JP2020027882A - 薄膜トランジスタ、薄膜トランジスタの製造方法、及び酸化物半導体膜 - Google Patents

薄膜トランジスタ、薄膜トランジスタの製造方法、及び酸化物半導体膜 Download PDF

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充 上野
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大士 小林
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抗 姜
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道賢 金
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Abstract

【課題】より信頼性の高い薄膜トランジスタ、薄膜トランジスタの製造方法、及びこのIGZO膜からなる酸化物半導体膜を提供することにある。【解決手段】上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る薄膜トランジスタは、ゲート電極と、酸化物半導体膜で構成された活性層と、上記ゲート電極と上記活性層との間に配置されたゲート絶縁膜と、上記活性層に電気的に接続された、ソース電極及びドレイン電極とを具備する。上記酸化物半導体膜は、In−Ga−Zn−O系材料からなり、非晶質で膜密度が6.0g/cm3以上である。【選択図】図1

Description

本発明は、薄膜トランジスタ、薄膜トランジスタの製造方法、及び酸化物半導体膜に関する。
薄膜トランジスタに用いられるアモルファスシリコンの代替手段として、IGZO(In−Ga−Zn−Oxide)膜が利用されている。IGZO膜は、アモルファスシリコンと比較して導電率が1桁ほど大きく、またデバイス構造も簡素になることから、例えば、表示デバイスの駆動用の薄膜トランジスタに利用されている。
IGZO膜を形成する場合には、IGZOターゲットを用い、マグネトロンスパッタリングによって成膜を行う(例えば、特許文献1参照)。そして、このようなIGZO膜を駆動用の薄膜トランジスタに適用した場合、表示ディスプレイの高精度化にともなって、より信頼性の高いものが望まれている。
特開2013−064185号公報
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、IGZO膜が薄膜トランジスタに適用された場合、より信頼性の高い薄膜トランジスタ、薄膜トランジスタの製造方法、及びこのIGZO膜からなる酸化物半導体膜を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る薄膜トランジスタは、ゲート電極と、酸化物半導体膜で構成された活性層と、上記ゲート電極と上記活性層との間に配置されたゲート絶縁膜と、上記活性層に電気的に接続された、ソース電極及びドレイン電極とを具備する。上記酸化物半導体膜は、In−Ga−Zn−O系材料からなり、非晶質で膜密度が6.0g/cm以上である。
このような薄膜トランジスタによれば、活性層の膜密度が6.0g/cm以上と高く、膜内で金属と酸素が強固に接合しているので、活性層が形成された後のプロセスが進行しても、活性層が酸化物半導体膜としての機能を維持する。これにより、薄膜トランジスタは、高い信頼性を有する。
上記の薄膜トランジスタにおいては、上記活性層がストレス試験である、PBTS試験、NBITS試験、及びNBTS試験のすくなくとも1つにおけるオン電圧(Von)の変化量の絶対値が2.0Vよりも小さいストレス耐性を有してもよい。
このような薄膜トランジスタによれば、ストレス試験である、PBTS試験、NBITS試験、及びNBTS試験を行っても、これらのすくなくとも1つにおける電圧変化量の絶対値が2.0Vよりも小さい。これにより、薄膜トランジスタは、高い信頼性を有する。
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る薄膜トランジスタの製造方法では、上記の薄膜トランジスタの製造方法で、In−Ga−Zn−O系材料からなるスパッタリングターゲットを用いて、マグネトロンスパッタリング法によって、非晶質で膜密度が6.0g/cm以上である上記活性層が形成される。
