JP2020023033A - 位相割出し方法及び研削加工方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】研削盤においてピンやキー等の位相基準や位相決め用のタッチセンサ等を用いることなく、短時間で高精度にワークの位相を割出して研削加工することができる位相割出し方法及び研削加工方法を提供する。【解決手段】研削盤1は、S4の接触検知工程において、砥石車17とワークWとの接触検知を行う。回転軸心Wcを中心に回転するワークWの被加工部である偏心部Waが、その中心Wacが回転軸心Wcと砥石軸心Tcとを結ぶ直線上でそれらの中間に位置する姿勢で砥石車17と接触する位置関係にあることに基づいて、S6の基準位相決定工程において、接触検知時の主軸12aの回転位相をワークWの加工基準位相として設定する。【選択図】図6
Description
本発明は、位相割出し方法及び研削加工方法に関する。
従来、ワークとしてのクランクシャフトを、ジャーナル中心と一致する主軸の回転軸心回りに回転させ、回転位相に応じて砥石車をワークに対する切り込み方向に相対移動させて、回転軸心から偏心したクランクピンを研削する研削盤が用いられている。
この種の公知の研削盤では、ワークにピンやキー等の位相基準を設け、ワークの位相基準と主軸の位相とを合わせて研削する構成のものが知られている。しかしながら、ワークに位相基準を設ける場合、位相基準の位置や大きさが変化すると、それに対応した駆動金具やクランプ装置に交換する必要があるため、それら駆動金具やクランプ装置を設計、製作してそれらに交換しなければならず、生産性が低いという問題がある。
一方、上述した問題を解決する技術として、従来、タッチセンサを用いて、ワークを一方の方向に回転させ、センサの出力があったときの検出値と、ワークを他方の方向に回転させてセンサの出力があったときの検出値との中間値を位相基準の角度位置とする研削盤が提案されている(例えば、特許文献1等参照。)。このような研削盤では、ワークと主軸との位相を位相基準の位置や大きさに係わらず自動的に一致させることができる。
しかしながら、上述した従来技術では、位相決め用にタッチセンサを設けることで構成が複雑で高価になると共に、加工動作開始前にタッチセンサを用いて実行される位相検知動作に時間がかかるという問題がある。
本発明は、研削盤においてピンやキー等の位相基準や位相決め用のタッチセンサ等を用いることなく、短時間で高精度にワークの位相を割出して研削加工することができる位相割出し方法及び研削加工方法を提供することを目的とする。
本発明に係る位相割出し方法は、回転軸心に対し偏心した被加工部を有するワークを主軸で回転させながら、前記回転軸心との交差方向に相対移動する砥石台に支持された砥石車を接触させて前記被加工部を研削加工する研削盤において、前記ワークの位相を割出す方法である。
そして、位相割出し方法は、前記ワークを前記主軸に取付ける取付け工程と、前記ワークが取り付けられた前記主軸を回転させる主軸回転工程と、前記砥石車を回転させながら、前記砥石台を前記被加工部と離間する所定位置から前記被加工部へ接近する方向に相対移動させる砥石台送り工程と、前記主軸回転工程及び前記砥石台送り工程が実行されている最中に、前記被加工部に前記砥石車が接触したことを検知する接触検知工程と、前記接触検知工程における接触検知時の前記主軸の回転位相を取得する主軸位相取得工程と、前記主軸位相取得工程で取得した前記主軸の回転位相を、前記ワークの加工基準位相として設定する基準設定工程とを備える。
この方法によれば、回転軸心を中心に回転するワークの被加工部に砥石台が接近する方向に相対移動した時、常に、被加工部はその中心が回転軸心と砥石軸心とを結ぶ直線上でそれらの中間に位置する姿勢で砥石車と接触する位置関係にあることに基づいて、接触検知時の主軸の回転位相を、ワークの加工基準位相として設定する。よって、研削盤においてピンやキー等の位相基準や位相決め用のタッチセンサ等を用いることなく、短時間で高精度にワークの位相を割出すことができるという効果を奏する。
本発明に係る研削加工方法は、位相割出し方法を実施した後、前記加工基準位相を基準として前記主軸の回転に同期して前記砥石台を相対移動させ、前記砥石車により前記被加工部を研削する研削工程を備える。
