JP2020036499A - モータ制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ブラシレスモータの特性のバラツキに関わらず、ロータの磁極の向きを誤らずに判定できるモータ制御装置を提供する。【解決手段】モータ制御装置10は、推定d軸の方向に対して傾いた方向である偏向方向に電圧規定値以上の正の第1電圧が印加されたときに、偏向方向の電流成分として第1電流を取得する第1電流取得部172と、偏向方向に電圧規定値以上の負の第2電圧が印加されたときに、偏向方向の電流成分として第2電流を取得する第2電流取得部173と、第1電流と第2電流とを基に、ブラシレスモータ100のロータ105の磁極の向きを判定する判定部174と、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、突極性を有するブラシレスモータを制御するモータ制御装置に関する。
突極性を有するブラシレスモータにおいて、ベクトル制御の回転座標のd軸の方向に正の電流が流れるときには、ロータの永久磁石の磁束の方向と、d軸の方向への通電によって生じる磁束の方向とが同じになるため、磁気飽和によりインダクタンスが小さくなる。一方、d軸の方向に負の電流が流れるときには、ロータの永久磁石の磁束の方向と、d軸の方向への通電によって生じる磁束の方向とが反対になるため、磁気飽和が生じず、インダクタンスがあまり変化しない。
また、ブラシレスモータとしては、ロータの永久磁石の磁束の方向と、通電によって生じる磁束の方向とが同じであるときにインダクタンスの極大点を持つ特性を有するモータが知られている。このようなブラシレスモータでは、極大点に応じた電流よりも大きい正の電流がd軸の方向に流れると、インダクタンスが減少する。
特許文献1には、こうしたブラシレスモータを構成するロータの磁極特性を判定するモータ制御装置の一例が記載されている。この際、正の電流をd軸の方向に流した際におけるインダクタンスと、負の電流をd軸の方向に流した際におけるインダクタンスとの比較を基に、磁極特性が判定される。
特開2014−11822号公報
特許文献1に記載されるような方法で磁極特性を判定する場合、ブラシレスモータの温度特性及びブラシレスモータの構成部材の形状のバラツキなどを考慮すると、磁極特性の判定を誤る可能性がある。例えば、上記のバラツキによっては、d軸の方向に正の電流を流したときにインダクタンスの極大点が存在しないことも考えられる。
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するモータ制御装置は、ブラシレスモータの回転座標系のd軸の方向として推定される推定d軸の方向の電流成分と前記回転座標系のq軸の方向として推定される推定q軸の方向の電流成分とを制御することによって前記ブラシレスモータを駆動させるモータ制御装置であって、前記推定d軸の方向に対して傾いた方向である偏向方向に電圧規定値以上の正の第1電圧が印加されたときに、前記偏向方向の電流成分として第1電流を取得する第1電流取得部と、前記偏向方向に前記電圧規定値以上の負の第2電圧が印加されたときに、前記偏向方向の電流成分として第2電流を取得する第2電流取得部と、前記第1電流と前記第2電流とを基に、前記ブラシレスモータのロータの磁極の向きを判定する判定部と、を備える。
磁気飽和する際のインダクタンスの低下によって電流が流れやすくなる特性を利用して磁極特性を判定する場合には、インダクタンス差が生じる程度にd軸の正方向及び負方向に電流を流す必要がある。この場合、ブラシレスモータのバラツキまで考慮すると、d軸の正方向及び負方向に流れる電流を大きく、つまりd軸の正方向及び負方向に印加する電圧を大きくする必要がある。
この点、d軸の偏向方向に正の電圧を印加する場合にd軸の偏向方向に流れる電流と、d軸の方向に負の電圧を印加する場合にd軸の偏向方向に流れる電流と、を比較する場合には、比較的大きな電圧を印加しなくても、両者の電流に差が生じやすい。そこで、上記構成のモータ制御装置は、推定d軸の方向に対して傾いた偏向方向に正の第1電圧を印加したときの偏向方向の電流成分である第1電流と、偏向方向に負の第2電圧を印加したときの偏向方向の電流成分である第2電流とに基づいて、ロータの磁極の向きを判定する。したがって、上記構成によれば、バラツキを考慮してもロータの磁極の向きを誤らずに判定でき、ロータの磁極の向きの判定時に消費する電力の抑制が可能となる。
上記モータ制御装置において、前記判定部は、前記第1電流の変化速度である第1変化速度と、前記第2電流の変化速度である第2変化速度と、を演算し、前記第1変化速度が前記第2変化速度よりも大きい場合には、前記推定d軸の向きが実際のd軸の向きと一致していると判定し、前記第1変化速度が前記第2変化速度よりも小さい場合には、前記推定d軸の向きが実際のd軸の向きの反対を向いていると判定することが好ましい。
この構成によれば、第1変化速度及び第2変化速度は、複数の電流の値から得られる情報であるため、1点の電流の値に基づいてロータの磁極の向きを判定する場合に比較して、磁極の向きを精度よく判定できる。
上記モータ制御装置において、前記第1電圧及び前記第2電圧を印加する時間は、前記偏向方向への電圧の印加に伴う前記ロータの変動量に基づいて設定されることが好ましい。
偏向方向に電圧を印加すると、回転座標の実際のq軸の方向に電流が流れるため、ロータが回転し得る。そこで、モータ制御装置は、第1電圧及び第2電圧の印加時間を、当該電圧の印加に伴うロータの変動量に基づいて設定することで、ロータの回転を管理できる。
上記モータ制御装置が制御対象とする前記ブラシレスモータは、例えば、d軸の方向に正の電流が流れるときにはインダクタンスの極大点を持つとともに、前記極大点に応じた電流よりも大きい電流がd軸の方向に流れると、インダクタンスが減少する特性を有することが好ましい。