このような薄膜トランジスタの製造方法によれば、膜密度が6.0g/cm以上と高く、膜内で金属と酸素が強固に接合した活性層を形成するので、活性層を形成した後のプロセスを進行させても、活性層が酸化物半導体膜としての機能を維持する。これにより、薄膜トランジスタは、高い信頼性を有する。
上記の薄膜トランジスタの製造方法においては、磁場強度が750gauss以上に設定されたマグネトロンスパッタリング法によって、上記活性層を形成してもよい。
このような薄膜トランジスタの製造方法によれば、磁場強度が750gauss以上に設定されたマグネトロンスパッタリング法によって、活性層を形成するので、高密度の活性層が形成される。
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る酸化物半導体膜は、薄膜トランジスタの活性層に適用される酸化物半導体膜であり、In−Ga−Zn−O系材料からなり、非晶質で膜密度が6.0g/cm以上である。
このような酸化物半導体膜によれば、酸化物半導体膜の膜密度が6.0g/cm以上と高く、膜内で金属と酸素が強固に接合しているので、酸化物半導体膜が形成された後のプロセスが進行しても、酸化物半導体膜が半導体としての機能を維持する。これにより、酸化物半導体膜は、高い信頼性を有する。
以上述べたように、本発明によれば、IGZO膜が薄膜トランジスタに適用された場合、より信頼性の高い薄膜トランジスタ、薄膜トランジスタの製造方法、及びこのIGZO膜からなる酸化物半導体膜が提供される。
本実施形態に係る酸化物半導体膜を含む薄膜トランジスタの模式的断面図である。 薄膜トランジスタの製造工程の一例を示すフロー図である。 マグネトロンスパッタリング法の構成を示す模式的断面図である。 磁場強度Gを変化させた場合の活性層の特性を示すグラフ図である。 図(a)は、薄膜トランジスタのスイッチング特性の磁場依存を示すグラフ図である。図(b)は、薄膜トランジスタにストレス試験を行った場合のオン電圧の経時変化を示すグラフ図である。 図(a)〜図(b)は、磁場強度Gが330gaussのときのゲート電圧−電流特性を示すグラフ図である。図(c)〜図(d)は、磁場強度Gが750gaussのときのゲート電圧−電流特性を示すグラフ図である。図(e)〜図(g)は、磁場強度Gが1100gaussのときのゲート電圧−電流特性を示すグラフ図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。各図面には、XYZ軸座標が導入される場合がある。また、同一の部材または同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その部材を説明した後には適宜説明を省略する場合がある。
(薄膜トランジスタ)
図1は、本実施形態に係る酸化物半導体膜を含む薄膜トランジスタの模式的断面図である。
図1には、ボトムゲート型の薄膜トランジスタ1が例示されている。薄膜トランジスタ1では、ガラス基板10上に、ゲート電極13、ゲート絶縁膜12、活性層(酸化物半導体層)11、及び絶縁層15が積層されている。活性層11は、例えば、In−Ga−Zn−O系材料からなる酸化物半導体膜で構成される。ゲート絶縁膜12は、ゲート電極13と活性層11との間に配置される。活性層11は、ソース電極16S及びドレイン電極16Dに電気的に接続されている。ソース電極16S及びドレイン電極16Dが接続された部分以外の活性層11は、絶縁層15によって被覆される。ソース電極16S及びドレイン電極16Dは、保護層17で被覆される。
活性層11に適用された、IGZO膜は、非晶質で、その膜密度は、6.0g/cm以上である。IGZOとは、In−Ga−Zn−Oからなる材料の略称である。In、Ga、及びZnの原子比は、1:1:1である。活性層11の厚みは、50nmである。ゲート電極13は、Mo膜、Mo合金、Ti等で構成される。ゲート電極13の厚みは、例えば、200nmに設定される。ゲート絶縁膜12は、活性層11側のSiO膜とゲート電極13側のSi膜とを有する2層構造の絶縁膜である。ゲート電極13と活性層11との間におけるゲート絶縁膜12の厚みは、350nmである。
