の発症などの健康リスクを呈する。より安全なワクチンを開発する目的で、アンカラ由来のワクシニア株(「CVA」と呼ばれる)が非ヒト細胞で500回を超えて継代された。この過程でワクシニアゲノムは実質的に変化し、元のCVAゲノムに比べて少なくとも6つの主要な欠失の発生を含んだ。改変されたウイルスはヒトにおける病原性が低いが、防御免疫応答をなお生成することができる。この弱毒ワクシニアウイルスはMVA(改変ワクシニアアンカラ)と呼ばれ、継代数が異なるウイルスは遺伝的および表現型的に異なることが見出されているので、継代数によっても分類される。しかしながら、継代数515回までMVA515は遺伝的に安定であると理解された。1990年代の初めに、MVA572、およびその誘導体MVA F6などのMVA株は非許容細胞(ウイルスが増殖しない)において高レベルでワクシニアタンパク質および異種(組換え)タンパク質を発現することができ、ワクチンまたは治療送達のための抗原をコードするものなどの目的異種分子用のベクターとしてのMVAの開発を可能とすることが認められた。
より最近では、CVAにMVAの6つの大きな既知の欠失を導入することによりMVAの品質を備えた改変ワクシニアウイルスを生産する試みがなされた。興味深いことに、これはMVAの弱毒品質を備えたウイルスをもたらさなかった。宿主域遺伝子の不在が見られた弱毒化の一因であり得ると提案されたが、これは実証されていない(例えば、Meyer et al., Journal of General Virology (1991) 72:1031-1038参照)。
ポックスウイルスは大きな線状dsDNAゲノム、増殖の場が細胞質であること、および複雑なビリオン形態を特徴とするウイルスの大きな科からなる。ワクシニアウイルスは、このウイルス群の代表的ウイルスであり、ウイルスの形態形成に関して最も研究されている。ワクシニアウイルスビリオンは、「側体」により挟み込まれた有壁の両凹コアを特徴とする複雑な内部構造を有する「煉瓦状」または「卵形」の膜結合粒子の様相を呈する。ビリオンアセンブリ経路は、未成熟ビリオン(IV)に発達する半月体を含有する膜の形成とその後の成熟ビリオン(MV)への発達を含む。ワクシニアウイルスビリオン内には70を超える特異的遺伝子産物が含まれ、現今で、ワクシニアウイルスアセンブリに対する50を超える特異的遺伝子の突然変異の影響が記載されている。
ワクシニアウイルスは、その表面膜と宿主細胞の原形質膜との融合、コア(および側体)の細胞質への放出、およびウイルス転写プログラムの活性化によって細胞に侵入する。
ビリオンコアは、初期mRNAの合成および修飾に必要なウイルスコード酵素の完全な相補物を含む。初期遺伝子はDNA増幅に必要な酵素をコードし、従って、初期遺伝子発現がピークに達した際に、「工場」と呼ばれる細胞質部位でウイルスDNAの増幅が続いて起こる。初期遺伝子はまた、中期転写因子、および中期遺伝子もコードし、さらに後期転写因子をコードし、これにより中期遺伝子と後期遺伝子は、ウイルスDNA増幅の必須の開始の後に連続して発現される。よって、ウイルス遺伝子の完全相補物は一時的カスケードで転写され、この初期、中期および後期クラスはクラス特異的転写プロモーターおよびウイルスによりコードされる転写因子により区別される。さらに、増幅されたゲノムだけが中期および後期転写の適格鋳型となる。これらの2つのクラスの遺伝子はともに、ビリオン構造タンパク質、ビリオン酵素、およびアセンブリ因子をコードし、新たな後代ウイルス粒子のアセンブリに必要とされる。
ビリオンコアは、初期mRNAの合成および修飾に必要なウイルスコード酵素の完全な相補物を含む。初期遺伝子はDNA増幅に必要な酵素をコードし、従って、初期遺伝子発現がピークに達した際に、「工場」と呼ばれる細胞質部位でウイルスDNAの増幅が続いて起こる。初期遺伝子はまた、中期転写因子、および中期遺伝子もコードし、さらに後期転写因子をコードし、これにより中期遺伝子と後期遺伝子は、ウイルスDNA増幅の必須の開始の後に連続して発現される。よって、ウイルス遺伝子の完全相補物は一時的カスケードで転写され、この初期、中期および後期クラスはクラス特異的転写プロモーターおよびウイルスによりコードされる転写因子により区別される。さらに、増幅されたゲノムだけが中期および後期転写の適格鋳型となる。これらの2つのクラスの遺伝子はともに、ビリオン構造タンパク質、ビリオン酵素、およびアセンブリ因子をコードし、新たな後代ウイルス粒子のアセンブリに必要とされる。
ウイルス取り込みおよび初期発現の後間もなく、濃度が均一で、経時的に大きくなる小胞体(ER)由来嚢により取り囲まれることがある細胞内に感染特異的細胞質ドメインが生じる。これらのドメインはウイルスDNA増幅の場となり、「ウイルス工場」と呼ばれることが多い。
ウイルスアセンブリは、ウイルス工場内での強固な半月型構造(三次元では杯))の形成で始まる。高解像度電子顕微鏡写真では、これらの半月型構造の外層は、「スピキュラ(spicules)」と呼ばれる一定間隔の突起から構成される。半月体は、未成熟ビリオン(IV)と呼ばれる閉じた円(三次元では球体)となるまで、同じ曲率を維持しつつ見掛け上長くなる。IVは、濃度は均一ながら周囲の工場より目に見えて電子密度が高い物質である「ウイロプラズム(viroplasm)」で充填されている。IVが生じると、キャプシド封入DNAの取り込みも起こり、これらは顕微鏡写真で「核様体(nucleoid)」と呼ばれるIV内の電子密度の高い円形または卵形のサブドメインとして見られる。濃DNAの核様体を含むIVは「IVN」と呼ばれることが多い。IVNから成熟ビリオン(MV)への形態形成には、タンパク質分解切断による数種のビリオンタンパク質前駆体の成熟が必要とされる。成熟ビリオンの大多数は工場の外部に見られ、工場の周縁部に、または最も近い工場からかなりの距離をおいて見かけ上分離して、クラスター状で存在し得る。
ポックスウイルスビリオンは、成熟ビリオン(MV)、ラップビリオン(wrapped virions)(WV)、および細胞外ビリオン(EV)の3つの感染性形態で存在する。ウイルスの最も単純な形態であるMVは、コアの陥凹部を満たす側体により挟み込まれた、両凹のDNA含有コアを含む膜状の粒子である。MVは通常、もっぱら細胞内部に見られ、細胞溶解によってはじめて遊離する。WVは、トランスゴルジ槽に由来する2つの付加的な脂質二重層に取り囲まれたMVからなる。WVは、その外膜が特徴的なウイルスタンパク質を含み、EVの前駆体であり、これもまた細胞内に見られる。EVは、最外WV膜と原形質膜の融合によりエキソサイトーシスを受けたWVからなり、MVは1層の付加的な膜に包まれたままとなる。EVの一部は細胞表面と結合しているのが見られ、一部は細胞外媒体中に遊離しているのが見られる。EVは、生物体内でのウイルスの拡散に重要であると思われる。
ウイルス由来の必須遺伝子の除去および宿主細胞における補足は、処置および療法のために安全かつ効果的なウイルスベクターを作出するために一般的な提案戦略として当技術分野で知られている。高い安全性、発現および/または免疫原性を有する改良された弱毒オルソポックスベクターが必要であり、ならびに、これに見合ったそのようなオルソポックスベクターを安全かつ経済的に複製および製造する方法が必要である。
いくつかの哺乳動物細胞株が研究目的の組換えタンパク質の製造に使用される。これらには、ウサギ、ハムスター、霊長類およびヒト由来細胞株、例えば、限定されるものではないが、当技術分野で公知のように、HEK293、293T、143B、CHO、HeLa、VeroおよびBHK、HepG2、および3T3細胞が挙げられる。しかしながら、特に、大多数の組換え治療用タンパク質のGMP生産はCHO細胞で製造されてきたので、この細胞株が最もよく研究され、ヒト治療薬として承認された細胞株となっている。CHO細胞は懸濁培養として極めて高密度で増殖させることができ、生成物を精製するための下流プロセスが十分に開発されている。関連することとして、ワクシニア−COPまたはワクシニア−WRまたはその誘導体、例えば、MVAおよびNYVACなどのワクシニアにはCHO細胞で増殖するものはない。
ローカルウイルスプロモーターの制御下でのポックスウイルス内からのウイルス宿主域遺伝子の発現およびポックスウイルスRNAポリメラーゼは当技術分野で公知である。
ウイルス複製をレスキューまたは許容し、宿主細胞の生存を許容するための適時様式での哺乳動物細胞のゲノムからのある特定のウイルス宿主域遺伝子の発現はこれまでに記載されたことはない。
本明細書は、ポックスウイルス宿主域因子を発現するように形質転換されたin vitro培養哺乳動物細胞およびそのような細胞を培養することを含んでなるウイルスベクターを増殖させるための方法を記載する。
第1の態様において、本発明は、改変細胞株が非改変細胞ではほとんど増殖できない、または増殖不能であるポックスウイルスの増殖を保持するよう、プロモーターの制御下にCP77をコードする配列を含んでなるように細胞のゲノムが改変された、改変哺乳動物細胞を提供する。
第2の態様において、本発明は、CHO細胞では増殖しないオルソポックスウイルスを増殖させるための方法であって、in vitroで哺乳動物細胞株においてポックスウイルスを増殖させることを含んでなり、前記細胞株がプロモーターの制御下にCP77をコードおよび発現するように改変されている方法を提供する。
種々の別の実施態様では、改変細胞は、プロモーターの制御下にD13Lをコードする配列を含んでなるように、かつ/またはプロモーターの制御下にK1Lをコードする配列を含んでなるようにさらに改変される。
本明細書で「CP77」、「K1L」および「D13L」という場合には、機能的オーソログおよび機能的変異体を含む。
本発明は、特定の手順または薬剤、薬剤の特定の処方物および種々の医学的方法論に限定されず、従って、異なってもよい。本明細書で使用される用語は特定の実施態様を記載するためのものに過ぎず、限定を意図しない。そうではないことが定義されない限り、本明細書で使用される総ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の熟練者により共通に理解されているものと同じ意味を有する。
本明細書に記載のものと類似または同等の材料および方法はいずれも本発明を実施または試験するために使用可能である。実務者は特にSambrook et al., (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Press, Plainsview, N.Y.; Ausubel et al. (1999) Current Protocols in Molecular Biology (Supplement 47), John Wiley & Sons, New York; Murphy et al. (1995) Virus Taxonomy Springer Verlag:79-87, Mahy Brian WJ and Kangro O Hillar (編): Virology Methods Manual 1996, Academic Press; and Davison AJ and Elliott RM (編): Molecular Virology, A practical Approach 1993, IRL Press at Oxford University Press; Perkus et al., Virology (1990) 179(1):276-86、または当技術分野の定義および用語ならびに当業者に公知の他の方法に従う。
本明細書に記載のものと類似または同等の方法および材料が本発明の実施または試験に使用可能であるが、好ましい方法および材料を記載する。本発明の目的で、以下の用語は下記のように定義される。
本明細書を通じて、文脈がそうではないことを必要としない限り、用語「含んでなる("comprise," "comprises" and "comprising")」は、記載の工程もしくは要素または工程群もしくは要素群の包含を意味するが、他の任意の工程もしくは要素または工程群もしくは要素群の排除を意味しないと理解される。このように、用語「含んでなる」などの使用は、挙げられている要素が必要または必須であるが、他の要素は任意選択であり、存在してもしなくてもよいことを示す。弱毒オルソポックスベクターに関しては、対象ベクターは、必須成熟またはアセンブリ遺伝子の欠失を含んでなることによって弱毒のために改変されているが、抗原または他のタンパク質を運ぶためなどのさらなる改変が包含される。
「からなる」とは、限定されるものではないが、「からなる」という句の後に来るものを含むことを意味する。よって、「からなる」という句は、挙げられている要素が必要または必須であり、他の要素は存在しなくてよいことを示す。「から本質的になる」とは、この句の後に挙げられ、かつ、挙げられている要素に関して本開示で明示された活性または作用に干渉しないまたは寄与しない他の要素に限定されるいずれの要素も含むことを意味する。よって、「から本質的になる」という句は、挙げられている要素が必要または必須であるが、他の要素は任意選択であり、挙げられている要素の活性または作用も影響を及ぼすかどうかに応じて存在してもしなくてもよいことを示す。
本明細書で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈がそうではないことを明示しない限り、複数の態様も含む。よって、例えば、「1つの細胞(a cell)」という場合には、単細胞ならびに2以上の細胞を含む、「1個体の生物(a organism)」は、1個体の生物体ならびに2個体以上の生物を含むなどである。いくつかの実施態様では、「1つの(an)」は「1または1以上」を意味する。
本明細書で使用する場合、「および/または」は、挙げられている1以上の関連用語のいずれかおよびすべてのあり得る組合せ、ならびに択一(または)で解釈される場合には組合せの欠如を意味し、包含する。
「弱毒」または「弱毒された」とは、本明細書で使用する場合、ウイルスベクターの毒力の軽減を意味する。毒力は、特定の宿主で疾患を引き起こすウイルスの能力と定義される。感染性ウイルスを産生できないポックスウイルスベクターはまず細胞に感染し得るが、宿主内でそれ自体完全に複製もしくは増殖すること、または病態を引き起こすことが実質的にできない。これは、ベクターがそのタンパク質または核酸を宿主細胞の細胞質に送達するが対象に害を与えないので望ましい。
「制御エレメント」または「制御配列」とは、特定のポックスウイルス、ベクター、プラスミドまたは細胞内における、機能的に連結されたコード配列の発現に必要な核酸配列(例えばDNA)を意味する。真核細胞に好適な制御配列としては、転写制御配列、例えば、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、転写エンハンサー、翻訳制御配列(例えば、翻訳エンハンサーおよび内部リボソーム結合部位(IRES))、mRNAの安定性を調整する核酸配列、ならびに転写されたポリヌクレオチドによりコードされた生成物を細胞内の、ある細胞内コンパートメント、または細胞外環境に標的化する標的化配列が挙げられる。
配列が示されている場合には、相当する配列が包含される。「相当する("corresponds to" "corresponding"または"corresponding to")」とは、参照核酸配列と実質的配列同一性(例えば、参照核酸配列の全部もしくは一部との少なくとも約50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、97、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%もしくはさらには最大100%の配列同一性)を示す核酸配列、または参照アミノ酸配列と実質的配列類似性もしくは同一性(例えば、参照アミノ酸配列の全部もしくは一部との少なくとも50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、97、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%もしくはさらには最大100%の配列類似性もしくは同一性)を示すアミノ酸配列を意味する。
ある病態の治療もしくは予防に関する、または標的抗原または生物に対する免疫応答の調整のための「有効量」とは、そのような治療もしくは予防を必要とする個体への、単回用量または一連の処置の一部として、その病態の症状を受けることの予防、そのような症状の抑制、および/または既存の症状の治療のため、あるいは標的抗原または生物に対する免疫応答の調整のための量の薬剤(例えば、本明細書に記載の弱毒オルソポックスベクター)またはそれを含んでなる組成物の投与を意味する。有効量は処置される個体の健康および身体状態、処置される個体の分類群、組成物の処方、医学的状況の評価、および他の関連因子によって異なる。その量は通常の試験によって決定できる比較的広い範囲に入ると予想される。
本明細書で使用する場合、用語「コードする("encode," "encoding" and the like)」は、核酸の、別の核酸またはポリペプチドを提供する能力を意味する。例えば、核酸配列は、 それが転写および/もしくは翻訳されてポリペプチドを生成できれば、またはそれが転写および/もしくは翻訳されてポリペプチドを生成できる形態にプロセシングされ得るならば、そのポリペプチドを「コードする」と言われる。このような核酸配列は、コード配列またはコード配列と非コード配列の双方を含み得る。よって、用語「コードする("encode," "encoding" and the like)」は、DNA分子の転写から生じるRNA産物、RNA分子の翻訳から生じるタンパク質、DNA分子の転写によるRNA産物の形成およびその後のRNA産物の翻訳から生じるタンパク質、またはDNA分子の転写によるRNA産物の提供、そのRNA産物のプロセシングによるプロセシングRNA産物(例えばmRNA)の提供、およびその後のそのプロセシングRNA産物の翻訳により生じるタンパク質を含む。
用語「内因性」とは、宿主生物に通常見られる遺伝子または核酸配列またはセグメントを意味する。
用語「発現可能な」、「発現された」およびその変形形態は、細胞の、ヌクレオチド配列をRNAに転写し、場合によりそのmRNAを翻訳して、生物学的または生化学的機能を提供するペプチドまたはポリペプチドを合成する能力を意味する。
本明細書で使用する場合、用語「遺伝子」は、場合によりこのプロセスを助けるためのエレメントの付加を伴って、mRNAの生成のために使用され得る核酸分子を含む。遺伝子は、機能的タンパク質を生成するために使用可能であってもなくてもよい。遺伝子は、コード領域と非コード領域(例えば、イントロン、調節エレメント、プロモーター、エンハンサー、終止配列および5’および3’非翻訳領域)の両方を含み得る。
用語「異種核酸配列」、「異種ヌクレオチド配列」、「異種ポリヌクレオチド」、「外来ポリヌクレオチド」、「外因性ポリヌクレオチド」などは、実験操作により生物のゲノムに導入され、その導入遺伝子が改変前ウイルスゲノム配列に対して何らかの改変(例えば、少なくとも1つのヌクレオチドの点突然変異、欠失、置換または付加、エンドヌクレアーゼ切断部位の存在、loxP部位の存在など)を含む限り、その生物体に見られる遺伝子配列を含み得る任意の核酸(例えば、IRESを含んでなるヌクレオチド配列)を意味して互換的に使用される。
用語「異種ポリペプチド」、「外来ポリペプチド」および「外因性ポリペプチド」は、上記に定義されたような「異種核酸配列」、「異種ヌクレオチド配列」、「異種ポリヌクレオチド」、「外来ポリヌクレオチド」および「外因性ポリヌクレオチド」によりコードされる任意のペプチドまたはポリペプチドを意味して互換的に使用される。
用語「哺乳動物細胞」は、本発明の弱毒オルソポックスベクターを含むベクターがポックスウイルスベクターを増殖させる目的で導入され得る細胞を意味する。一つの実施態様では、細胞は連続細胞株である。改変細胞は連続的に分裂可能な細胞株であることはそれほど重要でない。哺乳動物細胞または高等真核細胞は、本発明に従って改変され、その後、形質転換または不死化されて連続的に分裂する細胞株となり得る。しかしながら、修飾前の細胞は、好都合には、十分に特性決定された、当技術分野で公知の連続的に分裂するバイオテクノロジー適合性連続細胞株である。このような細胞は好都合には、American Type Culture Collection(ATCC)またはEuropean Collection of Cell Cultures(ECACC)などの寄託機関から入手可能である。
好適な哺乳動物細胞株としては、限定されるものではないが、RK18、BHK、VERO、HBOC−143B、HaCat、HepG2、HeLa、HT1080、HEK−293、RD、COS−7、CHO、Jurkat、HUT、SUPT、C8166、MOLT4/クローン8、MT−2、MT−4、H9、PM1、CEM、骨髄腫細胞(例えば、SB20細胞)およびCEMX174が例えばATCCから入手可能である。
異種遺伝子を発現する改変細胞株を産生するための当技術分野で認知されているいずれのゲノム操作法も使用可能である。piggyBacベクターを使用することにより遺伝子を細胞ゲノムに挿入するためのトランスポゾン技術の使用が挙げられる。しかしながら、遺伝子を細胞に導入するためには、限定されるものではないが、レトロウイルス形質導入(例えば、MoMLVなど)、レンチウイルス形質導入、プラスミドトランスフェクションおよび組み込み、アデノウイルス、AAV(アデノウイルス随伴ウイルス)、EBVなどの、細胞株を形質転換させるための他のウイルス系、および線状DNAを用いた相同組換えによる部位特異的挿入のためのゲノム編集技術、操作済みメガヌクレアーゼ(meganucelases)、転写アクチベーター様エフェクターヌクレアーゼ(TAL−ヌクレアーゼ)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)およびCRISPRを含む多くの方法が認識されている。
一つの実施態様では、哺乳動物細胞はCHO細胞である。従来技術のCHO細胞株は、ウイルス宿主名遺伝子をコードせず、ヒトで実質的に増殖できないワクシニアまたはワクシニア誘導体の生産を支持することはない。当業者に知られているように、ハムスター(Cricetulus griseus)の卵巣に由来するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、抗体を含む組換えタンパク質治療薬のバイオ産業的GMP製造に最も慣用されている哺乳動物細胞である。このためのCHO細胞の普及は、一つには、それらの速い増殖と高いタンパク質生産から来ている。結果として、CHO細胞株はよく特性決定がなされている。好適なCHO細胞株としては、限定されるものではないが、A2、A2H、XrS6、CHO−K1、CHO/dhfr、RR−CHO−K1、UT−I、P22、CHO−1C6、Lec1、Lec2、Lec8、Pro−5およびCDKXB1株が挙げられる。ATCCに受託番号ATCC CLL−61またはATCC CRL−9618として寄託されたCHO−K1細胞株が頻用される。CHO−K1細胞株は、Puck T.(1957)により成体チャイニーズハムスターの卵巣生検から誘導した親CHO細胞株に由来するサブクローンとして誘導されたものである。本明細書は、改変CHO細胞以外の改変細胞を記載する。
いくつかの実施態様では、哺乳動物細胞は、ヒト細胞、霊長類細胞、ハムスター細胞またはウサギ細胞である。
細胞は単細胞であってもよいし、または液体培養または単層などとして組織培養で増殖させることができる。宿主細胞はまた、組織から直接的もしくは間接的に誘導されてもよく、または動物を含む生物体内に存在してもよい。
本明細書で企図されるような免疫応答の「誘発」は、免疫応答の惹起もしくは刺激および/または既存の免疫応答の増強を含むと理解される。
本明細書で使用する場合、用語「内部リボゾームエントリー部位」または「IRES」は、内部リボゾームエントリー部位の下流(すなわち3’側)に位置する機能的に連結されたコード領域の翻訳を提供するために、同じmRNA内のコード領域に対して内部の部位で、またはmRNAの5’末端の3’部位でmRNAの翻訳の開始を可能とするウイルス、細胞、または合成(例えば、組換え)ヌクレオチド配列を意味する。これにより、翻訳は5’キャップ構造に非依存的となり、かつ、mRNAの5’末端に非依存的となる。
IRES配列は、機能的に連結されたコード領域の翻訳の開始に必要な必須のシス作用配列を提供する。
IRES配列は、機能的に連結されたコード領域の翻訳の開始に必要な必須のシス作用配列を提供する。
本明細書で使用する場合、用語「単離された」は、化合物が本来見られる環境とは異なる環境にある対象とする細胞、化合物(例えば、組換えポックスウイルス、ゲノム、ポリペプチドなどの核酸分子)を表すものとする。「単離された」とは、対象化合物が実質的に富化されているサンプル内にある、および/または対象化合物が部分的もしくは実質的に精製されている化合物を含むものとする。
用語「機能的に接続された」または「機能的に連結された」とは、本明細書で使用する場合、そのように記載された成分が、それらをそれらの意図される様式で機能することを可能とする関係にある並列を意味する。例えば、コード配列と「機能的に連結された」転写制御配列は、転写制御配列と適合する条件下でコード配列の発現を可能とするための、コード配列に対する転写制御配列の配置および/または配向を意味する。別の例では、オルソポックスウイルスコード配列と機能的に接続されたIRESは、オルソポックスウイルスコード配列のキャップ非依存的翻訳を可能とするための、オルソポックスウイルスコード配列に対するIRESの配置および/または配向を意味する。
本明細書で使用される場合、用語「オープンリーディングフレーム」および「ORF」は、本明細書では、コード配列の翻訳開始コドンと翻訳終止コドンの間にコードされるアミノ酸配列を意味して互換的に使用される。用語「開始コドン」(例えば、ATG)および「終止コドン」(例えば、TGA、TAA、TAG)は、タンパク質合成(mRNAの翻訳)のそれぞれ開始および鎖終止を明示するコード配列内の3つの隣接するヌクレオチドの単位(「コドン」)を意味する。
本明細書で使用する場合、用語「親ウイルス」は、異種核酸配列を組み込んで本発明の組換えウイルスを形成するように改変されたウイルスをいうものと理解される。
用語「ポリヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド配列」、「ヌクレオチド配列」,「核酸」または「核酸配列」は本明細書で使用する場合、mRNA、RNA、cRNA、cDNAまたはDNAを表す。この用語は一般に、少なくとも10塩基長の、リボヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチドまたはいずれかのタイプのヌクレオチドの改変形態のヌクレオチドのポリマー形態を意味する。この用語はRNAまたはDNAの一本鎖形態および二本鎖形態を含む。
「ポリペプチド」、「ペプチド」、「タンパク質」および「タンパク質分子」は、アミノ酸残基のポリマーを含んでなるまたはからなる分子、ならびにその変異体および合成類似体を意味して、本明細書では互換的に使用される。よって、これらの用語は、1以上のアミノ酸残基が合成非天然アミノ酸、例えば、対応する天然アミノ酸の化学類似体であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然アミノ酸ポリマーに当てはまる。
本明細書で使用する場合、用語「組換え」は、「核酸分子」、「ポリヌクレオチド」などに当てはまる場合、本明細書に記載の宿主細胞または無細胞系で転写および/または翻訳され得る人工核酸構造(すなわち、非複製cDNAまたはRNA;またはレプリコン、自己複製cDNAまたはRNA)を意味すると理解される。組換え核酸分子またはポリヌクレオチドは、ベクターに挿入してもよい。プラスミド発現ベクターまたはウイルスベクターなどの非ウイルスベクターが使用可能である。ベクターの種類および本発明による核酸構築物の挿入の技術は当業者に公知である。本発明による核酸分子またはポリヌクレオチドは、本発明により記載される配置では天然に存在しない。言い換えれば、異種ヌクレオチド配列は、親ウイルスゲノムのエレメント(例えば、プロモーター、ORF、ポリアデニル化シグナル、リボザイム)と天然には組み合わされていない。
本明細書で使用する場合、用語「組換えウイルス」は、少なくとも1つの異種核酸配列を含んでなる「親ウイルス」をいうと理解される。
