JP2020027787A - 優れた機械的特性を有する導電性複合材料 - Google Patents

優れた機械的特性を有する導電性複合材料 Download PDF

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邦明 長峯
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Abstract

【課題】不燃性の電解液を用いることにより安全性を高めた新規な有機ラジカル電池を提供する。【解決手段】安定ラジカル化合物を活物質として正・負極に用いた有機ラジカル電池において、当該ラジカルのp型・n型の標準酸化還元電位より広い電位窓を有したイオン液体を電解質に用いる。【選択図】図1

Description

本発明は、イオン液体を電解液に用いた有機ラジカル電池に関する。
あらゆる物、生物がITネットワークにつながれたIoT社会の実現に向けて、物、生物に装着したIoTデバイスに電力を供給するための小型電源が切望されている。この小型電源には、燃えない、爆発しないといった安全性が求められている。また人に装着するうえでは柔軟性などの要求も高い。
特許文献1に開示されている有機ラジカル電池は、安定ラジカル化合物を電極活物質とした用いた二次電池である。非特許文献1には、安定ラジカル化合物を高分子化することで、柔軟性の高い有機ラジカル電池を実現できることが述べられている。また、有機ラジカル電池は、コバルト酸リチウムなどを活物質に用いたリチウムイオン電池と異なり、過充電時の熱暴走がなく安全性が高いことも述べられている
一方、有機ラジカル電池は、燃焼しやすい有機溶媒を電解質に用いており、安全性に対する懸念は依然として残されていた。IoTデバイス用電源としての解決すべき課題である。
特開2002−304996号公報 特開2002−170568号公報 特開2002−298850号公報 特開2002−313344号公報
岩佐他3名、「NEC 技報」、2012年、7巻, p.105-106 Adv.Mater.、2011、23、751−754. Adv.Mater.、2009、21、1627−1630. Macromolecules、2013、46,1361−1367. Macromolecules、2007、40、3167−3173.
特許文献2、3では、正極あるいは負極の少なくとも1方の活物質をラジカル化合物とした有機ラジカル二次電池、特許文献4には、安定ラジカルを有する高分子化合物を用いた有機ラジカル二次電池が記載されているが、いずれも電解質にリチウムイオンを含む有機溶媒を用いており安全性の点で課題がある。一方、有機溶媒を用いない場合、負極活物質の候補となる材料は非常に少なく、電池開発を困難にしている。n型ラジカル化合物も開発されてきたが、実用に耐え得る安定性(非分解性)を有するものはこれまで存在しない(非特許文献2−5)。本発明の目的は、上記の課題を解決し、体表に装着可能な、安全な小型有機ラジカル二次電池を提供する。
従って、本発明の電池は、正極、負極、及び電解液を備える二次電池であって、前記正極の正極活物質及び前記負極の負極活物質が、安定ラジカルを有する安定ラジカル化合物を含み、前記電解液の電解質が、イオン液体であることを特徴とする。ここで安定ラジカル化合物とは、不対電子を安定して維持できる化合物である。
本電池は、ラジカル含有高分子化合物を正・負極の活物質とし、さらに、電解質をイオン液体とすることで、安全な新規有機ラジカル二次電池を実現する。
本電池にあっては、イオン液体は、前記安定p型・n型ラジカル化合物の標準酸化還元電位より広い電位窓を有することが望ましい。ここで、p型・n型ラジカル化合物とは、安定ラジカルのうち、可逆的に酸化されてカチオン種を生じるもの(p型ラジカル化合物)、及び可逆的に還元されてアニオン種を生じるもの(n型ラジカル化合物)である。可逆的に酸化も還元もされ、p型とn型の両方の特性を示す安定ラジカル化合物も存在する。二次電池を構成する場合、p型ラジカル化合物は正極活物質(充電時に酸化されて電極電位が正の方向に動く)、n型ラジカル化合物は負極活物質(充電時に還元されて電極電位が負の方向に動く)として用いられる。また、電位窓とは、電解液の電気分解が起こらない電位の範囲であり、例えばp型・n型ラジカル化合物がこの電位範囲外で酸化還元反応を起こすような場合は、電解液の電気分解が優先して起こるため電池の性能が劣るものとなる可能性がある。