JP2020037687A - 変性ポリオレフィン樹脂及びその用途 - Google Patents

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Abstract

【課題】耐熱性と溶液安定性のバランスに優れる変性ポリオレフィン樹脂を提供すること。【解決手段】α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体(II)と、一級又は二級のアミノ基を有するアミノアルコール(III)による、ポリオレフィン樹脂(I)のグラフト変性物であり、赤外分光スペクトル測定において観察される、アミド結合由来のピーク高さをAとし、メチレン結合由来のピーク高さをBとしたときに、ピーク高さ比(A/B×100)が0.1〜6.0%の範囲である、変性ポリオレフィン樹脂。【選択図】なし

Description

本発明は、変性ポリオレフィン樹脂及びその用途に関する。
変性ポリオレフィン樹脂は、LiBソフトパックラミネート用接着剤用途等、様々な用途に用いられている。変性ポリオレフィン樹脂は、高温状況下で使用される場合もあり、耐熱性が高いことが求められている。
変性ポリオレフィン樹脂の耐熱性を向上するために、高融点樹脂を併用する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、高融点樹脂を併用する場合、高融点樹脂の併用比率を大きくすると、溶液安定性が低下することが知られている。そのため、接着剤やプライマー、塗料等の用途に用いる場合、改善の余地がある。
変性ポリオレフィン樹脂の耐熱性(80℃や120℃雰囲気下における剥離強度)と溶液安定性のバランスを図ることを目的として、高融点樹脂の併用比率を最適化する技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2012−62352号公報 特開2001−279048号公報
変性ポリオレフィン樹脂を車載用LiB用途に用いる場合、さらなる耐熱性が求められている。耐熱性と溶液安定性のバランスを図ることを目的とした、高融点樹脂の併用比率を最適化する手段では、要求される性能を十分満足できないのが現状である。
本発明の課題は、耐熱性と溶液安定性のバランスに優れる変性ポリオレフィン樹脂を提供することである。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、ポリオレフィン樹脂をα,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体とアミノアルコールでグラフト変性し、赤外分光スペクトル測定における、所定のピークの高さ比の範囲を特定することにより、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明者らは、下記の〔1〕〜〔9〕を提供する。
〔1〕α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体(II)(以下、「成分(II)」ともいう)と、一級又は二級のアミノ基を有するアミノアルコール(III)(以下、「成分(III)」ともいう)による、ポリオレフィン樹脂(I)のグラフト変性物であり、赤外分光スペクトル測定において観察される、アミド結合由来のピーク高さをAとし、メチレン結合由来のピーク高さをBとしたときに、ピーク高さ比(A/B×100)(以下、「ピーク高さ比(A/B×100)」ともいう)が0.1〜6.0%の範囲である、変性ポリオレフィン樹脂。
〔2〕前記ポリオレフィン樹脂(I)が、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、及びエチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記〔1〕に記載の変性ポリオレフィン樹脂。
〔3〕前記α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体(II)が、無水マレイン酸、無水イタコン酸、及びマレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である、上記〔1〕又は〔2〕に記載の変性ポリオレフィン樹脂。
〔4〕前記グラフト変性物が、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル(IV)(以下、「成分(IV)」ともいう)による変性物である上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の変性ポリオレフィン樹脂。
Figure 2020037687
(前記一般式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、Rは、C2n+1で表される炭化水素基を示す。但し、nは、8〜18の整数である。)
〔5〕ポリスチレン標準によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した重量平均分子量が、10,000〜200,000である、上記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の変性ポリオレフィン樹脂。
〔6〕上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の変性ポリオレフィン樹脂を含む接着剤。
〔7〕上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の変性ポリオレフィン樹脂を含むプライマー。