用語「配列同一性」は、本明細書で使用する場合、配列が比較ウインドウにおいてヌクレオチドとヌクレオチドベースまたはアミノ酸とアミノ酸ベースで同一である程度を意味する。よって、「配列同一性のパーセンテージ」は、2つの最適にアラインされた配列を比較ウインドウにおいて比較すること、両配列において同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)または同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、CysおよびMet)が見られる位置の数を決定してマッチする位置の数を求めること、マッチする位置の数をその比較ウインドウの位置の総数(すなわち、ウインドウサイズ)で割ること、およびその商に100を掛けて配列同一性パーセンテージを得ることにより計算される。本発明の目的では、「配列同一性」は、DNASISコンピュータープログラム(ウインドウズ用バージョン2.5;日立ソフトウエアエンジニアリングCo.,Ltd.、サウスサンフランシスコ、カリフォルニア州、USA)により、そのソフトウエアに添付されている参照マニュアルで使用されている標準デフォルトを用いて計算された「マッチパーセンテージ」を意味すると理解される。
用語「シグナル配列」または「シグナルペプチド」は、サイトゾルから例えば、核、ミトコンドリアマトリックス、および小胞体などの特定のオルガネラへタンパク質の同時翻訳輸送または翻訳後輸送を指示する短い(約3〜約60アミノ酸長の)ペプチドを意味する。ER標的化シグナルペプチドを有するタンパク質の場合、シグナルペプチドは一般に、タンパク質がERに輸送された後にシグナルペプチダーゼによりその前駆形態から切断され、生じたタンパク質は二次経路に沿ってそれらの細胞内(例えば、ゴルジ体、細胞膜または細胞壁)または細胞外の場所へ移行する。「ER標的化シグナルペプチド」は、本明細書で使用する場合、通常、タンパク質の一部または全部がER膜からERの内腔へ挿入された後に酵素的に除去されるアミノ末端疎水性配列を含む。よって、配列のシグナル前駆形態はタンパク質の前駆形態の一部として存在し得るが、一般にそのタンパク質の成熟形態には存在しないことは当技術分野で公知である。
「類似性」は、同一であるかまたは以下の表Aに定義される保存的置換を構成するアミノ酸数のパーセンテージを意味する。類似性は、GAP(Deveraux et al. 1984, Nucleic Acids Research12: 387-395)などの配列比較プログラムを用いて決定することができる。 このように、本明細書に挙げられているものと類似のまたは実質的に異なる長さの配列は、アラインメントにギャップを挿入することによって比較可能であり、このようなギャップは、例えば、GAPにより使用されている比較アルゴリズムにより決定される。
比較ウインドウをアラインするための配列の最適アラインメントは、アルゴリズムのコンピューター化実行(Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0, Genetics Computer Group, 575 Science Drive Madison, WI, USAのGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)によるか、または目視と選択された種々の方法のいずれかによって作成された最良のアラインメント(すなわち、比較ウインドウにおいて最高の相同性パーセンテージをもたらす)によって行うことができる。また、例えば、Altschul et al., 1997, Nucl. Acids Res.25:3389により開示されているBLAST系列のプログラムも挙げられる。配列解析の詳細な考察は、Ausubel et al., "Current Protocols in Molecular Biology", John Wiley & Sons Inc, 1994-1998, Chapter 15のユニット19.3に見出すことができる。
本明細書で互換的に使用される用語「対象」、「患者」、「宿主」または「個体」は、治療または予防が望まれる任意の対象、特に、脊椎動物対象、いっそうより詳しくは、哺乳動物対象を意味する。本発明の範囲内に入る好適な脊椎動物としては、限定されるものではないが、霊長類(例えば、ヒト、サルおよび類人猿、マカク属(Macaca)(例えば、カニクイザル(Macaca fascicularis)、および/またはアカゲザル(Macaca mulatta)などのマカクザル)に由来するものなどのサルの種を含む)およびヒヒ(Papio ursinus)、ならびにマーモセット(マーモセット属(Callithrix)由来の種)、リスザル(リスザル属(Saimiri)由来の種)、およびタマリン(タマリン属(Saguinus)由来の種)、ならびにチンパンジー(Pan troglodytes)などの類人猿種、齧歯類(例えば、マウス、ラット、モルモット)、ウサギ類(例えば、ウサギ、ノウサギ)、ウシ類(例えば、ウシ)、ヒツジ類(例えば、ヒツジ)、ヤギ類(例えば、ヤギ)、ブタ類(例えば、ブタ)、ウマ類(例えば、ウマ)、イヌ類(例えば、イヌ)、ネコ類(例えば、ネコ)、鳥類(例えば、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガン、カナリア、セキセイインコなどの伴侶鳥類)、海洋哺乳動物(例えば、イルカ、クジラ)、爬虫類(ヘビ、カエル、トカゲなど)、および魚類を含む脊索動物亜門のいずれのメンバーも含む。好ましい対象は、病態の治療または予防を必要とするヒトである。しかしながら、前述の用語は症状が存在することを含意し
ないと理解される。
ないと理解される。
用語「導入遺伝子」は、本明細書では、宿主生物のゲノムに人為的に導入されたまたは導入しようとする、その宿主の後代の伝達される遺伝物質を表して使用される。いくつかの実施態様では、導入遺伝子はそれが導入される哺乳動物細胞もしくはオルソポックスベクターに所望の特性を付与するか、またはそうでなければ、所望の治療転帰または診断転帰につながる。
本明細書で使用する場合、用語「処置("treatment", "treating", and the like)」は、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを意味する。この効果は、疾患もしくはその症状を完全にもしくは部分的に予防するという点で予防的であってよく、かつ/または疾患および/もしくはその疾患に帰すことができる有害な影響を部分的もしくは完全に治癒するという点で治療的であってもよい。「処置」は、本明細書で使用する場合、哺乳動物、特にヒトにおける疾患のいずれの処置も包含し、(a)その疾患の素因を持ち得る対象においてその疾患が起こらないように予防すること;(b)疾患を抑制し、すなわち、その発症を阻止すること;および(c)疾患を軽減する、すなわち、その疾患を退縮させることを含む。
生物、ポリペプチド、または核酸配列に関して用語「野生型」、「天然(natural)」、「天然(native)」などは、その生物、ポリペプチド、または核酸配列が天然に存在する、または変化していない、突然変異を受けていない、もしくはそうでなければヒトにより操作されてない少なくとも1つの天然に存在する生物において入手可能であることを意味する。
変異体は、中または高ストリンジェンシーの条件下で選択的ハイブリダイゼーションが達成され得る、または参照ポックスウイルス宿主域因子を定義するヌクレオチド配列と少なくとも約15ヌクレオチドを含んでなる比較ウインドウにおいて約60%〜90%または90〜98%の配列同一性を有するように、参照分子またはその全体もしくは一部にわたるそれらの相補形態に十分に類似する核酸分子を含む。好ましくは、ハイブリダイゼーション領域は約12〜約18核酸塩基以上の長さである。好ましくは、特定のヌクレオチド配列と参照配列の間の同一性パーセントは、少なくとも約80%、または85%、またはより好ましくは約90%またはそれを超える類似性、例えば、約95%、96%、97%、98%、99%またはそれを超える類似性である。80%〜100%の間の同一性パーセントは包含される。ヌクレオチド配列の長さはその提案される機能によって異なる。
同族体も包含される。用語「ホモログ(単数)」、「相同遺伝子」または「ホモログ(複数)」は、他種由来のものも含め、機能的および構造的に関連のある分子を広く意味する。ホモログ種およびオーソログは変異体の例である。
同族体も包含される。用語「ホモログ(単数)」、「相同遺伝子」または「ホモログ(複数)」は、他種由来のものも含め、機能的および構造的に関連のある分子を広く意味する。ホモログ種およびオーソログは変異体の例である。
核酸配列同一性は以下のように決定することができる。対象核酸配列は、プログラムBLASTMバージョン2.1(Altschul et al. (1997) Nucleic Acids Research 25:3389-3402に基づく)を用い、GenBankデータベース(ウェブサイトhttp://www.ncbi.nln.nih.gov/blast/でアクセス可能)などの核酸配列データベースを検索するために使用される。このプログラムはギャップを含まないモードで使用する。低複雑性の領域による配列ホモロジーを除去するためにデフォルトフィルタリングを使用する。BLASTMのデフォルトパラメーターを使用する。
アミノ酸配列同一性は以下のように決定することができる。対象ポリペプチド配列は、BLASTPプログラムを用い、GenBankデータベース(ウェブサイトhttp://www.ncbi.nln.nih.gov/blast/でアクセス可能)などのポリペプチド配列データベースを検索するために使用される。このプログラムはギャップを含まないモードで使用する。低複雑性の領域による配列ホモロジーを除去するためにデフォルトフィルタリングを使用する。
BLASTPのデフォルトパラメーターを使用する。低複雑性配列のフィルタリングにはSEGプログラムを使用できる。
BLASTPのデフォルトパラメーターを使用する。低複雑性配列のフィルタリングにはSEGプログラムを使用できる。
好ましい配列は、参照配列またはその相補配列とストリンジェント条件下でハイブリダイズする。用語「ストリンジェント条件下でハイブリダイズする」、およびその文法的等価表現は、定義された温度および塩濃度条件下で標的核酸分子(サザンブロットまたはノーザンブロットなどのDNAまたはRNAブロット上に固定化されている標的核酸分子など)とハイブリダイズする核酸分子の能力を意味する。約100塩基長を超える核酸分子では、典型的なストリンジェントハイブリダイゼーション条件は、天然二重鎖の融点(Tm)よりも25℃〜30℃以内で(例えば、10℃)低い条件である(一般には、Sambrook et al., (前掲); Ausubel et al., (1999)参照)。約100塩基より大きい核酸分子のTmは、式Tm=81.5+0.41%(G+C−log(Na+))によって計算することができる。100塩基未満の長さの核酸分子では、例示的なストリンジェントハイブリダイゼーション条件は、Tmより5℃〜10℃低い。
本明細書において用語「欠失」は、標的遺伝子のコード領域の総てまたは一部の除去を意味する。この用語はまた、標的遺伝子の遺伝子発現を除去する、またはコードされているタンパク質のレベルまたは活性を除去もしくは実質的にダウンレギュレートする突然変異または形質転換のいずれの形態も包含する。
「遺伝子」という場合には、遺伝子のエキソンまたはオープンリーディングフレームに相当するDNAを含む。本明細書で「遺伝子」という場合にはまた、転写および/または翻訳調節配列および/またはコード領域および/または非翻訳配列(すなわち、イントロン、5’−および3’−非翻訳配列);または遺伝子のコード領域(すなわち、エキソン)ならびに5’−および3’−非翻訳配列に相当するmRNAもしくはcDNAからなる古典的ゲノム遺伝子を含むものとする。
「調節エレメント」または「調節配列」とは、特定の宿主細胞において機能的に連結されたコード配列の発現に必要な核酸配列(例えば、DNA)を意味する。例えば原核細胞に好適な調節配列としては、プロモーター、場合により、オペレーター配列およびリボソーム結合部位などのシス作用配列が挙げられる。真核細胞に好適な制御配列としては、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、転写エンハンサー、翻訳エンハンサー、mRNAの安定性を調整するリーダー配列またはトレーリング配列、ならびに転写されたポリヌクレオチドによりコードされている産物を細胞内部の細胞内コンパートメントまたは細胞外環境に標的化する標的化配列が挙げられる。
本改変哺乳動物細胞を達成するために好適なキメラ構築物は、調節配列に機能的に連結された、オルソポックス宿主域因子をコードする配列核酸を含んでなる。調節配列は好適には、細胞内での発現に適合する転写および/または翻訳制御配列を含んでなる。一般に、転写および翻訳調節制御配列としては、限定されるものではないが、プロモーター配列、5’非コード領域、シス調節領域、例えば、転写調節タンパク質または翻訳調節タンパク質のための機能的結合部位、上流オープンリーディングフレーム、リボゾーム結合配列、転写開始部位、翻訳開始部位、および/またはリーダー配列、終止コドン、翻訳終止部位および3’非翻訳領域をコードするヌクレオチド配列が挙げられる。当技術分野で公知の構成的プロモーターまたは誘導プロモーターが企図される。これらのプロモーターは、天然プロモーター、または2つ以上のプロモーターのエレメントを組み合わせたハイブリッドプロモーターであり得る。
企図されるプロモーター配列は、哺乳動物細胞にとって天然のものであっても、またはその領域が選択された生物において機能的である限り、別の供給源に由来するものであってもよい。プロモーターの選択は、意図される宿主細胞によって異なる。例えば、哺乳動物細胞での発現に使用可能なプロモーターとしては、カドミウムなどの重金属に応答して誘導され得るメタロチオネインプロモーター、β−アクチンプロモーター、ならびにとりわけSV40ラージT抗原プロモーター、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)前初期(IE)プロモーター、ラウス肉腫ウイルスLTRプロモーター、マウス乳癌ウイルスLTRプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP)、単純ヘルペスウイルスプロモーター、およびHPVプロモーター、特に、HPV上流調節領域(URR)などのウイルスプロモーターが挙げられる。これらのプロモーターは総て、当技術分野で十分に記載され、容易に入手可能である。
エンハンサーエレメントもまた、哺乳動物構築物の発現レベルを高めるために本明細書で使用可能である。例としては、Dijkema et al. (1985) EMBO J. 4:761に記載されているSV40初期遺伝子エンハンサー、例えばGorman et al., (1982) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:6777に記載されているラウス肉腫ウイルスの長い末端反復配列(LTR)由来のエンハンサー/プロモーター、および例えばBoshart et al. (1985) Cell 41:521に記載されているヒトCMV由来のエレメント、例えば、CMVイントロンA配列に含まれるエレメントが挙げられる。
キメラ構築物はまた3’非翻訳配列も含んでなり得る。3’非翻訳配列は、ポリアデニル化シグナルおよびmRNAプロセシングまたは遺伝子発現を果たし得る他の任意の調節シグナルを含むDNAセグメントを含んでなる遺伝子の部分を意味する。ポリアデニル化シグナルは、mRNA前駆体の3’末端へのポリアデニル酸トラクトの付加を果たすことを特徴とする。ポリアデニル化シグナルは、カノニカル型5’AATAAA−3’との相同性によって一般に認識されるが、変形形態もめずらしくない。3’非翻訳調節DNA配列は好ましくは約50〜1,000ntを含み、ポリアデニル化シグナルに加えて転写および翻訳終止配列、ならびにmRNAプロセシングまたは遺伝子発現を果たし得る他の任意の調節シグナルも含んでよい。
いくつかの実施態様では、キメラ構築物は、構築物を含有する細胞の選択を可能とするための選択マーカー遺伝子をさらに含む。選択遺伝子は当技術分野で周知であり、対象細胞での発現に適合される。
一つの実施態様では、オルソポックス構造またはアセンブリ遺伝子の発現はプロモーターの制御下にある。1つの非限定的実施態様では、プロモーターは、宿主細胞に対して有意な毒性作用が存在せずにウイルス増殖を維持するように十分なレベルのCP77の発現を指示する細胞構成的プロモーター、例えば、ヒトEF1α(ヒト延長因子1α遺伝子プロモーター)、DHFR(ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子プロモーター)またはPGK(ホスホグリセリン酸キナーゼ遺伝子プロモーター)である。プロモーターはまた誘導性、例えば、細胞誘導プロモーターであってもよい。MTH(メタロチオネイン遺伝子由来)ウイルスプロモーターもまた、CMV、RSV、SV−40、およびMoU3などの哺乳動物細胞で使用される。
第1の態様において、本発明は、改変細胞株が非改変細胞ではほとんど増殖できない、または増殖不能であるポックスウイルスの増殖を保持するよう、プロモーターの制御下にCP77をコードする配列を含んでなるように細胞のゲノムが改変された、改変哺乳動物細胞を提供する。
第2の態様において、本発明は、CHO細胞では増殖しないオルソポックスウイルスを増殖させるための方法であって、in vitroで哺乳動物細胞株においてポックスウイルスを増殖させることを含んでなり、前記細胞株がプロモーターの制御下にCP77をコードおよび発現するように改変されている方法を提供する。
一つの実施態様において、細胞のゲノムは、プロモーターの制御下にD13Lをコードする配列をさらに含んでなり、かつ/またはプロモーターの制御下にK1Lをコードする配列をさらに含んでなる。
別の実施態様では、細胞は連続細胞株、好ましくはCHO細胞である。
他の実施態様では、細胞は、ヒト細胞、霊長類細胞、ハムスター細胞またはウサギ細胞であり得る。
別の実施態様では、CP77遺伝子、D13L遺伝子および/またはK1L遺伝子は哺乳動物プロモーターの制御下にある。
別の実施態様では、CP77遺伝子の発現は、許容細胞株で見られるものと同等のウイルス収量を生じるようにウイルスの増殖を支持し、好ましくは、500を超えるウイルス複製増幅比を支持する。
別の実施態様では、CP77、D13Lおよび/またはK1Lは、哺乳動物細胞での発現のためにコドンが最適化された連続ヌクレオチド配列によりコードされる。
例としてK1L配列を配列番号6および配列番号7に示す。
本明細書は、改変(組換えまたは形質転換)細胞および培養高等真核生物宿主細胞におけるウイルスベクターのin vitro生産のための方法に広く関連し、ここで、この細胞はin vitroにおいて細胞内でまたは細胞集団を介してウイルスベクターの増幅を促進または助長するような方法で遺伝的に改変される。1つの非限定的実施態様において、本明細書は、改変チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞におけるワクシニアに基づくポックスウイルスの増殖を提供する。
当業者に知られているように、ハムスター(Cricetulus griseus)の卵巣に由来するチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、抗体を含む組換えタンパク質治療薬のバイオ産業的GMP製造に最も慣用されている哺乳動物細胞である。このためのCHO細胞の普及は、一つには、それらの速い増殖と高いタンパク質生産から来ている。結果として、CHO細胞株はよく特性決定がなされている。好適なCHO細胞株としては、限定されるものではないが、A2、A2H、XrS6、CHO−K1、CHO/dhfr、RR−CHO−K1、UT−I、P22、CHO−1C6、Lec1、Lec2、Lec8、Pro−5およびCDKXB1株が挙げられる。ATCCに受託番号ATCC CLL−61またはATCC CRL−9618として寄託されたCHO−K1細胞株が頻用される。CHO−K1細胞株は、Puck T.(1957)により成体チャイニーズハムスターの卵巣生検から誘導した親CHO細胞株に由来するサブクローンとして誘導されたものである。本明細書は、改変CHO細胞以外の改変細胞を記載する。
産生されるウイルスの収量を最大にするために、CHO細胞などの細胞株を、標準的技術を用いて懸濁培養に適合させることができる。組換えまたは改変細胞という場合にはその後代を含む。細胞は凍結または液体懸濁液の形態を含め、いずれの形態で販売してもよい。ポックスウイルスベクターに感染させた細胞を販売してもよい。
本明細書でCP77という場合には、Sphener et al. (1988)およびHsiao et al. (2006)に示されている牛痘宿主域遺伝子、ならびに本明細書で判定された通りに、哺乳動物宿主細胞のゲノム内で異種遺伝子として発現させた場合にポックスウイルスの増殖を支持することができるその機能的オーソログおよび改変形態を意味する。「改変形態」という場合には、野生型または参照配列に由来する変形形態(例えば、欠失、置換または付加)を含む。参照ヌクレオチド配列は配列番号1に示される。改変形態はコード領域または少なくとも200の連続する塩基対を含んでなるその1以上の部分にわたって少なくとも80%の配列同一性を共有する。改変形態は、CHO細胞を含め、哺乳動物または他の高等真核細胞での発現のために最適化された、本明細書に記載のコドン最適化形態を含む。CP77とう場合には、オーソログ、すなわち、他種に存在するまたは異なる名称で識別される、同じ機能を有する遺伝子を含む。牛痘宿主域因子CP77はまた、VHR1、CHOhr、およびCPXV025とも呼ばれる。ワクシニアのウエスタンリザーブ(WR)株のCHOhr/CP77遺伝子は実質的に断片化され、機能的因子を産生できない。CP77はMVAおよびコペンハーゲン株には存在しない。
本明細書で「CP77」、「D13L」および「K1L」という場合には、機能的オーソログおよび機能的変異体を含む。「機能的」とは、培養細胞の哺乳動物ゲノムから発現中の細胞質内でポックスウイルスの増殖を支持するように指示された本明細書に記載の発現(すなわち、転写および翻訳)の質を意味する。用語「増殖」は、細胞内増殖および細胞間増殖を含み、成熟ウイルス粒子の生産を包含する。
一つの実施態様では、改変細胞の集団は、非改変対照細胞ではほとんど増殖できない、または増殖不能であるポックスウイルスの増殖を維持する。増殖不能とは、細胞から細胞へのまたは対象から対象への伝搬が一般に起こらないことを意味する。
「非改変対照細胞」と言う場合には、CP77、K1LおよびSPI−1からなる群から選択される少なくとも1つのウイルス宿主域因子をコードし、プロモーター、ならびに当技術分野で公知の他の好適な制御細胞の制御下でそのゲノムからそれを発現するような改変の前に存在する場合の改変細胞を含む。
例えば、MVAおよびワクシニアなどのポックスウイルスはCHO細胞で増殖することができない。しかしながら、驚くことに本明細書で判定されたように、プロモーターの制御下でそれらのゲノムからCP77を発現するように組換えにより改変されたCHO細胞は、ワクシニアだけでなくMVAなどのワクシニアの誘導体の増殖も支持することができる。対象改変CHO−CP77細胞における増殖の後、MVAおよびワクシニアは非改変CHO細胞または他の好適な対照ではやはり増殖することができない。
本明細書で「ポックスウイルス」という場合には、薬剤、予防薬、診断薬または治療薬として対象とする異種分子(例えば、対象とする抗原)をコードする組換えポックスウイルスベクターを含む。このような組換えポックスウイルスベクターは一般に、非ポックスウイルスにより誘発される疾患または病態に対するワクチンとして使用するためのものである。また、用語ポックスウイルスには、天然痘(variola or small pox)感染などのポックスウイルス感染に対して治療用または予防用ワクチンとして提案される単離されたポックスウイルスおよびそれらの誘導体も含む。
本明細書で「ワクシニアに基づく」という場合には、ワクシニアならびにワクシニアウイルスの誘導体および改変形態を含む。ワクシニアに基づく誘導体は、何ら限定されるものではないが、MVAおよびNYVACを含む。MVAおよびNYVACという場合には、当技術分野で公知のこれらのポックスウイルスの株または誘導体を含む。改変形態は1〜10またはそれを超える遺伝子における改変を有し得る。用語「改変」は、野生型または参照配列からの変形(例えば、欠失、置換または付加)を意味するものとする。「弱毒」とは、増殖しないか、または同じウイルスの非弱毒型に比べて関連の対象において実質的に低い程度でしか増殖しないポックスウイルスを含む。この用語はまた、対象において非病原性のウイルスも含む。
一つの実施態様では、細胞は連続細胞株である。改変細胞は連続的に分裂可能な細胞株であることはそれほど重要でない。哺乳動物細胞または高等真核細胞は、本発明に従って改変され、その後、形質転換または不死化されて連続的に分裂する細胞株となり得る。しかしながら、修飾前の細胞は、好都合には、十分に特性決定された、当技術分野で公知の連続的に分裂するバイオテクノロジー適合性連続細胞株である。このような細胞は好都合には、American Type Culture Collection(ATCC)またはEuropean Collection of Cell Cultures(ECACC)などの寄託機関から入手可能である。
好適な哺乳動物細胞株としては、限定されるものではないが、RK18、BHK、VERO、HBOC−143B、HaCat、HepG2、HeLa、HT1080、HEK−293、RD、COS−7、CHO、Jurkat、HUT、SUPT、C8166、MOLT4/クローン8、MT−2、MT−4、H9、PM1、CEM、骨髄腫細胞(例えば、SB20細胞)およびCEMX174が例えばATCCから入手可能である。
一つの実施態様では、細胞はCHO細胞である。従来技術のCHO細胞株は、ウイルス宿主名遺伝子をコードせず、ヒトで実質的に増殖できないワクシニアまたはワクシニア誘導体の生産を支持することはない。
いくつかの実施態様では、細胞はヒト細胞、霊長類細胞、ハムスター細胞またはウサギ細胞である。
本改変哺乳動物細胞を達成するために好適なキメラ構築物は、調節配列に機能的に連結された、ポックスウイルス宿主域因子をコードする配列核酸を含んでなる。調節配列は好適には、細胞内での発現に適合する転写および/または翻訳制御配列を含んでなる。一般に、転写および翻訳調節制御配列としては、限定されるものではないが、プロモーター配列、5’非コード領域、シス調節領域、例えば、転写調節タンパク質または翻訳調節タンパク質のための機能的結合部位、上流オープンリーディングフレーム、リボゾーム結合配列、転写開始部位、翻訳開始部位、および/またはリーダー配列、終止コドン、翻訳終止部位および3’非翻訳領域をコードするヌクレオチド配列が挙げられる。当技術分野で公知の構成的プロモーターまたは誘導プロモーターが企図される。これらのプロモーターは、天然プロモーター、または2つ以上のプロモーターのエレメントを組み合わせたハイブリッドプロモーターであり得る。
企図されるプロモーター配列は、哺乳動物細胞にとって天然のものであっても、またはその領域が選択された生物において機能的である限り、別の供給源に由来するものであってもよい。プロモーターの選択は、意図される宿主細胞によって異なる。例えば、哺乳動物細胞での発現に使用可能なプロモーターとしては、カドミウムなどの重金属に応答して誘導され得るメタロチオネインプロモーター、β−アクチンプロモーター、ならびにとりわけSV40ラージT抗原プロモーター、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)前初期(IE)プロモーター、ラウス肉腫ウイルスLTRプロモーター、マウス乳癌ウイルスLTRプロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP)、単純ヘルペスウイルスプロモーター、およびHPVプロモーター、特に、HPV上流調節領域(URR)などのウイルスプロモーターが挙げられる。これらのプロモーターは総て、当技術分野で十分に記載され、容易に入手可能である。
