JP2019120942A - 近赤外線カットフィルタ - Google Patents

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Abstract

【課題】比較的少ない層数の光学多層膜を用い、高入射角の光による斜入射リップルを抑制することができる近赤外線カットフィルタの提供。【解決手段】透明基板と、前記透明基板の少なくとも一方の主面上に設けられた第1の光学多層膜とを備える近赤外線カットフィルタであって、前記第1の光学多層膜は、波長500nmにおける屈折率が1.8以上2.21以下の中屈折率膜と、波長500nmにおける屈折率が1.45以上1.49以下の低屈折率膜とが交互に積層されてなり、前記中屈折率膜と前記低屈折率膜の組み合わせ単位を5以上35以下の数で有し、前記第1の光学多層膜に0°で入射した光が透過の制限される波長範囲の中心波長が890nm以上1200nm以下であり、その波長範囲の幅が100nm以上300nm以下である近赤外線カットフィルタ。【選択図】図1

Description

本発明は、近赤外線カットフィルタに関し、特に、透明基板上に光学多層膜を有する近赤外線カットフィルタに関する。
デジタルカメラやデジタルビデオ等には、Charge Coupled Device(CCD)イメージセンサやComplementary Metal Oxide Semiconductor(CMOS)イメージセンサ等(以下、固体撮像素子と称する。)が使用される。しかしながら、これら固体撮像素子の分光特性は、人間の視感度特性に比べて赤外光に強い感度を有する。そこで、デジタルカメラやデジタルビデオ等では、近赤外線カットフィルタによる分光補正を行っている。
近年、デジタルカメラやデジタルビデオの代替としてスマートフォンが使用されるようになっており、固体撮像素子が搭載される機器筐体の厚さが薄くなっている。さらに、スマートフォンの薄型化や小型化に伴って、機器筐体の厚さはさらに薄くなる傾向である。そのため、筐体内に設けられた固体撮像素子に対して、より広角度(高入射角)から光が入射されるようになった。
前述の光学多層膜は、光の入射角度が大きくなる(光学多層膜の法線方向に対する、入射する光の角度が大きくなる)と、光の透過特性が短波長側にシフトすることが知られている。また、光学多層膜を透過した光では、高入射角の光の可視光領域の透過率が部分的に下がるという現象(以下、本明細書においては「斜入射リップル」という)も観測されていた。通常の固体撮像装置では、光の入射角度は0°から35°程度までを配慮すればよい。しかしながら、上記したような筐体の薄型化によって光の入射角度はより大きくなってきており、このような高入射角の光に対しても所望の光学特性を備えることが求められてきている。そのため、高入射角において、所望の光学特性が得られる光学フィルタが求められている。
ここで、上記した斜入射リップルにおいては、光の入射角度が大きくなるに従い、透過率の落ち込み量も大きくなるという問題があった。このような問題に対して、例えば、光の入射角度が大きい場合にも、光学多層膜による斜入射リップルを抑制する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
日本国特許第6119747号公報
しかしながら、高入射角度の光による斜入射リップルの抑制を達成する構成では、高精度で斜入射リップルを抑制するほど、光学多層膜の膜総数が多くなる傾向があり、生産性を損ない易いという課題があった。
本発明は上記した課題を解決するためになされたもので、比較的少ない層数の光学多層膜を用い、高入射角の光による斜入射リップルを抑制することができる近赤外線カットフィルタを提供することを目的とする。
本発明の近赤外線カットフィルタは、透明基板と、前記透明基板の少なくとも一方の主面上に設けられた第1の光学多層膜とを備える近赤外線カットフィルタであって、前記第1の光学多層膜は、波長500nmにおける屈折率が1.8以上2.21以下の中屈折率膜と、波長500nmにおける屈折率が1.45以上1.49以下の低屈折率膜とが交互に積層されてなり、前記中屈折率膜と前記低屈折率膜の組み合わせ単位を5以上35以下の数で有し、前記第1の光学多層膜は、0°で入射した光の透過が制限される波長範囲の中心波長が890nm以上1200nm以下であり、その波長範囲の幅が100nm以上300nm以下であることを特徴とする。
本発明の近赤外線カットフィルタにおいて、前記低屈折率膜は、酸化ケイ素、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム及びフッ化イットリウムから選ばれる1種以上の化合物、又はこれらの化合物の1種以上を含む混合物からなることが好ましく、前記中屈折率膜は、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化イットリウム、ランタンチタン酸塩、硫化亜鉛、酸化チタン、及び酸化アルミニウムから選ばれる1種以上の化合物、又はこれらの化合物の1種以上を含む混合物からなることが好ましい。
本発明の近赤外線カットフィルタは、前記透明基板の少なくとも一方の主面上に第2の光学多層膜を備え、前記第2の光学多層膜は、波長500nmにおける屈折率が2.21を超え2.8以下の高屈折率膜と、前記低屈折率膜とが互いに交互に積層されてなり、前記高屈折率膜と前記低屈折率膜の組み合わせ単位を3以上30以下の数で有し、前記第2の光学多層膜は0°で入射した光の透過が制限される波長範囲の中心波長が700nm以上890nm未満であり、その波長範囲の幅が100nm以上300nm以下であることが好ましい。