ソース電極16Sからドレイン電極16Dに向かう方向(Y軸方向)におけるチャネル長Lは、一例として、10μmである。X軸方向におけるチャネル幅Wは、一例として、20μmである。また、薄膜トランジスタ1としては、図示したボトムゲート型に限らず、ゲート電極13を活性層11の上方に配置したトップゲート型であってもよい。
図2は、薄膜トランジスタの製造工程の一例を示すフロー図である。
図3は、マグネトロンスパッタリング法の構成を示す模式図である。
まず、ガラス基板10の上に、ゲート電極13がパターニングされる(ステップS10)。ゲート電極13は、例えば、スパッタリング法によりガラス基板10上に成膜された後、ウェットエッチングでパターニングされる。
次に、ゲート絶縁膜12がガラス基板10及びゲート電極13の上に、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により成膜される(ステップS20)。
次に、ゲート絶縁膜12の上に、活性層11がパターニングされる(ステップS30)。活性層11は、酸素雰囲気下で磁場強度Gが750gauss以上のマグネトロンスパッタリング法によって成膜された後、ウェットエッチングでパターニングされる。マグネトロンスパッタリング法により形成された直後の活性層11は、非晶質である。ウェットエッチング時に活性層11が非晶質であることで、活性層11が大面積で形成されても、エッチャントにより精度よくパターニングされる。活性層11は、ゲート絶縁膜12を介してゲート電極13に対向するように配置される。活性層11の密度は、6.0g/cm以上である。
例えば、図3に示すスパッタリングターゲット21は、IGZO材料からなる。磁気回路22から、スパッタリングターゲット21と下地20との間の空間に漏洩する磁場強度Gは、750gauss以上に設定される。下地20は、ゲート絶縁膜12に相当する。磁場強度Gは、N極がスパッタリングターゲット21に向かう磁石22Nと、S極がスパッタリングターゲット21に向かう磁石22Sとの間に位置する、スパッタリングターゲット21の法線M上における磁力線の最大磁場強度とする。
マグネトロンスパッタリング条件の詳細は、一例として、以下のようになる。
スパッタリングガス:Ar/O
全圧:0.1Pa以上1Pa以下
分圧:全圧の1%以上30%以下
電力方式:パルス直流電圧方式(交流電圧でもよい。)
ターゲット投入電力:1W/cm以上10W/cm以上
磁場強度:750gauss以上
ターゲット基板間距離:60mm以上250mm以下
下地温度:室温から200℃までの温度
次に、活性層11の活性化のために、活性層11に対して、300℃以上500℃以下で、30分以上90分以下の加熱処理がなされる(ステップS40)。
この後、活性層11に対して、酸素を含むガスでのプラズマ処理が施される(ステップS50)。これにより、活性層11の表面の酸化の程度がさらに進行し、耐還元性が増加する。
次に、ゲート絶縁膜12及び活性層11の上に、絶縁層15がパターニングされる(ステップS60)。絶縁層15は、プラズマCVD法によって成膜された後、ドライエッチングでパターニングされる。絶縁層15は、例えば、酸化シリコンを含む。絶縁層15のパターニングでは、活性層11のソース・ドレイン電極が接続される部分が絶縁層15から開放される。
次に、絶縁層15及び活性層11の上に、ソース電極16S及びドレイン電極16Dがパターニングされる(ステップS70)。ソース電極16S及びドレイン電極16Dは、マグネトロンスパッタリング法によって成膜された後、ウェットエッチングでパターニングされる。これにより、ソース電極16S及びドレイン電極16Dが活性層11に電気的に接続される。
次に、ソース電極16S及びドレイン電極16Dの上に、保護層17がパターニングされる(ステップS80)。保護層17は、プラズマCVD法によって成膜された後、加熱処置され、ドライエッチングでパターニングされる。
図4(a)〜図4(c)は、磁場強度Gを変化させた場合の活性層の特性を示すグラフ図である。図4(a)の膜密度は、X線反射率法(XRR法)によって計測される。図4(b)のキャリア密度及び図4(c)の移動度は、ホール効果測定器によって計測される。
