JP6003895B2 - 近赤外線カットフィルター - Google Patents

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Description

本発明は、近赤外線カットフィルターに係り、特に透明基板上に光学多層膜を有する近赤外線カットフィルターに関する。
デジタルカメラやビデオカメラ等に利用されるCCDやCMOS等の固体撮像素子の分光感度は人間の視感度特性に比べて近赤外光に強い感度を有することから、近赤外線カットフィルターによる分光補正が必要となる。従来、近赤外線カットフィルターとして、例えば、Cu2+イオンを着色成分として含有するフツリン酸塩系ガラス等の近赤外線吸収タイプの色ガラスフィルターが用いられているが、色ガラスフィルター単独では近赤外域および紫外域の光を十分にカットできないことから、通常は近赤外カット特性を有する光学多層膜が併用されている。
この場合、例えば、可視光を透過させる透過帯の紫外側となる半値波長は光学多層膜によって決定され、近赤外側となる半値波長は色ガラスフィルターによって決定される。これは、光学多層膜の分光波形が入射角度の増加に伴って紫外側にシフトする傾向があり、入射角度依存性の小さい色ガラスフィルターの分光波形をなるべく利用しつつ、色ガラスフィルターではカットできない波長域を光学多層膜でカットすることが合理的であるからである。
しかし、デジタルカメラやビデオカメラ等の小型化により入射角度が広角化するのに伴って、光学多層膜が対象とする帯域における角度依存性の問題が顕著となっている。具体的には、CCD、CMOSが必要とする400〜700nmにおける透過帯のうち光学多層膜によって形成される紫外側の阻止帯から透過帯への透過率の立ち上がり位置と、近赤外側の阻止帯から透過帯への透過率の立ち上がり位置とがずれることによって、画質に影響する帯域の光量が変化する。
従来、光学多層膜には、入射角度が大きくなると分光波形が紫外側に移動する入射角度依存性の存在が知られている。入射角度依存性は、プリズム等に利用されるダイクロミックミラー等の分野では以前から大きな問題となっており、入射角度依存性を低減する技術が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
これらは、屈折率が高い方の膜が分光の角度依存性が小さくなることを何らかの方法で利用する。特許文献1に開示された方法は、光学多層膜としては一般的だが、屈折率の低さから角度依存性を増大させるSiO膜をなくし、高屈折率膜同士の小さな屈折率差によって光学多層膜を形成し、入射角度依存性を抑制する。特許文献2に開示された方法は、低屈折率膜として、SiO膜よりやや屈折率の高いAl膜等を利用して透過帯から近赤外側の阻止帯にかけてのカット波長における入射角度依存性を抑制するほか、屈折率差が小さくなったことに伴う阻止帯の減少を、カット波長がより長波側にある通常構成の光学多層膜によって補完する。特許文献3に開示された方法は、低屈折率膜をSiO膜より大きな屈折率を有するAl膜等に置き換え、さらに光学膜厚比におけるTiO膜等の高屈折率膜の割合を大きくすることで、より効果的に角度依存性の低減を図っている。
これらの手法における基本的な考え方は、高屈折率膜、低屈折率膜の交互多層膜において、高屈折率膜の比率を増やすか、低屈折率膜の屈折率を大きくするかによって、低屈折率膜による入射角度依存性を抑制することが基本となっている。
本発明者がこれらの技術を検討したところ、近赤外線カットフィルターに利用するには不十分であることが分かっている。近赤外線カットフィルターにおいては、例えば、近赤外線吸収タイプの色ガラスフィルターとの併用のために、可視域において非常に広い透過帯と、この透過帯の紫外側および近赤外側に広い阻止帯を有することが必須であり、紫外側の透過率の立ち上がり、および近赤外側の透過率の立ち下がりにおける2つのカット波長のいずれの入射角度依存性も小さいことが必要となる。
低屈折率膜の屈折率を大きくする手法の場合、屈折率を極端に大きくしないと入射角度依存性の抑制が十分でなく、低屈折率膜の屈折率を過度に大きくすると高屈折率膜と低屈折率膜との屈折率差が小さくなりすぎ、透過帯が広くなりすぎる一方、阻止帯の透過率が十分に低くならず、かつ非常に狭くなり、特に紫外域側の阻止帯が十分に形成されない。低屈折率膜の屈折率を大きくせずに高屈折率膜と低屈折率膜との光学膜厚比における高屈折率膜の比率を過大にすることで、阻止帯を十分に拡張できるが、透過帯が狭くなる。このように、近赤外線カットフィルターとして必要不可欠な透過帯の拡張、紫外側および近赤外側におけるカット波長の入射角度依存性の抑制、ならびに紫外側および近赤外側における阻止帯の拡張のすべて満たすものは未だ得られていない。
日本特開平7−27907号公報 日本特開平11−202127号公報 日本特開2008−20563号公報
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、入射角度依存性が抑制されるとともに、透過帯ならびに紫外側および近赤外側の阻止帯が拡張された近赤外線カットフィルターの提供を目的とする。
本発明の近赤外線カットフィルターは、透明基板と、該透明基板の少なくとも一方の主面に設けられ、屈折率が2.0以上の屈折率が異なる2種以上の膜と屈折率が1.70以下である膜とを有する光学多層膜とを備える。
該光学多層膜は、垂直入射条件での分光特性において、400〜700nmの波長範囲に平均透過率が85%以上となる透過帯、ならびに該透過帯の紫外側および近赤外側のそれぞれに平均透過率が5%以下となる阻止帯を有する。透過帯の紫外側の半値波長と近赤外側の半値波長との差は200nm以上である。また、垂直入射条件と30°入射条件との分光特性における透過帯の半値波長の差は、紫外側の半値波長で10nm未満、近赤外側の半値波長で20nm未満である。該光学多層膜は、透過帯を構成する透過帯構成部と、阻止帯を構成する阻止帯構成部とから構成される。
上記した数値範囲を示す「〜」とは、その前後に記載された数値を下限値および上限値として含む意味で使用され、特段の定めがない限り、以下本明細書において「〜」は、同様の意味をもって使用される。
透明基板は、例えば、近赤外波長域に吸収を有する材料から構成されるものが好ましい。
透過帯構成部の第1の形態は、屈折率が2.0以上である高屈折率膜、屈折率が2.0以上であって高屈折率膜の屈折率未満である中屈折率膜、および屈折率が1.70以下である低屈折率膜を有する。高屈折率膜、中屈折率膜、および低屈折率膜の合計した層数は50層以上である。また、高屈折率膜の平均光学膜厚をT、中屈折率膜の平均光学膜厚をT、低屈折率膜の平均光学膜厚をTとしたとき、T/Tが2以上、かつT/Tが2以上である。
第1の形態の透過帯構成部における中屈折率膜は、その透過帯構成部における高屈折率膜と同一の屈折率を有する膜と、その透過帯構成部における低屈折率膜と同一の屈折率を有する膜とから構成される等価膜とすることができる。
透過帯構成部の第2の形態は、屈折率が2.0以上である高屈折率膜と屈折率が2.0以上であって高屈折率膜の屈折率未満である中屈折率膜との繰り返し構造を有するとともに、前記透明基板側とは反対側の主面側部分に屈折率が1.7以下である低屈折率膜を有するリップル調整部を有する。高屈折率膜の平均光学膜厚をT、中屈折率膜の平均光学膜厚をTとしたとき、T/Tは1.2以上、または0.7以下である。高屈折率膜、中屈折率膜、および低屈折率膜の合計した層数は40層以上である。
第2の形態の透過帯構成部における中屈折率膜は、その透過帯構成部における高屈折率膜と同一の屈折率を有する膜と、その透過帯構成部における低屈折率膜と同一の屈折率を有する膜とから構成される等価膜とすることができる。
阻止帯構成部は、垂直入射条件における分光特性において、光学多層膜および透過帯構成部の分光特性における透過帯を含む透過帯を有するとともに、光学多層膜および透過帯構成部の分光特性における紫外側の半値波長以下の紫外側の半値波長、および光学多層膜の分光特性における近赤外側の半値波長より7nm以上大きい近赤外側の半値波長を有することが好ましい。
阻止帯構成部の第1の形態は、屈折率が2以上である高屈折率膜と屈折率が1.7以下である低屈折率膜との繰り返し構造を有する。
阻止帯構成部の第2の形態は、紫外側の阻止帯を構成するための紫外側阻止帯構成部と、近赤外側の阻止帯を構成するための近赤外側阻止帯構成部とを有する。紫外側阻止帯構成部は、屈折率が2以上である高屈折率膜と屈折率が1.7以下である低屈折率膜との繰り返し構造を有する。近赤外側阻止帯構成部は、屈折率が2.0以上である高屈折率膜、屈折率が2.0以上であって高屈折率膜の屈折率未満である中屈折率膜、および屈折率が1.70以下である低屈折率膜を有する。これら、高屈折率膜、中屈折率膜、および低屈折率膜の合計した層数は30層以上である。
近赤外側阻止帯構成部における中屈折率膜は、その近赤外側阻止帯構成部における高屈折率膜と同一の屈折率を有する膜と、その近赤外側阻止帯構成部における低屈折率膜と同一の屈折率を有する膜とから構成される等価膜とすることができる。
光学多層膜を構成する屈折率が2.0以上の屈折率が異なる2種以上の膜は、例えば、TiO、Ta、Nb、またはこれらの複合酸化物からなるものとすることができる。また、屈折率が1.70以下である膜は、例えば、SiO、MgF、またはこれらの複合酸化物からなるものとすることができる。
本発明の製造方法は、上記近赤外線カットフィルターの製造方法であって、前記光学多層膜を蒸着またはスパッタリングにより形成する。