〔8〕上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の変性ポリオレフィン樹脂を含む塗料。
〔9〕上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の変性ポリオレフィン樹脂を含むインキ。
本発明によれば、耐熱性と溶液安定性のバランスに優れる変性ポリオレフィン樹脂を提供することができる。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。なお、本明細書中、「AA〜BB」とは、AA以上BB以下を意味する。
[1.変性ポリオレフィン樹脂]
本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、成分(II)と、成分(III)による、ポリオレフィン樹脂(I)のグラフト変性物である。また、本発明の変性ポリオレフィン樹脂において、グラフト変性物は成分(IV)による変性物であることが好ましい。さらに、本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、赤外分光スペクトル測定において観察される、アミド結合由来のピーク高さをAとし、メチレン結合由来のピーク高さをBとしたときに、ピーク高さ比(A/B×100)が0.1〜6.0%の範囲である。
本発明の変性ポリオレフィン樹脂が、高融点樹脂の併用比率の最適化という従来手段とは異なる手段で、耐熱性が優れる理由を次のように推察し得る。ポリオレフィン樹脂に水酸基を導入することにより、他の樹脂に存在する架橋成分との反応性を高め得る。その結果、硬化物の架橋密度が向上し得る。従って、硬化物の耐熱性を向上し得る。
本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、以下の構造を有すると推察される。まず、成分(II)及び必要に応じて成分(IV)が、ポリオレフィン樹脂(I)にグラフト重合している。また、グラフト重合により導入された成分(II)に由来するカルボニル基の少なくとも一部と、成分(III)に由来する窒素原子により、アミド結合が形成されている。従って、本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂(I)に、成分(II)がグラフト重合し、成分(II)の少なくとも一部と、成分(III)によるアミド結合を有するとともに、成分(III)に由来する水酸基を有すると推察される。
本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、赤外分光スペクトルにおいて観察される、アミド結合由来のピーク高さをAとし、メチレン結合由来のピーク高さをBとしたとき、ピーク高さ比(A/B×100)が0.1〜6.0%の範囲である。ピーク高さ比は、ポリオレフィン樹脂(I)に対する成分(III)の付加量を評価し得る。
ピーク高さ比(A/B×100)の下限は、0.1%以上であり、好ましくは0.3%以上であり、より好ましくは0.5%以上である。0.1%以上であると、成分(III)由来の水酸基を有し、硬化剤成分等との架橋反応が進行して架橋密度を高くし得る。従って、硬化物の耐熱性に優れる変性ポリオレフィン樹脂とし得る。また、その上限は、6.0%以下であり、好ましくは5.0%以下であり、より好ましくは3.0%以下である。6.0%以下であると、成分(III)由来の水酸基量が適切となるため、成分(III)とポリオレフィン樹脂骨格にグラフトした成分(II)が反応することによる溶液の増粘を抑え、溶液安定性に優れる変性ポリオレフィン樹脂とし得る。
赤外分光スペクトルにおいて、アミド結合由来のピークを観測し得ることから、変性ポリオレフィン樹脂が、成分(III)に由来する水酸基を有することを推察し得る。ここで、アミド結合由来のピークは、波数1610〜1680cm−1に現れるピークであり、C=O伸縮振動に帰属される。
また、赤外分光スペクトルにおいて、ポリオレフィン樹脂(I)骨格のメチレン結合由来のピークも確認し得る。ここで、メチレン結合由来のピークは、波数1420〜1500cm−1に現れるピークであり、C−H変角振動に帰属される。
本発明の変性ポリオレフィン樹脂において、ポリスチレン標準によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した重量平均分子量は、10,000〜200,000の範囲が好ましく、30,000〜200,000、30,000〜180,000の範囲がより好ましく、30,000〜170,000、30,000〜130,000の範囲がさらに好ましく、50,000〜170,000の範囲がさらにより好ましい。
なお、GPCの測定条件は、以下の条件であり、後段の実施例における重量平均分子量は、この条件で測定した値である。
測定機器:HLC−8320GPC(東ソー社製)
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム:TSKgel(東ソー社製)
標準物質;ポリスチレン(東ソー製、GLサイエンス製)
検出器;示差屈折計(東ソー製)
[1−1.ポリオレフィン樹脂(I)]
ポリオレフィン樹脂(I)は、特に限定されず、1種単独のオレフィン重合体であっても、2種以上のオレフィン重合体の共重合体であってもよい。また、共重合体である場合、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。オレフィンとしては、α−オレフィンが好適に用いられる。α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテンが挙げられる。
