以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、本発明の範囲は以下の実施形態に限定されない。
本発明の一実施形態に係る光学フィルタモジュールは、第1の光学フィルタ部材と、第2の光学フィルタ部材とを備える。第1の光学フィルタ部材は、基板及び基板の1つの面上に形成され、面内の位置によって膜厚及び透過波長領域が変化する第1の機能膜を有し、入射位置に対応する選択波長領域の光を透過させる。また、第2の光学フィルタ部材は、第1の光学フィルタ部材の少なくとも1つの入射位置に対応する選択波長領域に関し、選択波長領域とは異なる波長領域の少なくとも一部の波長領域の光の透過を抑制する。このような第2の光学フィルタ部材は、第1の光学フィルタ部材を通過する光の光路上に位置する時に、選択波長領域外の波長の光の透過を抑制することができる。
このように、第1の機能膜は、バリアブルタイプの透過特性を有している。バリアブルタイプの透過特性とは、面内の位置によって透過波長領域(透過帯)が波長方向に変化する特性を指している。例えば図1及び図2に示すように、第1の機能膜は、所定方向に沿って膜厚及び透過帯が変化する、すなわち透過波長領域が波長方向にシフトするように変化する、機能膜であってもよい。
一実施形態において、光学フィルタモジュールは、入射光のうち、特定の波長帯(選択波長領域)の光を透過させるバンドパス機能を有している。この場合、第1の光学フィルタ部材は、バリアブルタイプのバンドパス特性を有する。本実施形態に係る光学フィルタモジュールは、所定方向に沿って膜厚が変化することにより透過帯も変化するように構成された機能膜を有している。一実施形態において、この機能膜は、膜厚及び透過帯が連続的に変化するように構成されている。図2はバンドパス特性を有するフィルタ3の模式図を示しており、ここでは基板1の上にバンドパス特性を有する機能膜2が設けられている。それぞれの光の入射位置1〜6における分光透過率は、図1に示されている。
光学フィルタモジュールは、光学フィルタモジュールによる選択的な光透過の対象波長である対象波長領域のうちの一部である、選択波長領域の光を透過させる機能を有している。所定方向に沿って透過波長領域が変化するバリアブルタイプのバンドパス特性によれば、透過帯は、所定方向に沿って、対象波長領域の最短波長を含み最長波長を含まない範囲から、対象波長領域の最長波長を含み最短波長を含まない範囲へと変化していく。
一実施形態において、第1の光学フィルタ部材は、バリアブルタイプのバンドパス特性を有するバンドパスフィルタである(実施例1)。例えば、第1の光学フィルタ部材は、基板と、基板上に設けられた第1の機能膜を有していてもよい。ここで、この機能膜(バンドパス機能膜)は、所定方向に沿って膜厚及び透過波長領域が変化し、入射位置に対応する選択波長領域より長い波長の光及び選択波長領域より短い波長の光の透過を抑制するように構成されている。このような構成によれば、駆動部(不図示)は、光の入射位置を制御するようにバンドパスフィルタを移動させることにより、第1の光学フィルタ部材の透過帯を調整することができる。本明細書において、駆動部は、光学フィルタモジュールが有する駆動部であってもよいし、光学フィルタモジュールが組み込まれる装置が有する駆動部であってもよい。
一実施形態において、第1の光学フィルタ部材は、バリアブルタイプのバンドパス特性を有する複数の光学フィルタで構成されたバンドパスフィルタユニットである(実施例2)。例えば、第1の光学フィルタ部材は、第1のフィルタと、第2のフィルタと、を有していてもよい。バリアブルタイプの第1のフィルタ(ショートパスフィルタ)は、基板を有し、基板上に設けられた第1の機能膜を有していてもよい。ここで、この機能膜(ショートパス機能膜)は、面内の位置によって(例えば所定方向に沿って)膜厚及び透過波長領域が変化し、入射位置に対応する選択波長領域より長い波長の光の透過を抑制するように構成されている。また、バリアブルタイプの第2のフィルタ(ロングパスフィルタ)は、基板を有し、基板上に設けられた第2の機能膜を有していてもよい。ここで、この機能膜(ロングパス機能膜)は、面内の位置によって(例えば所定方向に沿って)膜厚及び透過波長領域が変化し、入射位置に対応する選択波長領域より短い波長の光の透過を抑制するように構成されている。バンドパスフィルタユニットにおいて、選択波長領域の短波長側の遷移領域(高い透過率から低い透過率へと波長方向に移行する領域)はロングパスフィルタで形成することができる。また、長波長側の遷移領域はショートパスフィルタで形成することができる。このような構成によれば、駆動部が、光の入射位置を制御するようにショートパスフィルタ及びロングパスフィルタをそれぞれ移動させることにより、第1の光学フィルタ部材の透過帯及び透過帯幅を調整することができる。
一方で、第2の光学フィルタ部材は、第1の光学フィルタ部材を通過する光の光路上に位置する時に、選択波長領域外の波長の光の透過を抑制する。この第2の光学フィルタ部材は、対象波長領域に含まれるが選択波長領域外の波長の光の透過を抑制できる。例えば、第2の光学フィルタ部材は、第3の機能膜及び第4の機能膜を有することができる。第3の機能膜(ショートパス機能膜)は、第1の光学フィルタ部材への入射位置に対応する選択波長領域より長く、対象波長領域に含まれる波長の光の透過を抑制する。例えば、第2の光学フィルタ部材は、選択波長領域よりも短い波長の光を透過させ、また選択波長領域よりも長い波長の光の透過を阻止する、第3の機能膜が基板上に設けられた構造を有するショートパスフィルタを有していてもよい。ショートパスフィルタは、選択波長領域よりも長いカットオフ周波数を有し、このカットオフ周波数よりも長い波長の光の透過を阻止するように構成されうる。このような構成により、第1の光学フィルタ部材を透過する光のうち、選択波長領域より長い波長の光の透過を阻止することができる。