この方法によれば、ワークの位相割出しに引き続いて、研削工程を実行することができるため、位相割出しから研削加工完了までの全体時間の短縮化を図ることができるという効果を奏する。
以下、本発明の位相割出し方法及び研削加工方法を実施する研削盤の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
<実施形態>
(1.研削盤1の全体構成)
実施形態の研削盤1の構成について、図1を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る研削盤1の全体構成を示す平面図である。研削盤1は、ワークWを加工するための研削盤である。ワークWは、軸状部材であって、被加工部である偏心部Waを有する。偏心部Waは、ワークWの回転軸線に対して偏心した軸線を中心とした部位である。特に、偏心部Waは、円筒状外周面を有し、偏心部Waの中心軸線が、ワークWの回転軸線に対して偏心している。
(1.研削盤1の全体構成)
実施形態の研削盤1の構成について、図1を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る研削盤1の全体構成を示す平面図である。研削盤1は、ワークWを加工するための研削盤である。ワークWは、軸状部材であって、被加工部である偏心部Waを有する。偏心部Waは、ワークWの回転軸線に対して偏心した軸線を中心とした部位である。特に、偏心部Waは、円筒状外周面を有し、偏心部Waの中心軸線が、ワークWの回転軸線に対して偏心している。
本実施形態においては、ワークWとして、クランクシャフトを例に挙げる。ただし、ワークWは、クランクシャフトに限られるものではない。クランクシャフトであるワークWは、偏心部Waとしてクランクピンを備える。図1においては、例えば、クランクシャフト(ワークW)は、被加工部である4個のクランクピン(偏心部Wa)を備える。クランクシャフトの回転軸線は、クランクジャーナルの中心軸線に一致する。研削盤1は、ワークWを回転軸線であるC軸回りに回転しながら、偏心部Waであるクランクピンの外周面を研削加工する。
研削盤1は、砥石台トラバース型を例示する。ただし、研削盤1は、テーブルトラバース型を適用することもできる。研削盤1は、円板状の砥石車17を1個だけ備える構成を例示するが、2個の砥石車17を備える構成を適用することもできる。
研削盤1は、ベッド11、主軸台12、チャック13、心押台14、トラバースベース15、砥石台16、砥石車17、駆動部20、及び、CNC装置30を備えて構成される。
ベッド11は、設置面上に固定されている。ベッド11の上面には、Z軸方向に延びるガイドレール11aが形成されている。ベッド11の上面には、Z軸方向に平行な方向に延びるボールねじ11b、及び、ボールねじ11bを回転駆動するZ軸送り用モータ11cが設けられている。
主軸台12は、ワークWを回転可能に支持する支持装置として機能する。主軸台12は、は、ベッド11の上面において、X軸方向の手前側且つZ軸方向の一端側(前端側)に設けられている。主軸台12は、C軸回りに回転可能な主軸12a、主軸12aを回転駆動する主軸モータ12b、及び主軸モータ12bの回転位相を出力する主軸エンコーダ12cを備える。主軸12aは、ワークWの一端の中心を支持する。
チャック13は、主軸台12の端面に設けられており、主軸モータ12bによって回転駆動される。チャック13は、ワークWの一端の外周面を把持する。つまり、チャック13は、主軸12aと共に、ワークWを回転可能に支持した状態で回転する。
心押台14は、ベッド11の上面において、主軸台12に対してZ軸方向に対向する位置、すなわち、X軸方向の手前側(図1の下側)且つZ軸方向の他端側(図1の左側)に設けられている。心押台14は、ワークWの他端の中心を支持する心押センタ14aを備える。なお、心押センタ14aは、ワークWと共に回転するように設けられてもよいし、回転せずにワークWに対して滑るように設けられてもよい。