上記モータ制御装置において、前記ブラシレスモータの温度を取得する温度取得部と、前記ブラシレスモータの温度に基づいて前記偏向方向を設定する方向設定部と、を備えることが好ましい。
ブラシレスモータの特性は、ブラシレスモータの温度に応じて変化する場合がある。つまり、ブラシレスモータの温度によっては、電圧の印加方向をd軸の方向からあまり偏角させなくても、正の電圧を印加した場合に偏向方向に流れる電流と、負の電圧を印加した場合に偏向方向に流れる電流とに違いが出ることがある。そこで、モータ制御装置は、ブラシレスモータの温度に基づいて、偏向方向を設定する。例えば、モータ制御装置は、d軸の偏向方向に正の電圧及び負の電圧を印加する場合にd軸の偏向方向に流れる電流の差と、ブラシレスモータの温度と、の関係を示す情報を、実験やシミュレーションなどで得ておき、その情報に基づいて偏向方向を設定する。その結果、モータ制御装置は、ブラシレスモータの温度に応じて、ロータの磁極の向きの判定時に実際のq軸の方向に流れる電流を小さくし、ロータの磁極の向きを判定する際にロータが回転することを抑制しやすくなる。
上記モータ制御装置において、前記ブラシレスモータの温度を取得する温度取得部と、前記ブラシレスモータの温度に基づいて前記電圧規定値を設定する規定値設定部と、を備えることが好ましい。
ブラシレスモータの特性は、ブラシレスモータの温度に応じて変化する場合がある。つまり、ブラシレスモータの温度によっては、偏向方向に印加する電圧が小さくても、正の電圧を印加した場合に偏向方向に流れる電流と、負の電圧を印加した場合に偏向方向に流れる電流とに違いが出ることがある。そこで、モータ制御装置は、ブラシレスモータの温度に基づいて電圧規定値を設定する。例えば、モータ制御装置は、d軸の偏向方向に正の電圧及び負の電圧を印加する場合にd軸の偏向方向に流れる電流の差と、ブラシレスモータの温度と、の関係を示す情報を、実験やシミュレーションなどで得ておき、その情報に基づいて偏向方向を設定する。これにより、モータ制御装置は、ブラシレスモータの温度に応じて、ロータの磁極の判定時に偏向方向に印加される電圧を小さくし、ロータの磁極の判定時に消費する電力を低減することが可能となる。
上記モータ制御装置は、前記第1電圧が印加された後であって且つ前記第2電圧が印加される前に、前記推定d軸の方向を実際のd軸の方向に近づける更新処理を実行する更新部を備えることが好ましい。
推定d軸の方向の偏向方向に正の第1電圧が印加される場合には、実q軸の方向に電流が流れ得る点で、ブラシレスモータのロータが回転し得る。このため、推定d軸の方向と実d軸の方向とに差が生じることがある。上記構成によれば、モータ制御装置は、第1電圧が印加された後であって第2電圧が印加される前に更新処理を実行するため、推定d軸の方向と実d軸の方向とに差が生じることで、第2電圧の印加方向が偏向方向からずれることを抑制できる。
実施形態のモータ制御装置と、同モータ制御装置によって制御されるブラシレスモータの概略構成を示すブロック図。 (a),(b)は、種類の異なるブラシレスモータのd軸の方向のインダクタンス特性を示すグラフ。 第2のブラシレスモータにおけるd軸及びq軸と、その間のインダクタンス特性を示す等値線図。 第2のブラシレスモータにおいて、(a)はd軸の方向のインダクタンス特性を示すグラフ、(b)はd軸の方向から偏向した第1偏向方向におけるインダクタンス特性を示すグラフ、(c)はd軸の方向から偏向した第2偏向方向におけるインダクタンス特性を示すグラフ。 (a),(b)は偏向方向に第1パルス信号を印加するときのタイミングチャート。 (a),(b)は偏向方向に第2パルス信号を印加するときのタイミングチャート。 変更例に係るモータ制御装置の磁極判定部の概略構成を示すブロック図。 ブラシレスモータの温度とd軸の方向からの偏向量との関係を示すマップ。 ブラシレスモータの温度と電圧規定値との関係を示すマップ。
以下、モータ制御装置の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1には、本実施形態のモータ制御装置10と、モータ制御装置10によって制御されるブラシレスモータ100とが図示されている。ブラシレスモータ100は、車載のブレーキ装置におけるブレーキ液の吐出用の動力源として用いられる。ブラシレスモータ100は、永久磁石埋込型同期モータである。ブラシレスモータ100は、複数の相(U相、V相及びW相)のコイル101,102,103と、突極性を有するロータ105とを備えている。ロータ105としては、例えば、N極とS極とが一極ずつ着磁されている2極ロータを挙げることができる。
モータ制御装置10は、ベクトル制御によってブラシレスモータ100を駆動させる。このようなモータ制御装置10は、指令電流算出部11、指令電圧算出部12、2相/3相変換部13、インバータ14、3相/2相変換部15、ロータ位置推定部16及び磁極判定部17を有している。
指令電流算出部11は、ブラシレスモータ100に対する要求トルクTR*に基づき、d軸指令電流Id*及びq軸指令電流Iq*を算出する。d軸指令電流Id*は、ベクトル制御の回転座標におけるd軸方向の電流成分の指令値である。q軸指令電流Iq*は、回転座標におけるq軸方向の電流成分の指令値である。d軸及びq軸は、回転座標上で互いに直交している。
指令電圧算出部12は、d軸指令電流Id*と、d軸電流Idとに基づいたフィードバック制御によって、d軸指令電圧Vd*を算出する。d軸電流Idとは、ブラシレスモータ100の各コイル101,102,103への給電によって回転座標上で発生した電流ベクトルのうちのd軸方向の電流成分を示す値である。また、指令電圧算出部12は、q軸指令電流Iq*と、q軸電流Iqとに基づいたフィードバック制御によって、q軸指令電圧Vq*を算出する。q軸電流Iqとは、各コイル101,102,103への給電によって回転座標上で発生した電流ベクトルのうちのq軸方向の電流成分を示す値である。