本発明によれば、例えば、特定の透過帯構成部および阻止帯構成部を有する光学多層膜を備えることで、入射角度依存性が抑制されるとともに、可視域の透過帯ならびに紫外域および近赤外域の阻止帯が拡張された近赤外線カットフィルターを提供できる。
本発明の近赤外線カットフィルターの一例を示す断面図。 透明基板を無色透明ガラスとした場合の例1の近赤外線カットフィルターの分光透過率を示す図。 透明基板を近赤外線カットガラスとした場合の例1の近赤外線カットフィルターの分光透過率を示す図。 例1の透過帯構成部の分光透過率を示す図。 例1の阻止帯構成部の分光透過率を示す図。 透明基板を無色透明ガラスとした場合の例2の近赤外線カットフィルターの分光透過率を示す図。 透明基板を近赤外線カットガラスとした場合の例2の近赤外線カットフィルターの分光透過率を示す図。 例2の透過帯構成部の分光透過率を示す図。 透明基板を無色透明ガラスとした場合の例3の近赤外線カットフィルターの分光透過率を示す図。 透明基板を近赤外線カットガラスとした場合の例3の近赤外線カットフィルターの分光透過率を示す図。 例3の透過帯構成部の分光透過率を示す図。 透明基板を無色透明ガラスとした場合の例4の近赤外線カットフィルターの分光透過率を示す図。 透明基板を近赤外線カットガラスとした場合の例4の近赤外線カットフィルターの分光透過率を示す図。 例4の透過帯構成部の分光透過率を示す図。 例5の積層膜の分光透過率を示す図。 例6の積層膜の分光透過率を示す図。 例7の積層膜(T:T:T=1:1:4)の分光透過率を示す図。 例7の積層膜(T:T:T=1:1:2)の分光透過率を示す図。 例7の積層膜(T:T:T=2:2:2)の分光透過率を示す図。 例7の積層膜(T:T:T=4:4:2)の分光透過率を示す図。 例7の積層膜(T:T:T=8:8:2)の分光透過率を示す図。 例7の積層膜(T:T:T=8:5:2)の分光透過率を示す図。 例7の積層膜(T:T:T=8:3:2)の分光透過率を示す図。 例7の積層膜(T:T:T=3:8:2)の分光透過率を示す図。 例8の積層膜(T:T=1:1)の分光透過率を示す図。 例8の積層膜(T:T=1.2:1)の分光透過率を示す図。 例8の積層膜(T:T=2:1)の分光透過率を示す図。 例8の積層膜(T:T=4:1)の分光透過率を示す図。 例8の積層膜(T:T=1:1.5)の分光透過率を示す図。 例8の積層膜(T:T=1:1.3)の分光透過率を示す図。 例9の積層膜の分光透過率を示す図。 透明基板を無色透明ガラスとした場合の例10の近赤外線カットフィルターの分光透過率を示す図。 透明基板を近赤外線カットガラスとした場合の例10の近赤外線カットフィルターの分光透過率を示す図。 例11の積層膜の分光透過率を示す図。 例12の積層膜の分光透過率を示す図。 例13の積層膜の分光透過率を示す図。 例14の積層膜(T:T=1:1)の分光透過率を示す図。 例14の積層膜(T:T=4:1)の分光透過率を示す図。 例14の積層膜(T:T=8:1)の分光透過率を示す図。 例14の積層膜(T:T=8:1、短波長側を揃えた場合)の分光透過率を示す図。 本発明の近赤外線カットフィルターが適用される撮像装置の一例を示す断面図。
以下、本発明の近赤外線カットフィルターの実施形態について説明する。
図1は、近赤外線カットフィルターの一実施形態を示す模式的断面図である。
近赤外線カットフィルター1は、例えば、透明基板2を有し、その一方の主面に光学多層膜3を有する。光学多層膜3は、図1に示すように透明基板2の一方の主面に設けられてもよいし、図示しないが透明基板2のそれぞれの主面に分割して設けられてもよい。この光学多層膜3は、屈折率が2.0以上の屈折率が異なる2種以上の膜と、屈折率が1.70以下である膜とを少なくとも有する。なお、本発明における屈折率は、特に断らない限り、波長550nmの光に対する屈折率を意味する。
光学多層膜3は、垂直入射条件での分光特性において、以下の要件を満たすものである。すなわち、400〜700nmの波長範囲に平均透過率が85%以上となる透過帯、ならびに該透過帯の紫外側および近赤外側のそれぞれに平均透過率が5%以下となる阻止帯を有する。透過帯の紫外側の半値波長と近赤外側の半値波長との差は200nm以上である。また、垂直入射条件と30°入射条件との分光特性における透過帯の半値波長の差は、紫外側の半値波長で10nm未満、近赤外側の半値波長で20nm未満である。
なお、光学多層膜3は、垂直入射条件での分光特性において、さらに以下の要件を満たすことが好ましい。すなわち、透過帯の紫外側の半値波長と近赤外側の半値波長との差は300nm以下が好ましい。紫外側の半値波長は390〜430nmの範囲にあることが好ましく、近赤外側の半値波長は640〜720nmの範囲にあることが好ましい。また、紫外側の阻止帯の波長の幅は30nm以上、近赤外側の阻止帯の波長の幅は250nm以上であることが好ましい。
ここで、透過帯の範囲、すなわち平均透過率を求めるための範囲は、透過帯から紫外側の阻止帯に向かって透過率の低下が開始するときの波長(紫外側の基点)から、透過帯から近赤外側の阻止帯に向かって透過率の低下が開始するときの波長(近赤外側の基点)までとする。
阻止帯の範囲、すなわち平均透過率や幅を求めるための範囲は以下のものとする。すなわち、紫外側の阻止帯については、紫外側の阻止帯から透過帯に向かって透過率の上昇が開始するときの波長(透過帯側の基点)から、その紫外側に向かって透過率が最初に40%に達するときの上昇が開始するときの波長(紫外側の基点)までとする。近赤外側の阻止帯については、近赤外側の阻止帯から透過帯に向かって透過率の上昇が開始するときの波長(透過帯側の基点)から、その近赤外側に向かって透過率が最初に40%に達するときの上昇が開始するときの波長(近赤外側の基点)までとする。
このような要件を満たす光学多層膜3は、例えば、透過帯を構成する透過帯構成部と、阻止帯を構成する阻止帯構成部とから構成される。光学多層膜3を構成する透過帯構成部および阻止帯構成部は、例えば、透明基板2の一方の主面に双方を設けてもよいし、また透明基板2の一方の主面に透過帯構成部を設け、他方の主面に阻止帯構成部を設けてもよい。透明基板2の一方の主面に透過帯構成部および阻止帯構成部を設ける場合、その透明基板2からの積層順序は特に制限されない。
また、阻止帯構成部は、例えば、紫外側阻止帯構成部と近赤外側阻止帯構成部とに分割して設けることができ、これらは全てを透明基板2の一方の主面側に設けてもよいし、透明基板2の両主面側に分割して設けてもよい。全てを透明基板2の一方の主面側に設ける場合、例えば、透過帯構成部を挟むように設ける。また、透明基板2の両主面側に分けて設ける場合、いずれの主面側にいずれを設けてもよく、また透明基板2に対して透過帯構成部と同一の主面側に設けられるものについては、透過帯構成部との積層順序についても特に制限されない。
(透明基板)
透明基板2は、少なくとも可視波長域の光を透過できる材料であれば特に限定されず、例えば、ガラス、水晶、ニオブ酸リチウム、サファイヤ等の結晶、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。
透明基板2としては、特に近赤外波長域に吸収を有する材料から構成されるものが好ましい。このような近赤外波長域に吸収を有する透明基板2を用いることで、人間の視感度特性に近いものとすることができる。また、光学多層膜3は、入射角度依存性が抑制されるとともに、透過帯が拡張されたものであり、この拡張された透過帯によって近赤外波長域に吸収を有する透明基板2の特性を有効に発揮させることができる。すなわち、近赤外波長域に吸収を有する透明基板2の特性を有効に発揮させるために、光学多層膜3には、紫外側の半値波長が390〜430nmの範囲内、好ましくは400〜420nmの範囲内にあり、近赤外側の半値波長が640〜720nmの範囲内、好ましくは670〜710nmの範囲内にあることが求められる。従来の高屈折率膜と低屈折率膜とを交互に積層した光学多層膜では必ずしも透過帯の幅が十分でなく、このような半値波長を得ることは難しいが、光学多層膜3によれば、広い透過帯を形成できることから、このような半値波長を得ることができる。
近赤外波長域に吸収を有する透明基板2としては、例えば、フツリン酸塩系ガラスやリン酸塩系ガラスにCuO等が添加された近赤外線吸収型ガラスが挙げられる。また、樹脂材料中に近赤外線を吸収する吸収剤を添加されたものが挙げられる。吸収剤としては、例えば、染料、顔料、金属錯体系化合物が挙げられ、具体的には、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ジチオール金属系錯体系化合物が挙げられる。
(透過帯構成部)
透過帯構成部は、光学多層膜3の分光特性における透過帯、すなわち可視域の透過帯を形成するものである。具体的には、透過帯構成部は、阻止帯構成部の分光特性における透過帯よりも狭い透過帯を形成することで、光学多層膜3の分光特性における透過帯を形成する。透過帯構成部は、入射角度依存性を抑制するとともに透過帯の幅(波長)が広いため、光学多層膜3の入射角度依存性を抑制するとともに透過帯を広くすることができる。透過帯構成部としては、以下に示すような第1の形態および第2の形態が挙げられる。
(第1の形態の透過帯構成部)
第1の形態の透過帯構成部は、屈折率が2.0以上である高屈折率膜、屈折率が2.0以上であって高屈折率膜の屈折率未満である中屈折率膜、および屈折率が1.70以下である低屈折率膜を有する。高屈折率膜、中屈折率膜、および低屈折率膜の合計した層数は50層以上である。また、高屈折率膜の平均光学膜厚をT、中屈折率膜の平均光学膜厚をT、低屈折率膜の平均光学膜厚をTとしたとき、T/Tが2以上かつT/Tが2以上である。
