次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、本発明のブレーキ装置の一実施形態を体現するクラッチユニット1は、シートの一例としての各種乗物用シート(ここでは、車両用シートS)のシートクッションS1の高さを調整するための公知のハイトアジャスト機構に適用されるものである。クラッチユニット1は、操作入力部材50にレバー75が取り付けられ、レバー75の操作により、後述するシャフト30を回転させてハイトアジャスト機構を駆動してシートクッションS1の高さを調整可能である。具体的には、レバー75を中立位置Nから上げると、シートクッションS1が所定量上がり、レバー75を中立位置Nから下げると、シートクッションS1が所定量下がるようになっている。なお、レバー75を、上または下の位置から中立位置Nに戻すときには、シャフト30が回転しないようになっている。
図2〜図4に示すように、クラッチユニット1(ブレーキ装置)は、筐体100に各部材が収納されて構成されている。なお、筐体100は、外輪10、ベースプレート85およびカバー部材60の組合せにより構成されている。また、以下の説明では、カバー部材60および操作入力部材50が配置される図2、図4の左側を「入力側」と称し、出力ギヤ35が配置される図2、図4の右側を「出力側」と称する。
クラッチユニット1は、ラチェット装置2と、ブレーキ機構3とを備えてなる。ラチェット装置2は、入力側に設けられ、操作入力部材50の揺動動作による入力トルクを伝達・遮断する。ブレーキ機構3は、出力側に設けられ、ラチェット装置2からの入力トルクをシャフト30の出力ギヤ35に伝達するとともに、出力ギヤ35からの逆入力トルクを遮断することで、ベースプレート85に対して相対的に回転するシャフト30の回転を止めることができるよう構成されている。
ラチェット装置2とブレーキ機構3の構成部品の概略を説明すると、ラチェット装置2は、操作入力部材50と、規制部材71と、可動片の一例としてのローラ72と、第1リターンスプリング73と、第2リターンスプリング74と、レバー75と、抜け止め板77とを備えてなる。また、ブレーキ機構3は、外輪10と、ブレーキシュー20と、出力側回転部材としてのシャフト30と、入力側回転部材40と、ローラ81と、スプリング82と、間隔保持部材の一例としての摩擦部材90と、ワッシャ76とを備えてなる。なお、入力側回転部材40は、ラチェット装置2の出力部材であるとともに、ブレーキ機構3の入力部材であり、ラチェット装置2とブレーキ機構3のいずれの部品ともいうことができる。
次に、ブレーキ機構3およびラチェット装置2の構成の詳細を説明する。
まず、ブレーキ機構3の構成について説明する。
外輪10は、所定肉厚のリングからなり、円筒状の内周面11と、円筒状の外周面12と、内周面11と外周面12を繋ぐ一対の側面13,14とを有している。一対の側面13,14は、内周面11よりも外輪10の径方向外側に位置し、内周面11の軸線に対し直交する平面となっている。なお、ブレーキ機構3の説明において、径方向および周方向は、外輪10の内周面11を基準とする。
外輪10とともに筐体100の一部を構成するベースプレート85は、ブレーキ機構3を支持するための板金部材である。ベースプレート85は、シートクッションS1のフレーム(図1のサイドフレームFR参照)などにブレーキ機構3(クラッチユニット1)を取り付けるための取付孔85Bが3つ形成されている。また、ベースプレート85は、中央にシャフト30を通すための貫通孔85Aが形成されている。ベースプレート85は、図4,5に示すように、貫通孔85Aの径方向外側の、シャフト30の軸線方向から見て(回転軸線30Xの延びる方向から見て)外輪10と重なる位置(詳しくは、カバー部材60の後述する4つのカシメ部62Fと重なる位置)に、開口部の一例としての孔85Hが形成されている。さらに、ベースプレート85の下部には、入力側に向けて延出するスプリング保持部85Cが設けられている。外輪10は、ベースプレート85に固定されていることで、クラッチユニット1は、いろいろな装置に取り付けることが可能である。
外輪10は、厚板をプレス成形により打ち抜くことで成形されており、出力側の側面14の外周縁14Bにおいて、溶接により、ベースプレート85の入力側の面に溶接されている(図4〜6の溶接部W参照)。
ブレーキシュー20は、外輪10との間でブレーキ力を発生する部材であり、外輪10の径方向内側に周方向に等間隔で並ぶように3つ配置されている。ブレーキシュー20は、周方向に延びる本体部20Aと、本体部20Aの外周において径方向外側に突出する突出部20Bおよび突起20Cとを有して構成されている。
突出部20Bは、本体部20Aの外周の周方向両端部に1つずつ設けられている。各突出部20Bは、径方向外側の先端に、外輪10の内周面11に対向して当該内周面11と接触可能なブレーキ面21を有している。このブレーキ面21は、外輪10の内周面11と略同じ曲率であり、図3に示すように、ブレーキ面21のうち、周方向の外側付近(各ブレーキシュー20を基準とする周方向外側)で外輪10の内周面11に接触するように配置されている。これにより、ブレーキシュー20が径方向外側に付勢されたときには、ブレーキ面21の周方向外側付近の接触部が外輪10の内周面11に押し付けられるようになっている。
突起20Cは、本体部20Aの外周の周方向中央部に設けられている。突起20Cの径方向外側の先端には、外輪10の内周面11に当接可能な支持面26が設けられている。別の言い方をすれば、支持面26は、一対のブレーキ面21の間における中央に設けられている。この支持面26は、外輪10の内周面11と略同じ曲率であり、外輪10の内周面11に沿った円筒面形状を有している。支持面26は、ブレーキシュー20およびシャフト30に負荷が掛かっていない状態において、外輪10の内周面11から離間している。
ブレーキシュー20は、一対のブレーキ面21の一方と支持面26との間、および、一対のブレーキ面21の他方と支持面26との間に、ブレーキ面21より小径の円筒面状の外周面22を有している。また、ブレーキシュー20は、径方向内側を向く内側面23を有している。そして、ブレーキシュー20は、周方向の端部に内側面23の両端部と2つのブレーキ面21の端部21Eとを繋ぐ端面24を有している。また、ブレーキシュー20は、ブレーキ面21と外周面22との間の段差に、周方向を向く回転力入力面25が形成されている。
内側面23は、それぞれ、シャフト30の後述する対向面36に対向する3つの面を有している。詳しくは、図3に示すように、内側面23は、第1接触面23Aと、第1接触面23Aに対して図の反時計回り側に配置された第1傾斜面23Bと、第1接触面23Aに対して図の時計回り側に配置された第1傾斜面23Cとを有している。第1接触面23Aは、ローラ81と接触可能であるととともに、一対のブレーキ面21の周方向の両方の端部21E同士を繋いだ直線L1に沿った方向に平行な平面となっている。第1傾斜面23B,23Cは、これらの間にある第1接触面23Aから離れるにつれて対向面36に近づくように第1接触面23Aに対して傾斜した平面となっている。
図2に示すように、シャフト30は、軸状の作用部31と、この作用部31の出力側に形成されたフランジ32と、作用部31から入力側に突出し、作用部31と同軸で小径の支持軸部33と、フランジ32の出力側に突出して形成された出力ギヤ35とを備えて構成されている。図3に示すように、シャフト30は、各ブレーキシュー20の径方向内側に配置されている。出力ギヤ35は、ベースプレート85の貫通孔85Aを通して出力側に突出している(図4参照)。
図3に示すように、作用部31は、その外周に、ブレーキシュー20の内側面23に対向する対向面36と、曲面部38とを有している。対向面36は、各ブレーキシュー20の内側面23に対応して作用部31の外周に3つ設けられている。各内側面23と各対向面36の間には、一対のローラ81が配置されている。また、曲面部38は、各ブレーキシュー20に対応した各対向面36を繋ぐ部分であり、作用部31の外周の周方向に隣り合う一対の対向面36の間に1つずつ、合計で3つ設けられている。曲面部38は、シャフト30の回転中心を中心とする断面視円弧形状の曲面として形成されている。