n型の酸化還元電位付近での安定性はイオン液体のカチオンが支配的であるため、イオン液体のカチオン種が、1−ethyl−3−methylimidazolium(EMI)、1−butyl−3−methylimidazolium (BMI)、N,N−Diethyl−N−Methyl−N−(2− methoxyethyl) ammonium (DEME)、N−(2−methoxyethyl)−N−methylpyrrolidinium(MEMP)、1−Methyl−1−propylpyrrolidinium (MPP)、1−methyl−1−propylpiperidinium (MPPp)、Butylmethylpyrrolidinium (BMP)、1−butyl−1−methylpiperidinium (BMPp)、Butylpiridinium (BP)、N,N−diethyl−N−methoxymethyl−N−methylammonium(DEMM)、N−methoxymethyl−N−methylpyrrolidinium(MMMP)、N−methoxymethyl−N、N,N−trimethylammonium(MMTM)のいずれか1種単独、あるいは2種以上組み合わせであることが好ましい。
本発明にあっては、正・負極活物質として使用する高分子化合物が有する安定ラジカルは、酸化還元反応速度、及び構造的安定性の点から、少なくとも一方が2,2,6,6−tetramethylpiperidine−1−oxyl (TEMPO)であることが好ましい。また、製造プロセスの簡略化の点から、正・負両極の活物質がTEMPOを含むことがより好ましい。また、本発明にあっては、ラジカル含有高分子化合物へのイオン液体の浸透を促進させる目的から、電解液全体の重量を基準として25vol%未満のアセトニトリルが混合されていてもよい。
正負極活物質に安定ラジカルを有する高分子化合物、電解質にイオン液体を用いることで、体表でも使用可能な安全性を実現できる。
本発明にかかる有機ラジカル二次電池の構成を説明するための図。 実施例1の、イミダゾリウム系カチオン種を有するイオン液体中で計測したTEMPOのサイクリックボルタンメトリを示す図。 実施例1の、アンモニウム系カチオン種を有するイオン液体中で計測したTEMPOのサイクリックボルタンメトリを示す図。 実施例1の、ピロリジニウム系カチオン種を有するイオン液体中で計測したTEMPOのサイクリックボルタンメトリを示す図。 実施例1の、ピペリジニウム系カチオン種を有するイオン液体中で計測したTEMPOのサイクリックボルタンメトリを示す図。 実施例1の、EC−DEC溶液に溶解した1M LiPF6を電解質として用いて計測したTEMPOのサイクリックボルタンメトリを示す図。 実施例1の、イオン液体EMI−BF4に種々濃度のアセトニトリルを混合した溶液中で計測した、TEMPOのサイクリックボルタンメトリを示す図。 実施例1の、イオン液体DEME−BF4に種々濃度のアセトニトリルを混合した溶液中で計測した、TEMPOのサイクリックボルタンメトリを示す図。 実施例2の、イオン液体MPP−TFSI中で計測した、ラジカル高分子PTMA、PTVE電極のサイクリックボルタンメトリを示す図。 実施例2の、イオン液体MPP−TFSIに種々濃度のアセトニトリルを混合した溶液中で計測した、ラジカル高分子PTMA、PTVE電極のサイクリックボルタンメトリを示す図。 実施例3の、ラジカル電池の充放電曲線を示す図。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本発明にかかる電池は、ラジカルを有する高分子化合物を活物質とした正・負極、及び、p型・n型ラジカル化合物の標準酸化還元電位より広い電位窓を有したイオン液体を電解質として含む電池である。
図1に、本発明にかかる電池の構成を例示する。
本発明にかかる電池は、正極端子10が接続された正極集電体1および正極活物質層2からなる正極層3と、負極端子11が接続された負極集電体4および負極活物質層5からなる負極層6を、イオン液体8を含むセパレータ7を介して重ね合わせて積層体とし、この積層体を、正極端子10と負極端子11とが外部に露出した状態で外装9によって封止したものである。そして、正極活物質層2と負極活物質層5の両方に、電極活物質の主たる成分として、安定ラジカルを含む高分子化合物が含まれている。
正極活物質層2、および負極活物質層5は、活物質、補助導電材、及び結着剤で構成される。
一般的に活物質は、出発状態と、電極反応によって酸化または還元された状態との二つの状態を取るが、本発明の電池においては、活物質が出発状態でラジカル状態にあることを特徴としている。本発明の電池の充放電メカニズムとしては、正極活物質層2と負極活物質層5中のラジカル化合物が電極反応によってラジカル状態とイオン状態に可逆的に変化して電荷を蓄積するものである。