本発明の近赤外線カットフィルタにおいて、前記高屈折率膜は酸化タンタル、酸化チタン及び酸化ニオブから選ばれる1種以上の化合物又はこれらの化合物の1種以上を含む混合物からなることが好ましい。
本発明の近赤外線カットフィルタは、前記第1の光学多層膜及び第2の光学多層膜の少なくとも1種を、複数有することが好ましい。
本発明の近赤外線カットフィルタにおいて、前記透明基板は、ガラス、ガラスセラミックス、水晶、樹脂及びサファイアから選ばれる1つ以上の材料からなることが好ましい。
本発明の近赤外線カットフィルタにおいて、前記透明基板は、近赤外領域の波長の光を吸収する性質を有することが好ましい。
本発明の近赤外線カットフィルタは、0°で入射した光に対して、波長430nm〜600nmの範囲に光を透過する透過帯を有し、波長750nm〜1000nmの範囲に光の透過を制限する阻止帯を有し、前記透過帯における0°で入射した光の平均透過率と40°で入射した光の平均透過率との差(0°で入射した光の平均透過率−40°で入射した光の平均透過率)が3%以下であることが好ましい。
本発明の近赤外線カットフィルタにおいて、前記第1の光学多層膜と第2の光学多層膜の合計層数は90層以下であることが好ましい。
本明細書において、「ないし」の用語及び「〜」の符号は、その左側の数値以上右側の数値以下の範囲を表す。また、近赤外線とは、例えば波長750nm〜1300nmの範囲の光を表す。
本発明によれば、比較的少ない層数の光学多層膜を用い、高入射角の光による斜入射リップルを抑制することができる近赤外線カットフィルタを提供することができる。
図1は、実施形態に係る近赤外線カットフィルタを表す断面図である。 図2は、近赤外線カットフィルタが備える光学多層膜の断面図である。 図3は、実施例1の近赤外線カットフィルタの0°入射光及び40°入射光に対する光学特性を表すグラフである。 図4は、実施例2の近赤外線カットフィルタの0°入射光及び40°入射光に対する光学特性を表すグラフである。 図5は、実施例3の近赤外線カットフィルタの0°入射光及び40°入射光に対する光学特性を表すグラフである。 図6は、比較例の近赤外線カットフィルタの0°入射光及び40°入射光に対する光学特性を表すグラフである。
以下、図面を参照して、実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る近赤外線カットフィルタ10の断面図である。図2は、近赤外線カットフィルタ10が備える第1の光学多層膜12の断面図である。近赤外線カットフィルタ10は、近赤外線の透過を制限する。そのため近赤外線カットフィルタ10では、近赤外線の波長範囲において0°で入射した光の平均透過率が5%以下であることが好ましい。以下、図1及び図2を参照して近赤外線カットフィルタ10の構成について説明する。
図1に示すように、近赤外線カットフィルタ10は、透明基板11と、第1の光学多層膜12と、第2の光学多層膜13を備える。近赤外線カットフィルタ10は、透明基板11の一方の主面に第1の光学多層膜12を備え、第1の光学多層膜12上に第2の光学多層膜13を備えている。近赤外線カットフィルタの構成は、これに限定されず、透明基板11の一方の主面に第1の光学多層膜12を備え、他方の主面に第2の光学多層膜13を備えていてもよい。また、第1の光学多層膜12と、第2の光学多層膜13の順序についても限定されず、図1に示す近赤外線カットフィルタ10のように第1の光学多層膜12が透明基板11側に配置されてもよく、図示しないが第2の光学多層膜13が透明基板11側に配置されてもよい。
ここで、一般的に、厚さ(物理膜厚)dを有する膜の光学膜厚は、nd×cosθ(θは垂直入射を0°とした光の入射角度、nは膜の屈折率である。)で表される。上記式によれば、光学膜厚は膜への光の入射角度θに依存し、θが大きくなるほど小さくなる。ここで、光学多層膜による可視光領域の局所的な透過率減少(いわゆる斜入射リップル)の発生は、入射角が大きくなることによる光学膜厚の減少の度合いが、屈折率の異なる膜の間で相違することに起因すると考えられる。
例えば高屈折率膜Hと低屈折率膜Lとで考えると、上記したとおり、入射角度θの増大に伴って、高屈折率膜Hと低屈折率膜Lにおける光学膜厚がそれぞれcosθに比例して減少する。このとき、入射角度θの増大に伴う光学膜厚減少の影響は屈折率nが小さいほど大きいために、入射角度θが増大すると、高屈折率膜Hと低屈折率膜Lの光学膜厚の比率がθ=0°で設計した物理膜厚の比率よりも大きくずれてしまう。その結果として高屈折率膜Hと低屈折率膜Lの光学膜厚の比率ずれによる斜入射リップルが発生すると考えられる。また、斜入射リップルは、例えば入射角度0°において光学多層膜が光の透過を制限する波長範囲の中心波長の1/2の波長付近に発生することも分かった。
さらに、入射角度θの増大による光学多層膜の光の透過特性の短波長側へのシフトと同程度で、斜入射リップルの発生領域も入射角度θの増大によって、入射角度0°(垂直入射)における斜入射リップル発生領域から、短波長側にシフトすることが分かった。このような知見に基づいて、実施形態の近赤外線カットフィルタは、第1の光学多層膜12と第2の光学多層膜13について以下に説明する構成を採用した。
第1の光学多層膜12は、可視光領域の概ね波長440nm〜650nm、好ましくは500nm〜560nm(G領域)における斜入射リップルの透過率の落ち込み量を低減する構成である。そのため、0°で入射した光が透過を制限される波長範囲(以下、「阻止帯」と表す。)の中心波長は、第1の光学多層膜12においては890nm〜1200nmである。