対向面36は、当該対向面36における周方向の外側の両端部に1つずつ配置された第2接触面36A,36Bと、両端部の各第2接触面36A,36Bを繋ぐ接続面部36Cとを有している。第2接触面36Aは、接続面部36Cに対して図の反時計回り側に配置され、第2接触面36Bは、接続面部36Cに対して図の時計回り側に配置されている。接続面部36Cは、少なくとも周方向の中央部が、ブレーキシュー20およびシャフト30に荷重が入力されていない状態において、第1接触面23Aと平行に配置される平面となっている。
第2接触面36A,36Bは、ブレーキシュー20に負荷が掛かっていない状態において、ローラ81と接触可能であるとともに、第1接触面23Aに対して傾斜した傾斜部と、傾斜部の外側に連続して配置された、曲面部とを有している。このような第2接触面36A,36Bを有することで、対向面36は、ブレーキシュー20の内側面23の一部である第1接触面23Aに対して非平行な部分を含んでいる。
図3に示すように、ローラ81は、各ブレーキシュー20の内側面23とシャフト30の各対向面36の間に一対ずつ配置されている。ここでは、各内側面23と各対向面36の間に配置された一対のローラのうち、図3の反時計回り側に配置された方をローラ81Aとし、時計回り側に配置された方をローラ81Bとする。ブレーキシュー20およびシャフト30に負荷が掛かっていない状態において、ローラ81Aは、第1接触面23Aと第2接触面36Aに挟まれた状態でこれらに接触し、ローラ81Bは、第1接触面23Aと第2接触面36Bに挟まれた状態でこれらに接触している。このように、内側面23と対向面36の間にローラ81が配置されることで、ブレーキ機構3では、内側面23と対向面36との間で、ローラ81を介して荷重が伝達される。
スプリング82は、圧縮コイルバネであり、一対のローラ81A,81Bの間に1つずつ設けられている。スプリング82は、一対のローラ81A,81Bを互いに周方向に離間させて、内側面23と対向面36の間に形成される空間の狭い側に付勢している。
内側面23および対向面36は、入力側回転部材40によりブレーキシュー20に回転トルクを与えるとローラ81を介して内側面23が対向面36を押してシャフト30が回転する一方、シャフト30に回転トルクを与えても、ローラ81を介して対向面36が内側面23を押してブレーキ面21が外輪10の内周面11に押し付けられることでブレーキシュー20が回転しないように構成されている。すなわち、そのように機能するように、内側面23の第1接触面23Aおよび対向面36の第2接触面36A,36Bと、ローラ81とが接触するように、第1接触面23Aに対する第2接触面36A,36Bの傾斜角や位置などが調整されている。
図2に示す入力側回転部材40は、外輪10およびシャフト30などの軸周りに回転可能であり、ラチェット装置2の回転出力を受け、ブレーキ機構3のブレーキシュー20に周方向で当接してブレーキシュー20に回転トルクを与えることが可能な部材である。入力側回転部材40は、円筒状の受圧リング部41と、受圧リング部41から出力側に向けて突出した複数の係合脚42と、受圧リング部41の軸線方向の中央付近から径方向内側へ向かって延びる板状部43と、板状部43の出力側の面からシャフト30の軸線方向における出力側へ向かって突出した保持部44(図7参照)と、板状部43の中央に形成された貫通孔45を備えて構成されている。受圧リング部41の内周面41Aは、荷重入力面の一例であり、円形断面を有している。
係合脚42は、各ブレーキシュー20に対応して等間隔で3対設けられており、外輪10の内周面11とブレーキシュー20の外周面22との間に配置されている。一対の係合脚42は、図3に示すように、突起20Cと図3の反時計回り側の突出部20Bの間に配置される係合脚42Aと、突起20Cと図3の時計回り側の突出部20Bの間に配置される係合脚42Bからなる。突出部20Bおよび突起20Cと、係合脚42A,42Bとの間には、回転方向(周方向)に遊びができるように、突出部20B、突起20Cおよび係合脚42A,42Bの大きさが設定されている。各係合脚42A,42Bは、略同じ形状で形成されている。入力側回転部材40(係合脚42A,42B)に対するブレーキシュー20の回転方向(周方向)の遊びは、例えば、4°である。
保持部44は、内側面23と対向面36の間からローラ81が脱落するのを抑制する部分であり、周方向においてローラ81の間に配置されている。具体的には、各ブレーキシュー20に対応する一対のローラ81A,81Bの周方向の両側に隣接して配置され、全部で3つ設けられている。
保持部44は、入力側回転部材40およびシャフト30に荷重が入力されていない状態において、ローラ81から離間して配置されている。より詳細には、保持部44は、シャフト30に通常使用範囲の回転トルクが入力されている状態において、当該回転トルクの回転方向の上流側に隣接するローラ81、本実施形態ではローラ81Bに対し非接触であるように配置されている。
また、保持部44は、シャフト30に回転トルクが入力されている状態から、入力側回転部材40をシャフト30の回転トルクと同じ回転方向に回転させてブレーキシュー20に周方向で当接させた時点において、当該回転方向の下流側に隣接するローラ81、本実施形態ではローラ81Aに対し非接触であるように配置されている。
また、保持部44は、入力側回転部材40がブレーキシュー20に周方向で当接してブレーキシュー20を回転させている状態において、保持部44の回転方向下流側に隣接するローラ81に対し接触するように配置されている。もっとも、保持部44は、入力側回転部材40によりブレーキシュー20を回転させている状態において、ローラ81に対し非接触であってもよい。
図7に示すように、貫通孔45は、シャフト30の作用部31が挿通可能であり、その内周に、作用部31の曲面部38に沿った3つの円周面部46と、各円周面部46の間に配置され、円周面部46に対し、径方向内側に突出した3つの凸面部47とを有する。各凸面部47は、最も径方向内側に突出した頂部47Aと、頂部47Aに対して図7の時計回り側(図3では反時計回り側)に隣接した解除面47Bと、図7の反時計回り側(図3では時計回り側)に隣接した逃げ面47Cとを有する。
解除面47Bは、対向面36と対向して配置され、車両用シートSに座った乗員の重みによる図3の時計回り方向の回転トルクがシャフト30に入力されている状態から、入力側回転部材40を当該回転トルクと逆の回転方向(図3の反時計回り方向)に回転させてブレーキシュー20に周方向で当接させた時点において、略同時に対向面36に当該逆の回転方向の回転トルクを伝達可能な形状を有している。
逃げ面47Cは、入力側回転部材40およびシャフト30に外部から荷重が入力されていない状態において、対向面36の接続面部36Cに対する角度の大きさが、解除面47Bの接続面部36Cに対する角度の大きさよりも大きく形成されている。そして、逃げ面47Cは、入力側回転部材40を図3の時計回り方向に回転させてブレーキシュー20に周方向で当接させた時点において接続面部36Cに当接しない形状となっている。もっとも、逃げ面47Cは、接続面部36Cに対する角度の大きさが解除面47Bの接続面部36Cに対する角度の大きさと同じであって、図3における入力側回転部材40の時計回り方向について、解除面47Bと同様の機能を有していてもよい。
図2に示す摩擦部材90は、ブレーキ機構3のブレーキ力が切れた瞬間に急激にシャフト30の動作が開始するのを抑制するための補助ブレーキ力を発生する部材である。
図8に示すように、摩擦部材90は、第1リング部91と、第2リング部92と、第1リング部91と第2リング部92とを連結する連結部93と、第2リング部92から突出した、圧接部および係合部の一例としての複数の突出部94と、第1リング部91から突出した間隔保持部95とを有している。