トラバースベース15は、ガイドレール11a上にZ軸方向に移動可能に設けられる。トラバースベース15は、ボールねじ11bのナットに固定されており、Z軸送り用モータ11cの駆動によりZ軸方向に移動する。トラバースベース15の上面には、Z軸方向に直交するX軸方向に延びるガイドレール15aが形成されている。トラバースベース15の上面には、X軸方向に平行な方向に延びるボールねじ15b、ボールねじ15bを回転駆動するX軸送り用モータ15c、及びX軸送り用モータ15cの回転位相を出力するX軸エンコーダ15dを備える。また、トラバースベース15は、X軸方向のボールねじ15b及びX軸送り用モータ15cによる駆動に換えて、リニアモータによる駆動としてもよい。
砥石台16は、トラバースベース15のガイドレール15a上に、ワークWに対する砥石車17の切り込み方向であるX軸方向に直線移動可能に設けられる。砥石台16は、X軸送り用モータ15cの回転駆動によりX軸方向に移動する。砥石台16は、工具としての円板状の砥石車17を、Z軸回りに回転可能に支持する。砥石台16は、砥石車17における研削部位を露出させつつ、他の部位を被覆するカバー16aを備える。さらに、砥石台16は、砥石車17を回転駆動する砥石回転用モータ16b、及びAEセンサ16cを備える。AEセンサ16cは、ワークWと砥石車17との接触によって発生するAE(Acoustic Emission)波を検出し、検出信号をCNC装置30に出力する。
駆動部20は、CNC装置30からの制御指令に基づいて、上述した各モータを駆動する駆動回路であり、砥石回転用モータ駆動回路21と、X軸送り用モータ駆動回路22と、Z軸送り用モータ駆動回路23と、主軸モータ駆動回路24とを備える。
砥石回転用モータ駆動回路21は、砥石回転用モータ16bを回転駆動し、砥石車17を回転させる。X軸送り用モータ駆動回路22は、X軸送り用モータ15cを回転駆動し、砥石台16を砥石車17のワークWに対する切り込み方向であるX軸方向に移動させる。Z軸送り用モータ駆動回路23は、Z軸送り用モータ11cを回転駆動し、トラバースベース15をZ軸方向に移動させる。主軸モータ駆動回路24は、主軸モータ12bを回転駆動し、主軸12aと共にワークWをC軸回りに回転させる。
(2.CNC装置30の構成)
次に、CNC装置30の構成について、図2を参照しつつ説明する。図2は、第1実施形態に係るCNC装置30を示すブロック図である。CNC装置30は、駆動部20へ制御指令を行うコンピュータ数値制御装置であって、図2に示すように、NCプログラム記憶部31と、データ記憶部33と、プロフィール演算部34と、制御部35とを備えて構成される。
次に、CNC装置30の構成について、図2を参照しつつ説明する。図2は、第1実施形態に係るCNC装置30を示すブロック図である。CNC装置30は、駆動部20へ制御指令を行うコンピュータ数値制御装置であって、図2に示すように、NCプログラム記憶部31と、データ記憶部33と、プロフィール演算部34と、制御部35とを備えて構成される。
NCプログラム記憶部31は、NCプログラムを記憶する記憶領域であって、ワークWを加工するためのNCプログラムを外部から入力して登録、すなわち記憶する。NCプログラムは、一文字のアルファベットと、それに続く数字とからなるコードを含むものであり、主軸の移動や座標系の設定などを処理するためのGコードがコードの一つとして含まれる。Gコードには、早送りを示すコードG00、加工送りを示すコードG01や、プロフィール演算を示すG106等が含まれる。データ記憶部33は、加工制御に用いる各種のデータを記憶する記憶領域である。
プロフィール演算部34は、NCプログラムに基づき、プロフィールデータを演算する。プロフィールデータは、ワークWの回転軸心Wcの回転位相θ(例えば、1度毎の角度位置)と、各回転位相に対応する砥石車17の移動位置(回転軸心Wcと砥石軸心Tcとの心間距離x)とを定義する点群データである。