エンハンサーエレメントもまた、哺乳動物構築物の発現レベルを高めるために本明細書で使用可能である。例としては、Dijkema et al. (1985) EMBO J. 4:761に記載されているSV40初期遺伝子エンハンサー、例えばGorman et al., (1982) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:6777に記載されているラウス肉腫ウイルスの長い末端反復配列(LTR)由来のエンハンサー/プロモーター、および例えばBoshart et al. (1985) Cell 41:521に記載されているヒトCMV由来のエレメント、例えば、CMVイントロンA配列に含まれるエレメントが挙げられる。
キメラ構築物はまた3’非翻訳配列も含んでなり得る。3’非翻訳配列は、ポリアデニル化シグナルおよびmRNAプロセシングまたは遺伝子発現を果たし得る他の任意の調節シグナルを含むDNAセグメントを含んでなる遺伝子の部分を意味する。ポリアデニル化シグナルは、mRNA前駆体の3’末端へのポリアデニル酸トラクトの付加を果たすことを特徴とする。ポリアデニル化シグナルは、カノニカル型5’AATAAA−3’との相同性によって一般に認識されるが、変形形態もめずらしくない。3’非翻訳調節DNA配列は好ましくは約50〜1,000ntを含み、ポリアデニル化シグナルに加えて転写および翻訳終止配列、ならびにmRNAプロセシングまたは遺伝子発現を果たし得る他の任意の調節シグナルも含んでよい。
いくつかの実施態様では、キメラ構築物は、構築物を含有する細胞の選択を可能とするための選択マーカー遺伝子をさらに含む。選択遺伝子は当技術分野で周知であり、対象細胞での発現に適合される。
一つの実施態様では、ウイルス宿主域遺伝子の発現はプロモーターの制御下にある。1つの非限定的実施態様では、プロモーターは、宿主細胞に対して有意な毒性作用が存在せずにウイルス増殖を維持するように十分なレベルのCP77の発現を指示する細胞構成的プロモーター、例えば、ヒトEF1α(ヒト延長因子1α遺伝子プロモーター)、DHFR(ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子プロモーター)またはPGK(ホスホグリセリン酸キナーゼ遺伝子プロモーター)である。プロモーターはまた誘導性、例えば、細胞誘導プロモーターであってもよい。MTH(メタロチオネイン遺伝子由来)ウイルスプロモーターもまた、CMV、RSV、SV−40、およびMoU3などの哺乳動物細胞で使用される。
好都合には、一つの実施態様において、ウイルス宿主域遺伝子の発現は、許容細胞株で見られるものと同等のウイルス収量を生じるようにウイルスの増殖を支持する。ウイルス宿主域遺伝子の発現は、例えば、500を超えるウイルス複製増幅比を支持する。ウイルス宿主域遺伝子の発現は、有意な宿主細胞毒性なくウイルスの増殖を支持する。有意な宿主細胞毒性とは、未成熟宿主細胞死または分裂不全のためにウイルス収量を減じるウイルス宿主域因子発現のレベルを意味する。当業者ならば、宿主細胞の生存および複製などの宿主細胞パラメーター、ならびにウイルス宿主域遺伝子発現、ウイルス複製およびウイルス収量などのウイルスパラメーターを定性的または定量的に評価するための方法を知っている。
一つの実施態様では、ポックスウイルスは、機能的CP77またはCP77オーソログをコードするオルソポックスウイルス以外のコードポックスウイルスである。牛痘ウイルスはCP77をコードし、従って、本態様に包含されない。オルソポックスウイルスには、バッファローポックスウイルス、牛痘ウイルス、ラクダポックスウイルス、エクトロメリアウイルス、サル痘ウイルス、ウサギ痘ウイルス、アライグマ痘ウイルス(racconpox virus)、アレチネズミ痘ウイルス(teterapox virus)、ワクシニアウイルス、ハタネズミ痘ウイルス、スカンク痘ウイルス、および馬痘ウイルス(Uasin Gishu disease virus of horses)が含まれる。他の属には、パラポックスウイルス、アビポックスウイルス、カプリポックスウイルス、レポリポックスウイルス、豚痘ウイルス、モルシポックスウイルスおよびヤタポックスウイルスが含まれる。
一つの実施態様では、ポックスウイルスはヒト/対象において実質的に複製できないMVAまたはMVAの誘導体である。
一つの実施態様では、ポックスウイルスは、ヒトにおいてin vivoで実質的に複製できないワクシニアまたはワクシニアの誘導体である。
別の実施態様では、ポックスウイルスはポックスウイルスワクチンとして使用するために好適である。
1つのさらなる実施態様では、ポックスウイルスは、医学的対象の抗原などの対象とする異種分子をコードおよび発現する組換えポックスウイルスベクターであり、ここで、この組換えポックスウイルスベクターは、対象において診断薬、治療薬または予防薬として使用するためのものである。
本明細書でK1Lという場合には、Shisler and Jin (2004)により記載されている遺伝子およびそのオーソログまたは改変形態を意味する。
本明細書でSPI−1という場合には、Brookes et al. (1995)により記載されている宿主域遺伝子またはそのオーソログおよび改変形態を意味する。
いくつかの実施態様では、疑念を避けるため、本改良型のウイルス増殖法はポックスウイルスゲノムへの遺伝子の付加を必要としない。これは当然のことながら、限定されるものではないが、ワクチン目的で対象とする抗原としての異種分子をコードするため、または対象において免疫応答を生成するためなどの他の目的でのウイルスベクターの改変を排除しない。
宿主細胞核内からのポックスウイルス宿主域遺伝子の転写およびコードされている産物の翻訳は感染細胞で起こり、宿主細胞の細胞質でのポックスウイルスの増殖に十分である。いずれの特定の作用様式にも限定されないが、CP77はウイルス保護薬であることが提案される。
1つの例示的実施態様では、感染細胞株により発現されるポックスウイルス宿主域遺伝子はCP77である。実施例4に示されるように、CHO細胞核がCP77をコードおよび発現するように改変される場合、それは143Bなどの許容細胞株であった場合と同様にウイルス増幅を維持することができる。一般に、コンフルエントプラークは感染から2日以内に見られる。
別の実施態様では、改変細胞におけるウイルス増殖のレベルは、少なくとも10〜5000の増幅率を提供する。増幅率は、いくつかの実施態様では、500〜3000の間、または1000〜4000の間である。
別の実施態様では、異種ポックスウイルス宿主域遺伝子の発現を駆動するプロモーターは、細胞においてあるレベルのポックスウイルス宿主域異種遺伝子発現を提供する。CP77発現のレベルは、許容細胞において牛痘ウイルスにより生成されるものと同等かまたはそれを超え得る。
別の実施態様では、異種ポックスウイルス宿主域遺伝子の発現を駆動するプロモーターは、少なくとも許容細胞におけるウイルス増殖のレベルまでウイルス増殖を可能とするに十分な、細胞の異種遺伝子発現レベルを提供する。
一つの実施態様では、CHO細胞株におけるポックスウイルス生産は、陽性対照細胞におけるポックスウイルス生産レベルと同等かまたはそれを超える。
一つの実施態様では、CHO細胞におけるMVAウイルス生産レベルは、CEF細胞におけるMVAウイルス生産レベルと実質的に同等かまたはそれを超える。
一つの実施態様では、CP77、K1Lおよび/またはSPI−1は、哺乳動物細胞での発現のためにコドンが最適化された連続ヌクレオチド配列によりコードされる。
本明細書でさらに記載されるように、CP77をコードするコドンが最適化された核酸配列は、ブライトンレッド株(UniprotKB/Swiss−Prot:P12932.1)の牛痘CP77タンパク質をコードする配列と80%未満または75%未満のヌクレオチド配列同一性を持ち得る。いくつかの実施態様では、コドンが最適化された配列は、配列番号1で示される配列を有するか、または配列番号1で示される配列と少なくとも70%の配列同一性を有する核酸配列を含んでなる機能的変異体である。いくつかの実施態様では、CP77ウイルス宿主域因子は、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するか、または配列番号2で示されるアミノ酸配列と少なくとも70%のアミノ酸配列同一性を有する。
いくつかの実施態様では、本明細書に記載されるように、それらのゲノムからCP77を発現する改変哺乳動物細胞の集団、例えば、クローン集団を含んでなるまたは前記集団から本質的になるキットが企図される。いくつかの実施態様では、改変細胞はワクシニアウイルスを含有しない。
本明細書は、CHO細胞では増殖しないポックスウイルスを製造するためのプロセスまたは製造する方法をさらに記載し、そのプロセスは、in vitroで哺乳動物細胞株においてポックスウイルスを増殖させることを含んでなり、前記細胞株はプロモーターの制御下にCP77をコードおよび発現するように改変されている。このプロセスはウイルス粒子を単離することをさらに含んでなり得る。
細胞株は好都合には、薬剤または治療薬、診断薬または予防薬の製造に好適であることが当業者に知られている哺乳動物細胞株である。
本明細書は改変CHO細胞を記載し、このCHO細胞はCP77をコードし、プロモーターの制御下でゲノムからそれを発現するように改変されている。
一つの実施態様では、改変CHO細胞株は、CP77を発現しないものである非改変対照CHO細胞ではほとんど増殖できない、または増殖不能であるウイルスの増殖を維持する。
一つの実施態様では、ウイルスは、CP77をコードするオルソポックスウイルス以外のオルソポックスウイルスである。当技術分野で公知のように、牛痘ウイルスは、CP77をコードするポックスウイルスである。
いくつかの実施態様では、ウイルスは、in vivoでヒト/対象において実質的に複製できないワクシニアまたはワクシニアの誘導体である。
いくつかの実施態様では、ウイルスはMVAである。
別の実施態様では、本明細書は、ヒトにおいて実質的に複製できないポックスウイルスを増殖させる方法を提供し、この方法は、(i)CP77を発現するように形質転換されたCHO細胞を培養すること;および(ii)(i)から得られた培養CHO細胞に、ヒトにおいて実質的に複製できないポックスウイルスを感染させることを含んでなる。
別の実施態様では、本明細書は、ヒトにおいて実質的に複製できないポックスウイルスを増殖させる方法を提供し、この方法は、(i)CP77およびD13Lおよび/またはK1Lを発現するように形質転換されたCHO細胞を培養すること、および(ii)(i)から得られた培養CHO細胞に、ヒトにおいて実質的に複製できないポックスウイルスを感染させることを含んでなる。
別の実施態様では、本明細書は、MVAを増殖させる方法を提供し、この方法は、(i)CP77およびD13Lおよび/またはK1Lを発現するように形質転換されたCHO細胞を培養すること、および(ii)(i)から得られた培養CHO細胞にMVAを感染させることを含んでなる。
別の実施態様では、本明細書は、ヒトにおいて実質的に複製できないワクシニア誘導体を増殖させる方法を提供し、この方法は、(i)CP77およびD13Lおよび/またはK1Lを発現するように形質転換されたCHO細胞を培養すること、および(ii)(i)から得られた培養CHO細胞にワクシニア誘導体を感染させることを含んでなる。
別の実施態様では、本明細書は、異種タンパク質をコードするMVAを増殖させる方法を提供し、この方法は、(i)CP77およびD13Lおよび/またはK1Lを発現するように形質転換されたCHO細胞を培養すること、および(ii)(i)から得られた培養CHO細胞にMVAを感染させることを含んでなる。
別の実施態様では、本明細書は、ヒトにおいて実質的に複製できない、異種タンパク質をコードするワクシニア誘導体を増殖させる方法を提供し、この方法は、(i)CP77およびD13Lおよび/またはK1Lを発現するように形質転換されたCHO細胞を培養すること、および(ii)(i)から得られた培養CHO細胞にワクシニア誘導体を感染させることを含んでなる。
別の実施態様では、哺乳動物細胞株での発現のためのプロモーターなどの調節エレメントに機能的に接続されたウイルス宿主域遺伝子の核酸配列を含んでなる人為的に作出されたベクター、ポリヌクレオチドまたはプラスミドを提供する。いくつかの実施態様では、ウイルス遺伝子は、牛痘アンキリンリピートドメイン含有タンパク質CP77遺伝子(UniProtKBSwiss−Prot P12932.1[025LBR CP77タンパク質]である。一つの実施態様では、CP77などのウイルス宿主域遺伝子は、哺乳動物細胞株での発現のためにコドンが最適化される。好適なベクターおよびプラスミドは当技術分野で公知である。
一つの実施態様では、ポリヌクレオチドはCP77をコードする。いくつかの実施態様では、ポリヌクレオチドは、配列番号1で示されるヌクレオチド配列(CHOなどの哺乳動物細胞での発現のためにコドンが最適化されたもの)を含んでなる。いくつかの実施態様では、単離されたポリヌクレオチドは、配列番号1で示されるヌクレオチド配列または配列番号2で示されるアミノ酸配列をコードするその変異体を含んでなる。
別の実施態様では、本明細書は、ウイルス宿主域遺伝子を哺乳動物細胞へ安定挿入するための転位送達ベクターを記載した。
本明細書はまた、ウイルスに対して実質的に非許容性の哺乳動物または高等真核生物培養細胞をそのウイルスに対して許容性の細胞に形質転換する方法を提供し、この方法は、CP77を発現するように細胞を形質転換することを含んでなる。
いくつかの実施態様では、この方法は、細胞を、哺乳動物プロモーターの制御下、コードされているCP77の発現を指示することができるベクターでトランスフェクトすることを含む。
いくつかの実施態様では、ベクターは、哺乳動物プロモーターの制御下にCP77をコードする転位送達ベクターである。
1つの非限定的実施態様では、プロモーターは、宿主細胞に対して有意な毒性作用が存在せずにウイルス増殖を維持するように十分なレベルのCP77の発現を指示する細胞構成的プロモーター、例えば、ヒトEF1α(ヒト延長因子1α遺伝子プロモーター)、DHFR(ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子プロモーター)またはPGK(ホスホグリセリン酸キナーゼ遺伝子プロモーター)である。プロモーターはまた誘導性、例えば、細胞誘導プロモーターであってもよい。MTH(メタロチオネイン遺伝子由来)ウイルスプロモーターもまた、CMV、RSV、SV−40、およびMoU3などの哺乳動物細胞で使用される。
いくつかの実施態様では、細胞はCHO細胞である。
いくつかの実施態様では、ウイルスはポックスウイルスである。
いくつかの実施態様では、ポックスウイルスは、ヒトにおいて非病原性であるかまたは複製しないワクシニア誘導体である。
「単離された」とは、その自然状態でそれに通常伴っている成分を実質的にまたは本質的に含まない材料を意味する。例えば、「単離されたポリヌクレオチド」または「単離されたポリペプチド」などは、本明細書で使用する場合、その自然細胞環境からの、また、その細胞の他の成分との会合状態からのポリヌクレオチドまたはポリペプチド分子のin
vitro単離および/または精製を意味する。限定されるものではないが、単離された組成物、複合体、ポリヌクレオチド、ペプチド、またはポリペプチドは、精製により単離された天然配列または組換えもしくは合成手段により生成された配列を意味し得る。
vitro単離および/または精製を意味する。限定されるものではないが、単離された組成物、複合体、ポリヌクレオチド、ペプチド、またはポリペプチドは、精製により単離された天然配列または組換えもしくは合成手段により生成された配列を意味し得る。
変異体は、中または高ストリンジェンシーの条件下で選択的ハイブリダイゼーションが達成され得る、または参照ポックスウイルス宿主域因子を定義するヌクレオチド配列と少なくとも約15ヌクレオチドを含んでなる比較ウインドウにおいて約60%〜90%または90〜98%の配列同一性を有するように、参照分子またはその全体もしくは一部にわたるそれらの相補形態に十分に類似する核酸分子を含む。好ましくは、ハイブリダイゼーション領域は約12〜約18核酸塩基以上の長さである。好ましくは、特定のヌクレオチド配列と参照配列の間の同一性パーセントは、少なくとも約80%、または85%、またはより好ましくは約90%またはそれを超える類似性、例えば、約95%、96%、97%、98%、99%またはそれを超える類似性である。80%〜100%の間の同一性パーセントは包含される。ヌクレオチド配列の長さはその提案される機能によって異なる。
同族体も包含される。用語「ホモログ(単数)」、「相同遺伝子」または「ホモログ(複数)」は、他種由来のものも含め、機能的および構造的に関連のある分子を広く意味する。ホモログ種およびオーソログは変異体の例である。
同族体も包含される。用語「ホモログ(単数)」、「相同遺伝子」または「ホモログ(複数)」は、他種由来のものも含め、機能的および構造的に関連のある分子を広く意味する。ホモログ種およびオーソログは変異体の例である。
核酸配列同一性は以下のように決定することができる。対象核酸配列は、プログラムBLASTMバージョン2.1(Altschul et al. (1997) Nucleic Acids Research 25:3389-3402に基づく)を用い、GenBankデータベース(ウェブサイトhttp://www.ncbi.nln.nih.gov/blast/でアクセス可能)などの核酸配列データベースを検索するために使用される。このプログラムはギャップを含まないモードで使用する。低複雑性の領域による配列ホモロジーを除去するためにデフォルトフィルタリングを使用する。BLASTMのデフォルトパラメーターを使用する。
アミノ酸配列同一性は以下のように決定することができる。対象ポリペプチド配列は、BLASTPプログラムを用い、GenBankデータベース(ウェブサイトhttp://www.ncbi.nln.nih.gov/blast/でアクセス可能)などのポリペプチド配列データベースを検索するために使用される。このプログラムはギャップを含まないモードで使用する。低複雑性の領域による配列ホモロジーを除去するためにデフォルトフィルタリングを使用する。
BLASTPのデフォルトパラメーターを使用する。低複雑性配列のフィルタリングにはSEGプログラムを使用できる。
BLASTPのデフォルトパラメーターを使用する。低複雑性配列のフィルタリングにはSEGプログラムを使用できる。
用語「ストリンジェント条件下でハイブリダイズする」、およびその文法的等価表現は、定義された温度および塩濃度条件下で標的核酸分子(サザンブロットまたはノーザンブロットなどのDNAまたはRNAブロット上に固定化されている標的核酸分子など)とハイブリダイズする核酸分子の能力を意味する。約100塩基長を超える核酸分子では、典型的なストリンジェントハイブリダイゼーション条件は、天然二重鎖の融点(Tm)よりも25℃〜30℃以内で(例えば、10℃)低い条件である(一般には、Sambrook et al., (supra); Ausubel et al., (1999)参照)。約100塩基より大きい核酸分子のTmは、式Tm=81.5+0.41%(G+C−log(Na+))によって計算することができる。100塩基未満の長さの核酸分子では、例示的なストリンジェントハイブリダイゼーション条件は、Tmより5℃〜10℃低い。
「ベクター」とは、ポリヌクレオチドを挿入またはクローニングすることができる例えば、プラスミド、バクテリオファージ、酵母、ウイルス、哺乳動物、鳥類、爬虫類または魚類由来のポリヌクレオチド分子、好適にはDNA分子を意味する。ベクターは好ましくは、1以上のユニークな制限部位を含み、標的細胞もしくは組織またはその前駆細胞もしくは組織を含む定義された宿主細胞で自律的複製能を持ち得るか、またはクローニングされた配列が複製可能なように定義された宿主のゲノムと統合可能である。よって、ベクターは、自律的に複製するベクター、すなわち、染色体外実体として存在し、その複製が染色体複製とは独立であるベクター、例えば、線状もしくは閉環プラスミド、染色体外エレメント、ミニ染色体、または人工染色体であり得る。ベクターは、自己複製を保証するための任意の手段を含むことができる。あるいは、ベクターは、宿主細胞に導入された際にゲノムに組み込まれ、それが組み込まされた1または複数の染色体とともに複製されるものであり得る。ベクター系は、単一のベクターまたはプラスミド、宿主細胞のゲノムに組み込まれる全DNA、またはトランスポゾンを一緒に含む2以上のベクターまたはプラスミドを含んでなり得る。ベクターの選択は一般に、ベクターとベクターが導入される宿主細胞との適合性によって異なる。ベクターはまた、好適な形質転換体の選択のために使用可能な抗生物質耐性遺伝子などの選択マーカーを含むこともできる。このような耐性遺伝子の例は当業者に公知である。
「遺伝子」という場合には、遺伝子のエキソンに対応するcDNAを含む。本明細書で「遺伝子」という場合にはまた、転写および/または翻訳調節配列および/またはコード領域および/または非翻訳配列(すなわち、イントロン、5’−および3’−非翻訳配列);または遺伝子のコード領域(すなわち、エキソン)ならびに5’−および3’−非翻訳配列に相当するmRNAもしくはcDNAからなる古典的ゲノム遺伝子を含むものとする。
「調節エレメント」または「調節配列」とは、特定の宿主細胞において機能的に連結されたコード配列の発現に必要な核酸配列(例えば、DNA)を意味する。例えば原核細胞に好適な調節配列としては、プロモーター、場合により、オペレーター配列およびリボソーム結合部位などのシス作用配列が挙げられる。真核細胞に好適な制御配列としては、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、転写エンハンサー、翻訳エンハンサー、mRNAの安定性を調整するリーダー配列またはトレーリング配列、ならびに転写されたポリヌクレオチドによりコードされている産物を細胞内部の細胞内コンパートメントまたは細胞外環境に標的化する標的化配列が挙げられる。
相補配列およびこれらの配列の一部が包含される。用語「相補物」および「相補性」は、核酸分子に関して使用される場合、ワトソン−クリック塩基対形成で決定される相補的核酸配列を意味する。例えば、核酸配列5’CCATG3’の相補物は5’CATGG3’である。
「特異的にハイブリダイズする」などの句は、その配列が複雑な混合物(例えば、全細胞)DNAまたはRNA中に存在する場合にストリンジェント条件下で特定のヌクレオチド配列のみに対する分子の結合、二重鎖形成、またはハイブリダイゼーションを意味する。
本明細書で互換的に使用される用語「対象」または「個体」または「患者」は、治療または予防が望まれる任意の対象、特に脊椎動物対象、より詳しくは哺乳動物対象を意味する。本発明の範囲内に入る好適な脊椎動物としては、限定されるものではないが、霊長類、鳥類、家畜動物(例えば、ヒツジ、ウシ、ウマ、ロバ、ブタ)、研究試験動物(例えば、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、ハムスター)、伴侶動物(例えば、ネコ、イヌ)および捕捉された野生動物(例えば、キツネ、シカ、ディンゴ)が挙げられる。好ましい対象は、治療または予防を必要とするヒトなどの霊長類である。しかしながら、前述の用語は症状が存在することを含意しないと理解される。
本明細書において可能な種々の実施態様を以下の限定されない例によりさらに説明する。
実施例1
VACV−COPはCHO細胞で増殖できない
材料および試薬
・VACV−COP、VSS02、SEM120213、力価:1.6×10(8)pfu/mL
・Vero:WHO−VERO−MCB継代数141、08/08/2005、Virax Holdings Limited
・CHO:SA−Pathology 7.05.2004
・増殖培地:RPMI、10%FBS、Pen/Strep
・維持培地:RPMI、2%FBS、Pen/Strep
VACV−COPはCHO細胞で増殖できない
材料および試薬
・VACV−COP、VSS02、SEM120213、力価:1.6×10(8)pfu/mL
・Vero:WHO−VERO−MCB継代数141、08/08/2005、Virax Holdings Limited
・CHO:SA−Pathology 7.05.2004
・増殖培地:RPMI、10%FBS、Pen/Strep
・維持培地:RPMI、2%FBS、Pen/Strep
CHOおよびVero細胞を各細胞株につき1枚の6ウェルプレート(6−WP)でコンフルエントまで培養した。各ウェルに4×10(4)pfuのVACV−COP VSS02を室温で45分間感染させ、その後、37℃/5%CO2でインキュベートした。
各細胞株から、感染24時間、48時間、72時間後に2ウェルの内容物を採取してプールした。ウイルス抽出液は3回の凍結融解によって作製し、力価測定まで−80℃で保存した。各抽出液の力価を、実施例4に記載のプロトコールに記載の通りにVero細胞を用いて測定した。
各細胞株から、感染24時間、48時間、72時間後に2ウェルの内容物を採取してプールした。ウイルス抽出液は3回の凍結融解によって作製し、力価測定まで−80℃で保存した。各抽出液の力価を、実施例4に記載のプロトコールに記載の通りにVero細胞を用いて測定した。
凍結融解後、これらの大きな不溶塊を解すためにホモジネーションプローブを用いてよい。採取される各ウェルは2mLのMMを含有する。各時点で、2ウェルをプールして各時点について総容量を4mLとした。TEバッファーを加え、各時点で総容量6mLとしてもよい。
力価測定結果、ウイルス収量結果および生産率を表1に示す。これらの結果は、ウイルス生産が経時的に増すVero細胞とは異なり、CHO細胞ではVACV−COPは低moiから増殖できないことを示す。VACP−COPはCHO細胞では非許容性である。
実施例2
CHOとVero−CP77におけるVACV+PH22[CP77]の多段階増殖はVACVにおいて有効である
CP77をコードする牛痘ウイルスBR025L遺伝子を発現する組換えVACV−COP(VACV−PH22[CP77])のCHOでの増殖能を、多段階増殖試験でVero細胞と比較して決定した。
CHOとVero−CP77におけるVACV+PH22[CP77]の多段階増殖はVACVにおいて有効である
CP77をコードする牛痘ウイルスBR025L遺伝子を発現する組換えVACV−COP(VACV−PH22[CP77])のCHOでの増殖能を、多段階増殖試験でVero細胞と比較して決定した。
VACV−PH22は、CHO宿主域タンパク質CP77をコードする牛痘ウイルスのブライトン株由来の天然025L ORFを発現する組換えワクシニアウイルス・コペンハーゲン株である。ワクシニアにおけるこのORFはBR025L天然プロモーターの制御下にもある。天然BR025L遺伝子(天然プロモーターおよびORF)をクローニングし、赤色蛍光タンパク質もコードするpPH22、DsRed−Express2を作出した。pPH22は、可溶性および細胞表面IFNα/β受容体タンパク質をコードするBR025L遺伝子およびDsRed遺伝子をVACV−COPのB19R ORFに挿入する組み込みベクターである。BR025LおよびDsRedのVACV−COPへの挿入は、CHOに低多重度のVACV−COPを感染させる結果としての相同組換えとpPH22でのトランスフェクションにより達成した。BR025L遺伝子を含有するウイルスのみがCHO細胞でさらに増幅され、これは赤色蛍光感染細胞またはプラークの存在により視覚的に確認できる。
相同組換えの3日後に抽出されたウイルスをCHOで3倍に増幅させ、その後、CHO細胞におけるこの多段階増殖試験で使用する前にVero細胞で力価測定を行った。
材料および試薬
・VACV−COP、VSS02、SEM120213、力価:1.6×108pfu/mL
・VACV−PH22[CP77]、力価:8×106pfu/mL
・Vero:WHO−VERO−MCB継代数141、08/08/2005
・CHO:SA−Pathology 7.05.2004
・増殖培地:CHOおよびVero用としてRPMI、10%FBS、Pen/Strep
・維持培地:CHOおよびVero用としてRPMI、2%FBS、Pen/Strep
・VACV−COP、VSS02、SEM120213、力価:1.6×108pfu/mL
・VACV−PH22[CP77]、力価:8×106pfu/mL
・Vero:WHO−VERO−MCB継代数141、08/08/2005
・CHO:SA−Pathology 7.05.2004
・増殖培地:CHOおよびVero用としてRPMI、10%FBS、Pen/Strep
・維持培地:CHOおよびVero用としてRPMI、2%FBS、Pen/Strep