本発明の電池で、活物質として使用する高分子化合物が有するラジカルの種類は特に限定されるものではないが、酸化還元反応速度、及び構造安定性の観点から、2,2,6,6−tetramethylpiperidine−1−oxyl (TEMPO)、2,2,5,5−tetramethyl−1−pyrrolidinyloxy(PROXYL)、di−tert−butylnitroxyl、1−phenylnirtonyl nitroxide、2,4,6−tri−tert−butylphenoxyl、Galvinoxyl、Diphenylpicrylhydrazyl(DPPH)が好ましい。
正・負極の活物質として用いるラジカル化合物の組み合わせは、起電力が得られる組み合わせであれば特に限定されるものではないが、製造プロセスの簡略化、製造コストの低減の点から、同じ有機ラジカル化合物で構成されることがより好ましい。
本発明では、正極活物質層2、及び負極活物質層5を形成する際に、インピーダンスを低下させる目的で、補助導電材を混合させることもできる。これらの材料としては、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、アセチレンブラック等の炭素質微粒子、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアセン等の導電性高分子が挙げられる。
本発明では、正極活物質層2、及び負極活物質層5を形成する際に、各構成材料間の結合を強めるために、結着剤を用いることもできる。このような結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフロライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、各種ポリウレタン等の樹脂バインダーが挙げられる。
本発明に用いるイオン液体8として、特に限定されないが、以下のカチオン、及びアニオンの組み合わせから成るイオン液体8を用いることができる。カチオン:アンモニウム系、イミダゾリウム系、ピペリジニウム系、ピロリジニウム系、モルホニウム系、ホスホニウム系、ピリジニウム系、スルホニウム系。アニオン:BF4−、PF6−、(CF3SO2)2N−(TFSI)、(FSO2)2N− (FSI)、AlCl4−、 NO2−、NO3−、I−、AsF6−、SbF6−、NbF6−、TaF6−、F(HF)2.3−、p−CH3PhSO3−、CH3CO2−、CF3CO2−、CH3SO3−、CF3SO3−、(CF3SO2)3C−、C3F7CO2−、C4F9SO3−、(C2F5SO2)2N−、CF3SO2)(CF3CO)N、(CN)2N−。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。イオン液体8は、p型・n型ラジカル化合物の標準酸化還元電位より広い電位窓を有することが好ましい。特に、n型の酸化還元電位付近での安定性はイオン液体のカチオンが支配的であるため、イオン液体が以下のカチオン種を有することが好ましい:1−ethyl−3−methylimidazolium(EMI)、1−butyl−3−methylimidazolium(BMI)、N,N−Diethyl−N−Methyl−N−(2− methoxyethyl) ammonium (DEME)、N−(2−methoxyethyl)−N−methylpyrrolidinium (MEMP)、N−Methyl−N−propylpyrrolidinium(MPP)、N−methyl−N−propylpiperidinium(MPPp)、Butylmethylpyrrolidinium(BMP)、N−butyl−N−methylpiperidinium(BMPp)、Butylpiridinium (BP)、N,N−diethyl−N−methoxymethyl−N−methylammonium(DEMM)、N−methoxymethyl−N−methylpyrrolidinium(MMMP)、N−methoxymethyl−N、N,N−trimethylammonium(MMTM)。
また、本発明に用いる電解液には、粘度を下げてイオン電導度を高めるために、イオン液体に少量の有機溶媒を混合してもよい。有機溶媒の種類は特に限定されないが、γ―Valenrolactone,γ―Butyrolactone(GBL)、3−Methylsufolate、Sulfolane、Acetonitril、Tetrahydrofulan(THF)、1,3−Dioxolane(DOL)、1、2−Dimethyoxyethane(DME)、3−Methyl−2−ozazolidinone、N,N−Dimethylformamide、Dimethylsulfoxide、Ethylene carbonate(EC)、Propylene carbonate(PC)、Butylene carbonate(BC)、Dimethyl carbonate(DMC)、Ethyl mehyl carbonate(EMC)、Diethyl carbonate(DEC),2−Methyltetrahydrofulan(2MeTHF)、4−Methyl−1,3−dioxolane(4MeDOL)、Methyl formate(MF)、Methyl acetate(MA)、Methyl propionate(MP)等を用いることができる。電解液に対する有機溶媒の混合比は、特に限定されないが、0から25vol%が望ましい。この範囲であれば燃えにくいという特徴維持できるからである。