そして、制御部35は、プロフィールデータに基づいて駆動部20の各駆動回路を制御する。すなわち、Z軸送り用モータ駆動回路23によりZ軸送り用モータ11cを回転駆動してトラバースベース15をZ軸方向に移動させ、砥石車17を偏心部Waであるクランクピンに対向させる。また、主軸モータ駆動回路24により主軸モータ12bを回転駆動して主軸12aと共にワークWをC軸回りに回転させる。また、ワークWの回転軸心である主軸12aの回転位相に応じて、X軸送り用モータ駆動回路22によりX軸送り用モータ15cを回転駆動して砥石台16をX軸方向へ移動させる。そして、砥石回転用モータ駆動回路21により砥石回転用モータ16bを回転駆動して砥石車17を回転させることにより偏心部Waであるクランクピンの研削加工が行われる。
(3.位相割出し及び研削加工の流れ)
次に、位相割出し及び研削加工の流れについて、図3〜図5のフローチャートに沿って、適宜、図6〜図8の各説明図を参照しつつ説明する。図3は、制御部35において実行される位相割出し及び研削加工の流れを示すフローチャートである。図4は、接触検知工程の流れを示すフローチャートである。図5は、研削準備及び研削工程の流れを示すフローチャートである。図6は、回転軸心Wcを中心に回転する偏心部Waに砥石車17が接近して接触する様子を模式的に示す説明図である。図7は、偏心部Waと砥石車17との接触部分を拡大して示す説明図である。図8は、偏心部Waとの接触によって砥石車17に生じる振動の検出信号を示すグラフである。
次に、位相割出し及び研削加工の流れについて、図3〜図5のフローチャートに沿って、適宜、図6〜図8の各説明図を参照しつつ説明する。図3は、制御部35において実行される位相割出し及び研削加工の流れを示すフローチャートである。図4は、接触検知工程の流れを示すフローチャートである。図5は、研削準備及び研削工程の流れを示すフローチャートである。図6は、回転軸心Wcを中心に回転する偏心部Waに砥石車17が接近して接触する様子を模式的に示す説明図である。図7は、偏心部Waと砥石車17との接触部分を拡大して示す説明図である。図8は、偏心部Waとの接触によって砥石車17に生じる振動の検出信号を示すグラフである。
まず、ステップ1(以下、S1と略記する。他のステップも同様。)の取り付け工程において、ワークWを主軸12aに取付ける。すなわち、ワークWの軸線方向における第1端において、クランクジャーナルの中心を主軸台12の主軸12aに支持させ且つチャック13により外周面を把持させる。また、ワークWの第2端において、クランクジャーナルの中心を心押台14の心押センタ14aに支持させる。
次に、S2の主軸回転工程において、ワークWを粗加工時の回転速度以上でC軸回りに連続回転させる。すなわち、制御部35は、主軸モータ駆動回路24を制御して主軸モータ12bを粗加工時の回転数以上の所定の回転数で回転駆動させ、図4に示すように、主軸12aと共に回転軸心Wcを中心として反時計回りにワークWを連続回転させる。例えば、粗加工時の主軸モータ12bの回転数を50〜70[rpm]としたとき、S2の回転工程では300[rpm]程度の回転数で回転させてもよい。
次に、S3の砥石台送り工程において、砥石車17を所定の回転数で回転させると共に、砥石台16をワークWに近接する方向へ、粗加工時の移動速度で移動させる。すなわち、制御部35は、砥石回転用モータ駆動回路21を制御して砥石回転用モータ16bを所定の回転数で回転駆動し、砥石車17を回転させる。また、制御部35は、X軸送り用モータ駆動回路22を制御してX軸送り用モータ15cを粗加工時の回転速度で回転駆動し、砥石台16をX軸方向にワークW近接側へ粗加工時の移動速度で接近近傍まで移動させる。接近近傍から接近まで、制御部35は、X軸送り用モータ駆動回路22を制御し、砥石台16をX軸方向に粗加工時の移動速度よりも遅く、仕上げ時の移動速度よりも速い移動速度で移動させる。例えば、砥石台16の移動速度は、5〜10[mm/min]程度とすることができる。
次に、S4の接触検知工程において、S2主軸回転工程及びS3砥石台送り工程が実行されている最中に、砥石車17とワークWとの接触検知を行う。以下、回転するワークWに向かって接近移動する砥石車17が、偏心部Waと接触する時の様子について、図6及び図7を参照しつつ説明する。砥石車17が偏心部Waと接触する時、図6に示すように、偏心部Waは回転軸心Wcに対して砥石軸心Tc方向を向く水平姿勢となっている。より詳細には、砥石車17は、図7に示すように、回転軸心Wcと砥石軸心Tcとを結ぶ水平軸線Lより下側に位置する接触点P1で偏心部Waとの接触を開始し、ほぼ水平軸直線L上の接触点P2で接触を終了する。最初の接触点P1でのワークWの回転位相と最後の接触点P2でのワークWの回転位相との中間のワークWの回転位相が、水平軸線Lに極めて近くなる。
