JP2020027878A - 半導体装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】短絡耐量の向上を図れる半導体装置を提供する。【解決手段】本発明は、半導体素子(1)と、半導体素子の表面側に配設され半導体素子から受熱する受熱体(3)と、半導体素子と受熱体を接合する接合層(2)とを備えた半導体装置(M1)である。半導体素子は、作動時に電流が流れる活性領域と、活性領域の外周側にあり作動時に電流が流れない非活性領域とを有する。受熱体は、対面する活性領域より面積が大きい。受熱体の外周端は活性領域の外終端より外側にある。通常、受熱体の外周端は非活性領域上にある。この際、受熱体の外周端と活性領域の外終端との対面方向の距離(d)は熱拡散長(L)以上とするとよい。受熱体は複数の金属体を接合したものでもよい。各金属体はAlからなると好ましい。【選択図】図1A
Description
本発明は、短絡耐量の向上を図れる半導体装置等に関する。
スイッチング素子として用いられる電力用半導体素子(パワーデバイス)を搭載した半導体装置(パワーモジュール)は、現在、電動機の制御等に不可欠となっている。このような半導体装置の耐久性や信頼性を確保するため、外部回路(制御対象等)に短絡が生じた場合、保護回路が作動して半導体素子に流れていた主電流が遮断される。
しかし、短絡発生時から主電流が遮断されるまで、僅かな時間であるが、半導体素子には過大な短絡電流が流れる。これにより半導体素子には、過渡的に大きな発熱(過渡熱という。)が生じ得る。この過渡熱の放熱(熱伝導)が不十分であると、素子温度の急上昇により、例えば、半導体(不純物領域)の表面に形成された電極(例えばAl層)が溶損等して、半導体素子が損壊し得る。そこで半導体装置には、一定以上の短絡耐量(短絡時に保護回路が動作するまでの間、破壊に耐えうる能力)が求められる。このような短絡耐量の確保・向上に関する記載が下記の特許文献にある。
特許文献1には、中心領域よりもその周辺領域で、オン時間が長くなるようにした半導体素子を搭載した半導体装置に関する記載がある。特許文献2は、中心領域よりもその周辺領域でチャネル長を長くした半導体素子を搭載した半導体装置に関する記載がある。
いずれの場合も、熱伝導部材を半導体素子の中心領域のみに配設することを前提にして、その外周側にある周辺領域の通電量(つまり発熱量)の低減を図っている。つまり、半導体素子全体として、短絡時の発熱量を低減させることで、短絡耐量を確保している。
しかし、そのような半導体装置では、周辺領域で生じる過渡熱の放熱が不十分となる。また、中心領域の外終端近傍で生じる過渡熱も熱伝導部材を介して十分には放熱されない。結局、従来の半導体装置では、短絡耐量の向上はあまり望めない状況であった。
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、従来とは異なる構成により、短絡耐量の向上を図れる半導体装置等を提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究した結果、活性領域(素子領域)の外周側に非活性領域を設けた半導体素子と、その活性領域よりも広い範囲を覆う受熱体(熱伝導体)とを備えた半導体装置を着想した。これを具現化および発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《半導体装置》
(1)本発明は、半導体素子と、該半導体素子の表面側に配設され該半導体素子から受熱する受熱体と、該半導体素子と該受熱体を接合する接合層と、を備えた半導体装置であって、前記半導体素子は、作動時に電流が流れる活性領域と、該活性領域の外周側にあり該作動時に電流が流れない非活性領域とを有し、前記受熱体は、対面する該活性領域より面積が大きく、該受熱体の外周端は、該活性領域の外終端より外側にある半導体装置である。