本発明の電池においては、正極集電体1、および負極集電体4として、ニッケル、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス、チタン、銅等の金属や炭素材料を用いることができる。これらの形状は特に限定されず、箔、平板、メッシュ状等を用いることができる。また、集電体に触媒効果を持たせたり、活物質と集電体とを化学結合させたりしてもよい。
本発明の電池においては、正極層3と負極層6とが接触しないように、セパレータ7を用いることが好ましい。このようなセパレータ7としては、多孔質フィルム、不織布などの材料を用いることができる。また、セパレータ7は、電解質であるイオン液体8を含ませて構成することが好ましい。
本発明の電池に用いる外装9として、その材料および形状は特に限定されず、従来公知のものが用いられる。外装9としては、例えば、金属ケース、樹脂ケース、またはアルミニウム箔等の金属箔と合成樹脂フィルムからなるラミネートフィルム等が挙げられる。また、形状としては、例えば、円筒型、角型、コイン型、またはシート型等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明は下記の参考例、および実施例により制限されるものではない。
[参考例1]
3極式セルを用いて各種イオン液体中でのTEMPOの酸化還元反応をサイクリックボルタンメトリで評価した。
作用極にグラッシーカーボン電極(BAS社製)、対極に白金コイル(BAS社製)、参照極にAg/Ag+電極(BAS社製)を用いた。測定溶液は、各種イオン液体(カチオン:イミダゾリウム系カチオン(EMI、BMI)、アンモニウム系カチオン(DEME)、ピロリジニウム系カチオン(MEMP、MPP、BMP)、及びピペリジニウム系カチオン(MPPp、BMPp)。アニオン:BF4、TFSI。)を使用した。用いるイオン液体はオイルバスを用い、100℃、12時間真空乾燥した。3電極を測定溶液に浸漬し、各電極のリード線を電気化学アナライザ(ALS612E、BAS社製)に接続した。作用電極電位を掃引し、その時得られる電流を計測した。
図2、図3、図4、図5に、各種イオン液体(カチオン:イミダゾリウム系カチオン(EMI、BMI)、アンモニウム系カチオン(DEME)、ピロリジニウム系カチオン(MEMP、MPP、BMP)、及びピペリジニウム系カチオン(MPPp、BMPp)。アニオン:BF4、TFSI。)を溶媒としたTEMPOのCVを示す。+0.5V vs.Ag/Ag+、および−1.5 V vs.Ag/Ag+付近に、それぞれp型、n型の酸化還元反応に相当する可逆的なピーク電流が得られた。一方、溶媒に1MLiPF6 in EC−DECを用いた場合、n型の可逆的な酸化還元ピークは得られなかった(図6)。以上よりイオン液体によるn型TEMPOの安定化効果が示された。
イオン液体の種類により粘性および導電率が異なり、図2、図3、図4、図5に示すようにTEMPOの酸化還元ピーク電流値が異なる。粘性が低く、導電率が高いイオン液体ほどp型、n型の酸化還元電流は増加した。
本発明に用いるイオン液体には、異種有機溶媒を混合してもよい。例えば、図7、図8のようにPTMAやPTVEとの相溶性が高いアセトニトリルをイオン液体と混合した場合、25vol%の混合割合までp型、n型両方の酸化還元ピーク電流が得られた。
[参考例2]
ラジカル化合物を有する高分子を活物質層とした電極の酸化還元挙動をサイクリックボルタンメトリで評価した。TEMPOを有する高分子、Poly(2,2,6,6−tetramethylpiperidinyloxy−4−yl methacrylate)(PTMA)の合成は、開示された合成方法に従った(特許文献 特開2002−304996)。また、同様にTEMPOを有する別の高分子、Poly(2,2,6,6−tetramethylpiperidinyloxy−4−ylvinylether)(PTVE)の合成は、開示された合成方法に従った(非特許文献Macromol.Rapid Commun.2007,28,1929−1933.)