間隔保持部95は、図3に示すように、周方向において、各ブレーキシュー20の間に配置されてブレーキシュー20の回転方向の間隔を保持する部分であり、ブレーキシュー20の数に合わせて複数、ここでは3つ設けられている。各間隔保持部95は周方向に隣接する2つのブレーキシュー20と、保持部44とに囲まれた、略三角形の空間に配置されている。すなわち、2つのブレーキシュー20と保持部44との間の空間を有効利用して間隔保持部95を配置しているので、ブレーキ機構3の大型化を抑制することができる。
図8に示すように、第1リング部91は、複数の間隔保持部95を連結して間隔保持部95を一体に回転可能に保持する部分である。第1リング部91は、作用部31の断面の輪郭と同じ形状の嵌合穴91Aを有し、作用部31と嵌合穴91Aが嵌合することでシャフト30に対して相対的に回転しないようになっている。
第2リング部92は、複数の突出部94を一体に回転可能に保持する部分であり、第1リング部91よりも径方向外側に配置されている。
突出部94は、外輪10の径方向外側およびシャフト30の軸線方向における入力側に突出している。突出部94は、径方向外側の面が外輪10の内周面11に圧接される圧接面94Aとなっている。圧接面94Aは、その直径が内周面11の内径よりも僅かに大きく形成されている。一方、第2リング部92の突出部94以外の外周面92Aは、その直径が外輪10の内周面11の内径よりも小さくなっている。このため、摩擦部材90を外輪10に対して組み合わせたときには、圧接面94Aのみが内周面11に圧接され、外周面92Aは内周面11から離間している。
また、突出部94は、第2リング部92から軸線方向に突出した部分が、ブレーキシュー20に対して周方向で係合する。図3に示すように、突出部94は、1つのブレーキシュー20における一対の突出部20Bの間に配置されている。より具体的には、突出部94は、ブレーキシュー20の突起20Cと、この突起20Cに対して図3の時計回り側に配置された突出部20Bとの間に配置される第1突出部94Xと、ブレーキシュー20の突起20Cと、この突起20Cに対して図3の反時計回り側に配置された突出部20Bとの間に配置される第2突出部94Yとを含む。図8に示すように、第1突出部94Xは、図8の時計回り方向の端部に第1係合面94Bを有し、第2突出部94Yは、図8の反時計回り方向の端部に第2係合面94Cを有する。図3に示すように、第1係合面94Bおよび第2係合面94Cは、入力側回転部材40に荷重が入力されていない状態において、ともに、ブレーキシュー20の突出部20Bの回転力入力面25から離間している。
本実施形態において、圧接部と係合部は、ともに突出部94によって実現されている。つまり、係合部は圧接部と一体に回転し、圧接部と係合部は、周方向において同じ位置に配置されている。
図8に示すように、連結部93は、曲がりくねった蛇行形状の連結部93A,93Bと、板形状の連結部93Cとを含む。連結部93Aは、図の時計回り方向に開口するU字形状で3つ設けられ、連結部93Bは、連結部93Aの時計回り方向に隣接して配置され、反時計回り方向に開口するU字形状で3つ設けられている。板形状の連結部93Cは、連結部93Bに対して時計回り側に隣接する連結部93Aとの間に配置されている。
連結部93A,93Bは、撓み変形可能な細い形状を有し、連結部93Cは、連結部93A,93Bよりは撓み変形しにくい、幅広の板形状を有している。
このように、第1リング部91と第2リング部92は、全体が一体の板状に形成されるのではなく、複数の連結部93で連結されていることで、第1リング部91と第2リング部92の一方に回転トルクが入力されたときに、連結部93が多少撓むことができる。このため、摩擦部材90が、補助ブレーキ力を発生する機能と、複数のブレーキシュー20の周方向の位置のバランスを取る機能とを両立させやすい。
摩擦部材90を構成する材料は特に限定されないが、摩擦部材90は、例えば、樹脂からなっている。摩擦部材90を樹脂で構成すると、複雑な形状を容易に作ることができ、また、内周面11との摺動時に音が発生しにくいのでブレーキ機構3の動作を静かにすることができる。
摩擦部材90は、ブレーキシュー20の出力側に配置されている。そして、摩擦部材90は、外輪10の内側に圧入され、各突出部94は、ブレーキシュー20の突出部20Bと突起20Cの間に配置される。また、各突出部94は、回転方向において係合脚42A,42Bとほぼ同じ範囲に形成されている。このため、各突出部94に対するブレーキシュー20の回転方向(周方向)の遊びは、例えば4°である。
そして、摩擦部材90の間隔保持部95に対するブレーキシュー20の回転方向(周方向)における遊びは0°より大きく、3.4°より小さいことが望ましい。そして、この摩擦部材90に対するブレーキシュー20の周方向における遊びは、入力側回転部材40に対するブレーキシュー20の周方向における遊びよりも小さい。
ワッシャ76は、シャフト30の支持軸部33の外径よりも僅かに小さい直径の孔76Aを有し、この孔76Aが支持軸部33に圧入されている(図4参照)。ワッシャ76の外径は、後述するカバー部材60の支持孔64より大きく、ワッシャ76によりシャフト30が出力側に抜けないようになっている。
次に、ラチェット装置2の構成について説明する。
図2に示すように、操作入力部材50は、レバー75と係合してレバー75とともに中立位置から所定角度範囲で揺動操作可能である。操作入力部材50は、ローラ72を介して入力側回転部材40と一体に動くようになることで、入力側回転部材40にレバー75からの回転トルクをローラ72を介して伝達する部材である。このため、操作入力部材50は、カム板部51と、このカム板部51から入力側に延出した、レバー75の取付部としての2つのレバー係合部52とを備えてなる。
図10(a)に示すように、カム板部51は、外周面に3つの円弧状の小径部53と、小径部53から周方向に連続して延び、小径部53よりも徐々に直径が大きくなる作用面55とを有している。そして、カム板部51は、作用面55から荷重入力面である受圧リング部41の内周面41Aに近づくように突出した3つの突出部54を有する。小径部53と突出部54とは、周方向に交互に配置され、作用面55は、周方向で各突出部54と各小径部53の間の計6箇所に配置されている。なお、ラチェット装置2の説明においては、径方向および周方向を荷重入力面、ここでは、内周面41Aを基準にして用いる。
作用面55は、内周面41Aに対して径方向で対向している。また、作用面55は、内周面41Aと非平行であり、突出部54に近づくほど、内周面41Aとの間隔が狭くなるように形成されている。
また、カム板部51の中心には、シャフト30が通る孔56が形成されている。
各作用面55と受圧リング部41の内周面41Aとの間には、それぞれ、ローラ72が配置されている。ローラ72は、後述する動作説明で分かるように、操作入力部材50および入力側回転部材40に対し係合・離脱することで入力トルクの伝達・遮断を行うものである。ローラ72は、各作用面55に対応して計6つ配置されている。作用面55は、図4に示すように、ローラ72の軸線方向長さの半分よりその方向に長く、ローラ72の軸線方向における中心部(中心線C1参照)を含む範囲でローラ72と当接可能に配置されている。これにより、作用面55は、受圧リング部41との間で安定してローラ72を挟持することができる。
図10(b)に示すように、突出部54は、作用面55から内周面41Aに近づくように延びる段差面54Aと、段差面54Aの内周面41Aに近い端部から入力側回転部材40の回転方向に延びる頂面54Bと、段差面54Aと頂面54Bを繋ぐ角部54Cとを有する。段差面54Aは、径方向外側に行くほどローラ72から離れるように作用面55に対して傾斜している。そして、本実施形態において、突出部54の突出量は比較的小さく、突出部54は、ローラ72と角部54Cで接触する形状を有する。具体的には、突出部54は、径方向において、ローラ72の中心72Aよりも作用面55に近い位置で可動片と接触する形状を有している。なお、角部54Cは、製造上必要な大きさの丸みを有している形状を含む。