(1)本発明は、半導体素子と、該半導体素子の表面側に配設され該半導体素子から受熱する受熱体と、該半導体素子と該受熱体を接合する接合層と、を備えた半導体装置であって、前記半導体素子は、作動時に電流が流れる活性領域と、該活性領域の外周側にあり該作動時に電流が流れない非活性領域とを有し、前記受熱体は、対面する該活性領域より面積が大きく、該受熱体の外周端は、該活性領域の外終端より外側にある半導体装置である。
(2)本発明の半導体装置によれば、確実に短絡耐量の向上を図れる。この理由は、次のように考えられる。半導体装置に接続された外部回路や制御対象(例えばモータ等)に短絡が生じた場合、保護回路が作動して主電流(短絡電流)が遮断される。しかし、短絡発生時から短絡電流が遮断されるまでの時間(短絡時間)は、作動中(オン状態)の素子領域に短絡電流が流れる。これにより、その素子領域には過渡的なジュール熱(過渡熱)が生じる。その発熱量は、半導体素子(活性領域)を流れる短絡電流と、半導体素子に作用している電位差(またはその抵抗)とにより定まる。短絡時間は極短時間であるが、その発熱量は相応に大きい。
本発明の半導体装置の場合、発熱は半導体素子の活性領域で生じ、通電がなされない非活性領域では実質的に生じない。活性領域の発熱は、活性領域を覆い、その外周側にある非活性領域にまで延びた受熱体へ吸熱または放熱される。こうして短絡時でも、活性領域で生じた過渡熱は、活性領域内やその外終端近傍で滞留せず、受熱体を通じて効率的に放熱される。こうして本発明の半導体装置によれば、短絡時でも半導体素子(特に半導体と電極の界面)の過熱や電極の溶損等が抑止され、短絡耐量の向上が図られる。
ちなみに、受熱体と半導体素子が接合される対面方向(単に「面方向」または「横方向」という。)に関して、受熱体は活性領域よりも面積が大きい。このため受熱体を半導体素子上に接合(搭載)する際、受熱体の外周端と活性領域の外終端を必ずしも高精度に合致させる必要がない。この点で、本発明の半導体装置は、従来の半導体装置よりも位置精度の許容度が大きく生産性に優れる。
なお、詳細は後述するが、例えば、短絡時間中に過渡熱が拡散する長さ(熱拡散長)は、高々数十μm程度(例えば45〜50μm)である。このため、受熱体の外周端が活性領域の外終端を超過する長さや、非活性領域の幅も同程度(例えば55〜100μmさらには60〜80μm)でもよい。一方、活性領域自体は、例えば、一辺数mm程度の大きさ(例えば10〜30mm2さらには15〜25mm2)を有する。従って、半導体素子全体として観れば、非活性領域が占める範囲(面積)は極僅かである。つまり、活性領域の外周側に非活性領域を設けても、半導体素子の本来的な通電性能は十分に確保される。
《その他》
(1)本明細書でいう「短絡耐量」は、短絡の発生時から素子破壊に至るまでに受容できるエネルギー量(ジュール熱量)として規定できる。そのエネルギー量は、半導体素子(活性領域)に供給された電力量(電圧×電流)を時間積分して求まる。なお、仕様が共通する半導体素子同士なら、単に、短絡の開始時から破壊に至るまでの時間(許容短絡時間)を短絡耐量の指標としてもよい。
(1)本明細書でいう「短絡耐量」は、短絡の発生時から素子破壊に至るまでに受容できるエネルギー量(ジュール熱量)として規定できる。そのエネルギー量は、半導体素子(活性領域)に供給された電力量(電圧×電流)を時間積分して求まる。なお、仕様が共通する半導体素子同士なら、単に、短絡の開始時から破壊に至るまでの時間(許容短絡時間)を短絡耐量の指標としてもよい。
(2)特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a〜b」のような範囲を新設し得る。
本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一以上の構成要素を付加し得る。「方法」に関する構成要素は「物」に関する構成要素ともなり得る。
《半導体素子》