CHOおよびVero細胞を各細胞株につき2×T25フラスコ内でコンフルエントまで培養した。各細胞株の1本のフラスコに1×105pfuのVACV−COP VSS02を、もう1本に1×105pfuのVACV−PH22を室温で45分間感染させ、その後、37℃/5%CO2でインキュベートした。各細胞株から、感染96時間後に各フラスコの内容物を採取した。ウイルス抽出液は3回の凍結融解によって作製し、力価測定まで−80℃で保存した。各抽出液の力価を、24ウェルプレート形式で実施例4に詳細に示されたプロトコールに記載の通りにVero細胞を用いて測定した。
感染は、T25フラスコで、各細胞株についてフラスコ2本として行い、フラスコ1にVACV−COPを感染させ、フラスコ2にVACV−PH22を感染させた。採取は感染後96時間目にのみ行った。結果を表2に示す。表2から、CHO細胞はVACV−COP ウイルス後代の生産を支持することができないことが見て取れる。このことから実施例1に記載の結果が確認される。さらに、本研究における許容細胞株であるVero細胞の感染は接種物レベルを200倍を超えるまでに増幅したことからVACV−COPは活性があり、従って、CHOで見られた結果は宿主細胞の限界によるものであった。しかしながら、CP77が組換えワクシニアウイルスVACV−PH22により発現された場合、接種物の増幅は約700倍に達した。CP77の発現は、vero細胞にVACV−PH22を感染させた場合にも接種物は増幅したことから、ワクシニア宿主域をCHO細胞だけに限定するものではなかった。しかしながら、この増幅レベルは、CP77を含まないワクシニアほど良好でないかもしれない。力価測定結果の標準誤差は極めて大きいので、収量の差は有意とは言えない。
これらの結果は、ウイルスゲノムから発現されたCP77は、Veroなどの許容細胞基質から予想されるものと同等の収量をもたらすことによりVACV−COPを非許容性CHO細胞株で増幅可能とするのに十分過ぎるほどであることを示す。
CHO細胞のワクシニアウイルス感染中のCP77タンパク質の潜在的機能はHsiao et al. (2006)により報告されている。この著者らは、CP77がHMG20Aに結合し、ウイルス工場に位置する新たに合成されるワクシニアゲノムからそれを解離させ、これによりCHO細胞でワクシニア生活環を継続可能とするということを提案した。ここで、CP77が新たに合成されるゲノムをパッケージングのために利用できようにし、そうでなければ、HMG20aのゲノムへの結合およびゲノムの「ロック」のためにCHO細胞で利用可能とならないという仮説が立てられる。このCP77の機能はVeroなどの許容細胞株でのウイルス増幅には必要とされないことから、ここで、おそらく少なくともCHO細胞では不活性であるかまたは存在せず、許容細胞株では活性であるかまたは存在する、この機能を有する代替の等価なタンパク質、さらには細胞タンパク質が存在することが提案される。この代替タンパク質はCP77を不要とすることができ、従って、ワクシニアの進化上、その機能欠失は広い宿主域に必須ではなかったので、その後、欠失または再構成を受けた。
実施例3
p−LL07−CHO(CP77を発現するポリクローナル細胞株)の構築
CHO細胞株を、CP77タンパク質を発現するように構築した。緑色蛍光タンパク質(EGFP)を発現するVACV−COP組換えウイルスは、感染数日以内にコンフルエント感染に発達するプラークを形成する。
p−LL07−CHO(CP77を発現するポリクローナル細胞株)の構築
CHO細胞株を、CP77タンパク質を発現するように構築した。緑色蛍光タンパク質(EGFP)を発現するVACV−COP組換えウイルスは、感染数日以内にコンフルエント感染に発達するプラークを形成する。
ワクシニア−COP(SCV401C)は、増強緑色蛍光タンパク質(EGFP)のタンパク質コード配列に機能的に連結され、ポックスウイルス初期転写終止配列を末端に持つ強力なワクシニアウイルス初期/後期プロモーターからなる発現カセットがA39R ORFに挿入された組換えワクシニアウイルス・コペンハーゲン株(VACV−COP)である。非許容性細胞および許容細胞の感染時に、EGFPは感染細胞内で発現され、蛍光顕微鏡を用いて可視化することができる。許容細胞では、ウイルスが細胞集団に拡散するにつれ緑色蛍光が細胞から細胞へ拡散するのが見て取れる。
CP77タンパク質コード配列は、GeneArt GmbH(ドイツ)により、牛痘ウイルス・ブライトンレッド株UniProtKB/Swiss−Prot:P12932.1の025L ORFによりコードされるCP77のアミノ酸からDNA配列を再構築(バックトランスレーションまたはリバーストランスレーション)することによって合成生成され、哺乳動物(CHO)細胞での発現のためにコドンが最適化された。CP77のタンパク質コード配列の発現のためにコドンが最適化されたヌクレオチド配列については配列番号1を参照。
pPH51(コドンが最適化されたCP77タンパク質コード配列を保持するクローニングプラスミド)由来のコドンが最適化されたCP77タンパク質コード配列を、5’プライマーが開始コドン前後にコザック配列を付加するように設計され、3’プライマーが終止コドンの前にフラッグタグ配列を付加するように設計されたPCRプライマーを用いてPCR増幅した。増幅されたPCR産物を、DNA2.0 Inc(USA)から購入したトランスポゾンpiggybacベクターpJ507−2(Hyg+)にBsaIクローニング部位を介してサブクローニングした。BsaIへのクローニングは、comet GPFコード配列をCP77タンパク質コード配列に効果的に置き換えてpLL07作出する。この時、CP77はヒト構成的延長因子1αプロモーター(EF1a)の制御下となり、両者がトランスフェクト細胞のゲノムに安定に組み込まれれば、ハイグロマイシン耐性遺伝子とともに共発現される。
トランスポゾンにより補助されるCP77発現カセットとハイグロマイシン耐性発現カセットの安定挿入によるCHOの形質導入:
CHO細胞を6ウェルプレートの壁面に、一晩インキュベーション後に50%前後の集密度となるように播種した。QiagenからのEffecteneトランスフェクション試薬を用い、製造者の説明に従って、1μgのpLL07を1ウェルの50%コンフルエントのCHO細胞にトランスフェクトした。次に、トランスフェクト細胞を増殖培地で一晩インキュベートした。翌日、培地を、形質導入細胞を選択するために、500μg/mLハイグロマイシンBを含有する増殖培地に交換した。選択培地は2〜3日毎に交換し、形質導入細胞の数が増え始めたらそれらをTrypLE Select(Life Technologies)を用いて回収し、さらなる細胞の拡大培養のためにT25フラスコに播種した。
CHO細胞を6ウェルプレートの壁面に、一晩インキュベーション後に50%前後の集密度となるように播種した。QiagenからのEffecteneトランスフェクション試薬を用い、製造者の説明に従って、1μgのpLL07を1ウェルの50%コンフルエントのCHO細胞にトランスフェクトした。次に、トランスフェクト細胞を増殖培地で一晩インキュベートした。翌日、培地を、形質導入細胞を選択するために、500μg/mLハイグロマイシンBを含有する増殖培地に交換した。選択培地は2〜3日毎に交換し、形質導入細胞の数が増え始めたらそれらをTrypLE Select(Life Technologies)を用いて回収し、さらなる細胞の拡大培養のためにT25フラスコに播種した。
ウエスタンブロット法(フラッグタグ)CP77発現の確認
ウサギ抗CP77血清の作製:
ウサギに、CP77タンパク質の短い内部アミノ酸配列を表すKHLタンパク質に連結された15アミノ酸のペプチドを注射した。このアミノ酸配列は、UniProtKBSwiss−Prot P12932.1[025LBR CP77タンパク質]配列番号2の481〜495番のアミノ酸SGSDVNIRSNNGYTCであった。
ウサギ抗CP77血清の作製:
ウサギに、CP77タンパク質の短い内部アミノ酸配列を表すKHLタンパク質に連結された15アミノ酸のペプチドを注射した。このアミノ酸配列は、UniProtKBSwiss−Prot P12932.1[025LBR CP77タンパク質]配列番号2の481〜495番のアミノ酸SGSDVNIRSNNGYTCであった。
1か月あけて合計3回の注射を行い、このKHLコンジュゲートアミノ酸配列に対する抗体を作製した。注射したウサギからの血液を、細菌で発現させNi−NTAで精製したN末端HisタグCP77タンパク質に対するウエスタンブロットにより試験した。ウサギ抗CP77血清は、組換えCP77タンパク質を明確に認識することが示された。
p−LL07−CHOによりCP77発現に関する試験:
2本のT25フラスコにCHOおよびp−LL07−CHOを播種し、各フラスコ内で細胞単層が100%コンフルエントに達するまで培養した。各フラスコから細胞を採取し、PBSで洗浄した後、200μL中に再懸濁させた。これに、50μLの5×SDS−PAGEローディングバッファーを再懸濁細胞の各試験管に加えた後、98℃で5分間インキュベートした。15μLの各細胞タンパク質抽出液を2枚の10%SDS−PAGEゲルにロードし、電気泳動を行った後、エレクトロブロッティングによりHybond ECLニトロセルロースにブロットした。
2本のT25フラスコにCHOおよびp−LL07−CHOを播種し、各フラスコ内で細胞単層が100%コンフルエントに達するまで培養した。各フラスコから細胞を採取し、PBSで洗浄した後、200μL中に再懸濁させた。これに、50μLの5×SDS−PAGEローディングバッファーを再懸濁細胞の各試験管に加えた後、98℃で5分間インキュベートした。15μLの各細胞タンパク質抽出液を2枚の10%SDS−PAGEゲルにロードし、電気泳動を行った後、エレクトロブロッティングによりHybond ECLニトロセルロースにブロットした。
次に、エレクトロブロット膜をTween 20を含有するTris緩衝生理食塩水(TBST)に溶かした5%脱脂粉乳で室温にて1時間処理し、膜上の利用可能な総ての非特異的抗体結合部位をブロッキングした。次に、これらの膜をTBST中で数回洗浄した後、抗体でプロービングした。膜1は5000希釈のHRPコンジュゲート抗DDDDKタグ抗体[M2](ab49763、Sapphire Bioscience)で4℃にて一晩プロービングした。膜2は、1:100希釈の抗CP77抗血清で4℃にて一晩プロービングし、TBSTで3回洗浄した後、二次抗体として1:5000希釈のHRPコンジュゲート抗ウサギ抗体(GE Healthcare)で2時間プロービングした。その後、両方の膜をTBST中で3回洗浄し、ユーザーマニュアルにより指示されているように、ECLウエスタンブロッティング検出試薬(GE Healthcare)で処理し、X線フィルムに露光した。
CHOおよびp−LL7−CHOのプラークアッセイ:
CHO細胞およびp−LL7−CHO細胞を複数の6ウェルプレートに播種し、細胞単層が100%コンフルエントになるまで培養した。
CHO細胞およびp−LL7−CHO細胞を複数の6ウェルプレートに播種し、細胞単層が100%コンフルエントになるまで培養した。
初期/後期ワクシニアウイルスプロモーター(SCV401C)の制御下にEGFP発現カセット(緑色蛍光タンパク質)を保持する組換えワクシニアウイルス(コペンハーゲン株)を用いて細胞に感染させた。SCV401Cの力価が未知であるために、10μlのウイルス原液を新しく1mlのMM培地(Dil 1: 1:100希釈)に希釈した後、各ウェルに500μlのウイルス希釈液を感染させた。感染後1日目に、高moi感染が見られ、ほとんどの細胞が緑の蛍光を発していた。100μlのDil 1を2mlのMM培地に加えることにより、Dil 1のさらに1:20希釈を行うことにした(Dil 2)。次に、これを用いて各ウェルに500μlのDil 2を感染させた。
ウイルス感染は蛍光顕微鏡(Olympus IX51)下でGFPフィルター(Cat#U−MGFPHQ、Olympus)を用いて観察した。画像はcellSensデジタルイメージングソフトウエア(Olympus)を用いて取り込んだ。
これらの結果から、予想された通り、緑色蛍光タンパク質を発現するVACV−COP(SCV401C)はCHO細胞では増殖しないことが分かった。緑色蛍光を発する単細胞はウイルスが細胞に侵入し、EGFPを含むその遺伝子を発現するが、感染性ウイルス粒子は生産できず、従って、隣接する細胞に感染が拡散できない結果である。しかしながら、CP77を発現するCHO細胞株では、ワクシニアウイルスは新たな感染性ウイルスを生産することができ、隣接する細胞に拡散し、感染後1日目までに感染巣を形成する。
これらの感染巣は感染後の次の2日間でコンフルエント感染となり、3日目には細胞単層全体にSCV401Cが感染する。宿主域タンパク質CP77を発現するCHO細胞は、親(天然)CHO細胞とは異なり、ワクシニアウイルス感染を許容する。
これらの感染巣は感染後の次の2日間でコンフルエント感染となり、3日目には細胞単層全体にSCV401Cが感染する。宿主域タンパク質CP77を発現するCHO細胞は、親(天然)CHO細胞とは異なり、ワクシニアウイルス感染を許容する。
HMG20AはHMGボックスドメインを含有するタンパク質ファミリーに属す。HMGタンパク質は、十字形などのひずんだDNA構造を認識する染色体リモデリングタンパク質である。それらはまたDNAの副溝への結合によりDNAの湾曲も誘導し得る。従って、HMGボックス含有タンパク質は、DNA複製、組換え、または修復の際の染色体リモデリングに重要であると考えられる。加えて、特定のHMGボックス含有タンパク質は、プロモーター部位で転写因子と相互作用することによって遺伝子転写に影響を及ぼすこともできる。
Hsiao et al. 2006により報告されている研究は、CHO−K1細胞においてCP77がHMG20Aと結合することを示している。この宿主細胞タンパク質HMG20Aは、ワクシニア感染CHO細胞のウイルス工場でウイルスDNAと結合すると思われ、この宿主細胞タンパク質はこのDNAをウイルス工場内に「ロック」し、ワクシニア生活環の次の段階を妨げ、従って、後代感染性ウイルスの生産を妨げると仮定された。牛痘ウイルスによるCP77の発現は、宿主HMG20AをウイルスDNAから取り去り、ウイルス生活環を再開させ、最終的に後代の感染性ウイルス粒子が生産されると思われる。
しかしながら、ウイルス感染が存在しない場合にCHOでCP77が発現すると、このタンパク質は細胞質中に存在する新たに合成されたHMG20Aを、それが核へ移行するまえに封鎖すると思われる。こうした場合、核におけるMG20Aの機能は失われ、それはDNA複製、組換えおよび修復中に重要な役割を果たすとともに遺伝子転写中にその機能を果たすので、CP77の発現は細胞増殖および維持中にCHO細胞の完全性を損なうと思われる。これは予期しないことに、CP77を発現するCHO細胞株は親CHO細胞株に比べて多世代にわたるその複製能に顕著な影響なく連続培養として容易に維持されたので、そのようには思われない。
実施例4
多段階増殖試験
多段階増殖動態試験をp−LL07−CHOで行った:
宿主域遺伝子CP77を発現するCHO細胞株のワクシニアウイルス感染に対する許容性を評価し、ウイルス生産レベルを天然許容性ヒト細胞株−143Bで達成された生産レベルと比較した。
多段階増殖試験
多段階増殖動態試験をp−LL07−CHOで行った:
宿主域遺伝子CP77を発現するCHO細胞株のワクシニアウイルス感染に対する許容性を評価し、ウイルス生産レベルを天然許容性ヒト細胞株−143Bで達成された生産レベルと比較した。
目的は、p−LL07−CHO細胞株、CHO細胞株および143B細胞株におけるVACV−COPの増殖特性を比較することであった。本研究では、p−LL07−CHOにより発現されたCP77の機能性を、この細胞株内でのVACV−COPの増幅特性をCHO細胞(非非許容性)および143B細胞(許容性)におけるその増幅特性と比較して調べることにより試験した。
材料および方法
細胞株の準備
CHOの準備:
1枚の6ウェルプレート(6WP)にCHO細胞を播種し、増殖培地(RPMI+10%FBS)中でコンフルエントまで培養した。
細胞株の準備
CHOの準備:
1枚の6ウェルプレート(6WP)にCHO細胞を播種し、増殖培地(RPMI+10%FBS)中でコンフルエントまで培養した。
143Bの準備:
1枚の6ウェルプレート(6WP)に143B細胞を播種し、増殖培地(RPMI+10%FBS)中でコンフルエントまで培養した。
1枚の6ウェルプレート(6WP)に143B細胞を播種し、増殖培地(RPMI+10%FBS)中でコンフルエントまで培養した。
p−LL07−CHOの準備:
6ウェルプレート(6WP)にp−LL07−CHO細胞を播種し、増殖培地(RPMI+10%FBS+500μg/mlハイグロマイシンB)中でコンフルエントまで培養した。
6ウェルプレート(6WP)にp−LL07−CHO細胞を播種し、増殖培地(RPMI+10%FBS+500μg/mlハイグロマイシンB)中でコンフルエントまで培養した。
VACV−COPの希釈:
各6WPの各ウェルに総容量500μLで0.01pfuを感染させた。100%コンフルエントでウェル当たりの細胞総数は4×106細胞である推定された。感染率0.01pfu/ウェルのためには、4×104pfu/ウェルが必要とされ、従って、ウイルス原液を維持培地(RPMI/2%FBS)で8×104pfu/mLに希釈した。
各6WPの各ウェルに総容量500μLで0.01pfuを感染させた。100%コンフルエントでウェル当たりの細胞総数は4×106細胞である推定された。感染率0.01pfu/ウェルのためには、4×104pfu/ウェルが必要とされ、従って、ウイルス原液を維持培地(RPMI/2%FBS)で8×104pfu/mLに希釈した。
感染:
各プレートの各ウェルから培養培地を除去し、500μLの希釈ウイルスを加え、室温で1時間インキュベートして細胞にウイルスを吸着させた。次に、ウイルス接種物を除去し、各感染ウェルを1mLの無菌PBSで1回洗浄し、その後、2mLのMM/ウェル中、37℃/5%CO2でインキュベートした。
各プレートの各ウェルから培養培地を除去し、500μLの希釈ウイルスを加え、室温で1時間インキュベートして細胞にウイルスを吸着させた。次に、ウイルス接種物を除去し、各感染ウェルを1mLの無菌PBSで1回洗浄し、その後、2mLのMM/ウェル中、37℃/5%CO2でインキュベートした。
採取:
各プレートから2セットのウェルを感染後下記の時点で採取した:24時間、48時間、および72時間。採取当日、細胞を培養培地中で破砕し、各細胞株からの2セットのウェルを合わせ、1000gで5分間の遠心分離により細胞をペレットとした。各細胞ペレットを1mLの10mM TrisHCl pH8に再懸濁させた。次に、再懸濁した細胞ペレットに凍結融解を3回行い、力価測定まで−80℃で保存した。
各プレートから2セットのウェルを感染後下記の時点で採取した:24時間、48時間、および72時間。採取当日、細胞を培養培地中で破砕し、各細胞株からの2セットのウェルを合わせ、1000gで5分間の遠心分離により細胞をペレットとした。各細胞ペレットを1mLの10mM TrisHCl pH8に再懸濁させた。次に、再懸濁した細胞ペレットに凍結融解を3回行い、力価測定まで−80℃で保存した。
力価測定は、24ウェルプレートで100%コンフルエントまで培養したVero細胞および143B細胞で行った。
希釈:
冷凍庫からウイルス抽出液を取り出し、解凍し、音波処理を施して目に見える塊をホモジナイズした。ウイルス抽出液を維持培地で10−8まで連続希釈した。
冷凍庫からウイルス抽出液を取り出し、解凍し、音波処理を施して目に見える塊をホモジナイズした。ウイルス抽出液を維持培地で10−8まで連続希釈した。
感染:
各ウェルから増殖培地を除去し、1mLの各希釈液(各希釈率につき4ウェル、10−2希釈から始め、各ウイルスにつき1プレート)を用いて室温で1時間感染させた。インキュベーション後、各プレートをインキュベーターに移し、37℃/5%CO2で3日間インキュベートしてプラークを発達させた。
各ウェルから増殖培地を除去し、1mLの各希釈液(各希釈率につき4ウェル、10−2希釈から始め、各ウイルスにつき1プレート)を用いて室温で1時間感染させた。インキュベーション後、各プレートをインキュベーターに移し、37℃/5%CO2で3日間インキュベートしてプラークを発達させた。
力価の計算:
希釈液は20〜50プラークを含み、これらのプラークを数えた後に平均を求めた。この平均総数に希釈率の逆数を掛け、1mLの感染を用いたので、得られた数値が力価(pfu/mL)となる。
希釈液は20〜50プラークを含み、これらのプラークを数えた後に平均を求めた。この平均総数に希釈率の逆数を掛け、1mLの感染を用いたので、得られた数値が力価(pfu/mL)となる。
標準誤差の計算:
95%信頼区間での標準誤差(SE)は、平均値を構成した4つの力価測定値から下式:1.95×(SD/√n)(式中、SDは小規模サンプルからの標準偏差であり、nは力価測定の反復回数である(この場合4))を用いて計算した。
95%信頼区間での標準誤差(SE)は、平均値を構成した4つの力価測定値から下式:1.95×(SD/√n)(式中、SDは小規模サンプルからの標準偏差であり、nは力価測定の反復回数である(この場合4))を用いて計算した。
収量の計算:
これは力価が決定されたウイルス抽出液内のウイルス総量である: 平均力価測定値(pfu/mL)×ウイルス抽出液の容量=pfu。
これは力価が決定されたウイルス抽出液内のウイルス総量である: 平均力価測定値(pfu/mL)×ウイルス抽出液の容量=pfu。
増幅率の計算:
この数値は接種物として使用した量に対する増幅倍率を表す: 収量(pfu)/接種物量(pfu)。
この数値は接種物として使用した量に対する増幅倍率を表す: 収量(pfu)/接種物量(pfu)。
多段階増殖動態試験を6ウェルプレート−各細胞株、各時点につき2ウェル。各ウェルに4×104pfuのVACV−COPを感染させ、採取については、各細胞株、各時点につき2ウェルを採取して合わせ、そこからウイルス抽出液を調製した。このウイルス抽出液の力価測定を行った(総容量1mLは、2つを合わせて8×104pfu(4×104pfu×2)の接種物量から得られた感染に相当する)。力価測定は2種類の指標細胞株143BおよびVeroを用いて行った。
力価測定およびウイルス収量の結果をそれぞれ表3および4に示す。VACV−COPは非許容性CHO細胞を増幅せず、すなわち、それは投入接種物で使用した量よりも少ないウイルスしか生産しなかった。しかしながら、宿主域遺伝子CP77を発現するCHO細胞株におけるウイルス増幅は投入接種物の約2000倍であった(指標細胞株として143B細胞を用いた場合の力価測定結果に基づく)。許容細胞からの増幅は投入接種物の約3000倍であった。これらの標準誤差はオーバーラップするので、p−LL07−CHOと143B細胞の間の増幅の違いは統計学的に有意でない。
これら2つの細胞株の間のウイルス増幅をVero指標細胞からの力価測定結果を用いて比較すれば、増幅は143B細胞よりもp−LL07−CHO細胞で若干多いと思われたが、これは統計学的に有意でなかった。
本研究では、ウイルス生産のレベルが接種物として使用したウイルス量よりもはるかに少なかったことから、ワクシニアウイルスはCHO細胞において非許容性であることがさらに確認された。しかしながら、CHOがCP77タンパク質をコードする牛痘ウイルス宿主域遺伝子を発現すれば、その時それはワクシニアウイルスに対して許容性となり、許容細胞株で見られるのと同じレベルまでウイルスの生産を支持する。また、それはこの細胞株をワクシニアの生産に「使用可能な」許容細胞基質に変換するために1つの宿主域遺伝子CP77の発現のみを必要としたことも注目に値する。CHOは細菌と同程度に速く増殖し、ウシ胎仔血清などの生物学的添加物の必要なく定義された合成培養培地で培養することができ、かつ、バイオリアクターで細胞懸濁液として培養することができるという点でバイオテクノロジー適合性細胞株であるので、CHOからワクシニアを生産することは極めて望ましい。CHOはまた、生物学的医学的製品を生産する歴史を有し、よく特性決定されており、かつ、FDAおよびEMEAなどのバイオメディカル統制機関によって知られ、好まれている。
構成的細胞プロモーターの制御下でCP77タンパク質を発現するトランスジェニックCHO細胞株は、高レベルの後代ウイルスを生じる天然許容細胞株で見られるものと同レベルまでのワクシニアウイルスの複製および増殖に対して許容性である。
実施例5
CHO−CP77細胞におけるMVA増殖
CHO、143Bおよびp−LL07−CHOにおけるMVA+GFP増殖
材料および方法
CHO−CP77細胞におけるMVA増殖
CHO、143Bおよびp−LL07−CHOにおけるMVA+GFP増殖
材料および方法
増殖培地(GM):
10%FBS、2mM L−グルタミン、ペニシリンおよびゲンタマイシンを添加したRPMI−1640、Hepes
10%FBS、2mM L−グルタミン、ペニシリンおよびゲンタマイシンを添加したRPMI−1640、Hepes
維持培地(MM):
2%FBS、2mM L−グルタミン、ペニシリンおよびゲンタマイシンを添加したRPMI−1640、Hepes
2%FBS、2mM L−グルタミン、ペニシリンおよびゲンタマイシンを添加したRPMI−1640、Hepes
p−LL07−CHO培養時の注意:
p−LL07−CHO細胞株の一般増殖および維持はGMおよび500μg/mLのハイグロマイシンBで行ったが、播種および感染前の100%コンフルエントまでの培養については、細胞はハイグロマイシンBを含まないGM中で培養した。
p−LL07−CHO細胞株の一般増殖および維持はGMおよび500μg/mLのハイグロマイシンBで行ったが、播種および感染前の100%コンフルエントまでの培養については、細胞はハイグロマイシンBを含まないGM中で培養した。
細胞準備:
143B細胞、CHO細胞およびP−LL07−CHO細胞を複数の6ウェルプレートに播種し、細胞単層が100%コンフルエントとなるまで37℃/5%CO2にて増殖培地(GM)中で培養した。各細胞株につき1プレートを培養した。
143B細胞、CHO細胞およびP−LL07−CHO細胞を複数の6ウェルプレートに播種し、細胞単層が100%コンフルエントとなるまで37℃/5%CO2にて増殖培地(GM)中で培養した。各細胞株につき1プレートを培養した。
感染
・GFP発現カセット(緑色蛍光タンパク質)を保持する組換えMVAを用いて、6ウェルプレートで培養した細胞を感染させた。MVA−GFPの力価が未知であるので、ウイルスを下記のように維持培地(MM)で連続希釈した。
・Dil 1: 20μlのウイルス原液を2mlのMM培地で希釈し(1:100希釈)、激しいボルテックス撹拌により混合した。
・Dil 2: 500μlのDil 1を4.5mlのMM(1:103希釈)に加え、激しいボルテックス撹拌により混合した。
・Dil 3:500μlのDil 2を4.5mlのMMに加え(1:104希釈)、激しいボルテックス撹拌により混合した。
・Dil 4:500μlのDil 3を4.5mlのMMに加え(1:105希釈)、激しいボルテックス撹拌により混合した。
・各プレートの1ウェルに500μlの下記ウイルス希釈液Dil 2、Dil 3、およびDil 4を感染させた。
・プレートを5日間インキュベートし、蛍光細胞巣の発生および拡散を調べた。本研究では、Dil 4は、3日間で、識別可能な蛍光細胞巣を生成した。各プレートの非感染ウェルを自家蛍光の対照とした。
・GFP発現カセット(緑色蛍光タンパク質)を保持する組換えMVAを用いて、6ウェルプレートで培養した細胞を感染させた。MVA−GFPの力価が未知であるので、ウイルスを下記のように維持培地(MM)で連続希釈した。
・Dil 1: 20μlのウイルス原液を2mlのMM培地で希釈し(1:100希釈)、激しいボルテックス撹拌により混合した。
・Dil 2: 500μlのDil 1を4.5mlのMM(1:103希釈)に加え、激しいボルテックス撹拌により混合した。
・Dil 3:500μlのDil 2を4.5mlのMMに加え(1:104希釈)、激しいボルテックス撹拌により混合した。
・Dil 4:500μlのDil 3を4.5mlのMMに加え(1:105希釈)、激しいボルテックス撹拌により混合した。
・各プレートの1ウェルに500μlの下記ウイルス希釈液Dil 2、Dil 3、およびDil 4を感染させた。
・プレートを5日間インキュベートし、蛍光細胞巣の発生および拡散を調べた。本研究では、Dil 4は、3日間で、識別可能な蛍光細胞巣を生成した。各プレートの非感染ウェルを自家蛍光の対照とした。
顕微鏡観察