ここで、図2に戻り、規制部材71について説明すると、規制部材71は、ローラ72の位置を規制する部材であり、複数のローラ72に対し、操作入力部材50の回動軸線方向の一方側である出力側に配置された側壁部71Aと、側壁部71Aの外周縁から入力側に向けて延出した3つの規制部71Bとを備えて構成されている。規制部71Bは、ローラ72の軸線方向の長さよりも長く、その先端がカバー部材60の嵌合穴66に圧入嵌合している。また、規制部材71は、中心に、シャフト30が通る孔71Cを有している。
図10(a)に示すように、規制部71Bは、レバー75を操作していない非作動時において突出部54の径方向外側で同じ回転位置に配置されており、作用面55と受圧リング部41の間にあるローラ72の周方向についての移動を規制している。隣接する規制部71Bの間に配置された2つのローラ72の間には、圧縮コイルバネからなる第1リターンスプリング73がそれぞれ初期荷重を与えられて配置されている。このため、図10(a)の非作動時において、各ローラ72は規制部71Bに接している。ここで、規制部71Bは、外輪10の径方向において、ローラ72の中心が位置するところを含むように配置され、ローラ72の、周方向に最も出っ張っているところに接している。これにより、規制部71Bは、ローラ72を安定して支持することができる。なお、図10(a)においては、ローラ72を、規制部71Bに接した状態で表しているが、ローラ72は、作用面55と内周面41Aに挟持されることで、規制部71Bから僅かに離れていてもよい。
図2に示すように、レバー係合部52は、円弧状の断面でカム板部51からシャフト30の軸線方向に突出している。各レバー係合部52は、軸線方向の端面にネジ穴52Aを有している。また、各レバー係合部52は、軸線方向から見て扇形をなし、径方向に延びる側面52Bを有している(図10(a)参照)。
図2に示すように、カバー部材60は、円板状の側部61と、側部61の外周縁からシャフト30の軸線方向における出力側に延出した外周部62と、外周部62から出力側(ベースプレート側)に延出する複数の延出部62Eとを備えてなる。図4に示すように、カバー部材60は、その内側に、ラチェット装置2とブレーキ機構3とを収容している。
外周部62は、ラチェット装置2およびブレーキ機構3の外周を覆い、側部61は、外周部62のベースプレート85から遠い端部からシャフト30の軸線30Xに近づく方向に延びている。
側部61は、シャフト30の軸線方向に交差する向きを有し、本実施形態では、軸線方向に直交する向きを有している。
図4に示すように、外周部62は、側部61から延出する小径部62Aと、小径部62Aの出力側の端部から径方向に広がるフランジ部62Bと、フランジ部62Bの外周縁から出力側に延出する大径部62Cとを有する。そして、大径部62Cは、外輪10の外周面12の外側に嵌合して外輪10に固定されている。
外周部62は、第1リターンスプリング73と第2リターンスプリング74との間に配置されることで、第1リターンスプリング73と第2リターンスプリング74の干渉を抑制する。
延出部62Eは、先端がシャフト30の軸線30Xに近づく方向に曲がって、ブレーキ機構3の一部を構成する外輪10にカシメ固定されたカシメ部62Fを有する。図5(a)に示すように、カシメ部62F(延出部62E)は、外輪10のベースプレート85に溶接されている出力側の側面14に沿って周方向に等間隔で並ぶように4つ配置されている。このように、偶数個のカシメ部62Fが、軸線30Xについて回転対称に配置されているので、すべてのカシメ部62Fは、軸線30Xに対して軸対称となる位置にペアとなるカシメ部62Fが存在する。
図4、図5(a)、図6に示すように、外輪10は、シャフト30の回転方向に互いに離れた複数の固定部の一例としての4つの溶接部Wにおいてベースプレート85に溶接されている。カシメ部62F(延出部62E)は、回転方向において隣接する一対の溶接部Wの間に、溶接部Wから離間させて配置されている。また、溶接部Wの回転方向における長さL1は、カシメ部62F(延出部62E)の回転方向における長さL2よりも長い。
図2に示すように、側部61には、その中心に円形の支持孔64と、支持孔64の周囲で円弧形状に延びる2つの円弧孔65と、円弧孔65よりも径方向外側に位置し、周方向に3つ等間隔で配置された嵌合穴66と、筐体100内へ向けて突出する第1凸部67Aおよび第2凸部67Bが形成されている。
支持孔64は、シャフト30の支持軸部33と嵌合し、シャフト30を軸支する部分である。
円弧孔65は、操作入力部材50のレバー係合部52に対応して設けられ、レバー係合部52よりも広い角度範囲で円弧状に形成されている。これにより、円弧孔65は、レバー係合部52を受け入れるとともに、レバー係合部52が円弧孔65の中において所定角度範囲で移動することが可能となっている。
第1凸部67Aは、操作入力部材50と摺動可能であり、第2凸部67Bは、入力側回転部材40の受圧リング部41と摺動可能であり、筐体100内の部品の軸線方向の遊びを抑制する。
嵌合穴66は、規制部材71の3つの規制部71Bに対応して3つ設けられた貫通孔であり(図2も参照)、規制部材71がカバー部材60に対し相対回転しないように、カバー部材60と嵌合されている。規制部材71とカバー部材60とは、複数箇所で嵌合していることで、規制部材71の回転の規制をしっかりと行うことができる。
クラッチユニット1の製造時において、カバー部材60をベースプレート85に溶接された外輪10に装着する際には、まず、図5(b)に示すように、外周部62のうち、大径部62Cを外輪10の外周面12の外側に嵌合させ、延出部62Eをそれぞれ対応する孔85Hに挿入する。そして、図5(c)に示すように、側部61をシャフト30の軸線方向における出力側に所定荷重で押して第2凸部67B(図2参照)を入力側回転部材40に接触させながら、延出部62Eを外輪10にカシメ固定する。このとき、カシメ工具を使用し、ベースプレート85の出力側から延出部62Eの先端を折り曲げてカシメ部62Fを形成する。
なお、延出部62Eの先端をカシメ加工することで形成されたカシメ部62Fは、その全体が孔85Hの中に位置する。詳しくは、カシメ部62Fの出力側を向く(側部61とは反対側の)面62Sは、軸線方向において、ベースプレート85の同じ出力側を向く(側部61とは反対側の)面85Sと同じ位置にある。
なお、第1凸部67A(図2参照)は、規制部材71の側壁部71Aとカバー部材60の側部61の間で操作入力部材50が軸線方向に遊ぶのを抑制する。このため、規制部71Bを嵌合穴66に圧入する際には、第1凸部67Aと操作入力部材50が軽く接触する程度となるような荷重で圧入する。
図2に戻り、第2リターンスプリング74は、コイル部74Aと、コイル部74Aの一端から径方向外側に延出した第1アーム74Bと、コイル部74Aの他端から径方向外側に延出した第2アーム74Cとを有してなるトーションバネである。
コイル部74Aは、カバー部材60の外周部62の径方向外側に配置されている。図4に示すように、第1リターンスプリング73と第2リターンスプリング74は、操作入力部材50の回動軸線に直交する一の平面上、図4においては、前記した中心線C1を通る平面上に位置する。このため、第1リターンスプリング73と第2リターンスプリング74が操作入力部材50をこじる力を発生せず、操作入力部材50をスムーズに中立位置に戻すことができる。
図2に示すように、レバー75は、図2において左右に延びる本体部75Aと、本体部75Aの下端部から出力側に延出したバネ係合部75Bと、本体部75Aの上端部から出力側に延出したカバー部75Cとを有する。本体部75Aは、第2リターンスプリング74のコイル部74Aに対して入力側に位置する。バネ係合部75Bは、第2リターンスプリング74の第1アーム74Bおよび第2アーム74Cが係合する。
本体部75Aには、シャフト30の支持軸部33を通過させる円形の貫通孔75Dと、操作入力部材50の2つのレバー係合部52が係合する2つの係合穴75Eとが繋がった状態で形成されている。図10(a)に示すように、係合穴75Eは、径方向に延びる縁部75Fを有している。レバー係合部52は、係合穴75Eの縁部75Fが、レバー係合部52を操作入力部材50の回転方向で挟持するように係合穴75Eに圧入されている。つまり、この圧入により、縁部75Fと、レバー係合部52の側面52Bとが常時圧接した状態となり、レバー75が操作入力部材50に対し回転方向に遊ばないようになっている。これにより、レバー75の操作感を向上させることができる。