(1)半導体素子には、(パワー)MOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等、種々のものがある。例えば、nチャネル型MOSFETなら活性領域にソースとチャネルが形成され、nチャネル型IGBTなら活性領域にエミッタとチャネルが形成される。各チャネル上には、酸化膜(誘電体)およびゲート電極が形成される。ソース上やエミッタ上には、オーミックコンタクトした金属からなるソース電極またはエミッタ電極が形成される。本明細書では、半導体基板上で、チャネルとソースまたはエミッタが形成される側を表面側という。適宜、ソース電極やエミッタ電極等を半導体素子の表面電極または素子電極といい、ドレイン電極を裏面電極という。
(1)半導体素子には、(パワー)MOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等、種々のものがある。例えば、nチャネル型MOSFETなら活性領域にソースとチャネルが形成され、nチャネル型IGBTなら活性領域にエミッタとチャネルが形成される。各チャネル上には、酸化膜(誘電体)およびゲート電極が形成される。ソース上やエミッタ上には、オーミックコンタクトした金属からなるソース電極またはエミッタ電極が形成される。本明細書では、半導体基板上で、チャネルとソースまたはエミッタが形成される側を表面側という。適宜、ソース電極やエミッタ電極等を半導体素子の表面電極または素子電極といい、ドレイン電極を裏面電極という。
半導体素子は、周知の方法により製造される。例えば、nチャネル型のパワーMOSFETなら、SiCやGaN等の半導体基板上に、先ず、エピタキシャル成長によりn-ドリフト層を形成する。イオン注入により、そのドリフト層上にpベース領域(p-well)やn+ソース領域を形成する。ドリフト層の外終端部には、半導体素子の耐圧を保持するために、電極電位を与えない(フローティングされた)p-FLR(Field Limiting Ring)領域が形成される。パワーMOSFETの場合、隣接するn+ソース領域間にあるn-領域がチャネルとなる。なお、本明細書でいう「+」は当該領域中の不純物濃度が所定値よりも高いことを示し、「-」はその不純物濃度が所定値よりも低いことを示す。
ゲート酸化膜(SiO2)は酸化処理等により、ゲート電極(ポリシリコン)はCVD等により形成される。表面電極(ソース電極)や裏面電極はAl等のスパッタリングにより形成され、その後、レーザーアニール等されてオーミックコンタクトが確保される。
(2)半導体素子は、作動時(ターンオン時)に電流が流れる活性領域と、オン−オフ作動(スイッチング)しない非活性領域とを備える。活性領域は、半導体素子の略中央域にあり、半導体素子の表面積の大部分を占める。非活性領域は、活性領域の外周側にあり、通常、活性領域を囲繞する(方形)環状である。非活性領域は、例えば、表面側からイオン注入がなされない領域(nチャネル型半導体素子ならn+拡散がなされない領域)、またはゲート酸化膜やゲート電極を形成しない領域である。大局的に観れば、非活性領域は、チャネルのない領域(非チャネル領域)と考えることもできる。
活性領域と非活性領域の境界(活性領域の外終端)は、例えば、パワーMOSFETの場合、オンオフを制御するゲート電極とキャリアが注入される拡散層が存在する領域を活性領域と定義したとき、その活性領域の最外周端として規定される。または、例えば、パワーMOSFETの場合、オンオフを制御するゲート電極と表面電極とキャリアが注入される拡散領域(nチャンネル型半導体素子ならn+拡散)とが存在する箇所であって、その拡散領域の非チャンネル領域側外周縁、あるいは、ゲート電極の非チャンネル側外周部のチャンネル領域に近い外周縁として規定される。また非活性領域の外終端は、半導体素子のチップ外周縁として規定される。なお、上述したFLR等の耐圧構造領域を非活性領域に含めて考えてもよい。
《受熱体》