ここで、光学膜厚は、膜の屈折率をn、物理膜厚をd[nm]としたとき、nd[nm]として求められる。また、平均光学膜厚は、同種の膜、例えば高屈折率膜等の全ての膜について光学膜厚nd[nm]を算出した後、これら光学膜厚nd[nm]の合計をその膜の層数で除して算出されるものである。
光学多層膜として高屈折率膜であるTiO膜と低屈折率膜であるSiO膜と交互に積層し、これらの平均光学膜厚の比率におけるTiO膜の平均光学膜厚の割合を大きくすることで、入射角度依存性を抑制するとともに、十分な幅の阻止帯を形成できる。しかし、このようなものについては、必ずしも透過帯の幅が十分でなく、CCDやCMOS等の固体撮像素子に用いられる近赤外線カットフィルターに求められる透過帯の幅を確保できない。
第1の形態の透過帯構成部によれば、高屈折率膜、中屈折率膜、および低屈折率膜からなるものとし、その合計した層数を50層以上とし、また平均光学膜厚の比であるT/Tを2以上、かつT/Tを2以上とすることで、入射角度依存性が小さく、かつ十分な幅を有する透過帯を形成できる。
透過帯構成部の層数は、50層以上であれば特に制限されないが、特に近赤外に吸収を持つ透明基板との併用を考えれば、色ガラス側の分光波形への影響を少なくするために阻止帯から透過帯への立ち上がりが急峻である方が良く、この観点から、60以上が好ましく、70以上がより好ましい。層数の上限値については特に制限されないが、一般に層数が多くなると生産性が低下することから、150以下が好ましく、100以下がより好ましい。
平均光学膜厚の比T/T、T/Tについては、それぞれ2以上であれば特に制限されないが、より入射角度依存性が小さく、かつ十分な幅を有する透過帯を形成する観点から、T/Tについては、2.3以上が好ましく、2.5以上がより好ましく、T/Tについては、2.3以上が好ましく、2.5以上がより好ましい。
なお、T/T、T/Tの上限値については必ずしも制限されないが、いずれも10以下が好ましく、5以下がより好ましい。例えば、T/TやT/Tが大きくなると相対的に低屈折率膜の光学膜厚が小さくなるが、低屈折率膜のように屈折率が小さいものについては、光学膜厚が小さくなると成膜時の膜厚制御が困難となる。T/TやT/Tを好ましくは10以下、より好ましくは5以下とすることで、生産性に優れたものとすることができる。
なお、T/Tについて特に限定されるものではないが、この比率を変えることにより紫外側阻止帯の大きさを調整することが可能であり、入射角度依存性を小さくする観点から、1以上とすることが好ましく、透過帯の幅を広くする観点からは3以下が好ましく、2.5以下であることがより好ましい。
高屈折率膜、中屈折率膜、および低屈折率膜は、高屈折率膜をH、中屈折率膜をM、低屈折率膜をLとしたとき、例えば、以下のような基本単位の繰り返し構造となるように積層される。
基本単位:[HML]
基本単位:[LMHML]
透過帯構成部は、必ずしも厳密に上記した基本単位の繰り返し構造となっている必要はない。例えば、低屈折率膜のように屈折率が小さいものの場合、光学膜厚が小さくなると成膜時の膜厚制御が困難となることから、例えば、複数の低屈折率膜の一部を省略し、これにより高屈折率膜と中屈折率膜とが多数連続する部分があっても構わない。基本単位[LMHML]の繰り返し構造は対称形を有することから広い透過帯が得られるために好ましい。一方、基本単位[HML]の繰り返し構造は必ずしも広い透過帯は得られないが、各膜の平均光学膜厚の自由度が比較的に高いために好ましい。
なお、基本単位[LMHML]の繰り返し構造は、隣り合う基本単位の2つのLが連続するために[2LMHM]あるいは2つのLを1つのLと見なして[LMHM]とも表すことができるが、本発明における平均光学膜厚はあくまでも成膜された最終形態での状態を基準として算出されるものであり、同一物質からなる連続した膜は1つの膜として捉えて物理膜厚や層数を求め、これらを用いて平均光学膜厚を求める。
高屈折率膜、中屈折率膜としては、屈折率が2.0以上となる材料からなるものであれば特に限定されないが、例えば、TiO、Ta、Nb、またはこれらの複合酸化物からなるものが好適に挙げられる。高屈折率膜としては、屈折率が2.3以上のものが好ましく、屈折率が2.4以上のものがより好ましい。このようなものとしては、TiO(屈折率2.45)からなるものが好適に挙げられる。中屈折率膜としては、高屈折率膜の屈折率未満のものであれば特に限定されないが、屈折率が2以上2.3未満のものが好ましく、屈折率が2.2以下のものがより好ましい。このようなものとしては、Ta(屈折率2.13)からなるものが好適に挙げられる。
低屈折率膜としては、屈折率が1.7以下となる材料からなるものであれば特に限定されないが、例えば、SiO、MgF、またはこれらの複合酸化物からなるものが好適に挙げられる。
透過帯構成部は、層数が多く、総膜厚も大きいことから、膜物質の入手性、分光特性、耐候性、強度等の様々な理由から、上記したような、TiO、Ta、SiO、MgF等が好適に用いられる。
透過帯構成部における中屈折率膜は、必ずしも単一の膜からなるものに限られず、例えば、高屈折率膜と同一の屈折率を有する膜と、低屈折率膜と同一の屈折率を有する膜とから構成される等価膜としてもよい。等価膜によれば、例えば、成膜装置における成膜可能な膜種が2種である場合にも、実質的に中屈折率膜を成膜できるために好ましい。
等価膜を利用した場合、低屈折率膜が増加することになるが、その増加量は少なく、また高屈折率膜も増加することから、入射角度依存性は実質的に大きくならない。なお、等価膜を利用した場合、層数が増加し、また物理膜厚で10nm以下となるような極めて薄い層が多くなるために成膜時の膜厚制御が困難となることから、成膜装置における成膜可能な膜種が2種である場合のような限定的な場合に限って利用することが好ましい。
中屈折率膜は、高屈折率膜をH、低屈折率膜をLとしたとき、LHLで作られるものと、HLHで作られるものとの2通りがある。但し、どちらの場合でも屈折率n、物理膜厚dの膜を屈折率nの順で置き換えた場合に、物理膜厚は以下のようになる。
=d*q
=d*q
、qはQWOT(quarter wave optical thickness)に対する各膜厚の係数であり、各膜の構成物質の屈折率から計算される係数で、屈折率を変えない限りは定数になる。なお、屈折率には波長依存性があることから、代表する波長を選び出し、例えば、中屈折率膜であるTa膜をTiO膜とSiO膜とで作り出す。
Taの屈折率を2.150331(波長500nm)、TiOの屈折率を2.50232(波長500nm)、SiOの屈折率を1.483155(波長500nm)とした場合、Ta膜の代わりに用いるTiO膜、SiO膜の比率は、Ta膜の物理膜厚を1とした場合、d:d:d=0.2348:0.48876:0.2348、またはd:d:d=0.39853:0.1794:0.39853となる。
(第2の形態の透過帯構成部)
第2の形態の透過帯構成部は、屈折率が2.0以上である高屈折率膜と屈折率が2.0以上であって高屈折率膜の屈折率未満である中屈折率膜との繰り返し構造を有するとともに、透明基板2側とは反対側の主面側部分に屈折率が1.7以下である低屈折率膜を有するリップル調整部を有する。高屈折率膜の平均光学膜厚をT、中屈折率膜の平均光学膜厚をTとしたとき、T/Tは1.2以上、または0.7以下である。高屈折率膜、中屈折率膜、および低屈折率膜の合計した層数は40層以上である。
高屈折率膜と中屈折率膜とを交互に積層するものについても、入射角度依存性が小さく、かつ十分な幅を有する透過帯を形成できる。この場合、高屈折率膜と中屈折率膜とが40層程度となる場合に近赤外側の阻止帯の幅が十分となるが、一般的な構成であるT/T=1.00程度では紫外側の阻止帯の幅が非常に狭くなる。仮に、阻止帯が完全になくなる場合、ロングパスフィルターであるUVカットフィルターを用いることも考えられるが、紫外側の阻止帯の幅が非常に小さくとも阻止帯として存在することから、これは逆にリップルの原因になりかねず、調整方法が必要となる。
/Tの比率を一般的な構成よりも2割程度ずらすことで、すなわちT/Tを1.2以上、または0.7以下とすることで、紫外側に十分な幅の阻止帯を形成でき、この比率を変えることで阻止帯の幅も調整できる。これにより、高屈折率膜と中屈折率膜との繰り返し構造を基本とするものにおいて、入射角度依存性が小さく、かつ十分な幅を有する透過帯を形成しつつ、十分な幅を有する阻止帯を確保できる。第2の形態の透過帯構成部によれば、特に高屈折率膜と中屈折率膜とによって繰り返し構造が構成されており、繰り返し構造には基本的に低屈折率膜が含まれないことから、第1の形態の透過帯構成部に比べて入射角度依存性を抑制しやすい。また、T/Tを1.2以上とすることで、紫外側の阻止帯も非常に明確にできる。
透過帯構成部の層数は、40以上であれば特に制限されないが、紫外側および近赤外側の阻止帯の幅を十分とする観点から、45以上が好ましく、50以上がより好ましい。層数の上限値については特に制限されないが、一般に層数が多くなると生産性や、分光、外観品質が低下することから、150以下が好ましく、100以下がより好ましい。
平均光学膜厚の比T/Tについては、1.2以上、または0.7以下であれば特に制限されないが、1.2以上となるT/Tについては、紫外側の阻止帯の幅を広くする観点から、1.5以上が好ましく、2以上がより好ましい。また、その上限値については必ずしも制限されないが、大きくなると近赤外側の阻止帯の幅が狭くなり、この近赤外側の阻止帯の幅を広くするために層数を増やす必要があることから、5以下が好ましく、4以下がより好ましい。一方、0.7以下となるT/Tについても、T/Tが小さくなると、紫外側の阻止帯の幅は広くなるが、近赤外側の阻止帯の幅が狭くなり、この近赤外側の阻止帯の幅を広くするために層数を増やす必要があることから、0.3以上が好ましい。