図9に示すように、バネ係合部75Bは、周方向においてベースプレート85のスプリング保持部85Cと同じ大きさを有している。そして、バネ係合部75Bは、周方向においてスプリング保持部85Cに対応した位置で、スプリング保持部85Cの径方向外側に配置されている。また、バネ係合部75Bおよびカバー部75Cは、第2リターンスプリング74のコイル部74Aの径方向外側に位置して、コイル部74Aが外れるのを抑制している。
第2リターンスプリング74の第1アーム74Bおよび第2アーム74Cは、ベースプレート85のスプリング保持部85Cとレバー75のバネ係合部75Bに回転方向で係合している。レバー75を操作していない状態において、第1アーム74Bと第2アーム74Cは互いに近づく方向に付勢され、スプリング保持部85Cとバネ係合部75Bを挟持している。すなわち、レバー75は、第2リターンスプリング74によって、常時、図9に示す中立位置に向けて付勢されている。
抜け止め板77は、ネジ穴52Aに対応した2つの穴77Aと、レバー75の貫通孔75Dに対応した中心穴77Bを有している。中心穴77Bは、ワッシャ76(図2参照)が抜け止め板77に干渉するのを抑制する。
そして、抜け止め板77は、2つのボルト78がそれぞれ穴77Aを通り、ネジ穴52Aに締結されることで操作入力部材50に固定される。これにより、レバー75が操作入力部材50から外れることが抑制される。
次に、以上のように構成されたクラッチユニット1の動作について説明する。
まず、ラチェット装置2の動作について説明する。
図10(a)に示す中立位置において、ローラ72は、入力側回転部材40の内周面41Aと操作入力部材50の作用面55の間に位置するが、これらの間には僅かな隙間があり、これらに挟持されてはいない。ローラ72は、圧縮コイルばねからなる第1リターンスプリング73により規制部71Bに向けて付勢されている。これにより、第1リターンスプリング73は、操作入力部材50の姿勢を中立位置に付勢している。また、第2リターンスプリング74は、第1アーム74Bと第2アーム74Cとでバネ係合部75Bとスプリング保持部85Cを挟持している。この挟持力により、バネ係合部75Bの回動方向の位置は、スプリング保持部85Cと揃う。つまり、第2リターンスプリング74は、レバー75および操作入力部材50の姿勢を中立位置に付勢している。
入力側回転部材40に掛かる負荷が所定未満である場合において、レバー75を中立位置から下に下げて操作入力部材50を時計回り方向に少し揺動させると、作用面55が時計回りに回動してローラ72に接し、内周面41Aと作用面55の間でローラ72が挟持される。これにより、操作入力部材50の揺動操作に応じて操作入力部材50と入力側回転部材40は一体に回転できるようになる。
そのため、図11に示すように、操作入力部材50を時計回りに回していけば、入力側回転部材40と操作入力部材50とが一体になったまま、時計回りに回動する。すなわち、操作入力部材50を回動させた入力トルクが入力側回転部材40に伝達される。
このとき、レバー75のバネ係合部75Bは、第2リターンスプリング74の付勢力に抗して第2アーム74Cを時計回り方向に移動させる。逆に言うと、第2アーム74Cは、バネ係合部75Bを反時計回り方向に付勢する。
図11の状態からレバー75を反時計回りに揺動させて下の位置から中立位置に戻すときには、ローラ72から作用面55が反時計回りに逃げていき、図12に示すように、入力側回転部材40が静止したまま、操作入力部材50が中立位置に向けて回動する。すなわち、操作入力部材50を戻すときの入力トルクは入力側回転部材40には伝達されず、遮断される。操作入力部材50は、第1リターンスプリング73および第2リターンスプリング74の付勢力により中立位置に向けて操作するのが補助されるとともに、中立位置に維持される。
レバー75を中立位置から上に上げ、また、上の位置から中立位置に戻すときの動作は、上述の下への揺動の場合と同様であるので説明を省略する。
シートを上下させる機構に物が引っかかった場合など、入力側回転部材40に掛かる負荷が所定以上である場合において、レバー75を中立位置から下に下げて操作入力部材50を時計回り方向に少し揺動させると、図13に示すように、作用面55と内周面41Aの間にローラ72が挟まるだけでは受圧リング部41を回すことができず、受圧リング部41が止まったまま、操作入力部材50だけが時計回りに回転する。このまま、所定以上の入力トルクで操作入力部材50を時計回りに揺動させると、受圧リング部41は、ローラ72と接する部分が径方向外側に撓む。そして、操作入力部材50の突出部54がローラ72と接触する。このとき、本実施形態では、突出部54の角部54Cがローラ72の中心72A(図10(b)参照)よりも作用面55に近い位置でローラ72に接触する。
そして、図14に示すように、突出部54がローラ72に接触してローラ72を押すことでローラ72が内周面41Aに対して滑る。このため、過大な入力トルクで無理矢理レバー75を操作した場合であっても、図13および図14のように、ローラ72が突出部54に接触した状態以上に受圧リング部41が撓むことはなく、受圧リング部41の破損、ひいてはラチェット装置2の破損を抑制することができる。
レバー75を中立位置から上に上げる場合にも、車両用シートSに座る乗員がものすごく重いなど、受圧リング部41に掛かる負荷が所定以上である場合があるが、この場合の動作も、上述の下への揺動の場合と回転方向が逆なだけで同様であるので説明を省略する。
次に、ブレーキ機構3の動作について説明する。
図15に示すように、車両用シートSに座った乗員の重みによりシャフト30に、図における時計回り方向の回転トルク、つまり、通常使用範囲の回転トルクを与えると、シャフト30が時計回りに少し回転し、第2接触面36A(一の対向面36の一対の第2接触面36A,36Bのうち反時計回り側の1つ)と第1接触面23Aの間隔が狭くなることで、ローラ81A(一のブレーキシュー20に対応する一対のローラ81のうち反時計回り側の1つ)と第2接触面36Aおよび第1接触面23Aの圧力が高まる。なお、シャフト30に荷重が入力されていない状態において、ローラ81Aが第1傾斜面23Bに接していた場合には、ローラ81Aは、対向面36と内側面23の間を転がって、第1接触面23Aに接する位置まで移動したところで第2接触面36Aおよび第1接触面23Aとの間の圧力が充分に高まって対向面36および内側面23に対して止まる。一方、シャフト30が時計回りに回転するにつれ、第2接触面36B(一の対向面36の一対の第2接触面36A,36Bのうち時計回り側の1つ)と第1接触面23Aの間隔が広くなるため、ローラ81B(一のブレーキシュー20に対応する一対のローラ81のうち時計回り側の1つ)は、第2接触面36Bと第1接触面23Aの間で強く挟まれることなく転がることができる。
このとき、第2接触面36Aは、ローラ81Aを力F1で押し、ローラ81Aは、第1接触面23Aを力F2で押す。これにより、ブレーキシュー20は、一対のブレーキ面21が外輪10の内周面11に力F3で押し付けられる。その結果、ブレーキ面21と内周面11の間で摩擦力が発生するので、シャフト30が回転しない。すなわち、車両用シートSが下がるのを阻止するブレーキ力が発生する。そして、このような、シャフト30に通常使用範囲の回転トルクを与えた状態においては、支持面26は、外輪10の内周面11から離間している。
また、このとき、ローラ81Bは、シャフト30の回転方向、つまり、時計回り方向に隣接する保持部44から僅かに離間している。そのため、ローラ81Aが対向面36と内側面23に挟まれているだけでなく、スプリング82の付勢力によりローラ81Bも対向面36と内側面23に挟まれた状態を維持することができる。これにより、その後、ブレーキシュー20をいずれの方向に回転しても、ブレーキシュー20と外輪10の間の摩擦力を維持できるので、予期せぬブレーキ力の解除を抑制することができる。