第1の光学多層膜12で構成される阻止帯は、幅が100nm〜300nmである。阻止帯の幅は、100nm未満であると、近赤外線カットフィルタの阻止帯を構成するための別の光学多層膜を多数設ける必要が生じ、近赤外線カットフィルタを製作する際のコストが高くなるおそれがある。阻止帯の幅が300nm超であると、光学多層膜の設計的には有利となる。しかしながら、第1の光学多層膜12の中屈折率膜Mと低屈折率膜Lとが交互に積層された構成は、2種の膜の屈折率差が小さいことから本質的に阻止帯は大きくなりにくい。そのため、単一の第1の光学多層膜12で300nmを超える阻止帯を構成すべく設計すると、所望の屈折率の中屈折率膜M、低屈折率膜Lでは設計的に困難である。
なお、近赤外線カットフィルタが複数の第1の光学多層膜12を有する場合、それら複数の第1の光学多層膜12の各々が形成する阻止帯の幅及び中心波長が全て前述の範囲である。すなわち、赤外領域に300nmを超える阻止帯をもつ近赤外線カットフィルタとする場合、各々阻止帯の幅が100nm〜300nmであり、中心波長が相違する複数の第1の光学多層膜12により近赤外線カットフィルタ10の阻止帯を構成することが好ましい。
ここで、阻止帯は、上記したように0°で入射した光の平均透過率が5%以下となる波長領域であることが好ましい。阻止帯における平均透過率が5%以下であることで、本実施形態の近赤外線カットフィルタを固体撮像素子に用いた場合に自然な色調の撮像画像を得易い。なお、近赤外線カットフィルタ10において、第1の光学多層膜12の阻止帯の中心波長及び阻止帯の幅は以下のように測定することができる。後述する第2の光学多層膜13においても同様である。
阻止帯の中心波長は、阻止帯を構成する光学多層膜の各層の光学的膜厚の中心波長の平均値として算出されるものをいう。中心波長λの阻止帯を持つ光学多層膜(異なる屈折率の光学膜の繰り返し構成)は、d=λ/(4×n)cosθの数式で表される。ここで、dは物理膜厚、nは膜の屈折率、θは光の入射角度をいう。前述のとおり、斜入射リップルは、入射角度0°において光学多層膜が光の透過を制限する波長範囲の中心波長の1/2の波長付近に発生するが、これは膜の屈折率が一定であることを前提としている。しかしながら、実際は膜の屈折率は波長により変化する(波長依存性がある)。具体的には、膜の屈折率は、光の波長が短い場合の方が、高い場合と比べて大きい。そのため、斜入射リップルは、入射角度0°において光学多層膜が光の透過を制限する波長範囲の中心波長の1/2の波長よりもやや長波長側に発生する。
このような技術的な背景があるため、光学多層膜の阻止帯の中心波長は光の光学特性からのみ算出するのではなく、上記数式を用い、膜の物理膜厚と屈折率により算出する。また、阻止帯の幅は、第1の光学多層膜12もしくは第2の光学多層膜13のそれぞれの光学特性において、0°で入射した光の透過率が30%となる最大波長と最短波長との差をいうものである。
上記阻止帯を実現するために、第1の光学多層膜12は、波長500nmにおける屈折率が1.8〜2.21の中屈折率膜Mと、波長500nmにおける屈折率が1.45〜1.49の低屈折率膜Lとが交互に積層された構造である。そして、第1の光学多層膜12は、中屈折率膜Mと低屈折率膜Lの組み合わせ単位を1又は複数有する。このような構成の光学多層膜を、中屈折率膜をM、低屈折率膜をL、これらの組み合わせ単位をML、組み合わせ単位の繰り返し数をkとして、[ML]^で表す。繰り返し数kは、5〜35が好ましい。中屈折率膜Mと低屈折率膜Lの組み合わせ単位(ML)の繰り返し数kが35より多いと、所定の波長範囲における透過率を低くすることができるが、多すぎると生産性を損なうことがある。また、繰り返し数kが5未満であると、十分に透過率が低い阻止帯を形成することが難しい。また、そのためkは5〜34であることが好ましく、5〜33であることがより好ましい。
ここで、第1の光学多層膜12を構成する中屈折率膜Mの波長500nmにおける屈折率を1.8〜2.21とした理由について説明する。0°で入射した光の阻止帯の中心波長が940nmである、(ML)^の構造の光学多層膜の光学特性をシミュレーションソフト(TF−Calc)にて検証した。ここで、中屈折率膜Mは波長500nmにおける屈折率が1.8、2.0、2.21、2.3、2.5の5種類について、低屈折率膜Lは波長500nmにおける屈折率を1.48とし、kは15として検証した。つまり、上記検証によって、中屈折率膜Mの屈折率を相違させた場合の光学特性の変化(特に斜入射リップル発生)を確認した。その結果、上記光学多層膜に50°で入射した光の、波長400〜450nmにおける最小透過率は、中屈折率膜Mの屈折率1.8では87.5%、屈折率2.0では71.9%、2.21では52.1%、屈折率2.3では41.6%、屈折率2.5では28.3%であった。これらより、中屈折率膜の屈折率と波長400〜450nmにおける最小透過率とは相関があり、この最小透過率が屈折率2.5(高屈折率膜に相当)の場合と比較し、光量減少率(100−最小透過率)が67%以下になる屈折率2.21を第1の光学多層膜12の中屈折率膜Mの屈折率の上限とした。また、屈折率が1.8の場合は、最小透過率が高いものの、屈折率が1.8未満となると阻止帯の幅が狭くなることから、屈折率1.8を第1の光学多層膜12の中屈折率膜Mの屈折率の下限とした。
第1の光学多層膜12は、低屈折率膜Lと中屈折率膜Mの屈折率が上記した範囲であることで、G領域における斜入射リップルを抑制することができる。斜入射リップルを抑制する点で、第1の光学多層膜12を構成する中屈折率膜Mの屈折率は1.9〜2.1が好ましく、2.0程度がもっとも好ましい。