また、第4の機能膜(ロングパス機能膜)は、第1の光学フィルタ部材への入射位置に対応する選択波長領域より短く、対象波長領域に含まれる波長の光の透過を抑制する。例えば、第2の光学フィルタ部材は、選択波長領域よりも長い波長の光を透過させ、また選択波長領域よりも短い波長の光の透過を阻止する、第4の機能膜が基板上に設けられた構造を有するロングパスフィルタでありうる。ロングパスフィルタは、選択波長領域よりも短いカットオフ周波数を有し、このカットオフ周波数よりも短い波長の光の透過を阻止するように構成されうる。このような構成により、第1の光学フィルタ部材を透過する光のうち、選択波長領域より短い波長の光の透過を阻止することができる。
本実施形態においては、第3の機能膜は、第1の光学フィルタ部材の第1の入射位置を通過する光の光路上に配置されることができる。また、第4の機能膜は、第1の光学フィルタ部材の第2の入射位置を通過する光の光路上に配置される。このとき、第1の入射位置に対応する選択波長領域は、第2の入射位置に対応する選択波長領域よりも短波長側にある。一例として、選択波長領域の中心波長が対象波長領域内に設定された基準波長λ0よりも長い場合に、ロングパスフィルタ(第4の機能膜)を併用することができる。一方で、選択波長領域の中心波長が基準波長λ0よりも短い場合には、ショートパスフィルタ(第3の機能膜)を併用することができる。なお、中心波長が基準波長λ0付近の場合(例えば選択波長領域に基準波長λ0が含まれる場合)には、どちらのフィルタを併用してもよいし、フィルタを併用しなくてもよいし、別のフィルタ(例えば反射防止フィルタ)を併用してもよい。
駆動部は、光が第1の光学フィルタ部材の第1の入射位置を通過する場合には光路上に第3の機能膜が位置するように、第2の光学フィルタ部材を移動させることができる。また、この駆動部は、光が第1の光学フィルタ部材の第2の入射位置を通過する場合には光路上に第4の機能膜が位置するように、第2の光学フィルタ部材を移動させることができる。このような構成により、ロングパスフィルタ及びショートパスフィルタを選択的に光路上に配置することができる(実施例1)。一方で、光が第1の光学フィルタ部材の第1及び第2の入射位置を通過する場合には光路上にそれぞれ第3及び第4の機能膜が位置するように、第2の光学フィルタ部材と第1の光学フィルタ部材との位置関係が固定されていてもよい(実施例3)。
ショートパスフィルタ及びロングパスフィルタは、選択波長領域以外の波長領域(透過阻止領域)についての透過率の上昇を抑制する目的で用いられる。第1の光学フィルタ部材は、バンドパス機能を有するものの、それぞれの入射位置に対応する透過阻止領域における透過率、特に選択波長領域から離れた波長における透過率、が上昇することがある。ショートパスフィルタは、第1の光学フィルタ部材を通過した対象波長領域の最長波長付近の波長の光を阻止する目的で使用することができる。また、ロングパスフィルタは、第1の光学フィルタ部材を通過した対象波長領域の最短波長付近の波長の光を阻止する目的で使用することができる。一方で、ショートパスフィルタ及びロングパスフィルタは、選択波長領域については高い透過率を有している。
このような構成により、第1の光学フィルタ部材は、選択波長領域の光を抽出するとともに透過阻止領域の光を低減する。そして、第2の光学フィルタ部材は、対象波長領域の最短波長又は最長波長付近等の、第1の光学フィルタ部材が十分な透過阻止性能を発揮することが比較的難しい波長領域の光を低減する。これらの複数の光学フィルタを併用することで、光学フィルタモジュール全体として良好な光学特性を得ることができる。
上記の第3の機能膜と第4の機能膜との少なくとも一方は、面内の位置によって膜厚及び透過波長領域が変化する機能膜、例えば所定方向に沿って膜厚及び透過波長領域が変化する機能膜であってもよい。このような構成によれば、対象波長領域が比較的長い場合であっても、透過阻止帯における透過率を十分に抑制することができる。
以上のような、バンドパス機能膜、ショートパス機能膜、及びロングパス機能膜は、高屈折率薄膜層と低屈折率薄膜層との多層薄膜でありうる。薄膜の厚さを制御することにより、所望の分光透過特性を有する多層薄膜を形成する方法は公知である。例えば、厚さλ/4の高屈折率薄膜と低屈折率薄膜とを交互に積層することにより、波長λの光の透過率を低下させることが知られている。このような方法を用いて、様々な厚さの薄膜を積層することにより、所望の機能膜を作製することができる。薄膜の材料は特に限定されないが、高屈折率の薄膜材料としては、TiO2、Nb2O5、ZrO2、及びTa2O5等が挙げられる。一方で、低屈折率の薄膜材料としては、SiO2及びMgF2等が挙げられる。また、これらの材料に限らず、薄膜材料としてはNi、W、Mo、Cu、Cr、Fe、Al、Mg、Ti、Si、Nb、Zr、Ta、In、Ag、及びAu等の金属化合物を用いてもよい。