図4(a)に示すように、磁場強度Gを上昇させると、活性層11の膜密度が増加する傾向にある。例えば、磁場強度Gが330gaussのときは、膜密度が6.00g/cmより小さくのに対して、磁場強度Gが750gaussのときは、6.01g/cmになり、磁場強度Gが1100gaussのときは、6.03g/cmになっている。また、図4(b)に示すように、磁場強度Gを上昇させると、活性層11のキャリア密度が減少する傾向にあり、図4(c)に示すように、磁場強度Gを上昇させると、活性層11のホール移動度が減少する傾向にある。
図4(a)〜図4(c)に示す現象は、磁場強度Gの増加によってプラズマ密度が増加し、プラズマ中における金属と酸素との反応性が高まって、活性層11中における金属と酸素との結合が強固になることが考えられる。この結果、活性層11内では、磁場強度Gの増加とともに活性層11中における金属と酸素との結合が強固になって活性層11の密度が増加し、酸素欠損が減り、キャリア密度及びホール移動度が減少したと考えられる。
以下、実施例により本実施形態に係る高密度のIGZO膜を薄膜トランジスタ1に適用した場合の薄膜トランジスタ1の特性をさらに具体的に説明する。本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
表1は、薄膜トランジスタの特性の一部をまとめた表である。
また、図5(a)は、薄膜トランジスタのスイッチング特性の磁場依存を示すグラフ図である。図5(b)は、薄膜トランジスタにストレス試験を行った場合のオン電圧の経時変化を示すグラフ図である。
Figure 2020027882
表1には、磁場強度として、330gauss、750gauss、及び1100gaussの場合のS値、Von、及びストレス試験の結果が例示されている。S値は、サブスレッショルド係数である。Vonは、ソース・ドレイン間が導通するゲート電極13のオン電圧である。ここで、Vonは、ソース・ドレイン間に1×10−9Aの電流が流れた時点での電圧としている。PBTSは、ストレス試験の1種であるPositive Bias Temperature Stress試験での電圧変化量である。NBITSは、ストレス試験の1種であるNegative Bias Illumination Temperature Stress試験での電圧変化量である。NBTSは、ストレス試験の1種であるNegative Bias Temperature Stress試験での電圧変化量である。PBTS試験、NBITS試験、及びNBITS試験の条件は、以下の通りである。
PBTS試験:
ゲート電圧:+30V
ソース・ドレイン電圧:0V
基板温度:60℃
ストレス印加時間:1分〜60分
光ストレス条件:なし
NBITS試験:
ゲート電圧:−30V
ソース・ドレイン電圧:0V
基板温度:60℃
ストレス印加時間:1分〜60分
光ストレス条件:白LED、4500cd/m、60分
NBTS試験:
ゲート電圧:−30V
ソース・ドレイン電圧:0V
基板温度:60℃
ストレス印加時間:1分〜60分
光ストレス条件:なし
なお、表1でのPBTS、NBITS、及びNBITSは、ストレス試験を60分間実行した場合の結果である。
表1に示すように、磁場強度Gが増加するにつれ、S値が低くなる。すなわち、磁場強度Gが増加するにつれ、ゲート電極13による薄膜トランジスタ1のオンオフ動作の応答性が良好になることが分かった。
また、薄膜トランジスタ1にストレス試験を行った場合、活性層11が高いストレス耐性を有することが分かった。例えば、磁場強度Gを適性に調整することで、活性層11におけるPBTS試験、NBITS試験、及びNBTS試験のすくなくとも1つが良好になっている。
例えば、図5(a)には、薄膜トランジスタ1にストレス試験を実行する前のゲート電圧−電流特性(V−I特性)が示されている。図5(a)に示すように、ストレス試験の実行前では、磁場強度Gが330gauss、750gauss、及び1100gaussのそれぞれで、V−I曲線がほぼ一致し、オン電圧(Von)もほぼ一致している。
しかし、PBTS試験及びNBTS試験を行うと、図5(b)に示すように、ストレス印加時間が長くなるほど、ΔVonが330gauss、750gauss、及び1100gaussのいずれの磁場強度Gにおいても0から遠ざかる傾向にある。すなわち、ΔVonの絶対値は、ストレス印加時間の経過とともにより大きくなる。