低屈折率膜Lは、波長500nmにおける屈折率が1.45〜1.49となる材料からなるものであれば特に限定されない。このような低屈折率膜Lの材料としては、酸化ケイ素(SiO等)、フッ化マグネシウム(MgF等)、フッ化カルシウム(CaF等)、フッ化イットリウム(YF等)等を使用することができる。これらの化合物は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、低屈折率膜Lの材料として、これらの化合物の1種以上を含む混合物を使用してもよい。このような混合物としては、上記化合物とその他の金属酸化物の混合物、例えば、酸化ケイ素と酸化アルミニウムの混合物などである。この場合の混合物は、2種以上の金属酸化物の混合物であってもよく、2種以上の金属の複合酸化物であってもよい。例えば、酸化ケイ素と酸化アルミニウムの混合物は、SiとAlの任意の比率の混合酸化物であってもよく、酸化ケイ素と酸化アルミニウムの任意の比率の混合物であってもよい。また、低屈折率膜Lは、屈折率が1.45〜1.49であれば、添加物を含有していても構わない。
中屈折率膜Mは、波長500nmにおける屈折率が1.8〜2.21となる材料からなるものであれば特に限定されない。このような中屈折率の材料としては、酸化ジルコニウム(ZrO等)、酸化タンタル(Ta等)、酸化イットリウム(Y等)、ランタンチタン酸塩(LaTi等)、硫化亜鉛(ZnS等)、酸化チタン(Ti、Ti、TiO、TiO等)、酸化アルミニウム(Al等)等を使用することができる。これらの化合物は1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、中屈折率膜Mの材料として、これらの化合物の1種以上を含む混合物を使用してもよい。このような混合物としては、上記化合物とその他の金属酸化物の混合物、例えば、酸化ジルコニウムと酸化タンタルの混合物、酸化ジルコニウムと酸化チタンの混合物等である。この場合の混合物は、2種以上の金属酸化物の混合物であってもよく、2種以上の金属の複合酸化物であってもよい。例えば、酸化ジルコニウムと酸化タンタルの混合物は、ZrとTaの任意の比率の混合酸化物であってもよく、酸化ジルコニウムと酸化タンタルの任意の比率の混合物であってもよい。また、酸化ジルコニウムと酸化チタンの混合物も同様に、ZrとTiの任意の比率の混合酸化物であってもよく、酸化ジルコニウムと酸化チタンの任意の比率の混合物であってもよい。中屈折率膜Mは、屈折率が1.8〜2.21であれば、添加物を含有していても構わない。
第1の光学多層膜12において、もっとも透明基板11側に配置される膜は、中屈折率膜M又は低屈折率膜Lのいずれであってもよい。
第1の光学多層膜12を構成する中屈折率膜M及び低屈折率膜Lの一層あたりの物理膜厚は、基本的にはそれぞれの膜の屈折率と第1の光学多層膜12の中心波長により決定され、さらに波形調整などの目的で適宜調整されるものであり、中屈折率膜M及び低屈折率膜Lの全合計物理膜厚(第1の光学多層膜12の物理膜厚)は、例えば、1μm〜20μmである。第1の光学多層膜12を構成する中屈折率膜M及び低屈折率膜Lの合計層数は、近赤外線カットフィルタの生産性を高くする観点から、70層以下が好ましく、より好ましくは50層以下であり、特に好ましくは10〜45層である。なお、第1の光学多層膜12を構成する複数の中屈折率膜M及び低屈折率膜Lは、物理膜厚及び屈折率がいずれも互いに異なっていてもよく同一であってもよい。また、中屈折率膜Mは、等価膜にて構成してもよい。等価膜は、具体的には、高屈折率膜Hと低屈折率膜Lとを交互に積層して、中屈折率膜Mの屈折率の範囲に構成された膜である。例えば、1つの中屈折率膜Mを高屈折率膜H/低屈折率膜L/高屈折率膜Hの3層構成に置き換えることができる。
第2の光学多層膜13は、可視光領域の概ね波長400nm〜500nm、好ましくは440nm〜480nm(B領域)における斜入射リップルの発生を抑制する構成である。そのため、第2の光学多層膜13の阻止帯の中心波長は700nm以上890nm未満である。
また、第2の光学多層膜13は、阻止帯の幅が100nm〜300nmである。阻止帯の幅は、小さすぎると、近赤外線カットフィルタの阻止帯を構成するための別の光学多層膜を設ける必要が生じ、近赤外線カットフィルタを製作する際のコストが高くなるおそれがある。また、阻止帯の幅は、大きすぎると、製造上使用できる高屈折率膜H、低屈折率膜Lの選択肢がほぼないおそれがある。
上記阻止帯を実現するために、第2の光学多層膜13は、波長500nmにおける屈折率が2.21を超え2.8以下の高屈折率膜Hと、低屈折率膜Lとが交互に積層された構造である。そして、高屈折率膜Hと低屈折率膜Lの組み合わせ単位(HL)を1又は複数有する。このような構成の光学多層膜を、高屈折率膜をH、低屈折率膜をL、これらの組み合わせ単位をHL、組み合わせ単位の繰り返し数をmとして、[HL]^で表す。繰り返し数mは、3〜30が好ましい。高屈折率膜Hと低屈折率膜Lの組み合わせ単位(HL)の繰り返し数mが30より多いと、所定の波長範囲における透過率を低くすることができるが、生産性を損なうことがある。また、繰り返し数mが3未満であると、十分に透過率が低い阻止帯を形成することが難しい。そのため、mは、3〜29であることが好ましく、3〜28であることがより好ましい。
屈折率の差が比較的大きい高屈折率膜Hと低屈折率膜Lの組み合わせでは、斜入射リップル値が大きくなり易い傾向である。そこで、第2の光学多層膜13の阻止帯の中心波長及び幅を上記した範囲にすることで、第2の光学多層膜13に起因する斜入射リップルを可視光領域の短波長側(例えば、波長400nm以上440nm未満の範囲)、あるいは可視光領域よりも短波長側(例えば、波長400nm未満の範囲)にシフトさせる。そのために、可視光領域内での斜入射リップルを抑制することができる。なお、近赤外線カットフィルタが複数の第2の光学多層膜13を有する場合、それら複数の第2の光学多層膜13の各々が形成する阻止帯の幅及び中心波長が全て前述の範囲である。