そして、砥石車17が偏心部Waと点P1から点P2まで接触する期間に振動が生じ、その振動がAEセンサ16cにより検知される。図8では、縦軸がAEセンサ16cより出力される振動の検知信号を示しており、横軸が時間経過を表している。図8において、AEセンサ16cの検知信号AEにおける山形の波形部分は、偏心部Waと砥石車17とが接触を開始してから終了するまでの検知信号の変化を表しており、本実施形態では接触波形と称する。接触波形は、信号が所定値よりも大きくなった時間T1で接触が開始し(最初の接触点P1)、ワークWが10°程度回転して偏心部Waの表面が僅かに研削された後、信号が所定値よりも小さくなった時間T2で接触が終了したこと(最後の接触点P2)を表している。つまり、時間T1が点P1で接触を開始する時間を示し、時間T2が点P2で接触を終了する時間を示している。よって、直線L上の点Pcでの接触時点は、接触期間である開始時T1〜終了時T2の中間時点であり、(T1+T2)/2で表される。そして、接触信号が所定値よりも大きくなった時(T1)の主軸エンコーダ12cのθ1と砥石台16の送り位置X1を記憶し、次に接触信号が所定値よりも小さくなった時(T2)の主軸エンコーダ12cのθ2と砥石台16の送り位置X2を記憶して、これらを用いて開始時T1〜終了時T2の中間時点における主軸エンコーダ12cの値と砥石台16の送り位置とを求める。詳しくは後述する。
以上を踏まえて、S4の接触検知工程の具体的な内容について、図4のフローチャートを参照しつつ説明する。まず、S11において、砥石台16の内部に収容されたAEセンサ16cの出力に基づいて、接触波形が検知されたか否かを判定する。S11で接触波形が検知されなかった場合(S11:No)、S11を繰り返す。
S11で接触波形が検知された場合(S11:Yes)、S12において、砥石台16の送り動作を停止する。すなわち、制御部35は、X軸送り用モータ駆動回路22を制御してX軸送り用モータ15cの回転駆動を停止する。イメージ的に述べると、砥石台16(砥石車17)の移動速度に比べて、回転軸心Wc回りの偏心部Waのふれ回り速度が圧倒的に大きい状態で、砥石車17に偏心部Waが接触する。
続いて、S13において、接触波形の開始時T1の主軸エンコーダ12cの出力θ1を取得すると共に、X軸エンコーダ15dの出力から砥石台16の送り位置X1を取得する。さらに、終了時T2の主軸エンコーダ12cの出力θ2を取得すると共に、X軸エンコーダ15dの出力から砥石台16の送り位置X2を取得する。S13終了後、図3のフローチャートの処理へ戻り、S5へ進む。
S5の主軸位相取得工程において、接触検知時Tdの主軸エンコーダ12cの出力θdを、数式θd=(θ1+θ2)/2により取得する。次いで、S6の基準位相設定工程で、S5で取得した主軸12aの回転位相θdを、ワークWの加工基準位相として設定し、データ記憶部33に記憶する。すなわち、回転軸心Wcを中心として時計3時の位置を基準点A(0°)としたとき、接触検知時Tdにおいては、偏心部Waの中心Wacがほぼ基準点Aに位置する水平姿勢となっている。砥石車17による偏心部WaのX軸方向の切り込み量が少ない程、偏心部Waの中心Wacが基準点Aに位置する水平姿勢となる。よって、偏心部Waの中心Wacが基準点Aに位置するときの主軸エンコーダ12cの出力である回転位相を、ワークWの加工基準位相として設定することで、加工基準位相を基準として主軸エンコーダ12cの出力(主軸12aの検出回転位相)に同期させて砥石台16の送り位置を制御し、砥石車17で偏心部Waを研削加工することが可能となる。