このような多層薄膜の形成方法は特に限定されず、例えば、物理的成膜方法、化学的成膜方法、又はスピンコート等の湿式成膜方法を採用することができる。再現性又は膜の耐環境性を向上させる観点からは、スパッタ法、又は何らかのアシストを付加した蒸着方法等の、比較的高いエネルギーを用いて膜を形成するプロセスを採用することができる。より具体的な例としては、スパッタ法、IAD(Ion Assisted Deposition)法、イオンプレーティング法、IBS法、又はクラスター蒸着法等が挙げられる。各フィルタに求められる特性又は生産性等を考慮して、各層の膜厚の制御精度が高く、再現性の高い膜が得られるように、適宜成膜方法を選択することができる。
バリアブルタイプの機能膜は、面内の位置によって屈折率や物理的な膜厚が変化する膜でありうる。例えば、基板上のある一方向に沿って、連続的に屈折率や物理的な膜厚を変化させた膜を用いることができる。一例として、各層の膜厚が連続的に変化するように多層薄膜を形成することにより、所定方向に沿って膜厚及び透過波長領域が変化する機能膜を作製することができる。このような構成によれば、基板上の位置に応じて、透過帯の中心波長が連続的に変化する。物理膜厚を連続的に変化させる方法を採用することにより、機能膜の再現性及び生産性を高めることができる。
物理膜厚が連続的に変化する薄膜の製造方法は特に限定されないが、蒸発源に対して基板を傾けて固定してから蒸着を行う方法が挙げられる。例えば、蒸着ドーム上にある成膜冶具の通常の固定位置に、基板を大きく傾けて固定してから、蒸着により薄膜を形成することができる。別の方法としては、基板の成膜面よりも蒸発源側の所定位置に、基板から浮くようにマスクを固定配置した状態で成膜する方法がある。このような方法によれば、1度の多層膜成膜プロセスで、膜厚が連続的に変化する薄膜を得ることができる。また、各層の膜厚を連続的に変化させる代わりに、図4に示すように、ステップ型のバンドパス特性を有する(すなわち、それぞれが一様な透過帯を有するように、異なる透過帯を有する複数の領域が設けられている)機能膜を用いることもできる。図4には、それぞれ一様な透過帯を有する5つの領域を備えるバンドパス機能膜2が示されており、各領域の膜厚が互いに異なるようにバンドパス機能膜2を設けることにより、ステップ型のバンドパス特性を実現できる。フィルタの透過帯を変化させる方法としては、フィルタを傾けて光の入射角を変化させる方法もあるが、膜厚が変化する機能膜を用いる方が、様々な透過帯において透過率を一定に近づけることが容易である。
以上のような、バンドパスフィルタ、ショートパスフィルタ、及びロングパスフィルタは、基板上に機能膜を設けることにより作製することができる。例えば、ショートパスフィルタは、透明基板の一方の面にショートパス特性を有する多層薄膜で構成された機能膜を形成することにより作製することができる。同様に、ロングパスフィルタは透明基板の一方の面にロングパス特性を有する多層薄膜で構成された機能膜を形成することにより作製することができる。また、バンドパスフィルタも、透明基板の一方の面にバンドパス特性を有する多層薄膜で構成された機能膜を形成することにより作製することができる。これらのフィルタにおいて、透明基板のもう一方の面には、反射防止機能を有する反射防止機能膜を形成してもよい。さらに、基板の両面に、異なる波長領域における透過を阻止する機能膜を分割配置してもよい。このような構成によれば、長い波長領域に透過阻止帯を有する、バンドパスフィルタ、ショートパスフィルタ、及びロングパスフィルタを作製することが容易となる。
なお、第2のフィルタ部材は、多層薄膜が設けられた基板には限定されない。例えば、第2のフィルタ部材として用いられるショートパスフィルタ又はロングパスフィルタは、所定の波長の光を吸収する色素を含む樹脂層を有していてもよい。
各種の光学フィルタは、カメラなどの光学系で使用された場合、得られる結果に対して大きな影響を与える。すなわち、得られる画質は、選択波長領域及び透過阻止波長領域における光量に敏感である。したがって、バンドパスフィルタ、ショートパスフィルタ、及びロングパスフィルタの、設計された透過阻止帯における透過率は、平均で1%以下、より好ましくは平均で0.5%以下であることが望ましい。一方、設計された透過帯における透過率は、平均で80%以上、より好ましくは平均で90%以上であることが望ましい。また、反射防止機能膜は、対象波長域における反射を平均で1%以下、より好ましくは平均で0.5%以下に抑える事が望ましい。
光学フィルタの基板としては、光学フィルタの全ての透過帯において光透過性を有する基板を用いることができる。基板の材料は特に限定されないが、ガラスタイプ、樹脂タイプ、又は有機無機のハイブリッドタイプ等を用いることができる。基板としては、光学フィルタの基板として必要とされる強度及び光学特性を有し、基体として機能可能であるものを選択することができる。
本実施形態に係る光学フィルタモジュールの対象波長領域は特に限定されない。例えば、対象波長領域は400〜700nm等の可視波長領域であってもよいし、700〜1200nm等の近赤外波長領域であってもよい。また、対象波長領域は、400〜1200nm等の可視近赤外波長領域であってもよいし、1200nm以上の波長領域であってもよい。
以上のような、光学特性に優れる本実施形態に係る光学フィルタモジュールは、監視カメラ、又は医療用若しくは農業用の特殊カメラ等の撮像装置、又はその他の様々な光学装置に設けることができる。本実施形態に係る光学フィルタモジュールを用いることにより、高精度な光学装置を得る事ができる。