高屈折率膜Hは、波長500nmにおける屈折率が2.21を超え2.8以下となる材料からなるものであれば特に限定されない。このような高屈折率膜Hの材料としては、酸化タンタル(Ta等)、酸化チタン(Ti、Ti、TiO、TiO等)、酸化ニオブ(Nb等)などを使用することができる。高屈折率膜Hの材料として、これらの化合物の1種以上を含む混合物を使用してもよい。また、高屈折率膜Hは、上記した1種の材料のみからなってもよく、2種以上の材料で構成されてもよい。また、屈折率が2.21を超え2.8以下であれば、添加物を含有していても構わない。
ここで、酸化タンタルや酸化チタンは、成膜条件や成膜方法などを適宜調整することにより、得られた膜の波長500nmにおける屈折率を1.8〜2.21とすることも、2.21を超え2.8以下とすることもできる
第2の光学多層膜13において、もっとも透明基板11側に配置される膜は、高屈折率膜H又は低屈折率膜Lのいずれであってもよい。
第2の光学多層膜13を構成する高屈折率膜H及び低屈折率膜Lの一層あたりの物理膜厚は、基本的にはそれぞれの膜の屈折率と第2の光学多層膜13の中心波長にてより決定され、さらに波形調整などの目的で適宜調整されるものであり、高屈折率膜H及び低屈折率膜Lの全合計物理膜厚(第2の光学多層膜13の物理膜厚)は、例えば、2μm〜10μmである。第2の光学多層膜13の物理膜厚は近赤外線カットフィルタの薄型化の観点から薄い方が好ましい。第2の光学多層膜13を構成する高屈折率膜H及び低屈折率膜Lの合計層数は、近赤外線カットフィルタの生産性を高くする観点から、60層以下が好ましく、より好ましくは50層以下であり、特に好ましくは6〜45層である。なお、第2の光学多層膜13を構成する複数の高屈折率膜H及び低屈折率膜Lは物理膜厚及び屈折率がいずれも互いに異なっていてもよく同一であってもよい。
また、透明基板11の両表面に第1の光学多層膜12と第2の光学多層膜13がそれぞれ配置される場合、両表面の第1の光学多層膜12の合計物理膜厚と第2の光学多層膜13の合計物理膜厚は互いにできるだけ近いほうが好ましい。近赤外線カットフィルタの薄型化のために、透明基板11が極めて薄くされる場合、透明基板11の両表面の第1の光学多層膜12及び第2の光学多層膜13の物理膜厚が大きく異なると、近赤外線カットフィルタ10に、物理膜厚の小さい光学多層膜光学多層膜側が凸状となる反りが生じることがあるためである。
近赤外線カットフィルタ10の生産性を高くする観点から、第1の光学多層膜12と第2の光学多層膜13の合計層数は90層以下であることが好ましく、60層以上85層以下であることがより好ましい。
近赤外線カットフィルタ10は、第1の光学多層膜12、第2の光学多層膜13をそれぞれ複数有していてもよい。特に、第1の光学多層膜12を2つ以上有することが好ましい。上記したとおり、第1の光学多層膜12は、阻止帯の幅が比較的狭いが、近赤外線カットフィルタ10が第1の光学多層膜12を複数備えることで、より広範な波長範囲の光の透過を制限することができる。
さらに、第1の光学多層膜12、第2の光学多層膜13をそれぞれ複数有する場合、本発明者が過去に特許出願した日本国特許第567063号公報に記載したとおり、各々の光学多層膜が相違する中心波長をもつ阻止帯を構成することで、より高い可視波長域の斜入射リップルの抑制効果が得られるため特に好ましい。
なお、近赤外線カットフィルタ10は、複数の第1の光学多層膜12を有する場合、これら複数の第1の光学多層膜12は、それぞれ透明基板11の同一の主面上にあってもよく、異なる主面上にあってもよい。
第1の光学多層膜12及び第2の光学多層膜13を構成する高屈折率膜H、中屈折率膜M、低屈折率膜Lは、例えばスパッタリング法、真空蒸着法、イオンビーム法、イオンプレーティング法、CVD法により形成することができるが、特に、スパッタリング法、真空蒸着法により形成することが好ましい。透過帯は、CCD、CMOS等の固体撮像素子の受光に利用される波長帯域であり、その物理膜厚の精度が重要となる。スパッタリング法、真空蒸着法は、薄膜を形成する際の物理膜厚制御に優れる。このため、第1の光学多層膜12及び第2の光学多層膜13を構成する高屈折率膜H、中屈折率膜M、低屈折率膜Lの物理膜厚の精度を高めることができ、その結果、斜入射リップルを抑制することができる。
なお、付着力強化層、最表面層(空気側)での帯電防止層など、光学多層膜を構成する層以外の層が、第1の光学多層膜12及び第2の光学多層膜13に含まれていてもよい。また、第1の光学多層膜12及び第2の光学多層膜13の他に、調整層を備えてもよい。調整層は、第1の光学多層膜12及び第2の光学多層膜13と透明基板11との間、もしくは、第1の光学多層膜12及び第2の光学多層膜13よりも空気側、もしくは第1の光学多層膜12と第2の光学多層膜13との間に適宜設けられるものである。調整層は、異なる屈折率を積層することにより生じる、光学特性(透過率)の周期的増減(リップルと称する)を抑制するものである。このリップルは、前述の斜入射リップルとは明確に相違し、光の斜入射による角度依存性を持つものではない。調整層を用いることで、斜入射リップルに起因するものを除き、近赤外線カットフィルタにおける光学特性の透過帯をより平坦にすることができる。