また、S7の送り位置取得工程において、接触検知時Tdの砥石台16の送り位置Xdを、数式Xd=(X1+X2)/2により取得する。次いで、S8の基準位置設定工程において、S7で取得した砥石台16の送り位置XdをワークWの加工基準位置として設定し、データ記憶部33に記憶する。すなわち、水平姿勢の偏心部Waに砥石車17が接触する時の砥石台16の送り位置を加工基準位置とすることで、砥石台16の送り位置を正確に制御して砥石車17で偏心部Waを研削加工することが可能となる。以上で、ワークWの割出し処理が終了する。
続いて、S9の研削準備及び研削工程を実施する。研削準備及び研削工程の内容について、図5のフローチャートを参照しつつ説明する。まず、S21でバックオフ動作を行う。バックオフ動作は、砥石台16を、S4の接触検知工程で送り動作を停止した位置から砥石車17が偏心部Waから離間する所定のバックオフ位置まで後退移動させる動作である。
次に、S22において、主軸12aの回転を、加工時の回転速度へ減速する。すなわち、制御部35は、主軸モータ駆動回路24を制御して、主軸モータ12bの回転速度を粗加工時の回転数以上の所定の回転数から、粗加工時の回転数へ減速する。例えば、S2の回転工程で主軸モータ12bの回転数を300[rpm]に設定した場合、粗加工時の回転数50〜70[rpm]へ減速する。
次に、S23において、砥石台16をバックオフ位置からS8の基準位置設定工程で設定した加工基準位置の近傍、つまり砥石車17が偏心部Waと近接する位置まで早送りで前進移動させる動作を行う。
続いて、S24において、砥石台16の送りを加工時の送り速度へ減速すると共に、加工基準位相を基準として主軸12aの回転位相に同期させて研削送り動作を行う。これにより、偏心部Waの研削加工が行われる。
(4.まとめ)
上述したように、本実施形態の位相割出し方法によれば、回転軸心Wcを中心に連続回転するワークWの被加工部である偏心部Waに砥石台16が接近する方向に相対移動した時、常に、偏心部Waはその中心Wacが回転軸心Wcと砥石軸心Tcとを結ぶ直線上でそれらの中間に位置する姿勢で砥石車17と接触する位置関係にあることに基づいて、接触検知時の主軸12aの回転位相を、ワークWの加工基準位相として設定する。よって、研削盤においてピンやキー等の位相基準や位相決め用のタッチセンサ等を用いることなく、短時間で高精度にワークWの位相を割出すことができるという効果を奏する。また、ワークWの位相割出しに引き続いて、S9で研削工程を実行することができるため、位相割出しから研削加工完了までの全体時間の短縮化を図ることができるという効果を奏する。
上述したように、本実施形態の位相割出し方法によれば、回転軸心Wcを中心に連続回転するワークWの被加工部である偏心部Waに砥石台16が接近する方向に相対移動した時、常に、偏心部Waはその中心Wacが回転軸心Wcと砥石軸心Tcとを結ぶ直線上でそれらの中間に位置する姿勢で砥石車17と接触する位置関係にあることに基づいて、接触検知時の主軸12aの回転位相を、ワークWの加工基準位相として設定する。よって、研削盤においてピンやキー等の位相基準や位相決め用のタッチセンサ等を用いることなく、短時間で高精度にワークWの位相を割出すことができるという効果を奏する。また、ワークWの位相割出しに引き続いて、S9で研削工程を実行することができるため、位相割出しから研削加工完了までの全体時間の短縮化を図ることができるという効果を奏する。
また、接触検知工程(S4)では、砥石車17と被加工部である偏心部Waとの接触期間(開始時T1〜終了時T2)の中間時点を接触検知時とし、その時点の主軸12aの回転位相をワークWの加工基準位相として設定し、砥石台16の送り位置を加工基準位置として設定するので、簡単且つ高精度にワークWの位相割り出しをすることができる。
また、接触検知工程(S4)は、砥石車17に生じる振動の検知に基づいて接触検知を行うので、接触検知用のデバイスを別途設けることなく、砥石台16に既存のAEセンサ16cの出力を利用して接触検知を行うことができる。
また、主軸回転工程(S2)は、主軸12aを粗加工時の回転速度以上で回転させるので、偏心部Waはその中心Wacが回転軸心Wcと砥石軸心Tcとを結ぶ直線上でそれらの中間に位置する姿勢で砥石車17と接触する位置関係にあると仮定することができ、S4の接触検知工程の実施後、S6の基準位相設定工程で設定される加工基準位相及びS8の基準位置設定工程で設定される加工基準位置の精度を確保することができる。