ポリオレフィン樹脂(I)としては、ポリプロピレン基材等の非極性樹脂基材への十分な付着性を発現させるという観点から、ポリプロピレン(プロピレン単独重合体)、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体がより好適に用いられる。
本明細書において、「ポリプロピレン」とは、基本単位がプロピレン由来の構成単位である重合体を表す。「エチレン−プロピレン共重合体」とは、基本単位がエチレン及びプロピレン由来の構成単位である共重合体を表す。「プロピレン−ブテン共重合体」とは、基本単位がプロピレン及びブテン由来の構成単位である共重合体を表す。これらの(共)重合体は、基本単位以外の他のオレフィン由来の構成単位を少量含有していてもよい。この含有量は、樹脂本来の性能を著しく損なわない量であればよい。このような他のオレフィン由来の構成単位は、例えば、変性ポリオレフィン樹脂の製造までの工程で混入することがある。
ポリオレフィン樹脂(I)は、構成単位100モル%中、プロピレン由来の構成単位を50モル%以上含むことが好ましい。プロピレン由来の構成単位を上記範囲で含むと、プロピレン樹脂等の非極性樹脂基材に対する接着性を保持できる。
ポリオレフィン樹脂(I)は、重合触媒としてメタロセン触媒を用いて得られるものが好ましい。
メタロセン触媒としては、公知のものを使用できる。メタロセン触媒は、下記成分(1)及び成分(2)と、さらに必要に応じて成分(3)とを組み合わせて得られるものが好ましい。
・成分(1);共役五員環配位子を少なくとも一個有する周期律表4〜6族の遷移金属化合物であるメタロセン錯体;
・成分(2);イオン交換性層状ケイ酸塩;
・成分(3);有機アルミニウム化合物。
メタロセン触媒を用いると、次の特徴を有する。ポリオレフィン樹脂(I)の分子量分布が狭くなる。また、ポリオレフィン樹脂(I)が共重合体の場合は、ランダム共重合性に優れ、組成分布が狭く、さらに、共重合し得るコモノマーの範囲が広くなる。このような特徴を有するポリオレフィン樹脂(I)は、本発明の変性ポリオレフィン樹脂に好適に用いられる。
エチレン−プロピレン共重合体及びプロピレン−ブテン共重合体がランダム共重合体である場合、構成単位100モル%中、エチレン由来の構成単位又はブテン由来の構成単位を5〜50モル%の量で含み、プロピレン由来の構成単位を50〜95モル%の量で含むことが好ましい。
ポリオレフィン樹脂(I)の重量平均分子量は、特に限定されない。しかしながら、変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量が、好ましくは10,000〜200,000であり、より好ましくは30,000〜200,000、30,000〜180,000であり、さらに好ましくは30,000〜170,000、30,000〜130,000であり、さらにより好ましくは50,000〜170,000である。このため、ポリオレフィン樹脂(I)の重量平均分子量が200,000超である場合、得られる変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量が上記範囲となるように、調整することが好ましい。具体的には、熱やラジカルの存在下で減成して、分子量を適当な範囲、例えば200,000以下となるように調整する。なお、ポリオレフィン樹脂(I)の重量平均分子量は、上記と同様に、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、標準物質:ポリスチレン)によって測定した値である。また、測定条件は、上記と同じである。
ポリオレフィン樹脂(I)は、1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上を組み合わせて用いるときは、その割合は特に限定されない。
[1−2.α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体(II)(成分(II))]
成分(II)のうち、α,β−不飽和カルボン酸としては、例えば、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、アコニット酸、ナジック酸が挙げられる。これらの中でも、不飽和ジカルボン酸が好ましい。また、成分(II)のうち、α,β−不飽和カルボン酸の誘導体としては、例えば、α,β−不飽和カルボン酸の酸無水物、及びフマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、フマル酸モノブチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジプロピル、フマル酸ジブチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジプロピル、マレイン酸ジブチル、マレイミド、N−フェニルマレイミドが挙げられる。これらの中でも、α,β−不飽和カルボン酸の酸無水物が好ましい。
成分(II)としては、変性ポリオレフィン樹脂の水酸基量を適切にする観点から、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸が好ましく、無水マレイン酸がより好ましい。
なお、成分(II)は、1種単独で用いてもよく、2種以上の組合せを用いてもよい。すなわち、成分(II)は、α,β−不飽和カルボン酸及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種である。α,β−不飽和カルボン酸を2種以上組み合わせて用いてもよく、上記誘導体を2種以上組み合わせて用いてもよい。また、α,β−不飽和カルボン酸1種以上とその誘導体1種以上とを組み合わせて用いてもよい。なお、2種以上を組み合わせて用いる場合、その割合は特に限定されない。