透明基板11は、少なくとも可視波長域の光を透過できるものであれば特に限定されない。透明基板11の材料として、例えば、ガラス、ガラスセラミックス、水晶、ニオブ酸リチウム、サファイア等の結晶、樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等)等が挙げられる。また、透明基板11としては上記したうちの2種以上の材料からなる複合体であってもよい。
透明基板11としては、特に、近赤外波長域の光を吸収するものが好ましい。近赤外波長域の光を吸収する透明基板11を用いることで、人間の視感度特性に近い画質を得ることができるためである。なお、近赤外波長域の光を吸収する透明基板11としては、例えば、フツリン酸塩系ガラスやリン酸塩系ガラスにCu2+(イオン)が添加されたCuO含有フツリン酸塩ガラス又はCuO含有リン酸塩ガラス(以下、これらをまとめて「CuO含有ガラス」ともいう。)が挙げられる。
また、近赤外波長域の光を吸収する透明基板11としては、透明樹脂を形成する樹脂材料中に近赤外線を吸収する吸収剤を添加したものを使用してもよい。吸収剤としては、例えば、染料、顔料、金属錯体系化合物が挙げられ、具体的には、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ジチオール金属錯体系化合物が挙げられる。
また、近赤外線カットフィルタ10の近赤外光の吸収性能を高めるために、透明基板11の表面に、上記近赤外線吸収基板と同様の材料を用いて、近赤外線吸収色素及び透明樹脂を含む近赤外線吸収層を形成してもよい。この場合、近赤外線吸収層は、透明基板11と、第1の光学多層膜12の間、又は透明基板11と第2の光学多層膜13の間に形成される。また、近赤外線吸収層は透明基板11の少なくとも一方の主面に形成されてもよく、両方の主面に形成されてもよい。
近赤外線カットフィルタ10は、波長430nm〜600nmの領域に透過帯を有し、波長750nm〜1000nmの領域に阻止帯を有することが好ましい。さらに、近赤外線カットフィルタ10の透過帯における光の0°入射した光(0°入射時)の平均透過率と40°で入射した光(40°入射時)の平均透過率との差(0°入射光の平均透過率−40°入射光の平均透過率)が3%以下であることが好ましい。上記平均透過率の差が3%以下であることで、高入射角の光を透過した場合と0°入射の光を透過した場合とでの光学特性の相違を小さくすることができ、例えば、固体撮像素子にて所望の色表現の撮像画像を得ることが可能となる。なお、透過帯とは、0°で入射した光の平均透過率が85%以上となる波長領域をいう。
また、近赤外線カットフィルタ10は、透過帯における光の0°入射時の透過率の最小値と40°入射時の透過率の最小値との差(0°入射時の最小透過率−40°入射時の最小透過率)が5%以下であることが好ましい。これにより、高入射角で光が入射した場合の斜入射リップルの発生を著しく抑制することができる。
入射角度θで入射した光の平均透過率及び最小透過率は、例えば、近赤外線カットフィルタ10の分光透過率を、分光光度計を用いて測定して算出することができる。具体的には、平均透過率は、所定の波長範囲での透過率の測定値の相加平均として算出することができる。また、最小透過率は所定の波長範囲の透過率の最小値として測定することができる。
以上説明した実施形態の近赤外線カットフィルタによれば、比較的少ない光学多層膜の層数で高入射角の光による斜入射リップルを抑制することができる。
次に実施例を参照して具体的に説明する。なお、以下に述べる各物質の屈折率は、波長500nmにおける屈折率をいうものである。
(実施例1)
本実施例に係る近赤外線カットフィルタは、透明基板(近赤外線吸収ガラス、板厚0.3mm、商品名:NF−50、AGCテクノグラス社製)と、透明基板の一方の面に設けられた光学多層膜とを備える。この光学多層膜は、上記透明基板表面側から、[ML]^k1の構造の光学多層膜と[HL]^m1の構造の光学多層膜を順に積層した構造である。また、透明基板の他方の面に、[HL]^m2からなる光学多層膜(反射防止膜)を備える。なお、上記透明基板表面側から第1層、第2層、第57層〜第60層は、[ML]^k1の構造の膜と[HL]^m1の構造の膜のいずれにも属さない調整層である。
各光学多層膜が形成する阻止帯の中心波長は、各層の阻止帯の中心波長の平均値である。
各光学多層膜が形成する阻止帯の幅は、透過率が30%となる最大波長と最小波長との差である。
[ML]^k1は、中屈折率膜Mが酸化ジルコニウム(ZrO、屈折率:2.058)、低屈折率膜Lが酸化珪素(SiO、屈折率:1.483)であり、k1が18、合計36層の繰り返し積層構造である。[ML]^k1の阻止帯の中心波長は1038.6nmであり、阻止帯の幅は100nm〜300nmの範囲内である。
[HL]^m1は、高屈折率膜Hが酸化タンタル(Ta、屈折率:2.211)、低屈折率膜Lが酸化珪素(SiO、屈折率:1.483)からなる、m1が9、合計18層の繰り返し積層構造である。[HL]^m1の阻止帯の中心波長は815.7nmであり、阻止帯の幅は100nm〜300nmの範囲内である。
他方の面に設けられた光学多層膜([HL]^m2)は、高屈折率膜Hが酸化チタン(TiO、屈折率:2.467)、低屈折率膜Lが酸化珪素(SiO、屈折率:1.483)からなる、m2が3で、合計6層の繰り返し積層構造である。
上記の近赤外線カットフィルタの透明基板の一方の面に設けられた光学多層膜([ML]^k1と[HL]^m1)の構成を表1に示す。また、近赤外線カットフィルタの透明基板の他方の面に設けられた光学多層膜([HL]^m2)の構成を表2に示す。表1および表2において、膜層数は透明基板側からの層の序数であり、膜厚は物理膜厚を示す。また、λ=4×nd×cosθ(λ:中心波長、n:屈折率、d:物理膜厚、θ:光の入射角度)の式を用いて、各層の中心波長を算出した。