但し、ΔVonの絶対値の拡大の程度は、磁場強度Gによって顕著な差が出ている。例えば、ストレス印加時間の経過にともなうΔVonの絶対値の拡大の程度は、磁場強度Gが330gaussよりも磁場強度Gが750gaussのほうが小さい。また、ストレス印加時間の経過にともなうΔVonの絶対値の拡大の程度は、磁場強度Gが750gaussよりも磁場強度Gが1100gaussのほうが小さい。すなわち、ストレス試験を長く実行させた場合ほど、磁場強度Gが強い場合に、ΔVonの絶対値の拡大が抑制されることが分かる。
例えば、表1に示すように、ストレス印加時間が60分の場合、磁場強度Gが330gaussでは、PBTS試験、NBITS試験、及びNBTS試験の電圧変化量の絶対値が2V前後になっている。これに対して、磁場強度Gが750gaussになると、PBTS試験の電圧変化量の絶対値が1.4Vになり、NBITS試験の電圧変化量の絶対値が0.8V、及びNBTS試験の電圧変化量の絶対値0.9Vになっている。これらの値は、磁場強度Gが330gaussのときの半分程度である。さらに、磁場強度Gが1100gaussになると、PBTS試験の電圧変化量の絶対値が1.0まで下がり、NBITS試験の電圧変化量の絶対値が0.4にまで下がっている。
図6(a)〜図6(b)は、磁場強度Gが330gaussのときのゲート電圧−電流特性を示すグラフ図である。
図6(c)〜図6(d)は、磁場強度Gが750gaussのときのゲート電圧−電流特性を示すグラフ図である。
図6(e)〜図6(g)は、磁場強度Gが1100gaussのときのゲート電圧−電流特性を示すグラフ図である。
図6(a)〜図6(g)は、ストレス試験を実行する前のゲート電圧−電流特性を示すグラフ図である。
ここで、図6(a)、(c)、(e)には、絶縁層15を形成するときの成膜温度が210℃のときのV−I特性が示されている。図6(b)、(d)、(f)には、絶縁層15を形成するときの成膜温度が220℃のときのV−I特性が示されている。図6(g)には、絶縁層15を形成するときの成膜温度が230℃のときのV−I特性が示されている。
また、図6(a)〜図6(g)において、実線は、ゲート電極を低電圧側から高電圧側に変化させた場合のV−I曲線であり、破線は、ゲート電極を高電圧側から低電圧側に変化させた場合のV−I曲線である。また、図6(a)〜図6(g)の各図には、薄膜トランジスタにおける移動度(cm/V・秒)、オン電圧(V)が示されている。
図6(a)〜図6(g)に示すように、活性層11を用いて薄膜トランジスタ1を構成した場合には、磁場強度Gの増加とともに、移動度が増加する傾向にある。これは、実デバイスでは、磁場強度Gが強くなるほど、活性層11内における酸素結合がより強固になり、活性層11中のトラップ準位が低下したことが一因としてあげられる。
また、薄膜トランジスタ1においては、磁場強度Gの増加とともに、活性層11の耐還元性が増加している。
例えば、活性層11、すなわち、IGZO膜を形成した後には、プラズマCVDによってIGZO膜上に絶縁層15が形成される。この場合、原料ガスとして、SiH/N0等が用いられる。このため、プラズマ中には、活性水素が発生している。この活性水素にIGZO膜が晒されると、IGZO膜中の酸素が活性水素により引き抜かれる場合がある。IGZO膜から酸素が引き抜かれると、いわゆる酸素poorのIGZO膜となり、IGZO膜が酸化物半導体膜としての機能を失う場合がある。
特に、絶縁層15の成膜温度が高くなるほど、活性水素の活性層11中への拡散が活発になり、その還元作用がより高まる。図6(a)〜図6(g)において、絶縁層15の成膜温度が高くなるにつれ、オン電圧が低くなるのは、還元作用の高まりを裏付けている。逆に、絶縁層15の成膜温度が低くなると、還元作用よりも酸化作用に転じて、オン電圧が高くなる傾向にある。
ここで、磁場強度Gが330gauss、750gaussの場合、絶縁層15の成膜温度を210℃、220℃に設定した場合、薄膜トランジスタ1のオンオフ動作が正常に制御され、適正なV−I曲線が得られた(図6(a)、(c))。しかし、磁場強度Gが330gauss、750gaussの場合は、絶縁層15の成膜温度を230℃に設定した場合、活性水素の還元作用によってIGZO膜が導電体に近くなり、薄膜トランジスタ1のオンオフ動作が制御できなくなった。この場合、磁場強度Gが330gauss、750gaussでの適正なV−I曲線が得られなかった。