[1−3.アミノアルコール(III)(成分(III))]
成分(III)は、水酸基とともに、一級又は二級のアミノ基を有する。成分(III)は、一級のアミノ基を有することが好ましい。
成分(III)としては、例えば、2−アミノエタノール、3−アミノ−1−プロパノール、4−アミノ−1−ブタノール、5−アミノ−1−ペンタノール、2−アミノ−1−ブタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−アミノエチルエタノールアミン、2−(2−アミノエトキシ)エタノールが挙げられる。これらの中でも、2−アミノエタノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、3−アミノ−1−プロパノール、4−アミノ−1−ブタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールが好ましい。
成分(III)は、1種単独で用いてもよく、2種以上の組合せを用いてもよい。なお、2種以上を組み合わせて用いる場合、その割合は特に限定されない。
[1−4.((メタ)アクリル酸エステル)(IV)(成分(IV))]
(メタ)アクリル酸エステルは、一般式(1)で表される化合物である。成分(IV)を用いて変性すると、変性ポリオレフィン樹脂の分子量分布を狭くすることができ、溶液の低温安定性、他樹脂との相溶性、接着性を向上させることができる。一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステルは、1種単独で用いてもよく、複数種を任意の割合で混合して用いてもよい。
Figure 2020037687
一般式(1)中、Rは、H又はCHを表し、CHが好ましい。Rは、C2n+1を表す。nは、8〜18の整数を表し、8〜15が好ましく、8〜14がより好ましく、8〜13がさらに好ましい。式(1)で表される化合物としては、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレートが好ましく、ラウリルメタクリレート、オクチルメタクリレート、トリデシルメタクリレートがより好ましい。
[2.変性ポリオレフィン樹脂の製造方法]
変性ポリオレフィン樹脂は、ポリオレフィン樹脂(I)を、成分(II)と、成分(III)と、必要に応じて成分(IV)とにより変性して得られる。より詳細には、ポリオレフィン樹脂(I)を、成分(II)及び必要に応じて成分(IV)で変性して、前駆体樹脂を得る工程(A)(以下、「工程(A)」ともいう)と、得られた前駆体樹脂を成分(III)で変性して、変性ポリオレフィン樹脂を得る工程(B))(以下、「工程(B)」ともいう)と、から構成されていてもよい。このような製造方法について、以下に詳しく説明する。
[2−1.工程(A)]
工程(A)では、成分(II)及び必要に応じて成分(IV)がポリオレフィン樹脂(I)に導入されればよく、成分(II)及び必要に応じて成分(IV)がポリオレフィン樹脂(I)にグラフト重合により導入されることが好ましい。グラフト重合反応の際には、ラジカル発生剤を用いてもよい。工程(A)としては、例えば、トルエン等の溶剤に成分(I)、成分(II)、及び必要に応じて成分(IV)を加熱溶解し、ラジカル発生剤を添加する溶液法;バンバリーミキサー、ニーダー、押出機等の機器に、成分(I)、成分(II)、必要に応じて成分(IV)及びラジカル発生剤を添加し混練する溶融混練法等が挙げられる。ここで、成分(II)及び必要に応じて成分(IV)を2種以上用いる場合、これらは一括添加しても、逐次添加してもよい。逐次添加の場合、成分(II)及び必要に応じて成分(IV)をグラフト重合させるか順序は、特に限定されない。また、成分(II)及び必要に応じて成分(IV)を2種以上用いる場合、その割合は特に限定されない。
グラフト重合反応の際には、成分(II)の使用量は、ポリオレフィン樹脂(I)100質量部に対して、0.5〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましい。
グラフト重合反応の際には、必要に応じて使用する成分(IV)の使用量は、変性ポリオレフィン樹脂(I)を100重量部とした場合に、0.1〜10重量部が好ましく、0.4〜4重量部がより好ましい。成分(IV)の使用量が0.1重量部以上であることにより、変性ポリオレフィン樹脂の分子量分布を十分狭い範囲に保ち得る。すなわち、高分子量部分の悪影響を防止して、溶剤溶解性、溶液の低温安定性及び他樹脂との相溶性を良好に保持し得る。また、低分子量部分の悪影響を防止して、接着力を向上し得る。成分(IV)の使用量が10重量部以下であることにより、グラフト未反応物の発生を防止し、樹脂被着体に対する接着性を良好に保持し得る。
ラジカル発生剤は、公知のものより適宜選択できる。公知のラジカル発生剤の中でも、有機過酸化物系化合物が好ましい。有機過酸化物系化合物としては、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、シクロヘキサノンパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、クミルパーオキシオクトエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンが挙げられる。これらの中でも、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンが好ましい。