この近赤外線カットフィルタについて、光学多層膜([ML]^k1と[HL]^m1)側から入射した光の、入射角0°及び40°における光学特性を、光学薄膜シミュレーションソフト(TFCalc、Software Spectra社製)を用いて検証した。結果を図3に示す。
Figure 2019120942
Figure 2019120942
なお、図3より、本実施例の近赤外線カットフィルタは、0°で入射した光に対して、430〜600nmの波長範囲に平均透過率が85%以上となる透過帯と、透過帯の近赤外側に、750〜1000nmの波長範囲において平均透過率が5%以下の領域の阻止帯とを有すると算出される。
(実施例2)
本実施例に係る近赤外線カットフィルタは、実施例1にて用いたものと同様の透明基板と、透明基板の一方の面に設けられた光学多層膜とを備える。光学多層膜は、上記透明基板表面側から、[ML]^k2の構造の膜と[HL]^m3の構造の膜を順に積層した構造である。なお、上記透明基板表面側から第1層、第2層、第57層、第58層は、[ML]^k2の構造の膜と[HL]^m3の構造の膜のいずれにも属さない調整層である。上記の近赤外線カットフィルタの透明基板の一方の面に設けられた光学多層膜の構成を表3に示す。また、透明基板の他方の面には実施例1にて用いたものと同様の光学多層膜([HL]^m2からなる反射防止膜)を備える。この近赤外線カットフィルタについて、光学多層膜([ML]^k2と[[HL]^m3)側から入射した光の、入射角0°、40°における光学特性を、光学薄膜シミュレーションソフト(TFCalc、Software Spectra社製)を用いて検証によって測定した。結果をそれぞれ図4に示す。
[ML]^k2は、中屈折率膜Mが酸化ジルコニウム(ZrO、屈折率:2.058)、低屈折率膜Lが酸化珪素(SiO、屈折率:1.483)であり、k2が19、合計38層の繰り返し積層構造である。[ML]^k2の阻止帯の中心波長は1064.3nmであり、阻止帯の幅は100nm〜300nmの範囲内である。
[HL]^m3は、高屈折率膜Hが酸化チタン(TiO、屈折率:2.467)、低屈折率膜Lが酸化珪素(SiO、屈折率:1.483)からなる、m3が8、合計16層の繰り返し積層構造である。[HL]^m3の阻止帯の中心波長は800.1nmであり、阻止帯の幅は100nm〜300nmの範囲内である。
Figure 2019120942
なお、図4より、本実施例の近赤外線カットフィルタは、0°で入射した光に対して、430〜600nmの波長範囲に平均透過率が85%以上となる透過帯と、透過帯の近赤外側に、750〜1000nmの波長範囲において平均透過率が5%以下の領域の阻止帯とを有すると算出される。
(実施例3)
本実施例に係る近赤外線カットフィルタは、実施例1にて用いたものと同様の透明基板と、透明基板の一方の面に[HL]^m4の構造の光学多層膜と、その上に紫外線カットフィルタを備える。なお、上記透明基板の一方の面における基板表面側から第1層〜第6層は、[HL]^m4の構造の膜に属さない調整層である。また、他方の面に[ML]^k3の構造の光学多層膜を備える。なお、上記透明基板の他方の面における基板表面側から第1層〜第6層、第43層〜第46層は、[ML]^k3の構造の膜に属さない調整層である。上記の近赤外線カットフィルタの透明基板の一方の面に設けられた光学多層膜([HL]^m4)の構成を表4に、他方の面に設けられた光学多層膜([ML]^k3)の構成を表5に示す。この近赤外線カットフィルタについて、光学多層膜([HL]^m4)側から入射した光の、入射角0°、40°における光学特性を、光学薄膜シミュレーションソフト(TFCalc、Software Spectra社製)を用いて検証によって測定した。結果をそれぞれ図5に示す。
[HL]^m4は、高屈折率膜Hが酸化チタン(TiO、屈折率:2.467)、低屈折率膜Lが酸化珪素(SiO、屈折率:1.483)からなる、m4が8、合計16層の繰り返し積層構造である。[HL]^m4の阻止帯の中心波長は795.3nmであり、阻止帯の幅は255nmである。なお、紫外線カットフィルタの阻止帯の中心波長は、330.6nmである。
[ML]^k3は、中屈折率膜Mが酸化ジルコニウム(ZrO、屈折率:2.058)、低屈折率膜Lが酸化珪素(SiO、屈折率:1.483)であり、k3が18、合計36層の繰り返し積層構造である。[ML]^k3の阻止帯の中心波長は1039.7nmであり、阻止帯の幅は100nm〜300nmの範囲内である。
Figure 2019120942
Figure 2019120942
なお、図5より、本実施例の近赤外線カットフィルタは、0°で入射した光に対して、430〜600nmの波長範囲に平均透過率が85%以上となる透過帯と、透過帯の近赤外側に、750〜1000nmの波長範囲において平均透過率が5%以下の領域の阻止帯とを有すると算出される。
(比較例)
比較例に係る近赤外線カットフィルタは、実施例1にて用いたものと同様の透明基板と、透明基板の一方の面に[HL]^の構造の光学多層膜、他方の面に[HL]^の構造の光学多層膜(反射防止膜)を備える。両面の光学多層膜は、それぞれ、膜を構成する高屈折率膜Hと低屈折率膜Lの材料が同じで膜総数が異なる。上記の近赤外線カットフィルタの透明基板の一方の面に設けられた光学多層膜の構成を表6に、他方の面に設けられた光学多層膜の構成を表7に示す。この近赤外線カットフィルタについて、光学多層膜([HL]^)側から入射した光の、入射角0°及び40°における光学特性を、光学薄膜シミュレーションソフト(TFCalc、Software Spectra社製)を用いて検証によって測定した。結果をそれぞれ図6に示す。