2相/3相変換部13は、ロータ105の位置(すなわち、回転角)であるロータ回転角θを基に、指令電圧算出部12によって算出されたd軸指令電圧Vd*及びq軸指令電圧Vq*を、U相指令電圧VU*と、V相指令電圧VV*と、W相指令電圧VW*とに変換する。U相指令電圧VU*は、U相のコイル101に印加する電圧の指令値である。V相指令電圧VV*は、V相のコイル102に印加する電圧の指令値である。W相指令電圧VW*は、W相のコイル103に印加する電圧の指令値である。
インバータ14は、複数のスイッチング素子を有している。そして、インバータ14は、2相/3相変換部13から入力されたU相指令電圧VU*と、スイッチング素子のオン/オフ動作によってU相信号を生成する。また、インバータ14は、入力されたV相指令電圧VV*と、スイッチング素子のオン/オフ動作によってV相信号を生成する。また、インバータ14は、入力されたW相指令電圧VW*と、スイッチング素子のオン/オフ動作によってW相信号を生成する。すると、U相信号がブラシレスモータ100のU相のコイル101に入力され、V相信号がV相のコイル102に入力され、W相信号がW相のコイル103に入力される。
3相/2相変換部15には、ブラシレスモータ100のU相のコイル101に流れた電流としてU相電流IUが入力され、V相のコイル102に流れた電流としてV相電流IVが入力され、W相のコイル103に流れた電流としてW相電流IWが入力される。そして、3相/2相変換部15は、ロータ回転角θを基に、U相電流IU、V相電流IV及びW相電流IWを、d軸の方向の電流成分であるd軸電流Id、及び、q軸の方向の電流成分であるd軸電流Idに変換する。
ロータ位置推定部16は、ブラシレスモータ100の回転制御を開始する際に、回転座標系のd軸として推定される推定d軸を実際のd軸に近付けるような磁極位置推定処理を行う。ロータ位置推定部16は、交流電圧発生部161と、更新部162と、を有する。
交流電圧発生部161は、高周波で電圧を振動させる外乱電圧信号Vdh*を生成して第1の加算器181に出力する外乱出力処理を実行する。外乱出力処理が交流電圧発生部161によって実行されている場合、指令電圧算出部12によって算出されたd軸指令電圧Vd*に外乱電圧信号Vdh*が加算され、加算後のd軸指令電圧Vd*が2相/3相変換部13に入力される。
更新部162は、交流電圧発生部161によって外乱出力処理が実行されているときに、推定d軸の方向を更新し、推定d軸を実d軸にほぼ一致させるための更新処理を実行する。詳しくは、推定d軸の方向が実d軸の方向に対して傾く場合、推定d軸の方向に電圧ベクトルが発生するようにブラシレスモータ100に給電が行われると、推定d軸の方向に対して電流ベクトルが偏角した状態で発生する。その結果、回転座標において推定d軸と直交する制御軸である推定q軸の方向に電流成分が発生する。そこで、更新部162は、このような推定q軸の方向の電流成分の大きさが「0」となるように、推定d軸を更新する更新処理を実行する。なお、更新処理は、ロータ105の突極性を利用したものであり、ロータ105の磁極の向きまでは判別できない。すなわち、更新処理の終了時には、推定d軸の正負の向きが実d軸の正負の向きと一致している場合もあれば、推定d軸の正負の向きが実d軸の正負の向きとは逆になっている場合もある。
磁極判定部17は、ロータ位置推定部16が磁極位置推定処理を実行した後に、ロータ105の磁極の向きを特定する。磁極判定部17は、判定電圧発生部171と、第1電流取得部172と、第2電流取得部173と、判定部174と、を有する。
ここで、本実施形態のモータ制御装置10が制御対象とするブラシレスモータ100としては、インダクタンス特性の異なる2種類のモータがある。
図2(a)は、第1のブラシレスモータのインダクタンス特性を示す図である。また、図2(b)は、第2のブラシレスモータのインダクタンス特性を示す図である。ここでは、実d軸の方向の電流成分、すなわち、ロータ105による磁界成分と並行な磁界成分を生成する電流成分のことを「実d軸電流」という。実d軸電流が正の値である場合とは、実d軸の方向の電流成分が正向きであることを表し、実d軸電流が負の値である場合とは、実d軸の方向の電流成分が負向きであることを表している。また、実d軸電流の絶対値とは、実d軸の方向の電流成分の大きさのことである。
第1のブラシレスモータにおいて、実d軸電流が正の値である場合、磁気飽和が起きやすい。そのため、実d軸電流が大きくなると、図2(a)に実線で示すように実d軸のインダクタンスLPが低下する。一方、実d軸電流が負の値である場合、磁気飽和が起きにくい。そのため、実d軸電流を大きくしても、図2(a)に破線で示すように実d軸のインダクタンスLNが変化しにくい。
このため、第1のブラシレスモータでは、図2(a)に示すように、実d軸電流の絶対値が比較的小さい段階から、実d軸のインダクタンスLPが実d軸のインダクタンスLNよりも小さくなる。したがって、モータ制御装置10の制御対象となるブラシレスモータ100が第1のブラシレスモータである場合では、ブラシレスモータ100に大きな電圧を印加しなくても、実d軸のインダクタンスLP,LNを比較することで、ロータ105の磁極の向きを判定できる。