高屈折率膜、中屈折率膜としては、屈折率差が0.1以上あれば所定の効果を得ることができるが、屈折率差が小さいと層数を多くしなければならず、生産性が低下することから、屈折率差が0.2以上が好ましく、0.3以上がより好ましい。高屈折率膜、中屈折率膜としては、所定の屈折率差となる組み合わせであれば特に制限されないが、例えば、TiO、Ta、Nb、またはこれらの複合酸化物からなるものが好適に挙げられる。高屈折率膜としては、屈折率が2.3以上のものが好ましく、屈折率が2.4以上のものがより好ましい。このようなものとしては、TiO(屈折率2.45)からなるものが好適に挙げられる。中屈折率膜としては、高屈折率膜の屈折率未満のものであれば特に限定されないが、屈折率が2以上2.3未満のものが好ましく、屈折率が2.2以下のものがより好ましい。このようなものとしては、Ta(屈折率2.13)からなるものが好適に挙げられる。
なお、高屈折率膜と中屈折率膜との繰り返し構造ではリップルの発生を十分に抑制できないことから、透明基板2側とは反対側の主面側部分に屈折率が1.7以下である低屈折率膜を有するリップル調整部を設ける。リップル調整部は、少なくとも1層の低屈折率膜を有するものであり、透過帯構成部の最終層側(透明基板2側とは反対側の主面側、以下外側ともいう)に設けられた1層の低屈折率膜であってもよいし、1層の低屈折率膜と、その外側に設けられた高屈折率膜もしくは中屈折率膜またはこれら高屈折率膜と中屈折率膜との繰り返し構成と、からなる2〜9層のものであってもよい。なお、この繰り返し構成は、他の低屈折率膜を有することができる。透過帯構成部は、このようなリップル調整部を含めた層数が40以上であればよい。
透過帯構成部には、さらにリップルの発生を抑制する目的から、透明基板2側の部分に屈折率が1.7以下である低屈折率膜を設けてもよい。これらリップルの発生を抑制するための低屈折率膜は、上記したリップル調整部における低屈折率膜も含めて、合計で1〜9層形成されていることが好ましい。
低屈折率膜は、屈折率が1.7以下となる材料からなるものであれば特に限定されないが、例えば、SiO、MgF、またはこれらの複合酸化物からなるものが好適に挙げられる。
透過帯構成部における中屈折率膜は、必ずしも単一の膜からなるものに限られず、例えば、高屈折率膜と同一の屈折率を有する膜と、低屈折率膜と同一の屈折率を有する膜とから構成される等価膜としてもよい。等価膜によれば、例えば、成膜装置における成膜可能な膜種が2種である場合にも、中屈折率膜を成膜できるために好ましい。
(阻止帯構成部)
阻止帯構成部は、光学多層膜3の分光特性における阻止帯、具体的には紫外側および近赤外側の阻止帯を形成するものである。すなわち、上記した透過帯構成部は、光学多層膜3の分光特性における透過帯やその両側のカットオフ帯を主として形成するものであり、必ずしも十分な幅の阻止帯を形成できないことから、阻止帯構成部により阻止帯の幅の拡張を行う。
阻止帯構成部は、例えば、垂直入射条件における分光特性において、光学多層膜3の分光特性における透過帯を含む透過帯を有する。また、阻止帯構成部は、光学多層膜3および前記透過帯構成部の分光特性における紫外側の半値波長以下の紫外側の半値波長を有するとともに、光学多層膜および前記透過帯構成部の分光特性における近赤外側の半値波長より7nm以上大きい近赤外側の半値波長を有する。
このようなものとすることで、入射角度が変化した場合であっても、透過帯構成部により形成される透過帯を含むような透過帯とすることができ、結果として、入射角度依存性が抑制されるとともに、可視域の透過帯ならびに紫外域および近赤外域の阻止帯が拡張された光学多層膜3とすることができる。
すなわち、入射角度が変化した場合、阻止帯構成部により形成される近赤外側の半値波長は、光学多層膜3、または透過帯構成部により形成される近赤外側の半値波長に比べて大きくシフトしやすい。垂直入射条件における分光特性において、阻止帯構成部により形成される近赤外側の半値波長を、光学多層膜3、または透過帯構成部により形成される近赤外側の半値波長よりも7nm以上大きくすることで、入射角度が変化した場合についても、阻止帯構成部により形成される近赤外側の半値波長が光学多層膜3、または透過帯構成部により形成される近赤外側の半値波長に重ならないようにすることができる。好ましい上限は、50nm以下、より好ましい下限は14nm以上である。
一方、阻止帯構成部により形成される紫外側の半値波長は、光学多層膜3、または透過帯構成部により形成される紫外側の半値波長に比べて必ずしも大きく変化しないことから、垂直入射条件における分光特性において、これらによって形成される紫外側の半値波長以下であれば、入射角度が変化した場合についても、これらによって形成される紫外側の半値波長に重ならないようにすることができる。
このような阻止帯構成部としては、以下に示すような第1の形態および第2の形態が挙げられる。なお、阻止帯構成部の形態は、透過帯構成部の形態によらず、いずれの形態とすることもできる。
(第1の形態の阻止帯構成部)
第1の形態の阻止帯構成部は、屈折率が2以上である高屈折率膜と屈折率が1.7以下である低屈折率膜との繰り返し構造を有する。また、高屈折率膜の平均光学膜厚をT、低屈折率膜の平均光学膜厚をTとしたとき、T/Tは2未満であることが好ましい。
このような構成とすることで、光学多層膜3の分光特性における透過帯、すなわち透過帯構成部の分光特性における透過帯を含む透過帯を形成でき、また光学多層膜3および前記透過帯構成部の分光特性における紫外側の半値波長以下の紫外側の半値波長を形成できるとともに、光学多層膜3および前記透過帯構成部の分光特性における近赤外側の半値波長より7nm以上大きい近赤外側の半値波長を形成できる。すなわち、T/Tが2以上となる場合、入射角度依存性は抑制しやすいが、透過帯が狭くなる。T/Tを2未満とすることで、入射角度依存性は必ずしも抑制できないが、光学多層膜3及び透過帯構成部の分光特性における透過帯を含むような広い透過帯を形成できる。
阻止帯構成部の層数は、十分な幅の透過帯や阻止帯、および所定の半値波長を得る観点から、20以上が好ましく、25以上がより好ましい。層数の上限値については特に制限されないが、一般に層数が多くなると生産性が低下することから、150以下が好ましく、100以下がより好ましい。
平均光学膜厚の比T/Tについては2未満であれば特に限定されないが、十分な幅の透過帯や阻止帯、特に広い阻止帯を得ることを考えれば、阻止帯を設計する際の設計上の中心波長に対し、T/T比率が1程度の一般的な膜設計手法を用いることがよい。これは、先に述べたように、入射角度依存性の抑制を目的としたT/Tの増加が、阻止帯の減少を引き起こすことを考えれば明らかである。
高屈折率膜としては、屈折率が2.0以上となる材料からなるものであれば特に限定されないが、例えば、TiO、Ta、Nb、またはこれらの複合酸化物からなるものが好適に挙げられる。高屈折率膜としては、屈折率が2.3以上のものが好ましく、屈折率が2.4以上のものがより好ましい。このようなものとしては、TiO(屈折率2.45)からなるものが好適に挙げられる。
低屈折率膜としては、屈折率が1.7以下となる材料からなるものであれば特に限定されないが、例えば、SiO、MgF、またはこれらの複合酸化物からなるものが好適に挙げられる。
(第2の形態の阻止帯構成部)
第2の形態の阻止帯構成部は、紫外側の阻止帯を構成するための紫外側阻止帯構成部と、近赤外側の阻止帯を構成するための近赤外側阻止帯構成部とを有する。紫外側阻止帯構成部は、屈折率が2以上である高屈折率膜と屈折率が1.7以下である低屈折率膜との繰り返し構造を有する。近赤外側阻止帯構成部は、屈折率が2.0以上である高屈折率膜、屈折率が2.0以上であって前記高屈折率膜の屈折率未満である中屈折率膜、および屈折率が1.70以下である低屈折率膜を有し、高屈折率膜、中屈折率膜、および低屈折率膜の合計した層数が30層以上である。
第2の形態の阻止帯構成部についても、光学多層膜3の分光特性における透過帯、すなわち透過帯構成部の分光特性における透過帯を含む透過帯を形成でき、また光学多層膜3および前記透過帯構成部の分光特性における紫外側の半値波長以下の紫外側の半値波長および光学多層膜3および前記透過帯構成部の分光特性における近赤外側の半値波長より7nm以上大きい近赤外側の半値波長を形成できる。
一般に、光学多層膜の分光特性は、近赤外側の阻止帯が広く、入射角が大きくなったときの透過帯におけるリップルの発生が少ないことが好ましい。上記した透過帯構成部は、いずれも入射角度依存性を抑制する技術を用いているためにリップルの発生をある程度抑制できるが、この技術を入れない阻止帯構成部は依然としてリップルが発生する。第1の形態の阻止帯構成部については、必ずしもこのようなリップルを十分に抑制できない。第2の形態の阻止帯構成部によれば、透過帯や阻止帯の幅を十分に拡張しつつ、リップルの発生を抑制できる。
紫外側阻止帯構成部は、上記したように屈折率が2以上である高屈折率膜と屈折率が1.7以下である低屈折率膜との繰り返し構造を有する。
紫外側阻止帯構成部の層数は、十分な幅の紫外側の阻止帯を形成する観点から、15以上が好ましく、20以上がより好ましい。層数の上限値については特に制限されないが、一般に層数が多くなると生産性が低下することから、60以下が好ましく、40以下がより好ましい。