<スラリー調製>
予め粉砕したPTMAあるいはPTVE粉末(0.5g)を乳鉢に平らに入れ、MPP−TFSI0.345mL(0.5g)を加え、乳棒を用いて混錬した。補助導電剤SuperC(IMERYS社製)0.41gを添加し、PTMA、MPP−TFSI、導電補助剤が均一になるまで混錬した。そこに1.0mLの2%−CMC−Na溶液と12.55μLの結着剤PTFE溶液(ダイキン社製)と水1.25mLを入れて混錬し、均一なスラリーを得た。スラリー中の不揮発性成分の比率は、PTMAもしくはPTVEが33.3% SuperCが27.3%、MPP−TFSIが33.3% CMC−Naが5.3% PTFEが0.7%である。
<スラリー塗工>
アルミ箔上に、厚さ50μmのPolyethylenenaphtharate(PEN)フィルム2枚を幅3mm間隔に固定した。スキージーを用いてPENフィルム間の溝に上述のスラリーを充填した。固定したPENフィルムをはがし、100℃で1時間乾燥させた。アルミ箔上には幅3mmの塗工部が形成された。
次に長さ方向に対して3mm幅で切断し、電極部が末端になるように切り出した。幅5.5mm、長さ50mmの青板にカプトンテープを用いて固定した。作製した電極は100℃で3時間真空乾燥させた。
<セットアップ>
3極式セルを用い、イオン液体中での電極のサイクリックボルタンメトリを計測した。作用極に上記電極、対極に白金コイル(BAS社製)、参照極にAg/Ag+電極(BAS社製)を用いた。測定溶液は各種イオン液体にアセトニトリルを任意の割合で混合した溶液を使用した。用いるイオン液体はあらかじめオイルバスを用い、100℃で12時間真空乾燥した。3電極を測定溶液に浸漬し、各電極のリード線を電気化学アナライザ(ALS612E、BAS社製)に接続した。作用電極電位を掃引し、その時得られる電流を計測した。
図9に、イオン液体MPP−TFSI中で計測したPTMA電極、及びPTVE電極のCVを示す。実施例1と同様、+0.5 V vs.Ag/Ag+と−1.5V vs.Ag/Ag+にそれぞれp型およびn型PTMAの酸化還元ピーク電流が得られ、同一活物質で電池のアノード・カソードを構成可能であることが示された。図10は、測定溶液のイオン液体中にアセトニトリルを10vol%添加した場合のCVである。アセトニトリル添加によりp型、n型の可逆的酸化還元電流が増加した。これは、イオン液体で膨潤したPTMAゲルに対し、アセトニトリル溶解性のイオン液体が浸透しやすくなった結果と考える。しかし、アセトニトリル混合濃度を25vol%以上に増やすとn型TEMPOの安定化効果が得られなくなった。以上より、電解質であるイオン液体には0vol%から25vol%のアセトニトリルを混合することが容量増加に有効であることが分かった。
[実施例1]
図1記載の構成の電池を構築し、その充放電特性を評価した。
PTMA(TEMPOを有する高分子)の合成、およびスラリー調製は、参考例2に従った。得られたスラリーをアルミ集電極(宝泉社製)にブレードで塗工し、100℃で1時間、乾燥させることで正極層3、および負極層6のフィルムを得た。小型打ち抜き器及びトムソン刃(タクミ技研社製)を用いて正極層3、及び負極層6を直径16mm、紙製セパレータ7を直径18mmに切断した。正極、負極、セパレータおよびフラットセル部品は100℃で15時間真空乾燥させた。正極層3、負極層6、およびセパレータ7にイオン液体8として90vol% MPP−TFSIと10vol% アセトニトリルの混合溶液を少量滴下し、1分後にフラットセル(タクミ技研社製)内で積層構造を作製した。上記フラットセルを恒温槽(アズワン社製)に設置後、配線を充放電装置(EF−7100P,Electrofield社製)に接続し、充放電試験を開始した。充電、及び放電電流は5μA(0.07C相当),稼働温度は40℃に設定した。