(1)受熱体は、接合層を介して対面する活性領域より面積が大きい。受熱体は、活性領域を覆うのみならず、その外周端は非活性領域にまで延びている。受熱体の外周端は、面方向に関して、非活性領域の終端と一致してもよいし、非活性領域上(つまり活性領域の外終端と非活性領域の外終端との間)にあってもよい。生産性(位置精度の確保)等を考慮すると、受熱体の外周端を非活性領域上(内)に収めるとよい。半導体素子の最外周域には、耐圧構造(FLR等)や沿面放電を避ける保護膜等が形成される。このため、非活性領域を超えて受熱体を設ける必要はない。
(1)受熱体は、接合層を介して対面する活性領域より面積が大きい。受熱体は、活性領域を覆うのみならず、その外周端は非活性領域にまで延びている。受熱体の外周端は、面方向に関して、非活性領域の終端と一致してもよいし、非活性領域上(つまり活性領域の外終端と非活性領域の外終端との間)にあってもよい。生産性(位置精度の確保)等を考慮すると、受熱体の外周端を非活性領域上(内)に収めるとよい。半導体素子の最外周域には、耐圧構造(FLR等)や沿面放電を避ける保護膜等が形成される。このため、非活性領域を超えて受熱体を設ける必要はない。
受熱体の外周端と活性領域の外終端との対面方向の距離(d)は熱拡散長(L)以上とするとよい。ここで、L=√(D・ts)、D:受熱体の熱拡散率(cm2/sec)、ts:短絡電流が半導体素子を流れる時間(sec)である。これにより短絡時の発熱を滞留させずに受熱体へ効率的に誘導でき、短絡耐量の向上が図られる。
例えば、L≦d≦2Lとして、非活性領域を必要最小限とするとよい。この際、受熱体の外周端が面方向に関して非活性領域上となるdを選択すると好ましい。受熱体の外周端と活性領域の外終端との距離が一定でないとき、その最小値をdとする。
このような事情は、受熱体の厚さ方向(対面方向に垂直な方向、単に縦方向ともいう。)についても同様である。そこで受熱体の厚さ(h)も熱拡散長(L)以上であると好ましい。例えば、L≦h≦2Lとするとよい。受熱体の厚さが一定でないとき、その最小値をhとする。なお、厚さ(h)は、受熱体単独の厚さ(接合層に接合されている受熱体の裏面から裏面まで測定した長さ)である。受熱体が積層体(例えば、複数の金属体を接合したもの)からなる場合、それぞれの厚さ(例えば、各金属体の厚さ)の合計を受熱体の高さとする(h=Σhi)。
(2)受熱体は、半導体(Si、SiC、GaN等)、酸化膜(SiO等)または保護膜(ポリイミド樹脂等)等よりも、熱伝導率が高い熱伝導体であると好ましい。半導体素子の表面電極に接合される場合、受熱体はさらに、高導電性(低抵抗率)であると好ましい。そこで受熱体は、例えば、Cu、Al等からなる金属体(膜、箔、層)であるとよい。金属からなる受熱体は、外部回路に繋がるリード等と接合される実装部の電極を兼ねてもよい。
《接合層》
(1)接合層は、例えば、はんだ、焼結金属、金属間化合物(IMC:inter metallic compound)等で形成される。短絡時に半導体素子(活性領域)で生じる発熱により、接合層も高温となる。そこで接合層は高融点で耐熱性に優れるとよい。これにより半導体素子から受熱体への安定した熱伝導が確保される。接合層は、例えば、焼結金属または金属間化合物からなると好ましい。
(1)接合層は、例えば、はんだ、焼結金属、金属間化合物(IMC:inter metallic compound)等で形成される。短絡時に半導体素子(活性領域)で生じる発熱により、接合層も高温となる。そこで接合層は高融点で耐熱性に優れるとよい。これにより半導体素子から受熱体への安定した熱伝導が確保される。接合層は、例えば、焼結金属または金属間化合物からなると好ましい。
焼結金属からなる接合層は、Ag等のナノ粒子を含むペーストを接合面間に塗布した後、加熱することにより形成される。これにより、接合時の加熱温度よりも高融点な焼結金属からなる接合層が得られる。
高融点金属からなる接合面と低融点金属からなる接合面とを圧接しつつ加熱すると、接合界面で固液相互拡散(単に「SLID(Solid Liquid Inter Diffusion)反応が生じる。このSLID反応により、接合時の加熱温度(低融点金属が溶融する温度)よりも高融点な金属間化合物からなる接合層が得られる。このような接合方法を単に「SLID接合」という。