ラジカル発生剤の添加量の下限は、成分(II)及び必要により使用する成分(IV)の合計100質量部に対し、好ましくは1質量部以上であり、より好ましくは3質量部以上である。1質量部以上であると、成分(II)及び必要により使用する成分(IV)をグラフト重合で導入し得る。また、添加量の上限は、好ましくは100質量部以下であり、より好ましくは50質量部以下である。100質量部以下であると、経済的である。
工程(A)において、ポリオレフィン樹脂(I)にグラフト重合しない、成分(II)及び必要により使用する成分(IV)、即ち、未反応物は、例えば、貧溶媒で抽出して除去してもよい。
このようにして、工程(A)により、前駆体樹脂が得られる。成分(II)及び必要により使用する成分(IV)のそれぞれのグラフト量は、特に制限されないが、前駆体樹脂100質量%に対し、0質量%超20質量%以下が好ましく、0質量%超10質量%以下がより好ましく、0質量%超4質量%以下がさらに好ましく、0質量%超4質量%以下がさらにより好ましい。グラフト量が上記範囲にあると、変性ポリオレフィン樹脂の水酸基量を調整し得る。
α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体(II)の導入量(グラフト重量)は、アルカリ滴定法により求め得る。また、(メタ)アクリル酸エステルの導入量(グラフト重量)は、H−NMRにより求め得る。
工程(A)で得られた前駆体樹脂は、変性ポリオレフィン樹脂の重量平均分子量が上述した好適な範囲となるよう、ポリスチレン標準によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した重量平均分子量が、10,000〜200,000であることが好ましい。
また、前駆体樹脂は、示差走査型熱量計(DSC)によって測定した融点が、50〜150℃が好ましく、50〜125℃がより好ましい。
さらに、前駆体樹脂は、アルカリ滴定法によって測定した酸価が5〜50mgKOH/gであることが好ましい。酸価が上記範囲にあると、最終的に得られる変性ポリオレフィン樹脂に対して、水酸基量が適切となる。
[2−2.工程(B)]
工程(B)では、まず、有機溶剤の沸点以下の温度、通常、50〜110℃(好ましくは50〜110℃)で、工程(A)で得られた前駆体樹脂を所定時間加熱攪拌して有機溶剤に溶解する。有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶剤;メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、エチルシクロヘキサン等のケトン溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ノナン、デカン等の脂肪族又は脂環式炭化水素溶剤が挙げられる。これら有機溶剤は1種単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤でもよい。環境問題の観点から、有機溶剤として、芳香族溶剤以外の溶剤を使用することが好ましく、脂環式炭化水素溶剤とエステル溶剤又はケトン溶剤との混合溶剤を使用することがより好ましい。次に、成分(III)を添加する。これにより、変性ポリオレフィン樹脂が得られる。すなわち、グラフト重合によりポリオレフィン樹脂(I)に導入された成分(II)に由来するカルボニル基と、成分(III)に由来するアミノ基とによりアミド結合を形成すると考えられる。このように、変性ポリオレフィン樹脂は、グラフト重合によりポリオレフィン樹脂(I)に導入された成分(II)を介して、成分(III)に由来する水酸基が導入されると考えられる。
[3.被膜形成用組成物]
変性ポリオレフィン樹脂を含む被膜形成用組成物は、本発明の変性ポリオレフィン樹脂と、必要に応じて他の成分として、溶液、硬化剤、及び接着成分からなる群より選択される少なくとも1種の成分をさらに含むものが好ましい。被膜形成用組成物は、具体的には、プライマー用組成物、塗料用組成物、インキ組成物、接着剤用組成物として好適に用いられる。
(溶液)
被膜形成用組成物の一実施態様は、上記の変性ポリオレフィン樹脂と溶液を含む樹脂組成物である。溶液としては、有機溶剤が挙げられる。有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル溶剤;メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、エチルシクロヘキサン等のケトン溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ノナン、デカン等の脂肪族又は脂環式炭化水素溶剤が挙げられる。これら有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として樹脂組成物に含まれていてよい。環境問題の観点から、有機溶剤として、芳香族溶剤以外の溶剤を使用することが好ましく、脂環式炭化水素溶剤とエステル溶剤又はケトン溶剤との混合溶剤を使用することがより好ましい。
(硬化剤)
被膜形成用組成物の他の実施態様は、上記の変性ポリオレフィン樹脂と硬化剤を含む硬化用組成物である。硬化剤としては、多官能イソシアネート化合物、エポキシ化合物、ポリアミン化合物、或いはそれらの官能基が保護基でブロックされた架橋剤が例示される。本発明の変性ポリオレフィン樹脂を含む被膜形成用組成物では、水酸基との反応性に富むイソシアネート基を含有する化合物を使用することが好ましく、多官能イソシアネート化合物がより好ましい。硬化剤は、1種単独であってもよいし、複数種の組み合わせであってもよい。
硬化剤の配合量は、本発明の変性ポリオレフィン樹脂中の成分(III)の含有量により適宜選択できる。また、硬化剤を配合する場合は、目的に応じて有機スズ化合物、第三級アミン化合物等の触媒を併用することができる。