図11に、正極および負極の活物質としてPTMA,電解質として90vol% MPP−TFSIと10vol% アセトニトリルの混合溶液を用いた時の電池の充放電曲線を示す。充放電時にプラトーな電位領域が得られ、電池として動作していることが確認できた。
以上、説明した新規有機ラジカル二次電池は、柔軟、安全、安定なため、例えば人体に貼付して使うウエアラブル機器用を始め、物流管理や環境モニタリング用センサなどIoT社会に資するデバイスの小型電源として用いることができる。
1 正極集電体
2 正極活物質層
3 正極層
4 負極集電体
5 負極活物質層
6 負極層
7 セパレータ
8 イオン液体
9 外装
10 正極端子
11 負極端子

Claims (8)

  1. 正極、負極、及び電解液を備える二次電池であって、
    前記正極の正極活物質及び前記負極の負極活物質が、安定ラジカルを有する安定ラジカル化合物を含み、
    前記電解液の電解質が、イオン液体である
    ことを特徴とする、前記二次電池
  2. 前記イオン液体が、前記安定ラジカルのp型・n型の標準酸化還元電位より広い電位窓を有することを特徴とする、請求項1に記載の二次電池。
  3. 前記安定ラジカル化合物が、安定ラジカルを有する高分子化合物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の二次電池。
  4. 前記高分子化合物において、前記安定ラジカルの少なくとも一方が2,2,6,6−tetramethylpiperidine−1−oxyl(TEMPO)であることを特徴とする、請求項3に記載の二次電池。
  5. 前記イオン液体のカチオン種が、1−ethyl−3−methylimidazolium(EMI)、1−butyl−3−methylimidazolium (BMI)、N,N−Diethyl−N−Methyl−N−(2− methoxyethyl) ammonium (DEME)、N−(2−methoxyethyl)−N−methylpyrrolidinium(MEMP)、N−Methyl−N−propylpyrrolidinium(MPP)、N−methyl−N−propylpiperidinium(MPPp)、Butylmethylpyrrolidinium(BMP)、N−butyl−N−methylpiperidinium(BMPp)、Butylpiridinium (BP)、N,N−diethyl−N−methoxymethyl−N−methylammonium(DEMM)、N−methoxymethyl−N−methylpyrrolidinium(MMMP)、N−methoxymethyl−N、N,N−trimethylammonium(MMTM)のいずれか1種、あるいは2種以上の組み合わせである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の二次電池。
  6. 前記イオン液体のアニオン種がBF4−、PF6−、(CF3SO2)2N− (TFSI)である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の二次電池。
  7. 前記電解液が、電解液全体の重量を基準として25wt%未満の有機溶媒を含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の二次電池。
  8. 前記有機溶媒がアセトニトリルである、請求項7に記載の二次電池。
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