図2(b)に示すように、第2のブラシレスモータにおいて、実d軸電流が正の値である場合、実d軸電流を大きくすると、実d軸のインダクタンスLPが増大した後に減少する。つまり、実d軸電流を大きくすると、図2(b)に実線で示すように、実d軸のインダクタンスLPが極大点LPPを持つとともに、極大点LPPに応じた電流よりも大きい電流が流れるとインダクタンスLPが減少する。一方、実d軸電流が負の値である場合、図2(b)に破線で示すように、実d軸電流が大きくなっても実d軸のインダクタンスLNがあまり変化しない。このため、インダクタンスLP,LNが同じ値となるときの実d軸電流の絶対値を電流基準値ITHとした場合、実d軸電流の絶対値が電流基準値ITHよりも大きいときに限れば、実d軸の方向に正の電圧を印加した場合のインダクタンスLPが、実d軸の方向に負の電圧を印加した場合のインダクタンスLNよりも小さくなる。
したがって、上述した2種類のブラシレスモータのロータ105の磁極の向きは、実d軸の方向に正の電圧を印加した場合のインダクタンスLPが、実d軸の方向に負の電圧を印加した場合のインダクタンスLNよりも小さいか否かを判定することで判別できる。ただし、制御対象となるブラシレスモータ100が第2のブラシレスモータである可能性があるため、実d軸電流の絶対値が電流基準値ITH以上となるように、大きな電圧を印加する必要が生じる。つまり、ロータ105の磁極の向きの判定に用いる消費電力が大きくなる。そこで、モータ制御装置10は、次に説明する第2のブラシレスモータのインダクタンス特性も考慮し、ロータ105の磁極の向きの判定に用いる消費電力の抑制を図る。また、ブラシレスモータ100は、温度条件及びコイル101〜103及びロータ105などの形状のバラツキから、図2(a),(b)に示すタイプのどちらにもなり得る。
図3及び図4(a)〜(c)を参照して、第2のブラシレスモータにおいて、実d軸の方向から傾いた偏向方向に正の電圧及び負の電圧の双方を印加した場合のインダクタンス特性について説明する。図3は、実d軸電流及び実q軸電流とインダクタンスとの関係を示す等値線図であり、図4(a)〜(c)は、任意の方向の電流成分とインダクタンスLP,LNとの関係を示すグラフである。
図3及び図4(a)に示すように、実d軸の方向に電圧を印加した場合のインダクタンス特性は、上述した通りである。実d軸の方向に正の電圧を印加した場合、実d軸の方向の電流成分である実d軸電流は正の値となる。この場合、図4(a)に実線で示すように、実d軸電流が大きくなると、インダクタンスLPが極大点LPPに達するまで増大した後に減少する。一方、実d軸の方向に正の電圧を印加した場合、実d軸電流は負の値となる。この場合、図4(a)に破線で示すように、実d軸電流の絶対値が大きくなってもインダクタンスLNがあまり変化しない。
図3及び図4(b)に示すように、実d軸の方向から「45°」だけ進角させた方向である第1偏向方向に正の電圧及び負の電圧の双方を印加した場合のインダクタンス特性は、次のようになる。ここでは、第1偏向方向の電流成分のことを「第1偏向方向の電流」という。第1偏向方向の電流が正の値である場合とは、第1偏向方向の電流成分が正向きであることを表し、第1偏向方向の電流が負の値である場合とは、第1偏向方向の電流成分が負向きであることを表している。また、第1偏向方向の電流の絶対値とは、第1偏向方向の電流成分の大きさのことである。
第1偏向方向に正の電圧を印加した場合、第1偏向方向の電流は正の値となる。この場合、図4(b)に実線で示すように、第1偏向方向の電流が大きくなると、インダクタンスLPが略一定の値を維持した後に減少する。つまり、インダクタンスLPのピークの幅が広く、インダクタンスLPの明確な極大点が存在しない。一方、第1偏向方向に負の電圧を印加した場合、第1偏向方向の電流は負の値となる。この場合、図4(b)に破線で示すように、第1偏向方向の電流の絶対値が大きくなると、インダクタンスLNが略一定の値を維持した後に減少する。そして、第1偏向方向に正の電圧が印加されるときのインダクタンスLPが第1偏向方向に負の電圧が印加されるときのインダクタンスLNよりも小さくなるときの電流基準値ITHは、図4(a)に示す場合よりも小さくなる。
図3及び図4(c)に示すように、実d軸の方向から「60°」だけ進角させた方向である第2偏角方向に正の電圧及び負の電圧の双方を印加した場合のインダクタンス特性は、次のようになる。ここでは、第2偏向方向の電流成分のことを「第2偏向方向の電流」という。第2偏向方向の電流が正の値である場合とは、第2偏向方向の電流成分が正向きであることを表し、第2偏向方向の電流が負の値である場合とは、第2偏向方向の電流成分が負向きであることを表している。また、第2偏向方向の電流の絶対値とは、第2偏向方向の電流成分の大きさのことである。
第2偏向方向に正の電圧を印加した場合、第2偏向方向の電流は正の値となる。この場合、図4(c)に実線で示すように、第2偏向方向の電流が大きくなると、インダクタンスLPが略一定の値を維持した後に減少する。つまり、インダクタンスLPの明確な極大点が存在しない。また、第2偏向方向に正の電圧を印加し、第2偏向方向の電流を大きくする場合には、図4(b)に示したように第1偏向方向に正の電圧を印加する場合よりも、インダクタンスLPが減少し始めるときの電流の絶対値が小さくなる。しかし、インダクタンスLPが減少し始めた以降では、電流の増大量に対するインダクタンスLPの減少量であるインダクタンスLPの減少勾配はあまり変わらない。
一方、第2偏向方向に負の電圧を印加した場合、第2偏向方向の電流は負の値となる。この場合、図4(c)に破線で示すように、第2偏向方向の電流の絶対値が大きくなると、インダクタンスLNが略一定の値を維持した後に減少する。そして、第2偏向方向に正の電圧を印加したときのインダクタンスLPが第2偏向方向に負の電圧を印加したときのインダクタンスLNよりも小さくなるときの電流基準値ITHは、図4(b)に示す場合よりも小さくなる。