[HL]^は、高屈折率膜Hが酸化チタン(TiO、屈折率:2.467)、低屈折率膜Lが酸化珪素(SiO、屈折率:1.483)からなる、xが19、合計38層の繰り返し積層構造である。
[HL]^は、zが3、合計6層の繰り返し積層構造である。
Figure 2019120942
Figure 2019120942
実施例1〜3及び比較例の近赤外線カットフィルタの光学特性を表8に示す。光学特性としては、波長430nm〜600nmにおける光の0°入射時の平均透過率と40°入射時の平均透過率との差(0°入射時の平均透過率−40°入射時の平均透過率)、波長430nm〜600nmにおける光の0°入射時の最小透過率と40°入射時の最小透過率との差(0°入射時の最小透過率−40°入射時の最小透過率)である。
Figure 2019120942
表8に示されるように、本実施例の近赤外線カットフィルタは、比較例の近赤外線カットフィルタに比べて、可視光透過帯において0°入射光と40°入射光との平均透過率の差が極めて少なく、比較的少ない層数の光学多層膜を用い、高入射角の光による斜入射リップルを抑制できることがわかる。
本発明を詳細に、また特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく、様々な変更や修正を加えることができることは、当業者にとって明らかである。
本出願は、2017年12月28日出願の日本特許出願2017−253468に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
10…近赤外線カットフィルタ、11…透明基板、12…第1の光学多層膜、13…第2の光学多層膜、L…低屈折率膜、M…中屈折率膜。

Claims (9)

  1. 透明基板と、前記透明基板の少なくとも一方の主面上に設けられた第1の光学多層膜とを備える近赤外線カットフィルタであって、
    前記第1の光学多層膜は、
    波長500nmにおける屈折率が1.8以上2.21以下の中屈折率膜と、波長500nmにおける屈折率が1.45以上1.49以下の低屈折率膜とが交互に積層されてなり、
    前記中屈折率膜と前記低屈折率膜の組み合わせ単位を5以上35以下の数で有し、
    前記第1の光学多層膜は、0°で入射した光の透過が制限される波長範囲の中心波長が890nm以上1200nm以下であり、その波長範囲の幅が100nm以上300nm以下であることを特徴とする近赤外線カットフィルタ。
  2. 前記低屈折率膜は、酸化ケイ素、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム及びフッ化イットリウムから選ばれる1種以上の化合物、又はこれらの化合物の1種以上を含む混合物からなり、前記中屈折率膜は、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化イットリウム、ランタンチタン酸塩、硫化亜鉛、酸化チタン及び酸化アルミニウムから選ばれる1種以上の化合物、又はこれらの化合物の1種以上を含む混合物からなる請求項1に記載の近赤外線カットフィルタ。
  3. 前記透明基板の少なくとも一方の主面上に第2の光学多層膜を備え、
    前記第2の光学多層膜は、波長500nmにおける屈折率が2.21を超え2.8以下の高屈折率膜と、前記低屈折率膜とが互いに交互に積層されてなり、
    前記高屈折率膜と前記低屈折率膜の組み合わせ単位を3以上30以下の数で有し、
    前記第2の光学多層膜は、0°で入射した光の透過が制限される波長範囲の中心波長が700nm以上890nm未満であり、その波長範囲の幅が100nm以上300nm以下である請求項1又は2に記載の近赤外線カットフィルタ。
  4. 前記高屈折率膜は酸化タンタル、酸化チタン及び酸化ニオブから選ばれる1種以上の化合物、又はこれらの化合物の1種以上を含む混合物からなる請求項3に記載の近赤外線カットフィルタ。
  5. 前記第1の光学多層膜及び第2の光学多層膜の少なくとも1種を、複数有する請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタ。
  6. 前記透明基板は、ガラス、ガラスセラミックス、水晶、樹脂及びサファイアから選ばれる1つ以上の材料からなる請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタ。
  7. 前記透明基板は、近赤外領域の波長の光を吸収する性質を有する請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタ。
  8. 前記近赤外線カットフィルタは、0°で入射した光に対して、波長430nm〜600nmの範囲に光を透過する透過帯を有し、波長750nm〜1000nmの範囲に光の透過を制限する阻止帯を有し、
    前記透過帯における0°で入射した光の平均透過率と40°で入射した光の平均透過率との差(0°で入射した光の平均透過率−40°で入射した光の平均透過率)が3%以下である請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の近赤外線カットフィルタ。
  9. 前記第1の光学多層膜と第2の光学多層膜の合計層数は90層以下である請求項3又は請求項4に記載の近赤外線カットフィルタ。
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