なお、第1の光学フィルタ部材はバンドパスフィルタには限定されず、例えばショートパスフィルタ又はロングパスフィルタであってもよい。一例として、第1の光学フィルタ部材が選択波長領域よりも長い波長の光の透過を抑制するショートパスフィルタであり、第2の光学フィルタ部材が選択波長領域よりも長い波長の光の透過を抑制するショートパスフィルタであってもよい。また、第1の光学フィルタ部材が選択波長領域よりも短い波長の光の透過を抑制するロングパスフィルタであり、第2の光学フィルタ部材が選択波長領域よりも短い波長の光の透過を抑制するロングパスフィルタであってもよい。このような構成によっても、第1の光学フィルタ部材は選択波長領域の光を抽出するとともに透過阻止領域の光を低減し、第2の光学フィルタ部材は第1の光学フィルタ部材が十分な透過阻止性能を発揮することが難しい波長領域の光を低減できる。
以下、本実施形態に係る光学フィルタモジュールについて、実施例に基づき具体的に説明する。
[実施例1]
本発明の一実施形態に係るフィルタモジュールは、バリアブルタイプのバンドパスフィルタ、ショートパスフィルタ、及びロングパスフィルタを備えており、全体としてバリアブルタイプのバンドパス特性を有している。
図5に示すように、実施例1に係る光学フィルタモジュール10は、バンドパスフィルタ11、ショートパスフィルタ12、及びロングパスフィルタ13を備える。光学フィルタモジュール10は、400〜700nmの対象波長領域について、バンドパス機能を有している。すなわち、アパーチャ15を通過した光がバンドパスフィルタ11に入射する位置が変化するように、バンドパスフィルタ11を移動させることにより、バンドパスフィルタ11を透過する光の波長領域(選択波長領域)を変化させることができる。光学フィルタモジュール10については、対象波長領域の中間に位置する550nmを基準波長として設定することができる。
バンドパスフィルタ11は、400〜700nmの対象波長領域についてバンドパス機能を有するバリアブルタイプのフィルタである。図7は、バンドパスフィルタ11の透過特性の例を示す。図7において、A,Bは、それぞれバンドパスフィルタ11上の異なる2箇所の位置(A,B)を透過した光の透過率を示している。このように、位置Aにおけるバンドパスフィルタ11の透過帯は、対象波長領域中の最短波長である400nmに近く、位置Bにおけるバンドパスフィルタ11の透過帯は、対象波長領域中の最長波長である700nmに近い。
バンドパスフィルタ11は、基板と、基板上に交互に積層された高屈折率薄膜及び低屈折率薄膜を有している。本実施例において、基板の一方の面上には、高屈折率薄膜であるTiO2と低屈折率薄膜であるSiO2とをこの順にIAD法により交互に積層した30層膜が設けられている。この30層膜は、透過帯に含まれる波長の光を透過させるバンドパス機能を有している。また、この30層膜はバリアブル機能を有しており、基板上のある一方向に沿って連続的に膜厚が変化している。また、基板の他方の面には、TiO2とSiO2がIAD法によりこの順に交互に積層された10層膜が設けられている。この10層膜は、反射防止機能を有している。本実施例では、成膜誤差等のために光学特性が多少シフトした場合であっても、400〜700nmの対象波長領域において十分な反射防止機能を発揮するように、10層膜は設計されている。このような構成を有することにより、バンドパスフィルタ11は、選択波長領域内の波長成分のみを選択的に透過させる。
ショートパスフィルタ12及びロングパスフィルタ13は、選択波長領域に応じて適宜選択され、フィルタ挿入位置14に出し入れされる。本実施例では、光の結像位置を一定に保つために、複数のフィルタが同じフィルタ挿入位置14に挿入される。一方、使用するフィルタの種類又は枚数等に応じて、複数のフィルタが異なる位置に挿入されてもよい。例えば、フィルタの基板が異なる屈折率を有する場合、結像位置が一定となるように、複数のフィルタを異なる位置に挿入することができる。
図6は、ショートパスフィルタ12及びロングパスフィルタ13の透過特性の例を示す。図6において、A,Bは、それぞれショートパスフィルタ12及びロングパスフィルタ13を透過した光の透過率を示している。図6に示すように、ショートパスフィルタ12は、約400〜570nmの波長領域が透過帯となり、約600〜700nmの波長領域が透過阻止帯となるように設計できる。また、この透過帯から透過阻止帯へ遷移する約570〜600nmが遷移波長領域となり、透過率が50%となる半値波長が約575nmとなるように設計できる。
また、ロングパスフィルタ13は、約530〜700nmの波長領域が透過帯となり、約400〜500nmの波長領域が透過阻止帯となるように設計できる。そして、この透過帯から透過阻止帯へ遷移する約500〜530nmが遷移波長領域となり、透過率が50%となる半値波長が約520nmとなるように設計できる。本実施例において、ショートパスフィルタ12とロングパスフィルタ13は、共に基準波長が透過帯に含まれるように設計されている。