以上より、第2のブラシレスモータでは、電圧を印加する方向である印加方向の実d軸の方向からの偏向量が多いほど、電流基準値ITHが小さくなる。つまり、制御対象となるブラシレスモータ100が第1のブラシレスモータであっても第2のブラシレスモータであっても、実d軸の方向に対して偏角した方向に正の電圧を印加した場合のインダクタンスLPと、当該方向に負の電圧を印加した場合のインダクタンスLNとを比較することで磁極判定を行えば、実d軸の方向に電圧を印加することによって得られる情報を基に磁極判定を行うよりも、消費電力を少なくすることができる。
以下、モータ制御装置10(磁極判定部17)の磁極判定処理について詳しく説明する。
図1に示すように、磁極判定部17の判定電圧発生部171は、予め定められた規定の偏角方向に磁極判定用の判定電圧信号を流す判定出力処理を実行する。規定の偏角方向とは、推定d軸の方向に対して規定量だけ偏角した方向のことである。規定の偏角方向は、推定d軸の方向に対して偏角した方向であれば、上記の第1偏角方向であってもよいし、第2の偏角方向であってもよいし、第1偏角方向及び第2偏角方向とは異なる方向であってもよい。
判定電圧信号は、図5(a)に示す第1パルス信号S1と、図6(a)に示す第2パルス信号S2とを含んでいる。図5(a)に示すように、第1パルス信号S1は、規定の偏向方向に電圧規定値VTH以上の正の第1電圧V1を印加した後に、規定の偏向方向に電圧規定値VTH以上の負の第1電圧V1を印加するための1周期分の矩形波の信号である。一方、図6(a)に示すように、第2パルス信号S2は、規定の偏向方向に電圧規定値VTH以上の負の第2電圧V2を印加した後に、規定の偏向方向に電圧規定値VTH以上の正の第2電圧V2を印加するための1周期分の矩形波の信号である。第1電圧V1は、第2電圧V2と同じである。また、第1パルス信号S1の信号レベルが正の第1電圧V1である期間の長さは、第2パルス信号S2の信号レベルが負の第2電圧V2である期間の長さと同じである。
電圧規定値VTHは、推定d軸の方向に対する規定の偏向方向の偏向量に応じた値である。例えば、規定の偏向方向が上記の第1偏向方向である場合、電圧規定値VTHは、図4(b)に示した電流基準値ITHに応じた値となる。また、規定の偏向方向が上記の第2偏向方向である場合、電圧規定値VTHは、図4(c)に示した電流基準値ITHに応じた値となる。すなわち、推定d軸の方向に対する規定の偏向方向の偏向量が多いほど、電圧規定値VTHは小さい値に設定される。
図1に戻り、判定電圧発生部171は、判定出力処理では、判定電圧信号が規定の偏向方向に流れるような、d軸電圧信号Vdp*とq軸電圧信号Vqp*とを生成する。そして、判定電圧発生部171は、判定出力処理では、生成したd軸電圧信号Vdp*を第2の加算器182に出力し、生成したq軸電圧信号Vqp*を第3の加算器183に出力する。そのため、判定電圧発生部171が判定出力処理を実行している場合、d軸指令電圧Vd*にd軸電圧信号Vdp*が加算され、加算後のd軸指令電圧Vd*が2相/3相変換部13に入力される。また、q軸指令電圧Vq*にq軸電圧信号Vqp*が加算され、加算後のq軸指令電圧Vq*が2相/3相変換部13に入力される。
なお、規定の偏向方向に電圧が印加されると、実q軸の方向に電流が流れるため、ブラシレスモータ100のロータ105が回転し得る。このため、規定の偏向方向に第1パルス信号S1が入力されたことに起因するロータ105の回転量(変動量)、及び、規定の偏向方向に第2パルス信号S2が入力されたことに起因するロータ105の回転量(変動量)の双方が許容回転量に収まるように、第1パルス信号S1及び第2パルス信号S2が設定される。詳しくは、第1パルス信号S1の信号レベルが正の第1電圧V1である期間の長さ、及び、第2パルス信号S2の信号レベルが負の第2電圧V2である期間の長さが設定される。こうして、規定の偏向方向に第1電圧V1及び第2電圧V2を印加する時間は、規定の偏向方向への電圧の印加に伴うロータ105の変動量に基づいて設定される。
また、判定電圧発生部171は、判定出力処理の実行中、詳しくは、第1パルス信号S1を出力してから第2パルス信号S2を出力する前に、更新部162に上述した更新処理を実行させてもよい。これによれば、規定の偏向方向に正の第1電圧V1が印加されることにより、実q軸の方向に電流が流れることで、ブラシレスモータ100のロータ105が回転したとしても、負の第2電圧V2の印加方向が規定の偏向方向からずれることが抑制される。
磁極判定部17の第1電流取得部172は、判定電圧発生部171が判定出力処理を実行しているときに、規定の偏向方向の電流成分である第1電流I1を取得する。詳しくは、図5(a),(b)に示すように、第1電流取得部172は、規定の偏向方向に電圧規定値VTH以上の正の第1電圧V1が印加されているときにおける規定の偏向方向の電流成分である第1電流I1を取得する。規定の偏向方向に電圧規定値VTH以上の正の第1電圧V1が印加されている場合、規定の偏向方向の電流成分の向きは正向きである。そのため、第1電流取得部172によって取得される第1電流I1は正の値となる。そして、第1電流取得部172は、規定の偏向方向に電圧規定値VTH以上の正の第1電圧V1が印加されている場合、所定のサンプリング周期毎に第1電流I1を取得する。
磁極判定部17の第2電流取得部173は、判定電圧発生部171が判定出力処理を実行しているときに、規定の偏向方向の電流成分である第2電流I2を取得する。詳しくは、図6(a),(b)に示すように、第2電流取得部173は、規定の偏向方向に電圧規定値VTH以上の負の第2電圧V2が印加されているときにおける規定の偏向方向の電流成分である第2電流I2を取得する。規定の偏向方向に電圧規定値VTH以上の負の第2電圧V2が印加されている場合、規定の偏向方向の電流成分の向きは負向きである。そのため、第2電流取得部173によって取得される第2電流I2は負の値となる。そして、第2電流取得部173は、規定の偏向方向に電圧規定値VTH以上の負の第2電圧V2が印加されている場合、所定のサンプリング周期毎に第2電流I2を取得する。