SLID接合する場合、高融点金属/低融点金属の組合わせとして、Ni/Sn、Cu/Sn、Ag/Sn、Pt/Sn/、Au/Sn等がある。Ni(融点:約1450℃)またはCu(融点:約1085℃)とSn(融点:約230℃)との組合せが好例である。Ni面とSn面をSLID接合する場合なら、両面を圧接しつつ約350℃×5分間程度加熱するとよい。低融点なSnの溶融開始後、高融点な金属間化合物であるニッケルスズ(NiSn/融点:約795℃)からなる接合層が得られる。
(2)接合層に接合される受熱体は、熱伝導性や電導性に優れる他、高延性または低ヤング率な金属体であると好ましい。このような金属体は、接合層周辺で生じる熱膨張係数(CTE:coefficient of thermal expansion)差(CTE不整合)に起因した熱応力を緩和し、温度サイクルに対する耐久性(耐熱疲労性)を高め得る。金属体は、例えば、Al箔、Cu箔等からなるとよい。
その金属体(第1金属体という。)上に、さらに別な金属体(第2金属体という。)が接合されて受熱体が構成されてもよい。つまり受熱体は、少なくとも、上述した接合層(第1接合層という。)に接合される第1金属体と、第1金属体の表面側に接合される第2金属体とを備える積層金属体でもよい。第1金属体と第2金属体を接合する接合層を、適宜「第2接合層」という。
第2金属体は熱伝導性や電導性に優れる限り、必ずしも高い熱応力緩和性等までは要求されない。そこで第1金属体はAlまたはAl合金とし、第2金属体はAl、Al合金、CuまたはCu合金のいずれかとしてもよい。なお、第2金属体は、例えば、外部回路に連なるリード(箔状、板状)やワイヤー等が接合される実装用電極として用いられ得る。
[第1実施例]
(1)本発明の半導体装置の一例であるパワーモジュールM1の要部を、図1Aと図1B(両者を併せて単に「図1」という。)に模式的に示した。
(1)本発明の半導体装置の一例であるパワーモジュールM1の要部を、図1Aと図1B(両者を併せて単に「図1」という。)に模式的に示した。
パワーモジュールM1は、nチャネル型MOSFET(半導体素子)からなるチップ1と、チップ1上に搭載された熱伝導体3(受熱体)と、両者を接合する接合層2とを備える。
チップ1は4H−SIC基板11(単に「基板11」という。)からなる。その基板11(またはCVD等により形成されたn-ドリフト層)の表面側には、イオン注入されたp型不純物(Al等)により、複数のp拡散域111a、111b、111cが形成されている。p拡散域111aは、チップ1の中央にある長方形状の活性領域に、周期的に多数形成されている。p拡散域111bは、その活性領域の外側を囲繞する方形環状の非活性領域に形成されている。p拡散域111cは、その非活性領域の外終端近傍を囲繞するように方形環状に形成されている。p拡散域111cにより、フローティングされたp-FLR(耐圧構造)が構成される。
各p拡散域111aの表面側には、イオン注入されたn型不純物(P等)により、ソースとなる一対のn+拡散域112がそれぞれ形成されている。隣接するn+拡散域112の間がチャネル113となる。
基板11の表面にはSiO2からなる酸化膜12が形成される。チャネル113に対応してポリシリコンからなるゲート電極13が形成される。n+拡散域112を覆う酸化膜12の一部はエッチングにより除去される。露出したn+拡散域112上にスパッタリングにより堆積させたAlを加熱処理することにより表面電極14(ソース電極)が形成される。
表面電極14は、p拡散域111bの表面側のみならず、p拡散域111cの一部の表面側まで延在している。基板11の裏面側には、スパッタリングによりスパッタリングにより堆積させたAlを加熱処理することにより裏面電極15(ドレイン電極)が形成される。