(接着成分)
被膜形成用組成物のさらに他の実施態様は、上記の変性ポリオレフィン樹脂と接着成分を含む接着剤組成物である。接着成分としては、所望の効果を阻害しない範囲でポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤等の公知の接着成分を用いることができる。
被膜形成用組成物は、例えば、分散媒中に変性ポリオレフィン樹脂が分散した分散体組成物であってもよい。分散媒は、非水系であってもよく、水系(水分散体組成物)であってもよい。非水系溶媒としては、キシレン、トルエン、ベンゼン等の有機溶媒が挙げられる。また、水分散体組成物を調製する場合、その固形分は15〜50質量%程度である。
本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、耐熱性、溶液安定性に優れるので、金属及び/又は樹脂用の接着剤組成物、プライマー用組成物として用いることが好ましい。例えば、アルミラミネートフィルム等のラミネートフィルムにおける接着剤として有用である。
本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、積層体を構成する層の1つの材料であってもよい。積層体は、変性ポリオレフィン樹脂を含む層、金属層及び樹脂層を有する。積層体における層の配置は特に限定されないが、金属層及び樹脂層が変性ポリオレフィン樹脂を含む層を挟んで位置する態様、金属層を挟んで第1の樹脂層と第2の樹脂層が存在し、金属層と各樹脂層の間に変性ポリオレフィン樹脂を含む層が挟持されている態様が例示される。積層体は、リチウムイオン二次電池、コンデンサー、電気二重層キャパシター等の外装材として用いられるものであってもよく、用いられることが好ましい。
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を好適に説明するためのものであって、本発明を限定するものではない。なお、変性ポリオレフィン樹脂の物性値並びに変性ポリオレフィン樹脂の評価は、下記に記載した方法で行った。また、「部」は別途記載がない限り質量部を示す。
[重量平均分子量]:GPC(東ソー社製、標準物質:ポリスチレン樹脂)にて、下記条件により測定した。
測定機器:HLC−8320GPC(東ソー社製)
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム:TSKgel(東ソー社製)
検出器;示差屈折計(東ソー製)
[融点]:JIS K7121−1987に準拠し、DSC測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製 DISCOVERY DSC2500)を用いて以下の手法により測定した。約5mgの試料を150℃で10分間加熱融解状態を保持した。10℃/分の速度で降温して−50℃で安定保持した。そして、10℃/分で150℃まで昇温して融解した時の融解ピーク温度を測定し、該温度をTmとして評価した。
[α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体のグラフト量(質量%)]:アルカリ滴定法により測定した。
[(メタ)アクリル酸エステルのグラフト重量(重量%)]:H−NMRにより測定した。
[赤外分光スペクトル]:変性ポリオレフィン樹脂水分散体組成物を40℃、24時間乾燥して乾燥物を得た。得られた乾燥物を有機溶剤に溶解して溶液を得た。KBr板に溶液を塗布、乾燥して薄膜を形成し、FT−IR(日本分光社製 FT/IR−4100)にて、400〜4000cm−1の赤外吸光スペクトルを観測した。なお、解析は、付属ソフトウェア(Spectro Manager、日本分光社)によって行った。
波数1610〜1680cm−1に現れるピークを、アミド結合由来のピークに帰属し、波数1420〜1500cm−1に現れるピークを、メチレン結合由来のピークに帰属した。そして、アミド結合由来のピーク高さをAとし、メチレン結合由来のピーク高さをBとし、ピーク高さ比(A/B×100)を算出した。
[溶液安定性試験]:透明なガラスビーカー内で、実施例及び比較例で得られる変性ポリオレフィン樹脂を、メチルシクロヘキサン/メチルエチルケトン溶液(混合比80/20)に溶解して、15質量%の濃度の変性ポリオレフィン樹脂の塗料組成物(組成物溶液)を調製した。溶剤が揮発しないようにしっかりと封をし、室温(23℃)にて1週間静置した後に溶解安定性を目視し、下記評価基準で評価した。
A:組成物溶液は透明なままであり、流動性が保たれている。
B:組成物溶液の流動性が若干低下するが、実用上問題はない。
C:組成物溶液は濁っており、流動性が低下している。
[耐熱性(熱間付着強度)試験]:アルミ箔上に樹脂乾燥膜厚が2μmとなるように#16のマイヤーバーで接着剤組成物を塗布し、80℃で60秒間乾燥した。塗布済みのアルミ箔を無延伸ポリプロピレン(CPP)シートと貼合した。これを、200℃×1秒間、100kPaの条件で熱圧着を行った後、15mm幅に切り出した試験片を作製した。試験片を40℃で72時間養生することにより、接着剤組成物の架橋反応を促進した。23℃、相対湿度50%の恒温恒湿条件下で24時間保管した後、島津製作所製オートグラフシステム(AG−500NX型)を用いて、23℃、80℃又は120℃の各温度下で、180度方向剥離、剥離速度100mm/minの条件でラミネート接着強度を測定した。3回試験を行って、その平均値を結果とした。
なお、接着剤組成物の詳細は、後述する。