また、砥石台送り工程(S3)は、砥石台16を仕上げ加工時の移動速度以上で相対移動させるので、S4の接触検知工程に要する時間の短縮化を図ることができる。また、砥石台16を粗加工時の移動速度以下で相対移動させるので、S6の基準位相設定工程で設定される加工基準位相及びS8の基準位置設定工程で設定される加工基準位置の精度を確保することができる。
<変形例>
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々に変更を施すことが可能である。上記実施形態では、本発明をクランクシャフトのクランクピンを研削加工する研削盤に適用した例を示したが、これには限られない。例えば、カムシャフトを研削するカム研削盤にも適用可能である。要するに、本発明は、回転軸心から偏心した偏心部を有するワークを研削する研削盤に適用することができる。
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々に変更を施すことが可能である。上記実施形態では、本発明をクランクシャフトのクランクピンを研削加工する研削盤に適用した例を示したが、これには限られない。例えば、カムシャフトを研削するカム研削盤にも適用可能である。要するに、本発明は、回転軸心から偏心した偏心部を有するワークを研削する研削盤に適用することができる。
また、上述した実施形態では、砥石台16に設けられて砥石車17に生じる振動を検知するAEセンサ16cの出力に基づいて、砥石車17とワークWとの接触を検知する例を示したがこれには限られない。主軸台12に設けられた主軸12aに生じる振動を検知するセンサの出力に基づいて、砥石車17とワークWとの接触を検知するようにしてもよい。また、AEセンサに限らず、砥石車17とワークWとの接触によって生じる振動を如何なるセンサで検出するようにしてもよい。
或いは、砥石車17又は主軸12aに生じる振動の検知に変えて、砥石車17又は主軸12aにかかる負荷の検出により、接触検知を行うようにしてもよい。例えば、砥石車17にかかる負荷の検出は、砥石回転用モータ16bへ実際に供給されている電流を検出することで行うようにしてもよい。同様に、主軸12aにかかる負荷の検出は、主軸モータ12bへ実際に供給されている電流を検出することで行うようにしてもよい。
また、上記実施形態では、S2の主軸回転工程において、ワークWを主軸12aと共に回転軸心Wcを中心として一方向へ(図6で時計回りに)連続回転させる例を示したが、これには限られず、時計3時の位置(基準点A)を通る回転方向の所定範囲で2方向(時計回りと反時計回り)へ往復回転させるようにしてもよい。例えば、図9の変形例に示すように、基準点Aを中央とする回転方向の所定範囲で、ワークWを時計回りと反時計回りとに往復回転させるようにしてもよい。この場合も、S3の砥石台送り工程で砥石車17を所定の回転数で回転させると共に、砥石台16をワークWに接近する方向へ粗加工時の移動速度で移動させ、S4の接触検知工程で砥石車17とワークWとの接触検知を行うことができる。
また、上記実施形態では、S9の研削準備及び研削工程において、S21のバックオフ工程及びS23の早送り工程を実施する例を示したが、これらの工程を省略し、接触検知時の砥石台16の送り位置から引き続いてS24の研削工程を実施するようにしてもよい。
W…ワーク、Wc…回転軸心、Wa…偏心部(被加工部)、1…研削盤、12a…主軸、16…砥石台、17…砥石車、35…制御部、S1…取付け工程、S2…主軸回転工程、S3…砥石台送り工程、S4…接触検知工程、S5…主軸位相取得工程、S6…基準位相設定工程、S7…送り位置取得工程、S8…基準位置設定工程、S21…バックオフ工程、S23…早送り工程、S24…研削工程。
Claims (11)
- 回転軸心に対し偏心した被加工部を有するワークを主軸で回転させながら、前記回転軸心との交差方向に相対移動する砥石台に支持された砥石車を接触させて前記被加工部を研削加工する研削盤において、前記ワークの位相を割出す方法であって、
前記ワークを前記主軸に取付ける取付け工程と、
前記ワークが取り付けられた前記主軸を回転させる主軸回転工程と、