一方、磁場強度Gを1100gaussに設定すると、絶縁層15の成膜温度を230℃に設定した場合でも薄膜トランジスタ1のオン電圧は下がるものの、薄膜トランジスタ1のオンオフ動作が正常に制御された。つまり、絶縁層15の成膜温度を230℃に設定した場合でも、磁場強度Gをより強く、例えば、1100gaussに設定することで還元作用が抑制されて、適正なV−I曲線が得られた(図6(g))。換言すれば、磁場強度Gを1100gaussに設定することで、活性層11内におけるIn、Ga、及びZnと酸素との結合がより強固になって、活性層11を形成した後の後工程、例えば、絶縁層15のCVD条件(例えば、成膜温度等)のマージン拡大が図れることが分かった。
このように、本実施形態に係る薄膜トランジスタ1によれば、活性層11を構成するIGZO膜の密度が6.0g/cm以上に構成されているので、ストレス試験であるPBTS試験、NBITS試験、及びNBTS試験を行っても、電圧変化量の絶対値が2.0Vよりも小さくなる。これにより、ストレス耐性が高く、信頼性の高い薄膜トランジスタ1が形成される。
活性層11は、膜密度が6.0g/cm以上と高く、膜内で金属と酸素が強固に接合しているので、薄膜トランジスタ1を形成するために、プラズマ中の還元性ガス(活性水素等)に活性層11が晒されたとしても、活性層11から酸素が引き抜かれにくくなっている。
さらに、絶縁層15のドライエッチング加工の際にも、活性層11が絶縁層15から表出されて活性層11がエッチングガスに晒されたとしても、活性層11は、膜密度が6.0g/cm以上と高く構成されているので、活性層11の表面がダメージを受けにくくなっている。
このように、活性層11が形成された後のプロセスが進行しても、活性層11は、酸化物半導体膜としての機能を維持する。また、活性層11がCVDガス及びエッチングガスに対しての強い耐性を有しているので、CVD条件またはエッチング条件のプロセスマージンが向上する。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。各実施形態は、独立の形態とは限らず、技術的に可能な限り複合することができる。
1…薄膜トランジスタ
10…ガラス基板
11…活性層
12…ゲート絶縁膜
13…ゲート電極
15…絶縁層
16D…ドレイン電極
16S…ソース電極
17…保護層
20…下地
21…スパッタリングターゲット
22N、22S…磁石
22…磁気回路

Claims (5)

  1. ゲート電極と、
    酸化物半導体膜で構成された活性層と、
    前記ゲート電極と前記活性層との間に配置されたゲート絶縁膜と、
    前記活性層に電気的に接続された、ソース電極及びドレイン電極と、
    を具備し、
    前記酸化物半導体膜は、In−Ga−Zn−O系材料からなり、非晶質で膜密度が6.0g/cm以上である薄膜トランジスタ。
  2. 請求項1に記載された薄膜トランジスタであって、
    前記活性層がストレス試験である、PBTS試験、NBITS試験、及びNBTS試験のすくなくとも1つにおける電圧変化量の絶対値が2.0Vよりも小さいストレス耐性を有する
    薄膜トランジスタ。
  3. ゲート電極と、酸化物半導体膜で構成された活性層と、前記ゲート電極と前記活性層との間に配置されたゲート絶縁膜と、前記活性層に電気的に接続された、ソース電極及びドレイン電極とを具備する薄膜トランジスタの製造方法であって、
    In−Ga−Zn−O系材料からなるスパッタリングターゲットを用いて、マグネトロンスパッタリング法によって、非晶質で膜密度が6.0g/cm以上である前記活性層を形成する
    薄膜トランジスタの製造方法。
  4. 請求項3に記載された薄膜トランジスタの製造方法であって、
    磁場強度が750gauss以上に設定されたマグネトロンスパッタリング法によって、前記活性層を形成する
    薄膜トランジスタの製造方法。
  5. 薄膜トランジスタの活性層に適用される酸化物半導体膜であり、
    In−Ga−Zn−O系材料からなり、非晶質で膜密度が6.0g/cm以上である酸化物半導体膜。
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