高屈折率膜としては、屈折率が2.0以上となる材料からなるものであれば特に限定されないが、例えば、TiO、Ta、Nb、またはこれらの複合酸化物からなるものが好適に挙げられる。高屈折率膜としては、屈折率が2.3以上のものが好ましく、屈折率が2.4以上のものがより好ましい。このようなものとしては、TiO(屈折率2.45)からなるものが好適に挙げられる。
低屈折率膜としては、屈折率が1.7以下となる材料からなるものであれば特に限定されないが、例えば、SiO、MgF、またはこれらの複合酸化物からなるものが好適に挙げられる。
近赤外側阻止帯構成部は、屈折率が2.0以上である高屈折率膜、屈折率が2.0以上であって高屈折率膜の屈折率未満である中屈折率膜、および屈折率が1.70以下である低屈折率膜を有する。これら、高屈折率膜、中屈折率膜、および低屈折率膜の合計した層数は30層以上である。
近赤外側阻止帯構成部の層数は、30以上であれば特に制限されないが、より十分な幅を有する近赤外側の阻止帯を形成する観点から、40以上が好ましく、60以上がより好ましい。層数の上限値については特に制限されないが、一般に層数が多くなると生産性が低下することから、150以下が好ましく、100以下がより好ましい。
高屈折率膜、中屈折率膜、および低屈折率膜は、高屈折率膜をH、中屈折率膜をM、低屈折率膜をLとしたとき、例えば、以下のような基本単位の繰り返し構造となるように積層される。
基本単位:[HML]
基本単位:[LMHML]
上記のような繰り返し構造を用いる場合、平均光学膜厚T、平均光学膜厚T、平均光学膜厚Tは、十分に広い阻止帯を得る観点から、HMLを基本単位とする部分は、T:T:T=1:1:1前後であり、LMHMLを基本単位とする部分は、T:T:T=1:1:2前後とする一般的な膜設計での比率程度であることがよい。なお、後者のT比率が2となったのは、LMHMLの繰り返しは、LLと重なるために、最終的な膜設計では比率が2となるためであり、基本的な考え方はT:T:T=1:1:1と変わらない。詳細については後述する。なお、ここで一般的な比率を採用したのは、第1の形態の透過帯構成部の説明で述べた入射角度依存性低減の手法において、TH、の比率を大きくすると阻止帯が狭くなることから、光学的膜厚比率を大きく変えない考えを基としている。
また、阻止帯構成部は上記繰り返し構造に対し、二つ以上の設計波長を適用して阻止帯の拡張を図る一般的な手法を用いることが良く、好適である。この場合、上記比率は、それぞれ設計上の中心波長ごとに設定されることになる。
近赤外側阻止帯構成部は、広い範囲の近赤外域をカットするが、CCD、CMOS用途の近赤外線カットフィルターとしてはより長波長側までカットできることが好ましい。好ましくは900nm以上、より好ましくは1100nm以上であり、更に好ましくは1150nm以上をカット出来ることが好ましい。上記手法を用いた場合には、より長波側まで阻止域を拡張しながら、入射角度が大きくなった際にリップルの発生を抑えることが可能となる。
なお、近赤外側阻止帯構成部は、必ずしも厳密に上記した基本単位の繰り返し構造となっている必要はない。例えば、低屈折率膜のように屈折率が小さいものの場合、光学膜厚が小さくなると成膜時の膜厚制御が困難となることから、例えば、複数の低屈折率膜の一部を省略し、これにより高屈折率膜と中屈折率膜とが多数連続する部分があっても構わない。
また、基本単位[LMHML]の繰り返し構造は、隣り合う基本単位の2つのLが連続するために[2LMHM]あるいは2つのLを1つのLと見なして[LMHM]とも表すことができるが、本発明における平均光学膜厚はあくまでも成膜された最終形態での状態を基準として算出されるものであり、同一物質からなる連続した膜は1つの膜として捉えて物理膜厚や層数を求め、これらを用いて平均光学膜厚を求める。
高屈折率膜、中屈折率膜としては、屈折率が2.0以上となる材料からなるものであれば特に限定されないが、例えば、TiO、Ta、Nb、またはこれらの複合酸化物からなるものが好適に挙げられる。高屈折率膜としては、屈折率が2.3以上のものが好ましく、屈折率が2.4以上のものがより好ましい。このようなものとしては、TiO(屈折率2.45)からなるものが好適に挙げられる。中屈折率膜としては、高屈折率膜の屈折率未満のものであれば特に限定されないが、屈折率が2以上2.3未満のものが好ましく、屈折率が2.2以下のものがより好ましい。このようなものとしては、Ta(屈折率2.13)からなるものが好適に挙げられる。
低屈折率膜としては、屈折率が1.7以下となる材料からなるものであれば特に限定されないが、例えば、SiO、MgF、またはこれらの複合酸化物からなるものが好適に挙げられる。
近赤外側阻止帯構成部における中屈折率膜は、必ずしも単一の膜からなるものに限られず、例えば、高屈折率膜と同一の屈折率を有する膜と、低屈折率膜と同一の屈折率を有する膜とから構成される等価膜としてもよい。等価膜によれば、例えば、成膜装置における成膜可能な膜種が2種である場合にも、中屈折率膜を成膜できるために好ましい。
光学多層膜3、すなわち透過帯構成部や阻止帯構成部は、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法により形成することができ、特にスパッタリング法、真空蒸着法により形成することが好ましい。透過帯は、CCD、CMOS等の固体撮像素子の受光に利用される波長帯域であり、その位置精度が重要となる。スパッタリング法、真空蒸着法により形成することで、波長シフトを抑制し、位置精度を向上させることができる。
近赤外線カットフィルター1は、例えば、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、監視カメラ、車載用カメラ、ウェブカメラ等の撮像装置や自動露出計等における視感度補正フィルターとして用いられる。デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、監視カメラ、車載用カメラ、ウェブカメラ等の撮像装置においては、例えば、撮像レンズと固体撮像素子との間に配置される。自動露出計においては、例えば受光素子の前面に配置される。
撮像装置では、固体撮像素子の前面から離れた位置に近赤外線カットフィルター1を配置してもよいし、固体撮像素子、または固体撮像素子のパッケージに直接貼着してもよいし、固体撮像素子を保護するカバーを近赤外線カットフィルター1としてもよい。また、モアレや偽色を低減するための水晶やニオブ酸リチウム等の結晶を使用したローパスフィルタに直接貼着してもよい。
図41は、固体撮像素子を有する撮像装置の一実施形態を概略的に示す断面図である。撮像装置50は、例えば、固体撮像素子51、カバーガラス52、レンズ群53、絞り54、およびこれらを固定する筺体55を有する。
レンズ群53は、固体撮像素子51の撮像面側に配置され、例えば、第1のレンズL1、第2のレンズL2、第3のレンズL3、および第4のレンズL4を有する。絞り54は、第3のレンズL3と第4のレンズL4との間に配置される。カバーガラス52は、固体撮像素子51のレンズ群53側に配置され、外部環境から固体撮像素子51を保護する。固体撮像素子51は、レンズ群53を通過した光を電気信号に変換する電子部品であり、例えばCCDやCMOS等である。固体撮像素子51、カバーガラス52、レンズ群53、および絞り54は、光軸xに沿って配置される。
撮像装置50では、被写体側より入射した光は、第1のレンズL1、第2のレンズL2、第3のレンズL3、絞り54、第4のレンズL4、およびカバーガラス52を通って固体撮像素子51に入射する。この入射した光を固体撮像素子51が電気信号に変換し、画像信号として出力する。
近赤外線カットフィルター1は、例えば、カバーガラス52、レンズ群53、すなわち第1のレンズL1、第2のレンズL2、第3のレンズL3、もしくは第4のレンズL4として用いられる。言い換えれば、近赤外線カットフィルター1の光学多層膜3は、従来の撮像装置のカバーガラスやレンズ群を透明基板2とし、この透明基板2の表面に設けられる。撮像装置50のカバーガラス52やレンズ群53に近赤外線カットフィルター1を適用することで、入射角度依存性を抑制しつつ、可視域の透過帯ならびに紫外域および近赤外域の阻止帯を拡張でき、その特性を向上できる。
以下、実施例を参照してより具体的に説明する。
なお、例1〜4が、本発明の近赤外線カットフィルターの実施例である。また、例5〜14は、各構成の積層膜のものについて、光学シミュレーションにより各入射角における分光透過率を求めたものである。
(例1)
近赤外線カットフィルターは、透明基板の一方の主面に光学多層膜の一部となる透過帯構成部を有し、他方の主面に光学多層膜の一部となる阻止帯構成部を有する構成とした。ここで、透明基板は、無色透明ガラス(ショット社製、商品名:D263、厚み:0.3mm)、または近赤外線カットガラス(旭硝子社製、商品名:NF−50T、厚み:0.26mm)とした。
透過帯構成部は、表1に示すような構成を有する第1の形態の透過帯構成部とした。なお、表中の層数は、透明基板側からの層数である。ここで、透過帯構成部は、高屈折率膜であるTiO膜をH、中屈折率膜であるTa膜をM、低屈折率膜であるSiO膜をLとしたとき、基本的に[LMHML]の基本単位から構成されるものであり、層数が84層、TiO膜の平均光学膜厚Tが119.1nm、Ta膜の平均光学膜厚Tが138.7nm、SiO膜の平均光学膜厚Tが45.3nm、T/T=2.6、T/T=3.1となるものである。
阻止帯構成部は、表2に示すような構成を有する第2の形態の阻止帯構成部とした。ここで、阻止帯構成部は、1〜22層が紫外側阻止帯構成部、23〜93層が近赤外側阻止帯構成部である。紫外側阻止帯構成部は、高屈折率膜であるTiO膜をH、低屈折率膜であるSiO膜をLとしたとき、基本的に[HL]の基本単位から構成されるものであり、層数が22層、TiO膜の平均光学膜厚Tが55.4nm、SiO膜の平均光学膜厚Tが117.0nm、T/T=0.47となるものである。