ウイルス感染は蛍光顕微鏡(Olympus IX51)下でGFPフィルター(Cat#U−MGFPHQ、Olympus)を用いて観察した。画像はcellSensデジタルイメージングソフトウエア(Olympus)を用いて取り込んだ。
ウイルス感染は蛍光顕微鏡(Olympus IX51)下でGFPフィルター(Cat#U−MGFPHQ、Olympus)を用いて観察した。画像はcellSensデジタルイメージングソフトウエア(Olympus)を用いて取り込んだ。
結果
これらの結果は、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するMVAは予想されたようにCHO細胞および143B細胞では増殖しないことを示した。緑色蛍光を発する単細胞はウイルスが細胞に侵入し、GFPを含むその遺伝子を発現するが、感染性ウイルス粒子は生産できず、従って、隣接する細胞に感染が拡散できない結果である。しかしながら、CP77を発現するCHO細胞株では、MVAは新たな感染性ウイルスを生産することができ、隣接する細胞に拡散し、感染後1日目までに感染巣を形成し、3日までにさらに発達する。
これらの結果は、緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するMVAは予想されたようにCHO細胞および143B細胞では増殖しないことを示した。緑色蛍光を発する単細胞はウイルスが細胞に侵入し、GFPを含むその遺伝子を発現するが、感染性ウイルス粒子は生産できず、従って、隣接する細胞に感染が拡散できない結果である。しかしながら、CP77を発現するCHO細胞株では、MVAは新たな感染性ウイルスを生産することができ、隣接する細胞に拡散し、感染後1日目までに感染巣を形成し、3日までにさらに発達する。
実施例6
p−LL07−CHO感染から採取されたMVAの宿主域制限の確認
細胞の準備
143B細胞、CHO細胞およびBHK−21細胞を複数の6ウェルプレートに播種し、細胞単層が100%コンフルエントとなるまで37℃/5%CO2にて増殖培地(GM)中で培養した。各細胞株につき1プレートを培養した。
p−LL07−CHO感染から採取されたMVAの宿主域制限の確認
細胞の準備
143B細胞、CHO細胞およびBHK−21細胞を複数の6ウェルプレートに播種し、細胞単層が100%コンフルエントとなるまで37℃/5%CO2にて増殖培地(GM)中で培養した。各細胞株につき1プレートを培養した。
実施例5からのウイルス採取
実施例5のDil 3感染P−LL07−CHOウェルからのMVA+GFPを次のように感染5日後に採取した。
・上清および細胞の両方をウェルから採取し、1000gで5分間遠心分離して感染細胞をペレットとした。
・細胞ペレットを500μlの100mM Tris−HCl pH8バッファーに再懸濁した。
・再懸濁細胞ペレットを少なくとも3回凍結および融解し、感染細胞からウイルスを放出させた。
実施例5のDil 3感染P−LL07−CHOウェルからのMVA+GFPを次のように感染5日後に採取した。
・上清および細胞の両方をウェルから採取し、1000gで5分間遠心分離して感染細胞をペレットとした。
・細胞ペレットを500μlの100mM Tris−HCl pH8バッファーに再懸濁した。
・再懸濁細胞ペレットを少なくとも3回凍結および融解し、感染細胞からウイルスを放出させた。
感染
・粗ウイルス抽出液の力価が未知であるために、実施例5と同様に、ウイルスをMM培地で連続希釈した。
・各プレートの1ウェルに500μlの以下のウイルス希釈液Dil 2、Dil 3、およびDil 4を感染させた。
・各プレートを5日間インキュベートし、蛍光細胞巣の発生および拡散を調べた。本研究では、Dil 3は、3日間で、識別可能な蛍光細胞巣を生成した。
・粗ウイルス抽出液の力価が未知であるために、実施例5と同様に、ウイルスをMM培地で連続希釈した。
・各プレートの1ウェルに500μlの以下のウイルス希釈液Dil 2、Dil 3、およびDil 4を感染させた。
・各プレートを5日間インキュベートし、蛍光細胞巣の発生および拡散を調べた。本研究では、Dil 3は、3日間で、識別可能な蛍光細胞巣を生成した。
顕微鏡観察
ウイルス感染は蛍光顕微鏡(Olympus IX51)下でGFPフィルター(Cat#U−MGFPHQ、Olympus)を用いて観察した。画像はcellSensデジタルイメージングソフトウエア(Olympus)を用いて取り込んだ。
ウイルス感染は蛍光顕微鏡(Olympus IX51)下でGFPフィルター(Cat#U−MGFPHQ、Olympus)を用いて観察した。画像はcellSensデジタルイメージングソフトウエア(Olympus)を用いて取り込んだ。
結果
CP77を発現するCHO細胞株から採取されたMVAは、非許容細胞株CHO(ハムスター)および143B細胞(ヒト)において増殖できないことによりその制限宿主域をなお維持した。CHO細胞および143B細胞の感染後3日間緑色蛍光巣がないことは、これらの細胞株では感染性後代ウイルスが生産されなかったことを示す。しかしながら、緑色蛍光感染巣が感染後1日目までに見られ、その後3日にわたってサイズを増したことから、このMVAは、BHK21細胞(ハムスター)に対するその宿主域をなお維持していた。
CP77を発現するCHO細胞株から採取されたMVAは、非許容細胞株CHO(ハムスター)および143B細胞(ヒト)において増殖できないことによりその制限宿主域をなお維持した。CHO細胞および143B細胞の感染後3日間緑色蛍光巣がないことは、これらの細胞株では感染性後代ウイルスが生産されなかったことを示す。しかしながら、緑色蛍光感染巣が感染後1日目までに見られ、その後3日にわたってサイズを増したことから、このMVAは、BHK21細胞(ハムスター)に対するその宿主域をなお維持していた。
結論
・宿主域タンパク質CP77を発現するCHO細胞は、親(天然)CHO細胞とは異なりMVA感染に対して許容性である。
・CP77を発現するCHO細胞株で増殖したMVAは、その宿主域をCHOおよび143B(ヒト)などの非許容細胞株に拡大しなかった。
・宿主域タンパク質CP77を発現するCHO細胞は、親(天然)CHO細胞とは異なりMVA感染に対して許容性である。
・CP77を発現するCHO細胞株で増殖したMVAは、その宿主域をCHOおよび143B(ヒト)などの非許容細胞株に拡大しなかった。
実施例7
pLL07の構築
バックグラウンド情報:
pPH51 DNA鋳型からのCP77(CHOコドン最適化)CDS PCR産物を、Clontech社のInFusionクローニングシステムによりpJ507−2(Hyg+)PiggyBacシステムにクローニングしてpLL07を作出した。フラッグタグを有するCP77配列をpJ507−2のBsaIに挿入し、それにより、comet GFP配列(配列番号3)を除去した。
pLL07の構築
バックグラウンド情報:
pPH51 DNA鋳型からのCP77(CHOコドン最適化)CDS PCR産物を、Clontech社のInFusionクローニングシステムによりpJ507−2(Hyg+)PiggyBacシステムにクローニングしてpLL07を作出した。フラッグタグを有するCP77配列をpJ507−2のBsaIに挿入し、それにより、comet GFP配列(配列番号3)を除去した。
pPH51プラスミドDNAからCP77−CHO遺伝子をPCR増幅するために使用したPCRプライマー対:
および
。フラッグタグ配列はInf−LL07−CP77−Rvプライマーにおいて太字で示されている。
プラスミドインサート/カセット構成は次の通りである。インサート/カセットマップpLL7クローン#3を配列決定に送った。
15のABIシーケンシングファイルとpLL07リファレンスファイル「pLL07_ref.sbd」をLasergene’s DNAstar Seqmanコンピュータープログラムに入力し、1つのコンセンサスコンティグにアセンブルした。これらのアラインメント配列を、参照配列の始めと終わりに一致するようにトリミングし、その後、コンセンサス配列の確立に影響のないようにアラインメントから参照配列を削除した。コンティグのコンセンサス配列は「pLL07_#3 consensus.seq」の名称のDNA配列ファイルとして保存した。コンティグの読み取り方向を決定したところ、参照配列と同じ読み取り方向に相当することが分かった。参照配列とpLL07_#3中の配列の間の不一致を識別する助けとするため、Megalign(DNAstar)を用い、「pLL07_#3 consensus」を「pLL07_ref.sbd」参照配列に対して手動でアラインした。AGRFシーケンシングサービスからのpLL07クローン#3の15AB1ファイルを、Seqman(デフォルト設定)を用いてアセンブルしたところ1つのコンセンサスコンティグが得られ、これはpLL07挿入参照配列の全長をカバーしていた。pLL07_#3の配列と参照配列の間には不一致は無かった。pLL07_#3コンティグコンセンサス中の挿入配列は、参照配列と同一である。
実施例8
哺乳動物細胞におけるG1LおよびI7Lの発現
フラッグタグG1LまたはフラッグタグI7Lをコードする発現プラスミドを構築し、それらを用いて、これらのタンパク質を発現するトランスジェニック143B細胞株を作出した。これらの細胞を、形質導入細胞を陽性選択するためのジェネティシンの存在下で増幅され、PCR分析によりこれらの細胞株のゲノム内にこれらのタンパク質コード配列の存在が確認されたものの、ウエスタンブロット解析では、抗DDDDK抗体でプロービングした場合に、発現されたフラッグタグタンパク質の存在は検出できなった。
哺乳動物細胞におけるG1LおよびI7Lの発現
フラッグタグG1LまたはフラッグタグI7Lをコードする発現プラスミドを構築し、それらを用いて、これらのタンパク質を発現するトランスジェニック143B細胞株を作出した。これらの細胞を、形質導入細胞を陽性選択するためのジェネティシンの存在下で増幅され、PCR分析によりこれらの細胞株のゲノム内にこれらのタンパク質コード配列の存在が確認されたものの、ウエスタンブロット解析では、抗DDDDK抗体でプロービングした場合に、発現されたフラッグタグタンパク質の存在は検出できなった。
C末端フラッグタグCOP−G1LおよびCOP−I7Lのタンパク質コード配列をGeneArt(Life Technologies)により合成し、DNA2.0 Inc(USA)から購入したpJ503−2(piggyBac−ネオマイシン抗生物質選択)のBsaI部位にサブクローニングした。このクローニング手順は、cometGFPをフラッグタグG1LまたはフラッグタグI7Lタンパク質コード配列に置き換える。得られたクローンは、G1L piggyBacベクターの場合にはpLL08、およびI7L piggyBacベクターの場合にはpLL10と呼称した。
これら2つのプラスミドベクターの重要な特徴として、フラッグタグタンパク質コード配列が構成的ヒトプロモーターEF1αの制御下にあり、これらの発現カセットはNPT
II発現カセット(ネオマイシン耐性遺伝子)とともにレフトおよびライトトランスポゾンボーダーにより挟み込まれ、人工トランスポゾンエレメントを形成する。この人工トランスポゾンエレメントの外側に、ただし、同じプラスミド内に含まれて宿主ゲノムへのトランスポゾンエレメントの不可逆的組み込みを媒介するトランスポゾン酵素発現カセットが存在する。これらのトランスポゾンエレメントを保持する細胞は、細胞増殖培地にG418(ジェネティシン)を含めることによって陽性選択することができる。
II発現カセット(ネオマイシン耐性遺伝子)とともにレフトおよびライトトランスポゾンボーダーにより挟み込まれ、人工トランスポゾンエレメントを形成する。この人工トランスポゾンエレメントの外側に、ただし、同じプラスミド内に含まれて宿主ゲノムへのトランスポゾンエレメントの不可逆的組み込みを媒介するトランスポゾン酵素発現カセットが存在する。これらのトランスポゾンエレメントを保持する細胞は、細胞増殖培地にG418(ジェネティシン)を含めることによって陽性選択することができる。
プラスミドベクターpLL08(フラッグタグG1L)およびpLL10(フラッグタグI7L)を143B細胞にトランスフェクトして、G1L−143B(G1L発現カセット含有)およびI7L−143B(I7L発現カセット含有)の2つの形質導入トランスジェニック細胞株を作出した。トランスポゾン組み込みに成功した細胞を、増殖培地にジェネティシンを含めることによって作業可能な量まで増殖させた。組み込みの成功を確認するために、QiagenからのDNeasy DNA抽出キットをこのキットの説明マニュアルの指示に従って用い、これらのトランスジェニック細胞から全細胞DNAを抽出した。次に、抽出されたDNAを、G1LおよびI7LのPCR増幅に特異的なPCRプライマー対を用いるPCR増幅反応の鋳型として用いた。両細胞株は、それらのゲノム内のG1LおよびI7L DNA配列の存在に関して陽性であった。
これらの細胞株によるG1LおよびI7Lの発現を調べるため、HRPコンジュゲート抗フラッグタグ抗体[M2](抗DDDDK抗体、Abcam#ab49763)を用いて各フラッグタグタンパク質の存在を検出することにより、ウエスタンブロット解析を行った。G1L−143B細胞株およびI7L−143B細胞株から抽出した全タンパク質を用いたこれらのウエスタンブロット解析の結果は、予想されたように、抗フラッグタグ抗体は143Bから抽出されたいずれのタンパク質も認識しないこと、およびもしフラッグタグ−CP77トランスジェニックCHO細胞株(CP77−CHO)で発現されたフラッグタグタンパク質を認識できれば、その抗フラッグタグ抗体はフラッグタグタンパク質を認識できることが確認されることを示した。しかしながら、フラッグタグG1Lタンパク質はG1L−143Bサンプルからのタンパク質抽出液では検出できなかった。細菌により発現されたフラッグタグI7Lタンパク質は抗フラッグタグ抗体により検出できるが、この抗体はI7L−143B細胞株によるフラッグタグI7L発現を検出できなかった。
G1L発現カセットおよびI7L発現カセットはそれらの各細胞株で検出できたことから、結論は、発現されたタンパク質がワクシニア感染の不在下で合成後に急速に分解される、すなわち、G1およびI7タンパク質は両方ともウイルス特異的酵素であって、それらのワクシニア特異的酵素基質が無ければ不安定であり得るか、またはこれら2つの発現カセットを駆動するプロモーターが欠損しているかのいずれかであり得る。別の仮説としては、ワクシニア感染の不在下でのこれらのタンパク質の発現は細胞に「毒性」があり、ジェネティシン選択過程で、トランスジェニックG1L発現カセットおよびI7L発現カセットについてはサイレントであり、NPT II発現カセットについてはサイレントでなかった細胞は、G1LまたはI7Lタンパク質を発現しなかったジェネティシン耐性細胞の増幅を可能としたというものである。pJ503−2 piggyBacプラスミドは143B細胞におけるCOP−D13Lの発現に関して本発明者らの研究室で好結果をもって使用されてきたことから、EF1αプロモーターは機能的であり、これらのタンパク質はワクシニア感染の不在下で不安定であったか、またはこれらのタンパク質の発現を駆動するプロモーターがジェネティシンの存在下での細胞増幅中に、「毒性」タンパク質の発現を回避するように選択的にサイレントとなったということが提案される。
実施例9
必須の構造成熟またはアセンブリタンパク質の一例としてのD13Lが哺乳動物細胞から発現され、D13L遺伝子が欠失したワクシニアをレスキューし、D13L欠損ワクシニアは感染細胞でタンパク質を発現する
必須の構造成熟またはアセンブリタンパク質の一例としてのD13Lが哺乳動物細胞から発現され、D13L遺伝子が欠失したワクシニアをレスキューし、D13L欠損ワクシニアは感染細胞でタンパク質を発現する
D13レスキュー細胞株の構築−
アセンブリ/成熟プロセスの遮断による弱毒ワクシニアの一例として、コペンハーゲン株のD13L ORFを欠失のために標的化した。そうする上で、このタンパク質を発現する細胞株をまず、COP−D13L欠損ウイルスが増殖可能なように構築しなければならない。レスキュー細胞株の構築のため、チャイニーズハムスター卵巣細胞株(しばしばCHOと呼ばれる)が「バイオテクノロジー」適合性であることから、この細胞株を選択した。COP−D13Lが欠失した感染性ワクシニアウイルスをレスキューするためには、この細胞株は、ワクシニアウイルスではなく細胞の転写機構を用いてその核ゲノムからD13タンパク質を発現しなければならない。細胞により発現された、C末端タグアミノ酸配列DYKDDDDK(フラッグタグ、Hopp et al. 1988)を含有するD13タンパク質のタンパク質アミノ酸配列をCHOコドンについて最適化し、対応するヌクレオチド配列を作成した。この、哺乳動物プロモーターおよび哺乳動物ポリアデニル化シグナル配列からなるタグ含有D13L−CHOコドン最適化発現カセットの核DNAへの安定組み込みは、Urschitz et al. 2010およびMatasci et al. 2011により報告されているタイプのトランスポゾン組み込み技術によって達成した。CHOの形質導入は、DNA2.0 Inc(USA)から購入したpiggy Bacベクターシステムを用いて達成した。
アセンブリ/成熟プロセスの遮断による弱毒ワクシニアの一例として、コペンハーゲン株のD13L ORFを欠失のために標的化した。そうする上で、このタンパク質を発現する細胞株をまず、COP−D13L欠損ウイルスが増殖可能なように構築しなければならない。レスキュー細胞株の構築のため、チャイニーズハムスター卵巣細胞株(しばしばCHOと呼ばれる)が「バイオテクノロジー」適合性であることから、この細胞株を選択した。COP−D13Lが欠失した感染性ワクシニアウイルスをレスキューするためには、この細胞株は、ワクシニアウイルスではなく細胞の転写機構を用いてその核ゲノムからD13タンパク質を発現しなければならない。細胞により発現された、C末端タグアミノ酸配列DYKDDDDK(フラッグタグ、Hopp et al. 1988)を含有するD13タンパク質のタンパク質アミノ酸配列をCHOコドンについて最適化し、対応するヌクレオチド配列を作成した。この、哺乳動物プロモーターおよび哺乳動物ポリアデニル化シグナル配列からなるタグ含有D13L−CHOコドン最適化発現カセットの核DNAへの安定組み込みは、Urschitz et al. 2010およびMatasci et al. 2011により報告されているタイプのトランスポゾン組み込み技術によって達成した。CHOの形質導入は、DNA2.0 Inc(USA)から購入したpiggy Bacベクターシステムを用いて達成した。
D13Lタンパク質コード配列の構築−
D13Lタンパク質コード配列は、LifeTechnologies社のGeneArtにより、ワクシニアウイルス・コペンハーゲン株のD13L ORFによりコードされているD13アミノ酸からDNA配列を再構築することによって合成作製し、CHO細胞での発現のためにコドンを最適化した。VACV−COP D13L ORFのタンパク質コード配列を配列表に示す。
D13Lタンパク質コード配列は、LifeTechnologies社のGeneArtにより、ワクシニアウイルス・コペンハーゲン株のD13L ORFによりコードされているD13アミノ酸からDNA配列を再構築することによって合成作製し、CHO細胞での発現のためにコドンを最適化した。VACV−COP D13L ORFのタンパク質コード配列を配列表に示す。
D13L細胞形質導入ベクターの構築−
pLL17由来のコドンを最適化したD13タンパク質コード配列(D13LchoTagged)をPCR増幅し、DNA2.0 Inc(Cat#pJ503−2)から購入したトランスポゾンpiggyBacベクターpJ503−2(CometGFPおよびNeo+を有するpHULK piggyBac哺乳動物発現ベクター)のBsaIクローニング部位にサブクローニングし、pLL19を作出した。In−Fusionクローニング(Clontech:リガーゼ不含クローニング)によるBsaI間のクローニングは、in vitro相同組換えにより、comet GPFコード配列を除去してそれをタグD13タンパク質コード配列に置き換える。この時、D13Lchoタグタンパク質コード配列はヒト延長因子1αプロモーター(EF1a)の制御下となり、両方がトランスフェクト細胞のゲノムに安定に組み込まれた場合にネオマイシン耐性遺伝子と共発現される。宿主ゲノムへの安定組み込みは、piggyBacベクターのレフトトランスポゾンボーダーとライトトランスポゾンボーダーによって挟み込まれたDNA配列のトランスポゾン組み込みにより媒介される。
pLL17由来のコドンを最適化したD13タンパク質コード配列(D13LchoTagged)をPCR増幅し、DNA2.0 Inc(Cat#pJ503−2)から購入したトランスポゾンpiggyBacベクターpJ503−2(CometGFPおよびNeo+を有するpHULK piggyBac哺乳動物発現ベクター)のBsaIクローニング部位にサブクローニングし、pLL19を作出した。In−Fusionクローニング(Clontech:リガーゼ不含クローニング)によるBsaI間のクローニングは、in vitro相同組換えにより、comet GPFコード配列を除去してそれをタグD13タンパク質コード配列に置き換える。この時、D13Lchoタグタンパク質コード配列はヒト延長因子1αプロモーター(EF1a)の制御下となり、両方がトランスフェクト細胞のゲノムに安定に組み込まれた場合にネオマイシン耐性遺伝子と共発現される。宿主ゲノムへの安定組み込みは、piggyBacベクターのレフトトランスポゾンボーダーとライトトランスポゾンボーダーによって挟み込まれたDNA配列のトランスポゾン組み込みにより媒介される。
D13Lchoタグ含有配列のPCR増幅は、以下のプライマー対を用いて行った。
フォワードプライマー配列:
フォワードプライマー配列:
大文字、太字および下線のテキストの配列は、In−fusionクローニングに必須の、pJ503−2(Neo+)中のcomet GFPの上流のBsaI部位と相同な配列を表す。赤色の小文字および下線のテキストの配列は、改変コザック配列である。修飾のない大文字のテキストの配列は、pLL17のD13Lchoタグ含有配列の5’末端と相同である。
リバースプライマー配列:
大文字、太字および下線のテキストの配列は、In−fusionクローニングに必須の、pJ503−2(Neo+)中のcomet GFPの下流のBsaI部位と相同な配列を表す。修飾のない大文字のテキストの配列は、pLL17のD13Lchoタグ含有配列の3’末端と相同である。予想される1719bpのPCR産物を、製造者の説明書に従ってInFusionクローニング(Clontech)により、BsaI切断pJ503−2(Neo+)にクローニングし、pLL19を作出した。
D13タンパク質を発現するCHO細胞株の構築:
p−LL19−CHO−CHO細胞を、一晩のインキュベーション後に50%前後のコンフルエントとなるように、6ウェルプレートのウェルに播種した。QiagenからのEffecteneトランスフェクション試薬(Cat#301425)を用い、製造者の説明書に従って、1μgのpLL19を1ウェルの50%コンフルエントCHO細胞にトランスフェクトした。次に、トランスフェクト細胞を増殖培地(RPMI 1640/10%FBS/2mM Glutamax/Pen−Strep)中で一晩インキュベートした。翌日、培地を形質導入細胞を選択するための1000μg/mLジェネティシンを含有する増殖培地に交換した。選択培地は2〜3日毎に交換した。形質導入細胞が90〜100%コンフルエントまで増殖した際に、TrypLE Select(Gibco−Invitrogen Corp、Cat#12563−029)を用いてそれらを回収し、さらなる細胞拡大培養のためにT25フラスコに播種した。
p−LL19−CHO−CHO細胞を、一晩のインキュベーション後に50%前後のコンフルエントとなるように、6ウェルプレートのウェルに播種した。QiagenからのEffecteneトランスフェクション試薬(Cat#301425)を用い、製造者の説明書に従って、1μgのpLL19を1ウェルの50%コンフルエントCHO細胞にトランスフェクトした。次に、トランスフェクト細胞を増殖培地(RPMI 1640/10%FBS/2mM Glutamax/Pen−Strep)中で一晩インキュベートした。翌日、培地を形質導入細胞を選択するための1000μg/mLジェネティシンを含有する増殖培地に交換した。選択培地は2〜3日毎に交換した。形質導入細胞が90〜100%コンフルエントまで増殖した際に、TrypLE Select(Gibco−Invitrogen Corp、Cat#12563−029)を用いてそれらを回収し、さらなる細胞拡大培養のためにT25フラスコに播種した。
ウエスタンブロット法によるD13発現の確認−
ウサギ抗D13抗血清の作製:
ウサギに天然D13タンパク質のC末端アミノ酸に相当する16アミノ酸のペプチドにKLHタンパク質を連結させたものを注射した。このアミノ酸配列は、CYDQGVSITKIMGDNNであった。1か月あけて合計3回の注射を行い、このアミノ酸配列の抗体を生成させた。注射したウサギからの血清を、以下の細胞抽出液に対してウエスタンブロット解析により調べた:143B全細胞抽出液、フラッグタグD13Lを発現する143B トランスジェニック細胞株(p−LL06−143b)からの全抽出液およびVACV−COP感染143B細胞抽出液。これらの結果は、ウサギ抗D13血清が明確にD13タンパク質を特異的に認識できることを明らかに示した。
ウサギ抗D13抗血清の作製:
ウサギに天然D13タンパク質のC末端アミノ酸に相当する16アミノ酸のペプチドにKLHタンパク質を連結させたものを注射した。このアミノ酸配列は、CYDQGVSITKIMGDNNであった。1か月あけて合計3回の注射を行い、このアミノ酸配列の抗体を生成させた。注射したウサギからの血清を、以下の細胞抽出液に対してウエスタンブロット解析により調べた:143B全細胞抽出液、フラッグタグD13Lを発現する143B トランスジェニック細胞株(p−LL06−143b)からの全抽出液およびVACV−COP感染143B細胞抽出液。これらの結果は、ウサギ抗D13血清が明確にD13タンパク質を特異的に認識できることを明らかに示した。
CHO形質導入細胞の調製−
D13Lchoタグ形質導入CHOポリクローナル拡大培養細胞株(p−LL19−CHO)を、通常のCHO細胞と同様にT25フラスコ中で 100%コンフルエントまで培養した。各フラスコからの細胞をTrypLE Select(Gibco−Invitrogen Corp、Cat#12563−029)で採取し、低速遠心分離(300g 5分間)によりペレットとし、PBSで洗浄し、200μLのPBSに再懸濁させた。
D13Lchoタグ形質導入CHOポリクローナル拡大培養細胞株(p−LL19−CHO)を、通常のCHO細胞と同様にT25フラスコ中で 100%コンフルエントまで培養した。各フラスコからの細胞をTrypLE Select(Gibco−Invitrogen Corp、Cat#12563−029)で採取し、低速遠心分離(300g 5分間)によりペレットとし、PBSで洗浄し、200μLのPBSに再懸濁させた。
ウエスタンブロット解析−
50μLの5×SDS−PAGEローディングバッファーを各細胞懸濁液に加えた後、98℃で5分間インキュベートした。15μLの各細胞タンパク質抽出液を2枚の10%SDS−PAGEゲルにロードし、電気泳動を行い、その後、エレクトロブロッティングによりHybond ECLニトロセルロースにブロットした。次に、エレクトロブロット膜をTween 20を含有するTris緩衝生理食塩水(TBST)に溶かした5%脱脂粉乳で室温にて1時間処理し、膜上の利用可能な総ての非特異的抗体結合部位をブロッキングした。次に、これらの膜をTBST中で数回洗浄した後、抗体でプロービングした。膜1は5000希釈のHRPコンジュゲート抗DDDDKタグ抗体[M2](Abcam、Cat#ab49763)で4℃にて一晩プロービングした。膜2は、1:2000希釈のウサギD13抗血清で4℃にて一晩プロービングし、TBSTで3回洗浄した後、二次抗体として1:5000希釈のHRPコンジュゲート抗ウサギ抗体(Abcam、Cat#ab97069)で2時間プロービングした。その後、両方の膜をTBST中で3回洗浄し、ユーザーマニュアルにより指示されているように、ECLウエスタンブロッティング検出試薬(GE Healthcare)で処理し、X線フィルムに露光した。