ショートパスフィルタ12及びロングパスフィルタ13は、基板と、基板上に交互に積層された高屈折率薄膜及び低屈折率薄膜を有している。本実施例において、ショートパスフィルタ12の基板の一方の面上には、TiO2とSiO2とをIAD法によりこの順に交互に積層した36層膜が設けられている。この36層膜は、所定のカットオフ波長よりも短い波長の光のみを透過させるショートパス機能膜である。ここで、所定のカットオフ波長は、基準波長よりも短くなるように設定されている。また、ショートパスフィルタ12の基板のもう一方の面上には、TiO2とSiO2をIAD法によりこの順に交互に積層した4層膜が設けられている。本実施例では、この4層膜は少なくとも380〜620nmの波長領域において反射防止機能を有するように設計できる。このような設計によれば、成膜誤差等のために光学特性が多少シフトした場合であっても、ショートパスフィルタ12の透過帯又は遷移領域である400〜600nmの波長領域における良好な透過を実現できる。
本実施例において、ロングパスフィルタ13の基板の一方の面上には、TiO2とSiO2とをIAD法によりこの順に交互に積層した38層膜が設けられている。この38層膜は、所定のカットオフ波長よりも長い波長の光のみを透過させるロングパス機能膜となっている。ここで、所定のカットオフ波長は、基準波長よりも長くなるように設定されている。また、ロングパスフィルタ13の基板のもう一方の面上には、TiO2とSiO2をIAD法によりこの順に交互に積層した4層膜が設けられている。本実施例では、この4層膜は少なくとも480〜720nmの波長領域において反射防止機能を有するように設計できる。このような設計によれば、成膜誤差等のために光学特性が多少シフトした場合であっても、ショートパスフィルタ12の透過帯又は遷移領域である500〜700nmの波長領域における良好な透過を実現できる。
本実施例において、バンドパスフィルタ11、ショートパスフィルタ12、ロングパスフィルタ13の基板としては、厚さ0.4mmのD263Tecoガラスが用いられる。この基板は、400〜700nmの対象波長領域において、基板裏面側での反射成分を除いた入射光のほとんどが透過する分光特性を有している。
以上のように構成された実施例1の光学フィルタモジュール10は、以下のように制御される。すなわち、バンドパスフィルタ11を光路に対して移動させる事で、バンドパスフィルタ11上の光の通過位置が制御され、位置に応じた波長帯の光がバンドパスフィルタ11を通過する。こうして、選択波長領域の光がバンドパスフィルタ11を通過する。そして、選択波長領域に応じて、ショートパスフィルタ12又はロングパスフィルタ13のいずれか一方を、光路上のフィルタ挿入位置14に移動させる事で、選択波長領域から外れた透過阻止帯において十分な透過阻止機能が発揮される。
なお、ショートパスフィルタ12及びロングパスフィルタ13を1枚のフィルタに統合することもできる。すなわち、1枚のフィルタに、ショートパスフィルタとして機能する領域と、ロングパスフィルタとして機能する領域と、を設けることができる。具体例としては、回転するようにフィルタを駆動することにより、光路上にショートパスフィルタ又はロングパスフィルタを選択的に配置できる、ターレット型のフィルタが挙げられる。
図7の例では、選択波長領域が対象波長領域の最短波長付近の場合(A)において、バンドパスフィルタ11による最長波長付近の光の透過阻止は十分ではない。また、選択波長領域が最長波長付近の場合(B)において、バンドパスフィルタ11による最短波長付近の光の透過阻止は十分ではない。一般に、特定の波長領域の光のみを透過させるバンドパス特性を有するフィルタには、透過帯に近接する短波長側の波長領域、及び近接する長波長側の波長領域の光の透過を阻止する構造体が設けられる。しかしながら、1つの構造体が透過を阻止できる波長領域には限りがあるため、より長い波長領域にわたって光の透過を阻止するためには、阻止帯域が連続するように異なる複数の構造体を組み合わせる必要がある。しかしながら、本実施例で用いられたバリアプルタイプのバンドパスフィルタ11において、全ての位置において選択波長領域外の光を完全に遮断することは困難である。特に、本実施例のような多層薄膜を用いたフィルタにおいては、積層数が増えると、増加した膜応力による損傷、外観上の品質低下、又は再現性若しくは生産性の低下が生じる可能性がある。このため、本実施例では、バンドパス機能と、選択波長領域から離れた透過阻止帯における光透過を低減する透過低減機能の2つの役割を、異なるフィルタが分担している。
本実施例においては、選択波長領域の中心波長が基準波長よりも短い場合、ショートパスフィルタ12が挿入され、選択波長領域の中心波長が基準波長よりも長い場合、ロングパスフィルタ13が挿入される。また、選択波長領域の中心波長が基準波長と同じ場合には、どちらのフィルタを挿入してもよい。挿入するフィルタは、光学フィルタモジュール10とともに用いられる撮像素子等の受光素子の特性を考慮して決定することができる。例えば、この場合にショートパスフィルタ12を挿入することで、比較的感度が高くノイズの影響を受けやすい対象波長領域の最長波長付近における透過阻止機能を向上させ、ノイズを低減することができる。
本実施例では、基準波長が、対象波長領域の中心波長に設定された。一方で、基準波長は、撮像素子の感度などを考慮して選択することができる。さらに、本実施例ではショートパスフィルタ12とロングパスフィルタ13の一方のみが挿入されたが、これは必須ではない。例えば、選択波長領域の中心波長が基準波長付近にある場合には、2つのフィルタが同時に挿入されてもよいし、2つのフィルタがどちらも光路から外されていてもよい。