熱伝導体3は、Alからなる金属体である。熱伝導体3は、チップ1の活性領域よりも面方向の面積が大きい。熱伝導体3は、活性領域全体を覆うように、その外周端が非活性領域内となるように配置されている。熱伝導体3は、外部回路へ至るリード等の実装用電極を兼ねている。
熱伝導体3の裏面とチップ1の表面電極14の表面には、予め、Ni層とSn層が順次蒸着されている。両面を圧接状態で加熱することにより、熱伝導体3とチップ1の表面電極14とはSLID接合される。こうしてNiSn(IMC)からなる接合層2が形成される。
(2)チップ1を面方向から観たとき、活性領域は例えば5mm×5mm程度、非活性領域の幅は例えば100μm程度である。活性領域の外終端と熱伝導体3の外周端との面方向の距離(d)は、例えば50μm程度とするとよい。この距離(d)は次のように設定される。
短絡時の発熱領域である活性領域の終端からの距離(d)は熱拡散長(L)以上あると好ましい。熱拡散長はL=√(D・ts)として求まる。熱伝導体3を構成し得るAlまたはCuに関する熱拡散長の時間変化を図2に示した。ここでAlの熱拡散率(D)は約0.998cm2/sec、Cuの熱拡散率(D)は約1.17cm2/secである。
通常、外部回路で短絡が発生した場合、保護回路が作動して短絡電流が遮断されるまでに要する時間(短絡時間:ts)は5μs程度である。図2から明らかなように、熱伝導体3として、AlとCuのいずれを用いても、その熱拡散長は約45μm前後である。従って、そのような場合なら、dを50μm(≧L)とすればよいことがわかる。
[第2実施例]
(1)本発明の半導体装置の他例であるパワーモジュールM2の要部断面図を図2に模式的に示した。パワーモジュールM2は、パワーモジュールM1の接合層2を接合部20に変更したものである。パワーモジュールM1と同様な部分については、同符号を付して説明を省略した。
(1)本発明の半導体装置の他例であるパワーモジュールM2の要部断面図を図2に模式的に示した。パワーモジュールM2は、パワーモジュールM1の接合層2を接合部20に変更したものである。パワーモジュールM1と同様な部分については、同符号を付して説明を省略した。
接合部20は、接合層21(第1接合層)と金属箔23と接合層22(第2接合層)とが順に積層された3層構造からなる。なお、パワーモジュールM2の場合、熱伝導体3が本発明でいう「第2金属体」に相当し、その熱伝導体3と金属箔23(第1金属体)が「受熱体」を構成する。
パワーモジュールM1では、熱伝導体3の厚さ(h2)を受熱体の厚さ(h)とした。パワーモジュールM2では、金属箔23の厚さ(h1)と熱伝導体3の厚さ(h2)の合計(h1+h2)を受熱体の厚さ(h)とする。いずれの場合でも、受熱体の厚さ(h)が既述した熱拡散長以上であると好ましい。
接合部20は、例えば、金属箔23の両面に高融点金属(Ni等)と低融点金属(Sn等)を順にメタライズ(蒸着)した多層接合材を用いて、上述したSLID接合を行うことにより形成される。そして、チップ1と金属箔23と熱伝導体3が、耐熱性に優れたIMC(NiSn等)からなる接合層21、22で相互に接合されたパワーモジュールM2が得られる。多層接合材については、WO2017/086324号公報等に詳述されている。
高延性または低ヤング率な金属からなる金属箔23を用いることにより、チップ1(半導体)と熱伝導体3(金属体)の間でCTE不整合に基づき生じる熱応力が緩和される。これにより、パワーモジュールM2の温度サイクルに対する耐久性や信頼性が高まる。
(2)パワーモジュールM2について、短絡時に生じる表面電極14の温度の時間変化をシミュレーションした。温度の評価位置は、表面電極14の表面中央とした。表面電極14はAl層:厚さ5μm、接合層21、22はいずれもNiSn層:厚さ5μm、熱伝導体3はAlブロック:厚さ100μm、金属箔23はAl箔またはSn箔:厚さ100μmとした。短絡時の単位時間あたりの発熱量(電力)は1.2×106Wとし、SYNOPSYS社製SENTAURUS Deviceを用いて解析した。