50μLの5×SDS−PAGEローディングバッファーを各細胞懸濁液に加えた後、98℃で5分間インキュベートした。15μLの各細胞タンパク質抽出液を2枚の10%SDS−PAGEゲルにロードし、電気泳動を行い、その後、エレクトロブロッティングによりHybond ECLニトロセルロースにブロットした。次に、エレクトロブロット膜をTween 20を含有するTris緩衝生理食塩水(TBST)に溶かした5%脱脂粉乳で室温にて1時間処理し、膜上の利用可能な総ての非特異的抗体結合部位をブロッキングした。次に、これらの膜をTBST中で数回洗浄した後、抗体でプロービングした。膜1は5000希釈のHRPコンジュゲート抗DDDDKタグ抗体[M2](Abcam、Cat#ab49763)で4℃にて一晩プロービングした。膜2は、1:2000希釈のウサギD13抗血清で4℃にて一晩プロービングし、TBSTで3回洗浄した後、二次抗体として1:5000希釈のHRPコンジュゲート抗ウサギ抗体(Abcam、Cat#ab97069)で2時間プロービングした。その後、両方の膜をTBST中で3回洗浄し、ユーザーマニュアルにより指示されているように、ECLウエスタンブロッティング検出試薬(GE Healthcare)で処理し、X線フィルムに露光した。
実施例10
D13L ORF欠失によるVACV−COPの弱毒化
ワクシニアウイルスを弱毒化するために、保存されている後期プロモーター配列をCOP−D13L ORFのタンパク質コード配列の大部分とともに、相同組換えによる欠失の目印とし、その代わりに選択/リポーターカセットを挿入し、これにより、相同組換えによる欠失に成功したものはD13タンパク質を発現するCHO細胞株に関して選択でき、ここで、感染は赤色蛍光によって可視化することができる。選択/リポーターカセットは、ワクシニアプロモーターの制御下のCP77を発現するCHO宿主域遺伝子とDsRed−Express2配列からなる。
D13L ORF欠失によるVACV−COPの弱毒化
ワクシニアウイルスを弱毒化するために、保存されている後期プロモーター配列をCOP−D13L ORFのタンパク質コード配列の大部分とともに、相同組換えによる欠失の目印とし、その代わりに選択/リポーターカセットを挿入し、これにより、相同組換えによる欠失に成功したものはD13タンパク質を発現するCHO細胞株に関して選択でき、ここで、感染は赤色蛍光によって可視化することができる。選択/リポーターカセットは、ワクシニアプロモーターの制御下のCP77を発現するCHO宿主域遺伝子とDsRed−Express2配列からなる。
COP−D13L欠失相同組換えベクターの構築−
相同組換えによるVACV−COPからのD13L ORFの欠失のために、COP−D13L ORFの両側に隣接する2つの相同組換えアームを設計した。しかしながら、COP−D12L ORFのプロモーター配列はCOP−D13L ORFの3’末端内にあり得ることから、COP−D13L ORFの3’末端およそ200bpはそのまま残した。
相同組換えによるVACV−COPからのD13L ORFの欠失のために、COP−D13L ORFの両側に隣接する2つの相同組換えアームを設計した。しかしながら、COP−D12L ORFのプロモーター配列はCOP−D13L ORFの3’末端内にあり得ることから、COP−D13L ORFの3’末端およそ200bpはそのまま残した。
相同組換えアームF1およびF2の構築−
相同組換えアームをVACV−COPゲノムDNAから、以下に示すプライマー対を用いてPCR増幅した。太字で下線のテキストは、F1およびF2アームと選択/リポートカセットおよびClontechからのIn−Fusionキットに供給されている線状pUC19を連結するためのIn−Fusionアームを表す。In−Fusion連結の結果、pLL09と呼ばれる環化プラスミドが形成される。
相同組換えアームをVACV−COPゲノムDNAから、以下に示すプライマー対を用いてPCR増幅した。太字で下線のテキストは、F1およびF2アームと選択/リポートカセットおよびClontechからのIn−Fusionキットに供給されている線状pUC19を連結するためのIn−Fusionアームを表す。In−Fusion連結の結果、pLL09と呼ばれる環化プラスミドが形成される。
VACV−COP DNAからD13L−F1アームをPCR増幅するために使用したPCRプライマー対:
。
太字で下線のテキスト(15bp)は、ClonTech In−Fusionキットによって供給される線状pUC19プラスミドに左末端と相同な配列を表す。
太字で下線のテキスト(15bp)は、ClonTech In−Fusionキットによって供給される線状pUC19プラスミドに左末端と相同な配列を表す。
太字で下線のテキスト(15bp)は、選択/リポーターカセットの5’末端と相同な配列を表す。予想されるPCR産物サイズは657bpである。
VACV−COP DNAからD13L−F2アームをPCR増幅するために使用したPCRプライマー対:
。
太字で下線のテキスト(15bp)は、選択/リポーターカセットの3’末端と相同な配列を表す。
太字で下線のテキスト(15bp)は、選択/リポーターカセットの3’末端と相同な配列を表す。
太字で下線のテキスト(15bp)は、ClonTech In−Fusionキットによって供給される線状pUC19プラスミドの右末端と相同な配列を表す。予想されるPCR産物サイズは621bpである。
選択/リポーターカセットの構築−
選択/リポーター発現カセットは、牛痘ウイルス 025L ORF(ブライトンレッド株)由来のCP77 CHO宿主域遺伝子およびDsRed−Express2の赤色蛍光タンパク質コード配列からなる。この発現カセットを、CP77タンパク質コード配列がその天然プロモーター(CP77 ATG開始コドンの上流100bp配列)の制御下にあり、かつ、ポックスウイルス初期転写終止配列(T5NT)で終わるように、Life Technologies GeneArtにより、合成作製した。DsRedタンパク質コード配列はワクシニアウイルス初期/後期プロモーターの制御下にあり、また、ポックスウイルス初期転写終止配列で終わる。
選択/リポーター発現カセットは、牛痘ウイルス 025L ORF(ブライトンレッド株)由来のCP77 CHO宿主域遺伝子およびDsRed−Express2の赤色蛍光タンパク質コード配列からなる。この発現カセットを、CP77タンパク質コード配列がその天然プロモーター(CP77 ATG開始コドンの上流100bp配列)の制御下にあり、かつ、ポックスウイルス初期転写終止配列(T5NT)で終わるように、Life Technologies GeneArtにより、合成作製した。DsRedタンパク質コード配列はワクシニアウイルス初期/後期プロモーターの制御下にあり、また、ポックスウイルス初期転写終止配列で終わる。
pLL09のアセンブリ−
D13L−F1およびD13L−F2 PCR産物を選択/リポーターカセットとともに、ClonTechからのInFusionキットに供給されるpUC19中に、製造者の説明書に従うIn−Fusionクローニングによってアセンブルし、pLL09を作出した。
D13L−F1およびD13L−F2 PCR産物を選択/リポーターカセットとともに、ClonTechからのInFusionキットに供給されるpUC19中に、製造者の説明書に従うIn−Fusionクローニングによってアセンブルし、pLL09を作出した。
相同組換えおよびプラーク精製によるCOP−D13Lの欠失によるSCV104の作出−
COP−D13L ORFを、タンパク質コード配列の大部分と保存されている後期プロモーターエレメント「TAAAT」を欠失させることによって不活性とした。COP−D13L ORFはワクシニアウイルス後期プロモーターの制御下にあり、ここで、保存されている後期プロモーターエレメントはプロモーター活性に極めて重要である(Moss, 2007) −これの欠失はCOP−D13L ORFのサイレント化をもたらす。タンパク質コード配列および保存されているプロモーターエレメントの欠失は、VACV−COPとpLL09の間の相同組換えによって達成され、相同組換えの結果、欠失した領域にCP77/DsRed発現カセットが挿入される。この発現カセットの挿入は、この際にSCV104と呼ばれる組換えウイルスを、CHO細胞で、ただし、p−LL19−CHOなどの機能的D13タンパク質を発現する細胞でのみ増殖可能とする。相同組換え後、混入している「持ち越し」の親ウイルス(VACV−COP)は、複数回の連続的プラーク精製によって除去された。混入親ウイルスの存在は挿入部位のPCR分析によってモニタリングした。
COP−D13L ORFを、タンパク質コード配列の大部分と保存されている後期プロモーターエレメント「TAAAT」を欠失させることによって不活性とした。COP−D13L ORFはワクシニアウイルス後期プロモーターの制御下にあり、ここで、保存されている後期プロモーターエレメントはプロモーター活性に極めて重要である(Moss, 2007) −これの欠失はCOP−D13L ORFのサイレント化をもたらす。タンパク質コード配列および保存されているプロモーターエレメントの欠失は、VACV−COPとpLL09の間の相同組換えによって達成され、相同組換えの結果、欠失した領域にCP77/DsRed発現カセットが挿入される。この発現カセットの挿入は、この際にSCV104と呼ばれる組換えウイルスを、CHO細胞で、ただし、p−LL19−CHOなどの機能的D13タンパク質を発現する細胞でのみ増殖可能とする。相同組換え後、混入している「持ち越し」の親ウイルス(VACV−COP)は、複数回の連続的プラーク精製によって除去された。混入親ウイルスの存在は挿入部位のPCR分析によってモニタリングした。
相同組換え−
増殖培地(RPMI−1640/10%FCS/2mM Glutamax/Pen−Strepおよび1000μg/mLジェネティシン)を含有する3本のT25フラスコにp−LL19−CHOを播種し、100%コンフルエントまで37℃/5%CO2で培養した。感染当日、2本のフラスコにmoi 0.01pfu/細胞でVACV−COPを感染させ、他のフラスコは非感染とした(非感染対照)。フラスコ1および2を室温で45分間感染させた後、ウイルス接種物を除去し、細胞単層をPBSで2回洗浄した。洗浄後、4mlの維持培地(MM:RPMI−1640/2%FCS/2mM Glutamax/Pen−Strep)を、同じ洗浄工程を経たフラスコ3を含め、各フラスコに加えた。
増殖培地(RPMI−1640/10%FCS/2mM Glutamax/Pen−Strepおよび1000μg/mLジェネティシン)を含有する3本のT25フラスコにp−LL19−CHOを播種し、100%コンフルエントまで37℃/5%CO2で培養した。感染当日、2本のフラスコにmoi 0.01pfu/細胞でVACV−COPを感染させ、他のフラスコは非感染とした(非感染対照)。フラスコ1および2を室温で45分間感染させた後、ウイルス接種物を除去し、細胞単層をPBSで2回洗浄した。洗浄後、4mlの維持培地(MM:RPMI−1640/2%FCS/2mM Glutamax/Pen−Strep)を、同じ洗浄工程を経たフラスコ3を含め、各フラスコに加えた。
トランスフェクションはEffecteneトランスフェクション試薬(Qiagen、Cat No 301425)を用い、製造者の説明書に従って行った。簡単に述べれば、16μLのエンハンサーを150μLのECバッファー中2μgの線状pLL09に加え、十分に混合した後に室温で5分間静置した。これに25μlのEffecteneトランスフェクション試薬を加え、室温で10分間静置した。最後に、1mlのMM(RPMI−1640/2%FCS/2mM Glutamax/Pen−Strep)をこの混合物に加え、穏やかに十分に混合した。次に、このトランスフェクション混合物を、事前にVACV−COPに感染させたフラスコ1に加えた。
フラスコ1(相同組換え)、2(感染のみの対照)、3(非感染対照)を37℃/5%CO2で一晩インキュベートし、翌日、各フラスコの培地をフラスコ当たり5mLのMMに交換し、フラスコ1のみに顕著なCPEが見られるまで、37℃/5%CO2でさらにインキュベートした。VACV−COPはCHO細胞に対しては非感染性であるのでフラスコ2には感染の徴候はないはずであり、フラスコ3の単層は健常を呈するはずである。
一晩感染の後、赤色蛍光細胞は、倒立蛍光顕微鏡観察下で明確に識別可能であった。フラスコ1の細胞を、培養培地中で細胞を破砕した後、低速遠心分離(500g 室温で5分)によりペレットとし、その細胞ペレットを1mLの10mM Tris−HCl pH8に再懸濁させることによって採取することにした。ウイルス抽出液は複数回の凍結および解凍により調製した後、プラーク精製段階まで−80℃で保存した。このウイルス構築物をSCV104と呼称した。
プラーク精製法−
原理は、相同組換え抽出液を連続希釈し、各希釈液を用いて、48ウェルプレート中で培養した1列のp−LL19−CHO細胞に感染させるというものである。この目的は、1pfu感染/ウェルまでウイルスを希釈し、次に、感染のおよそ30時間後に蛍光プラークを1つだけ含むウェルを探し、その後採取することである。
原理は、相同組換え抽出液を連続希釈し、各希釈液を用いて、48ウェルプレート中で培養した1列のp−LL19−CHO細胞に感染させるというものである。この目的は、1pfu感染/ウェルまでウイルスを希釈し、次に、感染のおよそ30時間後に蛍光プラークを1つだけ含むウェルを探し、その後採取することである。
p−LL19−CHO細胞を48ウェルプレートの各ウェルに播種し、1000μg/mLジェネティシンを含有する増殖培地(RPMI−1640/10%FBS/2mM Glutamax/pen−strep)中、37℃/5%CO2で100%まで培養した。
感染については、相同組換え抽出液(SCV104)を解凍し、軽く音波処理を施して塊状物および凝集物を解体した。1mL容量中、MM(RPMI/2%FBS/Glutamax/PenStrep)を用い、ウイルス抽出液の10倍連続希釈を10−5まで行った。各希釈液について、各ウェルから増殖培地を除去した後に48ウェルプレートの1列に500μLの希釈ウイルスを播種し、PBSで1回洗浄した。この48ウェルプレートを、ウイルスを吸着させるために室温で45分間置いた。ウイルス吸着後、ウイルス接種物を各ウェルから注意深く除去し、ウェル当たり500μLのPBSからなる洗浄工程によって残留接種物を除去した。洗浄後、500μLのMM(RPMI/2%FBS/Glutamax/PenStrep)を各ウェルに加え、次いで、蛍光顕微鏡下で赤色蛍光の感染巣が明確に見られるまで37℃/CO2でインキュベートした。
採取には、可能な最低希釈液で蛍光巣を1つだけ含有するウェルのみを選択した。選択したウェルから培地を注意深く除去し、100μLの10mM TrisHCl pH8を加えた。このプレートを3回凍結解凍した後、選択したウェルの培養物を回収した。各回収プラークについて、このプラーク精製行程をさらに5回繰り返した。
次に、選択されたクローンを、100%コンフルエントのp−LL19−CHO細胞を含有する6ウェルプレートの1ウェルに感染させることにより(ウェルから増殖培地を除去してPBSで500μLに希釈した10μLのウイルス抽出液を加えることによる)さらに増幅した。室温で45分後、2mLのMMをウェルに加え、37℃/5%CO2で3日間、蛍光顕微鏡下で大多数の細胞が赤色蛍光を発するまでインキュベートした。感染ウェル内の細胞を培養培地中で破砕した後、500gで5分間ペレット化した。これらのペレット細胞を500μLの10mM TrisHCl pH8に再懸濁させ、軽く音波処理を施してウイルス抽出液を作製した。
SCV104のD13L ORFへのCP77/DsRed発現カセット挿入のPCR確認−
相同組換えおよびプラーク精製後に、D13L ORFが実際にCP77/DsRed発現カセットで置換されていたかどうかを判定するためにPCR分析を行った。PCRプライマー対は、それらが「導入された」DNAではなく「天然」DNA配列に結合するよう、2つのフランキング相同組換えアームの領域の外側に結合するように設計した。このような方法でのプライマー対の設計は、このプライマー対がPCR増幅のDNA鋳型としてVACV−COPおよびSCV104を使用することができ、PCR産物のサイズが発現カセットのD13L ORFへの挿入、または挿入のないウイルス、すなわち、VACV−COPの検出の指標となることを意味する。このPCRアッセイは挿入の存在を示すだけでなく、複数回のプラーク精製の後に残留する混入親ウイルス(VACV−COP)がなお存在するかどうかを確認することもできる。VACV−COPの望まない微量混入の存在は、この混入がSCV104にトランスでのD13ヘルプを提供する可能性があり、それによりSCV104の弱毒生が低下することから、極めて望ましくない。
相同組換えおよびプラーク精製後に、D13L ORFが実際にCP77/DsRed発現カセットで置換されていたかどうかを判定するためにPCR分析を行った。PCRプライマー対は、それらが「導入された」DNAではなく「天然」DNA配列に結合するよう、2つのフランキング相同組換えアームの領域の外側に結合するように設計した。このような方法でのプライマー対の設計は、このプライマー対がPCR増幅のDNA鋳型としてVACV−COPおよびSCV104を使用することができ、PCR産物のサイズが発現カセットのD13L ORFへの挿入、または挿入のないウイルス、すなわち、VACV−COPの検出の指標となることを意味する。このPCRアッセイは挿入の存在を示すだけでなく、複数回のプラーク精製の後に残留する混入親ウイルス(VACV−COP)がなお存在するかどうかを確認することもできる。VACV−COPの望まない微量混入の存在は、この混入がSCV104にトランスでのD13ヘルプを提供する可能性があり、それによりSCV104の弱毒生が低下することから、極めて望ましくない。
QIAGEN DNeasy Tissueキット(Cat#69504)を用いたDNA抽出−
ウイルスDNAは、200μLの上記SCV104増幅ウイルスからDNeasy Tissueキットを製造者の説明書に従って用いて抽出した。簡単に述べれば、これは、20μlのプロテイナーゼKを200μLのウイルス抽出液に加えてよく混合することにより行った。これに、200μlのバッファーALを加え、十分に混合し、その後、56℃(加熱ブロック)で10分間インキュベートした。インキュベーション後、200μlの100%エタノールを加え、よく混合し、次いで、全内容物をスピンカラムに加えた。
製造者のユーザーハンドブックによって指示されているように、遠心分離によって液体をスピンカラムに通した後、スピンカラムをAW1およびAW2バッファーで洗浄した。スピンカラムに結合したDNAを2回の100μL AEバッファーで溶出させた。溶出したDNAを1本の試験管に合わせ、PCR分析用とするか、またはPCR分析まで4℃で保存した。
ウイルスDNAは、200μLの上記SCV104増幅ウイルスからDNeasy Tissueキットを製造者の説明書に従って用いて抽出した。簡単に述べれば、これは、20μlのプロテイナーゼKを200μLのウイルス抽出液に加えてよく混合することにより行った。これに、200μlのバッファーALを加え、十分に混合し、その後、56℃(加熱ブロック)で10分間インキュベートした。インキュベーション後、200μlの100%エタノールを加え、よく混合し、次いで、全内容物をスピンカラムに加えた。
製造者のユーザーハンドブックによって指示されているように、遠心分離によって液体をスピンカラムに通した後、スピンカラムをAW1およびAW2バッファーで洗浄した。スピンカラムに結合したDNAを2回の100μL AEバッファーで溶出させた。溶出したDNAを1本の試験管に合わせ、PCR分析用とするか、またはPCR分析まで4℃で保存した。
PCR増幅−
SCV104から抽出したDNA(上記の第4.2.3.1節参照)をPCR増幅の鋳型として使用し、D13L ORF内で挿入が起こったかどうかを判定した。下記のPCRプライマーは、SCV104 DNAからの増幅が、親ウイルスVACV−COPから増幅された2881bpのPCR産物とは対照的に4360bpのPCR産物を増幅するように、D13L ORFの外側に隣接する配列に結合する。PCR分析は、SCV104の6回目のプラーク精製クローンが初めて4000bpより大きく5000bpより小さいものに相当する産物を増幅することを示し、このことはSCV104がD13L ORF内にCP77/DsRedカセットを含むことを示す。3000bp前後のPCR産物が存在しないことは、このSCV104増幅原液には検出可能なレベルの親ウイルスの混入がないことを意味する。
SCV104から抽出したDNA(上記の第4.2.3.1節参照)をPCR増幅の鋳型として使用し、D13L ORF内で挿入が起こったかどうかを判定した。下記のPCRプライマーは、SCV104 DNAからの増幅が、親ウイルスVACV−COPから増幅された2881bpのPCR産物とは対照的に4360bpのPCR産物を増幅するように、D13L ORFの外側に隣接する配列に結合する。PCR分析は、SCV104の6回目のプラーク精製クローンが初めて4000bpより大きく5000bpより小さいものに相当する産物を増幅することを示し、このことはSCV104がD13L ORF内にCP77/DsRedカセットを含むことを示す。3000bp前後のPCR産物が存在しないことは、このSCV104増幅原液には検出可能なレベルの親ウイルスの混入がないことを意味する。
プライマー対の詳細
実施例11
プラーク感染力アッセイによるSCV104の弱毒化に関する試験
D13L ORFによりコードされるタンパク質はウイルスアセンブリに必須であるので、SCV104によりレスキューされたウイルスが細胞に侵入しても、ワクシニアウイルスに対して許容性の通常細胞では感染性後代ビリオンを生産できず、従って、初期感染が隣接する細胞へ拡散して絶えず拡大する感染巣を形成することができないと予想される。これがその通りであることを確認するために、感染ウイルスの細胞から細胞への拡散が数日の期間でモニタリングできるように、本明細書に記載されるD13L欠損ウイルス(SCV104)を、少数のプラーク形成単位が6ウェルプレートで培養された細胞を感染させるために使用できる点まで連続希釈した。本研究では3種類の細胞株を検討した:ワクシニアウイルスに対して許容性である143B細胞、ワクシニアウイルスに対して非許容性であるが、ワクシニアウイルスがCP77タンパク質を発現する場合には可能となるCHO細胞およびD13Lタンパク質を発現する組換え細胞株であるp−LL19−CHO。非機能性D13−タンパク質が発現され得るようにD13L ORF内にCP77/DsRed発現カセットが挿入された本発明に記載のウイルスが唯一、p−LL19−CHO細胞株で感染力のある感染巣を形成するはずである。143B細胞単層内の感染巣の存在は、ウイルス集団混合物内に混入ワクシニアウイルスが存在することを示し、これは混入がD13Lヘルプをトランスで提供するからである。CHO単層内の感染巣の存在は、CP77/DsRedカセットの挿入がD13L ORFを不活化していなかったことを意味する。
プラーク感染力アッセイによるSCV104の弱毒化に関する試験
D13L ORFによりコードされるタンパク質はウイルスアセンブリに必須であるので、SCV104によりレスキューされたウイルスが細胞に侵入しても、ワクシニアウイルスに対して許容性の通常細胞では感染性後代ビリオンを生産できず、従って、初期感染が隣接する細胞へ拡散して絶えず拡大する感染巣を形成することができないと予想される。これがその通りであることを確認するために、感染ウイルスの細胞から細胞への拡散が数日の期間でモニタリングできるように、本明細書に記載されるD13L欠損ウイルス(SCV104)を、少数のプラーク形成単位が6ウェルプレートで培養された細胞を感染させるために使用できる点まで連続希釈した。本研究では3種類の細胞株を検討した:ワクシニアウイルスに対して許容性である143B細胞、ワクシニアウイルスに対して非許容性であるが、ワクシニアウイルスがCP77タンパク質を発現する場合には可能となるCHO細胞およびD13Lタンパク質を発現する組換え細胞株であるp−LL19−CHO。非機能性D13−タンパク質が発現され得るようにD13L ORF内にCP77/DsRed発現カセットが挿入された本発明に記載のウイルスが唯一、p−LL19−CHO細胞株で感染力のある感染巣を形成するはずである。143B細胞単層内の感染巣の存在は、ウイルス集団混合物内に混入ワクシニアウイルスが存在することを示し、これは混入がD13Lヘルプをトランスで提供するからである。CHO単層内の感染巣の存在は、CP77/DsRedカセットの挿入がD13L ORFを不活化していなかったことを意味する。
細胞の準備−
143B細胞、CHO細胞およびp−LL19−CHO細胞を複数の6ウェルプレートに播種し、増殖培地(RPMI−1640/10%FBS/2mM Glutamax/pen−strep、およびp−LL19−CHOにのみ1000μg/mLジェネティシン)中、37℃/5%CO2で、細胞単層が100%コンフルエントとなるまで培養した。
143B細胞、CHO細胞およびp−LL19−CHO細胞を複数の6ウェルプレートに播種し、増殖培地(RPMI−1640/10%FBS/2mM Glutamax/pen−strep、およびp−LL19−CHOにのみ1000μg/mLジェネティシン)中、37℃/5%CO2で、細胞単層が100%コンフルエントとなるまで培養した。
感染−
増幅した、3回目のプラーク精製ウイルス抽出液を細胞の感染に用いた。このウイルスの力価は未知であるため、下記のように、ウイルス原液の10倍連続希釈を10−4まで行った:まず、60μlのウイルス原液を6mlのMM培地で希釈し(Dil 1; 1:100希釈)、次に、800μlの希釈液1を7.2mlのMM培地に加えることによりさらなる希釈液を作製し(希釈溶液2;10−3希釈)、その後、10−4希釈となるように繰り返した。感染については、500μLの各希釈液を6ウェルプレートの各ウェルに加え、各細胞株につき1プレートを使用した。ウイルス吸着は室温で45分間行い、その後、ウイルス接種物を各ウェルから除去し、各ウェルをPBSで洗浄し、その後、MMを2mL/ウェルで加えた。これらのプレートを37℃/5%CO2でインキュベートし、蛍光顕微鏡下で毎日観察した。10−2希釈液が観察に最良のウイルス感染率を生じた。
増幅した、3回目のプラーク精製ウイルス抽出液を細胞の感染に用いた。このウイルスの力価は未知であるため、下記のように、ウイルス原液の10倍連続希釈を10−4まで行った:まず、60μlのウイルス原液を6mlのMM培地で希釈し(Dil 1; 1:100希釈)、次に、800μlの希釈液1を7.2mlのMM培地に加えることによりさらなる希釈液を作製し(希釈溶液2;10−3希釈)、その後、10−4希釈となるように繰り返した。感染については、500μLの各希釈液を6ウェルプレートの各ウェルに加え、各細胞株につき1プレートを使用した。ウイルス吸着は室温で45分間行い、その後、ウイルス接種物を各ウェルから除去し、各ウェルをPBSで洗浄し、その後、MMを2mL/ウェルで加えた。これらのプレートを37℃/5%CO2でインキュベートし、蛍光顕微鏡下で毎日観察した。10−2希釈液が観察に最良のウイルス感染率を生じた。
顕微鏡観察−
ウイルス感染は蛍光顕微鏡(Olympus IX51)下でDsRedフィルター(Cat#U−MRFPHQ、Olympus)を用いて観察した。CellSensデジタルイメージングソフトウエア(Olympus)を用いて画像を取り込んだ。
ウイルス感染は蛍光顕微鏡(Olympus IX51)下でDsRedフィルター(Cat#U−MRFPHQ、Olympus)を用いて観察した。CellSensデジタルイメージングソフトウエア(Olympus)を用いて画像を取り込んだ。
結果−
10−2希釈液による感染で、初期単細胞感染および隣接細胞への感染の拡散を観察するために最良の結果が得られた。143B細胞の観察では、1日目に単細胞感染が存在し、このウイルスは2日目および3日目までに隣接細胞に拡散できなかったことを示し、このことは、ウイルスの単細胞への侵入は起こったものの、2日目および3日目までに感染性ウイルス後代は生産されなかったことを示す。CHO単一感染細胞についても同じことが言え、すなわち、初期単細胞感染から感染性ウイルス後代は生産されなかった。
10−2希釈液による感染で、初期単細胞感染および隣接細胞への感染の拡散を観察するために最良の結果が得られた。143B細胞の観察では、1日目に単細胞感染が存在し、このウイルスは2日目および3日目までに隣接細胞に拡散できなかったことを示し、このことは、ウイルスの単細胞への侵入は起こったものの、2日目および3日目までに感染性ウイルス後代は生産されなかったことを示す。CHO単一感染細胞についても同じことが言え、すなわち、初期単細胞感染から感染性ウイルス後代は生産されなかった。