以上のように作製された、実施例1の光学フィルタモジュール10は、400〜700nmの比較的長い対象波長領域を有するバリアブルタイプのバンドパス機能を有する。それにもかかわらず、光学フィルタモジュール10は、対象波長領域の最短波長である400nm付近の光を透過させる場合であっても、最長波長である700nm付近における透過率を十分に抑制する事ができる。反対に、光学フィルタモジュール10は、対象波長領域の最長波長である700nm付近の光を透過させる場合であっても、最短波長である400nm付近における透過率を十分に抑制する事ができる。このように、光学特性に優れる光学フィルタモジュールを得る事ができる。
[実施例2]
本発明の一実施形態に係るフィルタモジュールは、バリアブルタイプのバンドパスフィルタユニット、ショートパスフィルタ、及びロングパスフィルタを備えており、全体としてバリアブルタイプのバンドパス特性を有している。このバンドパスフィルタユニットは、ショートパスフィルタ及びロングパスフィルタで構成されている。
図8に示すように、実施例2に係る光学フィルタモジュール20は、バンドパスフィルタユニット21、ショートパスフィルタ22、及びロングパスフィルタ23を備える。バンドパスフィルタユニット21は、ショートパスフィルタ21a及びロングパスフィルタ21bで構成されている。光学フィルタモジュール10は、400〜700nmの対象波長領域について、バンドパス機能を有している。光学フィルタモジュール20については、対象波長領域の中間に位置する550nmを基準波長として設定することができる。
ショートパスフィルタ21a及びロングパスフィルタ21bの2つの光学フィルタは、それぞれ、光が通過するフィルタの位置に応じて透過波長帯が変化するバリアブル特性を有している。これら2つのフィルタを併用する事で、バンドパスフィルタユニット21はバリアブルタイプのバンドパス機能を発揮する。つまり、選択波長領域から透過阻止領域への2つの遷移領域のうち、短波長側の遷移領域をロングパスフィルタ21bの透過−不透過遷移領域で形成し、長波長側の遷移領域をショートパスフィルタ21aの透過−不透過遷移領域で形成する。このような構成により、バンドパスフィルタユニット21は選択波長領域の光を透過させる。このように、ショートパスフィルタ21aとロングパスフィルタ21bの2枚の光学フィルタのそれぞれの位置を別々に調整する事で、透過する波長領域を調整する事ができる。このような構成によれば、透過帯の幅を調整する事も可能になる。
ショートパスフィルタ21aは、基板と、基板上に交互に積層された高屈折率薄膜及び低屈折率薄膜を有している。本実施例において、基板の一方の面上には、高屈折率薄膜であるTiO2と低屈折率薄膜であるSiO2とをIAD法によりこの順に交互に積層した34層膜が設けられている。この34層膜は、カットオフ波長よりも短い波長の光を透過させるショートパス機能膜である。さらに、34層膜はバリアブル機能を有しており、基板上のある一方向に沿って連続的に膜厚が変化する構造となっており、入射位置に対応してカットオフ波長が変化する。また、基板のもう一方の面上には、TiO2とSiO2をIAD法によりこの順に交互に積層した4層膜が設けられている。この4層膜は、反射防止機能膜である。
また、ロングパスフィルタ21bは、基板と、基板上に交互に積層された高屈折率薄膜及び低屈折率薄膜を有している。本実施例において、基板の一方の面上には、高屈折率薄膜であるTiO2と低屈折率薄膜であるSiO2とをIAD法によりこの順に交互に積層した36層膜が設けられている。この36層膜は、カットオフ波長よりも長い波長の光を透過させるロングパス機能膜である。さらに、36層膜はバリアブル機能を有しており、基板上のある一方向に沿って連続的に膜厚が変化する構造となっており、入射位置に対応してカットオフ波長が変化する。また、基板のもう一方の面上には、TiO2とSiO2をIAD法によりこの順に交互に積層した4層膜が設けられている。この4層膜は、反射防止機能膜である。
ショートパスフィルタ22及びロングパスフィルタ23の構成は、実施例1のショートパスフィルタ12及びロングパスフィルタ13と同様でありうる。本実施例においても、ショートパスフィルタ12とロングパスフィルタ13は、共に基準波長が透過帯に含まれるように設計されている。
本実施例において、ショートパスフィルタ21a、ロングパスフィルタ21b、ショートパスフィルタ22、及びロングパスフィルタ23の基板としては、厚さ0.4mmのB270iガラスが用いられる。この基板は、400〜700nmの対象波長領域において、基板裏面側での反射成分を除いた入射光のほとんどが透過する分光特性を有している。
以上のように構成された実施例2の光学フィルタモジュール20は、以下のように制御される。すなわち、ショートパスフィルタ21a及びロングパスフィルタ21bのそれぞれを光路に対して移動させる事で、ショートパスフィルタ21a及びロングパスフィルタ21b上の光の通過位置が制御される。こうして、ショートパスフィルタ21a及びロングパスフィルタ21bが通過位置に応じた波長の光を透過させることにより、選択波長領域の光がバンドパスフィルタユニット21を通過する。また、実施例1と同様に、選択波長領域に応じてショートパスフィルタ22又はロングパスフィルタ23を光路上のフィルタ挿入位置24に移動させる事で、選択波長領域から外れた透過阻止帯において十分な透過阻止機能が発揮される。
以上のように作製された、実施例2の光学フィルタモジュール20は、400〜700nmの比較的長い対象波長領域を有するバリアブルタイプのバンドパス機能を有する。それにもかかわらず、光学フィルタモジュール20は、実施例1と同様に、対象波長領域の最短波長又は最長波長付近においても透過率を十分に抑制する事ができる。このように、光学特性に優れる光学フィルタモジュールを得る事ができる。