金属箔23をAl箔とした試料1、金属箔23をSn箔とした試料2およびチップ1単体(接合部20および熱伝導体3が無い状態)である試料0に関する解析結果を図4に示した。
図4から明らかなように、接合部20および熱伝導体3を設けた試料1、2では、表面電極14の温度が大幅に低減される。但し、試料1、2の場合でも、短絡時間:5μsのとき、表面電極14の温度は約720K(約447℃)程度の高温となる。この温度は、試料1の金属箔23(Al)の融点(約933K/約660℃)よりは十分に低いが、試料2の金属箔23(Sn)の融点(約505K/約232℃)よりは高い。そこで、受熱体(金属箔23や熱伝導体3)を構成する金属は、高融点で熱伝導性や通電性に優れるAlまたはそれらの合金が好ましいといえる。特に金属箔23をAlまたはAl合金とすれば、さらに応力緩和性も確保されて好ましい。なお、熱伝導体3には、AlまたはAl合金に替えて、Cu(融点:約1358K/約1085℃)またはその合金を用いてもよい。
(3)各試料の短絡耐量も、上述したシミュレーションにより求めた。試料0の場合を1として、各試料の短絡耐量の向上率を図5に示した。ここでいう短絡耐量は、短絡電流と電源電圧との積を、短絡時間内で時間積分して算出した。図5は、熱伝導体(受熱体)のない試料0の短絡耐量(J/cm2)に対する短絡耐量の増加率を示している。図5から、試料1は試料0の短絡耐量の1.6倍、試料2は試料0の短絡耐量の1.3倍であることがわかる。
図5からも明らかなように、接合部20および熱伝導体3を設けることにより短絡耐量が大幅に向上する。特に、接合部20の金属箔23をAl箔とすると、短絡耐量が60%も増加することがわかった。
以上のように、本発明の半導体装置によれば、半導体素子の活性領域で生じた過渡熱に対する十分な熱拡散領域を受熱体が備えるため、短絡耐量の向上を確実に図れる。これになり、短絡保証時間を5μs以上、7μs以上さらには10μs以上とした半導体装置の提供も可能となる。また、高延性(低ヤング率)な金属(Al等)を受熱体に用いることにより、半導体素子のオン/オフの繰り返しに伴い生じる温度サイクル等についても、高信頼性の半導体装置を提供できる。
M1 パワーモジュール
1 チップ(半導体素子)
2 接合層
3 熱伝導体(受熱体)
1 チップ(半導体素子)
2 接合層
3 熱伝導体(受熱体)
Claims (9)
- 半導体素子と、
該半導体素子の表面側に配設され該半導体素子から受熱する受熱体と、
該半導体素子と該受熱体を接合する接合層と、
を備えた半導体装置であって、
前記半導体素子は、作動時に電流が流れる活性領域と、該活性領域の外周側にあり該作動時に電流が流れない非活性領域とを有し、
前記受熱体は、対面する該活性領域より面積が大きく、
該受熱体の外周端は、該活性領域の外終端より外側にある半導体装置。 - 前記受熱体の外周端は、前記非活性領域上にある請求項1に記載の半導体装置。
- 前記受熱体の外周端と前記活性領域の外終端との対面方向の距離(d)は、下記に示す熱拡散長(L)以上である請求項1または2に記載の半導体装置。
L=√(D・ts)
D:受熱体の熱拡散率 (cm2/sec)
ts:短絡電流が半導体素子を流れる時間(sec) - 前記受熱体の厚さ(h)は、前記熱拡散長(L)以上である請求項3に記載の半導体装置。
- 前記非活性領域は、非チャネル領域である請求項1〜4のいずれかに記載の半導体装置。
- 前記接合層は、金属間化合物からなる請求項1〜5のいずれかに記載の半導体装置。
- 前記金属間化合物は、ニッケルスズである請求項6に記載の半導体装置。
- 前記受熱体は、前記接合層に接合される第1金属体と、
該第1金属体の表面側に接合される第2金属体とを備える請求項1〜7のいずれかに記載の半導体装置。 - 前記第1金属体はAlまたはAl合金からなり、
前記第2金属体はAl、Al合金、CuまたはCu合金のいずれかからなる請求項8に記載の半導体装置。
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