p−LL19−CHO細胞株の観察では、1日目までに小さな感染巣として見られるように、初期単細胞感染が後代感染性ウイルスを生産したことを示す。これらの感染巣は、2日目および3日目までに急速にサイズを増し、経時的にウイルス増幅が起こっていることを示す。
よって、ワクシニアウイルスからの機能的ワクシニア半月体足場タンパク質コード配列の除去は、このウイルスを著しく弱毒化する。初期感染時に感染性後代ウイルスを生産できないとしても、そのタンパク質、特にDsRedの発現は、視覚的赤色蛍光からの証拠として初期単一感染細胞に見られる。このウイルスは、ワクシニアウイルス感染とは独立に、ワクシニア半月体足場タンパク質を発現する細胞株からレスキューされ得る。トランスジェニック細胞株によるワクシニア半月体足場タンパク質の構成的発現は、この細胞株の増殖または生理に悪影響を示さない。
実施例12
D13Lを発現するC11−LL19−HeLa細胞株の構築
D13L欠失を有する非蛍光SCVの力価を測定するために、溶菌斑の形成を支持するワクシニア許容細胞株からなるD13タンパク質発現レスキュー細胞株を作出した。CHO細胞では、CP77を発現するワクシニアウイルスまたはCP77の細胞株発現は、クリスタルバイオレットにより染色可能で目視で計数できる溶菌斑の形成を支持しない。力価測定細胞株を作出するために、HeLa細胞に、構成的哺乳動物プロモーター、開始コドンの前後にコザック配列を含むD13タンパク質コード配列からなりポリアデニル化シグナル配列で終わる発現カセットの安定組み込みによりD13タンパク質を発現するように形質導入を行った。次に、このカセットを、宿主細胞ゲノムDNAへの安定な遺伝子導入および抗生物質選択による組み込み成功の選択を可能とするプラスミドベクターにクローニングした。次に、形質導入細胞を、D13発現カセットを含む細胞を選択するための抗生物質選択を使用することにより増殖させ、その後、0.001pfu/細胞のmoiで細胞単層に感染させ、3日で最大のプラークサイズを生じた細胞株クローンを選択することにより、SCV104(D13L ORF欠失)でプラークアッセイを行った。SCV104は、そのD13L ORFが2つの発現カセット:一方はCP77タンパク質の発現のためのもの、他方は赤色蛍光タンパク質の発現のためのものに置き換わっている。
D13タンパク質を発現するHeLa細胞株にSCV104を感染させると、赤色蛍光溶菌斑が生じる。
D13Lを発現するC11−LL19−HeLa細胞株の構築
D13L欠失を有する非蛍光SCVの力価を測定するために、溶菌斑の形成を支持するワクシニア許容細胞株からなるD13タンパク質発現レスキュー細胞株を作出した。CHO細胞では、CP77を発現するワクシニアウイルスまたはCP77の細胞株発現は、クリスタルバイオレットにより染色可能で目視で計数できる溶菌斑の形成を支持しない。力価測定細胞株を作出するために、HeLa細胞に、構成的哺乳動物プロモーター、開始コドンの前後にコザック配列を含むD13タンパク質コード配列からなりポリアデニル化シグナル配列で終わる発現カセットの安定組み込みによりD13タンパク質を発現するように形質導入を行った。次に、このカセットを、宿主細胞ゲノムDNAへの安定な遺伝子導入および抗生物質選択による組み込み成功の選択を可能とするプラスミドベクターにクローニングした。次に、形質導入細胞を、D13発現カセットを含む細胞を選択するための抗生物質選択を使用することにより増殖させ、その後、0.001pfu/細胞のmoiで細胞単層に感染させ、3日で最大のプラークサイズを生じた細胞株クローンを選択することにより、SCV104(D13L ORF欠失)でプラークアッセイを行った。SCV104は、そのD13L ORFが2つの発現カセット:一方はCP77タンパク質の発現のためのもの、他方は赤色蛍光タンパク質の発現のためのものに置き換わっている。
D13タンパク質を発現するHeLa細胞株にSCV104を感染させると、赤色蛍光溶菌斑が生じる。
pLL19の構築−
D13細胞形質導入ベクター:
pLL19の構築は上記されている。このプラスミドでは、C末端フラッグタグD13タンパク質(protrein)コード配列が構成的ヒト延長因子1αプロモーターの制御下にあり、細胞ゲノムDNAへの安定な遺伝子導入は転位により媒介される。転位はまた、増殖培地にG418/ジェネティシンを加えることにより形質導入細胞が陽性選択できるように、ネオマイシン抗生物質選択発現カセットも挿入する。
D13細胞形質導入ベクター:
pLL19の構築は上記されている。このプラスミドでは、C末端フラッグタグD13タンパク質(protrein)コード配列が構成的ヒト延長因子1αプロモーターの制御下にあり、細胞ゲノムDNAへの安定な遺伝子導入は転位により媒介される。転位はまた、増殖培地にG418/ジェネティシンを加えることにより形質導入細胞が陽性選択できるように、ネオマイシン抗生物質選択発現カセットも挿入する。
pLL19を用いた形質導入によるHeLa細胞へのD13−フラッグタグ発現カセットの安定挿入:
HeLa細胞をT25フラスコに播種し、RPMI−1640/10%FBS/2mM
Glutamax/pen−strep増殖培地中でおよそ50%コンフルエントまで培養した。Qiagen(Cat#301425)からのEffecteneトランスフェクション試薬を用い、製造者の説明書に従って、1μgのpLL19をT25フラスコの50%コンフルエントHeLa細胞にトランスフェクトした。次に、トランスフェクト細胞を増殖培地(RPMI 1640/10%FBS/2mM Glutamax/Pen−Strep)中で一晩インキュベートした。翌日、培地を形質導入細胞を選択するための1000μg/mLジェネティシンを含有する新鮮な増殖培地に交換した。ほとんどの細胞が死滅した際に、残っている細胞を、TrypLE Select(Gibco−Invitrogen Corp、Cat#12563−029)を用いてそれらをフラスコ表面から剥がすことによって回収し、増殖培地および1000μg/mLジェネティシンを含有する96ウェルプレートで単細胞を選別した。これらのプレートを各ウェルに細胞のコロニーが見られるまで37℃/5%CO2でインキュベートした。選択培地は2〜3日毎に交換した。細胞の各コロニーを回収し、以下のように培養することにより連続的に拡大培養した:48ウェルプレートから24ウェルプレートへ、6ウェルプレートへ、T75フラスコへ、冷凍細胞原株を作製するまで1:5分割比でT75フラスコにて維持。
HeLa細胞をT25フラスコに播種し、RPMI−1640/10%FBS/2mM
Glutamax/pen−strep増殖培地中でおよそ50%コンフルエントまで培養した。Qiagen(Cat#301425)からのEffecteneトランスフェクション試薬を用い、製造者の説明書に従って、1μgのpLL19をT25フラスコの50%コンフルエントHeLa細胞にトランスフェクトした。次に、トランスフェクト細胞を増殖培地(RPMI 1640/10%FBS/2mM Glutamax/Pen−Strep)中で一晩インキュベートした。翌日、培地を形質導入細胞を選択するための1000μg/mLジェネティシンを含有する新鮮な増殖培地に交換した。ほとんどの細胞が死滅した際に、残っている細胞を、TrypLE Select(Gibco−Invitrogen Corp、Cat#12563−029)を用いてそれらをフラスコ表面から剥がすことによって回収し、増殖培地および1000μg/mLジェネティシンを含有する96ウェルプレートで単細胞を選別した。これらのプレートを各ウェルに細胞のコロニーが見られるまで37℃/5%CO2でインキュベートした。選択培地は2〜3日毎に交換した。細胞の各コロニーを回収し、以下のように培養することにより連続的に拡大培養した:48ウェルプレートから24ウェルプレートへ、6ウェルプレートへ、T75フラスコへ、冷凍細胞原株を作製するまで1:5分割比でT75フラスコにて維持。
SCV104プラーク形成を最良に支持するモノクローナル細胞株のスクリーニング:
SCV104は、そのD13L ORFが牛痘ウイルス025LプロモーターおよびCP77タンパク質をコードするORFならびに赤色蛍光タンパク質発現カセット(DsRed Express2)に置き換えられているワクシニアウイルスである。CP77発現はHeLa細胞におけるプラーク形成には重要でないかまたは必要でないが、このウイルスはD13タンパク質の細胞株発現の不在下では増殖しない。しかしながら、D13タンパク質を発現するHeLa細胞株では、SCV104は増幅し、他の隣接細胞に拡散し、そうすることで細胞単層において赤色蛍光溶菌斑を形成することができるはずである。
このウイルスを、プラーク形成を最良に支持するクローンを選択するために、クローンLL19−HeLa細胞株におけるプラーク形成試験で使用した。
SCV104は、そのD13L ORFが牛痘ウイルス025LプロモーターおよびCP77タンパク質をコードするORFならびに赤色蛍光タンパク質発現カセット(DsRed Express2)に置き換えられているワクシニアウイルスである。CP77発現はHeLa細胞におけるプラーク形成には重要でないかまたは必要でないが、このウイルスはD13タンパク質の細胞株発現の不在下では増殖しない。しかしながら、D13タンパク質を発現するHeLa細胞株では、SCV104は増幅し、他の隣接細胞に拡散し、そうすることで細胞単層において赤色蛍光溶菌斑を形成することができるはずである。
このウイルスを、プラーク形成を最良に支持するクローンを選択するために、クローンLL19−HeLa細胞株におけるプラーク形成試験で使用した。
細胞株の準備:
LL19−HeLaのいくつかの細胞株クローンを6ウェルプレートのウェルに播種し、1000μg/mLのジェネティシンを含有する増殖培地中で100%コンフルエントまで37℃/5%CO2で培養した。
LL19−HeLaのいくつかの細胞株クローンを6ウェルプレートのウェルに播種し、1000μg/mLのジェネティシンを含有する増殖培地中で100%コンフルエントまで37℃/5%CO2で培養した。
ウイルス感染:
SCV104を用い、ウイルスをMM(RPMI−1640/2%FBS/2mM Glutamax/pen−strep)で103pfu/mlに希釈することにより、0.001pfu/細胞で細胞に感染させた。1mlの希釈ウイルスを感染のために各ウェルに加えた。6ウェルプレートの各ウェルは、コンフルエントの際におよそ1×106細胞を含むので、1mlの103pfu/mlはmoi 0.001となる。moi 0.001は、1個の感染細胞からのプラーク形成を保証する。総てのプレートを室温で1時間インキュベートし、これによりウイルスは細胞に吸着でき、その後、1mLのMMを各ウェルに加え、次いで、総てのプレートを37℃/5%CO2でインキュベートして細胞へのウイルスの同時的侵入を促進し、その後、ウイルス増幅により細胞から細胞への拡散が経時的に起こった。赤色蛍光プラークの形成を蛍光顕微鏡下で毎日観察した。
SCV104を用い、ウイルスをMM(RPMI−1640/2%FBS/2mM Glutamax/pen−strep)で103pfu/mlに希釈することにより、0.001pfu/細胞で細胞に感染させた。1mlの希釈ウイルスを感染のために各ウェルに加えた。6ウェルプレートの各ウェルは、コンフルエントの際におよそ1×106細胞を含むので、1mlの103pfu/mlはmoi 0.001となる。moi 0.001は、1個の感染細胞からのプラーク形成を保証する。総てのプレートを室温で1時間インキュベートし、これによりウイルスは細胞に吸着でき、その後、1mLのMMを各ウェルに加え、次いで、総てのプレートを37℃/5%CO2でインキュベートして細胞へのウイルスの同時的侵入を促進し、その後、ウイルス増幅により細胞から細胞への拡散が経時的に起こった。赤色蛍光プラークの形成を蛍光顕微鏡下で毎日観察した。
顕微鏡観察:
3日間のウイルス感染およびプラーク形成を蛍光顕微鏡(Olympus IX51)下でDsRedフィルター(Cat#U−MRFPHQ、Olympus)を用いて観察した。CellSensデジタルイメージングソフトウエア(Olympus)を用いて画像を取り込んだ。
3日間のウイルス感染およびプラーク形成を蛍光顕微鏡(Olympus IX51)下でDsRedフィルター(Cat#U−MRFPHQ、Olympus)を用いて観察した。CellSensデジタルイメージングソフトウエア(Olympus)を用いて画像を取り込んだ。
結果:
感染後1日目に、総ての感染が散在する小さな赤色蛍光巣を生じた。3日目までに、総てのクローン細胞株が相当な大きさの赤色蛍光溶菌斑を生じ、クローン11(C11)は試験した総てのクローンで有意に最大のプラークサイズを生じた。
感染後1日目に、総ての感染が散在する小さな赤色蛍光巣を生じた。3日目までに、総てのクローン細胞株が相当な大きさの赤色蛍光溶菌斑を生じ、クローン11(C11)は試験した総てのクローンで有意に最大のプラークサイズを生じた。
結論:
これらの結果は、C11クローン(C11−LL19−HeLa)は、SCV104感染から、試験した総てのクローンで最大のプラーク形成を支持するのに十分なD13タンパク質を発現していたことを示す。この細胞株クローン(C11)は、ワクシニアウイルスの力価測定を行うために慣用される力価測定の溶菌斑計数法を用いてD13L欠失ワクシニアウイルスを定量するために優れている。
これらの結果は、C11クローン(C11−LL19−HeLa)は、SCV104感染から、試験した総てのクローンで最大のプラーク形成を支持するのに十分なD13タンパク質を発現していたことを示す。この細胞株クローン(C11)は、ワクシニアウイルスの力価測定を行うために慣用される力価測定の溶菌斑計数法を用いてD13L欠失ワクシニアウイルスを定量するために優れている。
実施例13
CP77およびD13Lを発現するp−LL07−LL29−CHO細胞株の構築
CHO細胞においてD13L ORF欠失を有するVACV−COPウイルスをレスキューするためには、D13およびCP77タンパク質を発現するCHO細胞株を構築しなければならないと思われた。これを、発現を駆動するための哺乳動物プロモーター、D13またはCP77タンパク質をコードする、CHOに好ましくコドンを最適化したDNA配列、続いてポリアデニル化シグナル配列からなるD13哺乳動物発現カセットおよびCP77哺乳動物発現カセットを構築することにより行った。次に、これらのカセットを、宿主細胞ゲノムDNAへの安定な遺伝子導入および抗生物質選択による組み込み成功の選択を可能とするプラスミドベクターにクローニングした。次に、形質導入細胞を、D13発現カセットとCP77発現カセットを含む細胞を選択するための抗生物質選択を使用することにより増殖させた。CP77の発現を確認するために、増強緑色蛍光タンパク質(SCV505)を発現するワクシニアウイルスを用いてトランスジェニック細胞株に感染させ、蛍光プラークの生成を4日間にわたってモニタリングした。4日わたって絶えず拡大する緑色蛍光プラークサイズにより、この細胞株によるCP77発現が確認された。D13タンパク質の発現を確認するために、CP77(SCV104)およびDs赤色蛍光タンパク質を発現するD13L欠損ワクシニアウイルスを用いてトランスジェニック細胞株に感染させ、プラークの生成を4日間にわたってモニタリングした。4日にわたって絶えず拡大する赤色蛍光プラークサイズにより、この細胞株によるD13タンパク質発現が確認された。
CP77およびD13Lを発現するp−LL07−LL29−CHO細胞株の構築
CHO細胞においてD13L ORF欠失を有するVACV−COPウイルスをレスキューするためには、D13およびCP77タンパク質を発現するCHO細胞株を構築しなければならないと思われた。これを、発現を駆動するための哺乳動物プロモーター、D13またはCP77タンパク質をコードする、CHOに好ましくコドンを最適化したDNA配列、続いてポリアデニル化シグナル配列からなるD13哺乳動物発現カセットおよびCP77哺乳動物発現カセットを構築することにより行った。次に、これらのカセットを、宿主細胞ゲノムDNAへの安定な遺伝子導入および抗生物質選択による組み込み成功の選択を可能とするプラスミドベクターにクローニングした。次に、形質導入細胞を、D13発現カセットとCP77発現カセットを含む細胞を選択するための抗生物質選択を使用することにより増殖させた。CP77の発現を確認するために、増強緑色蛍光タンパク質(SCV505)を発現するワクシニアウイルスを用いてトランスジェニック細胞株に感染させ、蛍光プラークの生成を4日間にわたってモニタリングした。4日わたって絶えず拡大する緑色蛍光プラークサイズにより、この細胞株によるCP77発現が確認された。D13タンパク質の発現を確認するために、CP77(SCV104)およびDs赤色蛍光タンパク質を発現するD13L欠損ワクシニアウイルスを用いてトランスジェニック細胞株に感染させ、プラークの生成を4日間にわたってモニタリングした。4日にわたって絶えず拡大する赤色蛍光プラークサイズにより、この細胞株によるD13タンパク質発現が確認された。
pLL07の構築− CP77遺伝子導入プラスミド
CP77タンパク質コード配列の構築:
CP77タンパク質コード配列は、GeneArt GmbH(ドイツ)により、牛痘ウイルス・ブライトンレッド株UniProtKB/Swiss−Prot:P12932.1の025L ORFによりコードされるCP77のアミノ酸配列からDNA配列を再構築(バックトランスレーションまたはリバーストランスレーション)することによって合成生成され、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞での発現のためにコドンが最適化された。
CP77タンパク質コード配列の構築:
CP77タンパク質コード配列は、GeneArt GmbH(ドイツ)により、牛痘ウイルス・ブライトンレッド株UniProtKB/Swiss−Prot:P12932.1の025L ORFによりコードされるCP77のアミノ酸配列からDNA配列を再構築(バックトランスレーションまたはリバーストランスレーション)することによって合成生成され、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞での発現のためにコドンが最適化された。
CP77細胞形質導入ベクターの構築:
pPH51(コドンが最適化されたCP77タンパク質配列を保持するクローニングプラスミド)由来のコドンが最適化されたCP77タンパク質コード配列を、5’プライマーが開始コドン前後にコザック配列を付加するように設計され、3’プライマーが終止コドンの前にフラッグタグ配列を付加するように設計されたPCRプライマー対を用いてPCR増幅した。増幅されたPCR産物を、DNA2.0 Inc(USA)から購入したトランスポゾンpiggybacベクターpJ507−2(Hyg+)にBsaIクローニング部位を介してサブクローニングした。BsaI部位へのクローニングは、cometGPFコード配列をCP77タンパク質コード配列に効果的に置き換えてpLL07作出する。この時、CP77は構成的ヒト延長因子1αプロモーター(EF1a)の制御下となり、両者がトランスフェクト細胞のゲノムに安定に組み込まれれば、ハイグロマイシン耐性遺伝子とともに共発現される。宿主ゲノムへの安定組み込みは、piggyBacベクターのレフトおよびライトトランスポゾンボーダーが結合しているDNA配列のトランスポゾン組み込みにより媒介される。
pPH51(コドンが最適化されたCP77タンパク質配列を保持するクローニングプラスミド)由来のコドンが最適化されたCP77タンパク質コード配列を、5’プライマーが開始コドン前後にコザック配列を付加するように設計され、3’プライマーが終止コドンの前にフラッグタグ配列を付加するように設計されたPCRプライマー対を用いてPCR増幅した。増幅されたPCR産物を、DNA2.0 Inc(USA)から購入したトランスポゾンpiggybacベクターpJ507−2(Hyg+)にBsaIクローニング部位を介してサブクローニングした。BsaI部位へのクローニングは、cometGPFコード配列をCP77タンパク質コード配列に効果的に置き換えてpLL07作出する。この時、CP77は構成的ヒト延長因子1αプロモーター(EF1a)の制御下となり、両者がトランスフェクト細胞のゲノムに安定に組み込まれれば、ハイグロマイシン耐性遺伝子とともに共発現される。宿主ゲノムへの安定組み込みは、piggyBacベクターのレフトおよびライトトランスポゾンボーダーが結合しているDNA配列のトランスポゾン組み込みにより媒介される。
pPH51プラスミドDNAからCP77−CHO遺伝子をPCR増幅するために使用したPCRプライマー対:
フォワードプライマー配列:
リバースプライマー配列:
。
フラッグタグ配列を下線で示し、これに終止コドンが続く(小文字)。
フォワードプライマー配列:
フラッグタグ配列を下線で示し、これに終止コドンが続く(小文字)。
pLL29−D13遺伝子導入プラスミドの構築
CHOコドン最適化D13タンパク質コード配列をpLL19(従前に記載)からPCR増幅してC末端フラッグタグ配列とHAタグ配列を交換し、その後、DNA2.0 Inc(Cat#pJ503−2)から購入したpJ503−02(CometGFPおよびNeo+を有するpHULK piggyBac哺乳動物発現ベクター)のBsaIクローニング部位にクローニングした。
CHOコドン最適化D13タンパク質コード配列をpLL19(従前に記載)からPCR増幅してC末端フラッグタグ配列とHAタグ配列を交換し、その後、DNA2.0 Inc(Cat#pJ503−2)から購入したpJ503−02(CometGFPおよびNeo+を有するpHULK piggyBac哺乳動物発現ベクター)のBsaIクローニング部位にクローニングした。
D13L−HA細胞形質導入ベクターの構築:
C末端フラッグタグ配列を含まないコドン最適化D13タンパク質コード配列をpLL19からPCR増幅し、DNA2.0 Inc(Cat#pJ503−2)から購入したCometGFPおよびNeo+)を有するトランスポゾンpiggyBacベクターpJ503−2(pHULK piggyBac哺乳動物発現ベクターのBsaIクローニング部位にサブクローニングし、pLL29を作出した。In−Fusionクローニング(Clontech:リガーゼ不含クローニング)によるBsaI間のクローニングは、in vitro相同組換えにより、cometGPFコード配列を除去してそれを新たにHAタグD13タンパク質コード配列に置き換える。この時、D13LchoHAタグタンパク質コード配列は構成的ヒト延長因子1αプロモーター(EF1a)の制御下となり、両方がトランスフェクト細胞のゲノムに安定に組み込まれた場合にネオマイシン耐性遺伝子と共発現される。宿主ゲノムへの安定組み込みは、piggyBacベクターのレフトトランスポゾンボーダーとライトトランスポゾンボーダーによって挟み込まれたDNA配列のトランスポゾン組み込みにより媒介される。pLL29のプラスミドマップを以下に示す。
C末端フラッグタグ配列を含まないコドン最適化D13タンパク質コード配列をpLL19からPCR増幅し、DNA2.0 Inc(Cat#pJ503−2)から購入したCometGFPおよびNeo+)を有するトランスポゾンpiggyBacベクターpJ503−2(pHULK piggyBac哺乳動物発現ベクターのBsaIクローニング部位にサブクローニングし、pLL29を作出した。In−Fusionクローニング(Clontech:リガーゼ不含クローニング)によるBsaI間のクローニングは、in vitro相同組換えにより、cometGPFコード配列を除去してそれを新たにHAタグD13タンパク質コード配列に置き換える。この時、D13LchoHAタグタンパク質コード配列は構成的ヒト延長因子1αプロモーター(EF1a)の制御下となり、両方がトランスフェクト細胞のゲノムに安定に組み込まれた場合にネオマイシン耐性遺伝子と共発現される。宿主ゲノムへの安定組み込みは、piggyBacベクターのレフトトランスポゾンボーダーとライトトランスポゾンボーダーによって挟み込まれたDNA配列のトランスポゾン組み込みにより媒介される。pLL29のプラスミドマップを以下に示す。
D13Lcho−HAタグ含有配列のPCR増幅は以下のプライマー対を用いて行った。
フォワードプライマー配列:
リバースプライマー配列:
下線の配列のテキストはHAコード配列を表す。「tta」は終止コドンを表す。
フォワードプライマー配列:
pLL07とpLL29での同時形質導入によるCHO細胞へのCP77−フラッグタグ含有発現カセットとD13−HAタグ含有発現カセットの安定な二重挿入
CHO細胞をT25フラスコに播種し、RPMI−1640/10%FBS/2mM Glutamax/pen−strep増殖培地中でおよそ50%コンフルエントまで培養した。Qiagen(Cat#301425)からのEffecteneトランスフェクション試薬を用い、1μgのpLL07および1μgのpLL29を、製造者の説明書に従って、T25フラスコの50%コンフルエントCHO細胞にトランスフェクトした。
次に、トランスフェクト細胞を増殖培地(RPMI 1640/10%FBS/2mM Glutamax/Pen−Strep)中で一晩インキュベートした。翌日、培地を形質導入細胞を選択するための500μg/mLジェネティシンおよび250μg/mlハイグロマイシンBを含有する新鮮な増殖培地に交換した。選択培地はほとんどの細胞が死滅するまで2〜3日毎に交換し、単細胞に由来した細胞の残っているコロニーを剥がした。形質導入細胞が90〜100%コンフルエントまで増殖した際に、TrypLE Select(Gibco−Invitrogen Corp、Cat#12563−029)を用いてそれらを回収し、さらなる細胞拡大培養のためにT75フラスコに播種した。
この新たなポリクローナル細胞株をp−LL07−LL29−CHOと呼称した。
CHO細胞をT25フラスコに播種し、RPMI−1640/10%FBS/2mM Glutamax/pen−strep増殖培地中でおよそ50%コンフルエントまで培養した。Qiagen(Cat#301425)からのEffecteneトランスフェクション試薬を用い、1μgのpLL07および1μgのpLL29を、製造者の説明書に従って、T25フラスコの50%コンフルエントCHO細胞にトランスフェクトした。
次に、トランスフェクト細胞を増殖培地(RPMI 1640/10%FBS/2mM Glutamax/Pen−Strep)中で一晩インキュベートした。翌日、培地を形質導入細胞を選択するための500μg/mLジェネティシンおよび250μg/mlハイグロマイシンBを含有する新鮮な増殖培地に交換した。選択培地はほとんどの細胞が死滅するまで2〜3日毎に交換し、単細胞に由来した細胞の残っているコロニーを剥がした。形質導入細胞が90〜100%コンフルエントまで増殖した際に、TrypLE Select(Gibco−Invitrogen Corp、Cat#12563−029)を用いてそれらを回収し、さらなる細胞拡大培養のためにT75フラスコに播種した。
この新たなポリクローナル細胞株をp−LL07−LL29−CHOと呼称した。
ワクシニアウイルスおよびD13L ORF欠損ワクシニアウイルスをレスキューすることによるD13およびCP77発現の確認
SCV505は、増強緑色蛍光タンパク質(EGFP)を発現し、CHO細胞においてCP77タンパク質の存在下でのみ増殖するワクシニアウイルスである。このウイルスを、p−LL07−LL29−CHOにおいてこの細胞株によるCP77発現を確認するためのプラーク感染力試験で用いた。SCV104は、そのD13L ORFが牛痘ウイルス025LプロモーターおよびCP77タンパク質をコードするORFならびに赤色蛍光タンパク質発現カセット(DsRed Express2)に置き換えられているワクシニアウイルスである。このウイルスはD13タンパク質の細胞株発現の不在下では増殖しない。このウイルスをp−LL07−LL29−CHOにおいてこの細胞株によるD13発現を確認するためのプラーク感染力試験で使用した。
SCV505は、増強緑色蛍光タンパク質(EGFP)を発現し、CHO細胞においてCP77タンパク質の存在下でのみ増殖するワクシニアウイルスである。このウイルスを、p−LL07−LL29−CHOにおいてこの細胞株によるCP77発現を確認するためのプラーク感染力試験で用いた。SCV104は、そのD13L ORFが牛痘ウイルス025LプロモーターおよびCP77タンパク質をコードするORFならびに赤色蛍光タンパク質発現カセット(DsRed Express2)に置き換えられているワクシニアウイルスである。このウイルスはD13タンパク質の細胞株発現の不在下では増殖しない。このウイルスをp−LL07−LL29−CHOにおいてこの細胞株によるD13発現を確認するためのプラーク感染力試験で使用した。