近赤外側阻止帯構成部は、高屈折率膜であるTiO膜をH、中屈折率膜であるTa膜をM、低屈折率膜であるSiO膜をLとしたとき基本的に[LMHML]の基本単位から構成されるものであり、層数が70層、TiO膜の平均光学膜厚Tが119.5nm、Ta膜の平均光学膜厚Tが95.4nm、SiO膜の平均光学膜厚Tが224.2nm、T/T=0.5、T/T=0.4となるものである。
Figure 0006003895
Figure 0006003895
この近赤外線カットフィルターについて、光学シミュレーションにより、入射角θが0°のときの分光透過率、および入射角θが30°のときの分光透過率を求めた。図2に、透明基板として無色透明ガラスを用いたときの分光透過率を、図3に、透明基板として近赤外線カットガラスを用いたときの分光透過率を示す。また、図4に、無色透明ガラスに透過帯構成部のみを形成したときの分光透過率、図5に、無色透明ガラスに阻止帯構成部のみを形成したときの分光透過率を示す。
また、表3に、近赤外線カットフィルターの分光透過率(透明基板として無色透明ガラスを用いたもの(図2))における主な数値を示す。また、表4、5に、透過帯構成部、阻止帯構成部の分光透過率(図4、5)における主な数値を示す。
Figure 0006003895
Figure 0006003895
Figure 0006003895
図2から明らかなように、この近赤外線カットフィルターによれば、入射角度依存性が抑制されるとともに、透過帯、ならびに紫外域および近赤外域の阻止帯が拡張され、また入射角度が大きくなったときのリップルの発生も抑制されることが認められる。この近赤外線カットフィルターは、非常に広い透過帯を有することから、近赤外線カットガラス等の吸収型色ガラスとの併用に好適である。
(例2)
近赤外線カットフィルターは、透明基板の一方の主面に光学多層膜の一部となる透過帯構成部が形成され、他方の主面に光学多層膜の一部となる阻止帯構成部が形成された構成とした。ここで、透明基板、阻止帯構成部は、例1と同様とした。
透過帯構成部は、表6に示すような構成を有する第2の形態の透過帯構成部とした。ここで、透過帯構成部は、高屈折率膜であるTiO膜をH、中屈折率膜であるTa膜をMとしたとき、基本的に[HM]の基本単位から構成されるものである。また、層数が52層、TiO膜の平均光学膜厚Tが210.7nm、Ta膜の平均光学膜厚Tが171.4nm、SiO膜の平均光学膜厚Tが191.3nm、T/T=1.2となるものである。
Figure 0006003895
この近赤外線カットフィルターについて、光学シミュレーションにより、入射角θが0°のときの分光透過率、および入射角θが30°のときの分光透過率を求めた。図6に、透明基板として無色透明ガラスを用いたときの分光透過率を、図7に、透明基板として近赤外線カットガラスを用いたときの分光透過率を示す。また、図8に、無色透明ガラスに透過帯構成部のみを形成したときの分光透過率を示す。
また、表7に、近赤外線カットフィルターの分光透過率(透明基板として無色透明ガラスを用いたもの(図6))における主な数値を示す。また、表8に、透過帯構成部の分光透過率(図8)における主な数値を示す。
Figure 0006003895
Figure 0006003895
図6から明らかなように、この近赤外線カットフィルターについても、入射角度依存性が抑制されるとともに、可視域の透過帯ならびに紫外域および近赤外域の阻止帯が拡張され、また入射角度が大きくなったときのリップルの発生も抑制されることが認められる。この近赤外線カットフィルターについては、例1、すなわち第1の形態の透過帯構成部を有すると比べ、特に入射角度依存性が抑制されるために好ましい。
(例3)
近赤外線カットフィルターは、透明基板の一方の主面に光学多層膜の一部となる透過帯構成部が形成され、他方の主面に光学多層膜の一部となる阻止帯構成部が形成された構成とした。ここで、透明基板、阻止帯構成部は、例1と同様とした。
透過帯構成部は、表9に示すような構成を有する第1の形態の透過帯構成部とした。ここで、透過帯構成部は、高屈折率膜であるTiO膜をH、中屈折率膜であるTa膜をM、低屈折率膜であるSiO膜をLとしたとき、基本的に[HML]の基本単位から構成されるものである。また、層数が84層、TiO膜の平均光学膜厚Tが223.8nm、Ta膜の平均光学膜厚Tが117.5nm、SiO膜の平均光学膜厚Tが30.4nm、T/T=7.4、T/T=3.9となるものである。
Figure 0006003895
この近赤外線カットフィルターについて、光学シミュレーションにより、入射角θが0°のときの分光透過率、および入射角θが30°のときの分光透過率を求めた。図9に、透明基板として無色透明ガラスを用いたときの分光透過率を、図10に、透明基板として無近赤外線カットガラスを用いたときの分光透過率を示す。また、図11に、無色透明ガラスに透過帯構成部のみを形成したときの分光透過率を示す。
また、表10に、近赤外線カットフィルターの分光透過率(透明基板として無色透明ガラスを用いたもの(図9))における主な数値を示す。また、表11に、透過帯構成部の分光透過率(図11)における主な数値を示す。
Figure 0006003895
Figure 0006003895
図9から明らかなように、この近赤外線カットフィルターについても、入射角度依存性が抑制されるとともに、可視域の透過帯ならびに紫外域および近赤外域の阻止帯が拡張され、また入射角度が大きくなったときのリップルの発生も抑制されることが認められる。この近赤外線カットフィルターについては、例1の近赤外線カットフィルター、すなわち第1の形態の透過帯構成部を有し、この第1の形態の透過帯構成部が[LMHML]の基本単位の繰り返し構造を有するものと比べて透過帯の幅は若干狭くなるが、基本的に[HML]の基本単位から構成されるために各膜の平均光学膜厚の自由度が高いために好ましい。
(例4)
近赤外線カットフィルターは、透明基板の一方の主面に光学多層膜の一部となる透過帯構成部が形成され、他方の主面に光学多層膜の一部となる阻止帯構成部が形成された構成とした。ここで、透明基板、阻止帯構成部は、例1と同様とした。
透過帯構成部は、表12に示すような構成を有する第2の形態の透過帯構成部とした。ここで、透過帯構成部は、例2と同様、高屈折率膜であるTiO膜をH、中屈折率膜であるTa膜をMとしたとき、基本的に[HM]の基本単位から構成されるものである。また、層数が59層、TiO膜の平均光学膜厚Tが245.7nm、Ta膜の平均光学膜厚Tが137.0nm、SiO膜の平均光学膜厚Tが126.0nm、T/T=1.8となるものである。
Figure 0006003895
この近赤外線カットフィルターについて、光学シミュレーションにより、入射角θが0°のときの分光透過率、および入射角θが30°のときの分光透過率を求めた。図12に、透明基板として無色透明ガラスを用いたときの分光透過率を、図13に、透明基板として近赤外線カットガラスを用いたときの分光透過率を示す。また、図14に、無色透明ガラスに透過帯構成部のみを形成したときの分光透過率を示す。
また、表13に、近赤外線カットフィルターの分光透過率(透明基板として無色透明ガラスを用いたもの(図12))における主な数値を示す。また、表14に、透過帯構成部の分光透過率(図14)における主な数値を示す。
Figure 0006003895
Figure 0006003895
図12から明らかなように、この近赤外線カットフィルターについても、入射角度依存性が抑制されるとともに、可視域の透過帯ならびに紫外域および近赤外域の阻止帯が拡張され、また入射角度が大きくなったときのリップルの発生も抑制されることが認められる。この近赤外線カットフィルターについては、例2の近赤外線カットフィルター、すなわち同様な形態の透過帯構成部(第2の形態の透過帯構成部)を有するものに比べてT/Tが大きいために、紫外側の阻止帯の幅が広くなり、より阻止帯が明確となっている。
(例5)
透明基板としての無色透明ガラスに、例1の阻止帯構成部と同一構成の積層膜のみを有するもの(透過帯構成部なし)について、入射角θが0°、30°、40°のときの分光透過率を光学シミュレーションにより求めた。図15に結果を示す。
積層膜は、既に説明したように、1〜22層が紫外側阻止帯構成部、23〜93層が近赤外側阻止帯構成部となるものである。一般に、阻止帯構成部については、入射角度が大きくなったときに透過帯にリップルが発生しやすく、特に近赤外側の阻止帯を広くしようとした場合にリップルが発生しやすい。この阻止帯構成部、特に近赤外側阻止帯構成部によれば、例えば、T/T=0.5、T/T=0.4とすることで、近赤外側の阻止帯を広くしつつ、入射角度が大きくなったときのリップルの発生も抑制できる。
(例6)
透明基板としての無色透明ガラスに、表15に示す構成の積層膜を有するもの(阻止帯構成部なし)について、光学シミュレーションにより、入射角θが0°のときの分光透過率、および入射角θが30°のときの分光透過率を求めた。
なお、この積層膜は、基本的に第1の形態の透過帯構成部における中屈折率膜を等価膜により置き換えたものである。等価膜への置き換え前の構成は、高屈折率膜であるTiO膜をH、中屈折率膜であるTa膜をM、低屈折率膜であるSiO膜をLとしたとき、基本的にL[LMHML]^25の構成([LMHML]^25は、[LMHML]の基本単位を25単位繰り返した構成を示す)を有するものであって、TiO膜の平均光学膜厚をT、Ta膜の平均光学膜厚をT、SiO膜の平均光学膜厚をTとしたとき、T:T:T=8:4:1となるものである。なお、基本単位間に形成されるLLの重なり部分をまとめてLと見なした場合、T:T:T=8:4:2となるものである。