なお、図5(b)及び図6(b)では、説明のために単純化した第1電流I1及び第2電流I2の変化を示している。実際には、図4(b),(c)に示すようなインダクタンスの変動に応じた態様で第1電流I1及び第2電流I2がそれぞれ変化する。
図1に戻り、磁極判定部17の判定部174は、第1電流取得部172が取得した第1電流I1と、第2電流取得部173が取得した第2電流I2とを基に、磁極特性を判定する。なお、ブラシレスモータ100に電圧(V)を印加するときのインダクタンス(L)と電流変化速度(di/dt)には、V=L・(di/dt)の関係があるため、判定部174は、規定の偏向方向におけるインダクタンスLP,LNの代わりに規定の偏向方向の電流成分の大きさの変化速度を用いて、磁極特性を判定する。
すなわち、判定部174は、規定の偏向方向に電圧規定値VTH以上の正の第1電圧V1が印加されている場合において、図5(b)に示す電流基準値ITHよりも第1電流I1が大きくなった以降での第1電流I1の変化速度である第1変化速度I1’を演算する。また、判定部174は、規定の偏向方向に電圧規定値VTH以上の負の第2電圧V2が印加されている場合において、図6(b)に示す電流基準値ITHよりも第2電流I2の絶対値が大きくなった以降での第2電流I2の変化速度である第2変化速度I2’を演算する。
そして、判定部174は、第1変化速度I1’と第2変化速度I2’とを基に、ロータ105の磁極判定を行う。すなわち、判定部174は、第1変化速度I1’が第2変化速度I2’よりも大きい場合には、推定しているロータ105のN極の位置が実際のN極の位置と同じであると判定する。つまり、判定部174は、推定d軸の向きが実d軸の向きと一致していると判定する。一方、判定部174は、第1変化速度I1’が第2変化速度I2’よりも小さい場合には、推定しているロータ105のN極の位置が実際のN極の位置の反対であると判定する。つまり、判定部174は、推定d軸の向きが実d軸の向きの反対を向いていると判定する。
言い換えれば、判定部174は、第1変化速度I1’に応じたインダクタンスが、第2変化速度I2’に応じたインダクタンスよりも小さい場合には、推定しているロータ105のN極の位置が実際のN極の位置と同じであると判定する。一方、判定部174は、第1変化速度I1’に応じたインダクタンスが、第2変化速度I2’に応じたインダクタンスよりも大きい場合には、推定しているロータ105のN極の位置が実際のN極の位置の反対であると判定する。
以上説明したように、本実施形態のモータ制御装置10では、規定の偏向方向に正の第1電圧V1を印加したことによって演算された第1変化速度I1’と、規定の偏向方向に負の第2電圧V2を印加したことによって演算された第2変化速度I2’とを比較することで、ロータ105の磁極の向きが判定される。このため、推定d軸の方向に正の電圧及び負の電圧を印加して第1変化速度I1’及び第2変化速度I2’を導出する場合よりも、ブラシレスモータ100に印加する電圧を低くできる。したがって、ロータ105の磁極特性の判定時に消費する電力を抑制できる。
また、本実施形態によれば、制御対象となるブラシレスモータ100が第2のブラシレスモータである場合だけではなく、制御対象となるブラシレスモータ100が第1のブラシレスモータである場合であっても、ロータ105の磁極の向きを判定することができる。
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・図2(a)に示した第2のブラシレスモータのインダクタンス特性は、ブラシレスモータ100の温度に応じて変化することがある。一例として、第2のブラシレスモータのインダクタンス特性は、ブラシレスモータ100の温度が高いほど顕著に現れることがある。このとき、ブラシレスモータ100の温度が低い場合には、ブラシレスモータ100の温度が高い場合に比較して、規定の偏向方向の推定d軸の方向からの偏向量を少なくしても磁極特性の判定が可能となる。そこで、図7に示すように、モータ制御装置10は、ブラシレスモータ100の温度を取得する温度取得部19と、ブラシレスモータ100の温度が低いほど、偏向方向を推定d軸の方向に近付くように設定する方向設定部175を備えてもよい。
温度取得部19は、例えばブレーキ装置内を循環するブレーキ液の温度が高いほどブラシレスモータ100の温度が高くなるように、温度を推定演算する。もちろん、ブラシレスモータ100が温度センサを内蔵している場合では、温度センサの検出値をブラシレスモータ100の温度として取得するようにしてもよい。
方向設定部175は、例えば図8に示すマップに基づいて、温度取得部19が取得したブラシレスモータ100の温度に応じた偏向量Δθを設定する。図8に示すマップは、予め、実験及びシミュレーションなどによって設定されるマップである。図8に示すマップを用いると、ブラシレスモータ100の温度が第1温度T1未満である場合、方向設定部175は、偏向量Δθを第1偏向量Δθ1とする。また、ブラシレスモータ100の温度が第1温度T1よりも大きな第2温度T2以上である場合、方向設定部175は、偏向量Δθを、第1偏向量Δθ1よりも大きい第2偏向量Δθ2とする。また、ブラシレスモータ100の温度が第1温度T1以上であって第2温度T2未満である場合、方向設定部175は、第1偏向量Δθ1以上第2偏向量Δθ2未満の範囲で、ブラシレスモータ100の温度が高いほど偏向量Δθを大きくする。そして、方向設定部175は、推定d軸の方向から偏向量Δθだけ偏向した方向を規定の偏向方向とする。これにより、ブラシレスモータ100の温度が低いほど、規定の偏向方向を、推定d軸の方向に近づけることができる。