図15のブレーキ状態から、車両用シートSの高さを上げるためにレバー75を操作して入力側回転部材40を反時計回りに回転させると、図16に示すように、入力側回転部材40の係合脚42Aが反時計回り側の端部でブレーキシュー20の回転力入力面25に周方向で当接する。この時点において、略同時に入力側回転部材40の解除面47Bが対向面36の接続面部36Cに接して反時計回り方向の回転トルクをシャフト30に伝達可能となる。これにより、ブレーキシュー20のブレーキ面21が外輪10の内周面11に強く押し付けられていた場合においても、ブレーキ力を解除して、入力側回転部材40を回して車両用シートSを上げ始めるときの引っかかり感を抑制することができる。
そして、さらに入力側回転部材40を反時計回りに回転させると、係合脚42Aが回転力入力面25を力F11で押すことでブレーキシュー20が反時計回り方向に回転し、第1接触面23Aがローラ81Aを力F12で押し、ローラ81Aが第2接触面36Aを力F13で押す。この力F13により、シャフト30が図の反時計回りに回転する。このときも、支持面26は、外輪10の内周面11から離間している。
また、図15のブレーキ状態から、車両用シートSの高さを下げるためにレバー75を操作して入力側回転部材40を時計回りに回転させると、図17に示すように、入力側回転部材40の係合脚42Bが時計回り側の端部でブレーキシュー20の回転力入力面25に周方向で当接する。このとき、保持部44は、回転方向下流側(時計回り方向側)に隣接するローラ81Aに対して非接触である。そして、さらに入力側回転部材40を時計回りに回転させると、係合脚42Bが回転力入力面25を力F21で押し、ブレーキシュー20が時計回り方向に回転し始める。
ブレーキシュー20が図17の状態から時計回り方向に回転すると、ブレーキシュー20とシャフト30は、図15においてシャフト30を時計回り方向に回転させた場合と相対的に逆の動作をする。すなわち、図18に示すように、ブレーキシュー20が時計回りに少し回転し、第1接触面23Aと第2接触面36B(一の対向面36の一対の第2接触面36A,36Bのうち時計回り側の1つ)の間隔が狭くなることで、ローラ81B(一のブレーキシュー20に対応する一対のローラ81のうち時計回り側の1つ)と第1接触面23Aおよび第2接触面36Bの圧力が高まる。なお、ローラ81Bが第1傾斜面23Cに接していた場合でも、ローラ81Bは、対向面36と内側面23の間を転がって、第1接触面23Aに接する位置まで移動したところで第2接触面36Bおよび第1接触面23Aとの間の圧力が充分に高まって対向面36および内側面23に対して止まる。一方、ブレーキシュー20が時計回りに回転するにつれ、第1接触面23Aと第2接触面36A(一の対向面36の一対の第2接触面36A,36Bのうち反時計回り側の1つ)の間隔が広くなるため、ローラ81A(一のブレーキシュー20に対応する一対のローラ81のうち反時計回り側の1つ)は、第1接触面23Aと第2接触面36Aの間でこれらとの圧力が徐々に下がっていきながら転がることができる。そして、図18の状態では、保持部44は、回転方向下流側に隣接するローラ81Aに接触して、ローラ81Aを時計回り方向に押している。
また、図17の状態から図18の状態にブレーキシュー20が回転する過程において、ブレーキシュー20の突出部20Bと摩擦部材90の第2突出部94Yの隙間がつまり、突出部20Bが第2突出部94Yと係合して時計回り方向に押す。これにより、摩擦部材90がブレーキシュー20に引きずられるようにして時計回りに回転する。このとき、摩擦部材90は、突出部94において外輪10の内周面11に圧接されているので、ブレーキシュー20の回転に抵抗(補助ブレーキ力)を与える。このため、第1接触面23Aと第2接触面36Bの間でローラ81Bが充分な力で挟まれる前に、第1接触面23Aと第2接触面36Aの間でローラ81Aを挟む力が弱まったとしても、乗員の重みでブレーキシュー20が急激に時計回りに回転することが抑制される。
また、図17の状態では、保持部44がローラ81Aに対して非接触であることで、第1接触面23Aと第2接触面36Bの間でローラ81Bが充分な力で挟まれる前には、ブレーキ力を発生していたローラ81Aが保持部44に押されないので予期せずブレーキ力が弱まることが抑制される。
一方、図18に示すように、ローラ81Bが第1接触面23Aと第2接触面36Bに充分な力で挟まれた後は、保持部44がローラ81Aに接触するので、仮に、ローラ81Aが内側面23と対向面36の間で何らかの事態により固着したような場合であっても、ローラ81Aを内側面23と対向面36の間から離してブレーキ力を解除し、安定した動作を実現することができる。
そして、図18に示すように、係合脚42Bが回転力入力面25を力F21で押し、第1接触面23Aがローラ81Bを力F22で押し、ローラ81Bが第2接触面36Bを力F23で押す。この力F23により、シャフト30が図の時計回りに回転する。このときも、支持面26は、外輪10の内周面11から離間している。
一方、シャフト30に、通常使用範囲より大きい過大な時計回り方向の回転トルクが入力された場合、図19に示すように、通常使用範囲の回転トルクを与えた場合よりも、シャフト30が時計回りに大きく回転し、第2接触面36Aと第1接触面23Aの間隔がより狭くなることで、ローラ81Aと第2接触面36Aおよび第1接触面23Aの圧力がより高まる。このとき、第2接触面36Aは、ローラ81Aを大きな力F31で押し、ローラ81Aは、第1接触面23Aを大きな力F32で押す。これにより、ブレーキシュー20は、本体部20Aが径方向外側に撓むように変形し、支持面26が外輪10の内周面11に当接する。その結果、ブレーキシュー20は、支持面26が外輪10によって支持されることになり、それ以上の変形が抑制されるため、当該ブレーキシュー20に掛かる負荷を低減することができる。
また、過大な時計回り方向の回転トルクが入力されてシャフト30が時計回りに大きく回転した場合には、第2接触面36Bと第1接触面23Aとの間が広がってローラ81Bがこれらの間で遊ぶことがある。このような場合、ローラ81Bは、回転方向下流側、ここでは時計回り方向に隣接する保持部44に当接する。これにより、保持部44がローラ81Bを支持するので、内側面23と対向面36の間からローラ81Bが脱落することが抑制される。
以上においては、シャフト30に時計回り方向の回転トルクが入力されてブレーキ力が発生した後、入力側回転部材40を時計回り方向または反時計回り方向に回転させた場合について説明した。クラッチユニット1を車両用シートSに適用した場合には、シャフト30には、時計回り方向の回転トルクしか入力されないので、上述のようにしか動作しないが、仮に、シャフト30に反時計回り方向の回転トルクが入力されてブレーキ力が発生した後、入力側回転部材40を時計回り方向または反時計回り方向に回転させた場合は、ブレーキシュー20およびシャフト30は、略鏡像対称(図3で線対称)に構成されているので、上述と回転方向が異なるだけで、略同様の動作が実現される。
本実施形態のクラッチユニット1(ブレーキ装置)を装着するシートフレームの一例としてのサイドフレームFRの構造について以下に説明する。図20(a),(b)に示すように、サイドフレームFRは、クラッチユニット1のベースプレート85が取り付けられる取付面SFと、取付面SFの周縁部から入力側へ向かって突出するビード部FBとを有する。クラッチユニット1は、サイドフレームFRの上下のビード部FBの間に配置されている。図20(b)に示すように、カバー部材60のカシメ部62Fは、上下一対のビード部FBの間に位置している。
そして、サイドフレームFRに溶接されたナット85Nに、クラッチユニット1のベースプレート85に設けられた取付孔85B(図2参照)を位置合わせして、ボルト85Fを螺合し締結する。ボルト85Fおよびナット85Nは、締結部材の一例である。
サイドフレームFRに、カシメ部62Fを挟むように一対のビード部FBが設けられていることで、サイドフレームFRの、特に、クラッチユニット1取り付け箇所の剛性を向上させ、カシメ部62Fを保護している。