(実施例1,2の変形例)
実施例1,2において、ショートパスフィルタ12,22、及びロングパスフィルタ13,23は、バリアブルタイプの光学フィルタであってもよい。例えば、ショートパスフィルタ12,22に、フィルタの一方向に沿って物理膜厚が連続変化するように36層の機能膜を設けることができる。また、ロングパスフィルタ13,23に、フィルタの一方向に沿って物理膜厚が連続変化するように38層の機能膜を設けることができる。さらには、ショートパスフィルタ12,22とロングパスフィルタ13,23のどちらか一方のみをバリアブルタイプとすることもできる。
このようなバリアブルタイプのショートパスフィルタ12,22又はロングパスフィルタ13,23を有することにより、対象波長領域が比較的長い場合であっても、透過阻止帯における透過率を十分に抑制することができる。このため、実施例1,2における400〜700nmの対象波長領域よりも広い対象波長領域を有するフィルタモジュールを実現することが容易となる。
例えば、対象波長領域が長い場合、ショートパスフィルタ12が透過を阻止すべき光の波長領域も長くなるため、バンドパスフィルタ11と同様にカットオフ波長よりも長い波長の光を透過してしまう可能性がある。一方で、バリアブルタイプのショートパスフィルタ12を用いる場合、バンドパスフィルタ11への光の入射位置(又は選択波長領域)に応じて、ショートパスフィルタ12への光の入射位置(又は透過阻止帯)を変更することができる。このため、ショートパスフィルタ12を用いて、バンドパスフィルタ11を透過した選択波長領域外の光の透過を抑制することが容易となる。
さらに、実施例1,2において、ショートパスフィルタ12,22の代わりに、光学特性の異なる2枚以上のショートパスフィルタを用いることもできる。また、ロングパスフィルタ13,23の代わりに、光学特性の異なる2枚以上のロングパスフィルタを用いることもできる。このような構成によっても、バンドパスフィルタ11を透過した選択波長領域外の光の透過を抑制することが容易となり、広い対象波長領域を有するフィルタモジュールを実現することが容易となる。
[実施例3]
本発明の一実施形態に係るフィルタモジュールは、バリアブルタイプのバンドパスフィルタを備える。このバンドパスフィルタは、基板と、基板の一方の面上に形成されたバリアブルタイプのバンドパス機能膜と、基板のもう一方の面の特定位置に形成されたショートパス機能膜及びロングパス機能膜を備える。
図3に示す実施例3に係る光学フィルタ60は、対象波長領域400〜700nmについてのバンドパス機能を有する。光学フィルタ60は、基板61に加えて、バンドパス機能膜62、ショートパス機能膜63、ロングパス機能膜64、及び反射防止機能膜65の4つの機能膜を有している。
バンドパス機能膜62は、実施例1に係るバンドパスフィルタ11の30層膜と同様の、バリアブル機能を有するバンドパス機能膜である。バンドパス機能膜62の透過特性は、図7と略同じである。
ショートパス機能膜63は、実施例1に係るショートパスフィルタ12の36層膜と同様のショートパス機能膜である。ショートパス機能膜63の透過特性は、図6のAと略同じである。
ロングパス機能膜64は、実施例1に係るロングパスフィルタ13の38層膜と同様の
ロングパス機能膜である。ロングパス機能膜64の透過特性は、図6のBと略同じである。
反射防止機能膜65は、TiO2とSiO2をこの順に交互に積層した4層膜である。この4層膜は少なくとも380〜720nmの波長領域において反射防止機能を有するように設計できる。このような設計によれば、成膜誤差等のために光学特性が多少シフトした場合であっても、光学フィルタ60の対象波長領域である400〜700nmの波長領域における良好な透過を実現できる。
本実施例において、基板61としては、厚さ0.4mmのD263Tecoガラスが用いられる。この基板は、400〜700nmの対象波長領域において、基板裏面側での反射成分を除いた入射光のほとんどが透過する分光特性を有している。
以上のように構成された実施例3の光学フィルタ60を、光路に対して移動させる事で、バンドパス機能膜62上の光の入射位置が制御され、位置に応じた選択波長領域の光がバンドパス機能膜62を通過する。
一方、図7のAに示すように、バンドパス機能膜62は、選択波長領域が対象波長領域の最長波長付近である場合、すなわち光の入射位置が図3の左方である場合、最短波長付近における透過を十分に抑制できない。そこで、本実施例では、対象波長領域の最長波長に対応するバンドパス機能膜62上の位置に、基板61を挟んで対向するように、ロングパス機能膜64が配置される。同様に、図7のBに示すように、バンドパス機能膜62は、選択波長領域が対象波長領域の最短波長付近である場合、すなわち光の入射位置が図3の右方である場合、最長波長付近における透過を十分に抑制できない。そこで、本実施例では、対象波長領域の最短波長に対応するバンドパス機能膜62上の位置に、基板61を挟んで対向するように、ショートパス機能膜63が配置される。