p−LL07−LL29−CHO細胞株プラーク感染力試験
本試験では、SCV505(D13+ CP77− EGFP+)およびSCV104(D13− CP77+ DsRed+)による感染からのp−LL07−LL29−CHOによるD13およびCP77の発現を定性する助けとするために種々の細胞株を使用した。以下の細胞株で予測される結果は次の通りである。
本試験では、SCV505(D13+ CP77− EGFP+)およびSCV104(D13− CP77+ DsRed+)による感染からのp−LL07−LL29−CHOによるD13およびCP77の発現を定性する助けとするために種々の細胞株を使用した。以下の細胞株で予測される結果は次の通りである。
Vero:
この細胞株は、ワクシニアウイルス感染に対して通常許容性である。このウイルスはこの細胞株において通常感染性であるので、プラーク形成は、SCV505感染に関する緑色蛍光によって検出されるように、増殖したウイルスの細胞から細胞への経時的拡散を示す。しかしながら、SCV104感染に関する赤色蛍光が欠如しているかまたは単細胞に限られることで検出されるように、見られるべきプラーク形成がなく、これは細胞株またはウイルスによるD13タンパク質発現がないために、増殖したウイルスの細胞から細胞への経時的拡散がないことを示す。
この細胞株は、ワクシニアウイルス感染に対して通常許容性である。このウイルスはこの細胞株において通常感染性であるので、プラーク形成は、SCV505感染に関する緑色蛍光によって検出されるように、増殖したウイルスの細胞から細胞への経時的拡散を示す。しかしながら、SCV104感染に関する赤色蛍光が欠如しているかまたは単細胞に限られることで検出されるように、見られるべきプラーク形成がなく、これは細胞株またはウイルスによるD13タンパク質発現がないために、増殖したウイルスの細胞から細胞への経時的拡散がないことを示す。
C11−LL19−HeLa:
これはpLL19形質導入を介してD13タンパク質を発現するワクシニアウイルス許容細胞株である。SCV505感染からのプラーク形成が予想され、D13の細胞株発現とは無関係に、緑色蛍光により検出される増殖したウイルスの細胞から細胞への経時的拡散を示す。このウイルスはD13タンパク質の細胞株発現のためにこの細胞株では増殖可能であるので、SCV104感染からのプラーク形成が予想される。
これはpLL19形質導入を介してD13タンパク質を発現するワクシニアウイルス許容細胞株である。SCV505感染からのプラーク形成が予想され、D13の細胞株発現とは無関係に、緑色蛍光により検出される増殖したウイルスの細胞から細胞への経時的拡散を示す。このウイルスはD13タンパク質の細胞株発現のためにこの細胞株では増殖可能であるので、SCV104感染からのプラーク形成が予想される。
CHO:
この細胞株は、ワクシニアウイルス感染に対して非許容性である。赤色または緑色蛍光が欠如しているかまたは単細胞に限られることにより検出されるように、SCV505感染およびSCV104感染からのプラーク形成は見られないと予想される。これは、このウイルスがCP77を発現できるとしてもSCV104をレスキューするために必要とされる細胞株によるD13タンパク質発現がないため、およびSCV505をレスキューするために必要とされる細胞株によるCP77タンパク質発現がないために、増殖したウイルスの細胞から細胞への経時的拡散は見られないことを示す。
この細胞株は、ワクシニアウイルス感染に対して非許容性である。赤色または緑色蛍光が欠如しているかまたは単細胞に限られることにより検出されるように、SCV505感染およびSCV104感染からのプラーク形成は見られないと予想される。これは、このウイルスがCP77を発現できるとしてもSCV104をレスキューするために必要とされる細胞株によるD13タンパク質発現がないため、およびSCV505をレスキューするために必要とされる細胞株によるCP77タンパク質発現がないために、増殖したウイルスの細胞から細胞への経時的拡散は見られないことを示す。
p−LL07−LL29−CHO:
これは、D13およびCP77の両タンパク質を発現するCHO細胞株である。SCV505感染からのプラーク形成が予想され、緑色蛍光により検出されるように、増殖したウイルスの細胞から細胞への経時的拡散を示すことは、CP77タンパク質の細胞株発現を示す。SCV104からのプラーク形成が予想され、赤色蛍光により検出されるように、増殖したウイルスの細胞から細胞への経時的拡散を示すことは、D13タンパク質の細胞株発現を示す。
これは、D13およびCP77の両タンパク質を発現するCHO細胞株である。SCV505感染からのプラーク形成が予想され、緑色蛍光により検出されるように、増殖したウイルスの細胞から細胞への経時的拡散を示すことは、CP77タンパク質の細胞株発現を示す。SCV104からのプラーク形成が予想され、赤色蛍光により検出されるように、増殖したウイルスの細胞から細胞への経時的拡散を示すことは、D13タンパク質の細胞株発現を示す。
細胞株の準備:
Vero、CHO、C11−LL19−HeLa、およびp−LL07−LL29−CHO細胞株を複数の6ウェルプレート(1つはSCV505感染用および他はSCV104感染用)2セットに播種し、対応する増殖培地(下記の通り)中、37℃/5%CO2で100%コンフルエントまで培養した。
・Vero、CHO: RPMI−1640/10%FBS/2mM Glutamax/pen−strep
・C11−LL19−Hela: RPMI−1640/10%FBS/2mM Glutamax/pen−strep、および1000μg/mLジェネティシン
・p−LL07−LL29−CHO: RPMI−1640/10%FBS/2mM Glutamax/pen−strep、および500μg/mLジェネティシンおよび250μg/mlハイグロマイシンB
Vero、CHO、C11−LL19−HeLa、およびp−LL07−LL29−CHO細胞株を複数の6ウェルプレート(1つはSCV505感染用および他はSCV104感染用)2セットに播種し、対応する増殖培地(下記の通り)中、37℃/5%CO2で100%コンフルエントまで培養した。
・Vero、CHO: RPMI−1640/10%FBS/2mM Glutamax/pen−strep
・C11−LL19−Hela: RPMI−1640/10%FBS/2mM Glutamax/pen−strep、および1000μg/mLジェネティシン
・p−LL07−LL29−CHO: RPMI−1640/10%FBS/2mM Glutamax/pen−strep、および500μg/mLジェネティシンおよび250μg/mlハイグロマイシンB
ウイルス感染:
SCV104およびSCV505を用い、ウイルスをMM(RPMI−1640/2%FBS/2mM Glutamax/pen−strep)に103pfu/mlとなるように希釈することにより、0.001pfu/細胞で細胞に感染させた。1プレートにつき1ウイルス: 感染のために1mlの希釈ウイルスを各ウェルに加えた。6ウェルプレートの各ウェルは、コンフルエントの際におよそ1×106細胞を含むので、1mlの103pfu/mlはmoi 0.001となる。moi 0.001は、1個の感染細胞からのプラーク形成を保証する。総てのプレートを室温で1時間インキュベートし、これによりウイルスは細胞に吸着でき、その後、1mLのMMを各ウェルに加え、次いで、総てのプレートを37℃/5%CO2でインキュベートして細胞へのウイルスの同時的侵入を促進し、その後、ウイルス増幅により細胞から細胞への拡散が経時的に起こった。蛍光プラークの形成を蛍光顕微鏡下で毎日観察した。
SCV104およびSCV505を用い、ウイルスをMM(RPMI−1640/2%FBS/2mM Glutamax/pen−strep)に103pfu/mlとなるように希釈することにより、0.001pfu/細胞で細胞に感染させた。1プレートにつき1ウイルス: 感染のために1mlの希釈ウイルスを各ウェルに加えた。6ウェルプレートの各ウェルは、コンフルエントの際におよそ1×106細胞を含むので、1mlの103pfu/mlはmoi 0.001となる。moi 0.001は、1個の感染細胞からのプラーク形成を保証する。総てのプレートを室温で1時間インキュベートし、これによりウイルスは細胞に吸着でき、その後、1mLのMMを各ウェルに加え、次いで、総てのプレートを37℃/5%CO2でインキュベートして細胞へのウイルスの同時的侵入を促進し、その後、ウイルス増幅により細胞から細胞への拡散が経時的に起こった。蛍光プラークの形成を蛍光顕微鏡下で毎日観察した。
顕微鏡観察:
4日間のウイルス感染およびプラーク形成を蛍光顕微鏡(Olympus IX51)下で、SCV104ウイルスにはDsRedフィルター(Cat#U−MRFPHQ、Olympus)を、SCV505にはGFPフィルター(Cat#U−MGFPHQ、Olympus)を用いて観察した。CellSensデジタルイメージングソフトウエア(Olympus)を用いて画像を取り込んだ。
4日間のウイルス感染およびプラーク形成を蛍光顕微鏡(Olympus IX51)下で、SCV104ウイルスにはDsRedフィルター(Cat#U−MRFPHQ、Olympus)を、SCV505にはGFPフィルター(Cat#U−MGFPHQ、Olympus)を用いて観察した。CellSensデジタルイメージングソフトウエア(Olympus)を用いて画像を取り込んだ。
結果:
moi 0.001でのSCV104およびSCV505によるCHO細胞の感染:
感染後1日目に、散在性の単細胞蛍光のみが見られ、これは両ウイルスが細胞に侵入したが、隣接細胞に感染を拡散するまでには増殖していなかったことを示す。しかしながら、これは感染後2日目から4日目にも同じ進行状態に留まり、すなわち、単細胞感染のみが見られ、ウイルスは時間が経っても隣接細胞に拡散しなかった。
moi 0.001でのSCV104およびSCV505によるCHO細胞の感染:
感染後1日目に、散在性の単細胞蛍光のみが見られ、これは両ウイルスが細胞に侵入したが、隣接細胞に感染を拡散するまでには増殖していなかったことを示す。しかしながら、これは感染後2日目から4日目にも同じ進行状態に留まり、すなわち、単細胞感染のみが見られ、ウイルスは時間が経っても隣接細胞に拡散しなかった。
moi 0.001でのSCV104およびSCV505によるVero細胞の感染:
SCV505による感染は、予想通り、感染後1日目に小さなプラークを形成し、これらは総て、4日目までに総てのプラークが合体して、細胞単層の1つのコンフルエント感染となる時点までサイズを増した。これは、感染の拡散に向かう1日目から感染後4日目までの全面化までウイルスが増殖したことを示した。しかしながら、これはSCV104感染とは全く異なる。感染後1日目に、散在性の単細胞蛍光のみが見られ、これはその後3日にわたって同じ状態に留まった。これは、SCV104は、このウイルスがD13L
ORFを欠いており、ウイルスゲノム複製の後にウイルスのアセンブルを開始できないので増幅および増殖ができなかったこと、また、この細胞株はD13タンパク質を発現せず、ウイルス増幅のレスキューを補助しなかったことを示す。
SCV505による感染は、予想通り、感染後1日目に小さなプラークを形成し、これらは総て、4日目までに総てのプラークが合体して、細胞単層の1つのコンフルエント感染となる時点までサイズを増した。これは、感染の拡散に向かう1日目から感染後4日目までの全面化までウイルスが増殖したことを示した。しかしながら、これはSCV104感染とは全く異なる。感染後1日目に、散在性の単細胞蛍光のみが見られ、これはその後3日にわたって同じ状態に留まった。これは、SCV104は、このウイルスがD13L
ORFを欠いており、ウイルスゲノム複製の後にウイルスのアセンブルを開始できないので増幅および増殖ができなかったこと、また、この細胞株はD13タンパク質を発現せず、ウイルス増幅のレスキューを補助しなかったことを示す。
0.001でのSCV104およびSCV505によるC11−LL19−HeLa細胞(D13タンパク質を発現するHeLa細胞株)の感染:
SCV505による感染は、予想されたように、感染後1日目に小さなプラークを形成し、これらは、4日目までに総てのプラークが合体して細胞単層の1つのコンフルエント感染となる時点までサイズを増した。これは、感染の拡散に向かう1日目から感染後4日目までの全面化までウイルスが増殖したことを示した。SCV104による感染も同じ結果をもたらし、この細胞株によって産生されたD13タンパク質がSCV104におけるD13L ORFの欠如を補足したこと、およびこの細胞株によって産生された量が、無傷のD13L ORFを有するSCV505に匹敵し得るウイルス増幅および感染拡散を支持するのに十分であったことを示す。
SCV505による感染は、予想されたように、感染後1日目に小さなプラークを形成し、これらは、4日目までに総てのプラークが合体して細胞単層の1つのコンフルエント感染となる時点までサイズを増した。これは、感染の拡散に向かう1日目から感染後4日目までの全面化までウイルスが増殖したことを示した。SCV104による感染も同じ結果をもたらし、この細胞株によって産生されたD13タンパク質がSCV104におけるD13L ORFの欠如を補足したこと、およびこの細胞株によって産生された量が、無傷のD13L ORFを有するSCV505に匹敵し得るウイルス増幅および感染拡散を支持するのに十分であったことを示す。
moi 0.001でのSCV104およびSCV505によるp−LL07−LL29−CHO細胞(D13タンパク質およびCP77タンパク質を発現するCHO細胞株)の感染:
SCV104およびSCV505の両方について、感染後1日目に小さな感染巣が見られた。その後3日にわたって、これらの感染巣は拡大し、絶えず増殖するより大きなプラークとなり、感染後4日目までに最終的に合体してコンフルエント感染となった。これは、CP77が発現され(それがSCV505増幅および増殖を支持したため)、D13タンパク質も発現された(それがSCV104の増幅および増殖を支持したため)ことを示した。
SCV104およびSCV505の両方について、感染後1日目に小さな感染巣が見られた。その後3日にわたって、これらの感染巣は拡大し、絶えず増殖するより大きなプラークとなり、感染後4日目までに最終的に合体してコンフルエント感染となった。これは、CP77が発現され(それがSCV505増幅および増殖を支持したため)、D13タンパク質も発現された(それがSCV104の増幅および増殖を支持したため)ことを示した。
結論:
これらの結果は、CP77およびD13タンパク質を発現するCHO細胞株がD13L欠損ワクシニアウイルスの生産および製造のための細胞基質として使用可能であることを実証する。通常の許容細胞の感染の際には、D13L欠損ウイルスは、ウイルスアセンブリを開始できず、従って、その感染生活環を全うできないので、それは安全性の点でヒトおよび動物のワクチン接種用の優れたウイルスワクチン送達ベクターとなる。しかしながら、バイオテクノロジー適合性CHO細胞株では、この細胞株がCHO宿主域タンパク質(CP77)およびミシングアセンブリタンパク質(D13タンパク質)を発現する場合には、この弱毒性の高いワクシニアベクターは製造できない。
これらの結果は、CP77およびD13タンパク質を発現するCHO細胞株がD13L欠損ワクシニアウイルスの生産および製造のための細胞基質として使用可能であることを実証する。通常の許容細胞の感染の際には、D13L欠損ウイルスは、ウイルスアセンブリを開始できず、従って、その感染生活環を全うできないので、それは安全性の点でヒトおよび動物のワクチン接種用の優れたウイルスワクチン送達ベクターとなる。しかしながら、バイオテクノロジー適合性CHO細胞株では、この細胞株がCHO宿主域タンパク質(CP77)およびミシングアセンブリタンパク質(D13タンパク質)を発現する場合には、この弱毒性の高いワクシニアベクターは製造できない。
実施例14
ウエスタンブロット法によるp−LL07−LL29−CHO細胞株のD13およびCP77タンパク質発現分析
バックグラウンド情報
p−LL07−LL29−CHOにより発現されるD13およびCP77タンパク質はタグを持ち、D13およびCP77タンパク質のC末端上のアミノ酸タグ配列を特異的に認識する抗体を用いて検出することができる。D13およびCP77タンパク質を特異的に認識する抗体が存在しなくても、これらの抗タグ抗体を用いてウエスタンブロット分析を行い、p−LL07−LL29−CHO細胞株においてD13およびCP77タンパク質の発現を確認することができる。D13タンパク質のC末端はHAタグアミノ酸配列「YPYDVPDYA」を含み、CP77タンパク質のC末端はフラッグタグアミノ酸配列「DYKDDDDK」を含む。
ウエスタンブロット法によるp−LL07−LL29−CHO細胞株のD13およびCP77タンパク質発現分析
バックグラウンド情報
p−LL07−LL29−CHOにより発現されるD13およびCP77タンパク質はタグを持ち、D13およびCP77タンパク質のC末端上のアミノ酸タグ配列を特異的に認識する抗体を用いて検出することができる。D13およびCP77タンパク質を特異的に認識する抗体が存在しなくても、これらの抗タグ抗体を用いてウエスタンブロット分析を行い、p−LL07−LL29−CHO細胞株においてD13およびCP77タンパク質の発現を確認することができる。D13タンパク質のC末端はHAタグアミノ酸配列「YPYDVPDYA」を含み、CP77タンパク質のC末端はフラッグタグアミノ酸配列「DYKDDDDK」を含む。
ウエスタンブロット分析法
以下の細胞株をT75フラスコに播種し、適当な選択抗生物質を含有する増殖培地(RPMI 1640/10%FBS/2mM Glutamax/Pen−Strep)中で100%コンフルエントまで培養した: 選択抗生物質無しのCHO、500μg/mLジェネティシンおよび250μg/mlハイグロマイシンBを用いるp−LL07−LL29−CHO、250μg/mlハイグロマイシンBを用いるp−LL07−CHO、および1000μg/mLジェネティシンを用いるC11−LL19−HeLa。コンフルエント細胞単層を剥がし、TrypLE Selectを含む単細胞懸濁液中、37℃で10分間消化した。各フラスコから細胞を回収し、300gで5分間の遠心分離によりペレットとし、PBSで2回洗浄した。最終洗浄後、細胞ペレットを500μLのPBSに再懸濁させた。このタンパク質抽出液に4x SDS−PAGEローディングバッファーを加えて終濃度を1xとし、98℃で2〜3分加熱した。変性したタンパク質サンプルをBiorad Mini−PROTEAN(登録商標)TGX Stain−Free(商標)プレキャストゲル(グラジェントゲル)にて200Vで30〜45分、電気泳動に付した。電気泳動後、分離されたタンパク質を、100Vで1時間のエレクトロブロッティングによりニトロセルロース膜に転写した。
以下の細胞株をT75フラスコに播種し、適当な選択抗生物質を含有する増殖培地(RPMI 1640/10%FBS/2mM Glutamax/Pen−Strep)中で100%コンフルエントまで培養した: 選択抗生物質無しのCHO、500μg/mLジェネティシンおよび250μg/mlハイグロマイシンBを用いるp−LL07−LL29−CHO、250μg/mlハイグロマイシンBを用いるp−LL07−CHO、および1000μg/mLジェネティシンを用いるC11−LL19−HeLa。コンフルエント細胞単層を剥がし、TrypLE Selectを含む単細胞懸濁液中、37℃で10分間消化した。各フラスコから細胞を回収し、300gで5分間の遠心分離によりペレットとし、PBSで2回洗浄した。最終洗浄後、細胞ペレットを500μLのPBSに再懸濁させた。このタンパク質抽出液に4x SDS−PAGEローディングバッファーを加えて終濃度を1xとし、98℃で2〜3分加熱した。変性したタンパク質サンプルをBiorad Mini−PROTEAN(登録商標)TGX Stain−Free(商標)プレキャストゲル(グラジェントゲル)にて200Vで30〜45分、電気泳動に付した。電気泳動後、分離されたタンパク質を、100Vで1時間のエレクトロブロッティングによりニトロセルロース膜に転写した。
タンパク質検出のため、ニトロセルロース膜をPBS中5%脱脂粉乳にて室温で1時間インキュベートして非特異的抗体結合部位をブロッキングした。HAタグ含有タンパク質の検出のため、この膜をブロッキングバッファー中1:1000希釈の抗HA HRPコンジュゲート(Abcam Cat#AB1265)で4℃にて一晩インキュベートした。フラッグタグタンパク質の検出のためには、分離されたエレクトロブロットニトロセルロース膜をブロッキングバッファー中1:1000希釈の抗フラッグHRPコンジュゲート(Abcam Cat#AB49763)で4℃にて一晩インキュベートした。次に、膜をPBS中で3回、各洗浄5分として洗浄し、その後、ECL基質(Thermo Scientific Pierce ECL Western−bot基質、Cat No 32106)にて2〜3分インキュベートした後、BioRad XRSゲルドックシステムを用いて画像を取得した。
結果
HAタグ検出によるD13タンパク質の検出:
抗HAタグ抗体はp−LL07−LL29−CHOから調製した全細胞タンパク質抽出液から予想されたサイズのタンパク質を検出することができたが、CHO細胞から調製した全細胞タンパク質抽出液から検出できたタンパク質は無かった。これは、p−LL07−LL29−CHOがD13タンパク質を発現していたことを明らかに示した。
HAタグ検出によるD13タンパク質の検出:
抗HAタグ抗体はp−LL07−LL29−CHOから調製した全細胞タンパク質抽出液から予想されたサイズのタンパク質を検出することができたが、CHO細胞から調製した全細胞タンパク質抽出液から検出できたタンパク質は無かった。これは、p−LL07−LL29−CHOがD13タンパク質を発現していたことを明らかに示した。
フラッグタグによるCP77タンパク質の検出:
抗フラッグタグ抗体は、p−LL07−LL29−CHOおよびp−LL07−CHO(CHO細胞株はCP77のみ発現する)から調製した全細胞タンパク質抽出液から予想されたサイズのタンパク質を検出することができたが、CHO細胞から調製した全細胞タンパク質抽出液から検出できたタンパク質は無かった。これは、p−LL07−LL29−CHOおよびp−LL07−CHOがCP77タンパク質を発現していたことを明らかに示した。
抗フラッグタグ抗体は、p−LL07−LL29−CHOおよびp−LL07−CHO(CHO細胞株はCP77のみ発現する)から調製した全細胞タンパク質抽出液から予想されたサイズのタンパク質を検出することができたが、CHO細胞から調製した全細胞タンパク質抽出液から検出できたタンパク質は無かった。これは、p−LL07−LL29−CHOおよびp−LL07−CHOがCP77タンパク質を発現していたことを明らかに示した。
フラッグタグ検出によるD13タンパク質の検出:
C11−LL19−HeLaにより発現されたD13タンパク質は、C末端フラッグタグを有するD13タンパク質を発現し、この細胞株から作製した全細胞タンパク質抽出液のウエスタンブロットを行った場合、抗フラッグタグ抗体は予想されたサイズのタンパク質を検出することができた。これはC11−LL19−HeLaがD13タンパク質を発現していたことを明らかに示した。
C11−LL19−HeLaにより発現されたD13タンパク質は、C末端フラッグタグを有するD13タンパク質を発現し、この細胞株から作製した全細胞タンパク質抽出液のウエスタンブロットを行った場合、抗フラッグタグ抗体は予想されたサイズのタンパク質を検出することができた。これはC11−LL19−HeLaがD13タンパク質を発現していたことを明らかに示した。
本発明の範囲から逸脱することなく多くの改変が当業者には自明である。
ウイルス収量(アウトプット)
感染に用いたウイルス量(インプット)は4×104pfu/mLであった。比較のため、収量は104値として表す。値は各時点での平均収量、すなわち、3mL(6mLを2ウェルで割ったもの)採取物からの収量に相当する。
感染に用いたウイルス量(インプット)は4×104pfu/mLであった。比較のため、収量は104値として表す。値は各時点での平均収量、すなわち、3mL(6mLを2ウェルで割ったもの)採取物からの収量に相当する。
生産収率(アウトプット/インプット比)
下表は各時点で各細胞株からインプットレベルを超えて生産されたウイルスの収率、すなわち、アウトプット/インプット比を示す。
下表は各時点で各細胞株からインプットレベルを超えて生産されたウイルスの収率、すなわち、アウトプット/インプット比を示す。
ウェル当たりの感染からの平均ウイルスアウトプット(収量)
フラスコ当たりのウイルス抽出液容量は1mLであった。力価測定のためのプレーティング容量は1mLであった。従って、ウイルス収量は力価測定値(pfu/mL)に1mL(プレーティング容量)を掛けたものに等しい。
フラスコ当たりのウイルス抽出液容量は1mLであった。力価測定のためのプレーティング容量は1mLであった。従って、ウイルス収量は力価測定値(pfu/mL)に1mL(プレーティング容量)を掛けたものに等しい。
参照文献
Claims (17)
- 改変された哺乳動物細胞であって、この改変細胞株が、非改変細胞ではほとんど増殖できないかまたは増殖不能であるポックスウイルスの増殖を保持するよう、プロモーターの制御下にあるCP77をコードする配列を含んでなるように細胞のゲノムが改変された、細胞。
- 細胞のゲノムがプロモーターの制御下にあるD13Lをコードする配列をさらに含んでなる、請求項1に記載の細胞。
- 細胞のゲノムがプロモーターの制御下にあるK1Lをコードする配列をさらに含んでなる、請求項1または2に記載の細胞。
- 細胞が連続細胞株である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の細胞。
- 細胞がCHO細胞である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の細胞。
- 細胞がヒト細胞、霊長類細胞、ハムスター細胞またはウサギ細胞である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の細胞。
- CP77遺伝子の発現が哺乳動物プロモーターの制御下にある、請求項1〜6のいずれか一項に記載の細胞。
- D13L遺伝子の発現が哺乳動物プロモーターの制御下にある、請求項2〜7のいずれか一項に記載の細胞。
- K1L遺伝子の発現が哺乳動物プロモーターの制御下にある、請求項3〜8のいずれか一項に記載の細胞。
- CP77遺伝子の発現が、許容細胞株で見られるものと同等のウイルス収量を生成するようにウイルスの増殖を維持する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の細胞。
- CP77遺伝子の発現が、500を超えるウイルス複製増幅比を維持する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の細胞。
- CP77が、哺乳動物細胞での発現のためにコドンが最適化された連続ヌクレオチド配列によりコードされている、請求項1〜11のいずれか一項に記載の細胞。
- CHO細胞では増殖しないオルソポックスウイルスを増殖させるための方法であって、in vitroで哺乳動物細胞株においてポックスウイルスを増殖させることを含んでなり、前記細胞株がプロモーターの制御下にCP77をコードおよび発現するように改変されている、方法。
- 前記改変細胞株が、プロモーターの制御下にD13Lをコードおよび発現するように改変されている、請求項13に記載の方法。
- 前記改変細胞株が、プロモーターの制御下にK1Lをコードおよび発現するように改変されている、請求項13または14に記載の方法。
- 前記改変細胞株がヒト細胞、霊長類細胞株、ハムスター細胞株またはウサギ細胞株である、請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法。
- 前記細胞株がCHO細胞株である、請求項16に記載の方法。
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