[ゲル含量(%)]:上記と同じ組成の接着剤組成物をテフロン(登録商標)製シャーレに適量流し入れ、80℃で180秒間乾燥してフィルムを作製した。40℃で72時間養生を行ったフィルム0.2グラムを正確に秤量した後、100ccのトルエンに入れ、50℃雰囲気下で24時間放置溶解した。濾過した後、濾物を乾燥して、トルエン不溶分(ゲル)を測定し、下記式(2)に基づいて含量を算出した。
(トルエン不溶分重量/フィルム重量)×100 (2)
[合成例1:前駆体樹脂(1)の製造]
攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、プロピレン−ブテンランダム共重合体〔P−B〕(プロピレン成分80モル%、ブテン成分20モル%、Tm=85℃)100部をトルエン400g中に加熱溶解した。系内の温度を110℃に保持して撹拌しながら、無水マレイン酸4.0部、ラウリルメタクリレート4.0部、ジ−t−ブチルパーオキサイド1.0部をそれぞれ3時間かけて滴下し、さらに1時間反応を行った。
反応終了後、室温まで冷却し、重量平均分子量が66,000の前駆体樹脂(1)を得た。反応物を大過剰のアセトン中に投入することで精製して、無水マレイン酸及びラウリルメタクリレートのグラフト重量を測定したところ、各々3.3重量%、3.0重量%であった。得られた前駆体樹脂(1)15gに、メチルシクロヘキサン68g及びメチルエチルケトン17gを加えて加熱溶解し、前駆体樹脂(1)を含む溶液(前駆体溶液(1))を得た。物性値等を含めて表1に示す。
[合成例2:前駆体樹脂(2)の製造]
合成例1のプロピレン−ブテンランダム共重合体〔P−B〕をプロピレン成分95モル%、ブテン成分5モル%、Tm=120℃のプロピレン−ブテンランダム共重合体〔P−B〕に変更した以外は、合成例1と同様に合成し、重量平均分子量が150,000の前駆体樹脂(2)を得た。反応物を大過剰のアセトン中に投入することで精製して、無水マレイン酸及びラウリルメタクリレートのグラフト重量を測定したところ、各々3.5重量%、3.1重量%であった。得られた前駆体樹脂(2)15gに、メチルシクロヘキサン68g及びメチルエチルケトン17gを加えて加熱溶解し、前駆体樹脂(2)を含む溶液(前駆体溶液(2))を得た。物性値等を含めて表1に示す。
[合成例3:前駆体樹脂(3)の製造]
合成例1で無水マレイン酸を5.0部とした以外は合成例1と同様に合成し、重量平均分子量が160,000の前駆体樹脂(3)を得た。反応物を大過剰のアセトン中に投入することで精製して、無水マレイン酸及びラウリルメタクリレートのグラフト重量を測定したところ、各々4.2重量%、3.1重量%であった。得られた前駆体樹脂(3)15gに、メチルシクロヘキサン68g及びメチルエチルケトン17gを加えて加熱溶解し、前駆体樹脂(3)を含む溶液(前駆体溶液(3))を得た。物性値等を含めて表1に示す。
Figure 2020037687
[実施例1:前駆体樹脂(1)のアミド化]
合成例1で得られた前駆体樹脂(1)(固形)100部を、攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、メチルシクロヘキサン280g中に加熱溶解した。系内の温度を90℃に保持して撹拌しながら、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール〔AMP〕3.3部を添加し、120分攪拌した。その後、室温まで冷却し、メチルエチルケトン70gを添加して固形分15.0%となるよう調整した。これより、変性ポリオレフィン樹脂(1)を含む溶液を得た。物性値等を含めて表2に示す。
[実施例2:前駆体樹脂(1)のアミド化]
合成例1で得られた前駆体樹脂(1)(固形)100部を、攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、メチルシクロヘキサン276g中に加熱溶解した。系内の温度を90℃に保持して撹拌しながら、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール〔AMP〕1.7部を添加し、120分攪拌した。その後、室温まで冷却し、メチルエチルケトン69gを添加して固形分15.0%となるよう調整した。これより、変性ポリオレフィン樹脂(2)を含む溶液を得た。物性値等を含めて表2に示す。
[実施例3:前駆体樹脂(3)のアミド化]
合成例3で得られた前駆体樹脂(3)(固形)100部を、攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、メチルシクロヘキサン273gに加熱溶解した。系内の温度を90℃に保持して撹拌しながら、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール〔AMP〕0.9部を添加し、120分攪拌した。その後、室温まで冷却し、メチルエチルケトン68gを添加して固形分15.0%となるよう調整した。これより、変性ポリオレフィン樹脂(3)を含む溶液を得た。物性値等を含めて表2に示す。
[比較例1:前駆体樹脂(1)のアミド化]
合成例1で得られた前駆体樹脂(1)(固形)100部を、攪拌機、冷却管、及び滴下漏斗を取り付けた四つ口フラスコ中で、メチルシクロヘキサン965g中に加熱溶解した。系内の温度を90℃に保持して撹拌しながら、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール〔AMP〕6.7部を添加し、120分攪拌した。その後、室温まで冷却し、メチルエチルケトン241gを添加して固形分15.0%となるよう調整した。これより、変性ポリオレフィン樹脂(3)を含む溶液を得た。
Figure 2020037687
[接着剤組成物の製造及び評価]
(実施例4)