この構成によれば、ブラシレスモータ100の温度が低いほど、規定の偏向方向に電圧を印加した際における実q軸の電流成分の大きさ、すなわちq軸電流Iqを小さくできる。したがって、ブラシレスモータ100の温度が低いほど、規定の偏向方向に電圧を印加した際にロータ105が回転しにくくなる。
なお、図8に示すマップは、ブラシレスモータ100の温度が高くなるに連れて、偏向量Δθが段階的に大きくなるマップとしてもよい。また、図8に示すマップは、第2のブラシレスモータのインダクタンス特性が、ブラシレスモータ100の温度が高いほど顕著に現れることを前提としたマップであり、ブラシレスモータ100の温度特性が異なる場合には当該温度特定に応じて適宜に設定されることが好ましい。
・上述したように、第2のブラシレスモータのインダクタンス特性は、ブラシレスモータ100の温度が高いほど顕著に現れることがある。このとき、ブラシレスモータ100の温度が低い場合には、ブラシレスモータ100の温度が高い場合に比較して、規定の偏向方向に印加する電圧を大きくしなくても、インダクタンスLPがインダクタンスLNよりも小さくなるときの電流基準値ITHが小さくなる。そこで、図7に示すように、モータ制御装置10の磁極判定部17は、ブラシレスモータ100の温度が低いほど電圧規定値VTHが小さくなるように電圧規定値VTHを設定する規定値設定部176を備えてもよい。
規定値設定部176は、例えば、図9に示すマップに基づいて、ブラシレスモータ100の温度に応じた電圧規定値VTHを設定する。図9に示すマップは、予め、実験及びシミュレーションなどによって設定されるマップである。図9に示すマップを用いると、ブラシレスモータ100の温度が第3温度T3未満である場合、規定値設定部176は、電圧規定値VTHを第1電圧規定値VTH1とする。一方、ブラシレスモータ100の温度が第3温度T3よりも高い第4温度T4以上である場合、規定値設定部176は、電圧規定値VTHを、第1電圧規定値VTH1よりも高い第2電圧規定値VTH2とする。さらに、ブラシレスモータ100の温度が第3温度T3以上であって第4温度T4未満である場合、規定値設定部176は、第1電圧規定値VTH1以上第2電圧規定値VTH2未満の範囲で、ブラシレスモータ100の温度が高いほど電圧規定値VTHを高くする。これにより、ブラシレスモータ100の温度が低いほど、電圧規定値VTHを低くすることができる。
この構成によれば、ブラシレスモータ100の温度が低いほど、規定の偏向方向に印加される正の第1電圧V1及び負の第2電圧V2の大きさを低くすることができる。その結果、ブラシレスモータ100の温度が低いほど、ロータ105の磁極特性の判定時における消費電力を低くすることができる。
なお、図9に示すマップは、ブラシレスモータ100の温度が高くなるに連れて、電圧規定値VTHが段階的に大きくなるマップとしてもよい。また、図9に示すマップは、第2のブラシレスモータのインダクタンス特性が、ブラシレスモータ100の温度が高いほど顕著に現れることを前提としたマップであり、ブラシレスモータ100の温度特性が異なる場合には当該温度特定に応じて適宜に設定されることが好ましい。
・モータ制御装置10が温度取得部19及び規定値設定部176を有している場合、ロータ105の磁極特性の判定のために電圧を印加する方向は、推定d軸の方向であってもよい。この場合であっても、ブラシレスモータ100の温度が低いほどが小さくなるように、電圧規定値VTHを設定することにより、ロータ105の磁極の判定時に推定d軸の方向に印加される電圧を小さくすることができる。その結果、ロータ105の磁極の判定時に消費する電力を低減することが可能となる。
・図7に示すように、モータ制御装置10は、方向設定部175及び規定値設定部176の双方を備える構成であってもよい。
・推定d軸の方向から進角した方向ではなく遅角した方向を規定の偏向方向としてもよい。
・推定d軸の方向と規定の偏向方向との位相差は、「−90°」よりも大きく「90°」よりも小さい範囲で適宜に変更できる。言い換えれば、規定の偏向方向は、推定d軸及び推定q軸の双方の軸に対して傾いた方向であればよい。
・判定部174は、第1変化速度I1’に応じたインダクタンスと、第2変化速度I2’に応じたインダクタンスと、を演算してもよい。そして、判定部174は、両者のインダクタンスを比較することで、ロータ105の磁極の向きを判定してもよい。
・判定部174は、第1電流I1及び第2電流I2の大きさなどを比較することで、ロータ105の磁極の向きを判定してもよい。第1電流I1及び第2電流I2の比較としては、それぞれの大きさのピーク同士を比較してもよいし、第1電圧V1及び第2電圧V2の印加開始から所定時間後の大きさ同士を比較してもよい。
・ブラシレスモータ100に適用されるロータ105は、2極以外のロータであってもよい。
・モータ制御装置10が適用されるブラシレスモータは、車載のブレーキ装置とは別のアクチュエータの動力源であってもよい。
・モータ制御装置10は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェア(特定用途向け集積回路:ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路又はこれらの組み合わせを含む回路として構成し得る。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリ、すなわち記憶媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