なお、上述のように、カシメ部62Fの出力側を向く面62Sが、軸線方向において、ベースプレート85の面85Sと同じ位置にあり(図5(c)も参照)、カシメ部62Fがベースプレート85から出力側(取付面SF側)に突出していないので、ベースプレート85の面85Sが、ボルト85Fとナット85Nの締結力により、サイドフレームFRの取付面SFと密着し、安定した取り付けが可能で高い取り付け強度が確保できる。また、ベースプレート85が取り付け時に変形しないので応力による経年劣化の加速やひずみの増大を抑制することができる。
以上説明した本実施形態のクラッチユニット1に適用されたブレーキ機構3によれば、シャフト30に回転トルクが与えられると、ローラ81がブレーキシュー20の内側面23を押してブレーキ面21が外輪10の内周面11に押し付けられることでブレーキシュー20が回転しない。この状態において、入力側回転部材40によりブレーキシュー20を一方の回転方向または他方の回転方向に回転させると、ローラ81が内側面23とシャフト30の対向面36の間に形成される空間の狭い側に付勢されているため、いずれかのローラ81を常に内側面23と対向面36の間に挟まれた状態、つまり、これらに接触した状態に維持することができる。このため、ブレーキ力が一気に抜けることを抑制することができる。また、周方向に並んだ複数のブレーキシュー20のそれぞれでブレーキ力を発生できるので、ブレーキ機構3の軸線方向の大きさが大きくなるのを抑制することができる。これらにより、軸線方向の大きさを小さくすることができるとともに、安定した動作をすることができる。
そして、摩擦部材90が、ブレーキシュー20と係合することで、ブレーキシュー20のブレーキ面21で発生するブレーキ力が低下した場合であっても、摩擦部材90の摩擦力がブレーキシュー20の補助ブレーキ力として作用する。そのため、レバー75で車両用シートSを下げようとしたときに、ブレーキシュー20のブレーキ力が低下した場合であっても、この補助ブレーキ力によりシャフト30が急激に回転することを抑制することができる。そして、摩擦部材90の外周部に設けられた突出部94とブレーキシュー20が係合していることで、摩擦力が発生する部分とブレーキシュー20に係合して力を伝える係合部までの距離が小さいので、補助ブレーキ力をブレーキシュー20に効率良く伝えることができる。
また、第2リング部92は、外輪10の内周面11に近いので、効率良く摩擦力を発生し、ブレーキシュー20に伝えることができる。また、摩擦部材90の外周の全周で内周面11に圧接する場合には、摩擦部材90および内周面11の直径の誤差によって圧接力がばらついたり、摩擦部材90に歪みが発生したりしやすいが、摩擦部材90の外周のうち、突出部94において内周面11に部分的に接触するので、安定した摩擦力を発生することができる。
また、上述のように、本実施形態における摩擦部材90は、摩擦力を効率良くブレーキシュー20に伝達することができるので、樹脂から構成することができる。これにより、ブレーキ機構3の作動時に音が発生するのを抑制することができる。
また、摩擦部材90は、間隔保持部95を有し、間隔保持部95により、複数のブレーキシュー20の周方向の位置のバランスが保たれるので、ブレーキ力が安定し、また、入力側回転部材40でブレーキシュー20を回転させるときのトルクが安定する。さらに、間隔保持部材である摩擦部材90は、入力側回転部材40とは別の部材であるため、摩擦部材90の動作が入力側回転部材40に影響を与えず、ブレーキ力が安定する。また、シャフト30に入力されたトルクによりブレーキシュー20が僅かに動く動作などが入力側回転部材40に伝わりにくく、操作する人に違和感を与えることもない。このため、ブレーキ機構3の操作感が向上する。
また、摩擦部材90に対するブレーキシュー20の周方向における遊びは、入力側回転部材40に対するブレーキシュー20の周方向における遊びよりも小さいことで、入力側回転部材40とブレーキシュー20の周方向における遊びを確保して、ブレーキ力を安定させ、また、操作感を向上させることができる。
そして、ラチェット装置2の出力部材である入力側回転部材40が回転するのに大きな抵抗が掛かった場合には、操作入力部材50を回転させていくと、突出部54がローラ72に接触してローラ72を押すことでローラ72が受圧リング部41の内周面41Aに対して滑る。このため、突出部54がローラ72に接触した後は、それ以上、受圧リング部41に掛かる負荷が大きくならない。したがって、ラチェット装置2の破損を抑制することができる。
また、突出部54は、角部54Cがローラ72に接触する形状であるので作用面55からの突出部54の突出量を小さくしてラチェット装置2の重量増加を抑制することができる。
また、ラチェット装置2の可動片としてローラ72を採用することで、ラチェット装置2の動作をスムーズにすることができるとともに、可動片に掛かる面圧を小さくすることができる。
前記実施形態では、クラッチユニット1は、サイドフレームFRに取り付けられるベースプレート85と、ベースプレート85に対して相対的に回転するシャフト30の回転を止めることが可能なブレーキ機構3と、ブレーキ機構3を収容するカバー部材60とを備え、カバー部材60は、ブレーキ機構3の外周を覆う外周部62と、外周部62のベースプレート85から遠い端部からシャフト30の軸線30Xに近づく方向に延びる側部61と、外周部62からベースプレート85側に延出する延出部62Eとを有し、延出部62Eは、先端がシャフト30の軸線30Xに近づく方向に曲がってブレーキ機構3の一部(外輪10)にカシメ固定されたカシメ部62Fを有し、ベースプレート85は、シャフト30の軸線方向から見て、カシメ部62Fと重なる位置に、軸線方向に貫通する孔85Hを有する。したがって、カバー部材60が、カシメ部62Fとなる延出部62Eを有するので、ベースプレート85をカシメ固定のための突出構造を持たないシンプルな構成とすることができる。さらに、カバー部材60から露出する突出部がないので、外観を損ねることなく、レバーを操作するときに干渉しやすい部分も少ない。
また、孔85Hの中に、カシメ部62Fの全体が配置されているので、装置の軸線方向の大きさ(厚み)を小さくすることができる。
延出部62Eが、外輪10にカシメ固定されているので、カシメ部62Fを外輪10に沿って密着させることで径方向に突出させない。また、カシメ部62Fの側部61とは反対側の面62Sが、軸線方向において、ベースプレート85の側部61とは反対側の面85Sと同じ位置にあり、カシメ部62Fがベースプレート85からサイドフレームFR側に突出していない。したがって、ベースプレート85のサイドフレームFRへの安定的な取り付けがシンプルな構造で容易に実現できるとともに、装置の大型化を抑制することができる。
外輪10が、シャフト30の回転方向に互いに離れた複数の溶接部W(固定部)においてベースプレート85に溶接固定され、延出部62E(カシメ部62F)が、回転方向において隣接する一対の溶接部Wの間に、溶接部Wから離間して配置されているので、延出部62Eが外輪10の溶接部Wと干渉しにくく、カバー部材60を効率よく装着しカシメ固定することができる。また、外輪10のベースプレート85への溶接時に、カシメ固定される箇所に配置される孔85H(開口部)の存在により、放熱効率がよく、高精度の溶接が実現できる。したがって、カシメ固定時の不良も生じにくく、カバー部材60を精度良く位置決め固定することができる。
また、回転方向において、溶接部Wの長さL1が、延出部62Eの長さL2よりも長いので、ベースプレート85に対するブレーキ機構3の取り付け強度を向上させることができ、ひいてはクラッチユニット1全体の構造強度を向上させることができる。
また、複数の延出部62Eが、一対の延出部62Eの間にシャフト30の軸線30Xが位置するように配置されているので、ベースプレート85へのカバー部材60の取り付け強度をさらに向上させ、クラッチユニット1全体の構造強度をより向上させることができる。