等価膜への置き換えは、中屈折率膜であるTa膜をTiO膜とSiO膜とで置き換え、置き換え後の構成は、層数が98層、TiO膜の平均光学膜厚Tが144.5nm、SiO膜の平均光学膜厚Tが47.3nm、T/T=3.1となるものである。図16に結果を示す。また、表16に、分光透過率における主な数値を示す。
Figure 0006003895
Figure 0006003895
透過帯構成部の中屈折率膜を等価膜に置き換えると、やや透過帯が狭くなる。これは、等価膜が特定波長の屈折率を前提に膜厚を割り振るため、屈折率の波長依存性を無視することになり、L[LMHML]^25の理想型を完全には再現できないことによる。このため最適化処理により透過帯を広げる調整を行うと、その過程で層数が減少する。それでも例1の透過帯構成部よりも層数が増え、物理膜厚が10nm程度、もしくはそれ以下のきわめて薄い膜が増え、実際の膜厚制御は非常に難しくなる。一方、入射角度依存性を抑制する効果は例1の透過帯構成部のような等価膜を有しないものと比べればやや劣るが、殆ど誤差範囲内にできる。すなわち、等価膜を用いた場合であっても、入射角度依存性の抑制を含めた殆どの特性を再現できる。
(例7)
透明基板としての無色透明ガラスに、表17〜24に示す各種の構成の積層膜を有するものについて、光学シミュレーションにより、入射角θが0°のときの分光透過率、および入射角θが30°のときの分光透過率を求めた。
なお、各積層膜は、TiO膜をH、Ta膜をM、SiO膜をLとしたとき、基本的にL[LMHML]^25の構成を有するものであって、TiO膜の平均光学膜厚T、Ta膜の平均光学膜厚T、SiO膜の平均光学膜厚Tの比率を変更したものであり、一部は第1の形態の透過帯構成部として用いられるものである。結果を図17〜24に示す。また、近赤側カット波長の透過率10%付近における波長のシフト量を表25にまとめて示す。
Figure 0006003895
Figure 0006003895
Figure 0006003895
Figure 0006003895
Figure 0006003895
Figure 0006003895
Figure 0006003895
Figure 0006003895
Figure 0006003895
、Tの比率を増やしていくと、入射角依存性が低減する。T、Tを同比率で大きくする場合、Tに対して等倍以上であれば−19nmの波長のシフト量に収まる計算となる。しかし、リップル調整等を行っていない非常に単純な構成であることから、実際には入射角度が大きくなるとPS分離が起こり、透過率が高い部分と低い部分とにおける差異は透過率が高い部分の方が大きくなり、ある程度の余裕が必要となる。従って、例1の結果も考慮し、T/T、T/Tはともに2以上が好適な数値となる。
上限については波長シフトの観点からは考慮する必要がないが、相対的にTが下がる関係で、すなわち屈折率の低いSiO膜の膜厚が低下して膜厚制御が困難となることなどから、T/T、T/Tともに5以下が好適である。なお、比率によって紫外側の阻止帯の幅が狭くなったり、透過帯の幅が若干変化するが、例1の結果も合わせて、上記範囲内が好適である。
(例8)
透明基板としての無色透明ガラスに、表26に示す各構成の積層膜を有するものについて、光学シミュレーションにより、入射角θが0°のときの分光透過率、および入射角θが30°のときの分光透過率を求めた。
なお、各積層膜は、TiO膜をH、Ta膜をM、SiO膜をLとしたとき、基本的に0.5L/[MH]^25/0.5Lの構成を有するものであって、各TiO膜、各Ta膜をそれぞれ基本的に同一の光学膜厚となるように積層し、この光学膜厚を変更して、TiO膜の平均光学膜厚T、Ta膜の平均光学膜厚Tの比率を変更したものであり、一部は第2の形態の透過帯構成部となるものである。結果を図25〜30に示す。また、近赤側カット波長の透過率50%付近におけるシフト量を表27にまとめて示す。
Figure 0006003895
Figure 0006003895
初層と最終層に設けられたSiO膜はリップル調整部として設けられたものであるが、カット波長を形成する部分に関係しないことから、波長シフトには殆ど影響しない。なお、波長シフトは近赤側カット波長の透過率50%付近のものである。この積層膜については、基本構成に低屈折率膜としてのSiO膜を有しないことから波長シフトが小さい。Tの比率を大きくした方がシフト量は小さくなるが、大きくしても小さくしても比率が大きくなりすぎると近赤外側の阻止帯が小さくなることから、層数を増やす必要がある。なお、T:TにおいてTの比率が大きい場合には、T:T=1.2:1、Tの比率が大きい場合には、T:T=1:1.5よりそれぞれの比率が大きくなると紫外側の阻止帯が明確になる。
従って、Tの比率を上げつつ、比率をある程度以上とすることが好ましいが、TとTとの比率を大きくしすぎると一方の膜厚が極端に薄くなり、例えば、近赤側の阻止帯が小さくなることにより層数を増やす必要等がある。よって、T/Tの範囲は必ずしも限定されないが、Tの比率が大きい場合には、1.2以上が好ましく、1.5以上がより好ましく、2.0以上がさらに好ましい。また、その上限値は、5.0以下が好ましく、4.0以下がより好ましい。一方、Tの比率が大きいものについては、必ずしも積極的に利用する理由はないが、十分に使用可能であり、T/Tは、0.7以下が好ましく、0.3以上が好ましい。
(例9)
透明基板としての無色透明ガラスに、表28に示す構成の積層膜を有するものについて、光学シミュレーションにより、入射角θが0°のときの分光透過率、および入射角θが30°のときの分光透過率を求めた。
なお、この積層膜は、高屈折率膜であるTiO膜をH、低屈折率膜であるSiO膜をLとしたとき、基本的に[HL]の基本単位から構成されるものであり、TiO膜の平均光学膜厚Tが109.8nm、SiO膜の平均光学膜厚Tが41.1nm、T/Tが2.7となるものであり、例えば、第2の形態の阻止帯構成部における紫外側阻止帯構成部に適用できるものである。結果を図31に示す。
Figure 0006003895
この積層膜によれば、紫外域の阻止帯が狭くなる。図示しないが、T/TにおけるTの比率を上げるとさらに紫外域の阻止帯は狭くなる。例5における1〜22層の紫外側阻止帯構成部では300〜400nmをカットできるが、この積層膜では300〜350nmのカットが不十分になる。
(例10)
透明基板の一方の主面に、表29に示すような構成の積層膜を有するものについて、光学シミュレーションにより、入射角θが0°のときの分光透過率、および入射角θが30°のときの分光透過率を求めた。
透明基板は、例1と同様の透明基板とした。積層膜は、高屈折率膜であるTiO膜をH、低屈折率膜であるSiO膜をLとしたとき、基本的に[HL]の基本単位から構成されるものであり、層数が50層、TiO膜の平均光学膜厚Tが185.8nm、SiO膜の平均光学膜厚Tが197.8nm、T/T=0.9となるものである。この積層膜については、透明基板に単独で形成した場合、本発明の近赤外線カットフィルターの比較例となるものである。図32、透明基板として無色透明ガラスを用いたときの分光透過率を、図33、透明基板として近赤外線カットガラスを用いたときの分光透過率を示す。また、表30に、分光透過率(透明基板として無色透明ガラスを用いたもの(図32))における主な数値を示す。
Figure 0006003895
Figure 0006003895
この積層膜については、透過帯および阻止帯の幅は十分に確保できるが、入射角度依存性が大きく、また透過帯におけるリップルも大きいことが認められた。
(例11)
透明基板の一方の主面に、表31に示すような構成の積層膜を有するものについて、光学シミュレーションにより、入射角θが0°のときの分光透過率、および入射角θが30°のときの分光透過率を求めた。
透明基板は、例1と同様の透明基板(無色透明ガラス)とした。積層膜は、高屈折率膜であるTiO膜をH、中屈折率膜であるTa膜をM、低屈折率膜であるSiO膜をLとしたとき、基本的に[LMHML]の基本単位から構成されるものであり、層数が96層、TiO膜の平均光学膜厚Tが81.2nm、Ta膜の平均光学膜厚Tが93.5nm、SiO膜の平均光学膜厚Tが150.4nm、T/T=0.5、T/T=0.6となるものである。図34に分光透過率を示す。また、表32に分光透過率における主な数値を示す。
Figure 0006003895
Figure 0006003895
この積層膜については、波長シフトがやや大きくなる。また、入射角θが0〜30°でのP、S分離が大きく、近赤外側にその影響が出ている。このため、透過率が50%を超える部分と超えない部分とでシフト量が異なる。
(例12)
透明基板の一方の主面に、表33に示すような構成の積層膜を有するものについて、光学シミュレーションにより、入射角θが0°のときの分光透過率、および入射角θが30°のときの分光透過率を求めた。
透明基板は、例1と同様の透明基板(無色透明ガラス)とした。積層膜は、高屈折率膜であるTiO膜をH、中屈折率膜であるTa膜をMとしたとき、基本的に[HM]の基本単位から構成するとともに、各屈折率膜を同一の光学膜厚としたものであり、層数が52層、1層目と52層目とにリップル調整膜としてのSiO膜を有し、TiO膜の平均光学膜厚Tが188.6nm、Ta膜の平均光学膜厚Tが185.2nm、SiO膜の平均光学膜厚Tが107.5nm、T/T=1となるものである。図35に分光透過率を示す。また、表34に分光透過率における主な数値を示す。