ブラシレスモータの回転座標系のd軸の方向として推定される推定d軸の方向の電流成分と前記回転座標系のq軸の方向として推定される推定q軸の方向の電流成分とを制御することによって前記ブラシレスモータを駆動させるモータ制御装置であって、前記推定d軸の方向に電圧規定値以上の正の第1電圧が印加されたときに、前記推定d軸の方向の電流成分として第1電流を取得する第1電流取得部と、前記推定d軸の方向に前記電圧規定値以上の負の第2電圧が印加されたときに、前記推定d軸の方向の電流成分として第2電流を取得する第2電流取得部と、前記ブラシレスモータの温度を取得する温度取得部と、前記ブラシレスモータの温度に基づいて前記電圧規定値を設定する規定値設定部と、前記第1電流と前記第2電流とを基に、前記ブラシレスモータのロータの磁極の向きを判定する判定部と、を備えるモータ制御装置。
ブラシレスモータの特性は、ブラシレスモータの温度に応じて変化する場合がある。つまり、ブラシレスモータの温度によっては、推定d軸の方向に印加する電圧が小さくても、正の電圧を印加した場合における推定d軸の方向の電流と、負の電圧を印加した場合における推定d軸の方向の電流とに違いが出ることがある。そこで、モータ制御装置は、ブラシレスモータの温度に基づいて電圧規定値を設定する。例えば、モータ制御装置は、d軸の方向に正の電圧及び負の電圧を印加する場合にd軸の方向に流れる電流の差と、ブラシレスモータの温度の関係と、を示す情報を、実験やシミュレーションなどで得ておき、その情報に基づいて電圧規定値を設定する。これにより、ロータの磁極の判定時に推定d軸の方向に印加される電圧を小さくすることができる。その結果、ロータの磁極の判定時に消費する電力を低減することが可能となる。
10…モータ制御装置、11…指令電流算出部、12…指令電圧算出部、13…2相/3相変換部、14…インバータ、15…3相/2相変換部、16…ロータ位置推定部、161…交流電圧発生部、162…更新部、17…磁極判定部、171…判定電圧発生部、172…第1電流取得部、173…第2電流取得部、174…判定部、175…方向設定部、176…規定値設定部、181…第1の加算器、182…第2の加算器、183…第3の加算器、19…温度取得部、100…ブラシレスモータ、101…U相コイル、102…V相コイル、103…W相コイル、105…ロータ、I1…第1電流、I1’…第1変化速度、I2…第2電流、I2’…第2変化速度、Id…d軸電流、Id*…d軸指令電流、Iq…q軸電流、Iq*…q軸指令電流、ITH…電流基準値、IU…U相電流、IV…V相電流、IW…W相電流、LN…インダクタンス、LP…インダクタンス、LPP…極大点、S1…第1パルス信号、S2…第2パルス信号、TR*…要求トルク、V1…第1電圧、V2…第2電圧、Vd*…d軸指令電圧、Vq*…q軸指令電圧、Vdh*…外乱電圧信号、Vdp*…d軸電圧信号、Vqp*…q軸電圧信号、VTH…電圧規定値、VU*…U相指令電圧、VV*…V相指令電圧、VW*…W相指令電圧、θ…ロータ回転角、Δθ…偏向量。

Claims (7)

  1. ブラシレスモータの回転座標系のd軸の方向として推定される推定d軸の方向の電流成分と前記回転座標系のq軸の方向として推定される推定q軸の方向の電流成分とを制御することによって前記ブラシレスモータを駆動させるモータ制御装置であって、
    前記推定d軸の方向に対して傾いた方向である偏向方向に電圧規定値以上の正の第1電圧が印加されたときに、前記偏向方向の電流成分として第1電流を取得する第1電流取得部と、
    前記偏向方向に前記電圧規定値以上の負の第2電圧が印加されたときに、前記偏向方向の電流成分として第2電流を取得する第2電流取得部と、
    前記第1電流と前記第2電流とを基に、前記ブラシレスモータのロータの磁極の向きを判定する判定部と、を備える
    モータ制御装置。
  2. 前記判定部は、
    前記第1電流の変化速度である第1変化速度と、前記第2電流の変化速度である第2変化速度と、を演算し、
    前記第1変化速度が前記第2変化速度よりも大きい場合には、前記推定d軸の向きが実際のd軸の向きと一致していると判定し、前記第1変化速度が前記第2変化速度よりも小さい場合には、前記推定d軸の向きが実際のd軸の向きの反対を向いていると判定する
    請求項1に記載のモータ制御装置。
  3. 前記第1電圧及び前記第2電圧を印加する時間は、前記偏向方向への電圧の印加に伴う前記ロータの変動量に基づいて設定される
    請求項1又は請求項2に記載のモータ制御装置。
  4. 前記ブラシレスモータは、d軸の方向に正の電流が流れるときにはインダクタンスの極大点を持つとともに、前記極大点に応じた電流よりも大きい電流がd軸の方向に流れると、インダクタンスが減少する特性を有する
    請求項1〜請求項3の何れか一項に記載のモータ制御装置。
  5. 前記ブラシレスモータの温度を取得する温度取得部と、
    前記ブラシレスモータの温度に基づいて前記偏向方向を設定する方向設定部と、を備える
    請求項1〜請求項4の何れか一項に記載のモータ制御装置。
  6. 前記ブラシレスモータの温度を取得する温度取得部と、
    前記ブラシレスモータの温度に基づいて前記電圧規定値を設定する規定値設定部と、を備える
    請求項1〜請求項4の何れか一項に記載のモータ制御装置。
  7. 前記第1電圧が印加された後であって且つ前記第2電圧が印加される前に、前記推定d軸の方向を実際のd軸の方向に近づける更新処理を実行する更新部を備える
    請求項1〜請求項6の何れか一項に記載のモータ制御装置。
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