前記砥石車を回転させながら、前記砥石台を前記被加工部と離間する所定位置から前記被加工部へ接近する方向に相対移動させる砥石台送り工程と、
前記主軸回転工程及び前記砥石台送り工程が実行されている最中に、前記被加工部に前記砥石車が接触したことを検知する接触検知工程と、
前記接触検知工程における接触検知時の前記主軸の回転位相を取得する主軸位相取得工程と、
前記主軸位相取得工程で取得した前記主軸の回転位相を、前記ワークの加工基準位相として設定する基準設定工程と、を備える位相割出し方法。 - 前記接触検知工程は、前記砥石車と前記被加工部との接触期間の中間時点を前記接触検知時とする、請求項1に記載の位相割出し方法。
- 前記接触検知工程は、前記砥石車又は前記主軸に生じる振動の検知に基づいて接触検知を行う、請求項1又は2に記載の位相割出し方法。
- 前記接触検知工程は、前記砥石車又は前記主軸にかかる負荷の検知に基づいて接触検知を行う、請求項1又は2に記載の位相割出し方法。
- 前記主軸回転工程は、前記主軸を粗加工時の回転速度以上で回転させる、請求項1乃至4の何れか一項に記載の位相割出し方法。
- 前記主軸回転工程は、前記主軸を一定方向に連続回転させる、請求項1乃至5の何れか一項に記載の位相割出し方法。
- 前記主軸回転工程は、前記主軸を所定範囲で往復回転させる、請求項1乃至5の何れか一項に記載の位相割出し方法。
- 前記砥石台送り工程は、前記砥石台を仕上げ加工時の移動速度以上且つ粗加工時の移動速度以下で相対移動させる、請求項1乃至7の何れか一項に記載の位相割出し方法。
- 前記接触検知工程における前記接触検知時の前記砥石台の送り位置を取得する送り位置取得工程と、
前記送り位置取得工程で取得した前記砥石台の前記送り位置を前記ワークの加工基準位置として設定する基準位置設定工程、を備える請求項1乃至8の何れか一項に記載の位相割出し方法。 - 請求項1乃至9の何れか一項に記載の位相割出し方法を実施した後、前記加工基準位相を基準として前記主軸の回転に同期して前記砥石台を相対移動させ、前記砥石車により前記被加工部を研削する研削工程を備える、研削加工方法。
- 前記研削工程を実施する前に、
前記砥石台を前記砥石車が前記被加工部から離間する所定のバックオフ位置まで相対的に後退移動させるバックオフ工程と、
前記所定位置から前記砥石車が前記被加工部と近接する位置まで前記砥石台を早送りで相対的に前進移動させる早送り工程と、を実施する、請求項10に記載の研削加工方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2018149513A JP2020023033A (ja) | 2018-08-08 | 2018-08-08 | 位相割出し方法及び研削加工方法 |
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JP2018149513A JP2020023033A (ja) | 2018-08-08 | 2018-08-08 | 位相割出し方法及び研削加工方法 |
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JP2020023033A true JP2020023033A (ja) | 2020-02-13 |
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ID=69617998
Family Applications (1)
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Country | Link |
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JP (1) | JP2020023033A (ja) |
-
2018
- 2018-08-08 JP JP2018149513A patent/JP2020023033A/ja active Pending
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