以上に本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されることなく適宜変形して実施することができる。
例えば、前記実施形態においては、カシメ部62Fは、その全体がベースプレート85の孔85Hの中に位置し、カシメ部62Fの側部61とは反対側の面62Sが、軸線方向において、ベースプレート85の側部61とは反対側の面85Sと同じ位置にある例を示したが、面62Sは、図21に示す第1変形例のように、面85Sよりも、側部61から離れた位置にあってもよい。
第1変形例においては、カバー部材60の延出部62Eを含む外周部62が、ベースプレート85よりも若干厚い板材を用いることで、カバー部材およぎカシメ部62Fの強度を増している。その結果、ベースプレート85から、サイドフレームFR側にわずかに突出しているが、サイドフレームFRにおける、この突出した面62Sに対応する領域に開口や凹部を設けることでサイドフレームFRにベースプレート85を密着させることができる。
第1変形例においても、ベースプレート85の孔85Hの中にカシメ部62Fの一部が位置するので、クラッチユニット1の軸線方向の大きさ(厚み)を小さくすることができる。
図22に示す第2変形例においては、ベースプレート85の孔85H沿いに、側部61へ向けて凹む凹部85Rが形成されている。そして、カバー部材の62の延出部62Eは、孔85Hに挿通され、先端がシャフト30の軸線30Xから遠ざかる方向に曲がってベースプレート85の凹部85Rにカシメ固定されている。
第2変形例においては、ベースプレート85の凹部85Rが、シャフト30の軸線方向に見てカシメ部62Fと重なる位置にあり、カシメ部62Fの全体が凹部85Rの中に位置するので、前記実施形態と同様、カシメ部62Fの側部61とは反対側の面62Sが、軸線方向において、ベースプレート85の側部61とは反対側の面85Sと同じ位置となる構成が実現している。
凹部85Rの深さは、第2変形例に例示した形態よりも大きくてもよい。例えば、図23に示す第3変形例においては、カシメ部62Fの側部61とは反対側の面62Sが、軸線方向において、ベースプレート85の側部61とは反対側の面85Sよりも、側部61側に位置するように、凹部85Rが面85Sから深く凹んでいる。
図24に示す第4変形例は、前記実施形態および第1変形例に例示した、延出部62Eの先端がシャフト30の軸線30Xに近づく方向に曲がって外輪10にカシメ固定される形態において、シャフト30の軸線方向から見て、ベースプレート85のカシメ部62Fと重なる位置に孔85Hを設けるとともに、外輪10に凹部10Rを設けて、カシメ部62Fをベースプレート85からサイドフレームFR側に突出しない構成を実現した例である。この形態においても、装置の軸線方向の大きさ(厚み)を抑制することができる。
前記実施形態および変形例では、ベースプレート85に、シャフト30の軸線方向に貫通する開口部が孔85Hである形態を例示したが、図25に示す第5変形例のように、開口部は切欠85Dであってもよい。
このように、第2〜5変形例においても、カシメ部62Fがベースプレート85からサイドフレームFR側に突出していないので、ベースプレート85のサイドフレームFRへの安定的な取り付けがシンプルな構造で容易に実現できるとともに、装置の大型化を抑制することができる。
前記実施形態においては、入力側回転部材40がブレーキシュー20およびローラ81を介してシャフト30を回転させるようにしていたが入力側回転部材40が直接シャフト30に係合して回転トルクを伝えるように構成してもよい。この場合、入力側回転部材40の貫通孔45の形状ならびに係合脚42の形状および配置を調整して、係合脚42がブレーキシュー20に対して回転方向に十分に係合する前に、貫通孔45の縁がシャフト30の作用部31に十分な回転トルクを伝える程度に係合するようにすればよい。
また、ブレーキシュー20とシャフト30との間で力を伝達するための構成は、様々な構成を採ることができる。例えば、前記実施形態においては、可動片としてのローラ81を介してシャフト30がブレーキシュー20を径方向外側に押圧する構成としていたが、可動片はなくてもよく、シャフト30が、径方向外側に突出する突起を有し、この突起でブレーキシュー20を押圧するように構成してもよい。
また、前記実施形態においては、シャフト30に荷重が入力されていない状態や、通常使用範囲の回転トルクがシャフト30に与えられている状態(図15〜図18参照)において、支持面26が外輪10の内周面11から離間していたが、これに限定されるものではない。例えば、ブレーキシューが回転するときの動作を妨げないのであれば、シャフトに通常使用範囲の回転トルクが与えられている状態において、支持面が内周面に接していても構わない。また、支持面は、外輪の内周面に沿った形状でなくても構わない。
前記実施形態において、カバー部材60の側部61は、軸線方向に直交していたが、多少傾斜していてもよい。
前記実施形態においては、可動片としてローラ72を例示したが、可動片は、球や多角柱、楕円断面の柱状であっても構わない。
前記実施形態においては、ブレーキシュー20は3つ設けられていたが、ブレーキシューは、2つでもよく、4つ以上であってもよい。
前記実施形態においては、ブレーキシュー20が一対のブレーキ面21の間に支持面26を有していたが、ブレーキシューは、支持面や、当該支持面が設けられる突起を備えない構成であっても構わない。
前記実施形態においては、操作入力部材50の径方向外側に入力側回転部材40の受圧リング部41が配置されていたが、これを逆にして、操作入力部材50が、内周面を有し、入力側回転部材40が荷重入力面としての外周面を有し、これらの内周面と外周面の間にローラ等の可動片を配置してもよい。
前記実施形態において、カシメ部62F(延出部62E)は、周方向に等間隔で並ぶように4つ配置されている例を示したが、カシメ部の数は、例えば奇数個であってもよく、配置は等間隔でなくてもよい。
前記実施形態においては、外輪10は、シャフト30の回転方向に互いに離れた複数の溶接部Wにおいてベースプレート85に固定される例を示したが、外輪の固定方法は溶接に限らず、接着などで固定することもできる。固定部の配置や回転方向の長さも、カバー部材60のカシメ部62Fと干渉せず、必要な強度を確保できる範囲で適宜選択される。
前記実施形態においては、カシメ部62Fが、サイドフレームFRに設けられた上下一対のビード部FBの間に配置されている例を示したが、カシメ部62Fの左右に一対のビード部を形成することでクラッチユニット取付箇所の剛性を向上させることもできる。あるいは、各カシメ部62Fに隣接した位置にそれぞれビード部を配置してカシメ部62Fを保護してもよい。
前記実施形態においては、ブレーキ機構を含むクラッチユニット1のベースプレート85の面85SがサイドフレームFRの取付面SFに接触し、ベースプレート85が、締結部材としてのボルト85Fとナット85NによりサイドフレームFRに固定されている構成を例示したが、ベースプレート85を固定するための締結部材は、例示された形態に限定されず、例えば、リベットなどでもよい。
前記実施形態においては、ブレーキ装置を備えたシートとして、自動車に搭載される車両用シートSを例示したが、シートは、自動車以外の乗物、例えば、鉄道車両や船舶、航空機などに搭載される乗物用シートであってもよい。さらに、ブレーキ装置を備えたシートは、乗物用のシートに限定されず、例えば、劇場や家庭などで使用されるシートであってもよい。
また、ブレーキ機構3、ラチェット装置2およびクラッチユニット1は、シートのハイトアジャスト機構に用いられるだけでなく、アームレストなど、シャフトの回転を止めることが可能なブレーキ機構を備える他の装置に任意に適用することができる。したがって、ベースプレートが取り付けられるシートフレームは、シートクッションS1のサイドフレームFRに限定されない。前記した実施形態および変形例の構成は、シートの任意のフレーム要素に取り付けられるブレーキ装置に適用可能である。
また、前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。