また、図3では、ショートパス機能膜63とロングパス機能膜64に挟まれた領域には、反射防止機能膜65が配置されている。反射防止機能膜65と基板61を挟んで対向する位置(例えば基準波長に対応する位置)において、バンドパス機能膜62は、対象波長領域の最短波長付近及び最長波長付近における透過を十分に低減している。もっとも、反射防止機能膜65を配置することは必須ではない。例えば、バンドパス機能膜62の反対側は、図3より拡大されたショートパス機能膜63及びロングパス機能膜64によって全体が覆われていてもよい。
以上のように作製された、実施例3に係る光学フィルタモジュールである光学フィルタ60は、400〜700nmの比較的長い対象波長領域を有するバリアブルタイプのバンドパス機能を有する。それにもかかわらず、光学フィルタ60は、実施例1と同様に、対象波長領域の最短波長又は最長波長付近においても透過率を十分に抑制する事ができる。このように、光学特性に優れる光学フィルタモジュールを得る事ができる。
[実施例4]
図9は、実施例1〜3に従って作製したフィルタモジュールを、光学装置の1つであるビデオカメラ等の撮像装置に適用した実施例を示す。図9は撮像装置53の概略図である。撮像装置53は、光学フィルタモジュール50、撮像光学系51、及び固体撮像素子52を備える。絞り羽根のようなアパーチャ及びレンズ等を含む撮像光学系51を透過した光線は、固体撮像素子52に入射する前に光学フィルタモジュール50により所望の光学特性を有するように調整される。こうして、適正な画像が得られる。もっとも、撮像装置に限らず、他の光学装置に実施例1〜3に従って作製したフィルタモジュールを組み込むことが可能である。
光学フィルタモジュール50としては、実施例1に係る光学フィルタモジュール10、実施例2に係る光学フィルタモジュール20、及び実施例3に係る光学フィルタ60を用いることができる。選択波長領域の光を透過させるように光学フィルタモジュール50を制御する方法(例えば、バンドパスフィルタ11、ショートパスフィルタ12、及びロングパスフィルタ13を制御する方法)については、既に説明した。
さらに、光学フィルタモジュール50には、ARフィルタ、NDフィルタ、IRカットフィルタ、IRパスフィルタ、UVカットフィルタ、UVパスフィルタ、ロングパスフィルタ、及びショートパスフィルタ等の、他の光学フィルタを設けることもできる。
なお、光学フィルタモジュール10が有するバンドパスフィルタ11、光学フィルタモジュール20が有するバンドパスフィルタユニット21、及び光学フィルタ60のようなバリアプルタイプのフィルタは、光学特性が変化する場合がある。例えば、経時変化、又は温度若しくは湿度等の周囲環境変化に応じて、光学特性が変化する可能性がある。特に、透過帯から透過阻止帯への遷移波長領域では、波長に対する透過特性、及び位置に対する透過特性が大きく変化しやすい。このため、一実施形態においては、撮像装置53への電源投入時などの所定タイミングにおいて、フィルタ位置と光学特性との関係が確認され、必要に応じてフィルタの移動目標位置が補正される。このような機能を、イニシャライズ機能と呼ぶ。
一実施形態において、撮像装置53は、第1の光学フィルタ部材(バンドパスフィルタ11、バンドパスフィルタユニット21、及び光学フィルタ60)を移動させる駆動部による、第1の光学フィルタ部材の移動目標位置を補正する補正部を有していてもよい。この補正部(不図示)は、光学フィルタモジュール50を通過した光の分光透過特性に基づいて、第1の光学フィルタ部材の移動目標位置を補正する。
具体的には、補正部は、以下のようにイニシャライズ測定を行うことができる。例えば、光学フィルタモジュール10を用いる場合、光が所定の標準位置に入射するように、バンドパスフィルタ11が固定される。そして、標準位置における設計上の透過帯を考慮して、環境又は経時変化の影響が少ない透過帯の中心波長における透過光強度と、中心波長から離れており十分に透過が阻止される透過阻止帯の波長における透過光強度と、が測定される。さらに、透過光強度が、透過帯における透過光強度と透過阻止帯における透過光強度との中間になる、半値波長がスキャニングにより判定される。ここで、透過光強度は撮像素子の感度特性の影響を受ける事から、これらを考慮して半値波長を判定してもよい。スキャニングは、バンドパスフィルタの対象波長領域の全てで行う必要はなく、設計上の初期透過帯から、周囲環境又は経時変化の影響を受けたとしても透過阻止帯から外れる事は無いと予想される波長までを対象とすればよい。実施例1〜3に示したようなバンドパスフィルタは短波長側と長波長側の2つの半値波長を有するが、これらは波長の大小から区別する事ができる。
上記の処理により、標準位置における透過帯(例えば2つの半値波長により表される)を確認することができる。さらに、バンドパスフィルタ11上の1箇所(標準位置)だけでなく、複数箇所でこのようなイニシャライズ測定を実施してもよい。一方、標準位置における判定結果に基づいて、別の位置における透過帯を推定してもよい。このように判定された透過帯に基づいて、所望の選択波長領域の光を透過させるためのバンドパスフィルタ11の移動位置を補正することができる。同様に、バンドパスフィルタユニット21(ショートパスフィルタ21a及びロングパスフィルタ21b)及び光学フィルタ60について、同様のイニシャライズ測定及び移動位置の補正を行うことができる。このようなイニシャライズ機能は、光学特性の変化だけでなく、製造誤差に起因する光学特性の誤差を補正するためにも使用でき、光学装置の光学性能の向上させることができる。
このようなイニシャライズ機能は、撮像装置53のような光学装置が有する補正部により行われてもよいし、光学装置とは別体のイニシャライズ装置により行われてもよい。