Figure 0006003895
Figure 0006003895
この積層膜については、透過帯の幅を広くでき、入射角度依存性も抑制できるが、紫外側の阻止帯が十分に現れないことが認められる。
(例13)
透明基板の一方の主面に、表35に示すような構成の積層膜を有するものについて、光学シミュレーションにより、入射角θが0°のときの分光透過率、入射角θが30°のときの分光透過率、および入射角θが40°のときの分光透過率を求めた。
透明基板は、例1と同様の透明基板とした。積層膜は、高屈折率膜であるTiO膜をH、低屈折率膜であるSiO膜をLとしたとき、基本的に[HL]の基本単位から構成したものであり、層数が44層、1〜23層目が近赤外側阻止帯構成部、23層目以降が紫外側阻止帯構成部となるものである。紫外側阻止帯構成部は、TiO膜の平均光学膜厚Tが223nm、SiO膜の平均光学膜厚Tが221.1nm、T/T=1となるものである。図36に分光透過率を示す。また、表36に分光透過率における主な数値を示す。なお、この積層膜については、例えば、第1の形態の阻止帯構成部として用いることができる。
Figure 0006003895
Figure 0006003895

この積層膜については、入射角度が大きくなったときのリップルの発生が若干大きくなるが、透過帯や阻止帯の幅をある程度広くできる。
(例14)
透明基板の一方の主面に、表37に示すような構成の積層膜を有するものについて、光学シミュレーションにより、入射角θが0°のときの分光透過率、および入射角θが30°のときの分光透過率を求めた。なお、波長シフトは近赤側カット波長の透過率10%付近で確認した。
透明基板は、例1と同様の透明基板とした。積層膜は、高屈折率膜であるTiO膜をH、低屈折率膜であるSiO膜をLとしたときに、基本的に[HL]の構成を有するものであって、各TiO膜、各SiO膜をそれぞれ基本的に同一の光学膜厚となるように積層したものであり、層数が53層、T/Tが1〜8となるものである。図37〜40に分光透過率を示す。
Figure 0006003895
高屈折率膜であるTiO膜と低屈折率膜であるSiO膜との繰り返し構造についても、TiO膜の平均光学膜厚Tを高くすることで入射角度依存性を抑制できるが、透過帯の幅を確保できない。すなわち、図37〜39は近赤外側カット波長位置を揃えているが、例えば、例7の透過帯と比較した場合、約20nm程度狭くなる。透過帯の幅は短波長側に移動させると、さらに狭くなりやすい。図40に短波長側に揃えた場合を示したが、長波長側の立ち上がりが650nm程度であり、例えば、例1の場合と比較すると、例1が695nm程度を立ち上がりとすることから、30〜40nm程度狭いことになる。
本発明によれば、入射角度依存性が抑制されるとともに、可視域の透過帯ならびに紫外域および近赤外域の阻止帯が拡張された近赤外線カットフィルターを提供できる。この近赤外線カットフィルターは、デジタルカメラやビデオカメラ等に利用されるCCDやCMOS等の固体撮像素子用として有用である。
なお、2011年9月21日に出願された日本特許出願2011−206574号の明細書、特許請求の範囲、図面および要約書の全内容をここに引用し、本発明の開示として取り入れるものである。
1…近赤外線カットフィルター、2…透明基板、3…光学多層膜、3を有する。光学多層膜3、50…撮像装置、51…固体撮像素子、52…カバーガラス、53…レンズ群、54…絞り、55…筺体

Claims (14)

  1. 透明基板と、前記透明基板の少なくとも一方の主面に設けられ、屈折率が2.0以上の屈折率が異なる2種以上の膜と屈折率が1.70以下である膜とを有する光学多層膜とを備える近赤外線カットフィルターであって、
    前記光学多層膜の垂直入射条件での分光特性は、400〜700nmの波長範囲に平均透過率が85%以上となる透過帯、ならびに前記透過帯の紫外側および近赤外側のそれぞれに平均透過率が5%以下となる阻止帯を有し、前記透過帯の紫外側の半値波長と近赤外側の半値波長との差が200nm以上であり、垂直入射条件と30°入射条件との分光特性における前記透過帯の半値波長の差は紫外側の半値波長で10nm未満、近赤外側の半値波長で20nm未満であり、前記光学多層膜は前記透過帯を構成する透過帯構成部と前記阻止帯を構成する阻止帯構成部とを有することを特徴とする近赤外線カットフィルター。
  2. 請求項1に記載の近赤外線カットフィルターにおいて、
    前記透明基板は近赤外波長域に吸収を有する材料から構成される、近赤外線カットフィルター。
  3. 請求項1または2に記載の近赤外線カットフィルターにおいて、
    前記透過帯構成部は、屈折率が2.0以上である高屈折率膜、屈折率が2.0以上であって前記高屈折率膜の屈折率未満である中屈折率膜、および屈折率が1.70以下である低屈折率膜を有し、前記高屈折率膜、前記中屈折率膜、および前記低屈折率膜の合計した層数が50層以上、前記高屈折率膜の平均光学膜厚をT、前記中屈折率膜の平均光学膜厚をT、前記低屈折率膜の平均光学膜厚をTとしたとき、T/Tが2以上、かつT/Tが2以上である近赤外線カットフィルター。
  4. 請求項3に記載の近赤外線カットフィルターにおいて、
    前記中屈折率膜は、前記高屈折率膜と同一の屈折率を有する膜と、前記低屈折率膜と同一の屈折率を有する膜とから構成される等価膜からなる近赤外線カットフィルター。
  5. 請求項1または2に記載の近赤外線カットフィルターにおいて、
    前記透過帯構成部は、屈折率が2.0以上である高屈折率膜と屈折率が2.0以上であって前記高屈折率膜の屈折率未満である中屈折率膜との繰り返し構造を有するとともに、前記透明基板側とは反対側の主面側部分に屈折率が1.7以下である低屈折率膜を有するリップル調整部を有し、前記高屈折率膜の平均光学膜厚をT、前記中屈折率膜の平均光学膜厚をTとしたとき、T/Tが1.2以上、または0.7以下、前記高屈折率膜、前記中屈折率膜、および前記低屈折率膜の合計した層数が40層以上である近赤外線カットフィルター。
  6. 請求項5に記載の近赤外線カットフィルターにおいて、
    前記中屈折率膜は、前記高屈折率膜と同一の屈折率を有する膜と、前記低屈折率膜と同一の屈折率を有する膜とから構成される等価膜からなる近赤外線カットフィルター。
  7. 請求項1乃至6のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルターにおいて、
    前記阻止帯構成部は、垂直入射条件における分光特性において、前記光学多層膜の分光特性における透過帯を含む透過帯を有するとともに、前記光学多層膜および前記透過帯構成部の分光特性における紫外側の半値波長以下の紫外側の半値波長、ならびに前記光学多層膜および前記透過帯構成部の分光特性における近赤外側の半値波長より7nm以上大きい近赤外側の半値波長を有する近赤外線カットフィルター。
  8. 請求項7に記載の近赤外線カットフィルターにおいて、
    前記阻止帯構成部は、屈折率が2以上である高屈折率膜と屈折率が1.7以下である低屈折率膜との繰り返し構造を有する近赤外線カットフィルター。
  9. 請求項7に記載の近赤外線カットフィルターにおいて、
    前記阻止帯構成部は、前記紫外側の阻止帯を構成するための紫外側阻止帯構成部と、前記近赤外側の阻止帯を構成するための近赤外側阻止帯構成部とを有し、前記紫外側阻止帯構成部は、屈折率が2以上である高屈折率膜と屈折率が1.7以下である低屈折率膜との繰り返し構造を有し、前記近赤外側阻止帯構成部は、屈折率が2.0以上である高屈折率膜、屈折率が2.0以上であって前記高屈折率膜の屈折率未満である中屈折率膜、および屈折率が1.70以下である低屈折率膜を有し、前記高屈折率膜、前記中屈折率膜、および前記低屈折率膜の合計した層数が30層以上である近赤外線カットフィルター。
  10. 請求項9に記載の近赤外線カットフィルターにおいて、
    前記近赤外側阻止帯構成部における前記中屈折率膜は、前記高屈折率膜と同一の屈折率を有する膜と、前記低屈折率膜と同一の屈折率を有する膜とから構成される等価膜からなる近赤外線カットフィルター。
  11. 請求項1乃至10のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルターにおいて、
    前記光学多層膜を構成する屈折率が2.0以上の屈折率が異なる2種以上の膜が、TiO、Ta、Nb、またはこれらの複合酸化物からなり、前記屈折率が1.70以下である膜が、SiO、MgF、またはこれらの複合酸化物からなる近赤外線カットフィルター。
  12. 請求項1乃至11のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルターにおいて、前記透過帯の紫外側の半値波長は390〜430nmの範囲にあり、前記透過帯の近赤外側の半値波長は640〜720nmの範囲にある近赤外線カットフィルター。
  13. 請求項1乃至12のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルターにおいて、前記透過帯の紫外側の半値波長と近赤外側の半値波長との差が200nm以上、300nm以下である近赤外線カットフィルター。
  14. 請求項1乃至13のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルターの製造方法であって、
    前記光学多層膜を蒸着またはスパッタリングにより形成する近赤外線カットフィルターの製造方法。
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