実施例1で得た変性ポリオレフィン樹脂(1)を含む溶液20gに、反応触媒としてジブチルスズジラウレート(以下、〔DBTL〕という)3.0mgを添加して混合し、これに多官能イソシアネート化合物(三井化学社製、商品名「タケネート177N」)を、1.1g(NCO/OH=2.1)配合して混合し、接着剤組成物(1)を得た。この接着剤組成物(1)を用いて耐熱性試験、ゲル含量測定及び溶液安定性試験を実施した。結果を表3に示す。
(実施例5)
実施例2で得た変性ポリオレフィン樹脂(2)を含む溶液を用いた以外は、実施例4と同様にして接着剤組成物(2)を得た。この接着剤組成物(2)を用いて耐熱性試験、ゲル含量測定及び溶液安定性試験を実施した。結果を表3に示す。
(実施例6)
実施例3で得た変性ポリオレフィン樹脂(3)を含む溶液を用いた以外は、実施例4と同様にして接着剤組成物(3)を得た。この接着剤組成物(3)を用いて耐熱性試験、ゲル含量測定及び溶液安定性試験を実施した。結果を表3に示す。
(比較例2)
合成例1で得た前駆体溶液(1)20gに、反応触媒としてジブチルスズジラウレート(以下〔DBTL〕という)3.0mgを添加して混合し、接着剤組成物(4)を得た。この接着剤組成物(4)を用いて耐熱性試験、ゲル含量測定及び溶液安定性試験を実施した。結果を表3に示す。
(比較例3)
合成例1で得た前駆体溶液(1)を用いた以外は、実施例4と同様にして接着剤組成物(5)を得た。この接着剤組成物(5)を用いて耐熱性試験、ゲル含量測定及び溶液安定性試験を実施した。結果を表3に示す。
(比較例4)
比較例1で得た変性ポリオレフィン樹脂(4)を含む溶液を用いた以外は、実施例4と同様にして接着剤組成物(6)を得た。この接着剤組成物(6)を用いて耐熱性試験、ゲル含量測定及び溶液安定性試験を実施した。結果を表3に示す。
(比較例5)
合成例2で得た前駆体溶液(2)を用いた以外は、実施例4と同様にして接着剤組成物(7)を得た。この接着剤組成物(7)を用いて耐熱性試験、ゲル含量測定及び溶液安定性試験を実施した。結果を表3に示す。
Figure 2020037687
表3から明らかな通り、本発明の変性ポリオレフィン樹脂は、ゲル含量が高く、120℃の高温での耐熱性(熱間強度)及び溶液安定性が優れている(実施例4〜6)。
これに対し、アミド化を行っていない前駆体溶液(1)は、実施例4〜6と比較してゲル含量が低く、120℃の高温で耐熱性が急激に劣り(比較例3)、ピーク高さ比が本願の範囲から外れる変性ポリオレフィン樹脂(4)は、実施例4〜6と比較してゲル含量が低く、耐熱性及び溶液安定性も劣っていた(比較例4)。また、高融点樹脂を原料としアミド化を行っていない前駆体溶液(2)は、耐熱性は優れるが、溶液安定性が劣っていた(比較例5)。なお、アミド化を行っていない前駆体溶液に多官能イソシアネート化合物を添加せずに評価を行った場合、ゲル含量は0%であり120℃の高温での熱間強度も発現しなかった(比較例2)。

Claims (9)

  1. α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体(II)と、
    一級又は二級のアミノ基を有するアミノアルコール(III)による、ポリオレフィン樹脂(I)のグラフト変性物であり、
    赤外分光スペクトル測定において観察される、アミド結合由来のピーク高さをAとし、メチレン結合由来のピーク高さをBとしたときに、
    ピーク高さ比(A/B×100)が0.1〜6.0%の範囲である、変性ポリオレフィン樹脂。
  2. 前記ポリオレフィン樹脂(I)が、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、及びエチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の変性ポリオレフィン樹脂。
  3. 前記α,β−不飽和カルボン酸又はその誘導体(II)が、無水マレイン酸、無水イタコン酸、及びマレイン酸からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の変性ポリオレフィン樹脂。
  4. 前記グラフト変性物が、下記一般式(1)で表される(メタ)アクリル酸エステル(IV)による変性物である請求項1〜3のいずれか1項に記載の変性ポリオレフィン樹脂。
    Figure 2020037687

    (前記一般式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を示し、Rは、C2n+1で表される炭化水素基を示す。但し、nは、8〜18の整数である。)
  5. ポリスチレン標準によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した重量平均分子量が、10,000〜200,000である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の変性ポリオレフィン樹脂。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の変性ポリオレフィン樹脂を含む接着剤。
  7. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の変性ポリオレフィン樹脂を含むプライマー。
  8. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の変性ポリオレフィン樹脂を含む塗料。
  9. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の変性ポリオレフィン樹脂を含むインキ。
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